あとがき

「人生に戸山フットボールあり」

 50年史編集責任者、須賀 潔(1969年卒)

 1999年7月の城北会(戸山高校同窓会)総会の帰り際、創部OBで城北会副会長の細見淳さん(1952年卒)らの諸先輩にお目にかかり、「フットボールの50年史を頼むよ」と言われたのがきっかけだった。長らく新聞社の大阪勤務が続いていたが、スポーツの年史作りは何度か経験があったし、社会人になってもフットボールとかかわり続ける原点になったのが戸山だったので、覚悟を決めた。

 さて、どんな年史を作るか。他校の50年史を取り寄せ、眺めてみたが、どれもこれも気に入らない。確かにページは埋めているが、編集方針が伝わって来ない寄せ書きだったり、歴史の断片しか載っていなかったり。各代ごとに必死で取り組んだフットボールが50代続いていたはずだ。高校生の熱い息吹にあふれた50年史を作ろう。各代OBの代表者に「われらの3年間」をテーマに原稿を書いてもらうという編集方針は、早い段階で固まった。

皆さんに原稿を書いていただく以上、私自身が戸山のフットボールに精通している必要がある。だが、高校連盟には、タッチフットボール時代の公式記録すら残ってなく、実に暗澹たる思いに駆られた。頼りになったのが、田淵監督を通じて入手した「戸山高校新聞」の縮刷版だった。分厚い縮刷版の中から、生徒会予算配分、試合記録、合宿報告などフットボール関係の記事を引っ張り出して、年表を作った。これが、編集者として原稿を発注するベースとなった。

10月初めにOB会事務局を引き受けてもらっている田淵監督から、各代代表に原稿依頼を発注。12月末を締め切りとしたが、間に合ったのは10人足らず。2000年の年明けから田淵監督と手分けして執筆を督促、ようやく原稿の集まりがスピードアップした。最終的に、50人に現役代表を加えた原稿がそろったのは、記念式典1カ月余り前の6月14日。この間、いただいた原稿をチェックして筆者とやりとりした後に加筆補正したり、執筆辞退者の代役や写真を探したり、時間がいくらあっても足りなかった。しかも、4月に大阪から松山へ転勤という私的事情が加わり、編集作業に忙殺された。

しかし、実に楽しかった。数多くの先輩、後輩と会ったり、電話やメールで連絡を取り合ったりしているうち、三十数年前に卒業した戸山のフットボールが、眼前に大きく広がっていった。私が戸山の選手、コーチだった時代に直接知っていたOBからの原稿には、すっかり忘れていた当時の私の行状が書き込まれ、思わず赤面した。戸山フットボール50年史の編集制作は、自分自身の足跡をたどる自分探しの旅のようでもあった。多くの方から「ご苦労さま」とねぎらいの言葉をかけられたが、私は自分自身のために時間を費やしたのであって、むしろ、こうした作業に取り組む立場を与えられて深く感謝している。

百点満点とは言えないけれど、素晴らしい50年史となった。それは、戸山のフットボールが誰によって支えられ、半世紀の歴史がいかに刻まれてきたかが、各代を支えたOBによって浮き彫りにされているからだ。最初の読者だった私は、手元に届いた原稿の一つ一つに青春時代の汗と涙を読み取り、幾度感激したことだろう。1高校のフットボール史かもしれないが、日本のフットボール史、高校スポーツ史の貴重な資料となることを確信している。

原稿執筆と写真、資料、証言提供に協力してくれた皆さんにお礼を申し上げたい。皆さんの協力なくして、この50年史はできなかった。また、ひょんなことから連絡が取れた在ブラジルの2年後輩、海老沢研君(1971年卒)とは、メール交換により太平洋を隔てて編集作業を分かち合った。見出しについては、私と海老沢君の共同作業だったことを報告する。チームの現場を預かる田淵監督の手をわずらわさないよう努力したつもりだったが、結果的に大いなる手間を取らせて、力不足の先輩として誠に申し訳なかった。 50年史の発刊経費は、主として各代の同期広告によって賄われた。過ぎし日、米軍試合を観戦した高校生が自ら立ち上がって創部した、自主独立の戸山フットボールにふさわしい経費捻出だったと思う。

年史発刊と記念式典開催を2本柱とする50周年事業の目的は、古きOBのノスタルジアを満たすだけでない。もともと戸山のフットボールは、どのOB・OGに対しても、その後の人生に大なり小なりの影響を与えている。幸い今回の50周年事業によって、忘れかけた戸山のフットボールが再び身近に感じられるようになったOB・OGも多く、OB会の活性化につながるはずだ。振り返ってみれば、皆、「人生に戸山フットボールあり」だろう。50周年を機として、戸山のフットボールに学んだ仲間が世代を超えて交流を一層深めるとともに、現役部員がわれらの隊列に次々と加わることを念願している。

戸山高校アメリカンフットボール部50年史
発   行2000年7月22日(50周年記念式典開催の日)
編   集戸山高校アメリカンフットボール部OB会
編集責任者 須賀  潔(1969年卒)
Eメール fwnk4169@mb.infoweb.ne.jp
発 行 人戸山高校アメリカンフットボール部OB会
会長  日吉 信晴(1972年卒)
OB会事務局東京都世田谷区東玉川2−9−16 田淵方
Eメール tab@dkk.co.jp
(年史に誤りなどあれば、ご指摘を待ちます)