自閉症と水銀自閉症の原因として水銀が指摘されています。 1.後期発症タイプの自閉症水銀が自閉症に関係があると考えられるようになったのは、MMR(はしか、おたふく風邪、風疹)という三種混合ワクチン注射が原因でした。 このような経験をすれば、親なら誰でも、自閉症を発症したのはワクチン注射が原因だと考えるはずです。 (日本では、おたふく風邪ウイルスによる無菌性髄膜炎の副作用が相次ぎ、MMRワクチンの接種はわずか4年で中止になりました。この間、自閉症の発症率が上がったといった統計的な変化はなかったそうです。) ワクチン注射を契機として自閉症を発症したというケースが多数報告されて、後期発症タイプの自閉症の原因のひとつとして、水銀が大きな問題になりました。 そして、アメリカでは、ワクチンの防腐剤として水銀化合物が使われなくなりました。 しかし、ここで問題となるのは、後期発症タイプの自閉症が発症したきっかけは様々あるという点です。 ◎自閉症には後期発症(折れ線グラフ)タイプと早期発症タイプとあります。 後期発症タイプの発症の契機 ブローネ著、『自閉症の表現』より 突然の激しい恐怖:注射、予防接種、サイレンの音など 北畠道之著、『心のパズルが解けた』より 外科手術 このように、後期発症タイプの発症の契機は様々あります。 引っ越しや次子誕生が自閉症の原因というのは明らかにおかしいです。 発症するきっかけには様々ありますが、前半の病気といった身体的なトラブルが原因になっているケースと、後半の母子分離などの精神的なトラブルが原因になっているケースの2つに分かれます。 ということは、身体的な理由でも、精神的な理由でも、自閉症を発症するということです。 2.全面的な恐怖症の発症私は、後期発症タイプの自閉症は、幼児期における全面的な恐怖症の発症が原因だと考えています。 したがって、身体的なトラブルでも、精神的なトラブルでも、いずれにせよ幼い子どもがなんらかの恐怖を感じたのがきっかけだと推測しています。 広場恐怖症ともいわれているパニック障害が発症するのは、身体的なストレスや精神的なストレスが増しているときに、特に原因はないのに、とつぜん恐怖感が現われ発作が起きたのがきっかけだそうです。 ときおりパニック発作が起きるのはふつうのことです。過労やストレス過剰のとき、体調が悪いときなど、ほとんど誰にでも起こります。ときおりパニック発作が起きるのは病気ではありません。ボストン大学の心理学教授で不安関連障害センター所長のデイヴィッド・H・バーロー博士は、以前、恐怖症学会で次のように言っています。「どの年をとってみても、おそらく人口の3,40%がパニック発作を起こしています。」(『パニック障害からの快復』、49ページ) どの年をとってみても、3,40%がパニック発作を起こしているとすれば、乳幼児の一部が恐怖を感じて全面的な恐怖症を発症したとしても不思議ではありません。 恐怖を感じて恐怖を無視したというケースが、全面的な恐怖症が発症する原因ではないかと想定しています。 恐怖感を表現しないで抱えていると、恐怖感が放出されないので、そのまま残ってしまいます。 昔は、未熟児や新生児は、麻酔なしで手術がおこなわれていたそうです。 おなじように、乳幼児は恐怖感を無視するという能力を持っているのだと推測します。 全面的な恐怖症を発症すると、母親のそばにいれば安らぎがうまれるという脳の機能が、機能しなくなってしまいます。 3.早期発症タイプの自閉症後期発症タイプの自閉症を発症するひとつの契機として、ワクチン注射があるというのは確かです。 問題は、早期発症タイプの自閉症にも水銀が影響しているのかどうかということです。 それには3つの理由があります。 1: 水俣病も水銀が原因でしたが、水俣で自閉症が多発したという報告はありません。 2: 水俣病では脳がダメージをこうむっていますが、身体も脳性マヒのような重篤なダメージを受けています。 ダウン症でもそうですが、脳がダメージを受けると、身体もダメージを受けるケースがほとんどです。 3: アメリカでは、ワクチン注射に水銀化合物が使われなくなりましたが、自閉症の発症率が減少したという報告がありません。 ここまでは一般的な発想です。 しかしこのように考えたとしても、水俣で自閉症が多発したという報告もないし、最近自閉症の発症率が下がったという報告もないので、刷り込みと水銀も関係がないと考えることができます。 4.キレートの効果では、水銀を除去するというキレートに効果があるのでしょうか? 水銀を除去して自閉症が治ったという報告は、私が知る限りではありません。 自閉症の子どもで、自傷やこだわりなどの症状が重くなるときがあります。 身体的な問題には、病気以外にも体調や体質といった問題があります。 身体にはビタミンが必要なように、多くのミネラルも必要です。 したがって、検査をしてもしも水銀が多いようであれば、キレート(除去)をおこなう意味があると考えます。 しかし、キレート剤での治療は、副作用もあり危険だという指摘があります。 また、体調や体質の改善という同じ理由で、もしも食物アレルギーがあれば、アレルギー食品の除去をおこなうと、自閉症の症状が軽くなるという可能性が高いです。 アトピーの治療で食事療法をおこなったら、自閉症の症状が軽くなったという報告がありました。 私は、水銀は自閉症の原因ではないのだから、水銀を除去しても自閉症の症状は変わらないはずだと、目くじらを立てて反対する根拠はないと考えています。 水銀が自閉症の原因ではないとしても、水銀の除去が自閉症の症状を改善する可能性はまったくないとは言い切れません。 追伸水銀説は、折れ線グラフタイプの自閉症の原因として議論されています。 現在の自閉症は、カナータイプが3割でアスペルガー症候群や高機能自閉症が7割です。 したがって、水銀説はアスペルガー症候群や高機能自閉症を含んでいません。 水銀説は、自閉症スペクトラムでも3割のカナータイプにしか通用しない仮説です。 仮説としてもかなり限定的です。 |