ニーファイ第1書


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ニーファイの統治と務め

リーハイと妻サライア、および(長男から始めて)レーマン、レムエル、サム、ニーファイと呼ばれた4人の息子たちの話。リーハイが民に向かって彼らの罪悪について預言をし、民がそのリーハイの命を奪おうとしたので、主はリーハイにエルサレムの地を立ち去るように警告される。リーハイは、家族を連れて荒れ野に3日間の旅をする。ニーファイ、兄たちを伴い、ユダヤ人の記録を手に入れるためにエルサレムの地に戻る。一行が遭った苦しみの話。ニーファイと兄たち、イシマエルの娘たちを妻とする。一行は家族を連れて荒れ野に出発する。荒れ野で遭った苦しみと苦難。一行の旅路。一行、大海に来る。ニーファイの兄たち、ニーファイに反抗する。ニーファイ、兄たちを言い伏せて1隻の船を造る。その地をバウンティフルと名付ける。一行が大海を渡って約束の地に着くことなど。これはすべて、ニーファイが記すところによる。言い換えれば、わたしニーファイがこの記録を書き記したのである。

第1章

ニーファイ、自分の民について記録を始める。リーハイ、示現の中で火の柱を目にし、また預言の書を読む。リーハイ、神をほめたたえ、メシヤの来臨を予告し、エルサレムの滅亡を預言する。リーハイ、ユダヤ人に迫害される。紀元前約600年。

01 わたしニーファイは善い両親から生まれたので、父が学んだすべてのことの中から幾らかの教えを受けた。わたしはこれまでの人生で多くの苦難に遭ったが、生まれてこのかた主の厚い恵みを受け、まことに神の慈しみと奥義を深く知った。そこで、生まれてからこれまでの間に行ってきたことを記録する。
02 まことにわたしは父の言葉で記録するが、それは、ユダヤ人が学んできたこととエジプト人の言葉から成っている。
03 わたしは、自分の書く記録が真実であることを知っている。わたしはこれを自分の手で書き、自分の知っていることに従って書く。

04 さて、ユダの王ゼデキヤの統治第1年の初めに(父リーハイは生まれてこのかたエルサレムに住んでいた)、その同じ年に多くの預言者が現れて、民に向かい、悔い改めなければ大きな都のエルサレムは滅ぼされるに違いないと預言した。

05 さて、父リーハイは、出て行って民のためにまことに一心に主に祈った。
06 そして、祈っていたときに、火の柱が現れて、父の前にある岩の上にとどまった。そして父は、多くのことを見たり聞いたりした。父はこれらの見たり聞いたりしたことのために、ひどく震えおののいた。

07 さて、父はエルサレムにある自分の家に帰って来たが、御霊と自分が見たものに圧倒され、床に伏してしまった。
08 このように御霊に圧倒されていたとき、父は示現に引き込まれ、まことに天が開くのを見た。また父は、神が御座に着き、御自身を賛美しほめたたえる様子で群れ集まる、無数の天使たちに取り囲まれておられるのを見た思いがした。
09 そして父は、天の真ん中から降りて来られる一人の御方を見たが、その輝きは真昼の太陽の輝きにも勝るものであった。
10 また父は、このほかにこの御方に従う12人の人も見たが、その明るさは大空に輝く星の明るさをしのいでいた。

11 そして、この人たちは天から降りて来て地の面を進んで行った。やがて最初の人が父の前に来て立ち、一つの書物を渡して読むように言った。
12 そこでその書物を読むと、父は主の御霊に満たされた。
13 父は声に出して読んだ。「災いである。エルサレムは災いである。わたしはあなたの忌まわしい行いを見たからである。」そして父は、エルサレムについて多くのことを読んだが、それはエルサレムが滅ぼされ、その地に住む者も滅ぼされ、多くが剣で殺され、多くが囚われの身となってバビロンへ連れ去られるということであった。
14 さて、父は多くの大いなる驚くべきことを読んだり見たりした後、主に向かい、「おお、全能の主なる神よ、あなたの御業は何と偉大で驚くべきものでしょう。あなたの御座は高く天にあって、あなたの力と慈しみと憐れみは地に住むすべての者に及んでいます。あなたは憐れみ深い御方ですから、あなたのみもとに来る者が滅びるのを許されません」などと、大声で多くのことを叫んで言った。
15 このような言葉で神をほめたたえたのは、父が見たこと、すなわち主が父に示されたことで父が心から喜び、まことに胸がいっぱいになったからである。
16 ところで、わたしニーファイは、父が書き記したことを残らず述べることはしない。それは、父が示現や夢で見たことをたくさん書き記しており、また子供たちに預言をしたり語ったりしたこともたくさん書き記しているからであって、わたしはそのことについて残らず述べるつもりはない。
17 そうではなく、わたしは生まれてからこれまでの間に自分が行ってきたことを述べる。見よ、わたしは自分の手で造った版に父の記録を短くまとめる。そして父の記録を短くまとめてから、次にわたしの生涯について述べるつもりである。

18 さて、あなたがたに知っていてもらいたいと思うことがある。すなわち、主が父リーハイに、非常に多くの驚くべきこと、まことにエルサレムの滅亡について示されてから、見よ、父は民の中に出て行って、自分が先に見たり聞いたりしたことについて預言し、また告げ知らせ始めた。
19 さて、ユダヤ人は、父が彼らについて証をしたことのために父をあざ笑った。父が、ユダヤ人の悪事と彼らの忌まわしい行いについて、ありのままに証したからであり、自分が見聞きしたことや、あの書物で読んだことが、メシヤの来臨と世の贖いをはっきり表していると、証したからである。
20 ユダヤ人は、これらのことを聞いて父に腹を立てた。まことに、彼らが昔の預言者に腹を立てたのと同様である。彼らは預言者を追い出し、石を投げつけ、殺してしまった。そして、今また彼らは父の命をねらい、殺してしまおうとしたのである。しかし見よ、主の深い憐れみは、信仰があるために主から選ばれたすべての者のうえに及び、この人たちを強くして自らを解放する力さえ与えることを、わたしニーファイはあなたがたに示そう。


【動画】主はリーハイの家族にエルサレムを去るように命じられる



【動画】リーハイの警告


第2章

リーハイ、家族を連れて紅海に近い荒れ野に出発する。財産を後に残す。主に犠牲をささげ、息子たちに主の戒めを守るように教える。レーマンとレムエル、父に対してつぶやく。ニーファイは従順であり、信仰をもって祈る。主、ニーファイに語られ、ニーファイは兄たちを治める者として選ばれる。紀元前約600年。


01 さて見よ、主はまことに夢の中で父に告げてこう言われた。「リーハイよ、あなたはこれまで行ってきたことのために、幸いである。あなたは忠実であり、わたしが命じたことをこの民に告げ知らせたため、見よ、彼らはあなたの命を奪おうとしている。」
02 そして、主は夢の中で父に、家族を連れて荒れ野へ出て行くように命じられた。
03 そして、父は主の言葉に従順であったので、主が命じられたとおりにした。

04 そして、父は荒れ野へ出て行った。父は自分の家や受け継ぎの地、金や銀、貴重品を後に残して、家族と食糧と天幕のほかは何も持たずに荒れ野へ出て行った。

05 そして父は、まず紅海の海辺に近い境の地の辺りに下って行って、それから、さらに紅海に近い境の地の荒れ野を進んだ。父は荒れ野の中を家族を連れて旅をしたが、その家族とは、母サライアと兄たち、すなわちレーマン、レムエル、サムであった。

06 さて、父は荒れ野を3日の間旅してから、ある谷で、水の流れている川のほとりに天幕を張った。

07 そして父は、石で一つの祭壇を築き、主にささげ物をして、主なるわたしたちの神に感謝をささげた。

08 さて、父はその川をレーマンと名付けた。その川は紅海に注ぎ、その谷は河口に近い境の地にあった。
09 父は、その川の水が紅海の源に注ぐのを見て、レーマンに向かって言った。「おお、おまえはこの川のように、絶え間なくあらゆる義の源に流れ込むように。」
10 またレムエルに向かって言った。「おお、おまえはこの谷のように、主の戒めを守ることにおいて堅く確固として、揺るぎなくあるように。」

11 ところで、父がこう言ったのは、レーマンとレムエルが強情であったからである。見よ、この二人は多くのことで父に対してつぶやいた。それは、父が幻を見る人で、自分たちの受け継ぎの地や、金や銀、貴重品を後に残して、エルサレムの地から自分たちを連れ出し、荒れ野で死ぬほかなかったためであった。そして、父がこのようにしたのは、心に浮かんだつまらない空想のためだ、と彼らは言った。
12 このように、いちばん年上のレーマンとレムエルは父に対してつぶやいた。彼らがつぶやいたのは、自分たちを造られたあの神の計らいを知らないためであった。
13 またこの二人は、あの大きな都のエルサレムが、預言者たちが言ったように滅ぼされることも信じなかった。彼らは、父の命を奪おうとしたエルサレムのユダヤ人のようであった。
14 そこで父は、レムエルの谷で御霊に満たされ、二人の体が自分の前で打ち震えるまで力強く彼らに語った。そして父が二人を言い伏せたので、二人は一言も言い返さず、父の命じるとおりにした。
15 父は天幕に住んだ。

16 さて、わたしニーファイはまだとても若かったが、もう身の丈は高く、また神の奥義を知りたいという大きな望みを抱いていたので、主に叫び求めた。すると見よ、主がわたしを訪れ、心を和らげてくださったので、わたしは、父がこれまでに語った言葉をすべて信じた。そのためにわたしは、兄たちのように父に逆らおうとはしなかったのである。

17 そしてわたしはサムに、主が聖なる御霊によってわたしに明らかにしてくださったことを話して聞かせた。そこで、サムはわたしの言葉を信じた。
18 しかし見よ、レーマンとレムエルは、わたしの言うことに決して聞き従おうとしなかったので、わたしは二人の心がかたくななのを悲しく思い、二人のために主に叫び求めた。

19 そこで主は、わたしに告げて言われた。「ニーファイよ、あなたは信仰があるので幸いである。あなたがへりくだった心で、熱心にわたしを求めたからである。
20 あなたがたは、わたしの命令を守るかぎり栄えて、約束の地に導かれるであろう。まことにそこは、あなたがたのためにわたしが備えた地であって、それはまことに、ほかのあらゆる地に勝ったえり抜きの地である。
21 あなたの兄たちは、あなたに背くかぎり主の前から絶たれるであろう。
22 またあなたは、わたしの命令を守るかぎり、兄たちを治める者、教える者とされるであろう。
23 見よ、彼らがわたしに背くその日に、まことにわたしはひどいのろいをもって彼らをのろうであろう。また、あなたの子孫がわたしに背いた場合を除いて、彼らがあなたの子孫を支配する権力を得ることは決してないであろう。
24 しかし、もしあなたの子孫がわたしに背くならば、彼らは、あなたの子孫に主を思い出させるために、あなたの子孫にとって鞭となるであろう。」


【動画】エルサレムを出て行くリーハイ


第3章

リーハイの息子たち、真鍮の版を手に入れるためにエルサレムに戻る。ラバン、真鍮の版を渡すのを拒む。ニーファイ、兄たちを促し、励ます。ラバン、彼らの持ち物を奪い、彼らを殺そうとする。レーマンとレムエル、ニーファイとサムを打ち、天使にとがめられる。紀元前約600年から592年に至る。

01 さて、わたしニーファイは、主と話をしてから父の天幕に帰った。

02 そこで父は、わたしに次のように言った。「見よ、わたしは夢を見た。その夢の中で主は、あなたと兄たちをエルサレムに戻らせるようにわたしに命じられた。

03 それは見よ、ラバンがユダヤ人の記録とわたしの先祖の系図を持っているからであって、それらは真鍮の版に刻まれている。
04 それで主はわたしに、あなたとあなたの兄たちがラバンの家へ行ってその記録を何とか手に入れ、それを荒れ野の中のここまで持って来るように命じられたのである。

05 ところで、あなたの兄たちは、わたしの求めていることが難しいと言って、つぶやいている。しかし、わたしが彼らにそれを求めたのでは決してない。それは主の命令なのだ。
06 だからわが子よ、行きなさい。あなたはつぶやくことがなかったので、主から恵みを受けるであろう。」

07 そこで、わたしニーファイは父に言った。「わたしは行って、主が命じられたことを行います。主が命じられることには、それを成し遂げられるように主によって道が備えられており、それでなくては、主は何の命令も人の子らに下されないことを承知しているからです。」
08 さて、父はこの言葉を聞くと、わたしが主から祝福を受けていたことを知って非常に喜んだ。

09 それでわたしニーファイと兄たちは、エルサレムの地へ上って行くために天幕を持って荒れ野に旅立った。
10 そしてエルサレムの地に着くと、わたしと兄たちは相談した。

11 わたしたちは、だれがラバンの家に入って行くか、くじを引いた。そして、そのくじがレーマンに当たった。それでレーマンはラバンの家に入って行き、座に着いているラバンと話をした。
12 そして彼は、真鍮の版に刻まれていて、父の系図が載っている記録を譲ってくれるようにラバンに頼んだ。

13 そこで見よ、ラバンは、ひどく怒ってレーマンを自分のもとから追い出し、その記録を渡そうとはしなかった。またラバンはレーマンに、「おまえは盗賊だ。殺してやる」と言った。

14 しかしレーマンは、ラバンのもとから逃げ出して来て、ラバンのしたことをわたしたちに話した。それでわたしたちは大いに悲嘆に暮れ、兄たちは荒れ野にいる父のところへ帰ってしまおうとした。

15 しかし見よ、わたしは兄たちに言った。「主が生きておられ、またわたしたちが生きているように確かに、わたしたちは主から命じられたことを成し遂げるまでは、荒れ野にいる父のところへは下って行きません。
16 だから、主の命令を忠実に守りましょう。父の受け継ぎの地へ行きましょう。まことに、父は金や銀など、あらゆる富を後に残してきているからです。そして父は、これをすべて主の命令によってしたのです。
17 それは父が、民の悪事のためにエルサレムが必ず滅ぼされることを知っていたからです。
18 まことに、エルサレムの民は預言者たちの言葉を拒みました。だから、もし父がこの地から逃げるように命じられながらこの地にとどまるなら、父もまたきっと滅びるでしょう。そういうわけで、父はこの地からどうしても逃れなければならなかったのです。
19 そしてまことに、これらの記録を手に入れるのは、神の知恵です。そうすれば、先祖の言葉を子孫に残すことができるし、
20 また、世の初めから現在に至るまで、すべての聖なる預言者の口を通して語られ、神の御霊と力によって語られてきた御言葉を、子孫に残すことができるのです。」
21 わたしは、兄たちが神の命令を忠実に守るように、このような言葉で説得したのであった。

22 さて、わたしたちは受け継ぎの地へ下って行って、わたしたちの金や銀、貴重品を集めた。
23 そしてこれらの品々を集めてから、もう一度ラバンの家に行った。

24 さて、わたしたちはラバンのところに行って、金や銀やすべての貴重品を渡す代わりに、真鍮の版に刻まれた記録をわたしたちに譲ってくれるように頼んだ。

25 そこで、ラバンはわたしたちの持っているものを目にし、しかもそれが大したものであるのを見て、欲しくてたまらなくなった。それで彼は、わたしたちを追い出し、わたしたちの持っているものを自分のものにするために、召し使いにわたしたちを殺させようとした。
26 そこでわたしたちは、ラバンの召し使いたちの前から逃げ出した。そして、持っていたものは後に残してくるよりほか仕方がなかったので、それはラバンのものになってしまった。
27 さて、わたしたちは荒れ野に逃げ込み、またラバンの召し使いたちに追いつかれなかったので、とある岩の洞穴に身を隠した。

28 さて、レーマンはわたしと父に腹を立てた。またレムエルも、レーマンの言葉に聞き従ったのでともに腹を立てた。それでレーマンとレムエルは、弟であるわたしたちに多くの荒々しい言葉を吐き、そのうえ棒でわたしたちを打った。

29 さて、彼らがわたしたちを棒で打っていると、見よ、一人の主の天使が来て、彼らの前に立ち、このように言った。「なぜあなたがたは自分の弟を棒でたたくのか。主が彼を選んであなたがたを治める者になさったこと、そしてこれがあなたがたの罪悪のためであることを知らないのか。さあ、もう一度エルサレムへ上って行きなさい。そうすれば、主はラバンをあなたがたの手に渡されるであろう。」
30 この天使はわたしたちにこのように語ると、立ち去った。
31 天使が立ち去ってから、レーマンとレムエルはまたもつぶやき始め、こう言った。「主がどのようにして、ラバンを我々の手に渡すことができるというのか。見よ、ラバンは力のある人で、50人を指揮することができるし、まことに、50人を殺すことさえできる。それならば、どうして我々を殺せないわけがあろうか。」


【動画】ニーファイ,御霊に導かれて真鍮の版を手に入れる



【動画】真鍮の版


第4章

ニーファイ、主の命令でラバンを殺し、計略によって真鍮の版を手に入れる。ゾーラム、荒れ野にいるリーハイの家族と行動を共にする。紀元前約600年から592年に至る。


01 さて、わたしは兄たちに言った。「わたしたちはまたエルサレムへ上って行きましょう。そして、主の命令を忠実に守りましょう。まことに、主は全地にも増して力ある御方なのですから、どうしてラバンとその家来の50人よりも力が劣ることがあるでしょうか。いや、ラバンに何万人あっても主の力にはかないません。
02 だから行きましょう。モーセのように強くなろうではありませんか。事実、モーセが紅海の水に語りかけると、紅海の水はあちらとこちらに分かれました。そして、わたしたちの先祖は囚われの身から逃れて、乾いた土の上を通って来ました。ところがパロの軍勢は、後を追って来て、紅海の水におぼれて死にました。
03 さてまことに、あなたがたは、これがほんとうであることを知っています。また、一人の天使があなたがたに語りかけたことも知っています。それでいて、どうして疑うことができるのですか。行きましょう。主は、わたしたちの先祖を救われたように、わたしたちも救い、エジプト人を滅ぼされたように、ラバンをも滅ぼすことがおできになるのです。」
04 わたしがそう言ってからも、まだ兄たちは憤ってつぶやき続けた。それでも彼らはわたしの後について来て、わたしたちはエルサレムの城壁の外まで来た。

05 時はもう夜であった。わたしは兄たちを城壁の外に忍ばせた。彼らが身を隠してから、わたしニーファイは都に忍び込み、ラバンの家に向かって進んで行った。

06 わたしは、前もって自分のなすべきことを知らないまま、御霊に導かれて行った。
07 にもかかわらず、そのようにして進んで、ラバンの家の近くに来ると、一人の男を見かけた。その男はぶどう酒に酔ってわたしの前の地面に倒れていた。
08 近づいて見ると、それはラバンであった。

09 わたしはラバンの剣に目をやった。そして、それをさやから引き抜いた。柄は純金であって実に見事な造りで、刃は最も上等な鋼でできていた。
10 さて、わたしはラバンを殺すように強く御霊に促された。しかし心の中で、「わたしは今までどんなときにも人の血を流したことはない」と言った。わたしはしりごみをし、ラバンを殺さなくて済むようにと思った。
11 すると御霊が再び、「見よ、主はすでに、この男をあなたの手に渡された」と言われた。そしてわたしも、ラバンがわたしの命を奪おうとしたこと、ラバンが主の命令に聞き従わないだろうということ、またわたしたちの持っているものを奪ったことを知っていた。

12 そして御霊が、またわたしに言われた。「この男を殺しなさい。主はあなたの手にこの男を渡された。
13 見よ、主は、義にかなった目的を果たすためには、悪人を殺される。一人の人が滅びるのは、一つの国民が不信仰に陥って滅びてしまうよりはよい。」
14 わたしニーファイはこの御言葉を聞いたとき、主が荒れ野でわたしに言われた、「あなたの子孫はわたしの命令を守るかぎり、約束の地で栄える」という御言葉を思い出した。
15 そしてわたしはまた、もしもわたしの子孫にモーセの律法がなかったならば、子孫はその律法に従って主の命令を守ることができなくなるとも考えた。
16 またわたしは、その律法が真鍮の版に刻まれていることも知っていた。
17 さらにわたしは、この理由、すなわち、わたしが主の命令に従ってあの記録を手に入れることができるようにという理由で、主がラバンをわたしの手に渡されたことを知っていた。

18 それでわたしは御霊の声に従い、ラバンの髪の毛をつかみ、ラバン自身の剣で彼の首を打ち落とした。
19 わたしは、ラバン自身の剣で彼の首を打ち落としてから、ラバンの衣服を取って一つ残らず身に着け、また彼の武具を腰にまとった。

20 それからわたしは、ラバンの宝物蔵へ進んで行った。ラバンの宝物蔵へ進んで行くと、見よ、宝物蔵の鍵を持ったラバンの召し使いに会ってしまった。それでわたしは、ラバンの声色を使って、わたしとともに宝物蔵に入るように命じた。

21 召し使いは、わたしの衣服と腰に帯びている剣を見て、わたしを主人のラバンだと思い込んでいた。
22 彼は、主人のラバンがその夜ユダヤ人の長老たちのところへ出かけて行ったのを知っていたので、その長老たちのことをわたしに話した。
23 わたしはラバンのふりをして彼に話をした。
24 わたしはまた、真鍮の版に刻まれたものを、城壁の外にいるわたしの兄弟たちのところへ持って行くのだと言った。
25 そしてその召し使いに、ついて来るように言った。
26 するとその召し使いは、教会の兄弟たちのことを言っているのだと思い、またわたしのことを、わたしが手にかけたあのラバンだとほんとうに思い込んでいたので、後について来た。
27 また召し使いは、城壁の外にいる兄たちのところへ行く途中で、何度もわたしに向かってユダヤ人の長老たちのことを話した。

28 さて、レーマンはわたしを見ると非常におびえ、またレムエルもサムもともにおびえて、わたしの前から逃げ出した。わたしをラバンだと思い、ラバンがわたしを殺して、自分たちの命も奪いに来たと思ったからである。
29 そこでわたしは、逃げる後から兄たちを呼んだ。すると兄たちは、わたしの声を聞いて、わたしの前から逃げるのをやめた。

30 そして、ラバンの召し使いは、兄たちを見ておののき始め、わたしの前から逃げてエルサレムの都へ帰ろうとした。
31 しかしわたしニーファイは、身の丈が高いうえに主から強い力を授かっていたので、ラバンの召し使いを捕まえて、逃げないように押さえつけた。
32 そしてわたしは、わたしの言うことに聞き従うならば、主が生きておられ、またわたしが生きているように確かに、わたしたちの言うことに聞き従うならば、命を助けてやると言った。
33 また、恐れるには及ばないこと、そしてもしわたしたちと荒れ野へ下って行くならば、わたしたちと同様に自由の身になることを、まことに誓って言った。
34 わたしはまた言った。「主は確かに、このことを行うようにわたしたちに命じられた。わたしたちは主の命令を熱心に守るべきではないか。もしあなたが荒れ野へ下って、わたしの父のところへ行くならば、わたしたちとともに暮らせるだろう。」

35 さて、ゾーラムは、わたしの語った言葉を聞いて勇気を得た。ところで、ゾーラムとはこの召し使いの名である。彼は荒れ野へ下って行って、わたしの父のところへ行くと約束した。そしてまた、その先わたしたちとともに住むと誓った。
36 ところでわたしたちには、ゾーラムが行動を共にすることを願う理由があった。それは、わたしたちが荒れ野へ逃げたことをユダヤ人に知られ、追いかけられて殺されることのないようにするためであった。
37 さて、ゾーラムがわたしたちに誓ったので、彼についての心配はなくなった。
38 そこでわたしたちは、真鍮の版を持ち、ラバンの召し使いを連れて荒れ野へ出発し、父の天幕に向かって旅路を進んだ。

第5章

サライア、リーハイに向かって不平を言う。二人とも、息子たちが帰って来たことを喜び、犠牲をささげる。真鍮の版には、モーセと預言者たちの記録が載せられている。その版から、リーハイがヨセフの子孫であることが分かる。リーハイ、自分の子孫と真鍮の版の保存について預言する。紀元前約600年から592年に至る。


01 さて、わたしたちが荒れ野へ下って来て父のところに着くと、父は喜びに満たされた。また母のサライアも、ほんとうにわたしたちのことで悲しんでいたので、非常に喜んだ。
02 母は、わたしたちが荒れ野で死んでしまったと思ったからである。母はまた、父のことを幻を見る人だと言って父に不平を言い、「あなたがわたしたちを受け継ぎの地から連れ出したので、息子たちはいなくなってしまい、わたしたちも荒れ野で死んでしまいます」と言っていた。
03 母は、このような言葉で父に不平を言っていた。
04 そこで父は母に言った。「わたしは自分が幻を見る者であることを知っている。もしわたしが、示現の中で神が示してくださった事柄を見なかったならば、わたしは神の慈しみを知らず、エルサレムにとどまって、同胞とともに滅びてしまったであろう。
05 しかし見よ、わたしは約束の地を頂いており、そのことについて喜ばしく思う。またわたしは、主が息子たちをラバンの手から救い出し、荒れ野にいるわたしたちのもとにまた連れ戻してくださることを知っている。」
06 父リーハイはこのような言葉で、わたしたちのことについて母サライアを慰めたのであった。それは、わたしたちがユダヤ人の記録を手に入れるために、荒れ野をエルサレムの地へ向かって旅をしていた間のことであった。
07 そこで、わたしたちが父の天幕に帰って来ると、見よ、父母は喜びに満たされ、母は慰めを得た。
08 母は言った。「主が夫に荒れ野へ逃げるように命じられたことが、今確かに分かりました。また、主が息子たちを守り、ラバンの手から救い出し、主が命じられたことを成し遂げるための力を息子たちにお与えくださったことが、確かに分かります。」母はこのような言葉で話した。
09 そして父母は、非常に喜び、犠牲と燔祭を主にささげ、イスラエルの神に感謝した。

10 二人でイスラエルの神に感謝をささげてから、父リーハイは真鍮の版に刻まれた記録を手に取り、最初から調べてみた。
11 父が見ると、その中には、世界の創造とわたしたちの最初の先祖であるアダムとエバの話を載せた、モーセの5書があった。
12 また、世の初めからユダの王ゼデキヤの統治の初めに至るユダヤ人の記録もあり、
13 また、世の初めからゼデキヤの統治の初めに至る聖なる預言者たちの預言や、そのほか、エレミヤの口を通して語られた多くの預言も載せてあった。
14 そして父リーハイは、真鍮の版に自分の先祖の系図も見つけ、それで自分がヨセフの子孫であることを知った。このヨセフとは、ヤコブの子のヨセフであって、エジプトへ売られ、父ヤコブとその家のすべての者が飢饉で死ぬことのないように守るため主の手によって守られたあのヨセフである。
15 彼らは自分たちを守ってくださったあの同じ神によって、囚われの身から救い出され、エジプトの地から導き出されたのである。
16 このようにして、父リーハイは自分の先祖の系図を見つけた。ラバンもまたヨセフの子孫であったので、ラバンとその先祖がこの記録を書き記しておいたのである。
17 ところで、父はこれらのことをすべて見ると、御霊に満たされ、自分の子孫について預言し始めた。
18 すなわち、この真鍮の版が父の子孫であるすべての国民、部族、国語の民、民族に伝わるということである。
19 それで父は、この真鍮の版は決して朽ちることなく、またこれから先どれだけ歳月を経ても、さびて読めなくなることはまったくないと言った。そして彼は、自分の子孫について多くのことを預言した。

20 さて、わたしと父は、主が下された命令をこれまで守ってきた。

21 そしてわたしたちは、主が手に入れるようにと言われた記録を手に入れ、また、それを調べて、それが望ましいものであることを知った。まことに、それは、子孫に主の戒めを残すことができるものであり、したがって、わたしたちにとって大きな価値のあるものである。
22 それゆえ、わたしたちが約束の地を目指して荒れ野を旅するときに、この版を携えて行くのは、主の知恵であった。

第6章

ニーファイ、神にかかわる事柄を書き記す。ニーファイの目的は、アブラハムの神のもとに来て救われるように、人々に説き勧めることである。紀元前約600年から592年に至る。

01 さて、わたしニーファイは、わたしの記録のこの部分に先祖の系図を書き記さない。また、わたしが今書き記しているこの版には、今後も書き記さない。それは、父が書いた記録に載っていることだからである。したがって、この版にはそれを書き記さない。
02 わたしたちがヨセフの子孫であると言えば、それで十分である。
03 わたしは、父について残らず詳しく述べようとは思わない。この版には、神にかかわる事柄を書き記すための余白が欲しいので、残らず詳しく書き記すことはできないからである。
04 わたしが一心に志すのは、人々がアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神のもとに来て救われるように、説き勧めることである。
05 したがってわたしは、俗世の人々にとって喜ばしいことを書き記さないで、神にとって喜ばしいことや、俗世のものでない人々にとって喜ばしいことを書き記す。
06 それでわたしは、人の子らにとって価値のないことでこの版を埋めてはならないと、子孫に命じよう。

第7章

リーハイの息子たち、エルサレムに戻り、イシマエルとその一家を約束の地に向かう旅の一行に招く。レーマンとほかの者たち、背く。ニーファイ、主を信じる信仰を持つように兄たちに勧める。兄たち、ニーファイを縄で縛り、殺そうとする。ニーファイ、信仰の力によって自由の身となる。兄たち、赦しを求める。リーハイとその一行、犠牲と燔祭をささげる。紀元前約600年から592年に至る。


01 ところで、ここであなたがたに知らせたいと思うことがある。それは、父リーハイが自分の子孫について預言をした後、そこで主が再び父に、家族だけを連れて荒れ野へ行くのは父リーハイにとってよくない、約束の地へ行って主のために子供をもうけられるよう、息子たちがよその娘たちを妻に迎えるように、と言われたことである。
02 そこで主は父に、わたしニーファイと兄たちを再びエルサレムの地へ帰して、イシマエルとその家族を荒れ野に連れて来させるように命じられた。

03 そこでわたしニーファイは、再び兄たちとともにエルサレムへ上って行くために、荒れ野へ出て行った。
04 さて、わたしたちはイシマエルの家に行った。そして、イシマエルの好意を得たので、主の言葉を彼に話した。
05 そこで主は、まことにイシマエルの心を和らげ、また彼の家族の心も和らげられたので、彼らはわたしたちとともに、父の天幕に向かって荒れ野へ旅をした。

06 さて、荒れ野を旅する途中で、見よ、レーマンとレムエル、イシマエルの二人の娘、イシマエルの二人の息子とその家族がわたしたちに背いた。まことに、わたしニーファイとサム、また彼らの父イシマエルとその妻、それにイシマエルのほかの3人の娘たちに背いたのである。
07 そして彼らは、そのように背いて、エルサレムの地へ帰りたがった。

08 それでわたしニーファイは、彼らの心がかたくななのを悲しく思い、彼らに、すなわちレーマンとレムエルに言った。「まことに、あなたがたはわたしの兄さんではありませんか。それなのに、弟のわたしがあなたがたに話をし、模範を示さなければならないほど、心がかたくなで思いがくらんでいるのはどういうわけですか。
09 主の御言葉に聞き従わないのは、どういうわけですか。
10 主の天使に会ったことを忘れたのは、どういうわけですか。
11 また、わたしたちをラバンの手から救い出すに当たって、主がなされた偉大な事柄と、また、主があの記録を手に入れさせてくださったことを忘れたのは、どういうわけですか。
12 まことに、人の子らが主を信じる信仰を働かせれば、主は彼らのために、御心のままに何でもおできになります。そのことを忘れたのは、どういうわけですか。主に忠誠を尽くそうではありませんか。
13 主に忠実であれば、わたしたちは約束の地を手に入れるでしょう。またあなたがたは、エルサレムの滅亡についての主の御言葉が成就するのを、将来いつか知ることでしょう。主がエルサレムの滅亡について語られたすべてのことは、必ず成就するに違いないからです。
14 まことに主の御霊は、彼らを励ますことをもうすぐやめるでしょう。まことに、彼らは預言者たちを決して受け入れず、エレミヤを牢に入れたからです。また、わたしの父の命を奪おうとして、父をその地から追い出しました。
15 さてまことに、あなたがたに言っておきます。もしあなたがたがエルサレムへ戻るなら、あなたがたもエルサレムの民とともに滅びてしまうでしょう。もしそうしたいのであれば、エルサレムへ行けばよい。しかし、行けばあなたがたも滅びるという、わたしの語った言葉を覚えておいてください。主の御霊がこう言うように、わたしを強く促すからです。」
16 さて、わたしニーファイが兄たちにこう言うと、兄たちはわたしに腹を立てた。そして彼らは非常に憤り、わたしを捕まえて、縄で縛った。わたしを荒れ野に捨てて猛獣に食わせ、命を奪おうとしたのであった。
17 そこでわたしは主に祈って言った。「おお、主よ、あなたを信じるわたしの信仰により、兄たちの手から救い出してください。まことに、わたしを縛っているこの縄を断ち切る力をお与えください。」
18 そして、わたしがこのように言うと、見よ、縄がすぐにわたしの手足から解けたので、わたしは兄たちの前に立って、また話をした。
19 そこで兄たちはまた腹を立て、わたしに手をかけようとした。しかし見よ、イシマエルの娘の一人とその母、それにイシマエルの息子の一人が兄たちに執り成してくれたので、兄たちは心を和らげて、わたしの命を奪おうとするのをやめた。
20 そして兄たちは自分たちの悪事を悲しみ、わたしの前にひざまずいて、わたしに対してしたことを赦してくれるように頼み込んだ。
21 そこでわたしは、兄たちのしたことをすべて心から赦し、主なる彼らの神に赦しを求めて祈るように勧めた。それで彼らは、そのとおりにして祈った。彼らが主に祈り終えると、わたしたちはまた、父の天幕を目指して旅を続けた。
22 そして、ついにわたしたちは、父の天幕に着いた。わたしと兄たちとイシマエルの家に属するすべての者が父の天幕に着くと、彼らは主なる彼らの神に感謝をした。そして犠牲と燔祭をささげた。


【動画】イシマエルの家族がリーハイの家族と合流する



【動画】荒れ野の旅


第8章

リーハイ、命の木の示現を見る。そしてその木の実を食べ、家族にも食べてほしいと思う。また鉄の棒と、細くて狭い道と、人々を包む暗黒の霧を見る。サライアとニーファイとサムはその実を食べるが、レーマンとレムエルは拒む。紀元前約600年から592年に至る。

01 さて、わたしたちは、すべての種類の種、すなわちあらゆる穀物の種とあらゆる果物の種を集めておいた。

02 さて、父は、荒れ野にとどまっていたときに、わたしたちに次のように言った。「見よ、わたしは夢を見た。別の言葉で言えば、示現を見た。
03 そして見よ、わたしは、自分が見たことのために、ニーファイとサムについては主にあって喜ばずにはいられない。彼らとその子孫の多くは救われると思うからである。
04 しかし見よ、レーマンとレムエルよ、わたしはあなたがたについて非常に心配している。わたしは夢の中でひどく暗くて寂しい荒れ野を見たように思う。

05 そして、わたしは一人の男の人を見た。その人は白い衣を着ていて、わたしの方に来て、わたしの前に立った。
06 そして、その人はわたしに言葉をかけて、後について来るように言った。
07 そこでついて行くと、わたしは自分が暗くて寂しい荒れ野にいることが分かった。

08 そして暗闇の中を長い間進んだところで、わたしは、主がその豊かな深い憐れみによってわたしを憐れんでくださるように、主に祈り始めた。

09 そして主に祈り終えると、大きく広々とした野原が見えた。
10 そして、1本の木が見えたが、その実は人を幸せにする好ましいものであった。

11 そこで、行ってその木の実を食べると、それは、今までに味わったどんな実よりもずっと甘いことが分かった。またその木の実は白く、今までに見たどんな白いものにも勝って白かった。
12 そしてその木の実を食べると、わたしの心は非常に大きな喜びに満たされた。それでわたしは、家族にも食べてほしいと思い始めた。その実が、ほかのどんな実よりも好ましいことが分かったからである。

13 それで、自分の家族もいるのではないかと辺りに目をやると、水の流れている川が見えた。それは、わたしが実を取って食べた、あの木のそばを流れていた。
14 その川がどこから来るのかと眺めると、少し離れた所に川の源があった。そして、その源の所にあなたがたの母サライアとサムとニーファイがいるのが見えたが、彼らは、どちらへ行ったらよいか迷っているかのように立っていた。

15 そこでわたしは手招きをして、わたしのところに来て、ほかのどんな実よりも好ましいその実を食べるように、大声で言った。
16 そこで彼らは、わたしのところにやって来て、その実を食べた。
17 さて、わたしは、レーマンとレムエルもここに来て、その実を食べてほしいと思った。それで、二人の姿が見えはしないかと、川の源の方へ目をやった。
18 そして二人が見えたが、二人はわたしのところに来てその実を食べようとはしなかった。

19 それから、1本の鉄の棒が見えた。それは川の岸に沿ってずっと延び、わたしの立っているそばの木の所まで達していた。
20 また1本の細くて狭い道も見えた。その道はこの鉄の棒に沿い、わたしの立っているそばの木の所まで来ていた。その道はまた、流れの源のそばを通り、まるで一つの世界かと思われるような、大きく広々とした野原に通じていた。

21 わたしは群れ集まる無数の人々を見たが、その中の多くは、わたしの立っているそばの木の所に通じる道にたどり着こうとして、押し進んでいた。
22 そして、その人たちは進んで来ると、木に通じている道を歩き始めた。
23 そこで、暗黒の霧が起こった。まことに、非常に深い暗黒の霧であったため、道を歩き始めていた人々は道を見失い、迷って姿が見えなくなってしまった。

24 そして、わたしはまた、押し進んで来るほかの人々を見たが、この人々は進んで来て、鉄の棒の端をつかんだ。そして彼らは、鉄の棒にすがりながら暗黒の霧の中を押し進み、ついに進んで来てその木の実を食べた。
25 そして彼らは、木の実を取って食べると、恥じるかのように辺りを見回した。

26 それでわたしも辺りを見回すと、水の流れている川の向こう側に、一つの大きく広々とした建物が見えた。それは地上に高くそびえ、ちょうど空中にあるかのように立っていた。
27 その建物は、老若男女を問わず人々でいっぱいであった。この人々の衣服の装いは、非常に華やかであった。そして彼らは、その木の所までやって来てその実を食べている人々を指さし、あざけり笑っている様子であった。
28 それでその木の所までやって来た人々は、その実を味わった後にあの人々にあざけり笑われたので恥ずかしく思い、禁じられた道に踏み込んで姿が見えなくなってしまった。」
29 ところで、わたしニーファイは、父の言葉をすべて述べることはしない。

30 しかし、手短に記すと、見よ、父は、このほかに大勢の人が押し進んで来るのを見た。この人々は進んで来て、鉄の棒の端をつかんだ。そして彼らは、しっかり鉄の棒につかまりながら道を押し進み、ついにやって来ると、ひれ伏して木の実を食べた。
31 父はまた、ほかに大勢の人が、大きく広々とした建物の方へ道を探りながら進んでいるのを見た。
32 そしてまた、多くの人が、流れの深みにおぼれて死に、また多くの人が、見知らぬ道に迷って父の視界から消えてしまった。
33 「あの奇妙な建物の中に入った人々の数は非常に多かった。彼らはその建物に入ると、わたしやほかにその実を食べていた人々を指さしてあざけり笑った。しかしわたしたちは、彼らのことを気に留めなかった。」
34 これらはわたしの父の言葉である。「それは、これらの人々を気に留めた者は皆、道を外れてしまったからである。」
35 そして父は、「レーマンとレムエルはその実を食べなかった」と言った。
36 さて、父の見た夢、すなわち示現についての話は多かった。父はこれらについてすべて語り終えてから、わたしたちに向かい、その示現の中で見たことのためにレーマンとレムエルのことを非常に心配していると言った。まことに、父は二人が主の前から捨てられはしないか心配であると言った。
37 また父は、優しい親の情を込めて、父の言葉に聞き従うように、そうすればきっと主は憐れみを示し、追い出すようなことはなさらないだろうと彼らに勧めた。このように、父は彼らに説き聞かせたのである。
38 父はこの二人に説き聞かせ、また多くの事柄を預言した後、主の命令を守るように告げて、彼らに語るのをやめた。


【動画】リーハイ,命の木の示現を見る



【動画】リーハイの夢


第9章

ニーファイ、2組の記録を作る。どちらもニーファイの版と呼ばれる。大きい方の版には世俗の歴史が載っており、小さい方の版には、おもに神聖な事柄が採り上げられている。紀元前約600年から592年に至る。

01 これらのことはすべて、父がレムエルの谷で天幕を張って住んでいたときに見聞きし、話してくれたことである。父はまた、この版に書き記せないもっと多くのことも見聞きし、話してくれた。
02 ところで、この版について前に述べたように、これはわたしの民の歴史を残らず述べる版では決してない。わたしの民について残らず述べる版には、ニーファイという名を付けておいた。したがって、それはわたしの名にちなんでニーファイの版と呼ぶが、この版もまたニーファイの版と呼ぶ。
03 にもかかわらず、わたしは、民に対する務めについての話を刻むという特別な目的のためにこの版を造るように、主から命令を受けた。
04 ほかの版には、もろもろの王の統治と、わたしの民の戦争や争いに関する話を刻むことになっている。したがって、この版はおおよそが民に対する務めについてであり、ほかの版はおおよそがもろもろの王の統治と、わたしの民の戦争や争いについてのものである。
05 さて、主はある賢明な目的のために、わたしにこの版を造るように命じられたが、その目的はわたしには分からない。
06 しかし、主は初めからすべてのことを御存じである。したがって、人の子らの中で御自身のすべての業を成就するために、ある方法を備えておられる。それは見よ、主は御自分のすべての言葉を成就する一切の権威を持っておられるからである。まことにそのとおりである。アーメン。

第10章

リーハイ、ユダヤ人がバビロニア人に捕らえられて連れ去られることを預言する。そして、ユダヤ人の中に救い主であり贖い主であるメシヤが来られることを告げる。また、神の小羊にバプテスマを施す人が現れることも告げる。リーハイ、メシヤの死と復活について告げる。また、イスラエルの散乱と集合をオリーブの木にたとえる。ニーファイ、神の御子と聖霊の賜物と義が求められることとを述べる。紀元前約600年から592年に至る。

01 ところでわたしニーファイは、わたしが行ってきたことと、わたしの統治と民に対するわたしの務めについての話をこの版に続ける。さて、わたしの話を続けるには、父と兄たちのことをある程度述べる必要がある。
02 さて見よ、父は夢の話を語り聞かせ、レーマンとレムエルに力のかぎり励むように勧めてから、ユダヤ人について二人に話して聞かせた。
03 ユダヤ人は滅び、まことにあの大きな都のエルサレムも滅んで、そこに住む多くの者がバビロンへ囚われの身となって連れ去られる。しかし、主がふさわしいと思われる時機になると、これらの人々はまた帰って来る。すなわち、囚われの身から連れ戻される。そして、囚われの身から連れ戻されてから、彼らは再び受け継ぎの地を所有する。
04 そして、まことに父がエルサレムを去ってから600年後に、主なる神はユダヤ人の中に一人の預言者すなわちメシヤ、言い換えれば、世の救い主を立てられる。
05 父はまた預言者たちのことについても話して、非常に多くの預言者がこれらのこと、すなわち父が話したこのメシヤ、つまり世の贖い主について証しているとも語った。
06 また、すべての人類は、迷い堕落した状態にあり、この贖い主に頼らなければいつまでも同じ状態にあることを述べた。
07 また父は、主の道を備えるためにメシヤに先立って来る一人の預言者についても語った。
08 まことにその預言者は、荒れ野に出て行って叫ぶであろう。「主の道を備え、その道筋をまっすぐにせよ。あなたがたの知らない方があなたがたの中に立っておられるからである。その方はわたしよりも力のある方で、わたしはその方の履物のひもを解く値打ちもない。」父はこのことについて多くの話をした。
09 そして、父が言うには、この預言者はヨルダンのかなたベテアバラでバプテスマを施す。またバプテスマは水で施し、まことにメシヤに水でバプテスマを施す。
10 そして彼は、メシヤに水でバプテスマを施してから、世の罪を取り除く神の小羊にバプテスマを施したことを認め、その証をする。
11 さて、父はこれらの言葉を語ってから、ユダヤ人の間に宣べ伝えられる福音について、またユダヤ人が不信仰に陥ることについて兄たちに語った。ユダヤ人は降臨されるメシヤを殺すが、メシヤは殺された後に死者の中からよみがえり、聖霊によって異邦人に御自身を現される。
12 まことに父は、異邦人とイスラエルの家について多くの話をし、イスラエルの家は、枝が折られて地の全面に散らされる、1本のオリーブの木にたとえられると語った。
13 したがって父が言うには、地の全面に散るという主の言葉が成就するために、わたしたちは一つとなって約束の地へ導かれる必要がある。
14 そして、イスラエルの家は散らされてから、再び集められる。要するに、異邦人が完全な福音を受け入れてから、オリーブの木の自然の枝、すなわちイスラエルの家の残りの者たちは接ぎ木される。すなわち、彼らの主であり贖い主であるまことのメシヤを知るようになる。
15 父はこのような言葉で兄たちに預言し、語り、また、もっと多くの事柄についても預言し、語った。しかし、それはこの書には書き記さない。わたしのほかの書に、わたしにとって益になることをたくさん書き記しておいたからである。
16 今までに語ったことはすべて、父がレムエルの谷に天幕を張って住んでいたときに起こったことである。
17 さて、わたしニーファイは、父が示現の中で見たこと、また父が来るべきメシヤである神の御子を信じる信仰により授かった聖霊の力によって語ったことについて、父の言葉をすべて聞いた後、わたしニーファイもまた、聖霊の力によってこのようなことを見聞きし、また知りたいと思った。聖霊とは、昔の時代でも、またメシヤが人の子らに御自身を現される時でも、およそ神を熱心に求めるすべての人に神が与えられる賜物である。
18 神は、昨日も、今日も、またとこしえに変わることのない御方だからである。人々が悔い改めて神のもとに来るならば、世の初めから、すべての人にその道が備えられている。
19 熱心に求める人は見いだすであろう。神の奥義は聖霊の力によって、昔の時代のみならず今の時代にも、またこれから先の時代のみならず昔の時代にも、同じようにその人々に明らかにされる。したがって、主の道は一つの永遠の環である。
20 だから、人々よ、あなたがたは、自分のすべての行いについて裁きを受けるということを覚えておきなさい。
21 それで、自分たちの試しの生涯に悪いことをしようとしたならば、あなたがたは神の裁きの座の前で清くない者とされるであろう。清くない者は神とともに住むことができないので、あなたがたはとこしえに捨てられるに違いない。
22 聖霊はわたしに、これらのことを語る権能を授けてくださっているので、わたしは黙することをしない。


【動画】ニーファイ,将来起こる出来事についての示現を見る|1ニーファイ10−15章


第11章

ニーファイ、主の御霊を目にし、示現の中で命の木を見せられる。彼は神の御子の母を目にし、神が御自身を低くされることを知る。また神の小羊のバプテスマと務め、十字架の刑を見る。彼はまた、小羊の十二使徒の召しと務めを見る。紀元前約600年から592年に至る。

01 さて、わたしは、父の見たことを知りたいと思い、また主がそれを明らかにしてくださると信じて、思いにふけりながら腰を下ろしていたとき、主の御霊に捕らえられて、まことに、非常に高い山へ連れて行かれた。それは、まだ一度も見たことがなく、一度も足を踏み入れたことのない山であった。
02 そして御霊がわたしに、「見よ、あなたは何を望んでいるのか」と言われた。
03 それでわたしは、「父の見たことをわたしも見たいと望んでいます」と言った。
04 すると御霊はわたしに、「あなたは、父の語った木を父が実際に見たと信じるか」と言われた。
05 それでわたしは、「はい、わたしが父の言葉をすべて信じていることは、あなたも御存じです」と答えた。
06 わたしがこれらの言葉を語ると、御霊は声高らかに叫んで言われた。「いと高き神にまします主に、ホサナ。主は全地を支配される神、まことにすべてのものの上にまします神であられる。ニーファイよ、あなたはいと高き神の御子を信じているので幸いである。それゆえ、あなたは望んでいたものを見るであろう。
07 そして見よ、このことが一つのしるしとしてあなたに授けられる。すなわち、あなたは父が味わった実を結ぶ木を見てから、一人の男の人が天から降って来るのを見る。その人をあなたは見る。そしてその人を見た後、あなたはその人が神の御子であることを証する。」
08 そして、御霊はわたしに「見なさい」と言われた。そこでわたしが見ると、1本の木が見えた。その木はちょうど父が見た木のようであって、その木の美しさはほかに比べようがなく、まことにあらゆる美しいものをしのいでいた。またその白さは、風に舞う雪の白さにも勝っていた。
09 そこでわたしは、その木を見てから御霊に言った。「わたしは、あなたがあらゆるものに勝って貴い木を見せてくださったことが分かります。」
10 すると御霊はわたしに、「何を望むか」と言われた。
11 それでわたしは御霊に、「その木の解き明かしを知ることです」と言った。わたしは人が人に語るように御霊に語った。御霊が人の形をしておられるのを見たからである。にもかかわらず、わたしはその御方が主の御霊であられることを知っていた。そして御霊もわたしに、人が人に語るように語られた。
12 さて、御霊がわたしに「見なさい」と言われた。それで御霊を仰ぎ見るように眺めると、その御姿は見えなかった。すでにわたしの前を去っておられたからである。
13 そこでわたしが眺めると、大きな都のエルサレムをはじめ、そのほかのもろもろの町が見えた。またナザレの町も見えた。そしてわたしはナザレの町に一人のおとめを見たが、それはまことに色が白く美しいおとめであった。
14 そしてわたしは、天が開くのを見た。そして、一人の天使が降って来てわたしの前に立ち、「ニーファイよ、何が見えるか」と言った。
15 それでわたしは言った。「ほかのどんなおとめにも勝って美しく、また麗しいおとめが見えます。」
16 すると天使はわたしに、「神が御自身を低くされることがあなたに分かるか」と言った。
17 それでわたしは、「わたしは、神がその子供たちを愛しておられることは知っていますが、すべてのことの意味を知っているわけではありません」と言った。
18 すると天使は言った。「見よ、あなたが見ているおとめは、肉に関して神の御子の母である。」
19 そしてわたしは、そのおとめが御霊に連れて行かれるのを見た。そのおとめが御霊に連れて行かれてからしばらくして、天使がわたしに「見なさい」と言った。
20 それで眺めると、腕に幼子を抱いたおとめが見えた。
21 すると天使がわたしに言った。「神の小羊、まことに永遠の父なる神の御子を見なさい。あなたは父が見た木の意味を知っているか。」
22 それでわたしは答えて言った。「はい、その木は人の子らの心にあまねく注がれる神の愛です。だから、どんなものよりも好ましいものです。」
23 すると天使はわたしに、「そのとおり。それは人にとって最も喜ばしいものである」と言った。
24 天使はこれらのことを言ってから、またわたしに「見なさい」と言った。眺めると、神の御子が人の子らの中に進んで行かれるのが見えた。また多くの人がその足もとに伏して、御子を拝むのが見えた。
25 そしてわたしは、父の見た鉄の棒が生ける水の源、すなわち、命の木に導く神の言葉であること、またその水が神の愛の表れであり、命の木もまた神の愛の表れであることを知った。
26 そして、天使がまたわたしに、「神が御自身を低くされる様子を眺めてみなさい」と言った。
27 それで眺めると、父の語った世の贖い主が見え、また贖い主の前に道を備える預言者も見えた。また神の小羊が進み出て、その預言者からバプテスマを受けられた。バプテスマを受けられると、天が開いて聖霊が鳩の形を取って降って来て、神の小羊のうえにとどまられるのが見えた。
28 またわたしには、小羊が出て行き、力と大いなる栄光をもって人々を教え導かれるのが見えた。また、幾つもの大勢の人々の群れが、その小羊の言葉を聞くために集まるのが見えた。そして、彼らが自分たちの中から小羊を追い出すのが見えた。
29 そして、ほかに12人の人が小羊に従うのも見えた。すると、この12人の人は、わたしの前から御霊によって連れ去られ、姿が見えなくなった。
30 そこで、天使がまた「見なさい」と言うので眺めると、天がまた開いて、天使たちが人の子らのもとに降って来て、彼らを教え導くのが見えた。
31 天使がまたわたしに、「見なさい」と言うので眺めると、神の小羊が人の子らの中に出て行かれるのが見えた。また病気の人々や、様々な患いに苦しんでいる人々、悪霊や汚れた霊につかれて苦しんでいる人々の群れが見えた。天使はこれらのことをすべてわたしに語り、また見せてくれたが、これらの人々は神の小羊の力によって癒され、また悪霊や汚れた霊は追い出された。
32 さて、天使がもう一度「見なさい」と言うので眺めると、神の小羊が人々に捕らえられるのが見えた。まことに、永遠の神の御子は世に裁かれた。わたしはこれを見たので、その証をする。
33 わたしニーファイは、神の小羊が世の罪のために十字架につけられて殺されたのを見た。
34 また神の小羊が殺されてから、世の幾つもの大勢の人々の群れが集まって、主の天使が小羊の使徒と呼ぶあの12人の人々と戦いをしようとするのが見えた。
35 このように、世の大勢の人々が集まっていたが、彼らが、父の見た建物のような大きく広々とした建物の中にいるのが見えた。このとき、主の天使がまたわたしに言った。「世の人々と彼らの知恵を見なさい。まことに、イスラエルの家が小羊の十二使徒と戦うために集まっているのを見なさい。」
36 そこでわたしは、あの大きく広々とした建物が世の人々の高慢であることを見て、その証をする。その建物は崩れて、その崩れ方は非常に甚だしかった。主の天使が再び、わたしに向かって言った。「小羊の十二使徒と戦うすべての国民、部族、国語の民、民族の滅亡は、まさにこのようになるであろう。」

第12章

ニーファイ、示現の中で約束の地を見る。その地に住む者の義と罪悪と没落。神の小羊が約束の地に住む者を訪れられる様子。十二弟子と十二使徒がイスラエルを裁く様子。不信仰に陥る人々の不快で汚らわしい状態。紀元前約600年から592年に至る。

01 さて、天使がわたしに、「あなたの子孫と兄たちの子孫を眺めてみなさい」と言った。それで眺めると、約束の地が見え、また大勢の人々の群れが見えたが、まことにその人々の数は海の砂のように多かった。
02 そして、大勢の人々の群れが、互いに戦うために集まっているのが見えた。また戦争が見え、戦争のうわさがあり、わたしの民の中で剣によって大虐殺が行われるのも見えた。
03 そしてその地で、戦争や争いの有様で多くの世代が過ぎていくのが見えた。また多くの町が見えたが、それはまことに数え切れないほどであった。
04 そしてわたしは、約束の地の面に暗黒の霧を見た。また稲妻が見え、雷や地震、そのほかあらゆる騒がしい物音を聞いた。大地や岩が裂け、山が崩れ、平地が砕け、多くの町が沈み、多くの町が焼け、また多くの町が地震で地に崩れ落ちるのを見た。
05 さて、これらのことを見た後、暗黒の霧が地の面から消え去るのが見えた。そして見よ、わたしは、主のこの大変な恐ろしい裁きによっても倒れなかった、大勢の人々の群れを見た。
06 そしてわたしは、天が開いて神の小羊が天から降って来られるのを見た。神の小羊は降って来て、彼らに御姿を現された。
07 わたしはまた、聖霊がほかの12人に降って来られるのを見たので、それを証する。この12人は神によって聖任され、選ばれた人々である。
08 天使はわたしに、「小羊の十二弟子を見なさい。この人たちはあなたの子孫を教え導くために選ばれる」と言った。
09 また天使はわたしに言った。「あなたは小羊の十二使徒を覚えているか。見よ、彼らはイスラエルの12部族を裁く人々である。したがって、あなたの子孫から出る12人の教え導く者は、この十二使徒によって裁かれる。あなたがたはイスラエルの家に属するからである。
10 あなたが見ているこの12人の教え導く者は、あなたの子孫を裁く。見よ、この12人は、神の小羊を信じる信仰のために小羊の血によって衣を白くされているので、とこしえに義人である。」
11 さて、天使がわたしに、「見なさい」と言うので眺めると、3世代が義のうちに世を去り、その間の人の衣はまことに神の小羊のように白かった。天使がわたしに言った。「この人々の衣は、小羊を信じる信仰のために小羊の血によって白くされたのである。」
12 さて、わたしニーファイは、4代目の人々の中にも義のうちに世を去った人々が多くいるのを見た。
13 さて、わたしは、世の大勢の人々が群れ集まるのを見た。
14 天使がわたしに、「あなたの子孫と兄たちの子孫を見なさい」と言った。
15 そこで眺めると、わたしの子孫の民が兄たちの子孫に向かい、大勢の人々の群れとなって集まるのが見えた。彼らは戦うために集められたのである。
16 また天使が言った。「あなたの父が見た汚れた水の流れ、すなわちあなたの父が語った川を見なさい。その深みは地獄の深みである。
17 また、あの暗黒の霧は悪魔の誘惑である。それは人の子らの目をくらまし、心をかたくなにし、広い道に踏み込ませて、彼らが滅び失われるように仕向ける。
18 また、あなたの父が見たあの大きく広々とした建物は、人の子らのうぬぼれた空想と高慢である。また、一つの大きな恐ろしい淵があって、彼らを隔てている。まことに、それは、永遠の神と神の小羊であるメシヤの正義の御言葉であって、このメシヤについては、世の初めから今に至るまで、また今から後とこしえに、聖霊がその証をされる。」
19 そして、天使がこれらの言葉を語っていた間、わたしが眺めると、天使の言葉のとおりに、兄たちの子孫がわたしの子孫と戦うのが見えた。そして、わたしの子孫の高慢と悪魔の誘惑のために、兄たちの子孫がわたしの子孫の民を打ち負かすのが見えた。
20 そしてわたしが眺めると、兄たちの子孫の民はわたしの子孫を打ち負かしてから、幾つもの大勢の人々の群れとなって、地の面に出て行くのが見えた。
21 そしてわたしは、彼らが幾つもの大勢の人々の群れとなって集まるのを見た。そして、彼らの中に戦争と戦争のうわさがあるのを見た。そして、戦争と戦争のうわさの中で、多くの世代が過ぎ去るのを見た。
22 すると天使がわたしに、「見よ、これらの人々は不信仰に陥る」と言った。
23 そこでわたしが見ると、これらの人々は不信仰に陥ってから、肌の黒ずんだ不快な汚らわしい民、まったくの怠け者であらゆる忌まわしい行いをする民になった。

第13章

ニーファイ、示現の中で異邦人の中に設けられる悪魔の教会を見る。またアメリカ大陸の発見と入植、聖書の分かりやすくて貴い多くの部分が失われること、異邦人の背教がもたらす有様についても見る。さらに福音の回復と末日の聖典の出現、シオンの建設について見る。紀元前約600年から592年に至る。

01 さて、天使がわたしに、「見なさい」と言った。それでわたしは眺めると、多くの国民と王国が見えた。
02 天使がわたしに、「何が見えるか」と言ったので、わたしは、「多くの国民と王国が見えます」と答えた。
03 天使はわたしに、「これらは異邦人の国民とその王国である」と言った。
04 そしてわたしは、異邦人の国民の中に一つの大きな教会が設立されるのを見た。
05 天使はわたしに言った。「ほかのあらゆる教会にも増して忌まわしい教会が設立されるのを見なさい。この教会は神の聖徒たちを殺し、苦しめ、縛り上げ、鉄のくびきを負わせて、囚われの身に陥れるものである。」
06 そしてわたしは、この大きな忌まわしい教会を見て、悪魔がその創設者であるのを知った。
07 わたしはまた金と銀と絹と緋の衣とこまやかに織った亜麻布、それにいろいろな種類の高価な衣類を見た。また、多くの娼婦を見た。
08 天使がわたしに言った。「見よ、金と銀と絹と緋の衣とこまやかに織った亜麻布、それに高価な衣類、また娼婦などは、この大きな忌まわしい教会が好むものである。
09 また彼らは、世の誉れを得るために神の聖徒たちを殺し、彼らを囚われの身に陥れる。」
10 さて、わたしが眺めると、大海があって、それが異邦人と兄たちの子孫とを隔てているのが見えた。
11 そして天使がわたしに、「見なさい。神の怒りがあなたの兄たちの子孫のうえにある」と言った。
12 それで眺めると、異邦人の中に一人の男が見え、その男は大海によってわたしの兄たちの子孫から隔てられていた。すると神の御霊が降ってこの男に働きかけ、この男が大海を渡って、約束の地にいるわたしの兄たちの子孫のところへ行くのが見えた。
13 そして、神の御霊がほかの異邦人にも働きかけ、彼らが囚われの身の上から逃れて大海を渡って行くのが見えた。
14 そして、約束の地に大勢の異邦人の群れがいるのが見え、神の激しい怒りが兄たちの子孫に下り、彼らが異邦人の前から散らされ、打ち負かされるのが見えた。
15 またわたしは、主の御霊が異邦人のうえにあって、彼らがまことに栄えてその地を受け継ぎとして得るのを見た。また彼らが、殺される前のわたしの民のように肌の色が白く、非常に麗しく美しいのが見えた。
16 そして、わたしニーファイは、囚われの身から逃れて来た異邦人が主の前にへりくだり、主の力が彼らとともにあるのを見た。
17 わたしはまた、彼らの母国の異邦人が、彼らと戦うために海にも陸にも集まるのを見た。
18 そしてわたしは、神の力が彼らとともにあり、また神の激しい怒りが、彼らと戦うために集まったすべての人に下るのを見た。
19 そしてわたしニーファイは、囚われの身から逃れて来た異邦人が、神の力によって、ほかのすべての国民の手から救い出されるのを見た。
20 そしてわたしは、彼らがその地で栄えるのを見た。また、1冊の書物が見え、それが彼らの中で広まるのが見えた。
21 すると天使が、「この書物の意味が分かるか」と言った。
22 わたしは天使に、「分かりません」と答えた。
23 すると天使は、「見なさい。この書物はユダヤ人の口から出ている」と言った。わたしニーファイがそれを見ると、天使はわたしに言った。「あなたが見ている書物はユダヤ人の記録であって、主がイスラエルの家に立てられた聖約が載っており、それにはまた、聖なる預言者たちの語った多くの預言も載っている。それは真鍮の版に刻まれている記録に似たものであって、ただその量が少ないだけである。それでもその中には、主がイスラエルの家に立てられた聖約が載せてあるので、異邦人にとって大いに価値のあるものである。」
24 また、主の天使はわたしに言った。「あなたはその書物がユダヤ人の口から出て来たのを見たが、それがユダヤ人の口から出て来たときには、主の完全な福音が載っていた。この主については、十二使徒が証をしており、彼らは神の小羊にある真理によって証をしている。
25 したがって、これらのことは神の内にある真理によってユダヤ人から異邦人に純粋なまま伝わる。
26 そして、これらが小羊の十二使徒の手によってユダヤ人から異邦人に伝わってから、あなたには、ほかのあらゆる教会にも増して大きな忌まわしい教会が設立されるのが見える。見よ、その教会の者たちは、分かりやすくて大変貴い多くの部分を小羊の福音から取り去り、また主の多くの聖約も取り去ってしまったからである。
27 彼らがこれをしたのは、主の正しい道を曲げて人の子らの目をくらまし、その心をかたくなにするためである。
28 したがってあなたには、あの書物があの大きな忌まわしい教会の手を経て出て来てからは、神の小羊の書物から分かりやすくて貴い多くの部分が取り去られていることが分かる。
29 そして、これらの分かりやすくて貴い部分が取り去られてから、この書物は異邦人であるすべての国民に伝わる。まことに、それが囚われの身から逃れた異邦人とともに、あなたの見た大海を渡って、異邦人であるすべての国民に伝わった後、非常に多くの人がつまずき、まことにサタンがその人々を大いに支配する力を持つほどになるのが見える。それは、神の小羊にある明瞭さによって人の子らに理解しやすかった、分かりやすくて貴い多くの部分が、その書物から取り去られてしまったため、すなわち子羊の福音からこれらのことが取り去られてしまったためである。
30 しかしながら、あなたは見る。囚われの身を逃れる異邦人、ほかのあらゆる地に勝ったえり抜きの地、すなわち、あなたの子孫が受け継ぎの地として所有すると、主なる神があなたの父に聖約された地の面において、神の力によってすべてのほかの国民より高められる異邦人を。それゆえ、あなたの兄たちの中に生きている、あなたの子孫で血が混じった者たちが、この異邦人によってことごとく滅ぼされてしまうのを、主なる神は許されない。このことをあなたは見る。
31 また主なる神は、この異邦人があなたの兄たちの子孫を滅ぼすのも許されない。
32 また主なる神は、異邦人が恐ろしい盲目の状態にとこしえにとどまることも許されない。あなたが見る彼らのその状態は、小羊の福音の分かりやすくて大変貴い部分があの忌まわしい教会によって差し止められたためである。そして、あなたはその教会が設立されるのを見たのである。
33 したがって、神の小羊は言われる。『わたしは異邦人を憐れみ、イスラエルの家の残りの者に大いなる裁きをもって報いを加える』と。」
34 そして、主の天使はわたしに言った。「神の小羊は次のように言われる。『見よ、わたしはイスラエルの家の残りの者、すなわちわたしが話しているこの残りの者とは、あなたの父の子孫であるが、彼らに裁きをもって報いを加え、異邦人の手によって彼らを悩ました後、また娼婦の母であるあの忌まわしい教会が、小羊の福音の大変分かりやすくて貴い部分のため、すなわちその部分があの忌まわしい教会によって差し止められたために、異邦人が甚だしくつまずいた後、』小羊はこう言われ、さらに『その日わたしは異邦人を憐れみ、力をもって、わたしの福音の中の分かりやすくて貴い多くの部分を彼らに明らかにしよう』と小羊は言われる。
35 見よ、小羊は言われる。『わたしはあなたの子孫にわたし自身を現し、わたしが教える分かりやすくて貴い多くのことを記させる。そして、あなたの子孫が滅ぼされ、また不信仰に陥り、またあなたの兄たちの子孫もそうなった後、まさにこれらのことは隠されて、小羊の賜物と力によって異邦人にもたらされる。』
36 小羊は言われる。『その中には、わたしの福音とわたしの岩とわたしの救いが書き記される。
37 その日、わたしのシオンを起こそうと努める者は幸いである。彼らは聖霊の賜物と力を受けるであろう。また、彼らは最後まで堪え忍ぶならば、終わりの日に高く上げられて、小羊の永遠の王国に救われるであろう。また平和を告げて広め、まことに大いなる喜びのおとずれを告げる者は、山の上にあって何と麗しいことであろう。』」
38 さて、わたしは兄たちの子孫の残りの者を見、また神の小羊の書を見て、それがユダヤ人の口から出て来て、異邦人から兄たちの子孫の残りの者にもたらされるのを見た。
39 その書物が彼らに伝わってから、わたしはほかにも幾つかの書物を見た。それらは小羊の力によって異邦人から彼らに伝わったものであって、預言者たちと小羊の十二使徒の記録が真実であることを、異邦人と兄たちの子孫の残りの者と、地の面に散らされたユダヤ人に確信させるためのものである。
40 天使はわたしに言った。「あなたが異邦人の中で見たそれら後の方の記録は、小羊の十二使徒から出た初めの記録が真実であることを立証し、またその中から取り去られた分かりやすくて貴い部分を明らかにする。またそれらの記録は、神の小羊が永遠の御父の御子であって、世の救い主であられること、すべての人はこの救い主のみもとに来なければならず、そうしなければ救われないことを、すべての部族、国語の民、民族に知らせる。
41 またすべての人は、小羊の口によって立証される御言葉に従って、みもとに来なければならない。そして小羊の御言葉は、小羊の十二使徒の記録のみならず、あなたの子孫の記録の中でも明らかにされるであろう。したがって、これら二つの記録は一つに合わせられる。全地を支配されるのは唯一の神、唯一の羊飼いだからである。
42 そしてこの御方が、すべての国民、すなわちユダヤ人にも異邦人にも御姿を現される時が来る。この御方はユダヤ人に、次に異邦人に御姿を現され、そして異邦人に、次にユダヤ人に御姿を現される。このように、後の者は先になり、先の者は後になる。」

第14章

天使、異邦人に及ぶ祝福とのろいについてニーファイに伝える。教会はただ二つ、神の小羊の教会と悪魔の教会があること。すべての国々にいる神の聖徒たち、大きな忌まわしい教会によって迫害される。使徒ヨハネが世の終わりについて書き記す。紀元前約600年から592年に至る。

01 「さて、神の小羊が御言葉と力をもって、確かに異邦人に御姿を現し、つまずきの石を取り除かれる日、もし異邦人が神の小羊の御言葉に聞き従い、
02 神の小羊に対して心をかたくなにしなければ、彼らは、あなたの父の子孫の中に数えられるようになる。まことに、彼らはイスラエルの家の中に数えられ、約束の地でとこしえに祝福された民となり、もう囚われの身となることはない。そして、イスラエルの家は再び乱されることがない。
03 神の小羊は言われる。『人の霊を地獄に誘い落とすために、悪魔が自分の子らとともに築いたあの大きな忌まわしい教会は、人々のために大きな穴を掘ったが、まことに人々を滅ぼすために掘られたその大きな穴は、それを掘った者たちでいっぱいになり、彼らはことごとく滅びてしまう。しかし滅びるといっても、霊が滅びるのではなく、終わりのないあの地獄に投げ込まれることをいうのである。
04 見よ、これは悪魔の束縛と神の正義に従って人々に及ぶもので、神の御前に悪事と忌まわしい行いをするすべての人に及ぶのである。』」
05 そこで天使は、またわたしニーファイに言った。「あなたは、異邦人も悔い改めれば幸いであるのを見た。また、主がイスラエルの家と交わされた聖約についても知り、悔い改めない者はだれでも滅びなければならないことも聞いている。
06 したがって、異邦人は神の小羊に対して心をかたくなにするならば、災いである。
07 神の小羊は言われる。『わたしが大いなる驚くべき業を人の子らの中で行う時が来る。その業は、いずれにおいても永遠のものである。すなわち、彼らに確信を与えて平安と永遠の命を得させるか、それとも彼らが心をかたくなにし、思いをくらませるに任せて、彼らを束縛された状態に陥らせ、悪魔の束縛、これについては前に話したことがあるが、この束縛にあって、肉体的にも霊的にも滅びに至らせるか、そのいずれかである。』」
08 そこで天使は、これらの言葉を語ってからわたしに向かい、「御父がイスラエルの家と交わされた聖約を覚えているか」と言ったので、わたしは天使に、「はい」と答えた。
09 そこで天使はわたしに言った。「見なさい。忌まわしい行いの母であり、悪魔を創設者とする大きな忌まわしい教会を見なさい。」
10 天使はわたしに言った。「見よ、教会は二つしかない。一つは神の小羊の教会であり、もう一つは悪魔の教会である。したがって、神の小羊の教会に属していない者はだれでも、忌まわしい行いの母であるあの大きな教会に属する者である。彼女は全地の淫婦である。」
11 そこでわたしがあの全地の淫婦を眺めてみると、彼女は多くの水の上に座を占め、すべての国民、部族、国語の民、民族の中にあって全地を支配していた。
12 そして、神の小羊の教会が見えたが、この教会に属している者の数は、多くの水の上に座を占めている、あの淫婦の悪事と忌まわしい行いのために少なかった。それでも、神の聖徒である小羊の教会の人々もまた、地の全面にいるのが見えた。しかし、地の面における彼らの占める場所は、わたしの見た大淫婦の悪事のために小さかった。
13 そして、あの忌まわしい行いの大いなる母が、神の小羊と戦うために、異邦人のすべての国民の中にあって、全地の面に大勢の人を寄せ集めるのが見えた。
14 そしてわたしニーファイは、神の小羊の力が、地の全面に散っている小羊の教会の聖徒たち、すなわち主の聖約の民のうえに下るのを見た。彼らは義と神の力とをもって、大いなる栄光のうちに武装していた。
15 そしてわたしは、神の激しい怒りがあの大きな忌まわしい教会のうえに注がれ、そのために、地のすべての国民と部族の中で戦争と戦争のうわさがあるのを見た。
16 そして、あの忌まわしい行いの母に属しているすべての国民の中で戦争が始まり、戦争のうわさが出始めたときに、天使がわたしに言った。「見よ、神の激しい怒りは娼婦たちの母に下る。そして見よ、あなたにはこれらのことがすべて見える。
17 娼婦たちの母、すなわち悪魔が創設者である全地の大きな忌まわしい教会に、神の激しい怒りが注がれる日が来ると、その日、御父の業が始まり、御父は、イスラエルの家に属する御自分の民と交わされた聖約を果たすための道を備えられる。」
18 そこで、天使はわたしに語って、「見なさい」と言った。
19 眺めると、白い衣を着ている一人の男の人が見えた。
20 すると天使はわたしに言った。「小羊の十二使徒の一人を見なさい。
21 見よ、彼は、これらのことの残りの部分と、また今までにあった多くのことを見て書き記す。
22 また、世の終わりについても書き記す。
23 彼が書き記すことは正しく真実である。そして見よ、それらのことは、あなたがユダヤ人の口から出るのを見た書物の中に書き記される。そして、それらがユダヤ人の口から出て来た当時、すなわちその書物がユダヤ人の口から出て来た当時は、書き記されたことは分かりやすくて純粋であり、また大変貴くて、すべての人に理解しやすいものであった。
24 見よ、この小羊の使徒の書き記すことの多くを、あなたは見た。そして見よ、これからあなたはその残りの部分を見るであろう。
25 しかし、これからあなたが見ることは書き留めてはならない。主なる神が、それらのことを書き記すように、あの神の小羊の使徒を任じられたからである。
26 神はまた、かつてこの世に生きたほかの人々にも、すべてのことを示され、彼らはそれらのことを書き記した。そしてそれらの記録は、主御自身がふさわしいと思われるときに、小羊の内にある真理によって純粋なままでイスラエルの家に伝わるように、今は封じられている。」
27 わたしニーファイは、天使の言葉により、この小羊の使徒の名がヨハネであることを聞き、ここに証する。
28 そして見よ、わたしニーファイは、見聞きしたことの残りの部分を書き記すことを禁じられているので、今まで書き記したことで満足するが、これまで書き記したことは、わたしが見たことの一部分にすぎない。
29 わたしは父の見たことを見、そして主の天使がそれらのことをわたしに明らかにしてくれたことを証する。
30 わたしは、御霊に連れ去られたときに見たことについての話を、これで終わりにする。わたしの見たことがたとえすべて書き記されていなくても、今まで書き記したことは真実である。まことにそのとおりである。アーメン。

第15章

リーハイの子孫は、末日に異邦人から福音を受ける。イスラエルの集合は、オリーブの木に元の自然の枝が接ぎ戻されることにたとえられる。ニーファイ、命の木の示現を解き明かし、また義人と悪人を分ける神の正義について語る。紀元前約600年から592年に至る。

01 さて、わたしニーファイは、御霊に連れ去られて以上のことをすべて見てから、父の天幕に帰って来た。
02 そこで兄たちに会うと、彼らは以前に父が話したことについて言い争っていた。
03 父はまことに偉大なことを多く兄たちに語ったが、それは主に尋ねないかぎり理解しにくいことであった。兄たちは、心がかたくなであったので、当然なすべきことではあったが、主を仰ぎ見ることをしなかった。
04 そこでわたしニーファイは、兄たちの心がかたくなであったために、また今までいろいろなことを見てきたために悲しく思った。わたしは、人の子らの犯す大きな悪事のために、それらのことが間違いなく起こることを知ったのである。
05 そしてわたしは、わたしの民が倒れるのを見たので、彼らの滅亡のために自分の悩みが何にも増して大きく思われて、その悩みのために圧倒されてしまった。
06 そしてその後、わたしは力を取り戻すと、言い争いの訳を知りたいと思い、兄たちに尋ねた。
07 すると兄たちは、「見よ、父がオリーブの木の元の自然の枝と異邦人について語ったが、その意味が分からない」と答えた。
08 それでわたしは彼らに、「あなたがたは主に尋ねたのですか」と言った。
09 すると彼らは、「主に尋ねてはいない。主はこんなことを我々に明らかにしてくださらないからだ」と答えた。
10 見よ、わたしは彼らに言った。「どうしてあなたがたは、主の戒めを守ろうとしないのですか。なぜ心をかたくなにして滅びを招こうとするのですか。
11 主が言われたことを覚えていないのですか。主は、『もしあなたがたが心をかたくなにせず、わたしの戒めを熱心に守りながら、答えを与えられると信じて信仰をもってわたしに求めれば、これらのことは必ずあなたがたに明らかにされる』と言われました。
12 まことに、わたしはあなたがたに言います。父は、自分に宿った主の御霊によって、イスラエルの家をオリーブの木にたとえました。まことに、わたしたちは、イスラエルの家から折り取られた者ではありませんか。イスラエルの家の1枝ではありませんか。
13 ところでわたしたちの父は、異邦人が満ちみちる恵みにあずかることによって、元の自然の枝が接ぎ戻されることについて語りましたが、それは、メシヤが人の子らに肉体をもって御姿を現された後に、わたしたちの子孫がまことに長い間、しかも多くの世代にわたって不信仰に陥るようになった末日において、メシヤの完全な福音が異邦人に与えられ、次いで異邦人からわたしたちの子孫の残りの者に伝えられるようになるということです。
14 その日、わたしたちの子孫の残りの者は、自分たちがイスラエルの家に属する主の聖約の民であることを知るでしょう。それから彼らは、自分たちの先祖のことを知って理解するようになり、また贖い主によって先祖に与えられた福音も理解するようになるでしょう。このようにして、彼らは贖い主とその教義の詳しい点について理解するようになり、どうすれば贖い主のみもとに帰って救いを得られるかを知るのです。
15 その日、彼らは自分たちの岩であり救いである永遠の神を喜び、賛美せずにいられるでしょうか。まことにその日、まことのぶどうの木から力と養いを受けないでいられるでしょうか。まことに、神のまことの羊の群れに入らないでいられるでしょうか。
16 まことに、わたしはあなたがたに言います。そうです。彼らはイスラエルの家の中で再び覚えられ、またオリーブの木の元の自然の枝であるので、まことのオリーブの木に接ぎ戻されるのです。
17 これが、わたしたちの父が言おうとしたことです。また父は、このことは彼らが異邦人によって散らされるまで起こらないと言っています。また父は、このことが異邦人を通して起こり、主がユダヤ人、すなわちイスラエルの家によって拒まれるので、主が御自分の力を異邦人に現されるためにそれが起こると言っています。
18 それで父は、末日に成就する聖約について触れながら、わたしたちの子孫のことだけでなく、イスラエルの家に属するすべての者についても語ったのです。その聖約とは、主がわたしたちの先祖アブラハムに立てられたもので、主は、『あなたの子孫により、地のすべての部族は祝福を受けるであろう』と言われました。」
19 さて、わたしニーファイは、これらのことについて兄たちにたくさんのことを語った。まことに、わたしは末日におけるユダヤ人の回復について、彼らに語ったのであった。
20 そしてわたしは、イザヤの言葉を兄たちに詳しく述べた。イザヤはユダヤ人、すなわちイスラエルの家の回復について語り、また、彼らが回復されてからはもう乱されることもなければ、再び散らされることもない、と語っている。そして、わたしが兄たちに多くの言葉を述べたので、兄たちは心が和らいで主の前にへりくだった。
21 そして、兄たちは再びわたしに、「父が夢の中で見たことは何を意味するのか。父の見た木は何を意味するのか」と言った。
22 それでわたしは、「その木は命の木を表すものです」と言った。
23 すると兄たちは、「あの木の所に通じている、父が見た鉄の棒は何を意味するのか」と言った。
24 わたしは兄たちに、それは神の言葉であって、だれでも神の言葉に聞き従って、それにしっかりつかまる者は、決して滅びることがなく、また敵対する者の誘惑や火の矢も、彼らを打ち破って盲目とし、滅びに至らせることはないと言った。
25 わたしニーファイは、主の言葉を心に留めるように兄たちに勧めた。まことに、わたしは兄たちが神の言葉を心に留めて、何事においても常に神の戒めを守ることを覚えるように、全精力を傾け、能力の限りを尽くして兄たちに勧めた。
26 すると、彼らはわたしに、「父の見た水の流れている川は何を意味するのか」と言った。
27 わたしは、父の見た水は汚れであるが、父は心をほかの物事に奪われていて、水の汚れは見えなかったと言った。
28 またわたしは、それは悪人を命の木や神の聖徒から隔てている恐ろしい淵であると彼らに言った。
29 そして、それは悪人のために用意されていると天使が語ったあの恐ろしい地獄を表していると、わたしは彼らに言った。
30 また、神の正義も悪人を義人から隔てており、それを父も見たと、わたしは彼らに言った。その輝きは、とこしえにいつまでも神に向かって立ち上る、燃える火の輝きのようであった。
31 すると兄たちはわたしに言った。「今言ったことは、この試しの生涯で肉体が受ける苦痛を指すのか、または肉体が死んでから後の、霊の最後の状態を指すのか、それとも現世のことをいうのか。」
32 そこでわたしは、それは現世のことにも霊的なことにもかかわることを表していると言った。それは、兄たちが自分のなした行い、すなわち、試しの生涯において肉体をもってなした行いによって裁かれなければならない日が、必ず来るからである。
33 したがって、もし彼らが邪悪なままで死ぬならば、彼らは義にかかわる霊的なことからも捨てられなければならない。したがって、彼らは自分の行いについて裁きを受けるために、神の前に引き出されなければならない。そして、もし彼らの行いが汚れているならば、彼らは必ず汚れているに違いない。もし彼らが汚れているならば、決して神の王国に住むことはできない。もし彼らが住めるとしたら、神の王国もまた汚れているに違いない。
34 「しかしまことに、わたしはあなたがたに言います。神の王国は汚れてはいません。清くないものは、どのようなものでも神の王国に入ることができないのです。したがって、汚れたもののためには、汚れたものの場所が必ず用意してあります。
35 事実、用意された場所が一つあります。まことに、それはわたしが話したあの恐ろしい地獄で、それを用意したのは悪魔です。ですから、人の最後の状態は、神の王国に住むか、そうでなければ、わたしが話したあの正義によって追い出されるかのどちらかです。
36 したがって、悪人は義人から拒まれ、また命の木からも拒まれます。その命の木の実は非常に貴く、ほかのあらゆる実よりも好ましいもので、またそれは、神のあらゆる賜物の中で最も大いなるものです。」わたしはこのように兄たちに語った。アーメン。

第16章

悪人は真理を厳しいものと考える。リーハイの息子たち、イシマエルの娘たちと結婚する。リアホナ、荒れ野での一行の進路を指し示す。主の御告げが時々リアホナに記される。イシマエル、死ぬ。イシマエルの子供たち、苦難のためにつぶやく。紀元前約600年から592年に至る。

01 さて、わたしニーファイが兄たちに語り終えると、見よ、兄たちは、「おまえは我々が聞くに堪えないほど厳しいことを言った」とわたしに言った。
02 そこでわたしは兄たちに、真理に従い、悪人にとって厳しいことを言ったのはよく承知していると話した。わたしは義人を義とし、彼らが終わりの日に高く上げられることを証した。そのために、罪のある者は真理が胸の底まで刺し貫くので、真理を厳しいものと思うのである。
03 「兄さんたち、もし兄さんたちが義にかなっていて、神の御前をまっすぐに歩めるように、進んで真理に聞き従い、それを心に留めるならば、その真理のためにつぶやいて、『おまえは我々に厳しいことを言った』などとは言わないでしょう。」
04 そして、わたしニーファイは兄たちに、主の戒めを守るように力のかぎり勧めた。
05 そこで、兄たちが主の前にへりくだったので、わたしは兄たちが義の道を歩むようになることを喜び、またそのことに大きな希望を抱いた。
06 さて、以上のことはすべて、父がレムエルと名付けた谷で天幕に住んでいたときに語られ、また行われたことである。

07 さて、わたしニーファイは、イシマエルの娘の一人を妻にめとり、兄たちもまた、イシマエルの娘たちを妻にめとった。そしてゾーラムも、イシマエルの長女を妻にめとった。
08 このようにして、父は主から受けた戒めをことごとく果たし、またわたしニーファイも、主から非常に豊かな祝福を受けた。

09 さて、夜に、主の声が父に語りかけ、翌日に荒れ野へ旅立つように命じられた。
10 そこで、父が朝起きて天幕の入り口へ出て行ったところ、非常に驚いたことに、地の上に入念な造りの丸い球が一つあった。それは純良な真鍮でできていて、その球の内部には2本の指針があり、その一本は、わたしたちが荒れ野で進むべき方向を指していた。

11 そこでわたしたちは、荒れ野へ持って行くべき一切のものと、主が与えてくださった食糧の残りをことごとく集めた。また、荒れ野へ持って行くためあらゆる種を携えた。
12 そしてわたしたちは天幕を持ち、レーマン川を渡って荒れ野へ出発した。
13 そして、わたしたちは4日間、ほぼ南南東の方角へ旅路を進み、再び天幕を張ってその地をシェザーと名付けた。

14 そこでわたしたちは、弓矢を携え、家族の食糧にする獲物をとりに荒れ野へ出かけて行った。そして獲物をとると、荒れ野の家族のもとに、すなわちシェザーに帰って来た。そして、また前と同じ方角に、紅海に近い境の地の荒れ野の中で、最も肥沃な所をたどりながら進んで行った。
15 そしてわたしたちは、道々、弓矢や石、石投げで食糧にする獲物をとりながら幾日もの間旅をした。
16 そして、その球の指す方向へ進んで行ったが、それはわたしたちを荒れ野の中で、より肥沃な場所へ導いて行った。
17 わたしたちは、幾日もの間旅をしてからしばらく天幕を張り、体を休めて、家族の食糧にする獲物をとることにした。

18 そして、わたしニーファイは食糧にする獲物をとるために出て行ったが、見よ、純良な鋼でできているわたしの弓を折ってしまった。それで、弓を折ってからは、食糧を得ることができなかったので、見よ、兄たちは弓を使えなくしたことでわたしに大いに腹を立てた。
19 そこでわたしたちは、食糧がないままに家族のもとに帰ったが、家族の者は旅のためにひどく疲れていたので、食糧がないことで非常に苦しんだ。
20 そして、レーマンとレムエルとイシマエルの息子たちは、荒れ野での苦しみと苦難のためにひどくつぶやき始め、また父も主なる神に対してつぶやき始めた。彼らは皆、非常に嘆き悲しみ、主に対してつぶやいたのであった。
21 さて、わたしニーファイは、自分の弓を使えなくしたために兄たちから苦しめられたが、兄たちの弓も弾力がなくなったので事態はさらに深刻になり、まことにわたしたちは、食糧をまったく得ることができなかった。
22 そして兄たちが、主なる神に対して不平を言うほどまた心をかたくなにしたので、わたしニーファイは兄たちにたくさんのことを語った。

23 さて、わたしニーファイは木で一つの弓を作り、まっすぐな枝で1本の矢を作った。それでわたしは、弓と矢、石投げと石で身を固め、「食糧を得るのにどこへ行ったらよいですか」と父に尋ねた。
24 そこで父は主に尋ねた。わたしが精力を込めて、彼らにたくさんのことを語ったので、わたしが語った言葉で父も家族もすでにへりくだっていたからである。
25 さて、主の声が父に聞こえて、主に対してつぶやいたことでひどく懲らしめられたので、父は深い悲しみに沈んだ。
26 そこで、主の声が父に、「球を見て、記してあることをよく心に留めなさい」と言われた。
27 そこで父は、球の上に記してあることを見て非常に恐れおののき、また兄たちもイシマエルの息子たちも、わたしたちの妻も同様に恐れおののいた。

28 そこで、わたしニーファイが球の中にある指針を見ると、それらは、わたしたちがそれに寄せる信仰と熱意と注意力に応じて働いた。
29 また、それらの指針の上には新しい言葉が記されていて、それは読みやすく、主の道についてわたしたちに理解を与えてくれるものであった。そしてその言葉は、わたしたちが寄せる信仰と熱意に応じて、時々書き替えられた。このようにして、主は小さな手段によって大いなることを成し遂げられることが分かるのである。
30 さて、わたしニーファイは球の上に現れた指示に従って、山の頂まで登って行った。
31 そして、野の獣を何頭もとったので、家族のための食糧が手に入った。

32 そこでわたしは、とった獣を運んで天幕に帰った。すると、わたしが食糧を手に入れたのを見たときの家族の喜びようは、大変なものであった。それで彼らは、主の前にへりくだり、主に感謝した。
33 さて、わたしたちは再び旅路に就き、初めとほぼ同じ道筋を進んで行った。そして、幾日もの間旅をした後、しばらくとどまるためにまた天幕を張った。

34 そして、イシマエルが死んで、ネホムという所に葬られた。
35 さて、イシマエルの娘たちは、父を亡くしたため、また荒れ野の中の苦難のために非常に嘆き悲しんだ。そして彼女たちは、自分たちをエルサレムの地から連れ出したのはわたしの父であったことから、父に向かってこうつぶやいた。「父は死んでしまいました。わたしたちは長い間荒れ野をさまよい、多くの苦難に遭い、飢えと渇きと疲労に苦しんできました。このような苦しみに遭った末に、結局荒れ野の中で飢えて滅びてしまうに違いないのです。」
36 イシマエルの娘たちはこのように、父とわたしに対してつぶやき、エルサレムに帰ることを望んだ。

37 レーマンは、レムエルとイシマエルの息子たちに言った。「父と弟ニーファイを殺してしまおうではないか。ニーファイは兄である我々の支配者となり、我々を教える者になっている。
38 彼は主が自分に語られたと言い、また天使が教え導いたとも言っている。しかし見よ、我々には、彼が偽りを言っていることが分かっている。彼はそのようなことを言いながら、策略をもって多くのことをなし、我々の目をくらまして、恐らくどこか見知らぬ荒れ野に我々を誘い込めると思っているのだろう。そして我々を誘い込んでしまったら、彼は我々の王となり、支配者となって、意のまま、思いのままに振る舞おうと思っているのだ。」兄のレーマンは、このようにして彼らの心をあおり立てて怒らせた。

39 さて、主はわたしたちとともにおられ、まことに主の声が聞こえて彼らに多くの御言葉を語り、彼らをひどく懲らしめられた。彼らは主の声によって懲らしめを受けると、怒りを静め、罪を悔い改めた。そして、主が再び食糧を与えて祝福されたので、わたしたちは滅びずに済んだ。


【動画】主はリーハイの旅を導かれる


第17章

ニーファイ、船を1隻造るように命じられる。ニーファイの兄たち、ニーファイに反抗する。ニーファイ、イスラエルに対する神の計らいの歴史を述べて兄たちに説き勧める。ニーファイ、神の力に満たされる。兄たち、枯れた葦のようにしおれてしまわないように、ニーファイに触れることを禁じられる。紀元前約592年から591年に至る。


01 さて、わたしたちはまた荒れ野の中を旅し、このときからはほぼ東の方へ進んで行った。わたしたちは旅をしながら、多くの苦難を乗り越えていった。そして妻たちは荒れ野の中で子供を産んだ。
02 そして、主の祝福が大変豊かであったので、妻たちは荒れ野で生肉を食べて暮らしていたのに、子供に乳を十分飲ませ、しかもまことに男のように強かった。彼女たちはつぶやかずに旅に耐えるようになった。
03 このように、神の命令は必ず成し遂げなければならないことが分かる。もし人の子らが神の戒めを守るならば、神は彼らを養い、強くし、また御自分が命じられたことを成し遂げる手段を与えられる。それで神は、わたしたちが荒れ野にとどまっていたときにも、わたしたちに手段を与えられた。

04 そしてわたしたちは、長い間、まことに8年もの間荒れ野の中にとどまった。
05 そして、果実と野蜜が豊かであることからバウンティフルと名付けた地に来た。これらのものはすべて、わたしたちが滅びないように主が備えてくださったのであった。わたしたちはここで海を見て、イリアンタムと名付けた。それは多くの水という意味である。
06 さて、わたしたちは海辺の近くに天幕を張った。わたしたちはこれまで多くの苦難や困難に、まことに書き尽くせないほど多くの苦難や困難に遭ったが、海辺に着いて非常に喜びを感じ、そこは果実が豊かであることから、その地をバウンティフルと名付けたのであった。

07 さて、わたしニーファイが、バウンティフルの地で何日も日を過ごしたところで、主の声が聞こえて、わたしに、「立って山へ行きなさい」と言われた。そこでわたしは、立って山へ行き、主に叫び求めた。
08 そこで主は、わたしに言われた。「わたしがこれから示す方法に従って、1隻の船を造りなさい。この大海を越えて、わたしがあなたの民を連れて行けるようにするためである。」

09 それでわたしは、「主よ、お示しくださった方法に従って船を造るための道具を造るには、どこへ行ってあらがねを見つけたらよろしいでしょうか」と言った。
10 そこで主は、その道具を造れるように、あらがねの見つかる場所をわたしに教えてくださった。
11 そこでわたしニーファイは、火を吹くためのふいごを獣の皮で作った。そして火を吹くためのふいごを作ってから、2個の石を打ち合わせて火をおこした。
12 荒れ野を旅するときに、主はこれまでわたしたちに、あまり火をおこすことを許されなかった。主が、「わたしがあなたがたの食物の味を良くするので、煮炊きするには及ばない。
13 わたしはまた、荒れ野であなたがたの光となろう。あなたがたがわたしの命令を守るならば、わたしはあなたがたの前に道を備えよう。したがって、あなたがたはわたしの命令を守るかぎり、約束の地に導かれるであろう。そして、あなたがたを導いているのがわたしであることを知るであろう」と言われたからである。
14 主はまた言われた。「あなたがたは約束の地に着いた後、主なるわたしが神であり、また主なるわたしがあなたがたを滅亡から救い出したこと、まことに、わたしがあなたがたをエルサレムの地から連れ出したことを知るであろう。」
15 それでわたしニーファイは、主の命令を守るように努め、また兄たちにも、忠実であり勤勉であるように勧めた。
16 さて、わたしは岩石から溶かし出したあらがねで道具を造った。

17 兄たちは、わたしが船を造ろうとするのを見ると、わたしのことをつぶやいて言った。「弟は愚か者だ。弟は船が造れると思っているし、この大海を渡れると思っている。」
18 このように、兄たちはわたしのことで不平を言い、働かなくてもよいようにと思っていた。彼らは、わたしに船が造れることを信じようとせず、またわたしが主から指示を受けていたことも、信じようとしなかったからである。
19 そこでわたしニーファイは、兄たちの心がかたくななためにひどく悲しんだ。すると兄たちは、わたしが悲しみだしたのを見て心の中で喜び、わたしのことでうれしく思ったほどで、このように言った。「おまえに船が造れないのは分かっていた。分別が足りないからだ。おまえには、そんな大仕事を成し遂げることはできない。
20 おまえは、心に浮かぶつまらない空想に惑わされた父によく似ている。まことに、父は我々をエルサレムの地から連れ出し、我々は長年の間荒れ野をさまよってきた。そして、我々の妻は身重の体で身を粉にして働き、荒れ野で子を産み、ただ死ななかっただけであらゆる苦しみに遭った。妻たちは、このような苦難に遭うくらいなら、エルサレムを出る前に死んだ方がましだった。
21 見よ、我々は、長年の間荒れ野で苦しんできたが、その間に自分たちの財産や受け継ぎの地を欲しいままにして、幸せに暮らせたかもしれない。
22 我々は、エルサレムの地にいた民が義の民であったことを知っている。なぜなら、彼らはモーセの律法に従って、主の掟と裁決と主のすべての戒めに従っていたからだ。だから我々は、彼らが義の民であることを知っている。ところが、父は彼らを裁いた。そして、我々が父の言葉に聞き従ったので、我々をエルサレムから連れ出した。弟は父によく似ている。」兄たちはこのような言葉でつぶやき、父とわたしに対して不平を言った。
23 そこで、わたしニーファイは兄たちに言った。「あなたがたは、イスラエルの子らであるわたしたちの先祖が、主の御言葉に聞き従わなかったとしても、エジプト人の手から導き出されていたと信じているのですか。
24 まことに、あなたがたは、主がモーセに彼らを奴隷の状態から導き出すように命じられなかったとしても、先祖が奴隷の状態から導き出されたと思っているのですか。
25 あなたがたは、イスラエルの子らが奴隷の状態になっていたことや、彼らが堪え難いほどの苦役を負っていたことを知っています。ですから、彼らが奴隷の状態から導き出されることが、彼らにとって良いことであったに違いないことを、あなたがたは知っているのです。
26 あなたがたは、モーセがあの大いなる業を行うように主から命じられたことを知っています。また、モーセの言葉によって紅海の水が右と左に分かれ、イスラエルの子らが乾いた地を渡ったことも知っています。
27 しかしあなたがたは、パロの軍勢であるエジプト人が、紅海でおぼれて死んでしまったことも知っています。
28 あなたがたはまた、イスラエルの子らが荒れ野において、マナで養われたことも知っています。
29 またモーセが、自分の内にある神の力によって言葉を発して岩を打ったところ、水がわき出し、これを飲んでイスラエルの子らが渇きをいやすことができたことも知っています。
30 彼らの神であり贖い主である主は、彼らに先立って進み、昼は彼らを導き、夜は彼らに光を与え、人が受けて益になるあらゆることを彼らのためにしてくださいました。そのようにして導かれたにもかかわらず、彼らは心をかたくなにし、思いをくらまして、モーセとまことの生ける神をののしりました。
31 そこで神は、御自分の御言葉のとおりに彼らを滅ぼし、御自分の御言葉のとおりに彼らを導き、御自分の御言葉のとおりに彼らのためにあらゆることを行われました。神の御言葉によらないで行われたことは何もありません。
32 そして、彼らがヨルダン川を渡ると、主は彼らを、その地に住む人々を追い散らして滅ぼすほどにまで強大にされました。
33 さて、この地の人々、すなわち、約束の地に住んでいてわたしたちの先祖に追い出された人々、あなたがたはその人々を義人だと思いますか。まことにわたしは、決してそうではなかったと言います。
34 あなたがたは、彼らがもしも義人であったなら、わたしたちの先祖は彼らよりもさらにえり抜かれた者になっていたと思いますか。わたしはそうではなかったと言います。
35 まことに、神はすべての人を公平に重んじられ、義にかなった者は神から恵みを受けます。しかしまことに、この民は、神のすべての御言葉を拒んで罪悪が熟しました。それで、神の満ちみちた激しい怒りが彼らに下り、主は彼らに対しては地をのろい、わたしたちの先祖のためには地を祝福されました。すなわち、彼らに対しては、地をのろって彼らを滅びに至らせ、わたしたちの先祖のためには、地を祝福してその地を治める力を得させてくださったのです。
36 まことに主は、人が住めるように大地を造り、それを所有できるように御自分の子供たちを造られました。
37 そして主は、義にかなった一つの国民を起こして、邪悪な者たちから成る諸国民を滅ぼされます。
38 そして主は、義人を貴い地へ導き、また悪人を滅ぼして、彼らのために地をのろわれます。彼らの行いがそうさせるのです。
39 天は主の御座であって、地は主の足台ですから、主は高く天にあって支配されます。
40 そして主は、主を神とする人々を愛されます。まことに、主はわたしたちの先祖を愛し、彼ら、すなわちアブラハム、イサク、ヤコブと聖約を交わされました。そして主は、御自分が交わした聖約を覚えておられます。それで、わたしたちの先祖をエジプトの地から導き出されたのです。
41 しかし、わたしたちの先祖がちょうどあなたがたのように心をかたくなにしたので、主は荒れ野で、杖をもって彼らを苦しい目に遭わせられました。主は、彼らの罪悪のために、彼らを苦しい目に遭わせられたのです。主は火の飛ぶ蛇を彼らの中に送り、また彼らがかまれた後で、癒される方法を備えられました。彼らがしなければならなかったことは、ただ目を向けて見るだけのことでしたが、その方法が単純であったため、すなわち容易であったために、死んだ人が大勢いました。
42 彼らは時々心をかたくなにし、モーセをののしり、また神をもののしりました。にもかかわらず、彼らが神のたぐいない力によって約束の地に導かれたことは、あなたがたがよく承知していることです。
43 そして、すべてこれらのことがあって、彼らは邪悪になり、まことにほぼ熟するほど邪悪になってしまいました。今日にも滅ぼされるかもしれません。囚われの身となってよそへ連れて行かれるわずかな者を除いて、彼らが滅ぼされる日が必ず来るに違いないことを、わたしは知っているからです。
44 そのために、主は父に荒れ野へ出て行くように命じられました。またユダヤ人が父の命を奪おうとしたこともありました。あなたがたもまた、父の命を奪おうとしたことがあります。したがって、あなたがたは心の中で人殺しをしたのであって、まるでユダヤ人のようです。

45 あなたがたは罪悪を行うのは早いけれども、主なるあなたがたの神を思い起こすのは遅い。あなたがたは一人の天使に会い、その天使はあなたがたに語りかけました。まことに、あなたがたはその声を時々聞いています。天使は静かな細い声で語りかけましたが、あなたがたは心が鈍っていたので、その言葉を感じることができませんでした。それで天使は雷のような声であなたがたに語りかけ、その声は、まるで引き裂くほどに大地を揺り動かしました。
46 またあなたがたは、主が全能の御言葉の力をもって、この大地を過ぎ去らせることがおできになることを知っています。また主が、御自分の御言葉によって起伏の激しい地を平らにし、平らな所を崩すことがおできになることを知っています。おお、それなのにどうしてあなたがたは、そのように心をかたくなにしていられるのですか。
47 まことに、わたしの心はあなたがたのことで苦しんで張り裂け、わたしの胸は痛みます。あなたがたがとこしえに捨てられてしまうことを、わたしは恐れます。まことに、わたしは神の御霊に満たされて、体の力がなくなりそうです。」

48 さて、わたしがこれらの言葉を語り終えると、兄たちはわたしに腹を立てて、わたしを海の深みに投げ込んでしまおうと思った。そして、兄たちがわたしを捕まえようとして近寄って来たところで、わたしは言った。「全能の神の御名によって命じる。わたしに手を触れるな。わたしは身が燃え尽きるほどに神の力に満たされているから、わたしに手をかける者はだれでも、枯れた葦のようにしおれてしまうであろう。また、神がその人を打たれるから、神の力の前に取るに足りない者となるであろう。」

49 そして、わたしニーファイは兄たちに、これからもう父に対してつぶやいてはならないこと、また神がわたしに船を造るように命じられたので、わたしとともに働くことを拒んではならないことを話した。
50 わたしはまた彼らに言った。「どのようなことでも神がわたしに命じられれば、わたしにはそれができる。もし、神がわたしにこの水に向かって『陸になれ』と言うように命じられれば、水は陸になる。わたしがそう言えば、そのとおりになる。
51 主がこのように偉大な力をお持ちになって、これほど多くの奇跡を人の子らの中で行われたとすれば、どうしてわたしに1隻の船を造ることを教えられないことがあろうか。」
52 さて、わたしニーファイが兄たちに多くのことを言ったので、兄たちは言い伏せられてわたしと言い争うことができず、それから長い間、あえてわたしに手をかけることも、指で触れることもしなかった。神の御霊が非常に力強かったので、兄たちはわたしの前で枯れてしまうことのないように、あえてそうしなかったのである。神の御霊は、それほどまでに彼らに働きかけられたのであった。

53 そして主は、「あなたの手を、もう一度あなたの兄たちに向けて伸ばしなさい。彼らはあなたの前で枯れはしないが、わたしは彼らの体を震えさせよう。こうするのは、わたしが主なる彼らの神であることを知らせるためである」と言われた。
54 そこでわたしが、片方の手を兄たちに向けて伸ばすと、兄たちはわたしの前で枯れはしなかったが、主は語られた御言葉のとおりに彼らの身を震えさせられた。

55 そこで兄たちは、「主がおまえとともにおられることが、確かに分かった。我々の身を震えさせたのが主の力であることが、分かっているからだ」と言い、わたしの前にひれ伏して、わたしを拝もうとした。しかし、わたしはそれをさせないで言った。「わたしはあなたがたの兄弟です。弟ではありませんか。ですから、主なるあなたがたの神を拝して、主があなたがたに授けてくださる地で長く暮らせるように、父と母を敬ってください。」


【動画】主は船を造るようニーファイに命じられる



【動画】船の建設


第18章

船が完成する。ヤコブとヨセフの誕生が述べられる。一行、約束の地に向かって出発する。イシマエルの息子たちとその妻たち、空騒ぎと反逆に加わる。ニーファイは縛られ、船はすさまじい暴風雨で吹き戻される。解き放されたニーファイが祈ると、嵐が静まる。一行、約束の地に着く。紀元前約591年から589年に至る。


01 さて、兄たちは主を拝して、わたしとともに出かけた。そしてわたしたちは、材木を入念な造りにこしらえた。主は船材をどのようにこしらえるかを、わたしに度々示してくださった。
02 またわたしニーファイは、人が学んだ方法で材木を細工することもなく、船も人の方法で造らなかった。わたしは、主がわたしに見せてくださった方法で船を造った。それで、それは人の方法とは違っていた。

03 わたしニーファイは度々山の中へ行き、度々主に祈った。それで、主はわたしに大いなることを示してくださった。

04 そして、わたしが主の言葉に従って船を造り上げると、兄たちはその出来栄えの良いのと、その造りが非常に見事なのを見た。それで兄たちは、再び主の前にへりくだった。

05 さて、主の声がわたしの父に聞こえ、わたしたちは立ち上がって船に乗り込むように言われた。
06 そしてその明くる日、わたしたちは主の命に従い、荒れ野でとった多くの木の実や肉、たくさんの蜂蜜、そのほかの食糧など、すべてのものの準備を終えてから、すべての荷物と種、また各々が年齢に応じて携えて来たすべての品物を持って、船に乗り込んだ。わたしたちは、妻子とともに一同が船に乗り込んだのである。
07 ところで父は、荒れ野にいた間に二人の息子をもうけており、兄の方をヤコブ、弟の方をヨセフといった。

08 さて、わたしたちは、命じられた食糧と品物を携えて、一同船に乗り終えると、海に乗り出し、約束の地に向かって追い風に吹かれて進んだ。

09 追い風に吹かれて多くの日が過ぎたところで、見よ、兄たちとイシマエルの息子たち、それにその妻たちは、浮かれて踊り歌い、多くの下品な話を始めた。まことに、彼らは、何の力によって自分たちがそこまで導かれて来たのかも忘れてしまうほどで、果ては非常に下品になってしまった。
10 それでわたしニーファイは、罪悪のために主が怒ってわたしたちを懲らしめられ、そのために、わたしたちが海の深みにのまれてしまうのではないかと、非常に恐れるようになった。そこでわたしニーファイは、兄たちに真剣に語り始めた。しかし、彼らはわたしに腹を立てて、「我々は弟に支配されたくない」と言った。
11 そしてレーマンとレムエルは、わたしを捕らえて縄で縛り、情け容赦なくわたしを扱った。それでも主は、悪人たちについてかねてから言われていた御言葉を成就して、御自分の力を現すために、これをそのままにしておかれた。

12 さて、彼らがわたしを縛って動けなくしてしまうと、主が用意された羅針盤の働きが止まってしまった。
13 そのため、彼らはどちらへ船を向けてよいか分からず、そのうえ大きな嵐、まことに激しくすさまじい暴風雨が起こり、わたしたちは3日間、海の上をもと来た方へ吹き戻された。彼らは海におぼれてしまうのではないかと非常に恐れたが、それでもわたしを自由にしてはくれなかった。

14 そして、風に吹き戻されてから4日目、暴風雨が非常に激しくなった。

15 そこでわたしたちは、まさに海の深みにのまれてしまいそうであった。そして4日間、海の上を吹き戻されたところで、兄たちは神の裁きが自分たちに及んでおり、罪悪を悔い改めなければ滅びてしまうに違いないことに気づき始めた。それで彼らはわたしのもとに来て、わたしの手首を縛っていた縄を解いたが、見よ、わたしの両方の手首は大きくはれ上がり、両方の足首もまたひどくはれて、その痛みは激しかった。

16 それでもわたしは神に頼り、1日中神を賛美し、わたしの遭った苦難のことで主に対してつぶやくことはしなかった。

17 ところで父リーハイは、彼らに多くのことを語り、またイシマエルの息子たちにも語ったが、見よ、彼らは、だれでもわたしのために言い開きをする人に対して、ひどい脅しの言葉を吐いた。両親は年も取っていて、また子供たちのためにひどく悲しい目に遭ったので、とうとう病の床に就いてしまった。
18 両親は、深い憂いとひどい悲しみと、兄たちの罪悪のために、この世から連れ去られて神と顔を合わせるばかりの状態となった。まことに、彼らの白髪は、葬られて地の中に低く横たわるばかりであり、まことに悲しくも、二人が大海の墓に投げ込まれるのは間近いことであった。

19 ヤコブとヨセフも幼くて、十分な栄養を必要としていたので、母の遭った苦難のことでつらい思いをした。また、わたしの妻や子供たちも涙を流し、また祈ったが、兄たちの心が和らいでわたしを解き放すには至らなかった。
20 兄たちを滅ぼそうと脅かした神の力のほかに、彼らの心を和らげることのできるものは何もなかった。そのようなわけで、兄たちは自分たちがまさに海の深みにのまれようとするのを見て、今までの行いを悔い改めて、わたしを解き放したのであった。

21 さて、兄たちがわたしを解き放したところで、見よ、わたしが羅針盤を手に取ると、それはわたしが望むように動いた。そこで、わたしは主に祈りをささげた。祈り終えると風がやみ、嵐が収まり、きわめて穏やかになった。

22 そこでわたしニーファイは、船の舵を取り、再び約束の地に向かって船を走らせた。

23 そして、幾日も航海した後、わたしたちは約束の地に着いた。そして陸に上がって天幕を張り、そこを約束の地と名付けた。

24 そしてわたしたちは、地を耕して種をまき始めた。まことに、エルサレムから持って来た種をすべて地にまいた。すると、この種は非常によく育った。そして、わたしたちは豊かな祝福を受けた。

25 そしてわたしたちは、荒れ野の中を旅したとき、この約束の地には森の中にあらゆる獣、すなわち雌牛と雄牛、またろばと馬、やぎと野やぎ、そのほか人の役に立つあらゆる獣がいるのを知った。またわたしたちは、金や銀や銅など、あらゆるあらがねも見つけた。


【動画】リーハイの家族,約束の地へ出帆する



【動画】海を渡る


第19章

ニーファイ、あらがねで版を造り、民の歴史を記録する。イスラエルの神は、リーハイがエルサレムを去ってから600年で来られる。ニーファイ、イスラエルの神が受けられる苦しみと十字架の刑について述べる。ユダヤ人は末日になるまでさげすまれ、散らされて、末日には主に立ち返る。紀元前約588年から570年に至る。


01 さて、わたしは主に命じられたので、民の記録を刻むためにあらがねで版を造った。そして、その版に父の記録と荒れ野での旅のこと、父の預言、またわたし自身が語った多くの預言を刻んだ。
02 わたしがその版を造ったときには、後に主から、別にこの版を造るように命じられるとは知らなかった。したがって、父の記録や先祖の系図、それに荒れ野での行動の大部分は、わたしが先に述べた最初の版に刻んである。それで、わたしがこの版を造る前に起こったことは、まことにいっそう詳しく最初の版に述べられている。
03 主の命令によってこの版を造った後で、わたしニーファイは、務めと預言、すなわちそれらの中で分かりやすくて貴重な部分を、この版に書き記すように命じられた。また、これからこの地を所有するわたしの民を教えるために、それにまた主が御存じである賢明な目的のために、この版に書き記されたことを保存するようにとの命を受けた。
04 それでわたしニーファイは、民の戦争と争いと滅亡のいきさつをいっそう詳しく述べる話を、ほかの版に記録した。わたしはこれを行ってから、わたしの死んだ後になすべきことを民に命じ、また主が後に命じられるまでは、これらの版を代々譲り伝え、また預言者から預言者へ譲り伝えるように命じた。
05 わたしはまた、後にこの版を造ったいきさつを述べるので、見よ、今はわたしがこれまで話したことに従って書き進める。わたしがこうするのは、より神聖な事柄が保存されて、それが民にとって知識となるようにしたいと思うからである。
06 それでもわたしは、神聖であると思うことでなければ、何事も版に書き記さない。そのようにすることで、もしもわたしが誤りを犯すなら、昔の人でも誤りを犯したのであるが、他人の例を引いて申し開きをするのではなく、ただ、肉においてのわたしの弱さのためであると申し開きをしよう。
07 ある人々が肉体にも霊にも大いに価値があると思うことを、ほかの人々が何とも思わないで足の下に踏みつけることがある。まことに、イスラエルの神ですら人々は足の下に踏みつける。足の下に踏みつけると言ったが、言い換えれば、彼らは神を取るに足りない者とし、その勧めの声に聞き従わないということである。
08 そして見よ、天使の言葉によれば、イスラエルの神は、父がエルサレムを去ってから600年後においでになる。
09 しかし、世の人々は自分たちの罪悪のために、この御方を取るに足りない者と判断する。それで彼らはこの御方を鞭打つが、この御方はそれに耐えられる。また彼らはその御方を打つが、この御方はそれにも耐えられる。まことに、彼らはこの御方につばきを吐きかけるが、この御方はそれにも耐えられる。それは、この御方が人の子らに対して愛にあふれた優しさと寛容に富んでおられるからである。
10 わたしたちの先祖の神、すなわち、わたしたちの先祖を奴隷の状態から救って、エジプトから導き出し、荒れ野の中で彼らを守られた神、まことに、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神は、あの天使の言葉のように一人の人として悪人たちの手に身をゆだねて、ゼノクの言葉のように上げられ、ニアムの言葉のように十字架につけられ、ゼノスの言葉のように墓に葬られるのである。ゼノスは3日間の暗闇について語ったが、それはこの御方が亡くなられるときのしるしであって、海の島々に住む者たち、特にイスラエルの家に属する者に与えられるしるしである。
11 預言者ゼノスは言った。「その日、主なる神は必ずイスラエルの家に属するすべての者に臨み、ある者には、彼らの義のゆえに御声をもって臨んで大きな喜びと救いを与え、またほかの者には、御力の起こす雷鳴と稲妻をもって、暴風雨、火、煙、暗黒の霧、地割れ、盛り上がる山々をもって臨まれる。」
12 預言者ゼノスはさらに言う。「これらのことは、すべて必ず起こる。そして地の岩は必ず裂ける。また大地がうなりを起こすので、海の島々にある多くの王は神の御霊に動かされて、『万物の神が苦しみに耐えておられる』と叫ぶ。」
13 またその預言者は言う。「エルサレムにいる者たちについて言えば、彼らはイスラエルの神を十字架につけ、自分たちの心を背けて、しるしも不思議も、またイスラエルの神の力と栄光をも顧みないために、すべての民から鞭打たれる。」
14 その預言者はまた言う。「彼らは心を背けて、イスラエルの聖者をさげすむので、肉にあってさまよい、滅びうせ、すべての国民の中であざけられ、笑いぐさとなり、憎まれる。」
15 その預言者はさらに言う。「それでも、彼らがもはやイスラエルの聖者に心を背けなくなる日が来れば、イスラエルの聖者は彼らの先祖と交わした聖約を思い起こされる。」
16 まことにそのときに、イスラエルの聖者は海の島々を思い起こされる。そして主は、預言者ゼノスの言葉のように、「わたしはイスラエルの家に属する民を、すべて地の四方から集めよう」と言われる。
17 その預言者は、「全地の人々は主の救いを見るようになり、すべての国民、部族、国語の民、民族が祝福される」と言う。
18 わたしニーファイがこれらのことを民に書き記すのは、彼らを促して、主なる彼らの贖い主を覚えさせるためである。
19 したがってわたしは、イスラエルの家のすべての者がこれらの記録を手に入れたときのために、イスラエルの家のすべての者に向かって語るのである。
20 見よ、エルサレムにいる人々のために、わたしの心は大いに立ち騒いでおり、全身の関節が緩むほど、わたしは疲れ果てている。もし主が、昔の預言者たちに示されたように、わたしを憐れんで、エルサレムにいる人々のことをわたしにも示されなかったら、わたしもまた滅びてしまっていたからである。
21 主は確かに、昔の預言者たちに、エルサレムにいる人々についてすべてのことを示され、またわたしたちについても多くの預言者に示された。それでこれらのことは、真鍮の版に書き記されているので、当然のことながら、わたしたちは彼らについて知っているのである。
22 さて、わたしニーファイは、兄たちにこれらのことを教えた。そして、主がほかの地で昔の人々の中で行われたことを、兄たちも知ることができるように、真鍮の版に刻まれている多くのことを読んで聞かせた。
23 わたしはまた、モーセの書に書き記してある多くのことを読んで聞かせたが、主なる贖い主を信じるようさらに十分に勧めるために、預言者イザヤが記したことを彼らに読んで聞かせた。すべての聖文を自分たちに当てはめて、それが自分たちの利益となり、知識となるようにするためであった。
24 それでわたしは兄たちに言った。「この預言者の言葉を聞いてください。イスラエルの家の残りの者であって、元木から折られた1本の枝である兄さんたち、イスラエルの家のすべての者に向けて書き記された預言者の言葉を聞いてください。そしてあなたがたの同胞、すなわちあなたがたはその同胞から折り取られた者ですが、その同胞と同様に望みを抱くことができるように、その言葉を自分自身に当てはめてください。この預言者はそのように書き記しているからです。」


【動画】約束の地での新しい暮らし


第20章

主はイスラエルに御自分の目的を示される。苦難の炉の中で選ばれたイスラエルは、バビロンから出る。イザヤ書第48章と比較せよ。紀元前約588年から570年に至る。

01 「イスラエルという名で呼ばれ、ユダの水から、すなわちバプテスマの水から出て、主の名によって誓い、イスラエルの神のことを口にしながら真実をもって誓わず、義をもっても誓わないヤコブの家よ、耳を傾けてこれを聞け。
02 しかし彼らは、自ら聖なる都の者であると言いながら、万軍の主であるイスラエルの神にとどまることをしない。まことに、万軍の主とは主の名である。
03 『見よ、わたしは、先にあったことを世の初めから告げ知らせてきた。それらはわたしの口から出、わたしはそれらを示した。わたしはにわかにそれらを示したのである。
04 わたしがそれを行ったのは、あなたが強情で、あなたの首が鉄の筋であり、あなたの額が真鍮であることを知っていたからである。
05 そこでわたしは、まさに世の初めからあなたに告げ知らせてきた。それが起こるに先立って、それらをあなたに示した。それらのことを示したのは、「わたしの偶像がそれらのことをした。わたしの彫像とわたしの鋳像がそれらのことを命じた」とあなたが言うことのないようにするためである。
06 あなたはこのことをすべて見聞きしてきた。それでもあなたは、それらのことを告げ知らせずにおくだろうか。これからわたしが示す新しいこと、隠されていたことさえも、告げ知らせずにおくだろうか。それらはあなたの知らなかったことである。
07 それらのことは、今造られたのであって、初めからあったのではない。あなたがそれらのことを聞く前から、それらのことは告げ知らされていた。それは、「見よ、わたしはそれらを知っている」とあなたが言うことのないようにするためである。
08 まことに、あなたは聞かなかった。まことに、あなたは知らなかった。まことに、あのときからあなたの耳は開かれなかった。それはあなたがひどく不真実で、また生まれながらにして背く者と呼ばれたことを知っていたからである。
09 にもかかわらず、わたしはわたしの名のために怒りを延ばし、わたしの誉れのために自らを制して、あなたを絶つことをしない。
10 見よ、わたしはあなたを精錬し、苦難の炉の中であなたを選んだからである。
11 わたし自身のために、まことにわたし自身のためにわたしはこのことを行う。それは、わたしはわたしの名が汚されるのを許さず、またわたしの栄光をほかの者に与えようとは思わないからである。
12 おお、ヤコブよ、わたしが召したイスラエルよ、わたしに聞き従え。わたしは神である。わたしは初めであり、また終わりである。
13 わたしの手は地の基を据え、わたしの右の手は天を測った。わたしが天地を呼ぶと、天地はともに立つ。』
14 あなたがたすべての者よ、皆集まって聞け。彼らの中でこれらのことを彼らに宣べたのはだれか。その人を主は愛された。まことに、その人は、彼らを通して告げ知らせてきた自らの言葉を成就し、その望むままをバビロンに行い、その腕をカルデヤ人のうえに下す。
15 主はまた、『主であるわたし、まことにわたしが語った。まことに、わたしは告げ知らせるためにその人を召し、その人を連れて来た。彼は自らの道を栄えさせるであろう』と言われる。
16 わたしに近づけ。わたしはひそかに語ったことはない。初めから、それが告げ知らされたときからわたしは語ってきた。そして、主なる神と主の御霊がわたしを遣わされた。
17 あなたの贖い主、イスラエルの聖者なる主はこのように言われる。『わたしがその人を遣わした。あなたの益となるように教え、あなたをその行くべき道に導く、主なるあなたの神がこれを行った。
18 おお、あなたはわたしの戒めに聞き従ったらよかったものを。そうすればあなたの平安は川のようで、またあなたの義は海の波のようであったであろう。
19 またあなたの子孫は砂のようであったであろう。あなたの腹から生まれる子は砂の粒のように多くなり、その子の名はわたしの前から絶たれることも、滅ぼされることもなかったであろう。』
20 バビロンから出よ。カルデヤから逃れよ。あなたがたは歌声をもって宣べ、これを伝え、地の果てに至るまで告げ知らせよ。すなわち、『主はその僕ヤコブを贖われた』と言え。
21 彼らは渇くことがなかった。主が彼らを導いて砂漠を行かせ、彼らのために岩から水をわき出させられた。岩を割られると水がほとばしり出たのである。
22 すべてこのことや、これよりもさらに偉大なことを行ってきたにもかかわらず、『悪人には平安がない』と主は言われる。」

第21章

メシヤは異邦人の光となり、捕らえられている者を解放される。終わりの時に、イスラエルは力をもって集められる。王たちが彼らの養父となる。イザヤ書第49章と比較せよ。紀元前約588年から570年に至る。

01 「再び言う。聴け、おお、あなたがたイスラエルの家よ、わたしの民の牧者たちの悪事のために折り取られ、追い出されたあなたがたすべての者よ、まことに、わたしの民であって、折り取られ、広く散らされたあなたがたすべての者よ、おお、イスラエルの家よ。おお、もろもろの島よ、わたしに耳を傾けよ。あなたがた遠くの民よ、聴け。わたしが胎内にいたときから主はわたしを召し、わたしが母の腹の中にいるときから主はわたしの名を口にされた。
02 主は、わたしの口を鋭い剣のようにして、御手の陰にわたしを隠し、わたしを研ぎ澄ました矢として、その矢筒の中にわたしを隠された。
03 そしてわたしに言われた。『おお、イスラエルよ、あなたはわたしの僕である。わたしはあなたによって栄光を得よう。』
04 そのとき、わたしは言った。『わたしはいたずらに働き、益なくむなしく力を費やした。まことに、わたしへの裁きは主とともにあり、わたしの働きは神とともにある。』
05 わたしが胎内にいたときから、ヤコブを再び主に連れ戻すためにわたしを僕とされた主は言われる。『イスラエルがたとえ集められなくても、わたしは主の目にかなって栄光を得、わたしの神はわたしの力となる。』
06 主は言われた。『あなたをわたしの僕としてヤコブのもろもろの部族を起こさせ、イスラエルの守られてきた者たちを回復させるのは、小さなことである。わたしはまたあなたを異邦人の光とし、地の果てまでわたしの救いとしよう。』
07 イスラエルの贖い主、イスラエルの聖者なる主は、人に侮られる者、もろもろの国民に忌み嫌われる者、治める者の僕に向かって、『主が真実であるためにもろもろの王は見て立ち上がり、もろもろの王子も拝する』と言われる。
08 主はこう言われる。『おお、海の島々よ、わたしは心にかなったときにあなたの言葉を聞き、救いの日にあなたを助けた。わたしはあなたを守り、民への聖約として、わたしの僕をあなたに与えて地を築かせ、荒れ果てた受け継ぎの地をあなたに継がせよう。
09 あなたは捕らえられている者たちに「出よ」と言い、暗闇に座している者たちに「現れよ」と言うことができる。彼らは道すがら食物を食べ、その牧場はすべての高い所にある。
10 彼らは飢え渇くことがなく、熱も太陽も彼らを悩ますことはない。彼らに憐れみの心を持つ者が彼らを導き、泉のほとりに彼らを連れて行くからである。
11 わたしはあらゆる山を道とし、わたしの大路を高くする。
12 そして、おお、イスラエルの家よ、見よ、これらの者は遠くから来る。見よ、これらの者は北から、西から、またシニムの地から来る。』
13 おお、天よ、歌え。おお、地よ、喜べ。東にいる者たちの歩みが定まるからである。おお、もろもろの山よ、声を放って歌え。彼らはもはや打たれることがないからである。主は御自分の民を慰め、また苦しむ者に憐れみをかけられるからである。
14 しかし見よ、シオンは言った。『主はわたしを見捨てられた。わたしの主はわたしを忘れられた。』しかし、主はそうされなかったことを示される。
15 『女が乳飲み子を忘れ、自分の産んだ子を哀れまないことがあろうか。まことに、たとえ女たちが忘れようとも、おお、イスラエルの家よ、わたしはあなたを忘れない。
16 見よ、わたしはあなたを、わたしの手のひらに彫り刻んだ。あなたの石垣はいつもわたしの前にある。
17 あなたの子孫は、あなたを滅ぼす者たちに速やかに立ち向かい、あなたを荒らした者たちは、あなたから出て行く。
18 あなたの目を上げて辺りを見回せ。これらの者は、皆集まってあなたのもとに来る。』主はまた言われる。『わたしが生きているように確かに、あなたは彼らを皆飾り物のように身にまとい、花嫁のように彼らを帯に結ぶ。
19 あなたの荒れ衰えた所、あなたの荒廃した所、そしてあなたの滅びの地は、今に人が住むには狭すぎるようになり、あなたをのみ尽くした者たちは遠く離れ去る。
20 あなたが最初の子供たちを失った後に授かる子供たちは、再びあなたの耳もとで言う。「この場所はわたしには狭すぎます。わたしが住めるように場所を与えてください。」
21 そのとき、あなたは心の中で言う。「だれがこれらの者を産んだのか。わたしは自分の子供たちを失い、子供を授からず、囚われの身となってあちらこちらをさまよい歩いたのに。だれがこれらの者たちを育てたのか。見よ、わたしは独り残されていたのに、これらの者たちはどこにいたのか。」』
22 主なる神はこう言われる。『見よ、わたしは異邦人に向かって手を挙げ、もろもろの民に向かってわたしの旗を掲げよう。すると彼らはあなたの息子たちを腕に抱き、あなたの娘たちを肩に乗せて来る。
23 王たちはあなたの養父となり、王妃たちはあなたの養母となる。彼らは顔を地に向けてあなたに身をかがめ、あなたの足のちりをなめる。こうしてあなたは、わたしが主であることを知る。わたしを待ち望む者は恥を受けないからである。
24 勇士から獲物をどうして取り返せようか。また正当な捕虜をどうして救い出せようか。』
25 しかし、主はこのように言われる。『勇士の捕らえた捕虜さえ取り返され、荒々しい者に奪われたものさえ奪い返される。わたしはあなたと争う者と争い、またあなたの子供たちを救うからである。
26 わたしは、あなたを虐げる者に彼ら自身の肉を食わせる。彼らは、甘いぶどう酒に酔うように自分の血に酔う。こうしてすべての者は、主なるわたしがあなたの救い主、あなたの贖い主、ヤコブの力ある者であることを知るようになる。』」

第22章

イスラエルはやがて地の全面に散らされる。終わりの時に、異邦人は福音でイスラエルを養い育てる。イスラエルは集められて救われる。悪人はわらのように燃える。悪魔の王国は滅ぼされ、サタンは縛られる。紀元前約588年から570年に至る。

01 さて、わたしニーファイが、真鍮の版に刻んであるこれらのことを読み終えると、兄たちがやって来てわたしに言った。「おまえが読んだこれらのことはどういう意味なのか。見よ、これらのことは肉によるのではなく、霊によって起こる霊的なこととして解釈するのか。」
02 そこでわたしニーファイは、彼らに言った。「これらのことは御霊の声によって、その預言者に示されたものです。すべてのことは御霊によって預言者たちに知らされ、肉において人の子らに起こるからです。
03 ですからわたしが読んだことは、現世のことにも霊的なことにもかかわることです。イスラエルの家は遅かれ早かれ地の全面に、またすべての国民の中に散らされると思われるからです。
04 まことに、エルサレムにいる人たちにとって、すでに行方の分からなくなっている人が大勢います。まことに、全部族の大半がすでに連れ去られ、海の島々のここかしこに散らされています。わたしたちは、彼らが連れ去られたことだけは知っていますが、どこにいるかはだれも知りません。
05 これらのことは、彼らが連れ去られて以来彼らにかかわることとして預言されており、また、これからイスラエルの聖者によって散り乱されるすべての人についても預言されています。それは、彼らがイスラエルの聖者に対して心をかたくなにし、そのためにすべての国民の中に散らされ、すべての人から憎まれるようになるからです。
06 にもかかわらず、彼らが異邦人に養い育てられた後、主は異邦人のうえに御手を挙げ、異邦人を旗として立てられます。そして異邦人は、イスラエルの子らを腕に抱き、娘らを肩に乗せて来ます。まことに、ここで言われていることは必ずこの世で起こることです。主がわたしたちの先祖と、そのように聖約を交わされたからです。これらのことは、これからのわたしたちのことを指し、またイスラエルの家に属するすべての同胞のことも指しているのです。
07 またそれは、イスラエルの家に属するすべての者がことごとく散り乱されてから、主なる神がまことにこの地の面において、異邦人の中に一つの強大な国民を起こされ、彼らによってわたしたちの子孫が散らされる時が来ることを指しています。
08 そして、わたしたちの子孫が散らされてから、主なる神はわたしたちの子孫にとって大いに価値のある驚くべき業を、異邦人の中で始められます。それでこれは、わたしたちの子孫が異邦人に養われ、その腕に抱かれ、その肩に乗せられて来るのにたとえられます。
09 それは、異邦人にとっても価値のあるものです。また、異邦人だけでなく、イスラエルの家に属するすべての者にとっても価値のあるものであって、天の御父がアブラハムに対して、『あなたの子孫により、地のすべての部族は祝福を受けるであろう』と言われた聖約が、これで知らされるのです。
10 天の御父が、もろもろの国民の目の前にその御腕を現されないかぎり、地のすべての部族が祝福を受けることはないということを、わたしは兄さんたちに知ってほしいと思います。
11 それで主なる神は、イスラエルの家に属する者たちに聖約と福音をもたらし、やがて、すべての国民の目の前にその御腕を現されるのです。
12 それで主は、イスラエルの家の者たちを囚われの身から再び連れ出されます。彼らはその受け継ぎの地に集められます。そして暗闇から、また暗黒から連れ戻されます。彼らは、主が自分たちの救い主、贖い主、イスラエルの力ある者であることを知るのです。
13 また、全地の淫婦であるあの大きな忌まわしい教会の人々の流した血は、彼ら自身の頭にはね返ります。彼らは互いに戦争をして、自分の手に持つ剣を自分の頭上に落とし、自分自身の血を飲んで酔うからです。
14 おお、イスラエルの家よ、あなたと戦うすべての国民は互いに敵対し、主の民を陥れようとして掘った穴に自分が落ちてしまうでしょう。そしてシオンに向かって戦う者は皆滅び、主の正しい道を曲げたあの大淫婦、まことに、あの大きな忌まわしい教会は地に崩れ落ちますが、その倒れ方はひどいでしょう。
15 まことに、預言者は言っています。『サタンがもはや人の子らの心を支配できなくなる時が、速やかに来る。すべて高ぶる者と悪を行う者がわらのようになる日が、すぐに来るからである。彼らが焼かれる日が来る。
16 すべての人の子らに神の満ちみちる激しい怒りが注がれる日が、速やかに来る。神は、悪人が義人を滅ぼすのを許されないからである。
17 そのため神は、満ちみちる激しい怒りを下し、義人を守るために火をもって敵を滅ぼすことになっても、御自分の力によって義人を守られる。したがって、義人は恐れるには及ばない。たとえ火によってでも、彼らは救われるであろう。』預言者はそのように言っています。
18 まことに、兄さんたち、あなたがたに言います。これらのことは間もなく必ず起こります。まことに、血と、火と、立ち込める煙は必ず及びます。これらのことは、この大地の面で起こるに相違なく、人々がイスラエルの聖者に対して心をかたくなにするならば、肉において人々に及ぶのです。
19 まことに義人は滅びません。シオンに敵対して戦う者たちがすべて絶たれる時が、必ず来るからです。
20 そして主は、確かに御自分の民のために方法を設けて、モーセの言葉を成就されます。モーセは言いました。『主なるあなたがたの神は、あなたがたのために、わたしのような預言者を一人お立てになる。その預言者があなたがたに語るすべてのことに耳を傾けなさい。その預言者に耳を傾けない者はすべて、民の中から絶たれるであろう。』
21 さて、わたしニーファイはあなたがたに言明します。モーセが語ったこの預言者とはイスラエルの聖者のことです。ですからこの御方は、義をもって裁きをされます。
22 義人は打ち破られることのない人々ですから、恐れるには及びません。恐れるのは悪魔の王国であって、これは人の子らの中に築かれる王国で、肉体を持つ人々の中に設けられます。
23 利を得るために設けられるすべての教会、人のうえに支配権を得ようと設けられるすべての教会、世の人々の目にかなって評判を得るために設けられる教会、肉欲やこの世のものを求め、あらゆる罪悪を行う教会、要するに、悪魔の王国に属するすべての教会が恐れて震えおののく日が、速やかに来ます。これらの教会は地に引き倒され、わらのように焼き尽くされなければならないのです。これはあの預言者の言葉のとおりです。
24 また、義人が牛舎から出る子牛のように必ず導かれ、イスラエルの聖者が主権と威勢と力と大いなる栄光をもって必ず統治される日が、速やかに来ます。
25 そして聖者は、地の四方からその子らを集め、その羊を数えられ、羊は聖者を知るようになります。それから一つの群れ、一人の羊飼いとなって、聖者は御自分の羊を養われ、羊は聖者によって牧草を見いだします。
26 また、聖者の民の義のために、サタンはまったく力を持たず、長い年月にわたって解き放されることはありません。民が義のうちに住み、イスラエルの聖者が統治されるので、サタンは彼らの心を支配する力を持たないからです。
27 さてまことに、わたしニーファイはあなたがたに言います。これらのことはすべて、必ず肉において起こるのです。
28 しかしまことに、すべての国民、部族、国語の民、民族は、もしも悔い改めるならば、イスラエルの聖者によって安全に暮らせるでしょう。
29 ところでわたしニーファイは、これらのことについてあえてこれ以上語ろうと思わないので、これで終わりにします。
30 そこで兄さんたち、わたしはあなたがたに、真鍮の版に書き記されている事柄が真実であることを知ってほしいのです。これらの事柄は、人が神の戒めに従順でなければならないことを証しています。
31 ですから、わたしと父だけが証をし、神の戒めを教えたのだと考える必要はありません。あなたがたは、神の戒めに従順で最後まで堪え忍ぶならば、終わりの日に救われるでしょう。まことにそのとおりです。アーメン。」