強度変調放射線治療 「トモセラピー」(IMRT)

   複数がん 撮影と共に撃つ

北海道の男性Aさん(56)は、今年1月の定期健診で肺がんが見つかった。心筋梗塞(こうそく)などの持病
があり、手術だと体に負担が大きいことから、帯広市の「北斗病院」で、「トモセラピー」と呼ばれる新しい放
射線治療装置による治療を受けた。エックス線を使った画像撮影装置と放射線照射装置を一体化させた機
器で、3か所あった病巣を同時に治療、2週間の通院で、がんは消えた。(科学部 高田真之)


手術に比べ、放射線治療は体にメスを入れないため、負担が少ない。特に最近は、放射線を患部の狙った所に集中照射する装置が普及するなど、進歩はめざましい。
Aさんのように、複数の部位にがんが広がる患者の治療で注目されるのが、「トモセラピー」だ。「トモ(Tomo=tomogram)」(断層写真)と「セラピー(therapy)」(治療)を合わせた造語。コンピューター断層撮影と、病巣を狙い撃ちする放射線治療の機能を併せ持つ。米国の医療機器メーカーが2003年に開発した。

装置は、巨大なドーナツ形の照射装置と寝台で構成されている。外観は、コンピューター断層撮影法(CT)診断装置と同じだが、寝台に乗った患者が、その場で画像撮影と放射線治療を受けることができる。一般的な放射線治療では、患者はCT撮影室で画像診断し、放射線治療室に移動して治療を受けるが、これでは照射の位置が病巣から外れる可能性がある。これを防いで正確な照射を行うため、撮影と治療の装置を合体させた。

ドーナツ形の装置には、可動式の長方形の照射口が1か所ある。これが1回転し、360度すべての方向から病巣部を狙う。照射口には、64枚に分かれたタングステン製の“ふた”がある。このふたをコンピューターで開閉させ、照射範囲や線量などを調節する。「強度変調放射線治療」(IMRT)と呼ばれる手法だが、複数の患部を同時に照射することができる点が、この装置の特長だ。

正常組織への影響を最小限にし、がんを効果的にたたくため、綿密な治療計画を立てる。まず、磁気共鳴画像(MRI)や陽電子放射断層撮影(PET)など複数の画像診断で、患部を正確に特定し、照射線量や照射時間などを計算する。治療当日は改めてトモセラピーの画像を、撮影済みのMRI画像などと重ね合わせ、位置、照射量などを最終的に決める。1回の治療は、準備時間も含め約15〜20分。照射時間は3〜5分と短い。

照射装置に合わせて寝台も動き、患者の頭部から足まで照射する。複数の患部を一度に攻撃でき、治療回数が少なくて済む。患部を様々な複数の方向から照射する通常の「三次元照射」に比べても、いっそう正確に照射できる。北斗病院では、2005年9月の導入以来、194人のがん患者に治療した。病巣が数か所あったり、脳や肺などに転移があったりする場合、従来の治療に比べ、病巣部が消失または縮小する患者が多いという。照射場所によって頭痛や下痢、だ液が出にくくなるといった副作用は生じるものの、従来の放射線治療に比べて少ない。

保険適用されるが、5億円程度と高価な機器なので、国内で導入した病院はまだ5か所。生存率など治療成績の検証が必要だが、同病院医師の小田京太さんは「今後は導入する施設が増えるのではないか」と話している。

治療対象となる疾患としては複雑な解剖を有する頭頚部がん、直腸・膀胱を避けて照射する必要のある前立腺がん、脳転移例などです。

トモセラピーを行っている医療機関
北斗病院(電) 0155・47・5000
日高病院 (群馬県高崎市)(電)027・362・6201
木沢記念病院 (岐阜県美濃加茂市)(電)0574・25・2181
名古屋第二赤十字病院 (名古屋市)(電)052・832・1121
愛知県がんセンター中央病院 (名古屋市)(電)052・762・6111