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「なぜ、とどめを刺さなかった!?」
 アジトにて、山崎を叱責する彼の仲間。
 山崎は煙草を吸ったまま、黙っている。
 仲間はさらに続ける。
「たく、せっかくのKOFレンジャーを潰せるチャンスだったのに…」
「るせぇ…」
 仲間が話してる途中に、山崎が口を挟む。
「奴らをどう料理しようが、俺の勝手だろうが…」
 立ち上がり、自分の部屋に向かおうとする山崎。
「待て、山崎。話はまだ終わってないぞ!」
「ああ!?」
 山崎が仲間の方を向く。
 そして、鋭い目つきでこちらを睨む。
「勘違いすんなよ! 俺は今、金でこちらの方についてるだけだ。条件が良
けりゃ、どっちにだってつく。それを忘れんなよ!」
 そのまま、山崎はその場から消えていった。
 彼の後ろ姿を見送る仲間。
「金…か。それでも構わねえよ。俺達の野望を達成してくれるんならな…」

「ハハハ、チンピラにボコボコにやられたか。ざまぁねえな、八神!」
「ちょっと、京さん!」
「あ、悪い…」
 庵を馬鹿にして笑ってたのをアテナに叱責されて、黙る京。

 庵はあの後、倒れていた所を仕事帰りのアテナと拳崇に保護され、手当て
を受けて今はハイデルンの事情聴取に答えている。

「その男、本当に『オロチ八傑集』と言っていたのだな?」
「ああ、そうだ。名は確か、山崎竜二…とか言ったか」
「山崎竜二か…。レオナ!」
「了解。ただいま情報を…」
 レオナがパソコンで山崎の情報を調べる。
「そういえば、チャンとチョイにオロチの事について尋ねた時も、八傑
集がいる…みたいな事を言っていたな」
 キムが思い出したように言う。
「てことは、奴はオロチの上級幹部っちゅうことかいな!?」
「そうなるだろうな…」
 拳崇の問いにキムが応じたその時だった。
「司令官、山崎竜二の情報を入手しました」
 レオナの情報入手の報告が入る。
「よし。コピーを全員に渡せ」
「了解」
 山崎竜二の情報が印刷された紙が、KOFレンジャーの元に配られる。
「こいつか。八神をボコボコにした奴は…」
 京が山崎の顔をその目に焼きつける。
 ハイデルンが山崎の素性を説明する。
「山崎竜二。かつては日本の暴力団に所属。その後、香港に潜伏。今は再び
日本に戻り、闇のブローカーとして社会に暗躍」
「何か、ベッタベタの悪役やなぁ…」
 拳崇が感想を言う。
「とにかく、ブラックリストにも載っている男だ。オロチ討伐だけでなく、
奴を捕まえる意味においても、この戦いは重要なものになるであろう」
 ハイデルンは庵をチラリと見た後、言葉を続ける。
「特に、相手は八神君に変身させる間も与えず倒している。みんな、気を引
きしめてかかるように。いいな!」
「はい!!」
 庵を除く4人のKOFレンジャーの掛け声が部屋中に響き渡る。
「フン、気に入らんな…」
 庵がつぶやく。
「どうした、八神君」
 ハイデルンが聞く。
「これは元々俺の問題だ。貴様らが手を出すものではない」
「しかし、相手はオロチ八傑集だ。我々にとっても関係がある!」
「それにてめぇは山崎に負けたんだろうが! お前一人で勝機なんかあるの
かよ!?」
 キムと京が反論する。
「そんなものはどうでもいい。言ったはずだぞ、俺は貴様らの仲間ではない
とな…。これ以上、邪魔をするなら殺すぞ!」
「八神さん!」
 アテナが止めようとするも、庵の睨んだ目で思わず萎縮してしまった。
「俺は行く。さらばだ…」
 そのまま、部屋を後にする庵。
 ドアの閉まる音が虚しく響く。
「たく、あの馬鹿。何を考えてるんだか…」
 京が愚痴をこぼす。
「仕方ない。4人はとりあえず、八神君のフォローだ。どちらにせよ、一人
でどうにかなる相手ではないからな…」
「はい!」
 ハイデルンの指示に4人が了解する。
「よし、まずは山崎だ。この街一帯に警戒網を張る!」
 作戦は開始された。

 基地を出た庵は、路地裏にいた。
「勝機だと? 馬鹿じゃあるまいし、なければ行くまい…」
 庵が自分の手を見つめる。
「八神家の禁断の技。その分、体はオロチに毒されるが、使わなければ仕方
あるまい…」
 庵の手は時間が経つにつれ、大きく震えていった。
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