キングの経営するバー・イリュージョン。
今日もまた、静かな夜が過ぎていこうとしていた。
店は閉店の準備に取り掛かっている。
キングも、使ったグラスを一つ一つ丁寧に拭いていた。
その時、従業員の一人、サリーが急に口を開いた。
「それにしても、今年はおかしいですね…」
「何がだい? サリー」
キングが尋ねる。
「ほら、この時期といえば、もうすぐKOFが開かれる
じゃないですか。だけど、今回に限って、チームメイト
から誘いが来ないなんて…」
「ああ、その事か」
キングは急に笑い始めた。
「どういう事なんですか?」
「今年は店の売上を重視しようと思ってね。ユリ達には
あらかじめ、断りの電話を入れておいたんだ」
「断りって、出ないつもりなんですか?」
サリーは、意外という表情をした。
「まあね。たまには見る側に回るのも、悪くないんじゃ
ないかと思ってね」
「はぁ…」
「それに、KOFが終わって、何日かは体中がボロボロ
だからね。ほとんど使い物になりゃしないさ。そしたら、
あんた達に余計な負担をかけてしまうだろう?」
「いえ、私達は別に構わないんです。代わりに、マスタ
ーの勇姿を見る事ができるんですから…」
「そうですよ。乱入でも何でも、出場してくださいよ!」
他の従業員からも、声が上がる。
「とは言ってもねぇ…」
困った表情をするキング。 |