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映画講座(30)

より良いものを目指し、随時予告なく加筆訂正をしていきます。
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イマジナリーライン(3)

イマジナリーライン(3)

越えてはいけない一線、イマジナリーライン。
越えてこそ映画の醍醐味、イマジナリーライン。

イマジナリーラインを越えるとき、無難な方法は、越えてのワンカット目の画は、その人物配置が、再認識できるだけのある程度引いた画を見せることが、大事です。最低でも相手をナメた画を作りましょう。
そうしないと、前にも述べた八つぁん熊さんがそっぽを向いた状態になってしまいますので、逆効果です。
こんな方法もあります。
人物Aを左目線で捉えていたものを移動ショット(または手持ち撮影など)で、イマジナリーラインを越えて右目線まで持っていく。そして、越えた側からのキャメラポジションで撮影していく。
いずれにせよ、その効果を出すには、「時計じかけのオレンジ」程ではないにしろ、その背景、雰囲気が変わった方が面白いと思います。

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「時計じかけのオレンジ」

たとえば・・・
喫茶店の窓際のボックスで向かい合って座っている男と女。
二人の別れ話の話し合いは、喫茶店の中から捉え、イマジナリーラインを越えないように撮影を進めていく。

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「さよなら!」と大声と共に立ち上がる女。
それをきっかけにカットは切り替わり、キャメラはドンデンに入り、道路側から望遠気味のレンズでガラス越しに二人を捉える。と同時に喫茶店内に流れていた音楽は消え、街の雑踏の音に切り替わる。キャメラ前に車が行き交い、ガラス越しの女の声は聞こえず、そのまま小走りに喫茶店を出てくる。
・・・とかね。

何気ないドンデンもあります。
川沿いの公園にある、川を見渡すようにしつらえたベンチ。
美しい川と共にそのベンチを後ろから捉えたショット。
そこにやってきて、川を見ながら腰掛けるアベック。(バックショットになりますね)
ここで、イマジナリーラインは、アベックの上に川と平行に引かれます。

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でもやっぱり、正面から二人の顔を見たいよね。
ここで、ドンデンに入って、二人の正面(川側)にキャメラが入っても全然奇異に感じられません。
これは、先の野球中継に準ずるのではないか知らん。
でも、だからと言って以降のカットは、慎重に進めなければいけません。

と、ここまでイマジナリーラインについていろいろと述べてきましたが、困ったことがひとつあるのです。
かの巨匠、小津安二郎の画の繋ぎです。
二人の会話風景を撮るとき、彼の場合、FSでの切り返しが多いです。


その場合の目線は、限りなくキャメラ目線(キャメラのレンズを見るような感じ)に近い、右目線あるいは左目線をとり、切り返してのもう一人の人物を捉えるとき、同じ目線をとらせているのです。
厳密に言えば、これはイマジナリーラインを越えていて、そのルールに反しています。
小津安二郎ほどの人が、イマジナリーラインを知らないはずはない。「FS」で「限りなくキャメラ目線に近い」というところがミソだと思うのですが、どうも説明がつかない。でも、違和感はない。
ま、言ってみれば、違和感なくその映画を観られれば、それで良しということでしょう。
では、今までのMASUDAの講義はなんだったんだ!(笑)
いずれにせよ、映画を撮る場合、イマジナリーラインの存在を充分理解した上で、それに準じたり、壊すなりして欲しいものです。
小津安二郎(wiki)LinkIcon

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「彼岸花」(goo映画)LinkIcon
予告篇(YouTube)LinkIcon
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小津安二郎の墓

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