小湊鉄道・いすみ鉄道
〜千葉県の非電化ローカル線の旅〜
<はじめに>
小湊鉄道線は、五井−上総中野間の39.1Kmの非電化私鉄であり、いすみ鉄道線は、大原−上総中野間の26.8Kmの非電化第三セクター鉄道です。両線を直通する列車は無く、上総中野駅での乗換えが必要です。
運転本数は、小湊鉄道の五井−上総牛久間は日中時間帯、約1時間に1本、通勤ラッシュ時(平日)は約30分に1本の割合であり、上総牛久−養老渓谷間は日中時間帯、約2時間に1本の割合であり、養老渓谷−上総中野間は1日僅か5往復の運転なっており、五井−上総中野間の全線を走行する列車は4.5往復(土休日は5往復)となっています。(2006年11月時点)
五井−上総牛久間は住宅街を走る事から通勤・通学客の利用が多く、ATSが設置されていますが上総牛久−上総中野間は列車交換の待避線の撤去が行われ、1閉塞1区間として扱われ、タブレットによるスタフ閉塞となっています。
一方、いすみ鉄道は日中時間帯、約1時間に1本の割合で運転されています。小湊鉄道とは異なり、全区間にてATSが設置されています。
上総中野駅では小湊鉄道・いすみ鉄道の気動車が顔を合わせる。ただし、小湊鉄道は上総中野までの列車が1日5往復のみのため、両路線を乗り継ぐ際は時刻表等での確認が必要である。
菜の花と桜をバックに走るいすみ鉄道・いすみ200形。画像提供:T−rail応援団様。
桜と小湊鉄道キハ200形。画像提供:T−rail応援団様。
<歴史>
小湊鉄道は1925年に五井−里見間が開業し、1928年に上総中野まで全線開通し現在に至っています。開業当初はSLが客車を牽引する形で運転され、現在も五井機関区にて保管されています。小湊鉄道の社名の由来は当初、安房小湊まで路線を延ばす計画があった事が考えられます。
いすみ鉄道は1930年に、国鉄木原線として大原−大多喜間が開通し、1934年に上総中野間まで開通しました。当初、国鉄木原線は木更津と大原を結ぶ路線として計画されていました。木更津側からは、上総亀山まで開通したものの、上総中野まで延伸する事は無く、現在はJR久留里線になっています。しかし、国鉄木原線は利用客が少ない事もあり1981年に第一次特定地方交通線に選定され、沿線住民は乗車促進等を行ったものの、国鉄線としての存続は限界があったため第三セクター方式で存続させる事を決め、1987年に千葉県と沿線自治体、小湊鉄道等の沿線民間企業が出資した第三セクターのいすみ鉄道株式会社が設立されました。1987年4月1日に国鉄民営化によって木原線はJR東日本によって運営され、1988年3月24日にJR東日本からいすみ鉄道に経営が移管されました。
木原線は国鉄末期、キハ30・35形気動車が用いられていました。一時期はレールバスの試験走行に用いられた事もあり、現在はレールバスでの運転となっていることから、レールバスにゆかりがある路線とも言えます。
小湊鉄道・五井の車両基地(五井機関区)の様子。
上総中野駅から小湊鉄道・五井方面の様子。
<沿線の見所>
養老渓谷 交通案内:小湊鉄道線養老渓谷駅下車。渓谷散策(ハイキング)は2〜4時間が目安。
養老渓谷は小湊鉄道沿線を代表する観光地であり、年間を通してハイキング客で賑わいます。特に紅葉の時期(11月〜12月上旬)は観光客で賑わい、列車の両数も頻繁に増結されます。
養老渓谷駅から程近い渓谷橋から撮影した養老川と周辺の様子。
上総中野駅舎
小湊鉄道・いすみ鉄道の両線が接続する上総中野駅は、いすみ鉄道開業後に無人化され木造の小さな駅舎となっています。駅舎の隣には竹を模したトイレがあります。
上総中野駅は無人駅となっている。小さな木造駅舎はローカル線の風情に良く似合う!
上総中野駅の隣には、竹を模した公衆トイレがある。
上総中野駅舎と竹を模した公衆トイレ。
粟又の滝 交通案内:小湊鉄道・いすみ鉄道線上総中野駅からバス利用(運転日注意)
粟又の滝は房総地区でも規模が大きい滝です。特に、紅葉の時期(11月〜12月上旬)は観光客で賑わいます。
なお、上総中野駅からのバスは運転されない日もありますので、千葉県大多喜町のホームページ等で確認して下さい。
粟又の滝。新緑・紅葉シーズンは観光客やハイキング客で賑わう。
粟又の滝周辺の散策路の様子。
千葉県立博物館大多喜城分館 交通案内:いすみ鉄道線大多喜駅下車徒歩約15分。
入館料:大人200円、小・中学生100円。月曜・年末年始休館。
大多喜城と周辺の城下町は1590年に整備されましたが、現存する城は1975年に復元されたものとなっています。城内は千葉県立博物館大多喜城分館として、房総地方の城郭、武器や古文書などが展示されています。また、大多喜城は、いすみ鉄道線小谷松−大多喜間の車窓から見る事が出来ます。
いすみ鉄道の車内から見る事が出来る大多喜城。
房総中央鉄道館 交通案内:いすみ鉄道線大多喜駅下車徒歩約3分。
入館料:大人200円、小・中学生100円。金曜日・年末年始休館、その他臨時休館日あり。
房総中央鉄道館は大多喜駅から徒歩3分程の所にあります。館内は国鉄千葉鉄道管理局で実際に使われていた物や鉄道模型のジオラマなどが展示されています。
踏切と警報機が目印である房総中央鉄道館。
<車両>
小湊鉄道キハ200形
1961年に旧型気動車の置き換え用として2両が製造されたキハ200形は、1972年までに14両が日本車輌製造にて製造され、旧型気動車を置き換えました。キハ200形は内房線・千葉乗り入れも視野にして製造された事もあり、国鉄のキハ20とほぼ同じエンジンや台車が用いられました。車内はセミクロスシートのキハ20とは対照的にロングシートであり、エンジン出力はキハ20と同じ180馬力で1台が搭載されていて最高速度は95Km/hとなっています。製造時期が長いため、製造時期によってベンチレーターの形状などが異なっています。当初は非冷房車でしたが現在までに12両が冷房化され、冷房化された車両には前面に冷房車のステッカーが貼られています。
全車、五井機関区に所属していて、日中時間帯は1両または2両での運転ですが、混雑時は最大4両まで連結されます。
五井機関区にて休むキハ200形。手前の車両(初期車)と後ろの車両(後期車)とでは、屋根上のベンチレーターの形状が少し異なるのが見える。
小湊鉄道キハ200形。私鉄でありながらも前面を除きキハ20やキハ52に似ている。
3両編成のキハ200形の様子。
4両編成のキハ200形の様子。11月下旬〜12月上旬の紅葉シーズンの土休日に見れる確率が高い。
キハ200形は国鉄型気動車と同じく、サボが用いられている。現在の私鉄では珍しい。
キハ200形のテールライト(尾灯)は最後尾を示す事が出来るようになっている。左側に注目!
いすみ鉄道いすみ200形
1988年の開業に合わせて、富士重工業(現在の新潟トランシス)にて、レールバスタイプのいすみ100形が7両製造されました。いすみ100形はセミクロスシートでしたがその後、ロングシート化改造が施され形式も現在のいすみ200形に改番されました。
冷房装置は製造当初から装備されていて、エンジン出力は230馬力で1台搭載、最高速度が80Km/hとなっています。7両とも大多喜にある車両基地に所属しています。また、ワンマン運転に対応しています。
レールバスタイプのいすみ200形。
車体は沿線に咲く菜の花から黄色となっている。
<終わりに>
小湊鉄道は東京からも比較的近い事もあり、五井−上総牛久間は通勤・通学客も多く利用しています。その一方、上総牛久−養老渓谷・上総中野間はハイキング客等の観光客が主体となっている特徴があります。また、全列車に車掌が乗務していて、土休日の紅葉シーズン時には五井発養老渓谷・上総中野行きの列車には車掌が2人以上乗務しています。しかし、小湊鉄道の大部分を走る千葉県市原市は自家用車の所有率が約7割と高い傾向であり、鉄道利用客の減少が目立つようになった場合、1両の列車はワンマン運転が行われてもおかしくないと思います。
また、キハ200形は初期車で40年以上が経過している事から、近い将来、新型車両の導入も考えられるでしょう。
いすみ鉄道は小湊鉄道と対照的に通勤・通学客が少ない事や、観光地が少ない事もあり、毎年厳しい経営となっています。また、利用客の減少や車両の更新時期が近づいている事もあり、事業廃止も検討されています。
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