モーセ書




預言者ジョセフ・スミスに啓示された「聖書」の翻訳からの抜粋、1830年6月−1831年2月

第1章

(1830年6月)
神がモーセに御自身を現される。モーセ、変貌する。サタンと相対する。人々の住む多くの世界を見る。無数の世界が御子によって創造された。神の業と栄光は人の不死不滅と永遠の命をもたらすことである。

01 モーセが非常に高い山に連れて行かれたときに、神がモーセに語られた御言葉。
02 このとき、彼は顔と顔を合わせて神にまみえ、神と語り、神の栄光がモーセのうえにあった。それゆえ、モーセは神の臨在に堪えることができた。
03 神はモーセに言われた。「見よ、わたしは全能の主なる神であり、無窮とはわたしの名である。わたしは、日の初めもなく年の終わりもないからである。これは無窮ではないか。
04 また見よ、あなたはわたしの子である。それゆえ、見なさい。そうすれば、わたしはあなたに、わたしの手で造られたものを見せよう。しかし、すべてではない。わたしの業は終わりがないからである。わたしの言葉もそうである。それらは決して絶えることがないからである。
05 それゆえ、だれもわたしのすべての栄光を見ることなしに、わたしのすべての業を見尽くすことはできない。また、だれもわたしのすべての栄光を見ながら、その後、肉体をもって地上にとどまることはできない。
06 わたしの子モーセよ、わたしはあなたに一つの業を用意している。あなたはわたしの独り子にかたどられている。わたしの独り子は、現在も将来も救い主である。彼は恵みと真理に満ちているからである。しかし、わたしのほかに神はおらず、すべてのものはわたしとともにある。わたしはそれらすべてを知っているからである。
07 さて見よ、わたしの子モーセよ、この一つのことを、わたしはあなたに示す。あなたが世にいるからである。今わたしはあなたにそれを示す。」
08 そこでモーセは眺めて、自分が創造されて住んでいる世界を見た。モーセは世界とその果てと、現在いる人の子らと、過去に創造された人の子らのすべてを見た。そして、これらのことに彼はひどく驚くとともに、不思議に思った。
09 それから、神がモーセのもとから去って行かれたので、神の栄光はモーセのうえになく、モーセは一人残された。彼は一人残されると、地に倒れた。
10 さて、多くの時間が過ぎて、モーセは人としての本来の力を再び取り戻し、独り言を言った。「今これで、わたしは、人は取るに足りないものであることが分かった。このことは、思ってもみないことだった。
11 だが今、わたしは自分の目で神を見た。しかし、わたしの肉体の目ではなく、霊の目で見た。肉体の目では見られなかったであろう。神の御前では枯れて死んでしまっていたはずだ。しかし、神の栄光がわたしのうえにあり、わたしは神の御前で変貌したので、神の御顔を見た。」
12 さて、モーセがこれらの言葉を語ったとき、見よ、サタンが来て、彼を誘惑して言った。「人の子モーセよ、わたしを拝みなさい。」
13 そこで、モーセはサタンを見て言った。「おまえはだれだ。見よ、わたしは、神の独り子にかたどられている神の子だ。おまえの栄光がどこにあるので、わたしがおまえを拝まなければならないのか。
14 見よ、わたしは、神の栄光がわたしのうえに及んで、神の御前で変貌しなかったならば、神を見ることはできなかった。ところが、今わたしは肉体のままで、おまえを見ることができる。実にそのとおりではないか。
15 わたしの神の御名がほめたたえられるように。神の御霊はまだわたしから完全には退き去っていない。そうでなければ、おまえの栄光はどこにあるのか。それはわたしにとって闇だからだ。わたしはおまえと神とを区別することができる。神はわたしに、『神を礼拝しなさい。あなたは神にのみ仕えるべきである』と言われたからである。
16 サタンよ、退け。わたしを欺くな。神はわたしに、『あなたはわたしの独り子にかたどられている』と言われたからである。
17 神はまた、燃えるしばの中からわたしを呼ばれたとき、わたしに戒めを与えて、『わたしの独り子の名によって神に呼び求め、わたしを礼拝しなさい』とも言われた。」
18 さらにモーセは言った。「わたしは神に呼び求めることをやめない。わたしには神に伺うことがほかにもある。神の栄光がわたしのうえにあったので、わたしは神とおまえとを区別することができる。サタンよ、立ち去れ。」
19 さて、モーセがこれらの言葉を語り終えると、サタンは大声で叫び、地上でわめきたてて、「わたしが独り子だ。わたしを拝め」と命じて言った。
20 そこで、モーセはひどく恐れ始めた。そして、恐れ始めると、地獄の惨苦を目にした。それでも、彼は神に呼び求めたので、力を与えられた。そこで、彼は命じて言った。「サタンよ、わたしから離れ去れ。わたしは栄光の神であられるこの唯一の神のみを礼拝するからである。」
21 すると、サタンはおののき始め、地が揺れ動いた。モーセは力を与えられ、神に呼び求めて言った。「独り子の御名によって言う。サタンよ、立ち去れ。」
22 するとサタンは、涙を流し、泣きわめき、歯ぎしりをしながら、大声で叫んだ。そしてそこから、すなわちモーセの前から立ち去って、姿が見えなくなった。
23 さて、このことについてモーセは証を述べた。しかし、悪事のゆえにそれは人の子らの中に知られていない。
24 さて、サタンがモーセの前から立ち去ったとき、モーセはその目を天に向け、御父と御子のことを証される聖霊に満たされた。
25 そして、彼は神の名を呼ぶと、再び神の栄光を見た。神の栄光が彼のうえにあったからである。そして、彼は一つの声が告げられるのを聞いた。「モーセよ、あなたは幸いである。全能者であるわたしがあなたを選び、あなたは多くの水よりも強くされるからである。あたかもあなたが神であるかのように、水はあなたの命令に従うであろう。
26 見よ、わたしは、まことにあなたの生涯の最後まであなたとともにいる。あなたはわたしの民を、すなわちわたしの選民イスラエルを奴隷の状態から救い出さなければならないからである。」
27 また、その声がまだ語っておられるうちに、モーセはその目を向けて、地を、まことに、そのすべてを見た。彼が見なかったものはちり一つもなく、彼は神の御霊によってそれを見極めた。
28 また、彼は地に住む者も見た。彼が見なかった者は一人もなかった。彼は神の御霊によって見極めた。その数は多く、まことに海辺の砂のように数え切れなかった。
29 また、彼は多くの地を見た。それぞれの地は地球と呼ばれ、その面に住む者がいた。
30 そこで、モーセは神に呼び求めて言った。「どうぞわたしにお話ください。これらのものはどうしてこうなのですか。そして、あなたはこれらのものを何によってお造りになったのですか。」
31 見よ、主の栄光がモーセのうえにあったので、モーセは神の前に立ち、顔と顔を合わせて神と語った。そして、主なる神はモーセに言われた。「わたし自身に目的があってこれらのものを造った。ここに知恵があり、それはわたしの内にある。
32 わたしの力の言葉によって、わたしはこれらのものを創造した。わたしの力と言葉とは、恵みと真理に満ちている独り子のことである。
33 無数の世界を、わたしは創造した。また、わたし自身に目的があってこれらを創造した。子によって、わたしはこれらを創造した。子とは、わたしの独り子のことである。
34 また、すべての人の最初の者を、わたしはアダムと名付けた。すなわち、数多(あまた)である。
35 しかし、この地球とこの地球に住む者の話しだけをあなたにしよう。見よ、わたしの力の言葉によって過ぎ去った多くの世界がある。また、現在ある世界も多くあり、それらは人にとって数え切れない。しかし、わたしにはすべてのものが数えられている。それらはわたしのものであり、わたしはそれらを知っているからである。」
36 そこで、モーセは主に言った。「おお、神よ、あなたの僕を憐れんでください。そして、この地球とこの地球に住む者と、また天について、わたしにお話しください。そうすれば、あなたの僕は満足します。」
37 そこで、主なる神はモーセに言われた。「もろもろの天は数多く、人には数えることができない。しかし、わたしには数えられている。それらはわたしのものだからである。
38 一つの地球とその天が過ぎ去ると、まことに別のものが生じる。わたしの業にもわたしの言葉にも、終わりがないのである。
39 見よ、人の不死不滅と永遠の命をもたらすこと、これがわたしの業であり、わたしの栄光である。
40 さて、わたしの子モーセよ、わたしはあなたが立っているこの地球についてあなたに語ろう。あなたはわたしが語ることを書き記さなければならない。
41 人の子らがわたしの言葉を価値のないものと見なし、あなたが書き記す書からその多くを取り去る日に、見よ、わたしはあなたのような者を一人立てよう。そして、あなたが書き記すものは、人の子ら、すなわちそれを信じるすべての者の中に再びあるであろう。」
42 (これらの言葉は、その名が人の子らに知られることのない山の中でモーセに語られた。そして今、それらはあなたに告げられている。信じる者のほかだれにもそれらを示してはならない。まことにそのとおりである。アーメン。)

第2章

(1830年6月−10月)
神は天と地を創造される。すべての生き物が創造される。神は人を造り、ほかのすべてのものを治めさせられる。

01 さて、主はモーセに語って言われた。「見よ、わたしはこの天とこの地についてあなたに示す。わたしが語る言葉を書き記しなさい。わたしは初めであり終わりであり、全能の神である。わたしの独り子によって、わたしはこれらのものを創造した。まことに初めに、わたしは天とあなたが立っている地とを創造した。
02 地は形なく、むなしかった。わたしは深い淵の面に闇を来らせ、わたしの御霊が水の面を動いていた。わたしは神である。
03 神であるわたしは、『光あれ』と言った。すると、光があった。
04 神であるわたしが光を見ると、その光は良かった。神であるわたしは光と闇とを分けた。
05 神であるわたしは光を昼と呼び、闇を夜と呼んだ。これを、わたしの力の言葉によって行った。そして、それはわたしが語ったようになった。夕となり、また朝となった。第1日である。
06 さらにまた、神であるわたしは、『水の間に大空あれ』と言った。すると、わたしが語ったようになった。また、『大空が水と水とを分けよ』と言った。すると、そのようになった。
07 神であるわたしは大空を造り、水を、すなわち、大空の下の大いなる水と大空の上の水とを分けた。そして、わたしが語ったようになった。
08 神であるわたしは大空を天と呼んだ。夕となり、また朝となった。第2日である。
09 神であるわたしは、『天の下の水は一つ所に集まれ』と言った。すると、そのようになった。また、神であるわたしは、『乾いた地あれ』と言った。すると、そのようになった。
10 神であるわたしは乾いた地を陸と呼び、水の集まった所を海と呼んだ。そして、神であるわたしは見て、自分が造ったすべてのものを良しとした。
11 神であるわたしは言った。『地は青草と、種を持つ草と、種類に従って実を結ぶ果樹と、種のある実を結ぶ木を地の上に生えさせよ。』すると、わたしが語ったようになった。
12 地は青草と、種類に従って種を持つすべての草と、種類に従って種のある実を結ぶ木とを生えさせた。そして、神であるわたしは見て、自分が造ったすべてのものを良しとした。
13 夕となり、また朝となった。第3日である。
14 神であるわたしは言った。『天の大空に光があって、昼と夜とを分け、しるしのため、季節のため、日のため、年のためになり、
15 天の大空にあって地を照らす光となれ。』すると、そのようになった。
16 神であるわたしは2つの大きな光を造り、大きい光に昼をつかさどらせ、小さい光に夜をつかさどらせた。大きい光とは太陽であり、小さい光とは月であった。また、もろもろの星も、わたしの言葉に従って造られた。
17 神であるわたしは、これらを天の大空に置いて地を照らさせ、
18 太陽に昼をつかさどらせ、月に夜をつかさどらせ、光と闇とを分けさせた。そして、神であるわたしは見て、自分が造ったすべてのものを良しとした。
19 夕となり、また朝となった。第4日である。
20 神であるわたしは言った。『水は命を持つ動く生き物を豊かに生じ、鳥は地の上、天の大空を飛べ。』
21 神であるわたしは、海の大いなる獣と、水に群がるすべての動く生き物とを、種類に従って創造し、また翼のあるすべての鳥を、種類に従って創造した。そして、神であるわたしは見て、自分が創造したすべてのものを良しとした。
22 神であるわたしはこれらを祝福して言った。『生めよ、増えよ、海の水に満ちよ。また鳥は地に増えよ。』
23 夕となり、また朝となった。第5日である。
24 神であるわたしは言った。『地は生き物を種類に従って出せ。家畜と、這うものと、地の獣とを種類に従って出せ。』すると、そのようになった。
25 神であるわたしは、地の獣を種類に従い、家畜を種類に従い、また地を這うすべてのものを種類に従って造った。そして、神であるわたしは見て、これらすべてのものを良しとした。
26 神であるわたしは、初めからわたしとともにいたわたしの独り子に言った。『わたしたちの形に、わたしたちにかたどって人を造ろう。』そして、そのようになった。また、神であるわたしは言った。『彼らに、海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべてのものと、地のすべての這うものを治めさせよう。』
27 神であるわたしは、自分の形に人を創造した。わたしの独り子の形に人を創造し、男と女に創造した。
28 神であるわたしは、彼らを祝福して言った。『生めよ、増えよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物を治めよ。』
29 また、神であるわたしは人に言った。『見よ、わたしは全地の面にある種を持つすべての草と、種のある実を結ぶすべての木をあなたがたに与えた。これはあなたがたの食物となるであろう。
30 また地のすべての獣、空のすべての鳥、地を這うすべてのもの、すなわちわたしが命を授けるものには、食物としてすべての清い草が与えられるであろう。』そして、わたしが語ったようになった。
31 神であるわたしは、自分が造ったすべてのものを見たところ、見よ、わたしが造ったすべてのものは非常に良かった。夕となり、また朝となった。第6日である。」

第3章

(1830年6月−10月)
すべてのものが地上に自然に存在するに先立って、神はそれらを霊的に創造された。神は最初の肉なるものである人を地上で創造された。女は男のふさわしい助け手である。

01 「こうして天と地と、その万象が完成した。
02 神であるわたしは、第7日にわたしの業を終えた。すべてのものを、わたしは造り終えていた。そして、わたしは第7日にわたしのすべての業を離れて休んだ。わたしが造ったすべてのものは仕上げられた。神であるわたしは見て、それらを良しとした。
03 神であるわたしは第7日を祝福して、これを聖別した。わたしはこの日に、神であるわたしが創造し、造った、すべてのわたしの業を離れて休んだからである。
04 さて見よ、わたしはあなたに言う。これが天地創造の由来である。主なる神であるわたしが天と地を造ったとき、
05 地にはまだ野の植物もなく、また野の草も生えていなかった。主なる神であるわたしは、わたしが語ったすべてのものを、それが地の面に自然に存在するに先立って霊的に創造した。主なる神であるわたしは、地の面にまだ雨を降らせていなかったからである。主なる神であるわたしは、人の子らをすべて創造していたが、まだ土を耕す人はいなかった。わたしは彼らを天で創造したのである。そして、地上にも、水の中にも、空にも、まだ肉なるものはいなかった。
06 しかし、主なる神であるわたしが語ると、霧が地から立ち上って、土の全面を潤した。
07 主なる神であるわたしは、土のちりで人を形造り、命の息をその鼻に吹き入れた。そこで人は生けるもの、地上における最初の肉なるもの、また最初の人となった。しかしながら、すべてのものは以前に創造されたが、それは、わたしの言葉に従って霊的に創造され、造られたのである。
08 主なる神であるわたしは、エデンの中の東の方に一つの園を設けて、私が形造った人をそこに置いた。
09 また、主なる神であるわたしは、人の目に美しいすべての木を自然に土から生えさせた。そして、人はそれを見ることができた。それもまた生けるものとなった。わたしがそれを創造したとき、それは霊のものであった。それは神であるわたしが創造したその領域に、すなわち、わたしが人の用いるように備えたすべてのものはわたしが創造したその領域にそのままあったのである。また、人はそれが食べるに良いのも見た。また、主なる神であるわたしは、園の中央に命の木と善悪を知る木を植えた。
10 主なる神であるわたしは、一つの川がエデンから流れ出て園を潤すようにした。そして、それはそこから分かれて、4つの川となった。
11 主なる神であるわたしは、第1の川の名をピソンと呼んだ。これは、主なる神であるわたしが多くの金を造ったハビラの全地を巡るものである。
12 その地の金は良く、またそこはブドラクと、しまめのうも産した。
13 第2の川の名はギホンと呼ばれ、これはエチオピヤの全地を巡るものである。
14 第3の川の名はヒデケルであって、アッスリヤの東に流れるものである。第4の川はユフラテであった。
15 主なる神であるわたしは、人を連れて行ってエデンの園に置き、これを耕させ、これを守らせた。
16 主なる神であるわたしは、その人に命じて言った。『あなたは園のどの木からでも心のままに取って食べてよろしい。
17 しかし、善悪を知る木からは取って食べてはならない。それでも、あなたは自分で選ぶことができる。それはあなたに任されているからである。しかし、わたしがそれを禁じたことを覚えておきなさい。あなたはそれを食べる日に、必ず死ぬからである。』
18 また、主なる神であるわたしは、人が独りでいるのは良くないことをわたしの独り子に言った。『それゆえ、彼のためにふさわしい助け手を造ろう。』
19 また、主なる神であるわたしは、野のすべての獣と、空のすべての鳥を土で形造り、アダムのところへ来ることを命じ、彼がそれらをどう呼ぶか見た。それらも生けるものであった。神であるわたしが、命の息をそれらに吹き入れたからである。そして、アダムがすべて生き物に与える名はその名になると、わたしは命じたのである。
20 それでアダムは、すべての家畜と、空の鳥と、野のすべての獣に名を付けたが、アダムにはふさわしい助け手が見つからなかった。
21 そこで、主なる神であるわたしは、アダムを深く眠らせた。そして、彼が眠ると、わたしは彼のあばら骨の一つを取って、その所を肉でふさいだ。
22 主なる神であるわたしは、人から取ったあばら骨で一人の女を造り、人のところへ連れて来た。
23 すると、アダムは言った。『わたしは今や、これこそ、わたしの骨の骨、わたしの肉の肉であることを知る。男から取ったものだから、これを女と呼ぼう。』
24 それで、人はその父と母を離れて、妻と結び合い、2人は一体となるのである。
25 人とその妻は、2人とも裸であったが、恥ずかしいとは思わなかった。」

第4章

(1830年6月−10月)
サタンはどのようにして悪魔となったか。サタン、エバを誘惑する。アダムとエバは堕落し、死が世に入る。

01 主なる神であるわたしは、モーセに語って言った。「あなたがわたしの独り子の名によって命じたあのサタンは、初めからいた者である。彼はわたしの前に来て言った。『御覧ください。わたしがここにいます。わたしをお遣わしください。わたしはあなたの子となりましょう。そして、わたしは全人類を贖って、一人も失われないようにしましょう。必ずわたしはそうします。ですから、わたしにあなたの誉れを与えてください。』
02 しかし見よ、初めからわたしが愛し選んだ者であるわたしの愛する子は、わたしに、『父よ、あなたの御心が行われ、栄光はとこしえにあなたのものでありますように』と言った。
03 あのサタンはわたしに背いて、主なる神であるわたしが与えた、人の選択の自由を損なおうとしたので、またわたしの力を自分に与えるように求めたので、わたしは独り子の力によって彼を投げ落とさせた。
04 そして、彼はサタン、すなわち、あらゆる偽りの父である悪魔となって、人々を欺き、惑わし、またまことに、わたしの声を聴こうとしないすべての者を自分の意のままにとりこにする者となった。
05 さて、主なる神であるわたしが造った野の生き物のうちで、蛇が最も狡猾であった。
06 そこで、サタンは(すでに多くのものを引き寄せて自分に従わせていたので)蛇の心の中に思いを入れ、エバもだまそうとした。彼は神の思いを知らなかったので、世を滅ぼそうとしたのである。
07 彼は女に言った。『園のどの木からも取って食べてはならないと、ほんとうに神が言われたのですか。』(彼は蛇の口を通して語った。)
08 女は蛇に言った。『わたしたちは園の木の実は食べることを許されています。
09 しかし、園の中央に見える木の実については、取って食べてはならない、触れてもならない、死んではいけないから、と神は言われました。』
10 すると、蛇は女に言った。『あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。
11 それを食べる日に、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです。』
12 女がその木を見ると、それは食べるに良く、目には美しく、賢くなるには好ましいと思われたから、その実を取って食べ、また、ともにいた夫にも与えたので、彼も食べた。
13 すると、2人の目は開け、自分たちが裸であることを知った。そこで、彼らはいちじくの葉をつづり合わせて、前掛けとした。
14 日の涼しいころ、彼らが園の中を歩いていると、主なる神の声が聞こえた。そこで、アダムとその妻は主なる神の面を避けて、園の木の間に身を隠した。
15 主なる神であるわたしは、アダムに呼びかけて言った。『あなたはどこへ行くのか。』
16 すると、彼は答えた。『園の中であなたの声を聞き、恐れて、身を隠しました。自分が裸であるのを見たからです。』
17 主なる神であるわたしは、アダムに言った。『あなたが裸であるのを、だれが知らせたのか。食べてはならない、食べれば必ず死ぬ、と命じておいた木から、あなたは取って食べたのか。』
18 そこで、人は答えた。『あなたがわたしに与えてくださって、わたしとともにいるようにと命じられた女が、その木の実をくれたので、わたしは食べました。』
19 そこで、主なる神であるわたしは、女に言った。『あなたは何ということをしたのか。』すると、女は答えた。『蛇がわたしをだましたのです。それでわたしは食べました。』
20 主なる神であるわたしは、蛇に言った。『おまえはこのことをしたので、すべての家畜、野のすべての獣のうち、最ものろわれる。おまえは腹で這い回り、一生、ちりを食べるであろう。
21 わたしは恨みを置く、おまえと女との間に、おまえの子孫と女の子孫との間に。彼はおまえの頭を砕き、おまえは彼のかかとを砕くであろう。』
22 主なる神であるわたしは、女に言った。『わたしはあなたの産みの苦しみを大いに増す。あなたは苦しんで子を産む。それでもなお、あなたは夫を慕い、彼はあなたを治めるであろう。』
23 また、主なる神であるわたしは、アダムに言った。『あなたが妻の声に聞き従い、取って食べてはならないとわたしがあなたに命じた木の実を食べたので、地はあなたのためにのろわれ、あなたは一生、苦しんで地から食物を得るであろう。
24 地はあなたのために、いばらとあざみを生じ、あなたは野の草を食べるであろう。
25 あなたは顔に汗してパンを食べ、土から取られたので、ついに土に帰る。あなたは必ず死ぬであろう。あなたはちりであったから、ちりに帰るのである。』
26 さて、アダムはその妻をエバと呼んだ。彼女がすべての命ある者の母であったからである。主なる神であるわたしは、数多くいるすべての女の最初の者をこのように呼んだ。
27 主なる神であるわたしは、アダムとその妻に皮の衣を作って着せた。
28 そして、主なる神であるわたしは、独り子に言った。『見よ、人はわたしたちの一人のようになり、善悪を知る者となった。彼は手を伸ばして、命の木からも取って食べ、永久に生きるかもしれない。』
29 そこで、主なる神であるわたしは、彼をエデンの園から追い出して、彼自身が取り出された土を耕させることにした。
30 主なる神であるわたしが生きているように確かに、わたしの言葉が無に帰することはあり得ない。それはわたしの口から出ると、成就しなければならないからである。
31 そこで、わたしは人を追い出し、エデンの園の東に、ケルビムと、あらゆる方向に回る燃える剣を置いて、命の木の道を守らせた。」
32 (これらは、わたしが僕モーセに語った言葉であり、まことにわたしの望むとおりに真実である。わたしはあなたにこれを語った。わたしがあなたに命じるまで、あなたは信じる者のほか、だれにもこれを示してはならない。アーメン。)

第5章

(1830年6月−10月)
アダムとエバ、子供をもうける。アダム、犠牲をささげ、神に仕える。カインとアベルが生まれる。カインは背き、神よりもサタンを愛し、滅びとなる。殺人と悪事が広がる。福音は最初から宣べ伝えられる。

01 「主なる神であるわたしが彼らを追い出した後、アダムは、主なるわたしが命じたように、地を耕し、野のすべての獣を治め、額に汗してパンを食べることを始めた。彼の妻エバも彼とともに働いた。
02 アダムはその妻を知り、彼女は彼に息子、娘たちを産んだ。そして、彼らは増えて、地を満たし始めた。
03 そのときから、アダムの息子、娘たちは2人ずつ地に分かれて、土地を耕し、家畜の群れを飼い始めた。そして、彼らもまた、息子、娘たちをもうけた。
04 アダムとその妻エバは主の名を呼び、エデンの園の方向から彼らに語る主の声を聞いた。しかし、主を目にすることはなかった。彼らは主の前から締め出されていたからである。
05 主は彼らに、主なる彼らの神を礼拝し、主へのささげ物として群れの初子をささげるようにと戒めを与えた。アダムは主の戒めに従順であった。
06 多くの日の後、主の天使がアダムに現れて言った。『あなたはなぜ主に犠牲をささげるのか。』そこで、アダムは彼に答えた。『わたしには分かりません。ただ、主がわたしに命じられたのです。』
07 すると、天使は語って言った。『これは、御父の、恵みと真理に満ちている独り子の犠牲のひながたである。
08 したがって、あなたが行うすべてのことを御子の御名によって行いなさい。また、悔い改めて、いつまでも御子の御名によって神に呼び求めなさい。』
09 その日、御父と御子のことを証する聖霊がアダムに降り、そして言った。『わたしは初めから、また今から後とこしえに、父の独り子である。あなたは堕落したので、贖いを受けることができる。全人類、まことにそれを望むすべての者も同様である。』
10 その日、アダムは神をたたえ、満たされて、地のすべての氏族について預言し始めて言った。『神の御名がたたえられるように。わたしの背きのゆえに、わたしの目は開かれた。わたしはこの世で喜びを受け、再び肉体にあって神にまみえるであろう。』
11 彼の妻エバは、これらすべてのことを聞き、喜びながら言った。『わたしたちの背きがなかったならば、わたしたちは決して子孫を持つことはなく、また善悪も、贖いの喜びも、神がすべての従順な者に与えてくださる永遠の命も、決して知ることはなかったでしょう。』
12 アダムとエバは神の名をたたえ、息子、娘たちにすべてのことを知らせた。
13 すると、サタンが彼らの中にやって来て、『わたしもまた、神の子だ』と言い、『そのことを信じてはならない』と彼らに命じて言った。そこで、彼らはそれを信じることなく、神よりもサタンを愛した。人々はそのときから、肉欲や官能におぼれ、悪魔に従う者となり始めた。
14 主なる神は至る所で聖霊によって人々に呼びかけ、悔い改めるように命じた。
15 また、『御子を信じて自分の罪を悔い改めるすべての者は救われる。しかし、信じないで悔い改めないすべての者は、罰の定めを受ける。御言葉は堅い定めとして神の口から出たので、それらは成就しなければならない』と告げた。
16 アダムとその妻エバは、神に呼び求めることをやめなかった。また、アダムはその妻エバを知り、彼女は身ごもってカインを産み、『わたしは主から男子を得ました。ですから、この子は神の御言葉を拒まないでしょう』と言った。しかし見よ、カインは耳を傾けずに言った。『わたしが知るべき主とはだれですか。』
17 彼女はまた身ごもり、弟アベルを産んだ。アベルは主の声に聞き従った。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。
18 カインは神よりもサタンを愛した。サタンは彼に命じて、『主にささげ物をせよ』と言った。
19 時がたって、カインは地の産物を持って来て、主へのささげ物とした。
20 アベルもまた、自分の羊の群れの初子の中から肥えたものを持って来た。主はアベルとそのささげ物を目に留めた。
21 しかし、主はカインとそのささげ物には目を留めなかった。サタンはこれを知って喜んだ。カインは大いに憤って、顔を伏せた。
22 そこで、主はカインに言った。『なぜ憤るのか。なぜ顔を伏せるのか。
23 あなたは正しいことをしていれば、受け入れられる。もし正しいことをしていなければ、罪が門口で待ち伏せており、サタンはあなたを得ることを望んでいる。あなたがわたしの戒めに聞き従わなければ、わたしはあなたを引き渡し、彼の望みどおりになる。そして、あなたは彼を治めるであろう。
24 これから先、あなたは彼が言う偽りの父となる。あなたは滅びと呼ばれる。あなたもまた世に先立って存在していた。
25 そして将来、「これらの忌まわしい行いはカインから出た。彼は神から出たさらに大いなる勧告を拒んだからである」と言われるであろう。これが、あなたが悔い改めなければ、わたしがあなたに与えるのろいである。』
26 カインは憤って、もはや決して主の声にも、主の前を聖く歩んだ弟アベルの声にも耳を傾けなかった。
27 アダムとその妻は、カインとその兄弟たちのゆえに主の前に嘆き悲しんだ。
28 さて、カインはその兄弟の娘の一人を妻とし、彼らは神よりもサタンを愛した。
29 サタンはカインに言った。『おまえののどにかけてわたしに誓え。それを話せば、おまえは死ぬのだ。また、おまえの兄弟たちに、その頭と生ける神とにかけて、それを話さないと誓わせよ。それを話せば、おまえの兄弟たちは必ず死ぬだろう。おまえの父に知られないためにこのようにせよ。そうすれば、今日、弟アベルをおまえの手に渡そう。』
30 そして、サタンはカインに、彼の命じるとおりに行うことを誓った。これらのことはすべてひそかに行われた。
31 カインは言った。『実に、わたしはこの大いなる秘密の主マハンであり、人を殺して利を得ることができる。』それで、カインは大マハンと呼ばれ、自分の悪事を誇った。
* (「マハン」という言葉の語根には、「心」「破壊者」「際立った者」という意味がある。)
32 カインは野に行き、弟アベルと語った。そして、野にいたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。
33 そして、カインは自分がしたことを誇って言った。『わたしは自由だ。弟の羊の群れは必ずわたしの手に入る。』
34 主はカインに言った。『弟アベルは、どこにいるのか。』カインは答えた。『知りません。わたしは弟の番人でしょうか。』
35 主は言った。『あなたは何をしたのか。あなたの弟の血の声が土の中からわたしに叫んでいる。
36 今あなたはのろわれて、この土地を離れなければならない。この土地が口を開けて、あなたの手から弟の血を受けたからである。
37 あなたが土を耕しても、土はもはやあなたのために実を結ばない。あなたは、地上をさまよい歩く放浪者となるであろう。』
38 すると、カインは主に言った。『サタンが、弟の羊の群れのゆえにわたしを誘惑したのです。また、わたしも憤っていました。あなたが弟のささげ物を受け入れて、わたしのものを受け入れてくださらなかったからです。わたしの罰は重くて負い切れません。
39 あなたは今日、わたしを御前から追い出されました。わたしは御顔から隠されて、地上をさまよい歩く放浪者とならなけれぱなりません。わたしを見つける者は、わたしが罪悪を犯したので、わたしを殺すでしょう。これらのことは主から隠されていません。』
40 そこで、主なるわたしは彼に言った。『だれでもあなたを殺す者は、7倍の復讐を受けるであろう。』そして、主なるわたしは、カインを見つける者がだれも彼を殺すことのないように、彼にしるしを付けた。
41 カインは主の前から締め出され、その妻および多くの兄弟たちとともに、エデンの東、ノドの地に住んだ。
42 カインはその妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。彼はまた、多くの息子、娘たちをもうけた。カインは町を建て、その町を息子の名にちなんでエノクと名付けた。
* (カインの家系にエノクという名の人がおり、またその名によって呼ばれた町があった。これをセツの家系のエノクや「エノクの町」と呼ばれた彼の町、シオンと混同してはならない。)
43 エノクには、イラデと、ほかの息子、娘たちが生まれた。イラデは、メホヤエルと、ほかの息子、娘たちをもうけた。メホヤエルは、メトサエルと、ほかの息子、娘たちをもうけた。メトサエルはレメクをもうけた。
44 レメクは2人の妻をめとった。一人の名はアダといい、もう一人の名をチラといった。
45 アダはヤバルを産んだ。彼は天幕に住む者の先祖であり、彼らは家畜を飼う者であった。その弟の名はユバルといい、竪琴と笛を奏するすべての者の先祖となった。
46 チラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅と鉄の工作をするすべての者の教師であった。トバル・カインの妹はナアマといった。
47 レメクはその妻たち、アダとチラに言った。『わたしの声を聞け、レメクの妻たちよ、わたしの言葉に耳を傾けよ。わたしは受けた傷のために人を殺し、受けた打ち傷のために若者を殺した。
48 カインのための復讐が7倍ならば、レメクのための復讐は77倍であろう。』
* (レメクは、サタンがカインのためにしたよりももっと多くのことを自分のためにしてくれるだろうと誇った。彼がこのように考えた理由が、第49節、50節に示されている。)
49 レメクはカインに倣ってサタンと契約を結び、それにより彼は、サタンによってカインに授けられた大いなる秘密の主、大マハンとなった。ところが、エノクの息子イラデは彼らの秘密を知り、アダムの子らにそれを暴き始めた。
50 そこで、レメクは怒って彼を殺した。利を得るために弟アベルを殺したカインのようにではなく、彼は、誓いのために殺したのである。
51 カインの時代から秘密結社があり、彼らの業は闇の中にあって、彼らは自分の同胞を知っていた。
52 そこで、主はレメクとその家族、ならびにサタンと契約を結んだすべての者をのろった。彼らが神の戒めを守らなかったからである。神は彼らが戒めを守らないことを不快に思い、彼らを教え導くことをしなかった。彼らの業は忌まわしいものであって、すべての人の子らの中に広がり始めた。それは人の息子たちの中にあった。
53 人の娘たちの中では、これらのことは語られなかった。レメクがその妻たちにその秘密を語り、彼女たちが彼に背いてこれらのことを広く告げ知らせ、同情を寄せなかったからである。
54 そのためにレメクはさげすまれ、追い出され、そして死ぬことを恐れて人の子らの中に出て来なかった。
55 このように、闇の業はすべての人の子らの中に広がり始めた。
56 神はひどいのろいをもって地をのろい、悪人を、また神が造ったすべての人の子らを怒った。
57 彼らが神の声に聞き従おうとせず、またその独り子、すなわち、時の中間に来ると神が宣言した者、創世の前に備えられた者を信じようとしなかったからである。
58 このように、福音は最初から宣べ伝えられ、神の前から遣わされた聖なる天使たちによって、神自身の声によって、また聖霊の賜物によって告げ知らされた。
59 このようにして、すべてのことが聖なる儀式によってアダムに確かにされ、福音が宣べ伝えられ、世の終わりまで福音が世にあるようにという定めが出されたのである。このとおりであった。アーメン。

第6章

(1830年11月−12月)
アダムの子孫、覚えの書を記す。アダムの義にかなった子孫、悔い改めを宣べ伝える。神はエノクに御自身を現される。エノク、福音を宣べ伝える。救いの計画がアダムに明らかにされる。アダム、バプテスマと神権を受ける。

01 アダムは神の声に聞き従い、息子たちに悔い改めるように呼びかけた。
02 アダムはまたその妻を知り、彼女は男の子を産んだ。そして、アダムはその子をセツと名付けた。アダムは神の名をたたえて言った。「神は、カインが殺したアベルの代わりに、一人の子をわたしに授けてくださった。」
03 神はセツに御自身を現され、セツは背くことなく、兄のアベルのように受け入れられる犠牲をささげた。また、セツにも男の子が生まれ、彼はその子をエノスと名付けた。
04 そのとき、これらの人は主の名を呼び始め、主は彼らを祝福された。
05 また、覚えの書が記され、アダムの言葉で記録された。神に呼び求めたすべての者は、霊感の霊によって書くことを許された。
06 そして、彼らによってその子供たちは読み書きを教えられ、その言葉は清らかで汚れのないものであった。
07 さて、初めにあったこの神権は、世の終わりにもあるであろう。
08 この預言を、アダムは聖霊に感じるままに語った。そして、神の子たちについて一つの系図が記された。これはアダムの歴代の書で、次のとおりであった。すなわち、神は人を創造された日に、神にかたどって人を造られた。
09 神は彼らを、御自分の体の形に、男と女に創造された。彼らが創造されて、神の足台の上の地で生けるものとなった日に、神は彼らを祝福して、彼らをアダムと名付けられた。
10 アダムは130歳になって、自分にかたどり、自分の形のような男の子をもうけ、その子をセツと名付けた。
11 アダムがセツをもうけた後、生きた年は800年であって、彼は多くの息子、娘たちをもうけた。
12 アダムの生きた年は合わせて930歳であった。そして、彼は死んだ。
13 セツは105歳になって、エノスをもうけた。セツは一生の間預言し、息子エノスに主の道を教えたので、エノスもまた預言した。
14 セツはエノスをもうけた後、807年生きて、多くの息子、娘たちをもうけた。
15 人の子らは地の全面に非常に大勢いた。その時代に、サタンは人々の中で大きな力を持ち、彼らの心の中で荒れ狂った。そして、そのときから戦争と流血が起こった。また、秘密の業のために、人は権力を求めて、自分の兄弟に手を下して殺した。
16 セツの年は合わせて912歳であった。そして、彼は死んだ。
17 エノスは90歳になって、カイナンをもうけた。エノスと神の民の残りの者は、シュロンと呼ばれた地を出て、彼がカイナンと名付けた自分の息子にちなんで呼んだ約束の地に住んだ。
18 エノスはカイナンをもうけた後、815年生きて、多くの息子、娘たちをもうけた。エノスの年は合わせて905歳であった。そして、彼は死んだ。
19 カイナンは70歳になって、マハラレルをもうけた。カイナンはマハラレルをもうけた後、840年生きて、息子、娘たちをもうけた。カイナンの年は合わせて910歳であった。そして、彼は死んだ。
20 マハラレルは65歳になって、ヤレドをもうけた。マハラレルはヤレドをもうけた後、830年生きて、息子、娘たちをもうけた。マハラレルの年は合わせて895歳であった。そして、彼は死んだ。
21 ヤレドは162歳になって、エノクをもうけた。ヤレドはエノクをもうけた後、800年生きて、息子、娘たちをもうけた。ヤレドはエノクに神の道をすべて教えた。
22 これがアダムの子孫の系図である。アダムは神の子であり、神は自ら彼と語られた。
23 彼は義を説く者であって、語り、預言し、どこにいる人でもすべての人に悔い改めるように呼びかけた。そして、人の子らに信仰が教えられた。
24 さて、ヤレドの年は合わせて962歳であった。そして、彼は死んだ。
25 エノクは65歳になって、メトセラをもうけた。
26 そして、エノクは地の上を行き、民の中を旅した。彼が旅をしていると、神の御霊が天から降り、彼のうえにとどまった。
27 そして、彼は天から声が告げられるのを聞いた。「私の子エノクよ、この民に預言し、彼らに言いなさい。『悔い改めなさい。主は次のように言われるからです。「私はこの民のことを怒っており、私の激しい怒りは彼らに向かって燃えている。彼らの心はかたくなになり、その耳は聞こえにくく、その目は遠くを見ることができない。
28 わたしは彼らを造った日以来、多くの世代にわたって、彼らは迷い、わたしを否定し、闇の中で自分の知恵を求め、彼らの忌まわしい行いの中で殺人を企て、わたしが彼らの先祖アダムに与えた戒めを守ってこなかった。
29 それゆえ、彼らは偽りの誓いを立て、その誓いによって自らに死を招いてきた。彼らが悔い改めなければ、わたしは彼らのために地獄を用意している。
30 これは、わたしが世の初めに、わたし自身の口から、しかも世の初めから送り出してきた定めである。そして、それが将来世の中に送り出されるように、あなたの先祖であるわたしの僕たちの口を通して、わたしはそれを地の果てまで布告してきたのである」と。』」
31 エノクはこれらの御言葉を聞いたとき、主の前で地に伏し、主の前に語って言った。「わたしがあなたの目にかなったのはなぜでしょうか。わたしは若者にすぎず、すべての人はわたしを憎みます。わたしは口の重い者だからです。どうしてわたしはあなたの僕なのでしょうか。」
32 主はエノクに言われた。「行って、わたしがあなたに命じたように行いなさい。そうすれば、あなたを刺し貫く者はだれもいないであろう。あなたの口を開きなさい。そうすれば、それは満たされるであろう。わたしはあなたに語る力を与えよう。すべての肉なるものはわたしの手の内にあるからである。そして、わたしは自分のよいと思うままに行おう。
33 この民に、『あなたがたは今日、あなたがたを造られた主なる神に仕えることを選びなさい』と言いなさい。
34 見よ、わたしの御霊があなたのうえにあるので、あなたのすべての言葉を、わたしは正しいとする。山々はあなたの前から逃げ去り、川はその流れを変えるであろう。あなたはわたしにつながっていなさい。そうすれば、わたしはあなたとつながっていよう。それゆえ、わたしとともに歩みなさい。」
35 主はエノクに語って言われた。「あなたの目に泥を塗り、それを洗いなさい。そうすれば、あなたは見るであろう。」そこで、彼はそうした。
36 そして、彼は神が造られた霊たちを見た。彼はまた肉体の目に見えないものも見た。それ以来、「主はその民のために、一人の聖見者を立てられた。」という言葉がその地に広まった。
37 さて、エノクはその地の人々の中に出て行き、もろもろの丘と高い所に立って、大声で叫び、彼らの行いを責める証を述べた。すると、すべての人が彼に腹を立てた。
38 彼らは彼の言葉を聞くために高い所にでて来て、天幕を守る者たちに言った。「あなた方はここにとどまって、天幕を守っていなさい。その間に、我々はあそこへ行って聖見者を見てくる。彼は預言をする。この地に変わったことがある。野生の男が我々の中にやって来たのだ。」
39 さて、彼の言葉を聞いたとき、彼に手を出す者はだれ一人いなかった。彼の言葉を聞いたすべての者に、恐れが及んだためである。彼が神とともに歩んだからである。
40 彼のもとに、その名をマヒヤという一人の男がやって来て言った。「あなたはだれで、どこから来たのか、はっきり言ってください。」
41 そこで、彼は彼らに言った。「先祖の地であり、今日まで義の地であるカイナンの地からやって来ました。わたしの父はわたしに神の道をすべて教えてくれました。
42 そして、カイナンの地から東の海沿いに旅をしていたとき、わたしは示現を見ました。まことに、天を見ました。そして、主はわたしと語り、わたしに命を下されました。この理由で、すなわちその命に従うために、わたしはこれらの言葉を語っているのです。」
43 エノクはその話しを続けて言った。「わたしと語られた主は、天の神です。わたしの神であり、またあなたがたの神です。あなたがたはわたしの兄弟です。どうしてあなたがたは自分で自分に勧めをして、天の神を否定するのですか。
44 神は天を造られ、地は神の足台であり、地の基は神のものです。まことに、神はそれを据えられ、地の面に大勢の人をもたらされました。
45 死はわたしたちの先祖に及びました。それでも、わたしたちは彼らを知っており、否定することはできません。まことに、わたしたちはすべての中の最初の人、アダムさえも知っています。
46 わたしたちは、神の指によって示された手本に従って、わたしたちの中で覚えの書を記してきたからです。それはわたしたちの言葉で述べられています。」
47 エノクが神の言葉を語ると、民はおののき、彼の前に立っていることができなかった。
48 エノクは彼らに言った。「アダムが堕落したので、わたしたちは存在しています。そして、アダムの堕落によって死が生じ、わたしたちは不幸と災いを受ける者とされているのです。
49 まことに、サタンは人の子らの中にやって来て、彼を拝むように誘惑します。そして、人々は肉欲や官能におぼれ、悪魔に従う者となって、神の御前から締め出されています。
50 しかし、神はわたしたちの先祖に、すべての人が悔い改めなければならないことをお知らせになりました。
51 神は御自身の声によって、わたしたちの先祖アダムに呼びかけて言われました。『わたしは神である。わたしは世界を造り、また人々を、彼らが肉体にある前に作った。』
52 神はまた彼に言われました。『あなたがわたしに心を向け、わたしの声を聴き、そして信じ、あなたのすべての背きを悔い改め、まことに水の中で、恵みと真理に満ちている独り子、すなわちイエス・キリストの名によって、すなわちその名によって人の子らに救いが及ぶ、天下に与えられる唯一の名によってバプテスマを受けるならば、あなたは聖霊の賜物を受けるであろう。すべてのものをその名によって求めれば、何でも求めるものはあなたに与えられるであろう。』
53 わたしたちの先祖アダムは、主に語って、『人が悔い改めて水の中でバプテスマを受けなければならないのは、なぜでしょうか』と尋ねました。すると、主はアダムに、『見よ、わたしはエデンの園でのあなたの背きを赦した』と言われました。
54 このことから、『神の御子は最初のとがを贖われ、それによって両親の罪がその子供たちの頭に帰することはあり得ない。彼らは世の初めから罪がない』という言葉が人々の間に広まりました。
55 主はアダムに語って言われました。『あなたの子供たちは罪のうちに宿されるので、まことに彼らが成長し始めると、彼らの心の中に罪が宿る。そして、彼らは善を尊ぶことを知るために、苦さを味わうのである。
56 そして、善悪を知ることが彼らに許される。それゆえ、彼らは自ら選択し行動する者である。そこで、わたしはあなたに別の律法と戒めを与えた。
57 それゆえ、あなたの子供たちに次のことを教えなさい。すなわち、どこにいる人でもすべての人が、悔い改めなければならない。そうしなければ、決して神の王国を受け継ぐことはできない。清くない者はそこに住むことはできない。すなわち、神の前に住むことができないからである。アダムの言葉で、聖なる人とは神の名である。また、神の独り子の名は、人の子、すなわちイエス・キリストであり、時の中間に来る義にかなった裁き主である。
58 さて、わたしはあなたに戒めを与える。あなたの子供たちに次のことを率直に教えなさい。すなわち、
59 背きによって堕落が生じ、その堕落が死をもたらす。あなたがたは水と血と、わたしが造った霊とによってこの世に生まれ、ちりから生けるものとなったので、まことにあなたがたは、水と御霊によって再び天の王国に生まれ、血によって、すなわちわたしの独り子の血によって清くされなければならない。それは、あなたがたがすべての罪から聖められ、この世において永遠の命の言葉を享受し、来るべき世において永遠の命、すなわち不死不滅の栄光を享受するためである。
60 それは、あなたが水によって戒めを守り、御霊によって義とされ、血によって聖められるからである。
61 それゆえ、天の記録、慰め主、不死不滅の栄光の平和なること、すべてのものの真理、すべてのものを生かし活気づけるもの、すべてのものを知っており、知恵と憐れみと真理と公正と公平によって一切の権威を持つものが授けられて、あなたがたの内にとどまる。
62 さて見よ、わたしはあなたに言う。これが、時の中間に来るわたしの独り子の血によってすべての人に与えられる救いの計画である。
63 見よ、すべてのものにはそれに似たものがある。すべてのものは、現世にかかわるものも霊にかかわるものも、わたしのことを証するために創造され、造られている。すなわち、上の天にあるもの、地の上にあるもの、地の中にあるもの、地の下にあるもの、上のものも下のものも、すべてのものがわたしのことを証するのである。』
64 このように主がわたしたちの先祖アダムと語られたとき、アダムは主に叫び求めました。すると、彼は主の御霊に連れ去られ、水の中に運ばれ、水に沈められ、そして水から連れ出されました。
65 このようにして、彼はバプテスマを受け、神の御霊が彼に降られました。このようにして、彼は御霊によって生まれ、内なる人において生かされた者となったのです。
66 そして、彼は天からの声が告げられるのを聞きました。『あなたは火と聖霊によってバプテスマを受けた。これは今から後とこしえに、父と子の証である。
67 あなたは、永遠から永遠にわたって、日の初めもなく年の終わりもない者の位に従う者である。
68 見よ、あなたはわたしにあって一つであり、神の子である。このようにして、すべての者はわたしの子となることができるのである。アーメン。』」

第7章

(1830年12月)
エノクは教え、民を導き、山々を動かす。シオンの町が設立される。エノク、人の子の来臨とその贖いの犠牲と聖徒たちの復活を先見する。また、回復と集合と再臨とシオンの帰還も先見する。

01 また、エノクはその話しを続けて言った。「まことに、わたしたちの先祖アダムはこれらのことを教えました。すると、多くの者は信じて神の子となりましたが、信じないで罪の中に滅びた者も大勢いました。彼らは今、苦しみの中で恐れながら、火のような神の激しい怒りが自分たちに注がれるのを待っています。」
02 そのときから、エノクは預言し始めて、民に言った。「わたしが旅の途中に、マフヤという所に立って主に叫び求めると、天から、『あなたは引き返して、シメオンの山に登りなさい』という御声がありました。
03 そこで、わたしは引き返して、その山に登りました。そして、その山に立つと、わたしは天が開くのを見て、栄光に包まれました。
04 わたしは主にまみえました。主はわたしの前に立ち、顔と顔を合わせて、人が互いに語り合うようにわたしと語られました。そして、主はわたしに言われました。『見なさい。そうすれば、わたしはあなたにこの世を多くの世代にわたって見せよう。』
05 それから、わたしはシュムの谷に、まことに天幕に住む多くの人を見ました。それはシュムの民でした。
06 主は再びわたしに、『見なさい』と言われました。そこで、わたしが北の方を眺めると、天幕に住むカナンの民が見えました。
07 主はわたしに『預言しなさい』と言われました。そこで、わたしは預言して言いました。『見よ、大勢のカナンの民がシュムの民に対して陣立てをして出て行き、彼らを殺して、ことごとく滅ぼすであろう。そして、カナンの民はその地で分かれて、その地は実を結ばない不毛の所となり、カナンの民のほかにいかなる民もそこに住むことはない。
08 見よ、主はひどい暑さをもってその地をのろわれ、その不毛はとこしえに続くであろう。』そして、カナンのすべての子らのうえに暗黒が及んだので、彼らはすべての民の中でさげすまれました。
09 また、主はわたしに、『見なさい』と言われました。そこで、わたしが眺めると、シャロンの地と、エノクの地と、オムナーの地と、ヘニの地と、セムの地と、ハネルの地と、ハナニハの地と、そのすべての住民が見えました。
10 すると、主はわたしに言われました。『この民のところへ行って、「悔い改めよ」と言いなさい。わたしが出て行って、のろいをもって彼らを打ち、彼らが死ぬことのないためである。』
11 そして主は、御父と、恵みと真理に満ちておられる御子と、御父と御子のことを証される聖霊との御名によってバプテスマを施すようにとの戒めをわたしに与えられました。」
12 それからエノクは、カナンの民を除くすべての民に、悔い改めるように呼びかけた。
13 エノクの信仰は非常に深かったので、彼は神の民を導いたが、敵が彼らと戦おうとして攻めて来た。そこで、彼が主の言葉を語ると、まことに彼の命に従って、地は揺れ動き、山々は逃げ去った。水の流れる川はその流れを変え、ライオンのほえる声が荒れ野から聞こえた。そして、すべての民族が大いに恐れた。それほどエノクの言葉は力強く、また、それほど神が彼に与えられた言葉の力は大いなるものであった。
14 また、海の深みから一つの陸が出てきた。神の民の敵は大いに恐れたので、逃れて遠く離れて立ち、海の深みから出てきた陸に上がった。
15 その地の巨人たちも遠く離れて立った。そして、神に逆らって戦ったすべての民にのろいが下った。
16 そのときから、彼らの中に戦争と流血があった。しかし、主は来て、主の民とともに住まわれた。そして、彼らは義のうちに住んだ。
17 主への畏れがすべての民族にあった。それほど主の民のうえにある主の栄光は大いなるものであった。主はその地を祝福され、彼らは山々の上と高いところで祝福されて、まことに栄えた。
18 主はその民をシオンと呼ばれた。彼らが心を一つにし、思いを一つにし、義のうちに住んだからである。そして、彼らの中に貧しい者はいなかった。
19 エノクは、義をもって神の民に教えを説き続けた。そして、その生涯に、彼は一つの町を建て、それは聖なる都、すなわちシオンと呼ばれた。
20 さて、エノクは主とともに語り、主に言った。「必ずや、シオンはとこしえに平穏に住むことでしょう。」しかし、主はエノクに言われた。「わたしはシオンを祝福したが、民の残りの者をのろった。」
21 さて、主はエノクに、地に住むすべての者を見せられた。彼はまことに、時がたってシオンが天に取り上げられるのを見た。また、主はエノクに、「とこしえにわたしの住まいを見なさい」と言われた。
22 エノクはまた、アダムの子らである民の残りの者も見た。彼らは、カインの子孫を除くアダムのすべての子孫の交じり合った者であった。カインの子孫は肌が黒く、彼らの中にいるべき場所がなかったからである。
23 そのシオンが天に取り上げられた後、エノクは、まことに、地のすべての民族が彼の前にあるのを見た。
24 そして、何世代かが過ぎ、エノクは高く上げられ、まことに、御父と人の子の懐にいた。そして、見よ、サタンの力が地の全面にあった。
25 また、彼は天使たちが天から降るのを見た。そして、彼は大きな声が、「災いである。地に住む者は災いである」と告げるのを聞いた。
26 また、彼はサタンを見た。サタンはその手に大きな鎖を持ち、それは地の全面を闇で覆った。サタンは見上げて笑い、その使いどもは喜んだ。
27 エノクはまた、天使たちが天から降って、御父と御子のことを証するのを見た。聖霊が多くの者に降られ、彼らは天の力によってシオンに連れ去られた。
28 すると、天の神が民の残りの者を見て泣かれた。エノクはそのことを証していった。「どうして天が泣き、雨が山々に降り注ぐようにその涙を流すのですか。」
29 また、エノクは主に言った。「あなたは、永遠から永遠にわたって聖なる御方であるのに、どうして泣くことがおできになるのですか。
30 人が地の微粒子、まことにこの地球のような幾百万の地球を数えることができたとしても、それはあなたが創造されたものの数の始めにも至りません。あなたのとばりは今もなお広がっています。それでも、あなたはそこにおられ、あなたの懐はそこにあります。また、あなたは公正な御方です。とこしえに憐れみ深く、思いやりの深い御方です。
31 あなたは御自身が創造されたすべてのものの中から、永遠から永遠にわたって、シオンを御自身の懐に取り去られました。あなたの御座のある所には、ただ平安と公正と真理だけがあります。憐れみはあなたの前を進み、終わりがありません。どうしてあなたは泣くことがおできになるのですか。」
32 主はエノクに言われた。「これらあなたの兄弟たちを見なさい。彼らはわたし自身の手で造られたものである。わたしは彼らを創造した日に、彼らに知識を与えた。また、エデンの園で人に選択の自由を与えた。
33 わたしはあなたの兄弟たちに語って、互いに愛し合うように、また父であるわたしを選ぶようにという戒めも与えた。ところが見よ、彼らは愛情がなく、自分の血族を憎んでいる。
34 わたしの憤りの火は彼らに向かって燃えている。わたしは激しい憤りをもって、彼らに洪水を送ろう。わたしの激しい怒りが彼らに向かって燃えているからである。
35 見よ、わたしは神である。聖なる人とはわたしの名である。賢慮の人とはわたしの名であり、無窮も永遠もわたしの名である。
36 それゆえ、わたしは手を伸ばして、わたしが造ったすべての創造物を手に取ることができる。また、わたしの目はそれらを貫くこともできるが、わたしの手で造られたすべてのものの中で、あなたの兄弟たちの中にあるような大きな悪事のあったことはない。
37 しかし見よ、彼らの罪はその先祖の頭にある。サタンが彼らの父となり、彼らの行く末は悲惨なものとなる。そして、すべての天が、まことにわたしの手で造られたすべてのものが、彼らのために泣くであろう。それゆえ、これが苦しむのを見て、どうして天が泣かないということがあろうか。
38 しかし見よ、あなたがその目で見ているこれらの者は、洪水の中で滅びるであろう。見よ、わたしは彼らを締め出す。わたしは彼らのために獄を用意している。
39 また、わたしの選んだ者がわたしの前で嘆願した。それゆえ、彼は彼らの罪のために苦しみを受ける。わたしの選んだ者がわたしのもとに帰る日に彼らが悔い改めるならば、その日まで、彼らは苦しみの中にいるであろう。
40 このゆえに、天と、わたしの手で造られたすべてのものは泣くのである。」
41 そして、主はエノクに語り、人の子らのすべての行いをエノクに告げられた。そこでエノクはそれを知り、彼らの悪事と惨めな状態を見て泣き、その両腕を伸べた。すると、彼の心は永遠のように膨れ広がり、その胸は悲しみに打たれた。そして、永遠なるものすべてが揺れ動いた。
42 エノクはまた、ノアとその家族を見た。ノアのすべての息子たちの子孫が現世の救いを得るのを、彼は見た。
43 エノクはノアが箱舟を造るのを見た。また、主がそれを見てほほえみ、御手の中にそれを保たれるのを、エノクは見た。しかし、悪人の残りの者には洪水が押し寄せ、彼らをのみ込んでしまった。
44 エノクはこれを見ると、心に苦しみを覚え、その兄弟たちのために泣いて、天に向かって、「わたしは慰められるのを拒みます」と言った。しかし、主はエノクに言われた。「心を高めて喜び、そして見なさい。」
45 そして、エノクは見た。すると、ノアから始まり、地のすべての氏族が見えた。そこで、彼は主に叫んで言った。「いつ主の日が来るのでしょうか。いつ義なる御方の血が流されて、嘆き悲しむすべての者が聖められ、永遠の命を受けられるようになるのでしょうか。」
46 主は言われた。「それは時の中間、悪事と報復の時代である。」
47 見よ、エノクは、人の子がまことに肉体を取ってこられる日を見た。そして、彼は心から喜んで言った。「義なる御方が上げられる。小羊は世の初めからほふられている。信仰によって、わたしは御父の懐におり、まことに、シオンはわたしとともにある。」
48 それから、エノクは地を見た。すると、地の中から声が聞こえた。「災いだ。人々の母であるわたしは、災いだ。わたしの子供たちの悪事のゆえに、わたしは苦しみ、疲れている。わたしはいつ安息を得て、わたしより出た汚れから清められるのか。わたしの創造主はいつわたしを清めてくださり、わたしが安息を得て、義がしばらくの間わたしの面にあるようにしてくださるのか。」
49 エノクは地が嘆き悲しむのを聞いたとき、泣いて、主に叫んで言った。「おお、主よ、あなたは地に哀れみをかけられないのですか。あなたはノアの子孫を祝福なさらないのですか。」
50 エノクは主に叫び続けて言った。「おお、主よ、地が2度と洪水で覆われることのないように、ノアとその子孫を憐れんでくださるよう、わたしはあなたの独り子、すなわちイエス・キリストの御名によって願い求めます。」
51 そこで、主はそれに応じないではいられなかった。そして、主はエノクに聖約し、洪水をとどめることと、ノアの子孫に呼びかけることを彼に誓って約束された。
52 そして、主は、大地のあるかぎり、彼の子孫の残りの者がいつまでもすべての民族の中に見いだされるという不変の定めを出された。
53 そして、主は言われた。「子孫からメシヤが出る者は、幸いである。彼は、『私はメシヤであり、シオンの王であり、永遠のように広い天の岩である。だれでも門を入り、わたしによって登る者は、決して落ちることがない。それゆえ、わたしが語った者たちは、幸いである。彼らは永遠の喜びの歌を歌いながら来るからである』と言う。」
54 さらに、エノクは主に叫んで言った。「人の子が肉体を取って来られるとき、地は安息を得るのでしょうか。どうか、これらのことをわたしにお示しください。」
55 すると、主はエノクに、「見なさい」と言われた。そこで、彼が眺めると、人の習わしに従って人の子が十字架に上げられるのが見えた。
56 また、彼は大きな声を聞いた。天が覆われ、神が創造されたすべてのものが嘆き悲しみ、地がうめき、もろもろの岩が裂けた。また、聖徒たちがよみがえって、人の子の右において栄光の冠を受けた。
57 獄にいた霊たちの多くが出て来て、神の右に立った。そして、残りの者は、大いなる日の裁きまで暗闇の鎖につながれていた。
58 そこで再び、エノクは泣き、主に叫んで言った。「地はいつ安息を得るのでしょうか。」
59 するとエノクは、人の子が御父のもとに昇って行かれるのを見た。そこで、彼は主に呼びかけて言った。「あなたは再び地上に来られないのでしょうか。あなたは神であられ、わたしはあなたを知っており、あなたはわたしに誓いをなし、あなたの独り子の名によって尋ねるようにわたしに命じられました。あなたはわたしを造り、あなたの御座に至る権利を、わたし自身によらず、あなた御自身の恵みによってわたしに与えてくださいました。それでわたしは、あなたが再び地上に来られるかどうかお尋ねするのです。」
60 すると、主はエノクに言われた。「わたしが生きているように確かに、わたしは終わりの時に、すなわち悪事と報復の時代に来て、わたしがノアの子孫に関してあなたに立てた誓いを果たそう。
61 地が安息を得る日が来る。しかし、その日の前に、天は暗くなり、暗黒の幕が地を覆うであろう。天が震え、地も震えるであろう。そして、ひどい艱難が人の子らの中にあるが、わたしは自分の民を守ろう。
62 また、わたしは天から義を下そう。また、地から真理を出して、わたしの独り子と、死者の中からの独り子の復活と、またすべてに人の復活について証しよう。そして、わたしは義と真理が洪水のごとくに地を満たすようにし、わたしが備える場所、すなわち聖なる都に地の四方からわたしの選民を集めよう。それは、わたしの民がその腰に帯を締め、わたしの来臨の時を待ち望めるようにするためである。わたしの幕屋はそこにあり、そこはシオン、すなわち新エルサレムと呼ばれるであろう。」
63 また、主はエノクに言われた。「そのとき、あなたとあなたの町のすべての者はそこで彼らに会い、わたしたちは彼らを懐に迎え入れ、彼らはわたしたちを見るであろう。そして、わたしたちは彼らの首を抱き、彼らはわたしたちの首を抱いて、わたしたちは互いに口づけをするであろう。
64 わたしの住まいはそこにある。それは、わたしが造ったすべての創造物の中から出て来るシオンである。そして、千年の間、地は安息を得るであろう。」
65 それからエノクは、人の子が千年の間地上で義のうちに住むために、終わりの時に来られる日を見た。
66 しかし、その日の前にひどい艱難が悪人の中にあるのを、彼は見た。彼はまた海も見たが、それは荒れていた。そして、人々は気落ちして、悪人に下る全能の神の裁きを恐れながら待っていた。
67 主はエノクに、まことに世の終わりに至るまですべてのことを示された。そして、彼は義人の日、彼らの贖いの時を見て、喜びに満たされた。
68 エノクの生涯におけるシオンの時代は、合わせて365年であった。
69 エノクとそのすべての民は神とともに歩み、彼はシオンの中に住んだ。それから、シオンはなくなった。神が御自身の懐にそれを迎え入れられたからである。そのことから、「シオンは消え失せた」という言葉が広まった。

第8章

(1831年2月)
メトセラ、預言する。ノアとその息子たち、福音を宣べ伝える。ひどい悪事が広がる。悔い改めの呼びかけは無視される。神は洪水によるすべての肉なるものの滅びを定められる。

01 エノクの年は合わせて430年であった。
02 エノクの息子メトセラは、主がエノクに立てられた聖約が果たされるために取り去られなかった。主はまことにエノクに、ノアが彼の腰から出ると聖約されたからである。
03 そこで、メトセラは自分の子孫から(ノアを通して)地のすべての王国が出ると預言し、栄光を自分のものとした。
04 地にひどい飢饉が起こった。主はひどいのろいをもって地をのろわれ、地に住む多くの者が死んだ。
05 さて、メトセラは187歳になって、メレクをもうけた。
06 メトセラはレメクをもうけた後、782年生きて、息子、娘たちをもうけた。
07 メトセラの年は合わせて969歳であった。そして、彼は死んだ。
08 レメクは182歳になって、男の子をもうけ、
09 「この子こそ、主が地をのろわれたため、骨折りを働く我々を慰めるもの」と言って、その子をノアと名付けた。
10 レメクはノアをもうけた後、595年生きて、息子、娘たちをもうけた。
11 レメクの年は合わせて777歳であった。そして、彼は死んだ。
12 ノアは450歳でヤペテをもうけ、42年後にヤペテの母によってセムをもうけ、500歳のときにハムをもうけた。
13 ノアとその息子たちは主の言葉を聴いて、心に留めた。そして、彼らは神の子と呼ばれた。
14 これらの人が地の面に増え始め、娘たちが彼らに生まれたとき、人の子らはこれらの娘が美しいのを見て、自分たちの選んだものを妻とした。
15 主はノアに言われた。「あなたの息子たちの娘たちは自分自身を売り渡した。見よ、わたしの怒りは人の子らに向かって燃えている。彼らがわたしの声に聞き従おうとしないからである。」
16 そこで、ノアは預言し、神にかかわることを、それが初めにあったとおりに教えた。
17 主はノアに言われた。「わたしの御霊はいつでも人を励ますわけではない。人はすべての肉なるものが死ぬことを知るであろう。それでも、人の年は120年である。もし人々が悔い改めなければ、わたしは彼らに洪水を送ろう。
18 その時代には地上に巨人たちがおり、彼らはノアを捜して命を取ろうとした。しかし、主がノアとともにおられ、主の力が彼の上にあった。
19 そして、主は御自身の位に従う者としてノアを聖任され、彼に、出て行って、エノクに与えられたとおりに人の子らに福音を告げ知らせるように命じられた。
20 そこで、ノアは人の子らに、悔い改めるようにと呼びかけた。しかし、彼らはノアの言葉に耳を傾けなかった。
21 また、彼らはノアの語ることを聞いた後、彼の前にやって来て言った。「見よ、我々は神の子だ。我々は人の娘たちをめとったではないか。我々は食べたり、飲んだり、めとったり、嫁いだりしているではないか。我々の妻は我々に子供を産み、その子たちは昔の人々のように勇士であり、非常に名高いものたちである。」こうして、彼らはノアの言葉に耳を傾けなかった。
22 神は、人の悪が地上でひどくなり、すべての人がその心に思い計ることで高ぶっており、いつも悪いことばかりを考えているのを御覧になった。
23 そこで、ノアは民に教えを説き続けて言った。「聴きなさい。わたしの言葉に心を留めなさい。
24 信じて罪を悔い改め、わたしたちの先祖のように神の御子イエス・キリストの御名によってバプテスマを受けなさい。そうすれば、あなたがたは聖霊を受けて、すべてのことが明らかにされるであろう。もしこのことをしなければ、洪水があなたがたを襲うであろう。」それでも、彼らは耳を傾けなかった。
25 ノアは、主が地上に人を造られたことを悔やみ、心を痛めた。彼はそれを心に深く悲しんだ。
26 すると、主は言われた。「わたしが創造した人を地の面からぬぐい去ろう。人も獣も、這うものも、空の鳥までも。わたしがそれらを創造し、それらを造ったことを、ノアが悔やんでいる。彼はわたしに呼び求めてきた。彼らが彼の命を取ろうとしたからである。」
27 このようにして、ノアは神の前に恵みを得た。ノアは正しい人であり、その時代の人々の中で完全であったからである。彼は神とともに歩んだ。その3人の息子、セム、ハム、ヤペテも同様であった。
28 世は神の前に堕落して、暴虐が地に満ちた。
29 神が地を見られると、まことにそれは堕落していた。すべての肉なるものが地の上でその道を乱したからである。
30 そこで、神はノアに言われた。「すべての肉なるものの終わりが、わたしの前に来ている。地は暴虐で満ちている。まことに、わたしはすべての肉なるものを地から滅ぼそう。」