アブラハム書





ジョセフ・スミスがパピルスから翻訳したもの

エジプトの地下墓地から得られた幾つかの昔の記録の翻訳。「アブラハム書」と呼ばれる、アブラハムがエジプトにいた間に彼自身の手でパピルスに記した書き物(『教会歴史』第2巻、235−236、348−351ページを参照)。

第1章

アブラハム、族長制度の祝福を求める。アブラハム、カルデヤで偽祭司たちによって迫害される。エホバがアブラハムを救い出される。エジプトの起源と政体が概観される。

01 わたしの先祖が住んでいたカルデヤ人の地において、わたしアブラハムは、別の居住の地を得ることが自分にとって必要であるのを知った。
02 また、わたしのためにさらに大いなる幸福と平安と安息があるのを知り、わたしは先祖の祝福と、私が聖任されるべきそれらの祝福をつかさどる権利とを得ようと努めた。わたしは自分自身が義に従うものであったので、また、多くの知識を持つ者となり、義に従うさらに大いなる者となることを望み、もっと多くの知識を持ち、多くの国民の先祖、平和の君となることを望み、また数々の指示を受け、神の戒めを守ることを望んだので、先祖に属する権利を持つ正当な相続人、大祭司となった。
03 それは先祖からわたしに授けられた。それは先祖から、時の初めから、まことに初めから、すなわち地が造られる前から現在まで伝わったものである。それは長子、すなわち最初の人、すなわちアダム、すなわち最初の先祖の権利であり、先祖たちを通してわたしに至ったものである。
04 わたしは、子孫に関して先祖に与えられた神の定めに従って、神権に任じられることを求めた。
05 わたしの先祖は、彼らの義と主なる彼らの神が与えられた聖なる戒めから離れて、異教徒の神々を礼拝し、わたしの言葉を聴くのをまったく拒んだ。
06 彼らは悪を行うことをその心に留め、エルケナの神と、リブナの神と、マーマクラの神と、コラシの神と、エジプトの王パロの神にすっかり頼り切っていたからである。
07 そこで、彼らは異教徒の犠牲にその心を向けて、これら口の聞けない偶像に彼らの子供たちをささげ、わたしの声を聴こうとせず、エルケナの祭司の手によってわたしの命を取ろうとした。エルケナの祭司はまた、パロの祭司であった。
08 さて当時、カルデヤの地に築かれた祭壇上でこれら異国の神々への犠牲として男女や子供をささげることが、エジプトの王パロの習わしであった。
09 そして、祭司はエジプト人の流儀に従って、パロの神にささげ物をし、またシャグレールの神にもささげ物をした。ところで、シャグレールの神は太陽であった。
10 パロの祭司は、オリシェムの平野の奥にあるポテパルの丘と呼ばれた丘のそばにあった祭壇上で、子供を感謝のささげ物としてささげることさえ行った。
11 さて、この祭司は、かつてこの祭壇上で3人のおとめをささげた。このおとめたちは、ハムの直系の王家の一人であるオニタの娘たちであった。このおとめたちはその節操のゆえにささげられたのである。彼女たちは木や石の神々をひれ伏して拝もうとしなかったために、この祭壇上で殺された。そして、それはエジプト人の流儀に従って行われた。
12 さて、祭司たちはわたしに暴力を振るい、この祭壇上でそのおとめたちを殺したように、わたしも殺そうとした。この祭壇について知るために、この記録の初めにある絵図を参照してほしい。
13 それはカルデヤ人の間で用いられたような寝台の形に倣って造られ、エルケナ、リブナ、マーマクラ、コラシの神々の前、およびエジプトの王パロの神に似た神の前に置かれていた。
14 あなたがたがこれらの神々について理解できるように、わたしは冒頭の図形中にそれらの型を示した。このような種類の図形を、カルデヤ人はラーレーノスと呼ぶ。それは象形文字という意味である。
15 彼らがわたしをささげて命を取るために、その手をわたしの上に振り上げたとき、見よ、わたしは主なる神に声を上げた。すると、主は耳を傾けて聴いてくださり、全能者の示現でわたしを満たしてくださった。そして、主の前の天使がわたしの傍らに立ち、直ちに縄を解いてくれた。
16 そして、主の声がわたしに及んだ。「アブラハム、アブラハム、見よ、わたしの名はエホバである。わたしはあなたの声を聞いた。そして、あなたを救い出し、あなたを父の家から、すべての親族からあなたの知らない異国の地へ連れ出すために降って来た。
17 これは、彼らがその心をわたしから背けて、エルケナの神と、リブナの神と、マーマクラの神と、コラシの神と、エジプトの王パロの神を礼拝したためである。そこでわたしは、彼らに報いを下し、わたしの子であるあなたアブラハムの命を取ろうとして手を振り上げた者を滅ぼすために、降ってきたのである。
18 見よ、わたしはわたしの手によってあなたを導こう。わたしはあなたを受け入れて、わたしの名、すなわちあなたの父の神権を与えよう。わたしの力はあなたのうえにあるであろう。
19 それはノアとともにあったように、あなたとともにあるであろう。しかし、あなたの働きによって、わたしの名はとこしえにこの世に知られるであろう。わたしはあなたの神だからである。」
20 見よ、ポテパルの丘は、カルデヤのウルの地にあった。主はエルケナの祭壇とその地の神々の祭壇を壊し、それらを完全に破壊し、祭司を打たれたので、彼は死んだ。そして、カルデヤに、またパロの宮廷に大きな嘆きがあった。パロとは、王族の血統による王を意味する。
21 さて、このエジプトの王は、ハムの腰から出た子孫であり、生まれはカナン人の血統を引いた者であった。
22 この家系からすべてのエジプト人が出て、カナン人の地がその地に残されたのである。
23 エジプトの地は最初に一人の女によって発見された。この女はハムの娘であり、エジプタスの娘であった。エジプタスとは、カルデヤ語でエジプトを意味し、禁じられたものいう意味である。
24 この女がその地を発見したとき、それは水の下にあったが、後に彼女はそこに息子たちを定住させた。このようにして、ハムから、その地にのろいをとどめた人種が出たのである。
25 さて、エジプトの最初の政府は、ハムの娘であるエジプタスの長男パロによって設けられた。それはハムの政府に倣い、族長制であった。
26 パロは義にかなった人であり、王国を設立して、生涯賢明かつ公正に民を治め、最初の世代、最初族長統治の時代、すなわちアダムやノアの治世に先祖たちによって設けられた制度を模倣しようと熱心に努めた。ノアは彼の先祖であり、彼に地の祝福と知恵の祝福を授けたが、神権に関しては彼をのろった。
27 さて、パロは神権の権利を持つことのできない血統の出であったが、パロたちは、ハムを通してノアからそれを受けたと自ら主張した。そのために、わたしの父は彼らの偶像崇拝に惑わされたのである。
28 しかし、わたしはこの後、わたし自身から創造の初めまでさかのぼって年代記を書くようにしよう。数々の記録がわたしの手に入り、わたしは現在までそれを所有しているからである。
29 さて、エルケナの祭司が打たれて死んだ後、その地に飢饉があるであろうとカルデヤの地についてわたしに言われたことが成就した。
30 このために、飢饉がカルデヤの全地に広がった。すると、わたしの父はその飢饉のためにひどく苦しみ、わたしの命を取ろうとわたしに対して企てた悪事を悔いた。
31 しかし、神権の権利に関する先祖すなわち族長たちの記録を、主なるわたしの神は、わたしの手の中に残された。したがって、創造の始まりと、もろもろの遊星と、もろもろの星の知識を、それが先祖に知らされたとおりに、わたしは今日まで保持してきたのである。そこで、わたしの後に来る子孫の益のために、わたしはこれらの事柄の多くをこの記録に書くようにしよう。

第2章

アブラハム、ウルの地を去ってカナンの地へ向かう。エホバ、ハランでアブラハムに御姿を現される。すべての福音の祝福がアブラハムの子孫に、またアブラハムの子孫を通してすべての人に約束される。アブラハム、カナンへ行き、続いてエジプトに向かう。

01 さて、主なる神がウルの地において飢饉をひどくされたので、わたしの兄弟ハランは死んだ。しかし、わたしの父テラはなお、カルデヤのウルの地に住んでいた。
02 そして、わたしアブラハムはサライをめとり、わたしの兄弟ナホルはミルカをめとった。ミルカはハランの娘であった。
03 さて、主はわたしに言われた。「アブラハム、あなたは国を出て、親族と別れ、父の家を離れ、わたしが示す地に行きなさい。」
04 そこで、わたしはカルデヤのウルの地を去り、カナンの地に向かった。わたしは兄弟の子ロトとその妻、およびわたしの妻サライを連れて行った。わたしの父も、わたしたちがハランと名付けた地までわたしについて来た。
05 そして、飢饉が和らいだ。すると、父はハランにとどまり、そこに住んだ。ハランには多くの羊の群れがあったからである。父は再び偶像礼拝に戻り、そのためにハランにとどまった。
06 しかし、わたしアブラハムとわたしの兄弟の子ロトは、主に祈った。すると、主はわたしに現れて言われた。「立って、ロトを伴って行きなさい。わたしはあなたをハランから連れ出し、異国の地において、あなたをわたしの名を負う使え人にすると定めたからである。あなたの後の子孫がわたしの声に聞き従うとき、わたしはその地を彼らに永遠の所有として与えるであろう。
07 わたしは主なるあなたの神である。わたしは天にすみ、地はわたしの足台である。わたしが海の上に手を差し伸べると、それはわたしの声に従う。わたしは風と火をおこしてわたしの車とする。わたしが山々に向かって『ここを去れ』と言えば、見よ、それらは突如一瞬にして旋風により取り去られる。
08 わたしの名はエホバであり、わたしは初めから終わりを知っている。それゆえ、わたしの手はあなたのうえにある。
09 わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを計り知れないほど祝福し、あなたの名をすべての国民の間で大いなるものとしよう。あなたはあなたの後の子孫にとって祝福の基となり、彼らはすべての国民にこの務めと神権を携えていくであろう。
10 わたしはあなたの名によって彼らを祝福しよう。この福音を受け入れるすべての者はあなたの名によって呼ばれ、あなたの子孫と見なされ、立ち上がってあなたを父としてたたえるであろう。
11 あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地のすべての氏族は、あなた(すなわち、あなたの神権)によって、また、この権利はあなたによって続くという約束をわたしはあなたに与えるのであなたの子孫(すなわち、あなたの神権)によって、またあなたの後の子孫(すなわち、文字通りの子孫、肉体の子孫)によって、救いの祝福すなわち永遠の命の祝福である福音の祝福を授けられるであろう。」
12 さて、主がわたしに語るのをやめて、わたしから退かれた後、わたしは心の中で言った。「あなたの僕はあなたを熱心に求めてきました。そして今、わたしはあなたを見いだしました。
13 あなたは天使を遣わして、エルケナの神々からわたしを救い出してくださいました。わたしはあなたの御声によく聞き従うようにしますので、あなたの僕を立ち上がらせて、安らかに去らせてください。」
14 それで、わたしアブラハムは、主が言われたように出かけた。ロトもわたしと一緒に行った。わたしアブラハムはハランを出たとき、62歳であった。
15 わたしは、カルデヤのウルにいたときにめとったサライと、わたしの兄弟の子ロトと、わたしたちが集めたすべての財産と、ハランで得た人々を伴ない、カナンの地へ向かう道に出て、道を進みながら天幕に住んだ。
16 したがって、わたしたちがハランからジェルションを通ってカナンの地へ向かう旅をしていたとき、永遠はわたしたちの覆いであり、わたしたちの岩であり、わたしたちの救いであった。
17 さて、わたしアブラハムは、ジェルションの地で祭壇を築き、主にささげ物をして、わたしの父の家から飢饉が去って彼らが滅びることのないようにと祈った。
18 その後、わたしたちは、ジェルションからその地を通ってシケムの地に着いた。それはモレの平野にあり、わたしたちはすでにカナン人の地の境に入っていた。わたしはモレの平野のそこで犠牲をささげ、心から主に呼び求めた。すでに偶像礼拝をする民族の地に入っていらからである。
19 すると、主はわたしの祈りに答えて、わたしに現れ、「わたしはあなたの子孫にこの地を与える」と言われた。
20 そこで、わたしアブラハムは、主のために築いた祭壇の所から立ち上がり、そこからべテルの東の山に移って天幕を張った。西にはベテル、東にはアイがあった。そこにわたしは主のために別の祭壇を築いて、再び主の名を呼んだ。
21 そして、わたしアブラハムはなおも進んで、南へ旅を続けた。その地には飢饉が続いていた。そこで、わたしアブラハムはエジプトに下って行き、そこに滞在することにした。飢饉が非常に激しくなったからである。
22 さて、わたしがエジプトに入ろうとしてそこに近づいたとき、主はわたしに言われた。「見よ、あなたの妻サライは、見るに非常に美しい女である。
23 それで、エジプト人はサライを見ると、『この女はあの男の妻だ』と言ってあなたを殺し、サライは生かしておくであろう。それゆえ、あなたは次のように行なうようにしなさい。
24 サライに、あなたの妹であるとエジプト人に言わせなさい。そうすれば、あなたの命は助かるであろう。」
25 そこで、わたしアブラハムは、主がわたしに言われたことをすべて妻サライに告げた。「だから、どうかわたしの妹だと彼らに言ってほしい。そうすれば、わたしはあなたのおかげで無事であり、わたしの命はあなたによって助かるであろう。」

第3章

アブラハム、ウリムとトンミムによって太陽と月と星のことを知る。主はアブラハムに、霊の永遠性を明らかにされる。アブラハム、前世と予任、創造、贖い主の選び、人の第2の位のことを知る。

01 わたしアブラハムは、主なるわたしの神がカルデヤのウルでわたしに与えてくださったウリムとトンミムを持っていた。
02 そこで、わたしが数々の星を見ると、それらはきわめて大いなるもので、その中の一つは神の御座の最も近くにあった。また、その近くには大いなる星が多数あった。
03 主はわたしに言われた。「これらは支配する星である。そして、その大いなる星はわたしの近くにあるので、その名をコロブという。わたしは主なるあなたの神である。わたしは、あなたが今立っている星と同じ系統に属するすべての星を治めるように、この星をおいた。
04 主は、ウリムとトンミムによってわたしに言われた。「コロブは、その回転による時と季節については主の場合と同じであり、その1回転は主の計算の方法によれば主の1日であって、それはあなたが今立っている星に定められた時によれば千年である。これはコロブの計算による主の時の計算である。」
05 主はわたしに言われた。「小さい光である遊星、すなわち夜をつかさどる遊星は、昼をつかさどるものよりも小さいが、計算の点では、あなたが今立っているものよりも上位にある、すなわちもっと大いなるものである。それはもっとゆっくり整然と運行しているからである。これが秩序にかなっているのは、それがあなたの立っている地よりも上位にあるからである。それゆえ、その時の計算は、その日と月と年の数に関してはそれほど多くはない。」
06 主はわたしに言われた。「さて、アブラハム、これら2つの事実がある。見よ、あなたはそれを見ている。あなたには、計算の時と定められた時、すなわち、あなたが立っている地の定められた時と、昼をつかさどるために置かれている大いなる光の定められた時と、夜をつかさどるために置かれている小さい光の定められた時を知ることが許されている。
07 さて、小さな光の定められた時は、その時の計算に関しては、あなたが立っている地の時の計算よりも長い。
08 これらの2つの事実がある所では、これらの上にまた別の事実がある。すなわち、時の計算がさらに長い別の遊星があるということである。
09 このように、ある遊星の時の計算は別の遊星のそれよりも上位にあり、ついにあなたはコロブに近づく。このコロブは主の時の計算に等しい。このコロブは神の御座の近くに置かれ、あなたが立っている遊星と同じ系統に属するすべての遊星を支配する。
10 あなたには、神の御座に近づくまで、光を与えるために置かれているすべての星の定められた時を知ることが許されている。」
11 このように、わたしアブラハムは、人が互いに語り合うように顔と顔を合わせて主と語った。そして、主はその手で造られたものについてわたしに告げられた。
12 主はわたしに、「息子よ、息子よ(このように言って御手を伸ばされ)、見よ、わたしはあなたにこれらすべてを示そう」と言われた。そして、主がその手をわたしの両目に当てられると、主の手で造られたそれらのものがわたしに見えたが、それらは数多かった。それらはわたしの目の前で増えて、わたしはその終わりを見ることができなかった。
13 主はわたしに言われた。「これはシネハ、すなわち太陽である。」また、主はわたしに言われた。「オレア、これは月である。」また、主はわたしに言われた。「コカーベアム、これはもろもろの星、すなわち天の大空にあるすべての大きな光を意味する。」
14 主がこれらの言葉をわたしに告げられたのは、夜であった。「わたしはこれらのように、あなたとあなたの後の子孫を増やそう。もしあなたが砂の数を数えることができるとすれば、あなたの子孫の数もそのようであろう。」
15 そして、主はわたしに言われた。「アブラハム、あなたがエジプトに入るに先立って、わたしはあなたにこれらのものを示す。それは、あなたがこれらの言葉をすべて告げるためである。
16 もし2つのものがあって、一つが他よりも上位にあるとすれば、これらよりもさらに大いなるものがある。コロブは、あなたが見たすべてのコカーベアムの中で最も大いなるものである。それはわたしの最も近くにあるからである。
17 さて、もし2つのものがあって、一つが他よりも上位にあり、月が地よりも上位にあるとすれば、それよりも上位にある遊星、あるいは星もある。主なるあなたの神が行おうと心にかけたことで、行なわないことはない。
18 とはいえ、主はさらに大いなる星を造った。同じように、もし2つの霊がいて、一方が他方よりも英知に優れているとしても、一方が他方よりも英知に優れているにもかかわらず、これら2つの霊には初めがない。彼らは以前に存在しており、彼らには終わりがなく、彼らは後にも存在する。彼らはグノーラーム、すなわち永遠だからである。」
19 主はわたしに言われた。「実にこれら2つの事実がある。すなわち、2つの霊がいて、一方が他方よりも英知に優れている。彼らよりもさらに英知の優れた別の霊がいる。わたしは主なるあなたの神であって、わたしは彼らすべてよりも英知が優れている。
20 主なるあなたの神は天使を遣わして、エルケナの祭司の手からあなたを救い出した。
21 わたしは彼らすべての中に住んでいる。そして、わたしの手で造ったものをあなたに告げ知らせるために、わたしは今あなたのもとに降って来たのである。これにおいて、わたしの知恵は彼らすべてに勝っている。わたしはあらゆる知恵と思慮とをもって、あなたがその目で初めから見てきたすべての英知たちを、上は天で、下は地で治めているからである。わたしは初めに、あなたの見たすべての英知たちの中に降って来た。」
22 さて、主はわたしアブラハムに、世界が存在する前に組織された英知たちを見せてくださった。そして、これらすべての中には、高潔で偉大な者たちが多くいた。
23 神がこれらの者を見られると、彼らは良かった。そこで、神は彼らの中に立って言われた。「私はこれらの者を、治める者としよう。」神は霊であったこれらの者の中に立って、見て、彼らを良しとされたからである。また、神はわたしに言われた。「アブラハム、あなたはこれらの者の一人である。あなたは生まれる前に選ばれたのである。」
24 そして、彼らの中に神のような者が一人立ち、ともにいた者たちに言った。「あそこに空間があるので、わたしたちは降って行こう。そして、これらの材料を取って、これらの者が住む地を造ろう。
25 そして、わたしたちはこれによって彼らを試し、何であろうと、主なる彼らの神が命じられるすべてのことを彼らがなすかどうかを見よう。
26 第1の位を守る者は付け加えられるであろう。また、第1の位を守らない者は、第1の位を守る者と同じ栄光を受けることはない。さらに、第2の位を守る者は、とこしえに栄光をその頭に付け加えられるであろう。」
27 また、主は言われた。「わたしはだれを遣わそうか。」 すると、一人が人の子のように答えた。 「わたしがここにいます。わたしをお遣わしください。」 また、別の者が答えて言った。 「わたしがここにいます。わたしをお遣わしください。」 そこで主は言われた。 「わたしは最初の者を遣わそう。」
28 すると第2の者は怒り、その第1の位を守らなかった。そして、その日、多くの者が彼に従った。

第4章

神々、地とその上のすべての生き物の創造を計画される。6日間の創造のための神々の計画が明らかにされる。

01 その後、主は、「降って行こう」と言われた。そして、彼らは最初に降って行き、彼らすなわち神々は、天と地を組織し、形造られた。
02 地は形造られた後、むなしく、荒涼としていた。彼らが地のほかに何も形造られておられなかったからである。そして、闇が深い淵の面を支配し、神々の御霊が水の面を覆っていた。
03 彼ら(神々)は、「光あれ」と言われた。すると光があった。
04 彼ら(神々)はその光を知覚された。それが輝いていたからである。そして、彼らはその光を闇から分けられた、すなわち光が分けられるようにされた。
05 神々は光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕から朝までを夜と呼び、朝から夕までを昼と呼ばれた。これが、彼らが昼、夜と呼ばれたものの最初、すなわち初めであった。
06 神々はまた言われた。「水の間に天空があって、水と水とを分けよ。」
07 神々は、天空の下にある水と天空の上にある水を分けるように天空に命じられた。すると、彼らが命じられたようになった。
08 神々はその天空を天と呼ばれた。夕から朝までを夜と呼び、朝から夕までを昼と呼ばれた。これが、彼らが夜、昼と呼ばれた第2の時であった。
09 神々は命じて、「天の下の水は一つ所に集まり、地は乾いて現れよ」と言われた。すると、神々が命じられたようになった。
10 神々は乾いた地を陸と宣言し、水の集まった所を大海と宣言された。神々はそれらが従うのを見られた。
11 神々は言われた。「地を備えて、青草と、種を持つ草と、種類に従って自らの形を生じる種を持つ実を結ぶ果樹を地の上に生えさせよう。」すると、神々が命じられたようになった。
12 神々は地を組織して、青草がその種から生えるようにし、また草がその種から生え、種類に従って種を生じるようにされた。また地を組織して、木をその種から生えさせ、種類に従って同じもののみを生じる種を持つ実を結ぶようにされた。神々はそれらが従うのを見られた。
13 そして、神々は日を数えられた。夕から朝までを夜と呼び、朝から夕までを昼と呼ばれた。それが第3の時であった。
14 神々は天の大空に光を組織して、それらに昼と夜とを分けさせ、またそれらを組織して、しるしのため、季節のため、日のため、年のためとならせ、
15 またそれらを組織して、天の大空にあって地を照らす光とならせられた。すると、そのようになった。
16 神々は2つの大きな光を組織して、大きい光に昼をつかさどらせ、小さい光に夜をつかさどらせられた。また、小さい光とともにもろもろの星も置かれた。
17 神々はこれらを天の大空に置いて地を照らさせ、昼と夜とをつかさどらせ、光と闇とを分けさせられた。
18 神々は命じられたこれらのものが従うまで見守られた。
19 夕から朝まで夜があり、朝から夕まで昼があった。それが第4の時であった。
20 神々は言われた。「水を備えて、命を持つ動く生き物を豊かに生じさせ、また鳥が地の上、天の大空を飛ぶようにさせよう。」
21 神々は水を備えて、海の大いなる獣と、水に群がるすべての動く生き物とをその種類に従って生じさせ、また翼のあるすべての鳥をその種類に従って生じさせられた。そして、神々はそれらが従うのを見、またその計画が良いのを見られた。
22 神々は言われた。「わたしたちはこれらを祝福して、生み、増え、海の水すなわち大海に満ちるようにさせ、また鳥も地に増えさせよう。」
23 そして、夕から朝までを、神々は夜と呼ばれた。また、朝から夕までを、昼と呼ばれた。それが第5の時であった。
24 神々は地を備えて、生き物をその種類に従って生じさせ、家畜と、這うものと、地の獣とをその種類に従って生じさせられた。そして、神々の言われたようになった。
25 神々は地を組織して、獣をその種類に従い、家畜をその種類に従い、また地を這うすべてのものをその種類に従って生じさせられた。神々はそれらが従うのを見られた。
26 神々は協議して言われた。「降って行って、わたしたちの形に、わたしたちにかたどって人を形作ろう。そして、彼らに、海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべてのものと、地のすべての這うものを治めさせよう。」
27 そこで、神々は降って行って、御自分の形に人を組織し、神々の形に人を形造り、男と女に形造られた。
28 そして、神々は、「彼らを祝福しよう」と言われた。また、神々は言われた。「彼らに、生み、増え、地に満ち、地を従わせるようにさせよう。また、海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物を治めさせよう。」
29 また、神々は言われた。「見よ、わたしたちは全地の面に生える種を持つすべての草と、実を結ぶすべての木を彼らに与えよう。まことに、種を生じる木の実を彼らに与えよう。それは彼らの食物となるであろう。
30 また地のすべての獣、空のすべての鳥、地を這うすべてのものに、まことに、命を与えよう。さらに、これらに食物としてすべての青草を与えよう。すべてこれらのものはこのようにして組織されるであろう。」
31 神々は言われた。「わたしたちは言ったことをすべて行い、これらを組織しよう。見よ、これらはよく従うであろう。」そして、夕から朝までを夜と呼び、朝から夕までを昼と呼ばれた。神々は第6の時を数えられた。

第5章

神々、万物の創造の計画を終えられる。神々、その計画に従って創造を成し遂げられる。アダム、すべての生き物に名を付ける。

01 「このようにしてわたしたちは天と地と、その万象を完成しよう。」
02 神々は互いに言われた。「第7の時に、わたしたちの協議した業を終えよう。そして、第7の時に、わたしたちの協議したすべての業を離れて休もう。」
03 神々は第7の時に終えられた。第7の時に、神々は協議して形造ったすべての業を離れて休もうとされたからである。そして、それを聖別された。神々が天と地を形造ろうとして協議したときに決められたことは、このとおりであった。
04 これが、神々が降って来て、これらを形造られた天地創造の由来である。神々が天と地を形造られたとき、
05 そべて神々が言われたとおりに、野のすべての植物については、地にはまだそれが生えておらず、また野のすべての草も生えていなかった。神々がこれらを行なうことを協議されたとき、地にまだ雨を降らせておらず、土を耕す人も形造っておられなかったからである。
06 しかし、霧が地から立ち上って、土の全面を潤した。
07 神々は土のちりで人を形造り、彼の霊(すなわち、人の霊)を取ってそれを彼の中に入れられた。そして、命の息をその鼻に吹き入れられると、人は生けるものとなった。
08 神々はエデンの中の東の方に一つの園を設けて、神々が先に形造った体の中にその霊を入れた人をそこに置かれた。
09 また、神々は、見て美しく、食べるに良いすべての木を土から生えさせ、さらに園の中央に命の木と善悪を知る木を生えさせられた。
10 エデンから流れ出る一つの川があって園を潤し、それはそこから分かれて4つの川となった。
11 神々は人を連れて行ってエデンの園に置き、これを耕させ、これを守らせられた。
12 神々はその人に命じて言われた。「あなたは園のどの木からでも心のままに取って食べてよろしい。
13 しかし、善悪を知る木からは取って食べてはならない。あなたはそれを食べるときに、必ず死ぬからである。」さて、わたしアブラハムは、それが主の時、すなわちコロブの時に基づいているのを知った。神々はまだアダムに時の計算を定めておられなかったからである。
14 また、神々は言われた。「この人にふさわしい助け手を造ろう。人が独りでいるのは良くないからである。それゆえ、わたしたちは彼のためにふさわしい助け手を形造ろう。」
15 そこで、神々はアダムを深く眠らせられた。そして、彼が眠ると、神々は彼のあばら骨の一つを取って、その所を肉でふさがれた。
16 神々は人から取ったあばら骨で一人の女を形造り、人のところへ連れて来られた。
17 すると、アダムは言った。「これこそ、わたしの骨の骨、わたしの肉の肉。今や、男から取ったものだから、これを女と呼ぼう。」
18 それで、人はその父と母を離れて、妻と結び合い、2人は一体となるのである。
19 人とその妻は、2人とも裸であったが、恥ずかしいとは思わなかった。
20 神々は野のすべての獣と、空のすべての鳥を土で形造り、アダムのところへ連れて来て、彼がそれらをどう呼ぶかを見られた。アダムがすべて生き物に与える名は、その名となるのであった。
21 それでアダムは、すべての家畜と、空の鳥と、野のすべての獣に名を付けた。また、アダムにはふさわしい助け手が見つかった。

アブラハム書からの模写


第1
説明
1. 主の天使。
2. 祭壇上に縛られたアブラハム。
3. アブラハムを犠牲としてささげようとしている、エルケナの神を偶像礼
   拝する祭司。
4. エルケナとリブナ、マーマクラ、コラシ、およびパロの神々の前にある、
   偶像礼拝をする祭司たちが犠牲をささげる祭壇。
5. 偶像礼拝のエルケナの神。
6. 偶像礼拝のリブナの神。
7. 偶像礼拝のマーマクラの神。
8. 偶像礼拝のコラシの神。
9. 偶像礼拝のパロの神。
10.エジプトでのアブラハム。
11.エジプト人が理解したとおりに、天の柱を表すもの。
12.ラーキーアン、天空、すなわち頭上の大空の意。しかし、ここではこの
   題目に関して、エジプト人はこれによってシャーマー、すなわちヘブラ
   イ語のシャーマイムに相当する言葉で、高いこと、つまり天を表した。


第2
説明
1. コロブ。最初の創造物を表すもので、日の栄えの世界、すなわち神の住
   まいの最も近くにある。これは支配においては第1、時の計算に関して
   は最後である。この計算は日の栄えの時によるもので、日の栄えの時の
   1日は1キュビトを表す。コロブにおける1日は、この地球の計算によ
   れば千年に相当する。エジプト人はこれをヤーオーエーと呼ぶ。
2. コロブの次にあり、エジプト人はこれをオリブリシュと呼ぶ。これは日
   の栄えの世界、すなわち神が住んでおられる所の近くにある。2番目の
   大いなる支配する力を持つ創造物である。これもほかの遊星に関する力
   の鍵を持つ。以上は、アブラハムが主のために築いた祭壇上で犠牲をさ
   さげたとき、神からアブラハムに示されたものである。
3. 権威と権能をまとって御座に着いておられる神を表すものとして描かれ
   ている。また、頭に永遠の光の冠をかぶっておられる。これはまた、エ
   デンの園でアダムに示され、セツやノア、メルキゼデク、アブラハム、
   および神権が明らかにされたすべての者に示された。聖なる神権の大い
   なる鍵の言葉を表す。
4. ヘブライ語のラーキーアンに相当し、天空、すなわち天の大空を意味す
   る。これはまた数字であって、エジプト語で千を意味する。その回転に
   おいて、また時の計算においてコロブに等しいオリブリシュの時の計算
   に相当する。
5. エジプト語でエニシ・ゴ・オン・ドシと呼ばれる。これもまた支配する
   力を持つ遊星の一つであり、エジプト人はこれを太陽であって、カエ・
   エ・バンラシを通じてコロブから光を受けていると言う。カエ・エ・バ
   ンラシは大いなる鍵、言い換えれば支配する力であり、他の15の恒星
   すなわち星を支配し、また年々の回転においてフロイースすなわち月と、
   地球と、太陽も支配する。この遊星は、クリ・フロス・イス・エス、ま
   たはハー・コ・カ−・ベアム、すなわちコロブの回転から光を受ける
   22および23の絵図で表されている星を通じてその力を受ける。
6. この地球の四方をあらわす。
7. 御座に着いておられる神を表し、諸天を通じて神権の大いなる鍵の言葉
   を示す。また、鳩の形を取ってアブラハムに降られた聖霊のしるしをも
   示す。
8. 世の人に示すことのできない書き物を含む。しかし、神の聖なる神殿で
   得られるものである。
9. 今は示されない。
10.今は示されない。
11.今は示されない。世の人がこれらの意味を解くことができるならば、解
   かせなさい。アーメン。
12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.これらにつ
   いては、主の定められたときに明らかにされるであろう。
前述の翻訳は、現在明らかにして差し支えない範囲で明らかにされている。


第3
説明
1.王の厚意によって、パロの王座に座っているアブラハム。その頭に神権を
  象徴する冠をかぶっている。これは天における大いなる管理会を象徴する
  ものである。また、彼はその手に公正と公平の笏を持っている。
2.王パロ。その名は頭上の文字で示されたいる。
3.エジプトでのアブラハムを表す。模写第1の10でも与えられている。
4.エジプトの王パロの王子。手の上に記されているとおりである。
5.シュレム。王の給仕頭の一人。その手の上の文字に表されているとおりで
  ある。
6.オリムラ。王子の奴隷。
アブラハムは王の宮廷で天文学の原理を説いている。