πの音楽 

 円周率πの無限数列である、3.14159265…に対して、1=ド,2=レ,…8=上のド、というように音符を振り分けて、曲をつくった人がいる。ハセガワツヨシさんという数学教師で、ホームページでも公開しているので、ご存じの方も多いでしょう。(ハセガワさんのホームページは以下のとおり。πの数列からいろいろなスタイルの曲を作り上げています。必見の価値があります)

http://web.kyoto-inet.or.jp/people/haselic/

演奏テープを1000円で配布しているので皆さんも一つ買ってみては。私も以前購入しましたが、何ともいえない心地よい音楽で、私は、生徒にα波ヒーリング音楽だといって聴かせています。彼の凄いところは、単純に数を音に移し変えるというアイデアだけでなく、それを感動的な音楽に仕上げるというところです。

  ところで、このような手法で曲を作ったのは、ハセガワさん以前にもいて、レコードにもなっています。それは、日本のジャズ界では超有名、強烈なファンも多い(実は私も)山下洋輔トリオの、当時のドラマーであった小山彰太が作曲しています。

「寿限無 VOL.1」(山下洋輔の世界)のライナーノーツを見てみましょう。

 「1曲目の『π』又は『円周率』は、彰太の作。何とあのパイの数列『3.141592653569793…』 

 を40ケタまで音程に移し換えたという怪手法が用いられた。移し換えの原則はミュージシャン用 

 語の数字の数え方、ツェーマン、デーマン(1万、2万)というやつと同じだ。つまり、1=C,2=D,

 ……8=オクターブ,9=第9度(上のレ)。黒鍵が出てこないことになるが、かえってシンプルだが

 印象的なメロディーが発見されている(以下略・原文のまま)」(1981/8月)

 ところで、このライナーによれば、円周率を『3.141592653569793…』としていますが、これには1カ所間違いがあって、本当は、

3.141592653589793…』としなければいけません。

ただの誤植かと思ったのですが、17,8年前に山下洋輔氏が盛岡でコンサートを行ったときも、演奏前に洋輔さんが同じように間違った数列をそらんじていましたので、そのままで作曲されているのかな。聴いてみればわかりそうですが、こちらはハセガワさんとは違って超急速テンポで演奏されるのでちょっと私には聴き分けられません。

この時期、似たような手法で、落語の「寿限無」の「じゅげむじゅげむ…」の部分のリズムパターンをドラムで叩くというアイデアから、「寿限無」という曲や、「ピカソ」の正式名称が異常に長いところに目を付け、やはりそのリズムで「ピカソ」という曲を作ったりしています。

尚、山下洋輔氏は、ドイツの学者であり音楽家であるアデルハルトロイデンガーという人とアルバムを作ったことがあり、その中のグリーンウェイブという曲は、「音楽を時系列と捉え、最大の盛り上がりを、黄金分割の地点に置く」という手法をとっています。

    e の音楽

 自然対数の底であるeについても同様の手法で曲をつくることも可能でしょう。たぶん誰かがやっていることと思います。私も小数点以下121桁までの数でやってみました。ただ数列に音符をあてはめるだけだから、誰でもできるだろうと思われるかもしれませんが、音符の長さで曲調が全く変わりますので、かなり音楽的センスがないとだめです。わたしは作曲のセンスがないので挫折してしまいました。さらに、これにコードをつけたりということですから、大変です。ハセガワさんの凄さがわかるというものです。