身勝手絶対幸福論
いい加減にしてくれ。
離れてくれよ。
そこにいない主に向かって俺は吐きつける。
痛いんだ。
お前といると
いたいんだよ。
夜中に一人稽古をつける。
昼間もやってる、でも夜だってやる。
時間はいくらあっても足りない。
いくら練習してもまだまだ追いつけない。
世界の頂点になるにはこんなもんじゃまだ足りねェ。
稽古してりゃいいんだ。
何も考えたりせずに
体を鍛錬すりゃ
つまんねェ考えもふっとんじまう。
・・・・はずなのに。
最近はもうそれも効かない。
かえって静まり返った自分の体の中で、消化しきれないその考えだけが綺麗に浮き彫りになる。たまったものじゃない。
なあ、
俺を
狂わせる気か?
また自分を縛り付けるその男を思い浮かべる。
逞しい、しかしまだあどけなさの残る少年の姿を。
色に例えるなら赤。
期待に燃える赤。
希望に光る赤。
明るい赤色。
それは人を導く灯の色だ。
でも俺にとっては危険を知らせる赤。
毒々しいまでの真紅。
俺の狂気を引き出させそれを意のままに操る魔の色だ。
やめてくれ。
もうひきこまないでくれ。
どうせ
俺のものになりはしないのに。
そうだよな、お前が悪いんじゃない。
俺が
離れられないんだ。
悪いのは俺の方かもなァ。
だからってハイそうですかって引き下がれやしねェ。
もうだめなんだ。
俺もうだめなんだ。
てめェ以外にゃ何も見えねェようになっちまった。
だから、アレだ。
お前を俺が
引き込めばいいと思わねェか。
イヤダなんて言ってくれそうだがよ、俺ァしつこいぜ。
そうと決めたら絶対引き下がんねェので、覚悟してくれ。悪ィな。
でもよ、
その方がお前だって
絶対幸せだろ?
終
戻