PAGE:3
 その後もキムは順調に、門下生達を捕まえ、残りは半分
以下となった。
 しかし、行動範囲が範囲の為、残りはそれ相応に動いて
いかないと、捕まえる事ができない。
 ジョンも、先程までいた場所から、また遠くに移った。
 気配を殺したまま移動したので、そうそう悟られはしな
いが、キムのその移動力には、ジョンも冷や汗をかかずに
はいられなかった。
 隠れる門下生達が気配を殺すなら、それを見つけるキム
もまた気配を殺し、相手を探す。
 そして、その移動手段も、まるで地面の上をホバーして
いるかのように動き回り、見つけると猛スピードで戻り、
缶を3回踏む。
 見つけられたら最後、キムにスピードで追いつく事はで
きない。

 更に捕まる門下生の数が増えた。

(クッ、キム君。移動で何気に鳳凰脚を使ってくるとは…。
度々、近くを通るたびに冷や汗をかきますが、それでも、
私の作戦には影響がない。いや、むしろ、この人数からが
勝負!!)

 残りは3分の1以下になっていた。
 ここまで来ると、1人見つけるにしても、先程よりもずっ
と時間がかかってくる。
(それでは、作戦開始です。皆さんに、事前に行った通りに
行動するよう伝えてください!)
 ジョンがジェイフンに携帯で伝える。
 ジェイフンから携帯の連絡網がすぐに渡り、行動開始する。
(キム君の移動力と言えど、3分の1以下の人数なら、そう
簡単には見つからない。できるだけ、鬼の陣地より遠くで見
つけさせといて、反対側の人物が、その隙に缶を蹴る!!)
 ジョンの作戦の一つだ。
 至って普通の作戦だが、百戦錬磨のキムをこれで仕留めよ
うとは思っていない。
 あくまで、キムの体力を減らす作戦だ。
 そして、この作戦にはジョンの言う主力メンバーは温存と
いう形が取られた。

 主力メンバー、それはドンファン、ジェイフン、チャン、
チョイ、メイ・リー、チェ・リム、そして自分であるジョン
を含めた7人だ。

「君達は、KOFにも参加している。一般の門下生よりは、
更に働けると私は信じている。そこで、君達には更なる作戦
を授ける…」
 作戦会議でジョンは主力6人に話し掛けた。
「更なる作戦って?」
 メイが尋ねる。
「君達にはそれぞれ、2人1チームになって連携プレイを組
んでもらいたい…」
「連携…プレーでヤンスか?」

 いくらキムといえど、KOF出場経験者を2人揃って相手
をするのは酷なはずだ。2人1チーム、計3組の猛攻は仮に
缶を蹴る事ができなくても、相応の体力を削る事ができるは
ず。
(そうなれば、後は、体力が残っている私がトドメを刺せば
いい。これで、アテナさんの写真はいただきだ!!)
 これこそが、ジョンの完璧なる作戦だった。

「1、2、3!!」
 門下生を見つけては缶を踏むキム。
 しかし、体力がスタート時よりは落ちている。
 度々、反対側から来る門下生に缶を蹴られそうにはなるも
のの、容赦なくキムが缶を3回踏む。
「ふぅ、さすがにジョンさんが加わったチーム。門下生を上
手く使って、私を苦しめてきますね…」
 だが、キムの勢いは未だ止められず、遂に残りは主力7人
を残す事になった。
「師匠が近づいてきます…」
 リムが携帯でジョンに話す。
「よし、行動は作戦どおりだ。しっかり頼みますよ!!」
 ジョンの指示は、リムとメイで、キムを取り囲める位置に
移動し、その中心にキムが立った時、2人で一斉に動き出す
というもの。
 キムがその位置に来るのを、リムは今か今かと待ち構えて
いた。
 神経を集中させてる為、汗が滴り落ちる。

 刹那、キムが例の位置に足を踏み入れた。

 その瞬間に、リムがメイの携帯にバイブで知らせる。
 行動開始の合図だ。
 リムが自分から出てきた。
「師匠!!」
「り、リム君! 見つけたぞ!!」
 しかし、覚悟の表情で自分から出てきた彼女のその様子に、
キムは一瞬、行動が遅れてしまった。
「こちらからも、いっきますよー!!」
「!?」
 背後からはメイが出てきて、キムを取り囲む。
「私達を捕まえるならどうぞ、捕まえてください!」
「ただし、私達を倒せたら…の話ですよ!!」
 陣地からはだいぶ遠い。
「なるほど。こうやって時間を稼ぐ気ですか。ジョンさんも
考えますね。しかし…」
 壁を踏み台にして、常人を凌駕した跳躍を見せるキム。
 取り囲んでいた2人から、あっさり脱出した。
「メイ君も見つけた。後は、缶を踏むだけだ!!」
 虚を突かれた2人は大急ぎで、キムの後を追う。
 だが、キムのその動きは、まるで今までの疲れを感じさせ
ないものだった。
(まだ、温存していたというの!?)
 リムが一つの疑問を思い浮かべる。
 そう思ったが最後、リムはキムに追いつく事はなかった。
「ヒーローの力、侮ってもらっては困ります!!」
 キムに負けないスピードでメイが追いかける。
「ほう、やりますね。今までの大会の中で一番いい動きです
よ、メイ君」
「そう余裕をこいていられるのも今のうちです。いっけぇ!
最大出力ゥ!!」
 メイがさらにスピードを上げる。
 彼女の操るヒーローの力は、走っていながらもまるで、空
を飛んでいるように見えた。
「ハハ、さすがにやりますね。しかし、それでもまだまだで
すよ!!」
「!?」
 陣地が目の前に迫った瞬間、キムは空を本当に飛んだ。
 いや、本当はこれでも跳躍なのだろうが、メイの目には明
らかにそれは、空を飛んでいた。
「ハイ、1、2、3!!」
 リムとメイがこれで捕まった。
「く、私もまだまだヒーローパワーが足りないようですね…」
 メイは、自分の未熟さに、悔しさを覚えた。
NEXT