危険物取扱者資格試験(甲種限定)


【前書き】

危険物取扱者試験は決して難しい試験ではない。にも関わらず、製造業関連の研究、開発、生産に

関する業務に携わる場合には非常に有効な国家資格であり、監督者レベルの権限を得られる。

もちろん、就職、昇進には有利な資格となることが多い。(特に化学系メーカー)

試験回数も多く、結構、リーズナブルな資格であるのでオススメしたい資格である。今回は、

大学卒程度の知識が必要な甲種資格を中心に紹介する。(受験資格があるなら絶対、甲種にすべき)

以下、試験情報は(財)消防試験研究センターの資料に基づく

【試験概要】

1.免状の種類

甲種 全種類の危険物
乙種 第1類 塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類などの酸化性固体
第2類 硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウムなどの可燃性固体
第3類 カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、黄りんなどの自然発火性物質及び禁水性物質
第4類 ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類などの引火性液体
第5類 有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物などの自己反応性物質
第6類 過塩素酸、過酸化水素、硝酸などの

甲種は1回の試験で上記全類の危険物について熟知しなければならない。

乙種を6類受験し、合格すれば甲種と同等の取扱いができるが、免状の格が変わることは無い。

つまり、甲種は乙種の6回よりも価値がある資格といえる!

2.受験申請

  (財)消防試験研究センター各道府県支部に郵送する。(願書は各消防署に配布されている)

   受験料は、下記受験料を郵便局窓口払い込み。

甲種 5,000円
乙種 3,400円
丙種 2,700円

  試験の時期、回数は都道府県で異なるが、主要都市なら甲種は年3回程度行われる。

3.甲種受験資格

 ・大学等において化学に関する学科等を卒業した者

   → 卒業証明書提出

 ・大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者

  → 単位修得証明書提出

 ・乙種危険物取扱者免状の交付後、危険物製造所等における危険物取扱いの実務経験が2年以上の者

  → 乙種危険物取扱者免状及び乙種危険物取扱実務経験証明書提出

4.試験科目

試験時間は、2時間30分の5択マークシート方式

種類 試験科目 問題数
甲種 危険物に関する法令 15
物理学及び化学 10
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 20
乙種 危険物に関する法令 15
基礎的な物理学及び基礎的な化学 10
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 10

マークシートとはいえ、答えが1つとは限らないし、組み合わせの問いもあるので記述レベルの知識は必要。

5.合格基準

試験科目毎の成績が、それぞれ60%以上の成績を修めた者を合格とする。

※合格率は都道府県で異なるが、合格率はだいたい10〜35%程度。

 


【試験対策】

1.受験準備講習会(防災指導協会主催)

  受講料:9000円(神奈川県の場合)

  乙種レベルなら会社で出資、講習してくれることが多いが、甲種はまず無い。甲種対策なら自腹で参加する

  ことになる。必修ではないが、「危険物取扱必携」という教科書2冊と甲種専用の問題集を1冊得られ、講師も

  最低必要なところを優先にチェックしてくれるので効率は高い。

  私も受講した。この講習会でいただいたテキストと問題集をやっただけだが、合格には十分な内容だった。

  講習は平日中心に朝から夕方まで1日中行われるので、時間の無い人には、講習会の参加よりテキストを

  もらうだけでも十分有効と思う。講習会は試験の2ヶ月前くらいにあるので、講習会後に全ページを一通り

  チェックできれば、特に法令については合格レベルに達するのでは。(私は1週間で一気に詰め込んだ)

2.各教科別

 ・危険物に関する法令 15問(9問以上の正解必要)

  乙種と同等だが、誰もが初めて知る内容なので化学が得意な人でも一番の難関になる。

  甲種の場合、全類の「指定数量」を覚えるだけでも一苦労。しかし、この問題は必ず出る。

  法令は街中の風景や会社の中での取り扱いなどを思い浮かべながらチェックすると覚えやすい。

  覚え方が曖昧だと、マークシート形式特有の似た選択肢に惑わされる。

 ・物理学および化学 10問(6門以上の正解が必要)

  甲種の場合、大学教養レベルの基礎化学が中心。大学院卒レベルの人なら特に勉強は必要無し。

  私もやらなかったが、この科目のおかげで法令に力を注げた。範囲は基礎化学〜化学熱力学の初歩レベル。

  組成の割り出し、凝固点降下やラウール則など懐かしいところを1度復習しておけば安全といえる。

  この科目に限っては、学生時代の教科書を引っ張り出す方が効率良い。

 ・危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 20問(12問以上の正解必要)

  法令の次に要チェックな科目。甲種の場合、第1〜6類までの危険物の性質、保管、消化方法を理解して

  おかなければならない為、対象の物質が多い。特殊な保管方法や消化方法が必要な物質は要注意。

  紛らわしい名前の物質も狙われる。(例えば、ニトロベンゼン。ニトロ化合物だが、第5類ではない)

  範囲が広く、問題数も多いので要注意な科目である。特色を見つめ楽しみながら覚えるとやりやすい。

  実験系の研究をやってきた人には、かなりアドバンテージがある科目。

3.参考書について

  私は先に述べた講習会で頂くテキスト以外には利用していない。本屋などで立ち読みなどをしたことがあるが、

  内容は「危険物取扱必携」以上では無い。カラーで見やすいかどうかくらいで、余分な知識なども増えそうだし

  シンプルさに欠ける参考書が多い。甲種を対象とした参考書は少ないので見つけるのも大変だと思うが。

  短期で一発合格を狙うなら準備講習会のテキストに絞るのが、シンプルで良い方法に感じた。

  過去問題等は公開されていないが、準備講習会の問題集や市販の参考書は似た形式になっているので、

  問題式の本なら十分、事前に慣れることができる。

 

【最後に】

試験時間は、ほとんどの人にとって十分すぎるくらいの時間を与えられている。見直しが一通りできてしまう。

大学受験と違って競争試験でなく、資格試験なので、やればやるだけ合格に近づく。

受験会場などは大学受験時代に感じた雰囲気と似ていて、直前まで廊下などで参考書を広げてチェックしている

人もいるし、昇格がかかって真剣な眼差しの中年の方もいて、この緊張感を感じるのも久しぶりの経験。

スキルアップになる資格であるし、この機会にコツコツ頭を使ってみるのもいいかも。(いつも使ってるって?)

 

 

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