野球好きのslycrowが、国土交通省の空中写真を使い全国の野球場の歴史や変遷、エピソード、自身の思い出などを紹介します。

      

<vol.1> 横浜スタジアム

 1977年夏。少しおめかしして中華街へ向かう。母の運転する車が花園橋にさしかかった時だった。眼前に飛び込む建設中の巨大な円盤型の建物。・・・いったい何ができるのか。9歳の時の鮮烈な記憶である。
 これが野球場であるとわかった瞬間、巨人一辺倒だった私は、ここ横浜にやってくる新球団のファンになろうと決心した。やがてそのチームが新球団でもなんでもなく、あのオレンジとグリーンのけばけばしいユニフォームでおなじみの弱小球団、大洋ホエールズであることを知る。しかしその事実を知ったのちも、私の決意は変わらなかった。少年は完全にこの美しい新球場に魅せられてしまった。あれから25年以上。その気持ちはいまも変わらない。
 


■横浜スタジアム(横浜市中区)
 
竣工;1978(昭和53)年3月 ●収容人員;30,000人 ●サイズ・形状;両翼94m、センター118m、人工芝、電光掲示板

 

●沿革
「浜スタ」のルーツは1874(明治7)年の居留外国人のクリケット場にまでさかのぼる。その後日本初の国際野球試合、ルース、ゲーリックなどが来日した大リーグの親善試合も行われた。終戦後、進駐軍により接収、「ゲーリック球場」と名付けられた。この時日本で初めての照明灯が設置され、1948(昭和23)年にはプロ野球初のナイトゲームが行われた。市に返還後は「平和球場」と名称を変えたが、1967年を最後にプロ野球のゲームには使用されなくなった。その後、署名活動により新球場建設が決定、1978(昭和53)年、横浜スタジアムとして生まれ変わった。

 

77年秋口くらいの撮影だろうか、鉄骨が組まれ、独特のティーカップ型のフォルムがすでに確認できる。スタジアムの工事着工は1977年4月とのこと。1年後には開場し公式戦を行っているので、かなりの突貫工事だったのだろうか。野球場は巨大な建物だが、その大部分はグラウンドなので、実際「建設」する部分は実は見た目ほど大工事ではではないのかも知れない。
左下の縞模様は首都高速横羽線。開通はスタジアムと同じ78年3月。川を埋め立てたトンネルを通り、「横浜公園」で高速を降りるために地上に上がると、すぐ左手にスタジアムの偉容が迫ってくる。それは子供ながらに「ハマっ子」であることをおおいに誇らしく感じる「近未来的」ロケーションであった。
 国土画像情報 CKT-77-1 昭和52年 「横浜」 C6B-38 1/8,000 より引用。
77年暮れぐらいだろうか。当時は珍しいY型の照明灯(当然YokohamaのY)が6基、もうすでに据え付けられている。スコアボードもほぼ体(てい)をなしているようだ。そういえば開場当時は今と違って灰色をしていた。このあと、国内の野球場では後楽園球場に次いで2番目に採用された全面人工芝が貼られていく。初めて観戦に訪れた時に見た、照明で照らされた緑の人工芝の美しさ華やかさは今も忘れない。マウンドは他イベントにも使用できるよう昇降式になっており、この写真からもわずかに様子がうかがえる。半月状の移動式スタンドの姿がまだ見えない。
 国土画像情報 CKT-77-1 昭和52年 「横浜」 C7B-22 1/8,000 より引用。
1988年の様子。開場から10年後の姿。開場当時からの変化はほとんどなく、内野席をファウルから守るネットが倍近く高くなったくらい。このネットは2005年シーズンからほとんど取り払われてしまったことはご存知のことだろう。その後大きな改良工事としては、電光掲示板のカラー化、ベンチ状外野席のシート化、ビクトロン演奏ブースの移動(その後撤去)などがある。当初売り物だった内野席移動によるアメフトフィールドへの変型は、固定してしまってもうできないと噂に聞いたが、公式サイトには何もかかれていない。ガセか?
 国土画像情報 CKT-88-2 昭和63年 「横浜」 C5B-6 1/10,000 より引用。

2003年3月1日、縞状の人工芝に変更になり初お披露目の日撮影。あれだけ評価の高かった人工芝だったが、まるで喫煙者のように最近は弊害のみがクローズアップされる。フィールドターフなどより自然に近い素材に進化してはいるが、メジャーのように天然芝へ回帰する日がやってくるかも知れない。この縞模様も、せめてルックスだけでも天然芝に近づけようという苦肉の策なのだろう。
「広い横浜球場」と言われたのはいつ頃までだろうか。今やこの球場の「狭さ」は12球団のホーム球場中3番目かそこらだ。どこかの外国人に「リトルリーグの野球場」と言われ、軽い屈辱感を味わったのはこの春先のこと。スタジアム開場からもう27年が経とうとしている
(この項終わり)。

  

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<参考文献>

ベースボールマガジン1997年夏季号 「1冊まるごと大特集・野球場」(ベースボールマガジン社)