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「…ここか」
 花束を持った長髪の青年が足を止めた。
 太陽の光のように輝いてる金髪、そして自他共に認
める顔の良さが印象的である。

 彼の名は二階堂紅丸。

 日本、いや、今や世界中で彼の実力を知らぬ者はい
ないシューティングの名手である。
 彼は病院の前にいた。
 ポケットから紙を取り出し、書いている内容を確認
する。
「えっと、確か207号室だったな」
 確認を終えると、メモをポケットの中にしまい、病
院の中に入っていった。

 それは、一週間前の出来事だった。
 紅丸は本日の用事も全て終え、自宅に帰ってきた。
 その際、ポストに郵便物が入っている事を確認する。
 何枚かの広告と一緒に、二通の封筒が入っていた。

 広告にはまるで興味はなかったが、封筒だけは別だ
った。
 早速、一通目の封筒の中身を見ることにした。

 それは格闘大会の招待状だった。
 しかし、いつも彼が参加するKOFとは違い、世界
規模で行われるシングルの大会のようだ。
「へぇ。さすがは大会主催者だ。この俺に目をつける
とはわかってるじゃないか」
 出場参加者のリストを確認してみる。
 見ると、お馴染みのKOFの常連が多数いるのがわ
かった。

 その中には、あの草薙京の名も…。

「京。あいつも出るのか。そろそろカリを返そうと思
ってたところなんだ!」
 紅丸はKOFに出るきっかけとなった全日本異種格
闘技大会で、当時無名だった京に負けた経験がある。
 以降、彼とは何かとチームを組んだりしているが、
カリを返すことも忘れているわけではなかった。

 そのまま、リストを見ると、KOFでは聞いた事の
ない選手の名が数名いた。
「ケン・マスターズ? 確か全米の格闘王として名を
馳せてたはずだが、あいつも出るのか?」
 話だけは聞いた事があったものの、ケンという男と
はまだ手合わせした事はなかった。
 さらに見ていくと、今度は誰もが知っている格闘家
の名を確認した。
「リュウ? そういえばこいつの噂も聞いた事があっ
たな。確か、世界を旅する空手家とかで、その実力は
京やテリーにヒケを取らないって話だっけ」
 紅丸の中でフツフツと闘志が湧いて出た。
「面白い。未知なる実力者も多数出る大会か。相手に
取って不足はねぇ!」
 その瞬間に、紅丸の参加の意志は固まった。

「さて、と。もう一つの方は…」
 もう一通の封筒の中身も早速開けて読む紅丸。
 さっきの招待状とは違い、便箋でどうやら女の子の
ものと思われる筆跡があった。
「なるほど。俺のファンか。嬉しいね!」
 紅丸の魅力を書き綴った文らしく、彼はその一文一
文に目を凝らした。

 そして、手紙は最後の方に差し掛かった。
『最後にこれは私のわがままなのですが、聞いてくれ
たらありがたいです。今、私は病院にいるのですが、
是非、あなたに直接会って話がしたいのです。もし、
出来たら病院まで足をお運びください。場所は…』
 手紙を読み終えると、紅丸はスケジュールの確認を
した。
「大阪…か。一週間後にちょうど行く予定があるから、
その時に寄るとするか」
 そう呟くと、自分の手帳のスケジュールに、一週間
後の病院行きを追加した。
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