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2006年10月15日、東京大学で開かれた教育哲学会第49回大会で口頭発表した内容に加筆修正したものです。 私は教育哲学会に15年ほど在籍し、10回ほど口頭発表をしました。 愛の起源1.母親への愛赤ちゃんの母親への愛着は、生後6ヶ月から9ヵ月ごろにうまれると考えられています。人見知りや母親への後追い行動が、この頃にはじまるからです。人見知りがはじまるのは、母親と見知らぬ人と識別ができるようになったからだと解釈されています。 愛着はどうやってうまれるのでしょうか?では、赤ちゃんの母親への愛着はどのようにしてうまれるのでしょうか?常識的には、授乳をしたりおむつを替えたりといった養育行動によって、不快が癒され快がうまれるので、養育をおこなう人にたいして愛着がうまれると考えられそうです。ところが、そうとは言いきれないのです。 ハーローの実験で、アカゲザルの赤ちゃんは、哺乳瓶がセットされた針金で作られた人形より、哺乳瓶がセットされていない布で覆われた人形に愛着を示しました。このことから、愛着の形成には、食欲を満たすといった授乳は重要ではなく、皮膚接触(スキンシップ)が重要だと解釈されました。 しかし、発達心理学者であるバウアー博士の双子の姉妹は、ちょうど1歳のときに、一人が伝染性の病気にかかって高熱を出した為に部屋を別にしたのですが、健康な方の赤ちゃんは、二人を一緒にするまで、親があやしても泣き止みませんでした。分離不安を示したのです。双子はそれまで、お互いに養育行動はまったくしていないし、抱き合うといったスキンシップもほとんどしていないのに、愛着が形成されていました。 バウアー博士は、双子の赤ちゃんは声をまねたり微笑あったりといった、社会的なコミュニケーションをしていたので、コミュニケーションによって愛着がうまれると解釈しました。 しかしこの解釈では、人形はコミュニケーションをしないので、アカゲザルの赤ちゃんが布で覆われた人形へ愛着を示したことが説明できません。結局、愛着がどうやってうまれるかは謎なのです。 愛着はいつうまれるのでしょうか?小児科医の柳澤慧先生は、「乳児の1か月検診になると、すぐ近くにいる私や看護婦さんなどには目もくれず、赤ちゃんから1メートルは離れてわきに立っているお母さんを目でずっと追っているのにはいつも驚かされます。」、と書いています。 赤ちゃんは、生後1ヶ月で、母親と見知らぬ人とを識別しています。母親と見知らぬ人と識別するのに、6ヶ月もかかりません。しかも、母親だけを見ていて、ほかの人には目もくれません。なぜでしょうか?母親のことが好きになっているからではないでしょうか? デズモンド・モリスは、「赤ん坊は、母親のにおいを驚くほど早い時期に嗅ぎ分けるようになる。分娩後、寄り添って過ごした母子を観察したところ、新生児は生後わずか四十五時間で、実の母を他の母たちから体臭のみで識別できるとわかった。」、と書いています。母子同床であれば、赤ちゃんは生後2日目には、匂いで実の母親を他の母親から識別できるようになります。(『赤ん坊はなぜかわいい』、p76) これは、母親の乳パッドと他の母親の乳パッドを新生児の顔の左右に置くと、新生児は母親の乳パッドの方へ顔を向けるという、実験で解ったのです。この実験で見逃してならないのは、実の母親の匂いを、他の母親の匂いと識別したという、嗅覚の鋭さもさることながら、母親の匂いがする方に顔を向けたということです。これは、生後2日目には、母親の匂いを特定しているだけではなく、母親の匂いが好きになっている、ということを示しています。 また、井深大氏が、ベネズエラの国立産院を訪ねたときのことを報告しています。ベネズエラでは、お母さんが出産で入院するのは3日間だけだそうです。2日目に、赤ちゃんを真ん中にして、お母さんが一方から、反対側から他の人が、その子の名前を呼ぶそうです。すると、何回やっても、お母さんの方を向くそうです。お母さんに、あなたと赤ちゃんとの絆がいかに強いか、ということの証拠を見せてあげる為に行われているそうです。(『親と子の絆』、p284) この例でも、生後2日目には母親の声を聞き分けているという、聴覚の鋭さもさるものながら、母親の声のほうを向くということが重要です。生後2日目には、母親の声を特定しているだけではなく、好きになっています。 また、大藪泰の『新生児心理学』、という本のなかに、「日齢2日の新生児が、母親の生の顔と見知らぬ女性の生の顔とでは、母親の顔を長く見た」、とあります。母親の顔を長く見たというのも、母親の顔を識別したということだけでなく、生後2日目には、母親の顔を特定し、好きになっているということを示しています。 生後2日で、新生児は母親の匂い、母親の声、母親の顔を、他の母親と識別し特定しています。そして、母親の匂いが好きになっていて、母親の声が好きになっていて、母親の顔が好きになっています。新生児の感覚はまだ分化していないで、共感覚だという指摘があります。 ということは、母親をすべての感覚を動員して特定していて、好きになっているということを意味しています。赤ちゃんは、生後1ヶ月で母親のことが好きになっているだけでなく、生後2日で母親を特定し、母親のことが好きになっています。 ところが、日本でただ一人自宅出産をおこなっている産婦人科医の大野明子先生は、書いています。 (出産直後から母親に抱かれていた赤ちゃんは)、体重を測り、洋服を着せるだけの間の、ごくわずかな時間、お母さんからほんの少し、30センチほど離れただけなのに、さっきまで静かだった赤ちゃんが泣いたりします。お母さんにもう一度抱っこされると、すぐ泣きやみます。うまれたときから赤ちゃんは、お母さんがこんなに好きです。 大野先生は、赤ちゃんはうまれたときからお母さんが好きです、と書いていますが、母親はうまれた赤ちゃんが我が子だとわかりますが、うまれたばかりの赤ちゃんは誰が母親かわかりません。誰が母親かわからなければ、うまれたときから母親が好きです、というのは成立しません。母親として認知する課程が必要です。したがって、母親への愛はうまれたときからあるのではなく、出産後早期に形成されるはずです。 母親への愛が出産後早期に形成されるのであれば、それは鳥類の刷り込みと同じです。ということは、ヒトも刷り込みによって母親への愛が形成されているのではないでしょうか? 2.刷り込み動物行動学者のローレンツが、刷り込みという現象を発見したのは、孵化したハイイロガンのヒナがローレンツを母親とみなして後を追いかけて来たからでした。鳥類の場合は、刷り込みをおこなわないのは一部の原始的な種に限られるそうです。高等な種はすべて、刷り込みによって自らの属する種を特定し、母親を特定します。 哺乳類の刷り込みでは、哺乳類はどうでしょうか? 哺乳類は、うまれてすぐに歩けるようになる牛や馬などの早成種と、ヒトのようにしばらくの間は歩けない晩成種に分かれます。牛や馬などの早成種の赤ちゃんは、うまれて1時間もすると母親の後を追うようになります。これほどはやく母親の後を追うようになるというのは、ハイイロガンとおなじです。哺乳類の早成種も刷り込みをおこなっている可能性があります。 カバは早成種ですが、動物園のプールでうまれた赤ちゃんが、最初に父親のお腹に触れたところ、母親からは逃げて回って、2日で死んでしまったそうです(亀井一成)。これは、水中で父親の匂いを刷り込んだので、父親を追いかけ、母親の匂いを拒否したと解釈できます。したがって、哺乳類の早成種も刷り込みをおこなっていると考えることが出来ます。 早成種の場合は、刷り込みによって後追い行動がうまれるとともに、異質な対象への拒否反応が現われます。刷り込みの後に現われるこの拒否反応を、新生児人見知りと名付けました。新生児人見知りが観察できれば、刷り込みがおこなわれたと解釈することができます。 哺乳類の晩成種の刷り込みでは、哺乳類の晩成種はどうでしょうか?ネコは晩成種です。我が家のメスネコは年に3回ほど子ネコを産みます。あるとき、子ネコを産んで3時間ほどで、母ネコが水を飲みに巣箱から出ていきました。 そのときに、何匹生まれたのか確かめようと、巣箱をのぞき込むと、手前にいた2匹の子ネコが怒って私を威嚇しました。まだ目は開いていないので、私の匂いを拒否したはずです。母ネコの匂いを刷り込んでいたので、私の匂いにたいして新生児人見知りをしたのです。 子ネコは1週間ほどで目が開きますが、巣箱をのぞき込んだときにはじめて目が合うと、ほとんどの子ネコが怒って私を威嚇します。私の顔にたいして新生児人見知りをしたのです。ただしこの威嚇は、ほとんどの場合、1回しか観察できません。2回目には怒りません。1回目に何事も起きなければ、敵ではないと1回で学習します。 1年ほどあとですが、また、子どもを産んで3時間ほどで母ネコが巣を離れました。そこで実験をしました。1匹を巣の入り口から10センチほどのところに出しました。すると、すぐに1,2回泣きました(3匹のうち2匹が泣いて、1匹は泣きませんでした)。そして、30秒ほどで這って巣へ戻りました。 これは、巣の匂い(母ネコの匂い)への後追い行動だと解釈できます。まだ目が開いていないし、ゆっくりしか這うことができないので、母ネコの後を追うことはできません。しかし、巣へ戻るという、巣の匂い(母ネコの匂い)にたいしての後追い行動がうまれていました。 晩成種の子ネコは、出産後3時間で、巣から出すとちょっと泣くという軽い分離抵抗をあらわすこと、匂いを嗅いで巣へ戻るという後追い行動が観察できること、匂いが異なる私を拒否するという新生児人見知りが現われること、などによって出産後早期に匂いによる刷り込みをしていることが確認できました。では、ヒトの赤ちゃんはどうでしょうか? ヒトの刷り込み「いつも看護師と一緒にいる未熟児が、面会に来た母親を見たとたん、泣き出してしまったのです。赤ちゃんに会うことを心から楽しみにしていた母親はショックを受けました。そこで私は、看護師と同じように、母親にもマスクをつけてもらうことにしました。すると赤ちゃんはピタリと泣きやみました。」と、赤ちゃん学会の理事長の小西行郎先生は書いています。 これは、ヒトの赤ちゃんが新生児人見知りをしたという報告です。マスクをつけている看護師さんの顔を刷り込んでいたので、マスクをつけていない母親の顔にたいして、新生児人見知りをして拒否したのです。小西先生は、この出来事によって、ヒトの赤ちゃんも刷り込みをおこなっていることを認めています。 また、前記の大野先生が書いていた、お母さんからたった30センチ離しただけなのに泣いてしまう、という新生児の例が、軽い分離抵抗にあたります。巣から10センチ離しただけで子ネコが泣いたのとおなじです。おそらく、子ネコとおなじようにお母さんの匂いを刷り込んでいたのだと思います。 ヒトの赤ちゃんにも、新生児人見知りや、軽い分離抵抗が観察されます。また、哺乳類でヒトよりも原始的な子ネコが刷り込みをおこなっているのであれば、哺乳類でもっとも高等なヒトが、刷り込みをおこなっているのは不思議ではなく、当然だと考えることができます。したがって、ヒトの赤ちゃんも刷り込みをおこなっていると考えて間違いありません。 ヒトの赤ちゃんの母親への愛は、刷り込みによって出産後早期にうまれます。 3.恐怖感と愛着行動母親への愛が刷り込みによって出産後早期にうまれるとしたら、なぜ、愛着は生後6ヶ月から9ヵ月ごろにうまれると考えられてきたのでしょうか? ハーローによると、アカゲザルの恐怖反応は、生後70日から90日で成熟するそうです。子ネコは、生後28日では掃除機をほとんど恐がりませんが、生後30日では少し恐がるようになります。したがって、子ネコの場合は生後28日から30日ごろに恐怖感がうまれてくると考えることができます。 下半身が麻痺している人は恐怖を感じるそうですが、首から下が麻痺していて4肢が動かせない人は恐怖をほとんど感じないそうです(D.W.グッドウィン著、『恐怖症の事実』)。動けなければ逃げることもできません。逃げることができなければ、恐怖を感じても意味がないので、恐怖を感じないというのは合理的です。動物は、満足に動けないうちは恐怖を感じないようにできているようです。 ヒトの赤ちゃんの場合は、生後6ヶ月過ぎまで、恐怖感は観察されないという報告があります(スターン)。生後6ヶ月までは、赤ちゃんは恐怖を感じないので、当然、見知らぬ人を恐がりません。また、母子分離にも分離の恐怖を感じません。生後6ヶ月を過ぎて、恐怖感がうまれることによって、はじめて、母子分離にも恐怖を感じるようになります。 たとえば、新婚の奥さんは、毎朝、夫が仕事へ行くのを見送っても泣きません。夫がいなくても悲しむどころか、買い物に行っても幸せいっぱいで、ニコニコしていて、誰にでも笑顔をふりまきます。これは、夫への愛がないということでしょうか?そんなことはありません。愛で満たされていて幸せだからニコニコしているのです。別れるときに泣かないからといって、別れてもニコニコしているからといって、愛がないとは言えないのです。 ところが、夫が兵士として戦場へ行く別れであれば、激しく泣くはずです。別れに不安や恐怖感が伴うからです。新婚の奥さんが別れにさいして泣くか泣かないかは、愛があるか無いかではなく、不安や恐怖感があるか無いかの違いです。同じように、生後6ヶ月前の赤ちゃんが母子分離に泣かないのは、愛が無いからではなく、恐怖感がないからです。 赤ちゃんの母親への愛は、刷り込みによって出産後早期にうまれています。そして、生後6ヶ月すぎに恐怖感がうまれてくると、人見知りがはじまり、母子分離にはげしく泣くといった、愛着行動がうまれてきます。赤ちゃんの母親への愛は行動としては観察しずらいです。生後6ヶ月以降に現われてくる愛着行動が、観察しやすくて際立っていたので、これまで、生後6ヶ月以前は、母親への愛はうまれていないと誤解されてきたのです。 生後6ヶ月から9ヵ月という、今まで愛着の形成期として解釈されてきた時期は、愛着の形成期ではなく、恐怖感の成熟期だったのです。母親への愛は、刷り込みによって出産後早期にうまれています。 4.刷り込みの特徴刷り込みには、多くの特徴がありますが、なかには誤解されている特徴もあります。それで、刷り込みの代表的な特徴を挙げておきます。しかし、刷り込みの研究はあまりおこなわれていないので、刷り込みの全貌はまだ掴めていません。 愛と信頼がうまれるローレンツを刷り込んだヒナは、必死に走ってローレンツの後を追いかけました。それは、離れると不安や恐怖がうまれるからです。そして、そばにいるだけで満たされ、安らぎがうまれます。そばにいるだけで満たされるというのは、愛がうまれたと解釈できます。また、そばにいると安らぎがうまれるというのは、信頼がうまれたと解釈できます。したがって、刷り込みによって母親への愛と信頼がうまれると解釈できます。 感受期と臨界期がある刷り込みは数秒で行われます。思春期の一目ぼれに似ています。というよりは、刷り込みのほうが先なので、思春期の一目ぼれが刷り込みに似ているのです。また、刷り込みが行われるのは出生後の早期に限られ、刷り込みの感受期と呼ばれています。 ハイイロガンのヒナは、孵化したすぐは羽もぬれていて顔もあげられないそうです。したがって、まだ刷り込みの感受期ではありません。孵化してしばらくして、羽もかわいて顔を上げてあたりを見回すようになってからが刷り込みの感受期になります。ヒナがあたりを見回したときに、ヒナとローレンツは目を合わせました。そして、ヒナはローレンツを刷り込んだのです。 また、それ以上遅れると刷り込みができなくなるという臨界期があります。臨界期は種により異なります。ティンバーゲンによるとガチョウの臨界期は36時間ほどだそうです。しかし、18時間を過ぎると、刷り込みが不十分になり、よそよそしさがうまれるそうです。 愛の広がりと転移いったん刷り込みが行われると、取り消すのは極めて難しいです。ただし、母親を刷り込んでも父親や兄弟にも愛が広がります。また、幼いうちであれば、養子になり養親に愛を形成することができます。刷り込みは、消去は難しいですが、広がったり、転移する性質があります。 ローレンツによると、母鳥を刷り込んだハイイロガンのヒナは、どんなに訓練をしても人の後を追うように学習させることは難しいそうです。しかし、人を刷り込んだヒナであれば、他の人の後を追うように学習させることは難しくないそうです。また、子ネコは、(はじめは人を見て威嚇しますが)、母ネコから飼い主へと、種が異なっても愛を転移させることができます。 発達心理学者のバウアー博士は、養子縁組が可能で養い親にも愛着を形成できるので、ヒトの愛着の形成は鳥類の刷り込みとは異なると解釈しました。そして、ヒトの刷り込みを否定し、愛着はコミュニケーションによってうまれると解釈しました。しかし、鳥類も養子が可能です。小西先生は、母親を人見知りして泣いた未熟児も母親に愛着がうまれるので、ヒトの刷り込みは重要な意味を持たないと解釈しました。2人とも刷り込みの性質を誤解しています。 4.種を刷り込む視覚による刷り込みは、はじめは個が特定されていません。ハイイロガンのヒナは、巣立ちしたはじめの日は、ハイイロガンなら誰でも前を歩くと付いていくそうです。ハイイロガンのヒナが母鳥を特定するには、2〜3日かかります。ヒトの赤ちゃんも、母子同床であれば、生後2日で、匂いでも声でも顔でも自分の母親を他の母親から特定できるようになります。ハイイロガンとおなじです。 私たちも牧場へ行ってはじめて牛を見て、目が合った牛に一目ぼれをしたとしても、その牛が群れのなかに入ってしまえば、どの牛だったか解らなくなってしまうはずです。個体の識別ができるようになるには、それなりの経験と時間が必要です。ただし、牛と馬のように種が異なれば、経験がなくても識別できます。これが新生児人見知りです。 (カバの嗅覚による刷り込みは個体を識別していました。嗅覚は視覚よりも個体識別の精度が高いです。警察犬は匂いで犯人を追いかけることができます。) ローレンツと目を合わせたハイイロガンのヒナが、ローレンツを母親とみなして追いかけたという逸話は有名です。しかし、大男でひげをはやしたローレンツと、中背で金髪の女性(たぶんローレンツの奥さん)と識別できるようになるのに3週間以上かかったそうです。ということは、後を追いかけるのは、ローレンツでなくてもヒトであれば誰でも良かったのです。はじめは、ローレンツを刷り込んだというよりは、ヒトを刷り込んだのです。 はじめは誰でも良いというこの刷り込みの特徴が、ヒトの刷り込みが認知されなかった原因のひとつになっていると思います。はじめ、赤ちゃんが視覚で刷り込むのは母親でなくても、産婆さんでも、人であれば誰でもいいのです。刷り込みは、はじめは個を刷り込むというよりは、個の特徴である種を刷り込みます。種を刷り込んだ後で、数日経ってから、個を特定します。 5.結語エリクソンは、基本的信頼を築くことが乳児期の発達課題だと解釈しました。しかし、母親への信頼は刷り込みによって出産後早期にうまれるので、信頼を築くことは発達課題ではありません。信頼を育てることが発達課題になります。 刷り込みによってうまれる母親への信頼は、はじめは小さいです。赤ちゃんの身体がはじめは小さいのとおなじです。はじめは、30センチ母親から離されただけで泣いてしまいます。したがって、赤ちゃんの身体を育てるのと同じように、赤ちゃんの信頼を育てることが発達の課題になります。 刷り込みによって生まれた母親への信頼が核となって、身近な人への信頼、仲間への信頼、人類への信頼へと、信頼は大きく広がっていきます。そうやって信頼が大きく広がっていくことによって、精神的に安定した大人になることができます。 また、信頼している対象は、守ろうとします。守ろうとすること、それは愛です。信頼が大きくなればなるほど、愛も大きくなります。 参考文献 |