第3ニーファイ ニーファイの書
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このニーファイは、ヒラマンの息子であったニーファイの息子である
そのヒラマンはヒラマンの息子であり、そのヒラマンはアルマの息子であり、アルマはアルマの息子であり、そのアルマはリーハイの息子ニーファイの子孫であり、リーハイはユダの王ゼデキヤの治世の第1年にエルサレムを出て来た人である。
第1章
ヒラマンの息子ニーファイはゼラヘムラの地を去り、その息子ニーファイが記録を書き継ぐ。しるしと不思議がたくさんあったにもかかわらず、悪人は義人を殺そうとする。キリストの降誕の夜が来る。しるしが示され、新しい星が現れる。偽りと欺きが増し、ガデアントンの強盗が多くの者を殺す。紀元約1年から4年に至る。
01 さて、第91年が過ぎ去った。それはリーハイがエルサレムを去ったときから600年であり、その年には、ラコーニアスが大さばきつかさであり、国の総督であった。
02 ヒラマンの息子ニーファイは、真鍮の版と、それまで書き継がれてきたすべての記録と、リーハイがエルサレムを去って以来神聖に保存されてきたすべての品々に関する責任を、長男のニーファイにゆだねて、ゼラヘムラの地を去っていた。
03 彼はその地を去ったが、彼がどこへ行ったかはだれも知らない。そして、彼の息子ニーファイが父に代わって記録を、すなわちこの民の記録を書き継いだ。
04 さて、第92年の初めには、見よ、預言者たちの預言がさらに完全に成就し始めた。民の中にさらに大きなしるしと、さらに大きな奇跡が行われ始めたからである。
05 しかし、レーマン人サムエルによって述べられた言葉の成就する時は過ぎ去ったと言い出す者たちが何人かいた。
06 彼らは同胞のことを喜び始めて、「見よ、時は過ぎ去り、サムエルの言葉は成就していない。だから、あなたがたがこのことを喜び、信じたのは、むなしいことだった」と言った。
07 そして彼らは、国中にひどい騒動を起こした。そこで、信じていた人々は、述べられていることが何らかの理由で起こらないようなことがありはしないかと、非常に悩み始めた。
08 しかし見よ、彼らは、まるで夜のない1日のような2昼1夜を確固として待ち設け、自分たちの信仰がむなしいものでなかったことを知ろうとした。
09 さて、信仰心のない者たちはある1日を特に定め、預言者サムエルによって告げられたしるしがその日までに現れなければ、これらの言い伝えを信じているすべての人を殺すことにした。
10 さて、ニーファイの息子ニーファイは、自分の民のこの悪事を見て、心に非常な憂いを覚えた。
11 そこで彼は、出て行って地に伏し、自分の民のために、すなわち先祖の言い伝えを信じていることで殺されようとしている人々のために、熱烈に神に叫び求めた。
12 そして彼は、終日熱烈に主に叫び求めた。すると見よ、主の声が彼に聞こえて言われた。
13 「頭を上げて、元気を出しなさい。見よ、時は近い。今夜、しるしが示され、明日、わたしは世に来る。そしてわたしは、聖なる預言者たちの口を通して語ってきたすべてのことを成就することを、世の人々に示す。
14 見よ、わたしは、世の初めから人の子らに知らせてきたすべてのことを成就するため、また父と子の両方の思いを行うために、わたし自身の民のもとへ行く。わたし自身のゆえに父の御心を行い、わたしの肉のゆえに子の思いを行う。見よ、時は近い。今夜、しるしが示されるであろう。」
15 さて、ニーファイに下された御言葉は告げられたとおりに成就し、見よ、太陽が沈んでも少しも暗くならなかった。こうして夜になっても暗くならなかったので、民は驚いた。
16 そして、預言者たちの言葉を信じなかった多くの者は地に倒れ、まるで死んだようになった。預言者たちの言葉を信じた者たちに対して企てた殺害の大計画が破れてしまったことが分かったからである。また、かつて告げられたしるしがすでに現れたからである。
17 そして彼らは、神の御子が間もなく御姿を現されるに違いないということを知るようになった。まことに、要するに北の地でも南の地でも、西から東に至るまで全地の面にいる人々は皆、非常に驚いて地に倒れた。
18 彼らは預言者たちが長年これらのことについて証してきたこと、またかつて告げられたしるしがすでに現れたことを知ったからである。そして彼らは、自分たちの罪悪と不信仰のために恐れ始めた。
19 そして、その夜は1晩中少しも暗くならず、まるで真昼のように明るかった。そして朝には、いつものとおりに再び太陽が昇った。そこで彼らは、しるしが与えられていたので、その日に主がお生まれになったことを知った。
20 そして、預言者の言葉のとおりに、すべてのことがことごとく成就した。
21 そして、一つの新しい星もその言葉のとおりに現れた。
22 さて、このとき以後、サタンは民の心をかたくなにし、彼らが見たそれらの数々のしるしと不思議を信じないようにさせるために、民の中に偽りを広め始めた。しかし、これらの偽りと欺きにもかかわらず、民の大半は信じて、主に帰依した。
23 さて、ニーファイは民の中に出て行き、またほかにも多くの者が出て行き、悔い改めのためのバプテスマを施し、それによって民の中に罪の大きな赦しがあった。このようにして、民はその地に再び平和を保つようになった。
24 そして、もうモーセの律法を守る必要がないことを、聖文を使って立証しようと努めながら、教えを説き始めた数人の者がいたほかは、何の争いもなかった。この数人の者は、聖文を理解していなかったので、このことを誤解したのである。
25 さて、彼らは間もなく心を改め、自分たちが思い違いをしていたことを納得した。律法はまだ成就していないことと、それはことごとく成就しなければならないことが彼らに知らされたからである。律法は成就しなければならず、まことに、それがすべて成就するまで一点一画もむなしくなることはないという御言葉が彼らに与えられた。したがって、この年のうちに彼らは自分たちの思い違いを知り、自分たちの誤りを告白した。
26 このように、すべての聖なる預言者たちの預言の言葉のとおりに数々のしるしが現れ、民に喜びのおとずれがもたらされて、第92年が過ぎ去った。
27 そして、第93年も平穏に過ぎ去ったが、ただガデアントンの強盗が山々に住んでいて、この地を荒らし回っていた。彼らのとりでと隠れ場が非常に堅固であったので、民は彼らを打ち負かせなかった。そのため彼らは多くの殺人を犯し、民の中でひどい殺戮を行った。
28 そして第94年に、ニーファイ人の多くの離反者たちが彼らのところへ逃げ込んだため、彼らは非常に増え始めた。このことはこの地に残っているニーファイ人に深い憂いを与えた。
29 また、レーマン人の中にも深い憂いを与える事柄があった。見よ、彼らには成人になった子供たちと年齢の進んできた子供たちが大勢いたが、彼らは独り立ちすると、あるゾーラム人たちの偽りとへつらいの言葉に惑わされ、あのガデアントンの強盗の仲間になった。
30 このようにレーマン人も苦しんだ。そして、若者たちの悪事のために、彼らの信仰と義は衰え始めた。
【動画】キリストの誕生のしるし
第2章
悪事と忌まわしい行いが民の中に増える。ニーファイ人とレーマン人は結束して、ガデアントンの強盗に対して自衛する。改宗したレーマン人、肌が白くなり、ニーファイ人と呼ばれる。紀元約5年から16年に至る。
01 さて、第95年も過ぎ去り、民は前に聞いたあの数々のしるしと不思議を忘れ始め、またしるし、すなわち天からの不思議に次第に驚かなくなってきた。そして、彼らの心はかたくなになり、思いはくらみ、彼らはかつて見聞きしたすべてのことを信じなくなった。
02 すなわち、そのしるしは民の心を惑わし欺くために、人によって、また悪魔の力によって行われたものであるという、愚かな思いを心に抱くようになった。このようにしてサタンは再び民の心を支配した。そして、彼らの目をくらまし、彼らを惑わして、キリストの教義は愚かでむなしいものであると信じさせた。
03 そこで民は、悪事と忌まわしい行いを重ね、さらにこれからもしるし、すなわち不思議が示されることを信じなかった。そしてサタンは、方々を巡って民の心を惑わし、誘惑し、民にこの地で大きな悪事を行わせた。
04 このようにして、第96年が過ぎ去り、また第97年も、第98年も、第99年も過ぎ去った。
05 また、ニーファイ人の民の王モーサヤの時代からすでに100年が過ぎ去った。
06 リーハイがエルサレムを去ってからすでに609年が過ぎ去った。
07 キリストが世に来られるしるしが預言者たちによって告げられたが、そのしるしが示されたときから9年が過ぎ去った。
08 ニーファイ人はしるしが示されたこのときから、すなわちキリストの来臨から彼らの時を数え始めた。したがって、9年が過ぎた。
09 ニーファイは記録について責任を負っていたが、その父のニーファイはゼラヘムラの地に帰って来ず、国中どこにも見当たらなかった。
10 そして、民の中で多くの宣教と預言が行われたにもかかわらず、民は依然として悪事を続けていた。このようにして、第10年も過ぎ去り、第11年も罪悪のうちに過ぎ去った。
11 そして第13年には、国中至る所で戦争と争いが始まった。ガデアントンの強盗がおびただしい数になり、民の中の多くの者を殺し、多くの町を荒らし、国中に多くの虐殺を広めたので、民は皆、ニーファイ人もレーマン人も、彼らに対して武器を取ることが必要になった。
12 そのため、主に帰依していたレーマン人は皆、同胞であるニーファイ人と結束し、自分たちの命と女子供を守るために、また自分たちの権利と教会の特権、礼拝の特権と自由を守るために、仕方なくガデアントンの強盗に対して武器を取った。
13 そして、この第13年が過ぎ去る前に、ニーファイ人は、非常に激しくなったこの戦争のために全滅の危機にさらされた。
14 さて、ニーファイ人に合流していたレーマン人は、ニーファイ人の中に数えられ、
15 彼らののろいは取り去られ、彼らの肌はニーファイ人のように白くなった。
16 また、彼らの若い男たちと娘たちは非常に麗しくなり、ニーファイ人の中に数えられ、ニーファイ人と呼ばれた。このようにして第13年が終わった。
17 そして、第14年の初めにも強盗たちとニーファイの民の間の戦争は続き、ますます激しくなった。それでも、ニーファイの民は強盗たちに対して幾分優位に立ったため、自分たちの土地から彼らを山や彼らの隠れ場に追い返した。
18 このようにして、第14年が終わったが、第15年に彼らはニーファイの民に向かって出て来た。そして、ニーファイの民の悪事と多くの争いと不和のために、ガデアントンの強盗はニーファイの民に対して何度も優位に立った。
19 このようにして、第15年が終わった。このように民は多くの苦難を受け、滅亡の剣は彼らのうえに迫っていて、彼らはまさにその剣によって打たれようとしていた。これは彼らの罪悪のためである。
第3章
ガデアントン強盗団の首領のギデアンハイ、降伏して土地を明け渡すようにラコーニアスとニーファイ人に要求する。ラコーニアス、ギドギドーナイを軍の総司令官に任命する。ニーファイ人、自衛のためにゼラヘムラとバウンティフルの地に集まる。紀元約16年から18年に至る。
01 さて、キリストの来臨から16年目に、国の総督であるラコーニアスは、この強盗団の首領であり、支配者である者から手紙を受け取った。それに記されていた言葉は次のとおりである。
02 「国の総督であるラコーニアス閣下。見よ、わたしはあなたにこの手紙を書き、あなたとあなたの民が、自己の権利であり自由であると考えているものを守るに当たって確固としていることに、甚だ大いなる賛辞を呈するものである。あなたがたは自分たちの自由と自分たちの所有物、自分たちの国、すなわちあなたがたがそのように呼んでいるものを守るのに、まるで神の手によって支えられているかのようにしっかりと立っている。
03 しかし、ラコーニアス閣下。あなたがたがわたしの指揮に従うこのように多くの勇敢な部下たちに立ち向かえると考えるほど、愚かでうぬぼれが強いことは、わたしには残念に思われる。わたしの勇敢な部下たちは今、武器を身に着けて待ち、『ニーファイ人のもとへ下って行って滅ぼせ』という言葉を大いに待ち焦がれている。
04 わたしはすでに戦場で部下たちを試して、彼らに不屈の精神があるのを知っており、また、あなたがたが彼らに行った多くの不当な扱いのために、彼らがあなたがたにいつまでも変わらない憎悪を抱いていることも知っている。したがって、彼らがあなたがたに向かって下って行けば、あなたがたを完全に滅ぼしてしまうことだろう。
05 そこでわたしは、あなたがたの幸いを思いつつこの手紙を書いて、自分自身の手で封じるものである。それは、あなたがたが自分の正しいと思ったことに対して確固としており、また戦場で高潔な精神を示しているからである。
06 したがって、わたしはあなたに手紙を書き送り、あなたがたがわたしの部下の剣を受けて滅亡するよりは、むしろこのわたしの民にあなたがたの町と土地と所有物を引き渡すように望む次第である。
07 つまり、あなたがたが降伏し、我々と連合して我々の秘密の業をよく知り、仲間になって我々のようになること、すなわち、我々の奴隷ではなく、仲間になり、すべての持ち物の共有者になることである。
08 見よ、わたしはあなたがたに、もしこのように行うならば、あなたがたは滅ぼされないと誓って約束する。しかし、もしこのように行わなければ、わたしは誓って言うが、来月命令を下して、軍隊をあなたがたに向かって下って行かせよう。わたしの軍隊は手をとどめることなく、助命することもなく、あなたがたを殺し、あなたがたが絶滅するまで剣を浴びせることだろう。
09 見よ、わたしはギデアンハイである。わたしはこのガデアントン秘密結社の支配者である。わたしはこの結社と結社の業が善いものであることを知っている。これらは昔からあり、我々に伝えられたものである。
10 ラコーニアス殿。わたしはあなたにこの手紙を書き送る。あなたがたは、血を流すことなく土地と所有物を引き渡し、あなたがたから離反したこの民が、自分たちの権利と統治権を回復できるようにしてもらいたい。この民は、あなたがたが不当にも統治権を与えなかったために離反したのである。したがって、もしあなたがたがこのようにしなければ、わたしはこの民が受けた不当な扱いに報復しよう。わたしはギデアンハイである。
11 さて、ラコーニアスは、この手紙を受け取ると非常に驚いた。ギデアンハイが大胆にも、ニーファイ人の地の所有権を要求し、民を脅迫し、また不当な扱いを少しも受けたことのない者たちのために不当な扱いの報復をすると述べていたからである。これらの者たちは、その邪悪な忌まわしい強盗たちのところへ離反して行ったことで、自らに損害を招いただけであった。
12 さて見よ、総督であるこのラコーニアスはまことに正しい人であり、強盗の要求も脅迫も恐れなかった。そこで彼は、強盗の支配者ギデアンハイの手紙を気にせず、自分の民に、強盗たちが下って来るときに備えて主に力を叫び求めるようにさせた。
13 まことに、彼はすべての民の中に布告を出し、土地は別にして、女子供と大小の家畜の群れ、それにすべての持ち物を1か所に集めるように伝えた。
14 そして彼は、民を囲むとりでを幾つも築かせ、それを非常に堅固にさせた。また彼は、ニーファイ人と、レーマン人、すなわちニーファイ人の中に数えられたすべてのレーマン人の両方から成る軍隊を、見張りとして周囲に配置して民を見守らせ、日夜強盗から彼らを守らせた。
15 まことに、彼は民に言った。「主が生きておられるように確かに、あなたがたは罪悪をすべて悔い改めて主に叫び求めなければ、あのガデアントンの強盗の手から決して救われない。」
16 ラコーニアスの言葉と預言は、まことに大いなる驚くべきものであり、民の全員に恐れを生じさせた。そこで彼らは、ラコーニアスの言葉のとおりに行おうと力のかぎり努力した。
17 さて、ラコーニアスは、ニーファイ人の全軍隊に連隊長を任命し、強盗たちが荒れ野から攻めて来るときに軍隊を指揮できるようにした。
18 また、すべての連隊長の中の最高位の者である、ニーファイ人の全軍の総司令官も任命された。その人の名はギドギドーナイといった。
19 ニーファイ人の中には、(彼らが悪事を働いている時代は別にして)啓示と預言の霊を持っている人を連隊長に任命するという習わしがあった。したがって、このギドギドーナイも大さばきつかさと同じように、民の中の偉大な預言者であった。
20 そこで、民はギドギドーナイに言った。「主に祈ってください。そして、わたしたちが山や荒れ野に上って行き、強盗たちを攻めて、彼ら自身の土地で滅ぼせるようにしてください。」
21 しかし、ギドギドーナイは彼らに言った。「主は許されない。もしわたしたちが彼らに向かって上って行けば、主はわたしたちを彼らの手に渡されるであろう。だからわたしたちは、自分たちの土地の中央で準備し、わたしたちの全軍を集めよう。彼らに向かって出て行かないで、彼らが向かって来るまで待とう。主が生きておられるように確かに、わたしたちがこのようにすれば、主は彼らをわたしたちの手に渡してくださる。」
22 さて、第17年の末に、ラコーニアスの布告が地の面の至る所に出された。そして民は、自分たちの馬と馬車、家畜、すべての大小の家畜の群れ、穀物、そのほかすべての持ち物を携えて、何千人となく、何万人となく進んで行き、彼らは皆、敵を防ぐために集まるように指定された所へ向かった。
23 指定された地は、ゼラヘムラの地と、ゼラヘムラの地とバウンティフルの地の間の地であり、バウンティフルの地とデソレションの地の間の境界にまで達していた。
24 そして、ニーファイ人と呼ばれる非常に大勢の人々がこの地に集まった。ラコーニアスが南方の地に彼らを集めさせたのは、北方の地にひどいのろいが及んでいたためである。
25 そして彼らは、敵に対して防備を固め、同じ土地に一団となって住んだ。また彼らは、ラコーニアスの語った言葉を恐れて、自分たちのすべての罪を悔い改めた。そして、主なる彼らの神に祈りをささげ、敵が攻め下って来るときに自分たちを救ってくださるように願った。
26 彼らは自分たちの敵のことで深い憂いを抱いた。また、ギドギドーナイは彼らにあらゆる武器を造らせ、自分の指示に従ってよろいと盾と小盾で身を固めさせた。
第4章
ニーファイ人の軍隊、ガデアントンの強盗を打ち負かす。ギデアンハイは殺され、彼の後継者ゼムナライハは木につるされる。ニーファイ人、勝利を得たことで主をほめたたえる。紀元約19年から22年に至る。
01 さて、第18年の末に、強盗たちの軍勢は戦いの準備をし、方々の丘や山、荒れ野、とりで、隠れ場から下って出撃して来た。そして彼らは、南の地と北の地の両方で方々の土地を占領し始め、ニーファイ人が捨てた土地と、荒れ果てるに任せた町をすべて占領し始めた。
02 しかし見よ、ニーファイ人が捨てた土地には、まったく野生の獣がおらず、獲物となる動物もいなかった。荒れ野の中でなければ強盗たちの食糧になる鳥獣はいなかった。
03 そして強盗たちは、食糧がないために、荒れ野でなければ暮らせなかった。それは、ニーファイ人が土地を荒れ果てるに任せて、自分たちの大小の家畜の群れとすべての持ち物を集め、一団となっていたからである。
04 そのため強盗たちには、ニーファイ人に向かって公然と攻め上るほかに略奪して食べ物を得る機会はなかった。一方、ニーファイ人は一団となっていて、その数は非常に多く、食糧や馬や家畜やあらゆる家畜の群れを蓄えとして持っており、7年間暮らすことができたので、彼らはその間に地の面から強盗たちを滅ぼしてしまいたいと思っていた。このようにして、第18年が過ぎ去った。
05 そして第19年に、ギデアンハイはニーファイ人に向かって攻め上ることが必要であることを知った。彼らは略奪し、強奪し、人殺しをする以外に生きていく方法がなかったからである。
06 また彼らは、ニーファイ人に襲われて殺されるのではないかと恐れ、思い切って地の面に広がって穀物を作ることもできなかった。そこでギデアンハイはこの年に、ニーファイ人に向かって攻め上る命令を自分の軍隊に下した。
07 そして、彼らは攻め上った。それは6月のことであり、彼らが攻め上った日は、見よ、大変な恐ろしい日であった。彼らは強盗風の装いをしており、腰に子羊の皮を巻き、体を血で染め、頭髪を刈り込み、かぶとをかぶっていた。ギデアンハイの軍隊はよろいをまとい、体を血で染めていたので、ひどい、恐ろしい姿であった。
08 さて、ニーファイ人の軍隊はギデアンハイの軍隊の姿を見ると、全員地に伏して、主なる神に、命を助けて敵の手から救ってくださるように叫んだ。
09 そこで、ギデアンハイの軍隊はこれを見て、ニーファイ人が自分たちの恐ろしい姿に恐れをなして倒れたのだと思い、喜んで、大声を上げて叫び始めた。
10 しかし、彼らのこの期待は外れた。ニーファイ人は彼らを恐れたのではなかったからである。ニーファイ人は神を畏れ、守護を叫び求めたのである。そこで、ギデアンハイの軍隊が突撃して来たときには、ニーファイ人は彼らと戦いを交える用意ができており、主の力をもって彼らを迎えた。
11 戦いはこの6月に始まり、その戦いは大変な恐ろしいものであった。まことに、その戦いでの殺戮は大変な恐ろしいものであって、リーハイがエルサレムを去って以来、これほどひどい殺戮はリーハイの民の中にまったく知られていない。
12 そして、ギデアンハイの脅迫や誓いにもかかわらず、見よ、ニーファイ人が彼らを打ち負かしたため、彼らはニーファイ人の前から退いた。
13 さて、ギドギドーナイは自分の軍隊に、荒れ野の境まで彼らを追撃するように、そして途中でニーファイ人の手に落ちる者はだれも容赦しないようにと命じた。そこで彼の軍隊は、荒れ野の境まで彼らを追撃して殺し、ギドギドーナイの命令を果たした。
14 そして、立ち向かって勇ましく戦っていたギデアンハイも、ついに逃げ出して追撃された。そして、激しく戦って疲れていたので、追いつかれて殺されてしまった。強盗ギデアンハイの最後はこのようであった。
15 さて、ニーファイ人の軍隊は自分たちの防御の地へ引き返した。そして、この第19年が過ぎ去り、強盗たちはもう攻めて来なかった。また、第20年にも彼らはやって来なかった。
16 第21年に、彼らは攻めることはなかったものの、ニーファイの民を包囲するためにあらゆる方面から上って来た。彼らは、もしニーファイの民を彼らの土地から遮断して、あらゆる方面で彼らを閉じ込めれば、また、外で活動する特権をすべて差し止めれば、自分たちの望みどおりに彼らを降伏させることができると思ったからである。
17 ところで彼らは、ゼムナライハという名の別の首領を選んでいた。したがって、この包囲を行わせたのはゼムナライハであった。
18 しかし見よ、これはニーファイ人にとって有利であった。強盗たちがニーファイ人に何らかの影響を及ぼすほど、十分に長く包囲を続けることは不可能であったからである。というのは、ニーファイ人は多くの食糧を蓄えており、
19 強盗たちの食糧は乏しかったからである。見よ、彼らには命をつなぐための肉、すなわち荒れ野で手に入れた肉のほかには何もなかった。
20 そして、野生の鳥獣は荒れ野に少なくなったので、強盗たちはまさに飢えて死にそうになった。
21 しかも、ニーファイ人は昼も夜も絶えず出撃して敵を攻め、何千人も、何万人も殺した。
22 それで、ゼムナライハの民は昼も夜も大勢の人が殺されたため、自分たちの企てを取りやめたいと思うようになった。
23 そして、ゼムナライハは自分の民に、包囲を解いて、北方の地の最も遠い地方へ行くように命令を下した。
24 ところがギドギドーナイは、彼らの企てを知り、また食糧の不足とそれまでに受けた大きな殺戮のために彼らが弱っているのを知っていたので、夜の間に軍隊を送って彼らの退路を断ち、また彼らの退路に軍隊を配置した。
25 彼の軍隊は夜の間にこれを行い、強盗たちを追い越して進軍した。そして翌日、強盗たちが行軍を始めると、ニーファイ人の軍隊は前方と後方の両面から彼らを攻撃した。
26 また、南方にいた強盗たちも彼らの待避所で絶たれた。これらのことはすべて、ギドギドーナイの命令によって行われたことである。
27 そして、ニーファイ人に降伏して捕虜になった者は何千人にも上り、ほかの者たちは殺された。
28 また、彼らの首領であったゼムナライハは捕らえられ、木に、すなわち木の頂につるされて死んだ。ニーファイ人は彼をつるし、彼が死んでしまうと、その木を地に倒して大声で叫んで言った。
29 「どうか主よ、義にかなった、心の清い民をお守りくださり、この男が地に倒されたように、権力と秘密結社のために主の民を殺そうとするすべての者を地に倒れさせてくださいますように。」
30 また、彼らは喜び、再び声を合わせて、「どうかアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神よ、義にかなったこの民を、この民が守護を求めて神の御名を呼ぶかぎりお守りくださいますように」と叫んだ。
31 そして彼らは、神が大いなることを自分たちのために行い、敵の手に落ちないように守ってくださったので、皆一斉に声を放って歌い、神をほめたたえた。
32 まことに彼らは、「いと高き神に、ホサナ」と叫び、また、「いと高き神、全能の主なる神の御名はほむべきかな」と叫んだ。
33 そして、敵の手から救ってくださった神の深い慈しみのために、彼らの心は喜びにあふれ、多くの涙を流した。また彼らは、自分たちが永遠の滅亡から救われたのは、悔い改めて謙遜であったためであることを知ったのである。
第5章
ニーファイ人、悔い改めて罪を捨てる。モルモン、民の歴史を記し、また民に永遠の御言葉を告げ知らせる。イスラエルは将来、久しく散乱した状態から集められる。紀元約22年から26年に至る。
01 さて見よ、ニーファイ人の民の中には、すべての聖なる預言者たちがかつて語った言葉をわずかでも疑う者はいなかった。彼らはそれらの言葉が必ず成就することを知っていたからである。
02 また彼らは、預言者たちの言葉のとおりに多くのしるしが示されたので、キリストが来られたに違いないことを知っていた。そして、いろいろなことが起こったので、かつて告げられたとおりにすべてのことが将来起こるに違いないことも、彼らは知っていた。
03 そこで彼らは、自分たちの罪と、忌まわしい行いと、みだらな行いをすべて捨てて、日夜、力のかぎり神に仕えた。
04 さて、ニーファイ人は殺されなかった強盗たちを一人も逃すことなく全員捕らえて捕虜にすると、その捕虜たちを牢に入れ、彼らに神の言葉を説き聞かせるようにした。そして、罪を悔い改めて、もう二度と殺人をしないという聖約を交わそうとした者は皆、釈放された。
05 しかし、聖約を交わさず、依然として暗殺の心を持ち続ける者、まことに、同胞を脅していることが分かった者は皆、罪に定められ、法律に従って罰せられた。
06 このようにして彼らは、そのようなひどい悪事と多くの殺人を犯したあの邪悪な秘密の忌まわしい結社をことごとく絶やした。
07 このようにして、第22年が過ぎ去り、第23年も、第24年も、第25年も過ぎ去った。このようにして、25年が過ぎ去った。
08 ある人々の目に大いなる驚くべきことと映った多くのことが、これまでに起こった。しかし、それらをすべてこの書に書き記すことはできない。まことに、この書には、25年間にそのように多くの人の中で行われたことの100分の1も載せることができない。
09 しかし見よ、この民の行ったことをすべて載せている記録が幾つかある。また、短いけれども真実の記録がニーファイによって記された。
10 そこでわたしは、ニーファイの版と呼ばれる版に刻まれたニーファイの記録に従って、これまでこれらのことについて記録してきた。
11 そして見よ、わたしは今、自分の手で造った版に記録している。
12 見よ、わたしはモルモンと呼ばれている。この名は、アルマが人々の中に教会を、まことに彼らの背きの後で最初の教会を彼らの中に設立した地、モルモンの地にちなんで名付けられたものである。
13 見よ、わたしは神の御子イエス・キリストの弟子である。わたしはイエス・キリストの民の中でイエス・キリストの言葉を告げ知らせ、彼らが永遠の命を得られるようにするために、イエス・キリストから召された。
14 すでに世を去った聖なる人々の祈りが、彼らの信仰に応じてかなえられるように、これまでに起こったこれらのことを、神の御心に従って記録することは望ましいことである。
15 まことにわたしは、リーハイがエルサレムを去ったときから現在までに起こったことを、簡潔に記録する。
16 したがってわたしは、自分が生まれるときまでのことを、わたしよりも前に生きていた人々が記してきた記事から取って記録し、
17 次に、わたし自身の目で見てきたことを記録する。
18 わたしは自分の記す記録が正しく真実の記録であることを知っている。それでも、わたしたちの言語では書けないことがたくさんある。
19 わたしは自分自身のことについて述べるのを終え、わたしの生まれる前にあったことについて記録を書き進めることにする。
20 わたしはモルモンであり、リーハイの生っ粋の子孫である。神であって救い主であるイエス・キリストをわたしが賛美するのは正当である。神はわたしたちの先祖をエルサレムの地から連れ出された。(このことは神御自身と、その地から連れ出された人々のほかにはだれも知らない。)また、神はわたしとわたしの民に、わたしたちが救われるように多くの知識を与えてくださった。
21 確かに神はヤコブの家を祝福し、ヨセフの子孫に憐れみをかけてこられた。
22 また、リーハイの子孫が神の戒めを守るかぎり、神は御自分の言葉のとおりに彼らを祝福し、栄えさせてこられた。
23 そして、神はヨセフの子孫の残りの者に、主なる彼らの神のことを再びお知らせになる。
24 また、主が生きておられるように確かに、主は将来、地の全面に広く散らされているヤコブの子孫の残りの者をすべて地の四方から集められる。
25 主はヤコブの家に属するすべての者と聖約されたので、主がヤコブの家と交わされた聖約は主御自身がふさわしいと思われるときに果たされ、ヤコブの家に属するすべての者に、主がかつて彼らと交わされた聖約が再び元のように知らされる。
26 そのとき彼らは、自分たちの贖い主、神の御子イエス・キリストを知るようになる。そして彼らは、地の四方から、散らされる前に住んでいた自分たちの土地に集められる。まことに、主が生きておられるように確かに、それは起こる。アーメン。
第6章
ニーファイ人、栄える。高慢な者、富裕な者が出て、階級差別が生じる。不和のために教会が分裂する。サタン、民を惑わして公然と謀反を起こさせる。多くの預言者たち、悔い改めを叫んで殺される。殺人者たち、政府の乗っ取りを企てる。紀元約26年から30年に至る。
01 さて、第26年に、ニーファイ人の民は皆各々の家族を伴い、大小の家畜の群れ、馬、牛を連れ、持ち物をすべて携えて自分の土地へ帰って行った。
02 そして彼らは、食糧を食べ尽くしていなかったので、残っているあらゆる穀物を、また金銀やすべての貴重な品々を携えて、南北に分かれ、北方の地と南方の地のそれぞれの所有地に帰って行った。
03 また、国の平和を守ると聖約を交わし、引き続きレーマン人でいたいと望んだ強盗たちには、自分の労働で生きていくことができるように、彼らの人数に応じて土地が与えられた。このようにして、彼らは全地に平和を確立した。
04 そして、彼らは再び栄えて富み始めた。第26年、第27年が過ぎ去り、国の秩序はしっかり保たれていた。また彼らは、公平かつ公正に法律を制定した。
05 民が戒めに背くことさえなければ、彼らが引き続き栄えるのを妨げるものは全地に何一つなかった。
06 国にこの大いなる平和を確立した人々は、ギドギドーナイと、大さばきつかさのラコーニアスと、指導者に任命された人々である。
07 そして、多くの町が新たに築かれ、多くの古い町が改築され、
08 町から町へ、地方から地方へ、地域から地域へと通じる多くの街道が造られ、多くの道路が建設された。
09 このようにして、第28年が過ぎ去り、民は引き続き平和を保っていた。
10 ところが第29年に、民の中に多少の分裂が起こった。そして、ある者たちは非常に豊かに富んでいたために高慢になって誇り、ひどい迫害さえ加えるようになった。
11 国には多くの商人がおり、また多くの法律家と役人もいた。
12 そして民は、彼らの富と学問の機会の多少に応じて階級に区別され始めた。まことに、貧しいために無学な者もいれば、富んでいたので大いに教育を受けた者もいた。
13 高慢になった者もいれば、非常に謙遜な者もいた。そしる者にそしり返す者もいれば、そしりや迫害やあらゆる苦難を受けながらも、向き直ってののしり返すことをせず、神の前にへりくだって悔いる者もいた。
14 このように、全地にひどい不平等が生じたために、教会が分裂し始めた。まことに第30年には、真実の信仰に帰依している少数のレーマン人の中の教会を除いて、全地の教会が分裂してしまった。この少数のレーマン人は堅く確固として動かず、喜んで力のかぎり主の戒めを守っていたので、真実の信仰から離れようとしなかった。
15 ところで、民のこの罪悪の原因は、あらゆる罪悪を行うように民をそそのかし、民を誇らせて高慢にし、民を誘惑して権力と権威、富、俗世のむなしいものを求めさせる大きな力をサタンが持っていたことである。
16 このように、サタンがあらゆる罪悪を行うように民の心を惑わしたため、民が平和を享受したのはほんの数年にすぎなかった。
17 したがって、第30年の初めには、民はすでに悪魔の手に引き渡されて久しくたっており、悪魔が行かせたいと思う所へはどこへでも誘いに乗って行き、また悪魔が行わせたいと思う罪悪はどんなことでもするようになっていた。そのためにこの第30年の初めには、彼らは恐ろしい邪悪な状態にあった。
18 彼らは無知で罪を犯したのではない。自分たちに関する神の御心を教えられて知っていた。したがって、彼らは故意に神に背いたのである。
19 それはラコーニアスの息子ラコーニアスの時代のことである。このラコーニアスはその年に父の職に就いて民を治めたのであった。
20 また、何人もの人々が天から霊感を受け、遣わされて、全地の民の中に立って教えを説き、民の罪と不義について大胆に証言し、また主が御自分の民のために行われる贖い、言い換えれば、キリストの復活に関して彼らに証した。さらに彼らは、キリストの死と苦しみについても大胆に証した。
21 ところが、民の中には、これらのことについて証した人々のことを非常に怒る者が多かった。このように怒った者たちは、特に大さばきつかさたちと、かつて大祭司や法律家を務めた者たちであった。まことに、当時法律家であった者も皆、これらのことを証した人々のことを怒った。
22 しかし、法律家もさばきつかさも大祭司も、国の総督が宣言書に署名しないかぎり、だれに対しても死刑を宣告する力を持たなかった。
23 ところが、キリストに関することについて大胆に証した人々の多くが、さばきつかさたちによって捕らえられ、ひそかに殺されてしまった。そのため、国の総督が彼らの死について知ったのは、彼らが死んだ後のことであった。
24 さて見よ、このことは、国の総督から権限を受けないかぎり人を死刑にしてはならないという国の法律に反していた。
25 そこで、法律に背いて主の預言者たちに死刑を宣告したこれらのさばきつかさたちに対して、ゼラヘムラの地にいた国の総督への訴えが起こされた。
26 そして、彼らは捕らえられ、大さばきつかさの前に連れ出されて、犯した罪悪を、民によって定められた法律に従って裁かれることになった。
27 さて、それらのさばきつかさたちには多くの友人と親族がいた。また、ほかの者たち、すなわち法律家たちと大祭司たちもほとんど全員が集まり、法律によって裁判されることになったそれらのさばきつかさたちの親族と結束した。
28 そして、彼らは互いに誓いを立てた。すなわち、あらゆる義に敵対して結束するために、昔の人々によって設けられたあの誓い、悪魔によって与えられ実施された誓いを立てたのである。
29 このために彼らは、主の民に敵対して結束し、主の民を滅ぼすという誓いを立て、また殺人罪を犯した者たちを、法律に従って実施されようとしている罰の執行から救い出すという誓いも立てた。
30 そして、彼らは国の法律と権利に反抗した。また彼らは総督を殺し、国を治める王を立て、国をもはや自由な国ではなく、王の支配を受ける所にしようと互いに誓いを立てた。
第7章
大さばきつかさが殺され、政府は滅ぼされ、民は部族に分かれる。反キリストのヤコブ、秘密結社の王となる。ニーファイ、悔い改めとキリストを信じる信仰を宣べ伝える。天使たち、日々ニーファイを教え導く。ニーファイ、自分の兄弟を死者の中からよみがえらせる。多くの人が悔い改めてバプテスマを受ける。紀元約30年から33年に至る。
01 さて見よ、わたしはあなたがたに、彼らが国を治める王を立てなかったことを示そう。この年、すなわち第30年に、彼らはさばきつかさの席に着いていた国の大さばきつかさを殺した。
02 そして、民は互いに分裂し、家族と親族と友人ごとにそれぞれ部族に分かれた。このようにして、彼らは国の政府を滅ぼした。
03 そして各部族は、彼らを治める族長や指導者を任命した。このようにして、彼らは部族の者となり、部族の指導者となった。
04 さて見よ、彼らの中には家族や親族や友人が大勢いない者はだれ一人いなかったので、彼らの部族は非常に大きなものとなった。
05 さて、このようなことがすべて行われたが、彼らの中にはまだ戦争はなかった。この罪悪はすべて、民がサタンの力に身をゆだねたために民に及んだのであった。
06 また、預言者たちを殺した者の友人や親族から成る秘密結社のために、政府の条例は損なわれてしまった。
07 また、彼らがその地にひどい争いを引き起こしたので、民の中でひときわ義にかなった者たちも、ほとんど皆すでに悪くなってしまい、まことに、民の中に義人はほんのわずかになった。
08 このようにして6年たたないうちに、民の大半は、自分の吐いたものに帰る犬のように、あるいは泥の中に転がる豚のように、義に背いてしまった。
09 さて、このようなひどい罪悪を民にもたらしたこの秘密結社の者たちは、ともに集まり、ヤコブと呼ばれた一人の男を自分たちの頭に立てた。
10 そして、彼らはヤコブを自分たちの王と呼び、彼はこの邪悪な団を治める王となった。預言者たちはイエスについて証をしたが、この男は、その預言者たちに敵対する声を上げた首謀者の一人である。
11 さて、彼らは、同盟を結んだ民の部族ほど人数が多くなかった。民の部族は同盟していたが、彼らの法はそれぞれ部族ごとに指導者が定めていた。それでも彼らは、秘密結社に敵対していた。彼らは義を守る者たちではなかったにもかかわらず、政府を滅ぼす誓いを立てた者たちを憎むことでは一致していた。
12 したがって、ヤコブはその団の王であったので、敵が自分たちよりもはるかに多いのを見ると、自分の民に、その地の最北部へ逃げて行き、そこで王国を築いて離反者を加え(彼は多くの離反者が出るように民にへつらっていた)、民の部族と戦うのに十分な力を蓄えるようにと命じた。そして、彼らはそのようにした。
13 彼らの移動は非常に速かったので、妨げられることなく、民の手の届かない所へ行ってしまった。このようにして第30年が終わった。ニーファイの民の状況はこのようであった。
14 さて、第31年に、民は家族と親族と友人ごとに部族に分かれていた。それでも彼らは、互いに戦争をしないという取り決めを結んでいた。ところが、彼らの法や統治方法は、彼らの族長と指導者の思いのままに定められていたので、一致していなかった。しかし彼らは、部族がほかの部族を侵害してはならないという、非常に厳しい法を定めていたので、ある程度地は平和であった。にもかかわらず、彼らの心は主なる神からそれていた。そして彼らは、預言者たちに石を投げつけ、預言者たちを自分たちの中から追い出した。
15 さて、ニーファイは天使の訪れを受け、主の声も聞き、天使を見て見証者となり、キリストの務めについて知る力を与えられ、また民が義から悪事と忌まわしい行いに早々と戻ったことを目撃した。
16 したがって、彼は民の心がかたくなで、思いをくらませていることを悲しく思い、その年に民の中に出て行って、悔い改めと、主イエス・キリストを信じる信仰による罪の赦しについて大胆に証し始めた。
17 彼は多くのことを民に教えたが、それを全部書き記すことはできない。また、一部では不十分であるから、この書には書き記さない。ニーファイは、力と大きな権能をもって教えた。
18 そこで民は、彼が自分たちよりも大きな力を持っていたので、彼に腹を立てた。主イエス・キリストを信じる彼の信仰が非常に深かったので、天使が日々彼を教え導き、そのため彼らは、彼の言葉を信じないわけにはいかなかったからである。
19 また彼は、イエスの名によって悪霊と汚れた霊を追い出し、また、民に石を投げつけられて殺された自分の兄弟を、死者の中からよみがえらせた。
20 民はそれを目にし、目撃し、彼に力があることで腹を立てた。また彼は、民の目の前でイエスの名によってさらに多くの奇跡を行った。
21 そして第31年が過ぎ去った。そして、主に帰依した者はごくわずかであったが、心を改めた者は皆、自分たちが信じているイエス・キリストの内にある神の力と御霊を与えられたことを、民に実際に示した。
22 悪霊を追い出された者、病気や肉体の弱さを癒された者は皆、神の御霊の働きを受けて癒されたことを民に実際に告げた。また彼らは、数々のしるしを示し、民の中で多少の奇跡を行った。
23 このようにして、第32年も過ぎ去った。第33年の初めに、ニーファイは民に叫び、悔い改めと罪の赦しを宣べ伝えた。
24 ところで、悔い改めに導かれた者で水でバプテスマを受けなかった者は一人もいなかったことも、覚えておいてもらいたい。
25 したがってニーファイは、人々をこの務めに聖任した。彼らのもとに来る人々がすべて水でバプテスマを受けられるようにするためであった。このバプテスマは、これを受ける人々が悔い改めて罪の赦しを受けたことを、神の前に、また民に対して立証し、証するものである。
26 この年の初めに、悔い改めのためのバプテスマを受けた人々が多くいた。このようにして、その年の大半が過ぎ去った。
第8章
暴風雨や地震、火事、旋風、自然の大変動で、キリストの十字架の刑が証明される。多くの者が滅びる。暗闇が3日間地を覆う。生き残った者たち、自分の運命を嘆く。紀元約33年から34年に至る。
01 さて、わたしたちの記録によれば、そして、わたしたちはこの記録が真実であることを知っているが、見よ、それは記録を書き継いだのが正しい人であったからである――その人は、イエスの名によって実際に多くの奇跡を行った。そして、自分の罪悪からことごとく清められなければ、イエスの名によって奇跡を行える人はだれもいなかった。――
02 さて、わたしたちの時の計算についてこの人が間違いをしていなければ、第33年が過ぎ去った。
03 そして民は、レーマン人の預言者サムエルによって知らされたしるし、すなわち地の面に3日間暗闇が続く時を、大きな期待をもって待ち望むようになった。
04 また、非常に多くのしるしが現れていたにもかかわらず、民の中にひどい疑いと論争が起こった。
05 さて、第34年1月4日に、全地でこれまでにまったく知られていないような大きな嵐が起こった。
06 また、激しくすさまじい暴風雨もあった。また、すさまじい雷があり、まさに引き裂くほどに全地を揺り動かした。
07 さらに、全地でこれまでにまったく知られていないような非常に強烈な稲妻があった。
08 そして、ゼラヘムラの町に火がついた。
09 モロナイの町は海の深みに沈んで、そこに住む者はおぼれた。
10 また、地がモロナイハの町の上に持ち上がり、その町のあった所に大きな山ができた。
11 南方の地にも大変な恐ろしい破壊があった。
12 しかし見よ、北方の地にはもっと大変な恐ろしい破壊があった。見よ、暴風雨と旋風と雷と稲妻と全地の非常に激しい震動のために、地の全面が変わってしまった。
13 街道は破壊され、平坦な道は損なわれ、多くの平らな場所が起伏の激しい所となり、
14 多くの大きな名の知れた町が沈み、多くの町が焼け、また多くの町が揺れ動いて建物が地に倒れ、そこに住む者が死に、方々の地が荒れ果てるに任された。
15 残った町も多少あったが、それでもそれらの町の受けた被害は非常に大きく、それらの町の多くの者が死んだ。
16 また、旋風によって運び去られた者もかなりいた。人々は彼らが運び去られたことは知っているが、どこへ運ばれて行ったのかだれも知らない。
17 このように、暴風雨と雷と稲妻と地の震動のために、全地の面が形を変えてしまった。
18 そして見よ、方々の岩は二つに裂けて、全地の面に及んだので、地の全面に砕けた破片として、ひびとして、割れ目として見られるようになった。
19 そして、雷と稲妻、嵐、暴風雨、地の震動はやんだ。見よ、これらはおよそ3時間続いた。その時間はもっと長かったと言う人々もいたが、このような大変な恐ろしい出来事はすべて、およそ3時間続いた。その後、見よ、地の面が暗くなった。
20 そして、地の全面に深い暗闇があり、それまでに倒れなかった民がその暗黒の霧に触れると、それを感じることができるほどであった。
21 また、暗闇のために光はまったく存在することができず、ろうそくも、たいまつもともすことができなかった。また、良質の十分に乾燥した木にも火をつけることができなかったので、光はまったくなかった。
22 地の面にある暗黒の霧が非常に深かったので、どんな光も見えず、火も、かすかな光も、太陽も、月も、星も見えなかった。
23 そして、光のまったく見えない状態が3日間続き、すべての民の中に大きな悲しみとわめき声と泣き声が絶えなかった。まことに、民に及んだ暗闇と大きな破壊のために、民のうめき声は大きかった。
24 そして、ある所では民が、「おお、この大変な恐ろしい日が来る前に悔い改めておけばよかった。そうすれば、我々の同胞は命を助けられ、あの大きな町ゼラヘムラで焼かれることはなかっただろう」と叫ぶのが聞かれ、
25 また別の所では、「おお、この大変な恐ろしい日が来る前に悔い改めておき、預言者たちを殺さず、石を投げつけず、追い出さなければよかった。そうすれば、我々の母も、麗しい娘たちも、子供たちも命を助けられ、あの大きな町モロナイハで埋められることはなかっただろう」と叫ぶのが聞かれた。このように、民は大いに、またひどくうめき苦しんだ。
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第9章
暗闇の中でキリストの声が聞こえ、民の悪事のために多くの者が滅び、多くの町が破壊されたことが宣言される。キリストはまた、御自分の神性を宣言し、モーセの律法が成就したことを告げ、御自分のもとに来て救われるようにと人々を招かれる。紀元約34年。
01 さて、この地の全面で、地に住むすべての者に次のように告げる声が聞こえた。
02 「災いである、災いである、この民は災いである。全地の民は悔い改めなければ災いである。わたしの民の麗しい息子、娘たちが殺されたことを、悪魔は笑い、悪魔の使いは喜んでいる。わたしの民の麗しい息子、娘たちが倒されたのは、彼らの罪悪と忌まわしい行いのためである。
03 見よ、あの大きな町ゼラヘムラとそこに住む者たちを、わたしは火で焼いた。
04 また見よ、あの大きな町モロナイを、わたしは海の深みに沈め、そこに住む者たちをおぼれさせた。
05 また見よ、あの大きな町モロナイハとそこに住む者たちを土で覆い、彼らの罪悪と忌まわしい行いをわたしの前から隠して、預言者たちと聖徒たちの血が、もはや彼らについてわたしに訴えることのないようにした。
06 見よ、ギルガルの町を沈め、そこに住む者たちを地の深みに埋めた。
07 また、オナイハの町とその民、モクムの町とその民、エルサレムの町とその民も同様であり、わたしはそれらの町に代わって水をわき上がらせ、彼らの悪事と忌まわしい行いをわたしの前から隠して、預言者たちと聖徒たちの血が、もはや彼らについてわたしに訴えることのないようにした。
08 また見よ、ガデアンダイの町、ガデオムナの町、ヤコブの町、ギムギムノの町、これらをすべて沈め、それらの場所に丘と谷を造った。また、それらの町に住む者たちを地の深みに埋め、彼らの悪事と忌まわしい行いをわたしの前から隠して、預言者たちと聖徒たちの血が、もはや彼らについてわたしに訴えることのないようにした。
09 また見よ、ヤコブ王の民が住んでいたあの大きな町ヤコブガスを、全地のどんな悪事も及ばない彼らの罪と悪事のゆえに、また彼らの暗殺と秘密結社のゆえに、わたしは火で焼かせた。わたしの民の平和を破り、国の政府を滅ぼしたのは彼らである。したがって、わたしは彼らを焼かせ、わたしの前から彼らを滅ぼして、預言者たちと聖徒たちの血が、もはや彼らについてわたしに訴えることのないようにした。
10 また見よ、レーマンの町と、ヨシの町と、ガドの町と、キシクメンの町と、それらの町に住む者たちを、わたしは火で焼かせた。彼らが預言者たちを追い出すという悪事、また彼らの悪事と忌まわしい行いのことを彼らに告げさせるために、わたしが遣わした者たちに石を投げつけるという悪事を行ったからである。
11 彼らが預言者たちをすべて追い出し、彼らの中に一人も義人がいなくなったので、わたしは火を下して彼らを滅ぼし、彼らの悪事と忌まわしい行いがわたしの前から隠されて、わたしが彼らの中に遣わした預言者たちと聖徒たちの血が、地から叫んで彼らについてわたしに訴えることのないようにした。
12 わたしは、多くのひどい破壊がこの地とここに住む者たちに及ぶようにさせたが、それは彼らの悪事と忌まわしい行いのゆえである。
13 おお、彼らよりも義にかなっているために、命を助けられているすべての者よ。わたしがあなたがたを癒すことができるように、今あなたがたはわたしに立ち返り、自分の罪を悔い改め、心を改めようとしているか。
14 まことに、あなたがたに言う。あなたがたは、わたしのもとに来るならば永遠の命を得るであろう。見よ、わたしの憐れみの腕はあなたがたに向けて伸べられている。わたしは来る者をだれでも受け入れよう。わたしのもとに来る者は幸いである。
15 見よ、わたしは神の子イエス・キリストである。わたしは天地とその中にある万物を創造した。わたしは初めから父とともにいた。わたしは父におり、父はわたしにおられる。そして、わたしによって父は御名に栄光を受けられた。
16 わたしは自分の民のところに来たのに、民はわたしを受け入れなかった。わたしの来臨に関する聖文は成就している。
17 わたしを受け入れた者に、わたしは神の子となることを許した。わたしの名を信じる者にも同様にしよう。見よ、わたしによって贖いは可能になっており、またわたしによってモーセの律法は成就している。
18 わたしは世の光であり命である。わたしはアルパでありオメガであり、初めであり終わりである。
19 あなたがたは、もはや血を流すことをわたしへのささげ物としてはならない。あなたがたの犠牲と燔祭は取りやめなさい。わたしはこれから、あなたがたの犠牲と燔祭を受け入れないからである。
20 あなたがたは打ち砕かれた心と悔いる霊を、犠牲としてわたしにささげなさい。打ち砕かれた心と悔いる霊をもってわたしのもとに来る者に、わたしはレーマン人に授けたように、火と聖霊によってバプテスマを授けよう。レーマン人は改心したときにわたしを信じたので、火と聖霊によるバプテスマを受けた。しかし、彼らはそれを知らなかった。
21 見よ、わたしは、世に贖いをもたらし、世の人々を罪から救うために世に来た。
22 それゆえ、悔い改めて幼子のようにわたしのもとに来る者を、わたしはだれでも受け入れよう。神の王国はこのような者の国である。見よ、このような者のために、わたしは自分の命を捨て、再びそれを得た。それゆえ、地の果てに至る人々よ、悔い改め、わたしのもとに来て救われなさい。」
第10章
地が何時間も静かであったこと。キリストの声が聞こえ、めんどりがひなを集めるように御自分の民を集めることを約束される。守られた者は、ひときわ義にかなった人々であった。紀元約34年から35年に至る。
01 さて見よ、この地のすべての人がこれらの御言葉を聞き、それについて証人となった。そして、これらの御言葉の後、地は何時間も静かであった。
02 民があまりの驚きに、親族を失ったのを嘆くこと、また泣きわめくことをやめてしまったからである。そのために、全地は何時間も静かであった。
03 そして、再び民に声が聞こえた。すべての人はそれを聞き、それについての証人となったが、その声は次のように語られた。
04 「おお、ヤコブの子孫であり、イスラエルの家に属する者である、崩れ落ちたこれらの大きな町の民よ。めんどりが羽の下にひなを集めるように、わたしはあなたがたを幾度集め、養ってきたことか。
05 さらにまた、めんどりが羽の下にひなを集めるように、わたしはあなたがたを幾度集めようとしたことか。まことに、おお、罪を犯してきたイスラエルの家の民よ。まことに、おお、同じように罪を犯してきたエルサレムに住むイスラエルの家の民よ。まことに、めんどりが羽の下にひなを集めるように、わたしはあなたがたを幾度集めようとしたことか。しかし、あなたがたは応じようとしなかった。
06 おお、わたしが命を助けたイスラエルの家よ。あなたがたが悔い改め、十分に固い決意をもってわたしに立ち返るならば、めんどりが羽の下にひなを集めるように、わたしはあなたがたを幾度も集めよう。
07 しかし、おお、イスラエルの家よ、もし悔い改めて立ち返らなければ、あなたがたの住居のある所は、あなたがたの先祖に立てた聖約が果たされるときまで荒れ果てた所となるであろう。」
08 さて、民はこれらの御言葉を聞いた後、見よ、親族と友人を失ったことで再び涙を流し、泣きわめき始めた。
09 そして3日たった。そして朝になると、暗闇は地の面から消え去り、地が揺れ動くのはやみ、岩が裂けるのもやみ、恐ろしいうなりは静まり、騒々しい音はすべてやんだ。
10 地は再び合わさってそのままになった。また、命を助けられた人々の嘆きや泣き悲しむ声もやんだ。そして、彼らの嘆きは喜びに変わり、彼らの悲しみは、彼らの贖い主なる主イエス・キリストへの賛美と感謝に変わった。
11 預言者たちによって述べられた聖文はここまで成就した。
12 このときに命を助けられたのは、ひときわ義にかなった人々である。彼らは預言者たちを受け入れた人々で、預言者たちに石を投げつけなかった。また、聖徒たちの血を流したこともなかった。
13 彼らは命を助けられ、地の中に沈められることも埋められることもなかった。海の深みにおぼれることもなく、火で焼かれもせず、落ちて押しつぶされて死ぬこともなかった。また、彼らは旋風に運び去られることもなく、立ち込める煙と暗黒の霧に打ち倒されるということもなかった。
14 さて、読む者は理解しなさい。聖文を持っている者は聖文を調べて、火と煙、暴風雨、旋風、それに人々をのみ込む地の裂けた穴によるこれらの死と破壊がすべて、多くの聖なる預言者たちの預言を成就するものでないかどうか確かめなさい。
15 見よ、あなたがたに言う。まことに、多くの預言者が、キリストの来臨の時のこれらのことについて証し、そしてこれらのことを証したために殺された。
16 まことに、預言者ゼノスはこれらのことについて証し、ゼノクもこれらのことについて述べ、彼らは特に、彼らの子孫の残りの者であるわたしたちについて証した。
17 見よ、わたしたちの先祖ヤコブも、ヨセフの子孫の残りの者について証した。わたしたちはヨセフの子孫の残りの者ではないだろうか。わたしたちについて証するこれらのことは、先祖リーハイがエルサレムから持って来た真鍮の版に書き記されてはいないだろうか。
18 さて、第34年の末に、命を助けられたニーファイの民と、レーマン人と呼ばれた命を助けられた人々に大きな恵みが与えられ、彼らの頭に大きな祝福が注がれたことを、見よ、わたしはあなたがたに示そう。キリストは天に昇られてからすぐに、実際に彼らに御自身を現し、
19 彼らに御自分の体を示し、教えと導きを授けられた。キリストの務めについての話は後に記すことにする。したがって、今はわたしの言葉を終わりにする。
【動画】忠実な者たち,神殿に集まる
大勢の人がバウンティフルの地に集まったとき、イエス・キリストはニーファイの民に御自身を現し、彼らを教え導かれた。イエス・キリストが彼らに御自身を現された次第は、次に記すとおりである。次の第11〜26章がそれに相当する。
第11章
御父、愛する御子について証される。キリストが現れ、御自分の贖罪について宣言される。人々、キリストの両手と両足とわきの傷跡に触れる。人々、「ホサナ」と叫ぶ。キリスト、バプテスマの様式を述べられる。争いの心は悪魔のもの。キリストの教義とは、人は信じてバプテスマを受け、聖霊を受けなければならないというものである。紀元約34年。
01 さて、ニーファイの民の大勢の群衆がバウンティフルの地にある神殿の周りに集まり、互いに驚き、不思議に思い、また各地に起こった大いなる驚くべき変化について互いに話し合っていた。
02 彼らはまた、すでにその死にかかわるしるしが現れたイエス・キリストについても語り合っていた。
03 そして、彼らが互いに語り合っていたとき、天から発せられるような声が聞こえた。しかし彼らは、自分たちに聞こえたその声の告げる意味が分からなかったので、辺りを見回した。それは耳障りな声ではなく、大きな声でもなかったが、小さな声でありながら、聞いた人々の心の中まで貫いたので、彼らの全身はことごとくそれによって震えた。まったく、それは魂そのものにまで彼らを貫き、彼らの心を燃え上がらせた。
04 そして彼らは、再びその声を聞いたが、それでもその声の告げる意味が分からなかった。
05 その声は3度まで聞こえ、彼らはこの度は耳を開いてそれを聞き、目をその声のする方へ向けて、その声が発せられる天を見詰めていた。
06 すると見よ、3度目には、彼らは自分たちに聞こえたその声の告げる意味が分かった。その声は彼らに語った。
07 「わたしの愛する子を見なさい。わたしの心にかなう者である。わたしは彼によって、わたしの名に栄光を加えた。彼に聞きなさい。」
08 そして、彼らはその意味が分かったので、再び天を見上げた。すると見よ、天から一人の男の方が降って来られるのが見えた。この御方は白い衣を着ておられ、降って来て群衆の中に立たれた。全群衆の目がこの御方に注がれたが、彼らは互いの間でさえ、あえて口を開こうとはしなかった。また彼らは、自分たちに御姿を現された御方を天使であると思ったが、これがどういうことなのか分からなかった。
09 そこでこの御方は、片手を差し伸べて人々に言われた。
10 「見よ、わたしはイエス・キリストであり、世に来ると預言者たちが証した者である。
11 見よ、わたしは世の光であり命である。わたしは、父がわたしに下さったあの苦い杯から飲み、世の罪を自分に負うことによって父に栄光をささげた。わたしは世の罪を負うことによって、初めから、すべてのことについて父の御心に従ってきた。」
12 さて、イエスがこれらの御言葉を語り終えられると、群衆は全員地に伏した。彼らは、キリストが天に昇られた後、自分たちに御自身を現されることが預言されていたのを思い出したからである。
13 そこで、主は彼らに言われた。
14 「立ってわたしのもとに来て、あなたがたの手をわたしのわきに差し入れ、またわたしの両手と両足の釘の跡に触れて、わたしがイスラエルの神であり、全地の神であること、そして世の罪のために殺されたことを知りなさい。」
15 そこで群衆は進み出て、主のわきに手を差し入れ、また主の両手と両足の釘の跡に触れた。彼らは一人ずつ進み出て、全員がこのようにし、自分の目で見、自分の手で触れ、この御方が、将来来られると預言者たちによって書き記された主であられることを、確かに知って証した。
16 彼らは全員進み出て、自ら確認した後、一斉に叫んだ。
17 「ホサナ。いと高き神の御名がほめたたえられますように。」そして、彼らはイエスの足もとに伏して、イエスを拝した。
18 そして、イエスは(ニーファイが群衆の中にいたので)ニーファイに語りかけ、進み出るように命じられた。
19 そこでニーファイは、立ち上がって進み出て、主の前にひれ伏し、主の両足に口づけした。
20 すると主は、立ち上がるように彼に命じられた。そこで彼は、身を起こして主の前に立った。
21 すると主は彼に、「わたしはあなたに力を授ける。わたしが再び天に上げられるとき、あなたはこの力をもってこの民にバプテスマを施しなさい」と言われた。
22 さらに主は、ほかの人々も召して、彼らにも同じように言われた。そして主は、バプテスマを施す力をこれらの人に授けられた。それから、主は彼らに言われた。「次の方法であなたがたはバプテスマを施しなさい。あなたがたの中に決して論争があってはならない。
23 まことに、あなたがたに言う。あなたがたの言葉によって罪を悔い改め、わたしの名によってバプテスマを受けたいと望む人に、次の方法でバプテスマを施しなさい。見よ、あなたがたは水の中に下りて行って立ち、わたしの名によって彼らにバプテスマを施しなさい。
24 さて見よ、そのときにあなたがたの言う言葉は次のとおりである。まず、バプテスマを受ける人の名を呼んで、
25 『わたしはイエス・キリストより権能を受けたので、御父と御子と聖霊の御名によって、あなたにバプテスマを施します。アーメン』と言いなさい。
26 それから、あなたがたはその人を水中に沈め、水から上がりなさい。
27 このような方法で、わたしの名によってバプテスマを施しなさい。見よ、まことに、あなたがたに言う。父と子と聖霊は一つである。わたしは父におり、父はわたしにおられ、父とわたしは一つである。
28 わたしが命じたとおり、あなたがたはこのようにバプテスマを施しなさい。これまであったような論争が、今後は決してあなたがたの中にあってはならない。また、わたしの教義の要点について、これまでにあったような論争が、今後決してあなたがたの中にあってはならない。
29 まことに、まことに、あなたがたに言う。争いの心を持つ者はわたしにつく者ではなく、争いの父である悪魔につく者である。悪魔は互いに怒って争うように人々の心をあおり立てる。
30 見よ、互いに怒るように人々の心をあおり立てるのは、わたしの教義ではない。このようなことをやめるようにというのが、わたしの教義である。
31 見よ、まことに、まことに、あなたがたに言う。あなたがたにわたしの教義を告げよう。
32 これから述べるのがわたしの教義であり、父がわたしに与えてくださった教義である。わたしは父のことを証し、父はわたしのことを証され、聖霊は父とわたしのことを証する。父は、どこにいる人でもすべての人に、悔い改めてわたしを信じるように命じておられることを、わたしは証する。
33 わたしを信じてバプテスマを受ける者は、だれでも救われる。神の王国を受け継ぐのはこれらの者である。
34 また、わたしを信じないでバプテスマを受けない者は、だれでも罰の定めを受ける。
35 まことに、まことに、あなたがたに言う。これがわたしの教義である。わたしは、父から告げられたとおりにこれを証する。わたしを信じる者は父をも信じるのである。その者に、父はわたしのことを証されるであろう。父はその者に火と聖霊を与えられる。
36 このようにして、父はわたしのことを証され、聖霊はその者に父とわたしのことを証する。父とわたしと聖霊は一つである。
37 もう一度あなたがたに言う。あなたがたは悔い改め、幼子のようになり、わたしの名によってバプテスマを受けなければならない。そうしなければ、あなたがたは決してこれらのものを受けることができない。
38 もう一度あなたがたに言う。あなたがたは悔い改め、わたしの名によってバプテスマを受け、幼子のようにならなければならない。そうしなければ、あなたがたは決して神の王国を受け継ぐことができない。
39 まことに、まことに、あなたがたに言う。これがわたしの教義である。この教義の上に建てる者はわたしの岩の上に建てるのである。地獄の門もこれらの者に打ち勝つことはない。
40 また、これ以上のこと、あるいはこれに及ばないことを告げ知らせて、それをわたしの教義とする者は、悪から出る者であり、わたしの岩の上に建てられてはいない。このような者は、砂の土台の上に建てているのである。地獄の門は開かれており、洪水が起こり、風が打ちつけるときにこのような者を迎え入れる。
41 したがって、あなたがたはこの民の中に出て行き、わたしの語った言葉を地の果てまで告げ知らせなさい。」
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第12章
イエス、十二弟子を召して力を授けられる。イエス、ニーファイ人に山上の垂訓に似た説教をし、至福の教えを説かれる。イエスの教えはモーセの律法をしのぎ、モーセの律法に優先する。イエスと御父が完全であられるように完全になることが、人々に命じられる。マタイによる福音書第5章と比較せよ。紀元約34年。
01 さて、イエスはこれらの御言葉をニーファイと前に召された人々(召されてバプテスマを施す力と権能を授けられた人々の数は12人であった)に語り終えると、見よ、群衆に手を伸ばして、大きな声で言われた。「わたしがあなたがたの中から選んで、あなたがたを教え導き、またあなたがたの僕となるようにしたこの12人の言葉に注意を払うならば、あなたがたは幸いである。わたしは水であなたがたにバプテスマを施す力をこの12人に授けた。あなたがたが水でバプテスマを受けた後、見よ、わたしはあなたがたに火と聖霊によってバプテスマを授けよう。あなたがたはすでにわたしを見ており、わたしが実在することを知っているので、わたしを信じてバプテスマを受けるならば、あなたがたは幸いである。
02 さらにまた、あなたがたがわたしに会ったと証し、わたしが実在することを知っていると証するとき、あなたがたのその言葉を信じる人々は、なおさら幸いである。まことに、あなたがたの言葉を信じて、心底謙遜になってバプテスマを受ける人々は、幸いである。彼らは火と聖霊を授かり、罪の赦しを受けるからである。
03 まことに、わたしのもとに来る心の貧しい人々は、幸いである。天の王国は彼らのものだからである。
04 また、悲しむ人々は皆、幸いである。彼らは慰められるからである。
05 柔和な人々は、幸いである。彼らは地を受け継ぐからである。
06 義に飢え渇いている人々は皆、幸いである。彼らは聖霊に満たされるからである。
07 憐れみ深い人々は、幸いである。彼らは憐れみを受けるからである。
08 心の清い人々は皆、幸いである。彼らは神を見るからである。
09 平和をつくり出す人々は皆、幸いである。彼らは神の子と呼ばれるからである。
10 わたしの名のために迫害される人々は皆、幸いである。天の王国は彼らのものだからである。
11 わたしのために人々があなたがたをののしり、また迫害し、またあなたがたに対して偽って悪口を言うときには、あなたがたは幸いである。
12 あなたがたは大きな喜びを得て、非常に喜ぶようになる。天においてあなたがたの受ける報いは大きいからである。あなたがたより前にいた預言者たちも、同じように迫害されたのである。
13 まことに、まことに、あなたがたに言う。わたしはあなたがたを地の塩とする。しかし、もし塩がその塩気を失ったら、地は何によって塩味をつけられようか。その塩はもはや何の役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々に踏みつけられるだけである。
14 まことに、まことに、あなたがたに言う。わたしはあなたがたをこの民の光とする。丘の上にある町は隠れることができない。
15 見よ、人はろうそくに火をつけて升の下に置くだろうか。そのようなことはせず、燭台に立てて、家の中のすべてのものを照らす。
16 だから、あなたがたの光をこの民の前に輝かせて、この民があなたがたの善い行いを見て、天におられるあなたがたの父をあがめるようにしなさい。
17 わたしが律法や預言者を廃するために来た、と思ってはならない。わたしが来たのは廃するためでなく、成就するためである。
18 まことに、あなたがたに言う。律法は一点一画もむなしくなることがなく、わたしによってすべて成就した。
19 そして見よ、わたしはあなたがたに、わたしを信じ、罪を悔い改めて、打ち砕かれた心と悔いる霊をもってわたしのもとに来るようにという父の律法と戒めを与えた。見よ、あなたがたの前には戒めがあり、律法はすでに成就している。
20 だから、わたしのもとに来て救いを得なさい。まことに、あなたがたに言う。今あなたがたに命じたわたしの戒めを守らなければ、あなたがたは決して天の王国に入れないであろう。
21 昔の人々により、『あなたがたは殺してはならない。殺す者はだれでも、神の裁きを受ける恐れがある』と言われてきたことは、あなたがたの聞いているところであり、またそれは、あなたがたの前に書き記されている。
22 しかし、あなたがたに言う。自分の兄弟に対して怒る者はだれであろうと、神の裁きを受ける恐れがある。自分の兄弟に向かって『愚か者』と言う者はだれでも、議会に引き渡される恐れがある。また、『ばか者』と言う者はだれでも、地獄の火に投げ込まれる恐れがある。
23 だから、あなたがたはわたしのもとに来るとき、またはわたしのもとに来たいと思うとき、兄弟があなたに対して何か恨みを抱いていることを思い出したら、
24 あなたの兄弟のところに行って、まずその兄弟と和解し、それから十分に固い決意をもってわたしのもとに来なさい。そうすれば、わたしはあなたを受け入れよう。
25 自分に敵意を抱いている者と、一緒にいる間に早く仲直りしなさい。そうしないと、いつか彼はあなたを捕らえるであろう。そして、あなたは牢に入れられるであろう。
26 まことに、まことに、あなたに言う。あなたは最後の1セナインを支払ってしまうまで、決してそこから出て来ることはできない。あなたは牢の中にいて1セナインでも支払えるだろうか。まことに、まことに、あなたに言う。『支払うことはできない』と。
27 見よ、昔の人々は、『あなたは姦淫してはならない』と書いている。
28 しかし、あなたがたに言う。情欲を抱いて女を見る者はだれでも、心の中ですでに姦淫を行ったのである。
29 見よ、わたしはあなたがたに、これらのことを決して心の中に入れないようにと命じる。
30 あなたがたは、これらのことを断って自分の十字架を負う方が、地獄に投げ込まれるよりもよいからである。
31 『妻を出す者は離縁状を渡せ』と書かれている。
32 まことに、まことに、あなたがたに言う。だれでも、不貞以外の理由で自分の妻を出す者は、姦淫を行わせるのである。また出された女をめとる者も、姦淫を行うのである。
33 さらに、『偽り誓うな。誓ったことは、すべて主に対して果たせ』と書かれている。
34 しかし、まことに、まことに、あなたがたに言う。一切誓ってはならない。天にかけて誓ってはならない。そこは神の御座であるから。
35 また、地にかけて誓ってはならない。そこは神の足台であるから。
36 また、自分の頭にかけて誓ってはならない。あなたは髪の毛一筋さえ黒くも白くもすることができない。
37 あなたがたの言葉はただ、『はい、はい』『いいえ、いいえ』であるべきだ。それ以上のものから出るものはすべて悪である。
38 また見よ、『目には目を、歯には歯を』と書かれている。
39 しかし、あなたがたに言う。悪人に手向かってはならない。もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。
40 あなたを訴えて、下着を取ろうとする者には、上着をも与えなさい。
41 もし、だれかが、あなたを強いて1マイル行かせようとするなら、その人とともに2マイル行きなさい。
42 求める者には与え、借りようとする者を断らないようにしなさい。
43 また見よ、『隣人を愛し、敵を憎め』とも書かれている。
44 しかし見よ、わたしはあなたがたに言う。あなたがたの敵を愛し、あなたがたをのろう者を祝福し、あなたがたを憎む者に善をなし、あなたがたを不当に扱い迫害する者のために祈りなさい。
45 こうして、天におられるあなたがたの父の子となるためである。天の父は、悪い者の上にも善い者の上にも太陽を昇らせてくださるからである。
46 以前律法の下にあったことはすべて、わたしによって成就している。
47 古いものは廃されて、すべてのものが新しくなったのである。
48 わたしや天におられるあなたがたの父が完全であるように、あなたがたも完全になることを、わたしは望んでいる。」
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第13章
イエス、主の祈りをニーファイ人に教えられる。人は天に宝を蓄えなければならない。主の務めに携わる十二弟子、この世のものを思い煩わないように命じられる。マタイによる福音書第6章と比較せよ。紀元約34年。
01 「まことに、まことに、わたしは言う。あなたがたは貧しい者に施しをしてほしい。しかし、見られるために人々の前で施しをすることのないように注意しなさい。もし、そうしないと、天におられるあなたがたの父から報いを受けることがないであろう。
02 だから、施しをするときには、偽善者たちが人から褒められるために会堂や通りでするように、自分の前でラッパを吹いてはならない。まことに、あなたがたに言う。彼らはその報いを受けてしまっている。
03 あなたは施しをするとき、右の手のしていることを左の手に知らせてはならない。
04 それは、あなたのする施しが隠れているためである。そうすれば、ひそかに見ておられるあなたの父は、公に報いてくださるであろう。
05 また、祈るときには、偽善者たちのようにしてはならない。彼らは人に見せようとして、会堂や大通りのつじに立って祈ることを好む。まことに、あなたがたに言う。彼らはその報いを受けてしまっている。
06 あなたは祈るとき、自分の部屋に入り、戸を閉じて、隠れた所におられるあなたの父に祈りなさい。すると、ひそかに見ておられるあなたの父は、公に報いてくださるであろう。
07 また、祈るとき、異教徒のように無益に繰り返すことはやめなさい。彼らは、言葉数が多ければ聞き入れられると思っている。
08 だから、彼らのまねをしてはならない。あなたがたの父は、求めない先から、あなたがたに必要なものを御存じだからである。
09 だから、あなたがたはこう祈りなさい。『天におられるわたしたちの父よ、御名があがめられますように。
10 御心が天で行われるように、地でも行われますように。
11 わたしたちが自分に負債のある者を赦していますように、わたしたちの負債をお赦しください。
12 わたしたちを誘惑に陥らせることのないようにし、悪からお救いください。
13 王国と力と栄光はとこしえにあなたのものです。アーメン。』
14 もしあなたがたが人の過ちを赦すならば、天におられるあなたがたの父もあなたがたを赦してくださるであろう。
15 もし人を赦さないならば、あなたがたの父も、あなたがたの過ちを赦してくださらないであろう。
16 さらにあなたがたは、断食をするときには、偽善者のように悲しげな顔つきをしてはならない。彼らは断食をしていることを人に知らせようとして、自分の顔を見苦しくする。まことに、あなたがたに言う。彼らはその報いを受けてしまっている。
17 あなたがたは断食をするときには、頭に油を塗り、顔を洗いなさい。
18 それは、断食をしていることを人に知られないで、隠れた所におられるあなたの父に知っていただくためである。そうすれば、ひそかに見ておられるあなたの父は、公に報いてくださるであろう。
19 あなたがたは自分のために、虫が食い、さびがつき、また、盗人らが押し入って盗み出すような地上に、宝を蓄えてはならない。
20 むしろ自分のため、虫も食わず、さびもつかず、また、盗人らが押し入って盗み出すこともない天に、宝を蓄えなさい。
21 あなたの宝のある所には、心もあるからである。
22 体の明かりは目である。だから、あなたの目が正しく見ていれば、あなたの全身に光が満ちるであろう。
23 しかし、あなたの目が悪を見ていれば、全身に暗闇が満ちるであろう。だから、もしあなたの内にある光が暗闇になるならば、その暗さはどんなに深いことか。
24 だれも、二人の主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない。」
25 さて、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、御自分が選んだ12人を見て言われた。「わたしが語った言葉を覚えておきなさい。見よ、あなたがたはこの民を教え導くようにわたしが選んだ者だからである。あなたがたに言う。何を食べようか、何を飲もうかと、自分の命のことで思い煩い、何を着ようかと自分の体のことで思い煩ってはならない。命は食物に勝り、体は衣服に勝っていないだろうか。
26 空の鳥を見なさい。まくことも刈ることもせず、倉に納めることもしない。それでも、あなたがたの天の父は鳥を養っておられる。あなたがたは、鳥よりもはるかに優れた者ではないか。
27 あなたがたの中のだれが、思い煩ったからといって、自分の背丈を1キュビト伸ばすことができようか。
28 また、なぜ衣服のことで思い煩うのか。野のゆりがどのように育っているか考えてみなさい。野のゆりは働きもせず、紡ぎもしない。
29 しかし、あなたがたに言うが、栄華を極めたときのソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。
30 だから、今日はあって、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神がこのように装ってくださるとすれば、あなたがたの信仰が薄くないかぎり、神はあなたがたにも同じように装わせてくださるであろう。
31 だから、『何を食べようか』『何を飲もうか』『何を着ようか』と言って思い煩ってはならない。
32 あなたがたの天の父は、これらのものがすべてあなたがたに必要であることを御存じだからである。
33 まず神の王国と神の義を求めなさい。そうすれば、これらのものはすべて添えて与えられるであろう。
34 だから、明日のことを思い煩ってはならない。明日のことは明日自身が思い煩うであろう。その日はその日の苦労だけで十分である。」
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第14章
イエス、裁かないように、神を求めるように、偽預言者に気をつけるようにと命じられる。イエス、御父の御心を行う者に救いを約束される。マタイによる福音書第7章と比較せよ。紀元約34年。
01 さて、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、もう一度群衆の方に向き直って、再び彼らに口を開かれた。「まことに、まことに、あなたがたに言う。裁いてはならない。自分が裁かれないためである。
02 あなたがたが裁くその裁きで、自分も裁かれ、あなたがたが量るそのはかりで、あなたがたも量られるからである。
03 なぜ兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか。
04 自分の目には梁があるのに、どうして兄弟に向かって、『あなたの目からちりを取らせてください』と言えようか。見よ、自分の目の中に梁があるではないか。
05 偽善者よ、まず自分の目から梁を取りのけなさい。そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からちりを取りのけることができるであろう。
06 聖なるものを犬に与えてはならない。また豚の前に真珠を投げてはならない。彼らはそれらを足で踏みつけ、向き直って、あなたがたを引き裂くであろう。
07 求めなさい。そうすれば、与えられるであろう。捜しなさい。そうすれば、見いだすであろう。たたきなさい。そうすれば、開かれるであろう。
08 すべて求める者は与えられ、捜す者は見いだし、たたく者には開かれるからである。
09 あなたがたの中に、自分の子がパンを求めるのに、石を与える者があろうか。
10 魚を求めるのに、蛇を与える者があろうか。
11 このように、あなたがたは悪い者であっても、自分の子供には、良い贈り物をすることを知っているとすれば、天におられるあなたがたの父はなおさら、求めてくる者に良いものを下さらないことがあろうか。
12 だから、何事でも人からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにしなさい。これが律法であり、預言者である。
13 狭い門から入りなさい。滅びに至る門は大きく、その道も広い。そして、そこから入って行く者が多い。
14 命に至る門は狭く、その道は細い。そして、それを見いだす者が少ない。
15 偽預言者に気をつけなさい。彼らは羊の衣を着てあなたがたのところに来るが、その内側は強欲なおおかみである。
16 あなたがたは、その実によって彼らを見分けるであろう。いばらからぶどうを、あざみからいちじくを集める者があろうか。
17 そのように、すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ。
18 良い木が悪い実を結ぶことはないし、悪い木が良い実を結ぶこともあり得ない。
19 良い実を結ばない木はことごとく切り倒されて、火の中に投げ込まれる。
20 このように、あなたがたはその実によって彼らを見分けるのである。
21 わたしに向かって、『主よ、主よ』と言う者が皆、天の王国に入るのではなく、ただ、天におられるわたしの父の御心を行う者だけが入るのである。
22 その日には、多くの者がわたしに向かって、『主よ、主よ、わたしたちはあなたの御名によって預言したではありませんか。あなたの御名によって悪霊を追い出し、あなたの御名によって多くの驚くべき業を行ったではありませんか』と言うであろう。
23 そのとき、わたしは彼らにはっきりこう言おう。『わたしはあなたがたをまったく知らない。罪悪を行う者たちよ、わたしのもとから去りなさい。』
24 それで、わたしのこれらの言葉を聞いて行う者を、わたしは岩の上に家を建てた賢い人にたとえよう。
25 雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけたが、それは倒れなかった。岩を土台としていたからである。
26 また、わたしのこれらの言葉を聞いて行わない者は皆、砂の上に家を建てた愚かな人にたとえられる。
27 雨が降り、洪水が起こり、風が吹いてその家に打ちつけると、それは倒れてしまった。そして、その倒れ方はひどかった。」
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第15章
イエス、モーセの律法が御自分によって成就したことを告げられる。イエスがエルサレムで言われた他の羊とは、ニーファイ人のことである。エルサレムにいる主の民は、罪悪のために、イスラエルの散らされた羊のことを知らない。紀元約34年。
01 さて、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、群衆を見回して、「見よ、あなたがたは、わたしが父のみもとに昇って行く前に教えたことを聞いた。だから、わたしのこれらの言葉を覚えていて行う者を、わたしは終わりの日によみがえらせよう」と言われた。
02 そしてイエスは、これらの御言葉を述べると、彼らの中に、イエスはモーセの律法をどうするおつもりかと驚き怪しんでいる人々がいるのに気づかれた。これらの人々は、古いものは過ぎ去って、すべてのものが新しくなったという御言葉の意味を、理解していなかったからである。
03 そこでイエスは、彼らに言われた。「わたしが、古いものは過ぎ去って、すべてのものが新しくなったとあなたがたに言ったことを、不思議に思ってはならない。
04 見よ、あなたがたに言う。モーセに与えられた律法はもう成就している。
05 見よ、その律法を与えたのはこのわたしであり、わたしの民イスラエルと聖約した者はわたしである。律法はわたしによって成就している。わたしは律法を成就するために来たからである。したがって、律法は終わった。
06 見よ、わたしは、預言者を廃止することはしない。まことに、わたしはあなたがたに言う。まだわたしによって成就していないことはすべて、これから成就するであろう。
07 わたしは、古いものは過ぎ去ったとあなたがたに言った。ということは、将来のものについて告げられてきたことを、廃していないということである。
08 見よ、わたしが民と交わした聖約は、まだすべては成就していないからである。しかし、モーセに与えられた律法は、わたしによって成就している。
09 見よ、わたしは律法であり、光である。わたしに頼り、最後まで堪え忍びなさい。そうすれば、あなたがたは生きるであろう。最後まで堪え忍ぶ者に、わたしは永遠の命を与えるからである。
10 見よ、わたしはあなたがたに戒めを与えたので、わたしの戒めを守りなさい。これは律法であり、預言者である。律法と預言者は、実際にわたしについて証したからである。」
11 さて、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、御自分が選んだあの12人に向かって言われた。
12 「あなたがたはわたしの弟子である。またあなたがたは、ヨセフの家の残りの者であるこの民にとって光である。
13 見よ、この地はあなたがたの受け継ぎの地である。父はこれをあなたがたに与えてくださった。
14 このことを、エルサレムにいるあなたがたの同胞に告げるように、父は一度もわたしに命じられなかった。
15 また父が、その地から導き出されたイスラエルの家のほかの部族について、彼らに告げるようにわたしに命じられたことも、これまでに一度もない。
16 彼らに告げるようにと、父がわたしに命じられたことはただ、
17 『わたしにはまた、この囲いにいない他の羊がある。わたしは彼らをも導かねばならない。彼らもわたしの声に聞き従うであろう。そして、ついに一つの群れ、一人の羊飼いとなるであろう』ということだけである。
18 ところが、彼らは強情であり、不信仰であったので、わたしの言葉を理解しなかった。そこで、このことについてそれ以上彼らに言わないように、わたしは父から命じられた。
19 しかしまことに、わたしはあなたがたに言う。父から命じられたので、わたしはあなたがたに告げる。彼らが罪悪を犯したために、あなたがたは彼らから分けられた。だから、彼らがあなたがたのことを知らないのは、彼らの罪悪のためである。
20 まことに、もう一度あなたがたに言う。父はほかにも彼らから幾つかの部族を分けられた。彼らがそれらの部族のことを知らないのは、彼らの罪悪のためである。
21 まことに、あなたがたに言う。『わたしには、この囲いにいない他の羊がある。わたしは彼らをも導かねばならない。彼らもわたしの声に聞き従うであろう。そして、ついに一つの群れ、一人の羊飼いとなるであろう』とわたしが言ったその羊とは、あなたがたのことである。
22 しかし、彼らはわたしの言ったことを理解しなかった。それは異邦人のことであると、彼らは思った。異邦人は彼らの宣教によって改宗するということを、彼らは理解していなかったからである。
23 また、『彼らもわたしの声に聞き従うであろう』とわたしが言った意味を、彼らは理解しなかった。異邦人は決してわたしの声を聞かないということ、すなわち、聖霊による以外にわたしは異邦人に自分自身を現さないということを、彼らは理解しなかった。
24 しかし見よ、あなたがたはわたしの声を聞き、わたしを見た。あなたがたはわたしの羊である。そしてあなたがたは、父がわたしに与えてくださった者の中に数えられている。」
【動画】イエス・キリスト,律法が御自分によって成就したことを宣言される
【動画】イエス・キリスト,ニーファイの民が御自分の羊の群れに含まれていることを宣言される
第16章
イエスはこの後、行方の知れないイスラエルの他の羊を訪れられる。末日に、福音は異邦人に伝わり、次いでイスラエルの家に伝わる。主がシオンを再び元に戻されるとき、主の民はそれを目の当たりに見るであろう。紀元約34年。
01 「まことに、まことに、あなたがたに言う。わたしには、この地におらず、エルサレムの地にもおらず、またわたしがこれまでに行って教え導いた周囲の地のどこにもいない他の羊がいる。
02 わたしの言うその羊は、まだわたしの声を聞いたことがなく、またわたしも彼らに自分自身を現したことはない。
03 しかし、わたしは彼らのところへ行って、彼らがわたしの声を聞いて、わたしの羊の中に数えられるようにし、一つの群れ、一人の羊飼いとなるようにすることを、父から命じられた。だから、わたしは行って彼らにわたし自身を現す。
04 また、わたしはあなたがたに、わたしが去った後にこれらの言葉を書き記すように命じる。エルサレムにいるわたしの民、すなわち、わたしを目にし、わたしが務めを果たしている間わたしとともにいた民が、聖霊によってあなたがたについて知ることができるように、また彼らの知らないほかの部族についても知ることができるように、わたしの名によって父に求めなければ、あなたがたがこれから書き記すこれらの言葉は、書き継がれて異邦人に明らかにされるであろう。それは、エルサレムにいるわたしの民の不信仰のために、地の面に散らされる彼らの子孫の残りの者が、異邦人が満ちみちた恵みにあずかることによって導かれるためである。すなわち、彼らの贖い主であるわたしについて知るようになるためである。
05 そのとき、わたしは彼らを地の四方から集めよう。またそのとき、わたしは父がイスラエルの家のすべての民に立てられた聖約を果たそう。
06 異邦人は、わたしと父について証する聖霊によってわたしを信じるので、幸いである。
07 見よ、父が言われるには、彼らはわたしを信じ、おお、イスラエルの家よ、あなたがたは信じないので、末日には異邦人に真理が明らかにされて、これらのことがことごとく彼らに知らされるであろう。
08 しかし、異邦人の中の信仰心のない者は災いであると、父は言われる。彼らはこの地の面にやって来るにもかかわらず、イスラエルの家に属するわたしの民を散らすからである。そして、イスラエルの家に属するわたしの民は、彼らの中から追い出され、彼らに足で踏みつけられる。
09 父は異邦人を憐れみ、イスラエルの家に属するわたしの民を裁かれるので、まことに、まことに、あなたがたに言うが、これらの後、わたしはイスラエルの家に属するわたしの民が打たれ、苦しめられ、殺され、異邦人の中から追い出され、彼らに憎まれ、軽蔑の的となり、笑いぐさとなるようにする。
10 また父は、あなたがたに次のことを言うように、わたしに命じられた。『異邦人がわたしの福音に背いて罪を犯し、わたしの完全な福音を受け入れず、あらゆる国民、全地のあらゆる民にも増して高慢な心で高ぶり、あらゆる偽りと欺き、悪事、あらゆる偽善と殺人、偽善売教、みだらな行い、秘密の忌まわしい行いにふけるその日、もし彼らがそのようなことをすべて行い、わたしの完全な福音を受け入れなければ、見よ、わたしは彼らの中からわたしの完全な福音を取り去ろう』と、父は言われる。
11 『そのとき、わたしはかつてわたしの民、イスラエルの家に立てたわたしの聖約を思い出し、彼らにわたしの福音を伝えよう。
12 そして、おお、イスラエルの家よ、異邦人にはあなたがたを支配する権力がないことを、わたしはあなたがたに示そう。イスラエルの家よ、わたしはあなたがたに立てたわたしの聖約を思い出そう。そしてあなたがたは、わたしの完全な福音を知るようになるであろう。
13 しかし、もし異邦人が悔い改めて、わたしに立ち返るならば、見よ、彼らはわたしの民、イスラエルの家の中に数えられる』と、父は言われる。
14 『また、わたしはイスラエルの家に属するわたしの民が彼らの中を通り過ぎて、彼らを踏みにじることを許さない』と、父は言われる。
15 『しかし、もし彼らがわたしに立ち返らず、わたしの声に聞き従おうとしなければ、わたしは彼らが、すなわちわたしの民イスラエルの家が彼らの中を通り過ぎて、彼らを踏みにじることを許そう。彼らは塩気を失った塩のようで、もう何の役にも立たず、捨てられて、わたしの民イスラエルの家の足の下に踏みつけられるだけである。』
16 まことに、まことに、あなたがたに言う。父はわたしに、この地を受け継ぎとしてこの民に与えるようにと命じられた。
17 そのとき、預言者イザヤの言葉が成就するであろう。イザヤは言った。
18 『あなたの見張り人は声を上げ、声を合わせて彼らは歌う。主がシオンを元に戻されるとき、彼らはそれを目の当たりに見るからである。
19 エルサレムの荒れた所よ、喜びの声を上げ、ともに歌え。主が御自分の民を慰め、エルサレムを贖われたからである。
20 主はその聖なる腕を、すべての国民の目の前に現された。地の果てに至るすべての人は、わたしたちの神の救いを見るであろう。』」
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第17章
イエス、民に御自分の言葉について深く考え、理解力を祈り願うように指示される。イエス、民の病気を癒される。イエス、書き記せない言葉で民のために祈られる。天使たちは幼い子供たちに恵みを施し、幼い子供たちは火に包まれる。紀元約34年。
01 さて見よ、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、再び群衆を見回して言われた。「見よ、わたしの時は近づいた。
02 あなたがたは弱く、あなたがたに今告げるようにと父から命じられているわたしの言葉を、すべては理解できないことを、わたしは知っている。
03 だから、自分の家に帰り、わたしが述べたことを深く考えなさい。そして、理解できるように、また明日のために心が備えられるように、わたしの名によって父に願いなさい。わたしはもう一度あなたがたのところに来るであろう。
04 しかし、わたしは今は父のみもとに帰り、またイスラエルの行方の知れない部族にもわたし自身を現そう。彼らは父にとっては行方知れずではない。父は彼らを導いた先を御存じだからである。」
05 さて、イエスはこのように言うと、もう一度群衆を見回して、彼らが涙を流しながら、もうしばらくとどまっていてほしいと願うかのように、イエスをじっと見詰めているのを御覧になった。
06 そこで、イエスは彼らに言われた。「見よ、わたしの心は、あなたがたに対する哀れみに満たされている。
07 あなたがたの中に病気の者がいるか。彼らをここに連れて来なさい。足の不自由な者、目の見えない者、足の悪い者、手の不自由な者、らい病にかかっている者、体のまひしている者、耳の聞こえない者、あるいはどんなことでも苦しんでいる者がいるか。彼らをここに連れて来なさい。癒してあげよう。わたしはあなたがたのことを哀れに思い、わたしの心は憐れみに満たされている。
08 あなたがたは、わたしがエルサレムにいるあなたがたの同胞に示したことを、自分たちにも示してほしいと思っている。わたしはそのことを知っている。また、あなたがたの信仰がわたしから癒しを受けるのに十分であることも、わたしは知っている。」
09 さて、イエスがこのように言われると、群衆はこぞって、病気の者、苦しんでいる者、足の不自由な者、目の見えない者、口の利けない者、そのほかどんなことでも苦しんでいる者たちを伴って前に進み出た。するとイエスは、御自分のところに連れて来られた者をことごとく癒された。
10 そこで、彼らは皆、癒された者も健康な者も、イエスの足もとにひれ伏して、イエスを拝した。また、群衆の中を近づくことのできた者はイエスの足に口づけし、涙でイエスの足をぬらした。
11 さて、イエスは、幼い子供たちを連れて来るように命じられた。
12 そこで、彼らは幼い子供たちを連れて来て、イエスの傍らに降ろした。イエスはその真ん中に立っておられた。また、群衆は道を譲って、幼い子供たちが皆、イエスのもとに来られるようにした。
13 さて、幼い子供たちが皆連れて来られると、イエスはその真ん中に立ち、地にひざまずくように群衆に命じられた。
14 そして、彼らが地にひざまずくと、イエスは心の中で苦悩され、「父よ、イスラエルの家に属する民の悪事のために、今わたしは心が騒いでいます」と言われた。
15 そして、イエスはこのように言われると、御自分も地にひざまずき、見よ、御父に祈られた。イエスが祈られた事柄を書き記すことはできないが、イエスの祈りを聞いた群衆はそのことを証した。
16 彼らは次のように証した。「わたしたちはイエスが御父に話されるのを見聞きしたが、それは目がまだ見たこともなく、耳がまだ聞いたこともないほど、大いなる驚くべきことであった。
17 わたしたちはイエスが話されるのを見聞きしたが、それはどんな舌も語ることができず、どんな人も書き記すことができず、人々の心が想像できないほど、大いなる驚くべきことであった。またわたしたちは、イエスがわたしたちのために御父に祈ってくださるのを聞いたが、そのときにわたしたちの心に満ちた喜びは、だれも想像することができない。」
18 さて、イエスは御父に祈り終えると、立ち上がられた。しかし、群衆は喜びが非常に大きかったので力を失っていた。
19 そこで、イエスは彼らに語り、立ち上がるように命じられた。
20 そこで、彼らは地から立ち上がった。すると、イエスは彼らに、「あなたがたは信仰があるので、幸いである。見よ、わたしの喜びは満ちている」と言われた。
21 そして、イエスはこれらの御言葉を語ると、涙を流された。群衆はそのことを証した。また、イエスは幼い子供たちを一人一人抱いて祝福し、彼らのために御父に祈られた。
22 そして、イエスはこれを終えると、また涙を流された。
23 また、イエスは群衆に語って、「あなたがたの幼い子供たちを見なさい」と言われた。
24 そこで彼らは、見ようとして天に目を向けたとき、天が開くのを見た。そして、天使がまるで火の中にいるかのような有様で天から降って来るのを見た。天使は降って来ると、幼い子供たちを取り囲み、幼い子供たちも火に包まれた。そして、天使は幼い子供たちに恵みを施した。
25 群衆はそれを見聞きして、証した。彼らは皆、自分自身で見聞きしたので、その証が真実であることを知っている。群衆の人数はおよそ2500人であり、男と女と子供から成っていた。
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第18章
イエス、ニーファイ人の中に聖餐を定められる。ニーファイ人、イエスの名によって常に祈るように命じられる。ふさわしくないままでイエスの肉を食べ、イエスの血を飲む者は、罰の定めを受ける。弟子たち、聖霊を授ける力を与えられる。紀元約34年。
01 さて、イエスは弟子たちに、幾らかのパンとぶどう酒を持って来るように命じられた。
02 そして、彼らがパンとぶどう酒を取りに行っている間に、イエスは群衆に、地に腰を下ろすよう命じられた。
03 そして、弟子たちがパンとぶどう酒を持って来ると、イエスはパンを取り、それを裂いて祝福された。それからイエスは、弟子たちに与えて、食べるように命じられた。
04 彼らが食べて満たされると、イエスは群衆にも与えるように命じられた。
05 そして、群衆が食べて満たされると、イエスは弟子たちに言われた。「見よ、あなたがたの中の一人を聖任しよう。わたしはその人に力を授け、彼がパンを裂いて祝福し、わたしの教会の人々、すなわち信じてわたしの名によってバプテスマを受けるすべての人に、それを与えることができるようにしよう。
06 またあなたがたは、わたしがしたように、すなわち、わたしがパンを裂いて祝福し、それをあなたがたに与えたように、いつもこれを行うように努めなさい。
07 あなたがたは、わたしがあなたがたに示したわたしの体を記念して、これを行いなさい。それは、あなたがたがいつもわたしを覚えているということを、父に示す証となるであろう。そして、あなたがたは、いつもわたしを覚えているならば、わたしの御霊を受けるであろう。」
08 さて、イエスはこれらの御言葉を語ると、弟子たちに、器のぶどう酒を取って飲むように告げ、さらに群衆にも与えて飲ませるように命じられた。
09 そこで、弟子たちはそのようにして、飲んで満たされた。また、彼らは群衆にも与え、群衆も飲んで満たされた。
10 弟子たちがこれをなし終えると、イエスは彼らに言われた。「あなたがたはこれを行ったので、幸いである。これはわたしの戒めを守ることである。またこれは、わたしの命じたことをあなたがたが喜んで行うということを、父に証明するものである。
11 これをあなたがたは、悔い改めてわたしの名によってバプテスマを受ける人々のためにいつも行いなさい。あなたがたは、わたしがあなたがたのために流したわたしの血の記念として、それを行いなさい。そうすれば、あなたがたはいつもわたしを覚えているということを、父に証明することができる。そして、あなたがたは、いつもわたしを覚えているならば、わたしの御霊を受けるであろう。
12 わたしはあなたがたに、これらのことを行うようにという戒めを与える。あなたがたはいつもこれらのことを行うならば、わたしの岩の上に建てられているので、幸いである。
13 しかし、あなたがたの中で、これ以上のこと、あるいはこれに及ばないことを行う者は、わたしの岩の上に建てられておらず、砂の土台の上に建てられているのである。雨が降り、洪水が起こり、風が吹いてこれらの者に打ちつけると、彼らは倒れてしまう。また地獄の門は、彼らを受け入れるためにいつでも開かれている。
14 だから、あなたがたに与えるように父がわたしに命じられたわたしの戒めを守るならば、あなたがたは幸いである。
15 まことに、まことに、わたしはあなたがたに言う。あなたがたは悪魔に誘惑されないように、また悪魔に捕らえられないように、常に目を覚ましていて祈らなくてはならない。
16 わたしがあなたがたの中で祈ったように、あなたがたもわたしの教会で、悔い改めてわたしの名によってバプテスマを受けるわたしの民の中で祈りなさい。見よ、わたしは光である。わたしはあなたがたのために模範を示した。」
17 さて、イエスはこれらの御言葉を弟子たちに語り終えると、再び群衆の方に向き直って、言われた。
18 「見よ、まことに、まことに、あなたがたに言う。あなたがたは誘惑に陥らないように、常に目を覚ましていて祈らなければならない。サタンはあなたがたを小麦のようにふるいにかけることを願っているからである。
19 だからあなたがたは、わたしの名によって常に父に祈らなければならない。
20 与えられると信じて、わたしの名によって父に求めるものは、正当であれば、見よ、何でもあなたがたに与えられる。
21 あなたがたの妻子が祝福を受けるように、あなたがたの家族の中で、わたしの名によって常に父に祈りなさい。
22 見よ、あなたがたはしばしばともに集いなさい。また、ともに集うときには、どんな人もあなたがたのところに来るのを禁じてはならない。彼らがあなたがたのところに来るのを許しなさい。禁じてはならない。
23 むしろあなたがたは彼らのために祈りなさい。彼らを追い出してはならない。もし彼らがしばしばあなたがたのところに来るならば、彼らのためにわたしの名によって父に祈りなさい。
24 あなたがたの光を掲げて、世の人々に輝き渡るようにしなさい。見よ、あなたがたの掲げる光とは、わたしである。すなわち、わたしが行うのをあなたがたが見た、その行いである。見よ、あなたがたはわたしが父に祈るのを見た。皆、目の当たりに見ている。
25 また、あなたがたが見たように、わたしはあなたがたのだれにも立ち去るように命じることなく、むしろわたしのもとに来て、触れるように、また見るように命じた。あなたがたも世の人々にそのようにしなさい。この戒めを破る者はだれでも、誘惑に陥ることを自ら許す者である。」
26 さて、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、御自分が選ばれた弟子たちにもう一度目を向けて言われた。
27 「見よ、まことに、まことに、あなたがたに言う。わたしはあなたがたにもう一つの戒めを与える。その後、わたしは父のみもとに帰り、父から与えられているほかの命令を果たさなければならない。
28 さて見よ、わたしがあなたがたに与える戒めはこれである。すなわち、あなたがたは、わたしの肉と血を分け与えるとき、だれであってもふさわしくないままでわたしの肉と血にあずかることを、承知のうえで許してはならないということである。
29 ふさわしくないままでわたしの肉を食べ、血を飲む者は、そうすることで自分に罰の定めを招くからである。だから、ある人がわたしの肉を食べ、血を飲むのにふさわしくないと分かったならば、あなたがたはその人に禁じなさい。
30 それでもあなたがたは、その人をあなたがたの中から追い出すことなく、教え導き、またその人のためにわたしの名によって父に祈りなさい。もしその人が悔い改めて、わたしの名によってバプテスマを受けるならば、あなたがたはその人を受け入れて、わたしの肉と血を分け与えなさい。
31 しかし、悔い改めなければ、その人がわたしの民を滅ぼすことのないように、あなたがたはその人をわたしの民の中に数えてはならない。見よ、わたしは自分の羊を知っており、わたしの羊は数えられているからである。
32 それでも、あなたがたは引き続き教え導くことができるように、その人を会堂や礼拝の場所から追い出してはならない。彼らが立ち返って悔い改め、十分に固い決意をもってわたしのもとに戻って来るようにならないとは言い切れないからである。彼らがそうするならば、わたしは彼らを癒そう。だからあなたがたは、彼らに救いをもたらす者になりなさい。
33 罪の宣告を受けることのないように、あなたがたはわたしが命じたこれらの言葉を守りなさい。なぜなら、父から罪に定められる者は災いだからである。
34 わたしがあなたがたにこれらの戒めを与えるのは、これまであなたがたの中に論争があったからである。あなたがたの中にこれから論争がなければ、あなたがたは幸いである。
35 今、わたしは父のみもとに行く。あなたがたのために父のみもとに行くことが必要だからである。」
36 さて、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、以前に御自分が選ばれた弟子たち全員に一人ずつ手で触れ、触れながら彼らに何事かを言われた。
37 群衆はイエスの言われた御言葉を聞かなかったので、彼らは証しなかった。しかし弟子たちは、聖霊を授ける力をイエスから授けられたと証した。わたしはこの証が真実であることを、後にあなたがたに示そう。
38 さて、イエスが彼ら全員に手で触れられると、雲が現れて群衆を覆ったので、彼らはイエスを見ることができなかった。
39 そして、群衆が覆われている間に、イエスは彼らのもとを去り、天に昇られた。弟子たちはイエスが再び天に昇って行かれたのを見て、そのことを証した。
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第19章
十二弟子、民を教え導き、聖霊を求めて祈る。十二弟子、バプテスマを受け、聖霊を授かり、天使から教えと導きを受ける。イエス、書き記せない言葉で祈られる。イエス、これらのニーファイ人の信仰が非常に深いことを認められる。紀元約34年。
01 さて、イエスが天に昇って行かれると、群衆は解散し、男たちは各々妻子を連れて家に帰った。
02 そして、群衆がイエスにお会いしたことと、イエスが彼らを教え導かれたことと、イエスが翌日も群衆に御自身を現されることが、暗くなる前に、すぐに民の中に広く告げ知らされた。
03 まことに、一晩中イエスのことが広く告げ知らされた。そして彼らは、民に使いを出して、多くの者、まことに非常に大勢の者が一晩中大いに働き、イエスが群衆に御自身を現される場所に、翌日人々が集まることができるようにした。
04 そしてその翌日、群衆が集まったときに、見よ、ニーファイと、ニーファイが死者の中からよみがえらせた彼の兄弟テモテと、ヨナという名のニーファイの息子と、マソーナイと、その兄弟マソーナイハと、クメンと、クメノンハイと、エレミヤと、シェムノンと、ヨナと、ゼデキヤと、イザヤ、以上はイエスが選ばれた弟子たちの名であるが、さて、彼らは進み出ると、群衆の中に立った。
05 そして見よ、群衆が非常に大勢であったため、彼らは群衆を12組に分けた。
06 12人はその群衆を教え、また見よ、彼らは群衆を地の面にひざまずかせ、イエスの名によって御父に祈らせた。
07 また弟子たちもイエスの名によって御父に祈った。そして、彼らは立ち上がり、民を教え導いた。
08 彼らは、イエスが言われたとおりの御言葉を、イエスが教えられた御言葉と少しも異なることなく教えると、見よ、再びひざまずいて、イエスの名によって御父に祈った。
09 彼らは、自分たちが最も望んでいるものを求めて祈った。聖霊が授けられるようにと望んでいたのである。
10 彼らはこのように祈り終えると、水際に下りて行き、群衆も彼らに続いた。
11 そして、ニーファイが水の中に入って行き、バプテスマを受けた。
12 そして彼は、水の中から出て来ると、バプテスマを施し始め、イエスが選ばれた者たち全員にバプテスマを施した。
13 そして、彼らが皆バプテスマを受けて、水から上がると、聖霊が彼らに降られた。そして、彼らは聖霊と火に満たされた。
14 見よ、彼らは火のようなものに包まれた。それは天から降って来たものである。群衆はそれを見て証した。また、天使たちが天から降って来て、彼らを教え導いた。
15 さて、天使たちが弟子たちを教え導いていたときに、見よ、イエスが来られ、彼らの中に立って教えを授けられた。
16 そして、イエスは群衆に語りかけ、もう一度地にひざまずくように命じ、弟子たちにも地にひざまずくように言われた。
17 そして、彼らが皆、地にひざまずくと、イエスは弟子たちに、祈るように命じられた。
18 見よ、彼らは祈り始め、イエスを自分たちの主、自分たちの神ととなえて、イエスに向かって祈った。
19 そこでイエスは、彼らの中から去り、少し離れた所に行って御自分も地に伏して、言われた。
20 「父よ、わたしが選んだこれらの者に聖霊を与えてくださり、感謝いたします。彼らがわたしを信じたので、わたしは彼らを世から選び出しました。
21 父よ、どうか彼らの言葉を信じるすべての者に聖霊をお与えください。
22 父よ、あなたは彼らがわたしを信じているので、彼らに聖霊を与えてくださいました。彼らが祈るのをお聞きになってお分かりのように、彼らはわたしを信じています。彼らはわたしに祈っています。わたしが彼らとともにいるので、彼らはわたしに祈っています。
23 さて、父よ、わたしは彼らのために、また彼らの言葉を信じるすべての者のためにお願いします。彼らがわたしを信じることができるようにしてください。父よ、あなたがわたしにおられるように、わたしが彼らにいることができ、わたしたちが一つとなれるようにしてください。」
24 さて、イエスはこのように御父に祈り終えると、弟子たちのところに来られた。ところが見よ、彼らは、絶え間なくなおもイエスに向かって祈り続けていた。彼らは言葉数を多くしたのではない。祈るべき事柄が彼らに示され、また彼らには、願い事がいっぱいあったからである。
25 そこで、弟子たちがイエスに祈っている間に、イエスは彼らを祝福された。また、イエスは彼らにほほえみかけ、イエスの顔の光が彼らを照らした。すると彼らも、イエスの顔のように、またイエスの衣のように白くなった。そして見よ、その白さはあらゆる白さに勝っており、まことに、地上のものでこれほど白いものはあり得ないほどであった。
26 また、イエスは彼らに、「祈り続けなさい」と言われた。しかし、実は彼らはまだ祈るのをやめていなかった。
27 イエスは彼らからまた向き直り、少し離れた所に行って地に伏された。そして、再び御父に祈って言われた。
28 「父よ、わたしが選んだ者たちを、彼らの信仰のゆえに清めてくださり感謝します。わたしは彼らのために、また彼らの言葉を信じる者たちのためにもお願いします。彼らがわたしによって清められているように、彼らの言葉を信じる者たちも、彼らの言葉を信じることでわたしによって清められるようにしてください。
29 父よ、わたしは世のためではなく、信仰があるということであなたが世から選んで、わたしに与えてくださった者たちのためにお願いします。彼らがわたしによって清められるようにしてください。父よ、あなたがわたしのうちにおられるように、わたしが彼らのうちにいることができ、わたしたちが一つとなり、わたしが彼らによって栄光を受けることができるようにしてください。」
30 イエスはこれらの御言葉を語ると、また弟子たちのところに来られた。すると彼らは、絶え間なく続けてイエスに向かって祈っていた。そこでイエスは、また彼らにほほえみかけられた。見よ、彼らはイエスのように白かった。
31 さて、イエスはまた少し離れた所に行って、御父に祈られた。
32 イエスが祈られた御言葉を舌は語ることができないし、イエスが祈られた御言葉を人は書き記すことができない。
33 群衆は聞いて、証している。彼らの心は開かれ、彼らはイエスが祈られた御言葉を心の中で理解した。
34 しかし、イエスが祈られた御言葉は、まことに大いなる驚くべきものであったので、人はそれを書き記すこともできなければ、言い表すこともできない。
35 さて、イエスは祈り終えると、また弟子たちのところに来て彼らに言われた。「わたしはすべてのユダヤ人の中で、これほどの深い信仰を見たことがない。わたしは、彼らの不信仰のゆえに、このように大きな奇跡を彼らに現すことができなかった。
36 まことに、あなたがたに言う。彼らの中には、あなたがたが見たような大いなることを見た者、またあなたがたが聞いたような大いなることを聞いた者は一人もいない。」
【動画】イエス・キリスト,ニーファイ人たちを教え,ともに祈られる
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第20章
イエス、不思議な力でパンとぶどう酒を用意し、再び聖餐を執行される。ヤコブの残りの者は将来、主なる彼らの神を知るようになり、アメリカ大陸を受け継ぐ。イエスはモーセのような預言者である。ニーファイ人は預言者たちの子孫である。主の民に属するほかの者たち、将来エルサレムに集められる。紀元約34年。
01 さて、イエスは群衆と弟子たちに、祈るのをやめるように、しかし心の中で祈ることはやめないようにと命じられた。
02 また、イエスは彼らに、体を起こして立ち上がるように命じられた。そこで、彼らは体を起こして立ち上がった。
03 そして、イエスは再びパンを裂いて、それを祝福し、弟子たちに食べるようにとお与えになった。
04 そして、彼らが食べ終えると、イエスは彼らに、パンを裂いて群衆に与えるように命じられた。
05 彼らが群衆に与え終えると、イエスは彼らにぶどう酒も与えて飲ませ、また群衆にも与えるように命じられた。
06 ところで、弟子たちと群衆は、パンもぶどう酒も持って来ていなかった。
07 しかしイエスは、実際に彼らにパンを与えて食べさせ、ぶどう酒を与えて飲ませられたのであった。
08 そして、イエスは彼らに言われた。「このパンを食べる者は、自分のためにわたしの体を食べるのであり、このぶどう酒を飲む者は、自分のためにわたしの血を飲むのである。その者は決して飢えることも渇くこともなく、満たされるであろう。」
09 さて、群衆は皆食べ終え、飲み終えると、見よ、彼らは御霊に満たされた。そして、彼らは声を合わせて叫び、自分たちが見たり聞いたりしたイエスに栄光を帰した。
10 そして、彼らが皆、イエスに栄光を帰すると、イエスは彼らに言われた。「見よ、今、わたしはイスラエルの家の残りの者であるこの民について、父から命じられたことを果たそう。
11 あなたがたが覚えているように、わたしはあなたがたに、イザヤの言葉が成就するときのことを語った。見よ、イザヤの言葉は書き記されてあなたがたの前にあるので、それを調べなさい。
12 まことに、まことに、あなたがたに言う。イザヤの言葉が成就するのは、父が御自分の民、イスラエルの家に立てられた聖約が果たされるときである。
13 そのとき、地の面に広く散らされる残りの者たちが、東から西から、南から北から集められる。そして、彼らを贖われた主なる彼らの神を知るようになる。
14 また父は、受け継ぎとしてこの地をあなたがたに与えるように、わたしに命じられた。
15 あなたがたに言う。異邦人がわたしの民を散らした後、祝福を受けてから、もし悔い改めなければ、
16 そのとき、ヤコブの家の残りの者であるあなたがたは、彼らの中に出て行くであろう。異邦人の数は多いが、あなたがたは彼らの中にいる。あなたがたは彼らの中で、森の獣の中のライオンのようであり、羊の群れの中の若いライオンのようである。若いライオンは通り過ぎるときに踏みにじり、引き裂いて、だれも救うことができない。
17 あなたの手はあなたに敵意を抱いている者のうえに振り上げられ、あなたの敵はことごとく絶たれる。
18 人が刈り束を床に集めるように、わたしは自分の民を集めよう。
19 父が聖約を交わされたわたしの民、わたしはあなたの角を鉄とし、またあなたのひづめを真鍮としよう。あなたは多くの民を打ち砕くであろう。わたしは彼らの利得を主のために聖別し、彼らの所有物を全地の主のために聖別しよう。見よ、それを行うのはわたしである。
20 さて、わたしの罰の剣はその日彼らのうえに迫ると、父は言われる。彼らが悔い改めなければ、それは彼らに、すなわち異邦人のすべての国民に下ると、父は言われる。
21 そしてわたしは、自分の民、イスラエルの家を築き上げよう。
22 見よ、わたしはこの民をこの地に立てて、わたしがかつてあなたがたの先祖ヤコブと交わした聖約を果たそう。この地は新エルサレムとなるであろう。天の力はこの民の中にあり、まことに、わたしはあなたがたの中にいるであろう。
23 見よ、モーセが語ったのはわたしのことである。モーセは言った。『主なるあなたがたの神は、あなたがたのために、あなたがたの同胞の中からわたしのような預言者を一人お立てになる。その預言者があなたがたに語るすべてのことに耳を傾けなさい。そして、その預言者に耳を傾けない者はすべて、民の中から絶たれるであろう。』
24 まことに、あなたがたに言う。サムエルをはじめとして、彼に続いて語った預言者は皆、わたしについて証した。
25 見よ、あなたがたは預言者たちの子孫であり、イスラエルの家に属する者であり、父があなたがたの先祖と交わされた聖約を受けている者である。父はアブラハムに、『あなたの子孫により、地のすべての部族は祝福を受けるであろう』と言われた。
26 父はわたしをよみがえらせ、まずあなたがたに遣わされた。あなたがた一人一人を罪悪から遠ざけて祝福にあずからせるためである。これは、あなたがたが聖約の子孫だからである。
27 あなたがたが祝福にあずかった後、父は、『あなたの子孫により、地のすべての部族が祝福を受けるであろう』と言ってアブラハムと交わした聖約を果たされる。それは、わたしを通じて、異邦人に聖霊が注がれるためである。異邦人はこの祝福を与えられて、何者にも増して強くなり、わたしの民、イスラエルの家を散らすであろう。
28 そして異邦人は、この地の民にとって鞭となるであろう。それでも、彼らがわたしの完全な福音を受け入れたとき、『もしもわたしに対して心をかたくなにするならば、わたしは彼らの罪悪を彼ら自身の頭に戻そう』と、父は言われる。
29 『またわたしは、自分の民と交わした聖約を思い起こそう。わたしは自分がふさわしいと思うときに彼らを集め、彼らの先祖の地を受け継ぎとして再び彼らに与えると聖約した。その先祖の地とはエルサレムの地、彼らのためのとこしえの約束の地である』と、父は言われる。
30 そして将来、わたしの完全な福音が彼らに宣べ伝えられる時が来る。
31 そして彼らはわたしを信じ、わたしが神の子イエス・キリストであることを認め、わたしの名によって父に祈るようになるであろう。
32 そのとき、彼らの見張り人たちは声を上げ、彼らは声を合わせて歌う。彼らは目の当たりに見るからである。
33 そのとき、父は再び彼らを集め、彼らの受け継ぎの地としてエルサレムを彼らに与えられる。
34 そのとき、彼らは喜びの声を上げる。『エルサレムの荒れた所よ、ともに歌え。父が御自分の民を慰め、エルサレムを贖われたからである。』
35 父はその聖なる御腕を、すべての国民の目の前に現された。地の果てに至るすべての人は、父の救いを見るであろう。父とわたしは一つである。
36 そのとき、書き記されていることが成就するであろう。『おお、シオンよ、目覚めよ、再び目覚めよ、力を着よ。おお、聖なる都エルサレムよ、美しい衣を着よ。これからはもう、割礼を受けていない者と清くない者は、あなたの中に入って来ることはないからである。
37 あなたの身からちりを振り落とせ。おお、エルサレムよ、立ち上がって座せ。おお、囚われたシオンの娘よ、あなたの首の縄を解き捨てよ。
38 主はこう言われる。「あなたがたは自分自身をただで売り渡した。あなたがたは金を払わずに贖われるであろう。」』
39 まことに、まことに、あなたがたに言う。わたしの民はわたしの名を知るであろう。まことに、その日、彼らは語っている者がわたしであることを知るであろう。
40 そのとき、彼らは言う。『よきおとずれを伝え、平和を告げて広め、善のよきおとずれを伝え、救いを告げて広め、シオンに向かって「あなたの神が統治しておられる」と言う者の足は、山の上にあって何と麗しいことであろう。』
41 またそのとき、叫び声が起こる。『去れ、去れ、そこを出よ。清くないものに触れるな。その中を出よ。主の器を担う者たちよ、清くあれ。
42 あなたがたはあわてて出る必要もなければ、逃げるようにして去る必要もない。主があなたがたの前を行き、イスラエルの神があなたがたのしんがりとなられるからである。
43 見よ、わたしの僕は賢く振る舞う。彼はあがめられ、たたえられ、非常に高くなる。
44 多くの人があなたに驚いたように――彼の顔つきはほかのだれよりも損なわれて、また彼の姿も、人の子らのようではなかった――
45 彼は多くの国民を清める。王たちは彼を見て口をつぐむ。彼らはまだ告げられたことのないことを見、まだ聞いたことのないことを悟るからである。』
46 まことに、まことに、あなたがたに言う。これらのことはすべて、父がわたしに命じられたように必ず起こる。そのとき、父が御自分の民と交わされた聖約が果たされる。そのとき、エルサレムは再びわたしの民の住む所となり、彼らの受け継ぎの地となるであろう。」
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第21章
『モルモン書』が出るときに、イスラエルは集められる。異邦人、自由な民としてアメリカ大陸に住む。異邦人、信じて従うならば救われる。そうでなければ、絶たれて滅ぼされる。イスラエルは新エルサレムを築き、行方の知れない部族は戻って来る。紀元約34年。
01 「まことに、あなたがたに言う。これらのことが起こる時、すなわち、わたしが自分の民、イスラエルの家を長年の離散した状態から集めて、彼らの中に再びわたしのシオンを設ける時を、あなたがたが知ることのできるように、一つのしるしをあなたがたに示そう。
02 見よ、わたしが一つのしるしとしてあなたがたに示すのは、次のことである。まことに、あなたがたに言う。今あなたがたに告げるこれらのこと、またわたし自身と、父があなたがたに授けられる聖霊の力とによって、わたしがこの後あなたがたに告げるこれらのことは、将来異邦人に知らされるであろう。異邦人がヤコブの家の残りの者であるこの民について、また彼らによって散らされるこのわたしの民について、知るようにするためである。
03 まことに、まことに、あなたがたに言う。これらのことは父によって彼らに知らされ、父から出て彼らからあなたがたに伝わる。
04 彼らがこの地に定住し、父の力によって自由な民とされて、これらのことが彼らからあなたがたの子孫の残りの者に伝わり、父が御自分の民、イスラエルの家と交わされた父の聖約が果たされるようになることは、父の知恵にかなうことである。
05 これらの業と、この後あなたがたの中で行われる業は、罪悪のために不信仰に陥るあなたがたの子孫に、異邦人から伝わるであろう。
06 このようにして、父が望んでおられるように、それは異邦人から伝わって、父が御自分の力を異邦人に示されるようになり、またその結果、異邦人は心をかたくなにしなければ、悔い改めてわたしのもとに来て、わたしの名によってバプテスマを受け、わたしの教義の真の要点を知って、わたしの民、イスラエルの家の中に数えられるようになるであろう。
07 これらのことが起こって、あなたがたの子孫がこれらのことを知るようになるとき、それは彼らにとって一つのしるしとなって、彼らは、父がイスラエルの家に属する人々に立てられた聖約を果たすために業を始められた、ということを知るのである。
08 その日が来ると、そこで王たちは口をつぐむようになる。王たちはまだ告げられたことのないことを見、まだ聞いたことのないことを悟るからである。
09 その日、わたしのために父は異邦人の中で一つの業を、すなわち大いなる驚くべき業を行われる。一人の男が彼らにその業について告げるが、彼らの中にはそれを信じない者たちがいる。
10 しかし見よ、わたしの僕の命はわたしの手の内にあるので、彼は彼らによって損なわれることはあっても、害は受けない。損なわれても、わたしは彼を癒そう。わたしの知恵が悪魔の悪知恵よりも深いことを、わたしは彼らに示そう。
11 さて、父はこの僕がイエス・キリストであるわたしの言葉を異邦人にもたらすことを許し、また異邦人にわたしの言葉をもたらす力を彼に与えられる。わたしの言葉を信じない者はだれであろうと、聖約を受けているわたしの民の中から絶たれるであろう。(それは、モーセの言ったとおりになる。)
12 ヤコブの残りの者であるわたしの民は、異邦人の中で、彼らのただ中で、森の獣の中のライオンのように、羊の群れの中の若いライオンのようになるであろう。若いライオンは通り過ぎるときに踏みにじり、引き裂いて、だれも救うことができない。
13 彼らの手は彼らに敵意を抱いている者のうえに振り上げられ、彼らの敵はことごとく絶たれるであろう。
14 まことに、異邦人は悔い改めなければ災いである。父は言われる。『そしてその日には、わたしはあなたのうちから馬を絶やし、戦車を壊し、
15 あなたの国のもろもろの町を絶やし、あなたの城をことごとく覆す。
16 また、あなたの国から魔術を絶やす。あなたのうちには占い師がないようになる。
17 また、あなたのうちから彫像と石の柱を絶やす。あなたは重ねて手で造ったものを拝むことはない。
18 また、あなたのうちからアシラ像を抜き倒し、あなたのもろもろの町を滅ぼす。
19 そして、偽りや欺きやねたみ、また争いや偽善売教、みだらな行いはすべて廃される。』
20 そして、父は言われる。『その日、悔い改めてわたしの愛子のもとに来ない者を、わたしは自分の民、イスラエルの家の中から絶とう。
21 わたしは異教徒に及ぼすように、彼らが聞いたこともないほどの報復と怒りを彼らに及ぼそう。』
22 しかし、彼らが悔い改めてわたしの言葉に聞き従い、心をかたくなにしなければ、わたしは彼らの中にわたしの教会を設けよう。彼らは聖約を交わし、わたしがこの地を彼らの受け継ぎとして与えた、このヤコブの残りの者の中に数えられるであろう。
23 そして、わたしの民であるヤコブの残りの者と、将来やって来るイスラエルの家のすべての者が、新エルサレムと呼ばれる一つの都を築くのを、彼らは助けるであろう。
24 そのとき、地の全面に散らされているわたしの民が新エルサレムに集まるのを、彼らは助けるであろう。
25 そのとき、天の力が彼らの中に下り、わたしも彼らの中にいるであろう。
26 またその日、すなわちこの福音がこの民の残りの者の中で宣べ伝えられるとき、父の業が始まるであろう。まことに、あなたがたに言う。その日、父の業は、わたしの民のすべての散らされた者の中で、すなわち、父がエルサレムから連れ出された行方の知れない部族の中で始まるであろう。
27 まことに父は、わたしの民のすべての散らされた者がわたしのもとに来て、わたしの名によって父に請い願うことができるように、道を備えるために彼らの中でその業を始められる。
28 そのとき、父は、御自分の民が彼らの受け継ぎの地に戻されるように、道を備えるためにすべての国民の中で業を始められる。
29 『そして、彼らはあらゆる国民の中から出て来る。彼らはあわてて出る必要もなければ、逃げるようにして去る必要もない。わたしが彼らの前を行き、またわたしが彼らのしんがりとなるからである』と、父は言われる。」
第22章
終わりの時に、シオンとシオンのステークが確立され、イスラエルは憐れみと慈しみをもって集められる。イスラエルは勝利を得る。イザヤ書第54章と比較せよ。紀元約34年。
01 「書き記されていることは、そのときに起こる。『「おお、子を生まなかった不妊の女よ、歌いなさい。産みの苦しみを味わわなかった者よ、声を放って歌い、声高らかに叫びなさい。見捨てられた者の子供は、夫のある者の子供よりも多いからである」と、主は言われる。
02 「あなたの天幕の場所を広くし、あなたの住まいの幕を張って広げなさい。惜しむことなく、あなたの綱を長くし、あなたの杭を強固にしなさい。
03 あなたは右にも左にも広がり、あなたの子孫は異邦人から受け継いで、荒れ果てたもろもろの町を人の住む所とするからである。
04 あなたは恥じることはないので、恐れてはならない。あなたは辱められることはないので、うろたえてはならない。あなたは若いときの恥を忘れ、若いときの恥辱を思い出さず、寡婦であったときの恥辱を決して思い出すことはない。
05 あなたを造った者があなたの夫であり、その名は万軍の主である。あなたの贖い主はイスラエルの聖者であり、全地の神ととなえられる。
06 主はあなたを、見捨てられて心に痛手を負っている女のように、また若いときに拒まれた妻のように招かれたからである」と、あなたの神は言われる。
07 「わたしは少しの間あなたを捨てたが、深い憐れみをもってあなたを集めよう。
08 わたしはいささか怒って、少しの間あなたから顔を隠したが、永遠の慈しみをもってあなたを憐れもう」と、あなたの贖い主である主は言われる。
09 「このことは、わたしにはノアの洪水のようである。わたしはかつてノアの洪水が二度と地を覆うことはないと誓ったが、そのように、わたしはあなたを怒らないと誓った。
10 山々が去り、丘が動いても、わたしの慈しみはあなたから去ることなく、わたしの平和の聖約は動くことがない」と、あなたを憐れむ主は言われる。
11 「おお、苦しめられ、嵐にもてあそばれ、慰めを得ない者よ。見よ、わたしは麗しい色であなたの石を敷き、サファイヤであなたの基を据えよう。
12 また、めのうであなたの窓を造り、紅玉であなたの門を造り、あなたの境をすべて宝石で造ろう。
13 あなたの子孫は皆、主によって教えを受け、あなたの子孫の平安は深い。
14 あなたは義をもって堅く立てられる。あなたは恐れないので、虐げられることはない。また、恐怖から遠ざかる。それはあなたに近づくことがないからである。
15 見よ、彼らは必ずあなたに敵対して集まるが、それはわたしによるのではない。あなたに敵対して集まる者はだれであろうと、あなたのゆえに倒れる。
16 見よ、わたしは炭火を吹きおこして、自分の仕事のために道具を造る鍛冶を造った。また、わたしは荒らし滅ぼす者も造った。
17 あなたを攻めるために造られる武器は、まったく役に立たない。また、裁きの時にあなたに向かってののしる舌はことごとく、あなたがそれを罪に定める。これが主の僕たちの受け継ぐものであって、彼らの義はわたしから出る」と、主は言われる。』」
第23章
イエス、イザヤの言葉を是認される。イエス、預言者の書を調べるように民に命じられる。復活についてのレーマン人サムエルの言葉が記録に加えられる。紀元約34年。
01 「さて見よ、わたしはあなたがたに言う。あなたがたはこれらのことを調べなさい。まことにわたしは、これらのことを熱心に調べるようにという戒めを、あなたがたに与える。イザヤの言葉はまことに偉大だからである。
02 確かにイザヤは、イスラエルの家に属するわたしの民について、すべてのことを述べた。そこで、どうしても彼は異邦人にも語る必要があった。
03 彼の語ったことはすべて、彼の語った言葉のとおりにこれまで起こっており、またこれからも起こるであろう。
04 したがって、わたしの言葉を心に留め、わたしがあなたがたに告げたことを書き記しなさい。これらの言葉は、父の定められたときに、父の御心のままに異邦人に伝わるであろう。
05 わたしの言葉に聞き従い、悔い改めてバプテスマを受ける者は、だれであろうと救われる。預言者の書を調べなさい。これらのことについて、証している預言者が多いからである。」
06 さて、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、再び彼らに語り、彼らに与えられている聖文をすべて説き明かした後、「見よ、あなたがたが書いていない別の聖文を書き記すことを、あなたがたに望む」と、彼らに言われた。
07 そして、イエスはニーファイに、「あなたがたが書き継いできた記録を持って来なさい」と言われた。
08 そこでニーファイが記録を持って来てイエスの前に置くと、イエスはそれらの記録に目をやって言われた。
09 「まことに、あなたがたに言う。わたしはレーマン人であるわたしの僕サムエルに、この民に証するようにと命じた。その証とは、父がわたしによって御名に栄光を受けられる日に、多くの聖徒が死者の中からよみがえって、多くの者に現れ、彼らを教え導くであろうということである。」そして、イエスは彼らに、「そのとおりではなかったか」と言われた。
10 そこでイエスの弟子たちは、イエスに答え、「はい、主よ、サムエルはあなたの御言葉のとおりに預言し、それはすべて成就しました」と言った。
11 するとイエスは彼らに、「多くの聖徒がよみがえって多くの者に現れ、彼らを教え導いたことを書き記していないのはどうしてか」と言われた。
12 そこでニーファイは、このことがまだ書き記されていないのを思い出した。
13 そして、イエスがそれを書き記すように命じられたので、イエスが命じられたとおりにそのことが書き記された。
14 さて、弟子たちが書き記してきたすべての聖文をまとめて説き明かした後、イエスは、御自分が説き明かした事柄を教えるように、彼らに命じられた。
第24章
主の使者が再臨のために道を備える。キリスト、裁きの座に着かれる。イスラエル、什分の一を納め、ささげ物をするように命じられる。覚えの書が記される。マラキ書第3章と比較せよ。紀元約34年。
01 さて、イエスは、御自分がこれから告げる御言葉を書き記すように、彼らに命じられた。それは、御父がマラキに与えられた御言葉である。そして、それらの御言葉が書き記された後、イエスはそれを説き明かされた。イエスが彼らに告げられた御言葉は次のとおりである。「父はマラキに次のように言われた。『「見よ、わたしは使者を遣わす。彼はわたしの前に道を備える。あなたがたの求める主、すなわちあなたがたの喜ぶ聖約の使者は、突如主の神殿に来る。見よ、主は来る」と、万軍の主は言う。
02 しかし、主の来る日には、だれが堪え得よう。主の現れるときには、だれが立ち得よう。主は精錬する者の火のようであり、布さらしの灰汁のようである。
03 主は銀を精錬し清める者として座に着き、レビの子らを清め、金銀のように彼らを清めて、彼らが義をもってささげ物を主にささげられるようにされる。
04 そのとき、ユダとエルサレムのささげ物は、昔の日のように、また先の年のように主に喜ばれる。
05 「そして、わたしはあなたがたに近づいて、裁きをなし、魔法を使う者、姦淫を行う者、偽りの誓いを立てる者、賃金について雇い人を虐げる者、やもめと父のいない子供を虐げる者、外来者を退ける者、わたしを畏れない者に対して速やかに証を立てる」と、万軍の主は言う。
06 「わたしは主であるので、変わることがない。それゆえ、ヤコブの子らよ、あなたがたは焼き尽くされることがない。
07 あなたがたは、先祖の時代からわたしの定めを離れて、それを守らなかった。わたしに帰りなさい。そうすれば、わたしはあなたがたに帰ろう」と万軍の主は言う。「ところが、あなたがたは、『どのようにして帰りましょうか』と言う。
08 人は神から盗むだろうか。ところが、あなたがたはわたしから盗んでいる。しかし、あなたがたは、『わたしたちはどのようにしてあなたから盗んでいるのでしょうか』と言う。什分の一とささげ物によってである。
09 あなたがたはのろいをもってのろわれる。あなたがた、まことに民のすべてがわたしから盗んでいるからである。
10 わたしの家に食物があるように、什分の一をすべてわたしの倉に携えて来なさい。これをもってわたしを試み、わたしが天の窓を開いて、受け入れる余地がないほどの祝福を、あなたがたに注ぐかどうかを見なさい」と、万軍の主は言う。
11 「わたしは食い荒らすものをあなたがたのために抑えて、あなたがたの地の産物が荒らされないようにしよう。また、あなたがたのぶどうの木が熟す前に、その実を畑に落とすことのないようにしよう」と、万軍の主は言う。
12 「諸国の民は皆、あなたがたを祝福された者と言うであろう。あなたがたは喜ばしい国となるからである」と、万軍の主は言う。
13 「あなたがたは言葉を激しくしてわたしに逆らった」と、主は言う。ところが、あなたがたは、「わたしたちはあなたに逆らって何を言いましたか」と言う。
14 あなたがたは言った。「神に仕えることは無益だ。神の定めを守ってきたことが、また万軍の主の前を悲しんで歩んできたことが、どんな益になっているか。
15 今わたしたちは、高ぶる者は幸せであると言う。まことに、悪を行う者は高く上げられ、まことに、神を試みる者でさえも救われる」と。
16 そのとき、主を畏れる者たちはしばしば互いに語り合い、主は耳を傾けてこれを聞かれた。そして、主を畏れ、主の名を尊んだ者たちのために、主の前で一つの覚えの書が書き記された。
17 万軍の主は言う。「わたしがわたしの宝石を集める日に、彼らはわたしのものとなる。人が自分に仕える息子を憐れむように、わたしは彼らを憐れもう。
18 そのとき、あなたがたは帰り、義人と悪人、神に仕える者と神に仕えない者との区別を知るようになる。」』」
第25章
再臨の時には、高ぶる者と悪人はわらのように焼かれる。エリヤは大いなる恐るべき日の前に戻って来る。マラキ書第4章と比較せよ。紀元約34年。
01 「『「見よ、炉のように燃える日が来る。すべて高ぶる者と悪を行う者は、わらのようになる。やがて来る日が彼らを焼き尽くして、根も枝も残さない」と、万軍の主は言う。
02 「しかし、わたしの名を畏れるあなたがたのために、義の御子は翼に癒しを携えて現れる。あなたがたは出て行って、牛舎の中の子牛のように育つ。
03 そしてあなたがたは、悪人を踏みつける。わたしがこれを行う日に、彼らはあなたがたの足もとで灰となる」と、万軍の主は言う。
04 「あなたがたは、わたしが全イスラエルのためにホレブでわたしの僕モーセに命じたモーセの律法と、掟と裁決を思い出しなさい。
05 見よ、主の大いなる恐るべき日が来る前に、わたしは預言者エリヤをあなたがたに遣わす。
06 彼は先祖の心を子孫に向けさせ、子孫の心をその先祖に向けさせる。これは、わたしが来て、のろいをもって地を打つことのないようにするためである。」』」
第26章
イエス、初めから終わりに至るまでのすべてのことについて説き明かされる。乳飲み子と小児たち、書き記せない驚くべき事柄を述べる。キリストの教会の人々、すべてのものを共有する。紀元約34年。
01 さて、イエスはこれらのことを語り終えると、群衆にそれを説き明かし、また大小を問わず、あらゆることを彼らに説き明かされた。
02 そしてイエスは、「あなたがたの持っていないこれらの聖文が、後の時代の人々に伝えられることは、父の知恵にかなっていたので、父は、これらの聖文をあなたがたに伝えるようにわたしに命じられた」と言われた。
03 そして、イエスは世の初めから将来御自分が栄光のうちに来られるときまでのすべてのこと、すなわち、諸元素が酷熱に溶け、大地が巻き物のように巻かれ、天地が過ぎ去るときまでに地の面に起こるすべてのことについて説き明かされた。
04 すべての民族、すべての部族、すべての国民および国語の民が、彼らの行いが善いか悪いか、行いに応じて裁かれるために神の前に立つ、大いなる終わりの日に至るまでのことを、イエスは説き明かされたのであった。
05 行いが善ければ永遠の命の復活にあずかり、悪ければ罰の定めの復活を受ける。すなわち、世の始まる前からすでにおられたキリストの内にある憐れみと公正と神聖さによって、前者は一方にあり、後者は他方にあって、互いに平行している。
06 ところで、イエスが実際に民に教えられたことは、その100分の1もこの書に書き記せない。
07 しかし見よ、ニーファイの版には、イエスが民に教えられたことの大部分が載せられている。
08 わたしがこれまで書き記したこれらのことは、イエスが民に教えられたことのほんの一部でしかない。わたしが書き記してきたのは、これらのことがイエスの言われた御言葉のように、異邦人からこの民に再び伝えられるためである。
09 彼らがまずこれを持つことは、彼らの信仰を試すのに必要である。彼らはこれを与えられたとき、これらのことを信じるならば、そのときにはもっと大いなることが彼らに明らかにされる。
10 しかし、彼らがこれらのことを信じなければ、そのときにはそれより大いなることは彼らに与えられることなく、彼らは罪の宣告を受けるであろう。
11 見よ、わたしがニーファイの版に刻まれているすべてのことを書き記そうとしたところ、主はそれを禁じて、「わたしは自分の民の信仰を試みよう」と言われた。
12 そこでわたしモルモンは、主から命じられたことを書く。わたしモルモンは、これでわたしの言葉を終え、命じられたことを書き進めよう。
13 したがって、わたしは、あなたがたに知ってもらいたい。主は実際に3日間民を教えられた。その後、主はしばしば彼らに御自身を現し、しばしばパンを裂いて祝福し、彼らに与えられた。
14 そしてイエスは、前に述べた群衆の子供たちをも教え導き、彼らの舌を緩められた。そこで子供たちは、大いなる驚くべきことを、実に、イエスがかつて民に明らかにされたことよりも大いなることを、自分たちの父親に語った。イエスが子供たちの舌を緩められたので、彼らは語ることができたのであった。
15 そして、イエスが天に昇って行かれた後、すなわち、イエスが2度目に群衆に御自身を現し、彼らの中の病気の者も、足の不自由な者もすべて癒し、目の見えない者の目を開け、耳の聞こえない者の耳を開き、そのほか彼らの中であらゆる癒しを与え、一人の男を死者の中からよみがえらせ、彼らに御自分の力を示して、御父のもとに昇って行かれた後の、
16 見よ、その翌日、群衆は集まり、これらの子供たちが語るのを、まことに乳飲み子でさえも口を開いて驚くべきことを語るのを見聞きした。しかし、彼らの語ったことはだれも書き記してはならないと止められた。
17 さて、イエスから選ばれた弟子たちは、そのときから、彼らのもとに来るすべての者にバプテスマを施し、彼らを教え始めた。そして、イエスの名によってバプテスマを受けた者は皆、聖霊に満たされた。
18 また、彼らの多くは、語ってはならない様々なことを見たり聞いたりした。今、それを書き記すことは許されていない。
19 また彼らは、互いに教え、互いに仕え合った。そして、彼らはすべてのものを共有し、皆、互いに公正に振る舞った。
20 そして彼らは、イエスから命じられたとおりにすべてのことを行った。
21 そして、イエスの名によってバプテスマを受けた人々は、キリストの教会と呼ばれた。
第27章
イエス、御自分の名によって教会を呼ぶように命じられる。イエスの使命と贖いの犠牲がイエスの福音を構成する。人々は聖霊によって聖められるために、悔い改めてバプテスマを受けるように命じられる。人はイエスのようにならなければならない。紀元約34年から35年に至る。
01 さて、イエスの弟子たちは旅をしながら、自分たちがそれまで聞いたり見たりしたことを宣べ伝え、イエスの名によってバプテスマを施していた。また、弟子たちは集まり、一つになって熱烈に祈り、断食をした。
02 そして、彼らがイエスの名によって御父に祈っていると、イエスが再び彼らに御自身を現された。イエスは来て彼らの中に立つと、「あなたがたはわたしから何を与えられたいのか」と彼らに言われた。
03 そこで彼らはイエスに、「主よ、この教会をどのような名で呼ぶべきか、わたしたちにお教えいただきたいと存じます。この件について民の中に論争がございますから」と言った。
04 すると主は、彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言う。民がこのことについてつぶやき、論じ合うのはなぜか。
05 彼らは、『キリストの名を受けなければならない』という聖文を読んだことがないのか。キリストとはわたしの名である。終わりの日にあなたがたは、この名によって呼ばれるのである。
06 わたしの名を受け、最後まで堪え忍ぶ者は、終わりの日に救われるであろう。
07 だから、あなたがたが行うことは何事でも、わたしの名によって行いなさい。あなたがたは教会をわたしの名で呼びなさい。また、父がわたしのために教会を祝福してくださるように、わたしの名によって父に呼び求めなさい。
08 わたしの名で呼ばれなければ、どうしてわたしの教会であろうか。ある教会がモーセの名で呼ばれれば、それはモーセの教会である。あるいは、ある人の名で呼ばれれば、それはその人の教会である。しかし、わたしの名で呼ばれ、人々がわたしの福音の上に築かれていれば、それはわたしの教会である。
09 まことに、あなたがたに言う。あなたがたはわたしの福音の上に築かれている。だから、あなたがたが呼ぶものは何であろうと、わたしの名によって呼びなさい。あなたがたが教会のために、わたしの名によって父に呼び求めるならば、父はあなたがたの祈りを聞いてくださる。
10 また、教会がわたしの福音の上に築かれていれば、父は教会の中で御自分の業を示されるであろう。
11 しかし、教会がわたしの福音の上に築かれておらず、人の業の上に、あるいは悪魔の業の上に築かれていれば、まことにあなたがたに言う。彼らはしばらくの間は自分たちの業を楽しむが、やがて最後が来て、彼らは切り倒されて火の中に投げ込まれ、そこから二度と戻ることができない。
12 彼らの業は彼らにつき従い、彼らはその業のために切り倒される。だから、わたしがあなたがたに告げたことを覚えておきなさい。
13 見よ、わたしはあなたがたに、わたしの福音について告げた。わたしがあなたがたに告げた福音とは、次のとおりである。すなわち、父がわたしを遣わされたので、わたしは父の御心を行うために世に来た。
14 父は、わたしが十字架に上げられるようにと、わたしを遣わされた。十字架に上げられた後で、わたしはすべての人をわたしのもとに引き寄せた。わたしは人々によって上げられたが、そのように人々は、父によって上げられてわたしの前に立ち、自分の行いが善いか悪いかによって、行いを裁かれるのである。
15 このために、わたしは上げられたのである。それで、父の力によってすべての人をわたしのもとに引き寄せ、彼らが各々の行いに応じて裁かれるようにするのである。
16 さて、悔い改めて、わたしの名によってバプテスマを受ける者はだれであろうと、満たされるであろう。そして、最後まで堪え忍ぶならば、見よ、わたしはその者を、わたしが立って世の人々を裁くその日に、わたしの父の御前で罪のない者としよう。
17 また、最後まで堪え忍ばない者は、切り倒されて火の中に投げ込まれ、父の正義のゆえに、そこから二度と戻ることができない。
18 これは父が人の子らに告げられた御言葉である。父は御自分の正義のゆえに、御自分が告げられた御言葉をことごとく成就される。父は偽らず、御自分の御言葉をことごとく成就される。
19 清くない者は、決して父の王国に入ることができない。したがって、信仰を持ち、罪をすべて悔い改め、最後まで忠実であることによって、わたしの血により衣を洗われた者のほかには、父の安息に入る者はいない。
20 さて、戒めは次のとおりである。地の果てに至るすべての者よ、悔い改めて、わたしのもとに来て、わたしの名によってバプテスマを受けなさい。そうすれば、あなたがたは聖霊を受けて聖められ、終わりの日にわたしの前に染みのない状態で立てるであろう。
21 まことに、まことに、あなたがたに言う。以上がわたしの福音である。あなたがたは、わたしの教会で行わなければならないことを知っている。わたしがするのを見たその行いを、あなたがたもしなさい。わたしが行うのを見たそのとおりのことを、あなたがたも行いなさい。
22 あなたがたは、これらのことを行うならば、幸いである。終わりの日に高く上げられるからである。
23 あなたがたが見たこと、聞いたことを、禁じられているものを除いてすべて書き記しなさい。
24 これまで書き記されてきたように、これからもこの民の行いを書き記しなさい。
25 見よ、これまで書き記されてきた数々の書と、これから書き記される数々の書によって、この民は裁かれるであろう。これらの書によって彼らの行いが人々に知られるからである。
26 また見よ、すべてのことは父によって書き記されている。したがって、これから書き記される数々の書によって、世の人々は裁かれるであろう。
27 あなたがたが知っているように、将来あなたがたは、わたしがあなたがたに与える公正な判断力によって、この民を裁く者となるであろう。したがって、あなたがたはどのような人物であるべきか。まことに、あなたがたに言う。わたしのようでなければならない。
28 さて、わたしは父のみもとに行くが、まことに、あなたがたに言っておく。あなたがたがわたしの名によって父に求めるものは何であろうと、あなたがたに与えられる。
29 だから、求めなさい。そうすれば与えられるであろう。たたきなさい。そうすれば開かれるであろう。求める者には与えられ、たたく者には開かれるからである。
30 さて見よ、あなたがたとこの時代の人々についてのわたしの喜びは、大きくて限りがない。また父も、あなたがたとこの時代の人々のことを喜んでおられ、すべての聖なる天使たちも喜んでいる。だれ一人、失われていないからである。
31 見よ、あなたがたに理解してもらいたい。わたしが言っているのは、今この時代に生きている人々のことである。彼らはだれ一人、失われていない。そして、彼らのことでわたしは満ちみちる喜びを得ている。
32 しかし見よ、この時代から4代目の人々について、わたしは悲しむ。彼らは滅びの子が捕らえられたように、悪魔に捕らえられるからである。彼らは銀や金、また虫のつくものや盗人が押し入って盗むもののためにわたしを売るであろう。その日、わたしは彼らに報いを下し、彼らの業を彼ら自身の頭上に浴びせよう。」
33 さて、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、弟子たちに言われた。「狭い門から入りなさい。命に至る門は狭く、その道は細い。そして、それを見いだす者が少ない。しかし、死に至る門は広く、その道も広い。そして、だれも働くことのできない夜が来るまで、そこから入って行く者が多い。」
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第28章
十二弟子のうち9人は、死後にキリストの王国で受け継ぎを得ることを望み、そのことを約束される。3人のニーファイ人は、イエスが再び来られるときまで地上にとどまることを望み、とどまるために死を制する力を与えられる。彼らは身を変えられ、語るのを許されていない数々のことを見る。彼らが現在も人々の中で務めを果たしていること。紀元約34年から35年に至る。
01 さて、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、御自分の弟子たち一人一人に、「わたしが父のみもとに行った後、あなたがたはわたしに何を願うか」と言われた。
02 すると弟子たちは、3人を除いて皆、「わたしたちは人の寿命まで生き長らえたら、あなたから召されたわたしたちの務めを終え、速やかにあなたの王国であなたのみもとに行けるように願っています」と答えた。
03 そこで、イエスは彼らに、「あなたがたは、わたしにこのことを願ったので、幸いである。あなたがたは72歳になると、わたしの王国でわたしのもとに来て、わたしとともに安息を得るであろう」と言われた。
04 イエスは彼らに語り終えると、3人の方を向き、「わたしが父のみもとに行ったら、あなたがたはわたしに何をしてもらいたいか」と言われた。
05 すると彼らは、自分たちの望んでいることをイエスに思い切って言えなかったので、心の中でつらく思っていた。
06 するとイエスは、彼らに言われた。「見よ、わたしはあなたがたの思いを知っている。あなたがたは、愛するヨハネがわたしに願ったことを願っている。ヨハネとは、わたしがユダヤ人によって上げられる前に、わたしとともに務めに携わっていた者である。
07 したがって、あなたがたはさらに幸いである。あなたがたは決して死を味わうことがない。わたしが天の力をもってわたしの栄光のうちに来るときまで、すなわち父の御心のとおりにすべてのことが成就するそのときまで、あなたがたは生き長らえて、父が人の子らのために行われるすべてのことを見るであろう。
08 また、あなたがたは決して死の苦しみを受けることなく、わたしがわたしの栄光のうちに来るとき、一瞬のうちに死すべき状態から不死の状態に変えられる。その後、あなたがたは父の王国で祝福を受けるであろう。
09 またあなたがたは、肉体に宿っている間、苦しみを感じることなく、また世の罪に対する以外に悲しみを感じることもない。わたしがすべてこのように行うのは、あなたがたがわたしに願ったためである。あなたがたは世界が存在する間、人々をわたしのもとに導きたいと願ったからである。
10 このために、あなたがたは満ちみちる喜びを得、父の王国で座に着くであろう。父が満ちみちる喜びをわたしに与えてくださったように、まことに、あなたがたの喜びは満ちるであろう。そして、あなたがたはわたしのようになる。わたしは父のようであり、父とわたしは一つである。
11 聖霊は父とわたしのことを証する。そして父は、わたしのゆえに人の子らに聖霊を与えられる。」
12 さて、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、とどまることになった3人を除いて、ほかの全員に一人一人指で触れ、その後去って行かれた。
13 すると見よ、天が開かれ、3人の者は天に引き上げられて、言い表すことのできない様々なことを見聞きした。
14 彼らはそれらのことについて語るのを禁じられ、また見聞きしたことについて語る力も与えられなかった。
15 それが体のままであったか、体を離れてであったか、彼らには分からなかった。彼らには、神のものを見ることができるように、自分たちがこの肉の体から不死の状態に変えられ、変貌したように思われたからである。
16 さて、彼らは再び地の面で教えを説いたが、天で与えられた戒めがあったので、自分たちが見聞きしたことについては教えなかった。
17 ところで、彼らが変貌した日以来、死すべき状態にあったのか不死の状態にあったのか、わたしは知らない。
18 しかし、これまで記されてきた記録によってわたしが知っていることは次のとおりである。すなわち、彼らは地の面に出て行き、すべての民に教えを説き、彼らの宣教を信じる者を皆、教会に加えた。彼らにバプテスマを施したのである。そして、バプテスマを受けた者は皆、聖霊を受けた。
19 また彼らは、教会に属していない者たちによって牢に入れられた。しかし、牢は二つに裂け、彼らを閉じ込めておくことができなかった。
20 また彼らは、地の中に投げ込まれた。しかし彼らは、神の言葉で地を打ったので、神の力によって地の深みから救い出された。そのため人々は、彼らを閉じ込めておけるほどの穴を掘ることはできなかった。
21 また、彼らは3度、炉の中に投げ込まれたが、何の害も受けなかった。
22 また2度、猛獣の穴の中に投げ込まれたが、見よ、子供が乳離れしていない子羊と遊ぶように猛獣たちと戯れ、何の害も受けなかった。
23 そして、彼らはすべてのニーファイの民の中に出て行って、地の面のすべての人に、キリストの福音を宣べ伝えた。すると人々は、主に帰依し、キリストの教会に加わった。このように、その時代の人々はイエスの言葉のとおりに祝福を受けた。
24 さて、わたしモルモンは、これらのことについて述べるのを少しの間やめよう。
25 見よ、わたしは、決して死を味わうことのない人々の名を書き記そうとしたが、主から禁じられた。したがって、その名が世から隠されているので、わたしはそれを書き記さない。
26 しかし見よ、わたしはかつて彼らに会い、彼らはわたしを教え導いてくれた。
27 見よ、彼らは将来異邦人の中に行くが、異邦人は彼らに気づかないであろう。
28 彼らはユダヤ人の中にも行くが、ユダヤ人も彼らに気づかないであろう。
29 そして、主が御自分の知恵でふさわしいと見なされるときに、彼らは自分たちの望みが果たされるように、また彼らの内に神の説得力があるために、イスラエルのすべての散らされた部族、およびすべての国民、部族、国語の民、民族を教え導き、彼らの中から多くの人をイエスのもとに導くであろう。
30 彼らは神の天使のようであり、イエスの名によって御父に祈るならば、彼らはふさわしいと思う人にはだれにでも、自分自身を現すことができる。
31 それであるから、大いなる来るべき日の前に、大いなる驚くべき業が彼らによって行われるので、すべての人は、必ずキリストの裁きの座の前に立たなければならない。
32 まことに、あの裁きの日に先立って、異邦人の中で一つの大いなる驚くべき業が彼らによって行われる。
33 あなたがたは、キリストの驚くべき業の一切を記しているすべての聖文を持っているならば、キリストの言葉のとおりに、これらのことが必ず起こることが分かるであろう。
34 イエスの言葉と、イエスが選んで民の中に遣わされた人々の言葉に聞き従わない者は、災いである。イエスの言葉と、イエスが遣わされた人々の言葉を受け入れない者は、イエスをも受け入れないからである。イエスは終わりの日に、彼らを受け入れることはなさらないであろう。
35 彼らは生まれない方が、彼らのためによかったであろう。あなたがたは不当な扱いを受けた神の正義から逃れることができると思うか。神はかつて人々に足の下に踏みつけられ、そのために救いがもたらされたのではなかったか。
36 さて見よ、わたしは主が選ばれた人々、すなわち天に引き上げられた3人について、死すべき状態から不死の状態に清められたかどうか知らないと前に述べたが、
37 しかし見よ、わたしはそう書き記した後、主に尋ねた。すると主はわたしに、ある変化が彼らの体に生じなければならない、そうでなければ、彼らは必ず死を味わうということを明らかにしてくださった。
38 彼らが死を味わわないように、ある変化が彼らの体に生じ、彼らは世の罪に対する以外に苦しみも悲しみも受けないようになったのである。
39 ところで、この変化は終わりの日に起こる変化と同様のものではなかったが、彼らに変化が生じたので、サタンは彼らを支配する力をまったく持てず、彼らを誘惑できなかった。そして、彼らは肉にあって聖められ、聖なる者となり、地の力も彼らを閉じ込めておくことができなかった。
40 この状態で、彼らはキリストの裁きの日までとどまることになった。そして、その日、彼らはさらに大きな変化を受けて、御父の王国に受け入れられ、二度とそこを去ることがなく、永遠に神とともに天に住むことになるのである。
第29章
『モルモン書』が出ることは、主がイスラエルを集め、御自分の聖約を果たし始められたことのしるしである。末日の主の啓示と賜物を拒む者はのろわれる。紀元約34年から35年に至る。
01 さて見よ、わたしはあなたがたに言う。主が御自分の知恵で、これらの御言葉を御自分の言葉のとおりに異邦人に明らかにするのがふさわしいと見なされるときに、あなたがたは、御父がイスラエルの子らと交わされた聖約、すなわち彼らが自分たちの受け継ぎの地へ回復されることについての聖約が、すでに果たされ始めていることを知るであろう。
02 また、聖なる預言者たちによって述べられた主の言葉がすべて成就するということも、あなたがたは知るであろう。あなたがたは、主がイスラエルの子らのもとに来るのを遅らせておられると言ってはならない。
03 またあなたがたは、述べられてきた御言葉がむなしいと、心の中で思ってはならない。見よ、主は、イスラエルの家に属する御自分の民に立てられた御自分の聖約を思い起こされるからである。
04 あなたがたは、これらの御言葉があなたがたの中で事実となるのを見るときに、主の行われることを、もはやはねつけてはならない。主の罰の剣は主の右手にあり、見よ、その日、あなたがたが主の行われることをはねつけるならば、主はその剣をすぐにあなたがたに下されるであろう。
05 主の行われることをはねつける者は、災いである。まことに、キリストとキリストの業を否定する者は、災いである。
06 まことに、主の啓示を否定し、主はもはや啓示や預言、賜物、異言、癒し、聖霊の力によって業を行われることはないと言う者は、災いである。
07 またその日、利益を得るために、イエス・キリストによって行われる奇跡などないと言う者は、災いである。このように言う者は、キリストの言葉のとおりに、まったく憐れみを受けなかった滅びの子のようになるからである。
08 そして、あなたがたは、もはやユダヤ人についても、イスラエルの家のどの残りの者についても、あざけったり、はねつけたり、嘲笑したりしてはならない。見よ、主は彼らに対する聖約を思い起こし、誓われたことをそのとおりに彼らに行われる。
09 それであるから、あなたがたは、主がイスラエルの家に立てられた聖約を果たすための裁きを行えないように、あなたがたの手で主の右手を左手に変えることができると思ってはならない。
第30章
末日の異邦人は、悔い改め、キリストのもとに来てイスラエルの家とともに数えられるように命じられている。紀元約34年から35年に至る。
01 聴きなさい、おお、あなたがた異邦人よ。生ける神の御子イエス・キリストの言葉、すなわち、イエス・キリストがあなたがたについて述べるようにとわたしに命じられた御言葉に耳を傾けなさい。そのために見よ、イエス・キリストは、次の御言葉を書き記すようにわたしに命じられた。
02 「あなたがたすべての異邦人よ、あなたがたの悪い道を離れなさい。あなたの悪事、偽り、欺き、みだらな行い、秘密の忌まわしい行い、偶像礼拝、殺人、偽善売教、ねたみ、争い、あらゆる悪事と忌まわしい行いを悔い改め、わたしのもとに来て、わたしの名によってバプテスマを受けなさい。そうすれば、あなたがたは罪の赦しを受け、聖霊に満たされて、イスラエルの家に属するわたしの民とともに数えられるであろう。」