パーマン1号は最初に任命されたパーマンである。
パーマンたちのリーダーを務める。
本名は「須羽みつ夫」。小学5年生。11歳。
わたしが、パーマンを藤子・F・不二雄の作品の中で最高傑作と思ったのは、
「パーマンはつらいよ」(コミックス4巻)を読んだときである。これを読ん
でわたしは泣いてしまった。みつ夫はパーマンという、つらい仕事に対して、
苦悩を抱きつつも、任務を遂行していく。普通の11歳では、このようなこと
は絶えられない。みつ夫は、パーマンの仕事を通じて、普通の小学生では成し
得ない成長をしていくのである。パーマンの基本はドジなスーパーマンという
ギャグなのだが、その中にみつ夫の成長というテーマを忍ばせているのである。
エバンゲリオンというアニメでは、主人公がみつ夫と同じように、苦悩を抱き
つつも戦うのだが、かなり重い表現をしている。しかし、パーマンには重さが
感じられない。このへんが、藤子・F・不二雄の表現のうまいところである。
みつ夫のつらさを列挙するとつぎのようになる。
・自分は望まないのに勝手にパーマンにされた。(「パーマン誕生」コミックス1巻)
・まったくの無報酬である。
・大怪我をしたり、命を失いかけたりした。
・妹が誘拐された。(「ガン子誘拐事件」コミックス2巻)
・毎日のように徹夜の仕事が続く。
・しかし、学校に行かなければいけないので、眠る暇がない。代わりにコピー・
ロボットに学校に行かせても、眠る場所が無いので、結局自分が学校に行く。
・学校で居眠りしてしまい、先生や母親にしかられたり、友達にバカにされる。
・パーマンの仕事で服を汚してしまい、母親にしかられる。
・先生や母親にだけ自分がパーマンであることを明かしても良いかバードマン
に許しを請うが、却下される。
・このように、いくらつらい思いをしても、感謝されてるどころか、しかられ
たりバカにされたりすることに耐えなければならない。
バードマンは、みつ夫に「自分に得にならなくても、褒められなくても、しな
くちゃいけないことがあるんだよ。」と言う。それに対してみつ夫は納得でき
ず、パーマンセットをバードマンに返してパーマンを辞めると宣言する。夜、
仲間から水害の救助に行くよう求められるが、みつ夫はもうパーマンは辞めた
からと言って断る。しかし、今夜はゆっくり眠れると思いきや、水害で困って
いる人たちのことを想像して眠れない。結局、みつ夫はパーマンになって救助
に向かうのである。それを見ていたバードマンは尋ねる。「なんの得にもなら
ず、人に褒められもしないのになぜ行くんだい。」みつ夫は「わからない。で
も行かずにはいられないんです。」と答える。みつ夫の後ろ姿にバードマンは
このように語りかける。「だれが褒めなくても、わたしだけは知っているよ。
君が偉いやつだってことを。」
この最後のバードマンのセリフが良いのである。これがなかったら、わたしは
涙を流すところまでは行かなかったと思う。バードマンは厳しい指導者ではあ
るが、みつ夫を心から愛し理解している人なのである。
2004年の映画では、似たような展開がある。スミレはみつ夫に「パーマン
は、なんのためにがんばるの?」と聞く。みつ夫は「みんなが「ありがとう」
て喜んでくれるとうれしくて、どんなに苦しくてもがんばれるんだ。」と答え
ている。それに対してスミレは「本物の正義のヒーローね。」と言うのである。
ここにも、みつ夫のことを心から愛し理解してくれる人がいる。
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