東京急行電鉄池上線
〜東京下町のローカル線〜
<はじめに>
東京急行電鉄(東急電鉄)池上線は、蒲田と五反田(ごたんだ)を結ぶ10.9Kmの路線で東京都心部では珍しい3両編成の電車によって運転されています。池上線は全列車ワンマン運転が行われていて、各駅のホームには“ホームセンサー”と呼ばれる安全柵が設置されていて、万が一電車発車時にセンサーをさえぎると緊急停止する仕組みになっています。日中は6分間隔で運転されていて、平日朝の通勤ラッシュ時は最多区間の雪が谷大塚−五反田間で約3分間隔で運転されています。通勤ラッシュ時は特に、荏原中延→戸越銀座間が混みます。
沿線には池上本門寺や洗足池など歴史ある名所が多いのもこの路線の特徴です。
東京都心部でありながらも3両編成の短い電車が走る池上線。写真は主力車の1000系。
ホームには各駅に安全柵が設置されている。
<歴史>
池上線は1917年に設立された池上電気鉄道(代表者:後藤国彦)によって、1922年10月6日に蒲田−池上間が開通しました。開業当初は1両編成の電車が単線運転を行っていた模様です。その後、部分延伸開通を経て1928年6月17日には蒲田−五反田間が全線開通しました。1934年10月1日に目黒蒲田電鉄(旧目蒲線)へ吸収合併され目黒蒲田電鉄池上線となりました。目黒蒲田電鉄は1939年に東京横浜電鉄(現在の東横線)と合併し東京横浜電鉄へ改称し1942年に東京急行電鉄へ改称し現在に至っています。その後、3両編成となり、長らくの間緑色の電車(旧3000系)が1989年まで活躍しました。
一時期、池上線は都営地下鉄三田線との相互直通運転が計画がありました。この計画によると、戸越銀座−大崎広小路間に地下トンネルの入口を設け、その先に桐ヶ谷駅を新設し大崎広小路−五反田間を廃止とし桐ヶ谷−五反田間に地下線を新設し五反田から先は三田まで都営浅草線と並行し三田線と直通する計画もありましたが結局、白紙になり都営三田線は2000年9月26日より東京メトロ南北線経由で東急目蒲線から分割された東急目黒線と相互直通運転を行う事になりました。
3000系以外の形式が池上線用として投入されたのは7200系であり、1984年から目蒲線用だった7200系が池上線用として3両2編成が入線しました。7200系は1967年から製造され、田園都市線や東横線などで活躍してきましたが8000系列の導入により大井町線や目蒲線へ転属されました。池上線に入線した7200系は冷房改造車であり池上線初の冷房車でした。7200系の製造当初は非冷房でしたが冷房化改造工事が施され冷房化は1987年までに終えました。その後、旧3000系を置き替えるため大井町線から7200系が池上・目蒲線に転属され、1989年に旧3000系は引退しました。旧3000系が姿を消した後、池上線は7200系と改造車の7600系に統一され、全車冷房化が実現しました。同時に、目蒲線は4両に輸送力増強がされると7200系は目蒲線から一時姿を消し池上線に集中配置されました。1992年には池上線に久々の新型車両である1000系が導入されました。この1000系は1991年に目蒲線に4両5編成が投入され、池上線入線に当たり3両5編成へ改められました。あまった中間車5両は1993年に製造された先頭車10両と連結しました。同年には3両1編成が池上線に投入されました。これにより、7200系10両が廃車となり上田交通(現在は上田電鉄)へ譲渡されました。1994年には7700系が3両に改められ池上線へ転属となり、1995年には7700系3両2編成が池上線へ転属となりました。これにより他の7200系は4両に組成され目蒲線へ転属され池上線から姿を消しました。(1997年頃一時的に3両1編成が池上線で活躍した)1998年3月からワンマン運転が開始されました。
池上線の冷房化に貢献した7200系は2000年8月6日の目蒲線の系統分割(目黒線、東急多摩川線)によって余剰となり廃車され30両が豊橋鉄道に譲渡されました。同年11月には7200系3両を用いてさよなら運転が行われました。
赤帯を外して運転された7200系さよなら運転。団体列車として運転された。
<沿線の見所>
池上本門寺 交通案内:東急池上線池上駅下車徒歩約10分。
池上本門寺は1282年10月に日蓮が息を引き取った所です。初詣や2月3日の節分豆まき、毎年10月の3日間にはお会式が行われ多くの人が足を運びます。池上線もこの時は臨時ダイヤで運転されます。寺内には五重塔があり、重要文化財に指定されています。
池上駅から歩いて一番最初に見えるこの門が総門である。大田区の重要文化財に指定されている。
石畳の階段を上がり見えてくるこの建物は仁王門。
本門寺大堂。
五重塔。国の重要文化財に指定されている。
本門寺本殿。
洗足池 交通案内:東急池上線洗足池駅下車すぐ。
洗足池駅の正面に見える洗足池はかつて、“千束池”と言われていました。現在の名称に改称されたのは1282年であり、日蓮が本門寺へ向かう際、千束池に立寄り、足を洗った事から洗足池に改称されたと言われています。池の中はボートに乗る事も出来ます。(有料)3月下旬から4月にかけて、桜が咲く頃は大勢の人でにぎわいます。
洗足池。
洗足池の中にある島は弁天島と言われている。
池の中に掛かる“池月橋”。
池の中はボートに乗る事も出来る。
戸越銀座商店街 交通案内:東急池上線戸越銀座駅下車すぐ。都営地下鉄浅草線戸越駅下車すぐ。
品川4大商店街のひとつである戸越銀座商店街は約1.6Kmの長さで直線距離で日本一長い商店街です。戸越銀座商店街は商栄会、中央会、銀六会の3つの商店街から成り立っています。ここ最近はテレビ局の中継にも取り上げられるようになりました。
商店街内には数多くの店があり、中には“お好みたいやき”を販売するユニークな店もあります。
夕方の戸越銀座駅近くの戸越銀座商店街の様子。買い物客でにぎわっている。
こちらは駅から離れたところ。
“お好みたいやき”を販売する夢のある街のたいやき屋さん。
こちらが“お好みたいやき”。お好み焼きの中の具をたいやきの中に入れた独特なたいやき。戸越銀座のほかにも何店舗かある模様。もちろん、あんこやクリームも販売している。(戸越銀座駅の改札を出て右に直進して徒歩約3分)
昭和のくらし博物館 交通案内:東急池上線久が原駅下車徒歩約10分
入館料:大人500円、高校生以下300円。休館日:月曜、年末年始。
民家であった住宅を1999年に博物館としてオープンしました。館内は昭和時代に用いられていた一般的な家庭の用具や道具、台所などが展示されています。建物は1951年に建てられたものですが住宅金融公庫の融資を受けて立てられた家です。2002年に国の登録文化財に指定されました。
昭和のくらし博物館。建物が昭和時代風で良い!
<車両>
池上線には1000系、7700系、7600系が所属しています。全車両、東急多摩川線と共通運用です。
1000系(3両13編成)
1000系は1988年より、日比谷線直通用として東横線に8両8編成が投入されましたが池上線には1992年に3両5編成が入線しました。これらの車両は1991年に製造された車両で池上線に入線する前までは目蒲線で4両編成で活躍していました。1993年に先頭車10両を増備し3両11編成体制となりました。2000年には東横線(目蒲線)から3両2編成が転属となり、3両13編成となりました。池上線用の1000系はワンマン化対応となっていて、運転台にはモニターが設置されています。(7700系、7600系も同じ)VVVFインバータを搭載し、最高速度は120Km/hとなっています。
池上線の主力車である1000系。池上・多摩川線用には1012F〜1024Fがある。このうち、1024Fは3両とも池上線に新製配置された編成である。
7700系(3両12編成)
7700系は1961年から製造された日本初のオールステンレスカーである7000系を1987年よりVVVFインバータ制御化改造と冷房化改造を行いました。池上線への入線は1994年からであり2000年8月6日の目蒲線系統分割によって、旧目蒲線で活躍していた7700系の多くが継続して使用される事から池上線でも頻繁に見られるようになりました。最高速度は120Km/hです。
7700系。写真のほかに歌舞伎編成が3編成(7912F、7913F、7914F)があるがこれらの編成が写真上の一般編成よりも先に池上線に入線した。
1996年に7712F、7713F、7714Fの池上線転属によって余剰となった中間車を改造して登場した7700系7915F編成。他の7700系とは異なりシングルアームパンタグラフなどを搭載している。
7600系(3両3編成)
7600系は1967年〜1969年にかけて製造された7200系を1984年〜1991年に冷房化・VVVFインバータ制御化に改造しました。改造後は大井町線で活躍していましたがその後、池上線へ転属されました。
1994年から1995年にかけてワンマン化工事、室内更新工事を受け現在のスタイルとなっています。最高速度は110Km/hです。また、2007年1月には7603Fのパンタグラフがシングルアームパンタグラフに交換されました。
7600系7603F。
<終わりに>
池上線は東京都心部にありながらも、3両編成の短い電車が走っているローカル線です。本門寺や洗足池など歴史ある施設・名所がある事から是非一度、沿線散策してみたら良いと思います。
また、2007年2月中旬には池上線の各駅についに、新型車両(仮称6000系)と思われるイラストが掲出されました!これによると、2007年度は3両2編成を導入し、2011年までに3両19編成を投入する模様です。これにより、製造されてから40年を越す7600系や7700系は順次置き換えられるものと考えられます。また、一部の1000系にも廃車が生じる可能性が出てきました。
新型車両の導入を告知するポスターによると、新車は緑色を基調としたデザインになるようである。
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