モルモン書




第1章

アマロン、神聖な数々の記録についてモルモンに指示を与える。ニーファイ人とレーマン人の間に戦争が始まる。3人のニーファイ人、よそに連れ去られる。悪事と不信仰が広がり、魔術と魔法が広く行われる。紀元約321年から326年に至る。

01 さて、わたしモルモンは、自分がこれまでに見聞きしたことを記録して、これをモルモン書と呼ぶ。

02 アマロンは数々の記録を主に託して隠したころ、わたしのところにやって来た。(当時わたしは10歳くらいで、わたしの民の教育方法に従ってかなり教育を受け始めていた。)そして、アマロンはわたしに言った。「わたしはあなたがまじめな子供で、観察が鋭いことを知っている。

03 だから、あなたが24歳くらいになったら、この民についてあなたが見てきたことを思い出してもらいたい。そして、その年齢になったら、アンタムの地の、シムと呼ばれる丘へ行きなさい。そこにわたしは、この民のことが刻まれているすべての神聖な記録を、主に託して隠してある。
04 見よ、あなたはニーファイの版を取り出し、残りの版は今それがある場所にそのままにしておきなさい。そして、この民についてあなたが見てきたことをすべてニーファイの版に刻みなさい。」
05 わたしモルモンはニーファイの子孫であり(わたしの父の名もモルモンであった)、わたしはアマロンから命じられたことを思い出した。

06 さて、わたしは11歳のとき、父に連れられて南方の地、ゼラヘムラへ行った。
07 地の全面が建物でいっぱいであり、人々はまるで海の砂のように大勢であった。
08 さてこの年に、ニーファイ人とヤコブ人、ヨセフ人、ゾーラム人から成るニーファイ人の間に戦争が始まった。この戦争は、ニーファイ人に対して、レーマン人とレムエル人とイシマエル人が戦ったものであった。
09 ところで、レーマン人とレムエル人、それにイシマエル人はレーマン人と呼ばれていたので、この戦いはニーファイ人とレーマン人との間で行われたものであった。
10 さて、その戦争は、シドンの水のそばにあるゼラヘムラの境で始まった。
11 そしてニーファイ人は、30000人を越える大勢の兵を集めていた。この年に彼らは何度も戦い、ニーファイ人はレーマン人を打ち負かして、多くの者を殺した。
12 そこでレーマン人は彼らの企てを捨て、地は平和になった。そして、およそ4年間平和が続き、まったく流血がなかった。

13 しかし、悪事が全地の面に広がったので、主は御自分の愛する弟子たちをよそに連れ去ってしまわれた。そして、民の罪悪のために、奇跡と癒しの業はやんだ。
14 また、民の悪事と不信仰のために、主から何の賜物も与えられず、聖霊はだれにも降られなかった。

15 わたしは15歳で、多少まじめな心の持ち主であったので、主の訪れを受け、イエスの慈しみを味わって知った。

16 そこで、わたしはこの民に教えを説こうとしたが、わたしの口は閉じられ、彼らに教えを説くことを禁じられた。見よ、彼らが神に故意に背いたからである。また、愛された弟子たちは、民の罪悪のためにその地からよそに連れ去られてしまった。
17 しかし、わたしは民の中に残った。それでも、彼らの心がかたくなであったので、彼らに教えを説くことは禁じられた。そして、彼らがかたくなであったので、地は彼らのためにのろわれた。
18 また、レーマン人の中にいたガデアントンの強盗たちが、この地を荒らし回ったので、この地に住む者たちは、自分たちの宝を地中に隠すようになった。ところが、主がすでに地をのろっておられたので、彼らの宝はなくなりやすくなってしまい、彼らはそれらの宝を保つことも、再び所有することもできなくなった。
19 そして、魔術と魔法と呪術が行われ、悪しき者の力が地の全面に働いて、まことにアビナダイの言葉とレーマン人のサムエルの言葉がすべて事実となったのであった。


【動画】モルモンとその教え


第2章

モルモン、ニーファイ人の軍隊を率いる。流血と虐殺が地に広がる。ニーファイ人、罰の定めを受ける者の苦しみを思い、嘆き悲しむ。ニーファイ人のための猶予の日は過ぎ去る。モルモン、ニーファイの版を取り出す。戦争が続く。紀元約327年から350年に至る。


01 さて、その同じ年に、ニーファイ人とレーマン人の間で再び戦争が始まった。そして、わたしは若かったにもかかわらず、身の丈が高かったので、ニーファイの民はわたしを彼らの指揮官に、すなわち彼らの軍の指揮官に任命した。
02 そこでわたしは、16歳になる年に、ニーファイ人の軍隊を率いてレーマン人に向かって出て行った。当時、すでに326年が過ぎ去っていた。
03 さて、第327年に、レーマン人が非常に大きな力で攻めて来たので、わたしの軍隊は彼らにおびえて戦おうとせず、北の地方に向かって退却し始めた。
04 そして、わたしたちはアンゴラの町に着いて、その町を占領し、レーマン人に対して自衛する準備をした。わたしたちは力のかぎりその町の防備を固めた。しかし、わたしたちは防備を固めたにもかかわらず、レーマン人に攻められ、その町から追い出された。
05 わたしたちはまた、彼らによってダビデの地からも追い出された。
06 そこで、わたしたちは軍隊を進め、海岸に近い西の境にあるヨシュアの地に着いた。
07 そしてわたしたちは、自分たちの民を一団として集めることができるように、可能なかぎり速やかに民を集めた。
08 しかし見よ、地には強盗とレーマン人が満ちていた。また、ひどい滅亡がわたしの民に迫っていたにもかかわらず、わたしの民は、自分たちの邪悪な行いを悔い改めなかった。そのために、地の全面でニーファイ人とレーマン人の双方に流血と虐殺が広がった。それは地の全面に広がった一つの完全な変革であった。
09 さて、レーマン人には王がおり、その名をアロンといった。彼は44000人の軍隊を伴って、わたしたちを攻めて来た。そこで見よ、わたしは、42000人で彼らに立ち向かった。そして、自分の軍隊で彼を打ち負かし、彼はわたしの前から逃げ出した。そのようなことがあって、330年が過ぎていった。
10 さて、ニーファイ人は自分たちの罪悪を悔い改めるようになり、預言者サムエルによって預言されたように叫び始めた。その地に盗人と強盗と人殺しがおり、また呪術と魔法が行われていて、見よ、だれも自分のものを保っておくことができなかったからである。
11 その結果、これらのことのために全地に嘆きと悲しみが起こった。しかも、特にニーファイの民の中でそれがひどかった。
12 さて、わたしモルモンは、彼らの悲しみと嘆きと、主の前での彼らの悲嘆ぶりを見ると、心の中で喜び始めた。わたしは主の憐れみと寛容を知っていたので、主が彼らに憐れみをかけてくださり、彼らが再び義にかなった民になるであろうと思ったからである。
13 しかし見よ、わたしのこの喜びは無駄であった。彼らの悲しみは、神の慈しみを思って悔い改めに至るものではなかった。それはむしろ、彼らに罪のあるままで幸福になるのを主がいつでも許そうとなさらないことに対する悲しみであり、罰の定めを受ける者の悲しみと同じであった。
14 彼らは、打ち砕かれた心と悔いる霊をもってイエスのもとに来ることをせずに、神をのろい、死ぬことを願った。それでも彼らは、自分の命を守るために剣で戦おうとした。
15 そこで、わたしの悲しみが再び戻ってきた。わたしは、彼らのための猶予の日が、この世的にも霊的にも過ぎ去ってしまったことを知ったのである。わたしの民が、何千人も自分たちの神に公然と背いた状態で切り倒され、糞のように地の面に積み上げられているのを見たからである。このようにして、344年が過ぎ去った。
16 さて、ニーファイ人は第345年にレーマン人の前から逃げ始め、追撃されて、とうとうジェションの地に至った。レーマン人は、退却しているニーファイ人をその地まで止めることができなかった。
17 ところで、ジェションの町は、アマロンが主に託して数々の記録を隠して損なわれないようにした地の近くにあった。そこで見よ、わたしは、アマロンの言葉のとおりに行ってニーファイの版を取り出し、アマロンの言葉に従って記録した。
18 わたしはニーファイの版に、あらゆる悪事と忌まわしい行いを残らず記録した。しかし、この版に彼らのあらゆる悪事と忌まわしい行いを残らず記録することは控えた。それは見よ、わたしが人の道を十分に見られるようになって以来、いつも悪事と忌まわしい行いがわたしの目の前に絶えなかったからである。
19 彼らの悪事のためにわたしは悲しい。彼らの悪事のために、わたしの心は日々いつも悲しみに満たされてきた。それでも、わたしは自分が終わりの日に高く上げられることを知っている。
20 さてこの年に、ニーファイ人は再び狩り出され、追われた。そして、わたしたちは北方へ、セムと呼ばれる地に着くまで追い立てられた。
21 そしてわたしたちは、セムの町の防備を固め、わたしたちの民を滅亡から救えるように、できるだけ大勢民を集めた。
22 さて、第346年に、レーマン人は再びわたしたちを攻め始めた。

23 そこでわたしは、自分の民に語り、レーマン人の前に断固として立ちはだかって自分たちの妻子と家と家庭を守るために戦うように、大いに力を込めて彼らに勧めた。
24 すると彼らは、わたしの言葉で多少奮い立ったので、レーマン人の前から逃げることなく、勇ましく彼らに立ち向かった。
25 そしてわたしたちは、30000人の軍隊で50000人の軍隊と戦い、彼らがわたしたちの前から逃げ出すほどにしっかりと彼らの前に立ちはだかった。

26 そして、彼らが逃げ出すと、わたしたちは軍隊を率いて追撃し、再び彼らと戦いを交えて、彼らを打ち負かした。それでも、主の力はわたしたちに伴っていなかった。主の御霊はわたしたちの内にとどまっておらず、自分の力に頼るしかなかったので、わたしたちはすでに同胞のように弱くなっていた。
27 わたしの民の受けたこの大きな災いと、また民の悪事と忌まわしい行いのために、わたしの心は悲しみに沈んだ。しかし見よ、わたしたちは、レーマン人とガデアントンの強盗たちに向かって出て行き、再びわたしたちの受け継ぎの地を取り返した。
28 第349年が過ぎ去った。第350年に、わたしたちはレーマン人およびガデアントンの強盗たちと条約を結び、その条約によって分割された受け継ぎの地を得た。
29 レーマン人は北方の地を、南方の地に通じる地峡までわたしたちに譲り、わたしたちは南方の地をすべてレーマン人に譲った。

第3章

モルモン、ニーファイ人に悔い改めを叫ぶ。ニーファイ人、大勝利を収め、自分自身の強さを誇る。モルモン、民の指揮を執ることを断る。モルモン、祈りがかなえられるという信仰のないまま民のために祈る。『モルモン書』は、福音を信じるようにイスラエルの12部族を招くものである。紀元約360年から362年に至る。

01 さて、レーマン人は再び攻めて来ることなく10年が過ぎ去った。見よ、その間に、わたしは自分の民、ニーファイ人を使い、戦いのときのために土地と武器を備えさせた。

02 そして、主はわたしに言われた。「この民に、『悔い改めてわたしのもとに来てバプテスマを受け、わたしの教会を再建しなさい。そうすれば、あなたがたは救われる』と宣言しなさい。」
03 そこでわたしはこの民に宣言したが、無駄であった。これまで彼らの命を助け、彼らに悔い改めの機会を与えてこられたのが主であることを、彼らは悟っていなかった。そして見よ、彼らは主なる神に対して心をかたくなにした。
04 さて、この10年目が過ぎ去り、キリストの来臨から数えて360年目になると、レーマン人の王がわたしに手紙を送ってきた。そして、彼らが再びわたしたちを攻める準備をしていることを知らせてきた。
05 そこでわたしは、自分の民をデソレションの地に、すなわち南方の地に通じる地峡のそばの境の地にある町に集めた。
06 わたしたちはまた、レーマン人の軍隊を阻止し、わたしたちの土地を少しも占領させないように、軍隊を配置した。そのように、わたしたちは総力を挙げて彼らに対する防備を固めた。
07 さて第361年に、レーマン人はわたしたちと戦うためにデソレションの町に下って来た。しかしその年に、わたしたちは彼らを打ち負かしたので、彼らは自分たちの土地へ引き返した。
08 第362年に、彼らは戦うためにまた下って来たが、わたしたちはまた彼らを打ち負かして大勢を殺した。そして、彼らの死体は海に投げ込まれた。

09 ところが、わたしの民ニーファイ人は、このような大きな戦果を得たため、自分たちの力を誇るようになるとともに、また敵に殺された同胞の血の報復をすると天の前に誓い始めた。
10 彼らは敵と戦うために上って行って、地の面から敵を絶つと、天にかけて、また神の御座にかけて誓った。
11 そこでわたしモルモンは、この民の悪事と忌まわしい行いのために、彼らの司令官となり指揮官となることを、このとき以来きっぱりと断るようにした。
12 見よ、わたしはこれまで彼らを導いてきた。彼らの悪事があったにもかかわらず、わたしは何度も彼らを率いて戦い、またわたしの内にある神の愛によって、心を尽くして彼らを愛してきた。また、彼らのために終日心を注ぎ出して神に祈った。それでも、彼らの心がかたくなであったので、祈りがかなえられるという信仰はわたしになかった。
13 わたしはこれまで3度、民を敵の手から救い出したが、彼らは自分たちの罪を悔い改めなかった。
14 そして彼らが、わたしたちの主であり救い主であるイエス・キリストによって禁じられていた、すべてのものにかけて、自分たちは敵のところに上って行って戦い、同胞の血の報復をすると誓ったとき、見よ、主の声がわたしに聞こえてこう言われた。
15 「報復はわたしのすることである。わたしが報復する。この民はわたしによって救い出された後に悔い改めなかったので、見よ、地の面から絶たれる。」
16 さて、わたしは敵に向かって上って行くことをきっぱりと断り、主から命じられたとおりにした。わたしは、将来起こることについて証をされた御霊の示しのとおりに、自分が見聞きしたことを世の人々に明らかにする証人になった。
17 したがって、異邦人よ、わたしはあなたがたに書き伝える。また、イスラエルの家よ、あなたがたが自分の受け継ぎの地に帰る用意をする、その業が始まるときに読めるように、あなたがたにも書き伝える。
18 まことに見よ、わたしは地の果てに至るすべての人に書き伝える。イエスがエルサレムの地で御自分の弟子となるように選ばれた12人から、自分の行いに応じて裁きを受けるイスラエルの12部族よ、あなたがたにも書き伝える。
19 わたしはまた、この地でイエスが選ばれた12人から同じく裁きを受ける、この民の残りの者にも書き伝える。この12人は、イエスがエルサレムの地で選ばれた、別の12人から裁きを受けるであろう。
20 これらのことは、御霊がわたしに示してくださった。そこで、わたしはあなたがた全員に書き伝える。わたしがあなたがたに書き伝えるのは、あなたがた全員が、まことにアダムの全人類家族に属するすべての人が、キリストの裁きの座の前に立たなければならないこと、あなたがたの行いが善いか悪いか、自分の行いについて裁かれるために立たなければならないことを、あなたがたに知らせるためであり、
21 また、将来あなたがたの中にあるイエス・キリストの福音を、あなたがたに信じさせるためであり、また、主の聖約の民であるユダヤ人に、彼らがかつて殺したイエスがまことのキリストであり、まことの神であられることを知らせることになっている、彼らの見聞きした証人以外の別の証人を与えるためである。
22 わたしは地の果てに至るすべての人に、悔い改めてキリストの裁きの座に立つ備えをするように説き勧めることができればと願っている。

第4章

戦争と虐殺が続く。悪人が悪人を罰する。これまでイスラエル全体のどこにもなかったひどい悪事が広がる。女子供が偶像のいけにえにされる。レーマン人、ニーファイ人を一掃し始める。紀元約363年から375年に至る。

01 さて、第363年に、ニーファイ人はレーマン人と戦うために、デソレションの地から彼らの軍隊とともに上って行った。
02 さて、ニーファイ人の軍隊はデソレションの地に追い返された。そして、彼らがまだ疲れているうちに、レーマン人の新手の軍隊が彼らを攻めた。そして、激しい戦いがあって、レーマン人がデソレションの町を占領し、多くのニーファイ人を殺し、多くの者を捕虜にした。
03 残りの者は逃げて、テアンクムの町に住む者たちに合流した。テアンクムの町は海岸に近い境の地にあり、デソレションの町にも近かった。
04 ニーファイ人が討たれ始めたのは、彼らの軍隊がレーマン人のところに上って行ったためである。もしそのようにしなければ、レーマン人はニーファイ人を支配する権力を持てなかったであろう。
05 しかし見よ、神の裁きは悪人に下る。そして、悪人によって悪人が罰せられる。人の子らの心をあおり立てて流血を生じさせるのは悪人だからである。
06 さて、レーマン人はテアンクムの町を攻める準備を整え、
07 そして、第364年に、テアンクムの町も占領しようとして、テアンクムの町を攻めた。
08 さて、彼らはニーファイ人によって撃退され、追い返された。するとニーファイ人は、自分たちがレーマン人を追い払ったのを見て、またもや自分たちの力を誇った。そして彼らは、自分の力だけに頼って出て行き、デソレションの町をもう一度取り返した。
09 さて、このようなことが終わってみると、双方で、すなわち、ニーファイ人とレーマン人の両方で何千もの人々が戦死していた。
10 さて、第366年が過ぎ去り、レーマン人がまたニーファイ人と戦うためにやって来た。それでもニーファイ人は、自分たちの行ってきた悪事を悔い改めず、絶えず悪事を続けていた。
11 ニーファイ人とレーマン人の双方の民の中に見られた、流血と虐殺のすさまじい有様は、口で述べることができず、人がそれを完全に描写して書き記すことも不可能である。彼らは一人残らず心をかたくなにし、血を流すことを絶えず喜びとした。
12 この民の中にあったようなひどい悪事は、リーハイのすべての子孫の中に、また主の言葉によれば、イスラエルの家に属するすべての者の中にも、これまで決してなかった。
13 そして、レーマン人はデソレションの町を占領した。これができたのは、彼らの人数がニーファイ人の人数よりも多かったからである。
14 そして彼らは、さらにテアンクムの町に向かって進軍し、その町から民を追い払い、女子供を大勢捕虜にし、自分たちの偶像の神にいけにえとしてささげた。
15 さて、第367年に、ニーファイ人はレーマン人が自分たちの女子供をいけにえにしたことに腹を立て、非常に激怒してレーマン人に向かって行ったので、またもやレーマン人を打ち負かし、彼らを自分たちの土地から追い出した。
16 その後、第375年まで、レーマン人は再びニーファイ人を攻めて来ることはなかった。
17 しかしこの年に、彼らは全軍でニーファイ人に向かって攻め下って来た。彼らの人数はあまりにも多くて、数えられなかった。

18 このとき以来、ニーファイ人はレーマン人に勝つ力を得られず、朝日に露が消えるようにレーマン人によって一掃され始めた。
19 そしてレーマン人は、デソレションの町に攻め下って来た。そして、デソレションの地で非常に激しい戦いがあり、その戦いでレーマン人がニーファイ人を打ち負かした。
20 そこでニーファイ人は、レーマン人の前からまた逃げ出し、ボアズの町に至った。そして、彼らはそこで非常に勇ましくレーマン人に立ち向かったので、レーマン人は2度目の攻撃をかけるまでニーファイ人を打ち負かせなかった。
21 そして、レーマン人が2度目に攻め寄せたとき、ニーファイ人は追い払われ、非常に大勢の者が殺された。さらにニーファイ人の女子供が、また偶像のいけにえにされた。
22 そこでニーファイ人は、彼らの前からまた逃げ、方々の町や村のすべての民を一緒に伴って行った。

23 わたしモルモンは、レーマン人がまさに全土を征服しようとしているのを見て、シムの丘へ行き、アマロンが主に託して隠しておいたすべての記録を取り出した。

第5章

モルモン、再びニーファイ人の軍隊を率いて流血と虐殺の戦いに出る。イエスがキリストであることを全イスラエルに確信させるために、将来『モルモン書』が出る。不信仰のため、レーマン人は散らされ、御霊は彼らを励ますのをやめる。レーマン人は末日に異邦人から福音を受ける。紀元約375年から384年に至る。

01 さて、わたしはニーファイ人の中に出て行き、彼らをもう助けないと以前に誓った誓いを取り消した。すると彼らは、わたしなら自分たちを苦難から救い出せるであろうと考え、わたしにもう一度ニーファイ人の軍の指揮権を与えた。

02 しかし見よ、わたしは主の裁きが彼らに下ることを知っていたので、望みを持っていなかった。彼らが自分たちの罪悪を悔い改めず、自分たちを造られた御方に請い願うことなく、ただ自分たちの命のために戦っていたからである。
03 さて、わたしたちがヨルダンの町に逃げていたので、レーマン人はわたしたちを攻めた。しかし見よ、彼らは撃退され、そのときにはその町を奪えなかった。
04 そして、彼らはまたわたしたちを攻めたが、わたしたちはその町を守り通した。ほかにもニーファイ人が守り通した町が幾つもあり、レーマン人はそれらの町のとりでに遮られて、わたしたちの先にある地方に入って行って、わたしたちの国の民を滅ぼすことができなかった。
05 しかし、わたしたちが素通りしてきた土地と、わたしたちが集めなかった土地に住む者たちは、すべてレーマン人によって滅ぼされ、彼らの集落や村や町は火で焼かれた。このようにして、379年が過ぎ去った。
06 そして第380年に、レーマン人がまた攻め寄せて来たので、わたしたちは勇ましく彼らに立ち向かった。しかし、それはまったく無駄であった。彼らは人数が非常に多く、ニーファイ人の民を足で踏みにじったからである。
07 そこで、わたしたちはまた逃げた。そして、逃げ足がレーマン人の追撃よりも速かった者は逃れ、レーマン人より速くなかった者は襲われて殺された。
08 さて見よ、わたしモルモンは、自分の目で見たこのような流血と虐殺の恐ろしい光景を人々の前に持ち出して、人々をひどく苦しめたいとは思わない。しかしわたしは、これらのことが将来必ず知らされ、現在隠されているすべてのことが将来屋根の上で明らかにされることを知っており、
09 またこれらのことが、将来これらの民の残りの者と異邦人に知らされることも知っている。主は、異邦人がこの民を散らし、この民が彼らの中で価値のない者と見なされるようになると言われた。わたしは以上のことを知っているので、あえて自分がこれまで見てきたことを全部は記録せず、小さな短くまとめた記録を書き記している。それは、そのように命じられたからであり、またあなたがたが、この民の悪事のことであまりひどく嘆くことのないようにするためである。
10 さて見よ、わたしはこのことをこの民の子孫と、また異邦人に、すなわち、イスラエルの家を心にかけ、自分たちの祝福がどこから来るかをはっきり自覚して知っている異邦人に述べる。
11 わたしは、このような人々がイスラエルの家の災いについて嘆くことを知っているからである。まことに、彼らはこの民の滅亡を嘆き、また、この民が悔い改めをしなかったためにイエスの腕の中にしっかり抱き締められることがなかったことを嘆くであろう。
12 わたしは、これらのことをヤコブの家の残りの者に書き伝える。これらのことをこのように書き伝えるのは、邪悪な者がこれらの記録を伝えることはないと、神から知らされているからである。そこで、これらのことが主御自身がふさわしいと思われるときに伝わるように、主に託してこれを隠しておかなければならない。
13 これがわたしの受けた命令である。そして見よ、これらのことは、主が御自分の知恵でふさわしいと見なされるときに、主の命令どおりに伝わるであろう。

14 そして見よ、これらのことは、ユダヤ人の中の信仰のない者に伝わる。これらのことが伝わる目的は、彼らにイエスが生ける神の御子キリストであられることを信じさせることである。また、ユダヤ人、さらに正確に言えば、イスラエルの家に属するすべての者を、主なる彼らの神がお与えになった受け継ぎの地に連れ戻すという、あの御父の偉大な永遠の目的が、御父のこの上なく愛する御子を通じて成し遂げられ、御父の聖約が果たされるようにすることである。
15 またこの民の子孫に、異邦人から伝わる主の福音をさらによく信じさせることである。この民はこの後散らされて、これまでわたしたちの中になかったほど、すなわちかつてレーマン人の中になかったほど、肌の黒ずんだ、汚らしい、不快な民になる。これは彼らの不信仰と偶像礼拝のためである。
16 見よ、主の御霊は、すでにこれらの者たちの先祖を励ますのをやめてしまった。そして彼らは、この世の中でキリストも神もなく生きており、風に吹かれるもみ殻のようにあちらこちらに追いやられている。
17 彼らはかつて喜ばしい民であって、キリストを自分たちの羊飼いとし、まことに、父なる神からも導かれていた。
18 ところが見よ、彼らは今、サタンによってあちらこちらに誘われている。まるでもみ殻が風に吹かれているようであり、また船が帆や錨のないまま、あるいは舵を取る手段のないまま波間に漂っているようである。彼らは、ちょうどその船のようである。
19 見よ、主は、彼らがこの地で受けることのできた祝福を、将来この地を所有する異邦人のために残しておられる。
20 しかし見よ、将来この民は異邦人に追われ、散らされるであろう。そして、彼らが異邦人に追われ、散らされた後、見よ、主はアブラハムとイスラエルの家に属するすべての者に立てられた聖約を思い出されるであろう。
21 また主は、彼らのためにささげられた義人の祈りも思い出されるであろう。
22 おお、異邦人よ、あなたがたは悔い改めて悪の道から離れなければ、どうして神の力の前に立てるであろうか。
23 あなたがたは自分が神の手の内にあるのを知らないのか。あなたがたは神が一切の権威を持っておられることと、神の大いなる命令で将来大地が巻き物のように巻かれることを知らないのか。
24 だからあなたがたは、悔い改めて神の前にへりくだりなさい。さもなければ、神はあなたがたに罰を下される。すなわち、ヤコブの子孫の残りの者が、ライオンのようにあなたがたの中に出て行って、あなたがたを引き裂くであろう。そして、救う者はだれもいない。

第6章

ニーファイ人、最後の戦いのためにクモラの地に集まる。モルモン、神聖な記録をクモラの丘に隠す。レーマン人が勝利を収め、ニーファイ人の国は滅亡する。数十万人が剣で殺される。紀元約385年。

01 さて、これでわたしの民、ニーファイ人の滅亡についてのわたしの記録を終わりにする。わたしたちは、レーマン人の前に進軍した。
02 そして、わたしモルモンは、レーマン人の王に手紙を書いて、クモラと呼ばれる丘に近いクモラの地に民を集め、そこでレーマン人と戦えるようにするのを認めてほしいと頼んだ。
03 そこで、レーマン人の王はわたしが求めたことを認めてくれた。

04 そこで、わたしたちはクモラの地に進軍し、クモラの丘の周りに天幕を張った。その丘は多くの水と川、泉のある地にあった。わたしたちはここで、レーマン人に対して優位に立てることを期待した。
05 384年が過ぎ去ったとき、わたしたちは民の残っている者を全員クモラの地に集め終えていた。


06 そして、わたしたちが民を全員一団としてクモラの地に集め終えたとき、見よ、わたしモルモンは老いが進んでいた。わたしは、これが自分の民の最後の戦闘であることを知っており、また、先祖から伝えられてきた神聖な記録をレーマン人の手に渡してはならないと主から命じられていたので(レーマン人はそれらの記録を損なうからである)、わたしはニーファイの版からこの記録を作り、主の手によってわたしに託されたすべての記録をクモラの丘に隠した。そして、このわずかな版だけを息子モロナイに渡す。
07 さて、わたしの民は妻子たちとともに、レーマン人の軍隊がこちらに向かって進んで来るのを見た。そして、すべての悪人の胸に満ちているあのひどく死を恐れる気持ちをもって、レーマン人を迎え撃とうと待ち受けた。

08 そして、レーマン人がわたしたちに攻めかかって来た。すると、レーマン人がおびただしい人数であったので、わたしの民は一人残らず恐れでいっぱいになった。
09 そしてレーマン人は、剣と弓、矢、斧、そのほかあらゆる武器でわたしの民に襲いかかった。
10 そこでわたしの民、すなわちわたしとともにいた10000人の者が切り倒され、わたしも負傷してその中に倒れた。すると、レーマン人はわたしを殺さず、わたしのそばを通り過ぎて行った。
11 彼らは通り過ぎて、わたしたちの中の24人(この中にはわたしの息子モロナイもいた)を除くわたしの民をことごとく切り倒した。そこで、レーマン人が彼らの宿営に引き揚げた翌日、生き延びたわたしたちがクモラの丘の頂上から、わたしの民の死んだ者たちを見たところ、わたしが率いて指揮を執っていた10000人が切り倒されているのが見えた。
12 また、息子モロナイが指揮を執っていた10000人も見えた。
13 また見よ、ギドギドーナの10000人が倒れており、ギドギドーナもその中に倒れていた。
14 また、レーマも彼の10000人とともに倒れており、ギルガルも彼の10000人とともに倒れており、リムハも彼の10000人とともに倒れており、ジェニウムも彼の10000人とともに倒れており、クメナイハとモロナイハ、アンテオヌム、シブロム、セム、ヨシもそれぞれの10000人とともに倒れていた。
15 そしてほかにも、10人の者とそれぞれの10000人が剣で倒れていた。まことに、わたしの民は、わたしとともにいた24人と、南の地方へ逃げて行った少数の者と、レーマン人のもとへ脱走した少数の者を除いて、全員が倒れていた。そして、彼らの肉と骨と血は、彼らを殺した者の手によってそのまま放置されて地の面にあり、地上で朽ち、また朽ち果てて母なる大地に返るに任された。

16 わたしの心は、わたしの民の殺された者たちのことで苦しみのあまり張り裂けてしまいそうになり、わたしは叫んだ。
17 「おお、麗しい者たちよ、あなたがたはどうして主の道から離れてしまったのか。おお、麗しい者たちよ、あなたがたは両腕を広げて立ってあなたがたを受け入れようとしておられた、あのイエスをどうして拒んだのか。
18 見よ、あなたがたはそのようにしなければ、倒れなかったであろうに。しかし見よ、あなたがたはもう倒れてしまい、わたしはあなたがたを失ったことを嘆き悲しんでいる。
19 おお、麗しい息子よ、父よ、母よ、夫よ、妻よ、麗しい者たちよ、あなたがたはどうして倒れたのか。
20 しかし見よ、あなたがたはもう去ってしまい、わたしが悲しんでも、あなたがたを連れ戻すことはできない。
21 あなたがたの死すべき体が不死のものを着て、今朽ちつつあるこれらの体が朽ちない体になる日がもうすぐ来る。そのときあなたがたは、行いに応じて裁かれるために、キリストの裁きの座の前に立たなければならない。そして、もしあなたがたが義にかなっていれば、あなたがたはあなたがたよりも前に世を去った先祖とともに祝福を受けるのである。
22 おお、あなたがたは、この大きな滅亡が及ぶ前に悔い改めておけばよかったものを。しかし見よ、あなたがたはもう去ってしまった。御父は、まことに天の永遠の御父は、あなたがたの状態を御存じであり、御自分の公正と憐れみによってあなたがたを扱われるであろう。」

第7章

モルモン、末日のレーマン人に、キリストを信じ、キリストの福音を受け入れて救われるように勧める。『聖書』を信じる者はすべて、『モルモン書』も信じるであろう。紀元約385年。

01 さて見よ、わたしは命を助けられているこの民の残りの者に、もしも神がわたしの言葉を彼らに伝えてくださるならば、彼らが自分たちの先祖のことについて知ることができるように、少々述べたい。イスラエルの家の残りの者よ、わたしはあなたがたに述べる。わたしが告げる言葉は次のとおりである。
02 あなたがたは、自分がイスラエルの家に属していることを知りなさい。
03 あなたがたは、悔い改めなければ救われないことを知りなさい。
04 武器を捨て、もはや血を流すことを喜びとせず、神から命じられるのでなければ、二度と武器を取ってはならないことを知りなさい。
05 先祖について知り、すべての罪と不義を悔い改め、イエス・キリストを信じなければならないことを知りなさい。イエス・キリストは神の御子であり、またイエス・キリストはユダヤ人によって殺され、御父の力によって再びよみがえって墓に対して勝利を得られた。そして、死のとげはイエス・キリストにのまれてしまった。
06 そして、イエス・キリストは死者の復活をもたらされる。したがって、人はよみがえってイエス・キリストの裁きの座の前に立たなければならない。
07 そして、イエス・キリストは世の贖いをもたらされた。そのため、裁きの日にイエス・キリストの前に罪がないと認められる者は、神の王国で神の前に住み、天の聖歌隊とともに、一つの神である御父と御子と聖霊に、絶え間ない賛美の歌を歌うことを許され、決して終わりのない幸福な状態にいることができる。
08 だから、悔い改め、イエスの名によってバプテスマを受け、キリストの福音を手にしなさい。キリストの福音はこの記録だけでなく、ユダヤ人から異邦人に伝わり、異邦人からあなたがたに伝わる記録によってもあなたがたに知らされるであろう。
09 見よ、この記録を書き記しているのは、ユダヤ人から伝わる記録をあなたがたに信じさせるためである。また、あなたがたはそれを信じるならば、これも信じるであろう。そして、もしこれを信じるならば、あなたがたの先祖について知り、また先祖の中で神の力によって行われた驚くべき業についても知るようになるであろう。
10 またあなたがたは、自分がヤコブの子孫の残りの者であり、そのために最初の聖約の民の中に数えられるということも知るようになるであろう。もしあなたがたがキリストを信じて、わたしたちの救い主の模範に従って、救い主がわたしたちに命じられたとおりにまず水でバプテスマを受け、次に火と聖霊によってバプテスマを受けるならば、あなたがたは裁きの日に幸いを得るであろう。アーメン。

第8章

レーマン人、ニーファイ人を捜し出して殺す。『モルモン書』は将来神の力によって出る。主の業に対して怒りと争いの言葉を吐く者に宣言された数々の災い。ニーファイ人の記録は、悪事と退廃と背教の時代に出る。紀元約400年から421年に至る。


01 見よ、わたしモロナイは父モルモンの記録を書き上げる。見よ、わたしが書く事柄はわずかであり、それは父から指示されたものである。

02 さて、クモラでの大規模ですさまじい戦いの後、見よ、南方の地方に逃げていたニーファイ人は、レーマン人によって狩り出され、とうとう全員殺されてしまった。
03 わたしの父も彼らに殺された。そして、わたしだけが一人生き残り、わたしの民の滅亡の悲話を書き記すことになった。見よ、わたしの民はもう世を去ってしまったので、わたしは父から命じられたことを果たす。わたしはこの後レーマン人に殺されるかどうか分からない。

04 そこでわたしは、記録を書き記して、地の中に隠そう。そうすれば、わたしはどこへ行こうとかまわない。
05 見よ、父はこの記録を作り、この記録の目的を書いた。そしてまことに、わたしも版に余地があればそれを書きたいが、その余地はない。また、あらがねもない。わたしは孤独である。わたしの父は戦いで殺され、親族も全員殺されてしまった。わたしには友もなく、行く所もない。また、主がわたしをいつまで生かしてくださるか、わたしには分からない。
06 見よ、わたしたちの主、救い主の来臨から400年が過ぎ去った。
07 また見よ、レーマン人は、わたしの民ニーファイ人を町から町へ、地方から地方へと追い詰めて、とうとうニーファイ人は一人もいなくなった。その滅亡はひどかった。まことに、わたしの民ニーファイ人の滅亡は、ひどく驚くべきものである。
08 そして見よ、それを行われたのは主の手である。また見よ、レーマン人も互いに戦い合っていて、この地の全面が殺人と流血の絶えない有様を見せており、だれも戦争の終わる日を知らない。
09 さて見よ、わたしはもうニーファイ人のことについて述べない。地の面にいるのはレーマン人と強盗だけで、ほかにはだれもいないからである。
10 イエスの弟子たちのほかに、まことの神を知っている者はだれもいない。イエスの弟子たちは民の悪事がひどくなるまではこの地に住んでいたが、悪事が非常にひどくなったので、主は彼らが民とともにいることをお許しにならなかった。彼らが今この地の面にいるかどうか、だれも知らない。
11 しかし見よ、父とわたしはかつて彼らに会い、彼らはわたしたちを教え導いてくれた。
12 この記録を受け入れ、この中に不完全なところがあるからといって非難したりしない者は、これらのことよりも大いなることを知るであろう。見よ、わたしはモロナイである。できれば、わたしはあなたがたにすべての事柄を知らせたい。
13 見よ、これでこの民について述べるのを終える。わたしはモルモンの息子であり、わたしの父はニーファイの子孫であった。
14 わたしは、主に託してこの記録を隠す者である。この記録の版は、主の命令があるので、金銭上の価値はまったくない。利益を得るためにこの記録の版を所有する者はだれもいないと、主が実際に言っておられるからである。しかし、この版の記録は非常に価値がある。これを明るみに出す者に、主は祝福を授けられるであろう。
15 これを明るみに出す力は、神から与えられるのでなければ、だれも持つことができない。神は、神の栄光にひたすら目を向けながらこれを明るみに出すように、あるいは長い間散らされている昔の主の聖約の民の幸いのためにこれを行うように望んでおられる。

16 この記録を明るみに出す者は幸いである。神の言葉のとおりに、これは暗闇から明るみに出される。まことに、これは地から出され、暗闇から輝き出て、民に知られるようになる。それは神の力によって行われる。
17 もし誤りがあるとすれば、それは人の誤りである。しかし見よ、わたしたちはまったく誤りを見いださない。それでも、神はすべてのことを御存じであるので、非難する者は、地獄の火に投げ込まれる恐れのないように用心しなければならない。
18 「わたしに見せよ。さもなければお前を打つ」と言う者は、主から禁じられていることを命じないように気をつけなければならない。
19 それは見よ、軽率に裁く者は同じように軽率に裁かれ、人の報いは当人の行いに応じるものだからである。したがって、打つ者は同じように主から打たれるであろう。
20 見よ、「『人は打ってはならないし、裁いてもならない。裁きはわたしのすることである。報復もわたしのすることである。わたしが仕返しをする』と、主が言われる」と、聖文は述べている。
21 主の業に対して、またイスラエルの家である主の聖約の民に対して、怒りと争いの言葉を吐き、「主の業を絶やそう。主はイスラエルの家に立てた聖約を思い出しはしない」と言う者は、切り倒されて火の中に投げ込まれる恐れがある。
22 主のすべての約束が果たされるまで、主の永遠の目的は続くからである。
23 イザヤの預言を調べなさい。見よ、わたしはそれを書き記すことはできないが、まことに見よ、あなたがたに言っておく。この地を所有していて、わたしよりも前に世を去った聖徒たちは叫ぶ。まことに、彼らは地から主に叫ぶ。そして、主が生きておられるように確かに、主は彼らと交わした聖約を思い出されるであろう。
24 主は、同胞のためにささげられた聖徒たちの祈りを御存じである。また主は、彼らの信仰も御存じである。彼らは、主の名によって山々を移すことができた。彼らは、主の名によって地を揺り動かすこともできた。また、主の言葉の力によって牢を地に倒した。まことに、主の言葉の力のために、火の燃える炉も彼らを害することができず、猛獣も毒蛇も危害を加えることができなかった。
25 また見よ、彼らの祈りは、将来これらのものを世に出すことを主から許される者のためにもささげられた。
26 だれも、これらのものは出て来ることはないと言ってはならない。主が言われたので、これらのものは必ず出て来るからである。これらのものは主の手によって地から出て来る。だれもそれを妨げることはできない。それは、奇跡がやんでしまったと言われる時代に出て来る。あたかも人が死者の中から語るかのようにそれは出て来る。
27 聖徒たちの血が秘密結社と闇の業のことで主に叫んで訴える時代に、それは出て来る。
28 まことに、神の力が否定され、もろもろの教会が汚れたものとなり、教会の者たちが高慢な心で高ぶる時代に、それは出て来る。まことに、教会の指導者たちと教師たちが心を高慢にして、彼らの教会に属する者たちが彼らをねたみの目で見るようになる時代に、それは出て来る。
29 まことに、ほかの国々の火と暴風雨と立ち込める煙のことを伝え聞く時代に、それは現れ出る。
30 またそのとき、様々な地における戦争と戦争のうわさと地震のことも伝え聞くであろう。
31 まことに、地の面にひどい汚れがあり、殺人と強盗と偽りと欺きとみだらな行いとあらゆる忌まわしい行いがある時代に、また、「これを行え。あれを行え。それをしてもかまわない。主は終わりの日に弁護してくださる」と言う者が多くいる時代に、それは出て来る。しかし、このように言う者は災いである。彼らは苦汁の中におり、罪悪の縄目を受けているからである。
32 まことに、「わたしのところに来なさい。金銭と引き換えにあなたがたの罪は赦される」と言う教会が設けられている時代に、それは出て来る。
33 おお、邪悪でよこしまで強情な民よ、なぜあなたがたは利益を得ようとして自分自身のために教会を設けたのか。なぜあなたがたは神の聖なる言葉を変えて、自分に罰の定めを招くようにしたのか。心から神の啓示に頼りなさい。見よ、これらのことがすべて必ず成就する時が、その時代に来る。
34 見よ、これらのことがあなたがたの中に起こるその時代に、間もなく必ず出て来るものについて、主は大いなる驚くべきことをわたしに示してくださった。
35 見よ、わたしはあなたがたがここにいるかのように語っているが、あなたがたはまだこの世にいない。しかし見よ、イエス・キリストがわたしにあなたがたを見せてくださったので、わたしはあなたがたが行うことを知っている。
36 わたしは、あなたがたが心を高慢にして歩くことを知っている。心を高慢にして高ぶることをしない者はわずかしかいない。高慢な者は、非常に華やかな衣服を着て、ねたみや争い、悪意、迫害、またあらゆる罪悪に染まる。また、あなたがたの教会、まことにすべての教会は、あなたがたの心が高慢なために汚れたものになってしまった。
37 見よ、あなたがたは、貧しい人と乏しい人、病人と苦しんでいる人を愛する以上に、金銭や財産、華やかな衣服を愛し、あなたがたの教会を飾ることを大切にする。
38 おお、腐食するもののために自分自身を売る汚れた者たちよ、偽善者たちよ、教師たちよ、なぜあなたがたは神の聖なる教会を汚したのか。なぜあなたがたは、キリストの名を受けるのを恥じるのか。なぜあなたがたは、無窮の幸福が、決して尽きないあの不幸な状態よりも大きな価値があることを考えないのか。それは世の誉れのためである。
39 なぜあなたがたは、命のないもので自分自身を飾りながら、飢えている人や乏しい人、着る物のない人、病人、苦しんでいる人を見過ごしにし、彼らに注意を払わないのか。
40 まことに、なぜあなたがたは、利益を得るために秘密の忌まわしい行いを企て、やもめを主の前で嘆き悲しませ、みなしごも主の前で嘆き悲しませ、彼らの父と夫の血があなたがたの頭に報復が及ぶよう訴えて、地の中から主に叫ぶようにさせるのか。
41 見よ、報復の剣があなたがたに迫っている。主はもはや聖徒たちの嘆願をそのままにしておかれないので、主があなたがたに彼らの血のために報復される時がすぐに来るであろう。


【動画】モロナイ、キリストのもとに来るようすべての人を招く



【動画】モロナイとその教え


第9章

モロナイ、キリストを信じていない者に悔い改めるように呼びかける。忠実な者に数々の啓示を与え、数々の賜物としるしを注いでくださる奇跡の神について宣言する。不信仰のために奇跡はやむ。信じる者にはしるしが伴う。賢くあって戒めを守るように、人々に勧告が与えられる。紀元約401年から421年に至る。

01 さて、わたしは、キリストを信じていない者についても語ろう。
02 見よ、あなたがたは刑罰の日に信じるのであろうか。主が来られる時に、すなわち、大地が巻き物のように巻かれて、諸元素が酷熱に溶かされるあの大いなる日に、まことに、あなたがたが神の小羊の前に立たされるあの大いなる日に、あなたがたは神はいないと言うであろうか。
03 そのとき、まだあなたがたはキリストを否定するであろうか。あるいは、あなたがたは神の小羊を見るのに堪えられるであろうか。あなたがたは、自分に罪の意識のあるままで、神の小羊とともに住めると思うか。あなたがたは、神の小羊の律法を踏みにじったという罪の意識に苦しんでいながら、あの聖なる御方とともに幸せに暮らせると思うのか。
04 見よ、あなたがたに言うが、聖なる公正な神の前に自分は汚れているという意識のあるままで、神とともに住むときの悲惨は、地獄で罰の定めを受けている者たちとともに住むときの悲惨よりもひどいであろう。
05 見よ、あなたがたが、自分が神の前で裸であるのを見せられ、また神の栄光とイエス・キリストの神聖さを見せられるとき、あなたがたのうえに消すことのできない火の炎が燃え盛ることであろう。
06 おお、だから、信仰のない者たちよ、主に立ち返りなさい。小羊の血によって清められて、あの大いなる終わりの日に染みがなく、清く、美しく、潔白であると認められるように、イエスの名によって熱烈に御父に叫び求めなさい。
07 さらに、神の啓示を否定して、啓示はやんでしまった、今は啓示も、預言も、賜物も、癒しも、異言で語ることも、異言の解釈もないと言うあなたがたにわたしは告げる。
08 見よ、あなたがたに言うが、これらのことを否定する者は、キリストの福音を知らない者、まことに、聖文を読んだことのない者である。もし読んだことがあれば、聖文を理解していない。
09 神は昨日も、今日も、とこしえに変わらない御方であり、また神には変化も変化の兆しもないということを読んでいないのか。
10 さて、もしあなたがたが変わることのある神や、変わる兆しのある神を想像しているならば、あなたがたは奇跡の神ではない神を想像しているのである。

11 しかし見よ、わたしはあなたがたに奇跡の神、すなわちアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神について明らかにしよう。奇跡の神は、天地とその中にある万物を創造されたあの神である。
12 見よ、神はアダムを造られた。そして、アダムによって人の堕落が生じ、人の堕落のためにイエス・キリスト、すなわち御父であり御子である御方が来られた。そして、イエス・キリストによって人の贖いがもたらされた。
13 そして、イエス・キリストにより人にもたらされた贖いのおかげで、人は主の前に連れ戻される。まことに、これがすべての人の贖われる方法である。キリストの死は復活をもたらし、復活は無窮の眠りからの贖いをもたらし、すべての人は、ラッパが鳴るときに、神の力によってその眠りから起こされる。そして人は、小さな者も大いなる者も出て来て、すべての人が肉体の死であるこの永遠の死の縄目から贖われ、解き放されて、キリストの法廷に立つ。
14 次いで、聖者の裁きが彼らに下る。それから、汚れている者は汚れているままになり、義にかなった者は義にかなった状態にとどまり、幸せな者は幸せなままになり、不幸な者は不幸なままになる時が来る。
15 さて、おお、奇跡を行えない神を心に描いてきたすべての人よ、わたしはあなたがたに尋ねたい。わたしが述べてきたこれらのことはすべて起こったか。終わりはもう来たか。見よ、まだであると、あなたがたに答えよう。また、神は奇跡の神であることをやめてはおられない。
16 見よ、神が行ってこられたことは、わたしたちの目に驚くべきものではないだろうか。また、だれが神の驚くべき業を悟れるであろうか。
17 神の言葉によって天と地があること、また神の言葉の力によって、人が地のちりから造られたことを、奇跡ではないと言う者はだれであろうか。神の言葉の力によって、奇跡が行われてこなかったであろうか。
18 イエス・キリストが多くの偉大な奇跡を行われなかったと言う者は、だれであろうか。使徒たちの手によって行われた大きな奇跡もたくさんあった。
19 その当時に数々の奇跡が行われたのであれば、どうして神は奇跡の神であることをやめられたのであろうか。それでいて、変わらない御方であると言えるであろうか。見よ、あなたがたに言うが、神は変わってはおられない。もし変わっておられるとすれば、神は神であることをやめられたのであろう。しかし、神は神であることをやめてはおられず、今も奇跡の神であられる。
20 神が人の子らの中で奇跡を行うのをやめられるのは、彼らが不信仰に陥り、正しい道から離れ、頼るべき神を知らないためである。
21 見よ、あなたがたに言うが、何も疑わないでキリストを信じる者には、キリストの名によって御父に求めるものは何でも与えられるであろう。この約束はすべての人に、すなわち地の果てまで及ぶものである。
22 見よ、神の御子イエス・キリストは、群衆の聞いている所で、この世にとどまることになっていた御自分の弟子たちと、ほかのすべての弟子たちに次のように言われた。「全世界に出て行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい。
23 信じてバプテスマを受ける者は救われる。しかし、信じない者は罰の定めを受ける。
24 信じる者には次のようなしるしが伴う。すなわち、彼らはわたしの名によって悪霊を追い出し、新しい言葉を語り、蛇を取り上げるであろう。また彼らは、毒を飲んでも害を受けない。彼らが病人に手を置けば、病人は快復する。
25 何も疑わないでわたしの名を信じる者に、わたしは自分の言葉が確かであることを証明する。地の果てに至るまで、そのとおりにする。」
26 さて見よ、だれが主の業に立ち向かえるであろうか。だれが主の言われたことを否定できるであろうか。だれが主の全能の力に反抗して立てるであろうか。主の業を侮る者がだれかいるであろうか。キリストの子らを侮る者が、だれかいるであろうか。見よ、主の業を侮るすべての者よ、あなたがたは怪しみ、そして滅びるであろう。
27 おお、だから、侮ってはならない。怪しんではならない。主の言葉に聞き従いなさい。そして、あなたがたが必要としているものは何でも、イエスの名によって御父に求めなさい。疑ってはならない。信じなさい。昔のようになり、心を尽くして主のもとに来て、主の前に恐れおののいて、自分の救いを達成しなさい。
28 試しの生涯にあって賢くありなさい。あらゆる汚れを取り除きなさい。求めるものを自分の欲望のために無益なものにせず、むしろどんな誘惑にも負けないで、まことの生ける神に仕えようという、確固とした決意をもって求めなさい。
29 あなたがたは、ふさわしくないままでバプテスマを受けることのないようにしなさい。ふさわしくないままでキリストの聖餐を受けないようにしなさい。むしろあなたがたは、ふさわしい状態ですべてのことを行い、しかも、生ける神の御子イエス・キリストの名によって行うようにしなさい。このように行い、最後まで堪え忍ぶならば、あなたがたは決して追い出されることはないであろう。
30 見よ、わたしは今、死者の中から語っているかのようにあなたがたに述べている。わたしはあなたがたが将来、わたしの言葉を手に入れることを知っているからである。
31 不完全なところがあるからということで、わたしを非難してはならない。わたしの父をも、不完全なところがあるからということで非難してはならないし、父よりも前に書き記してきた人々も、非難してはならない。むしろこれまでのわたしたちよりも、あなたがたがもっと賢くなれるようにと、わたしたちの不完全なところをあなたがたに明らかにしてくださった神に、感謝しなさい。
32 さて見よ、わたしたちは、わたしたちの中で改良エジプト文字と呼ばれている文字で、わたしたちの知っていることに従ってこの記録を書いてきた。この文字は、わたしたちに代々伝えられ、わたしたちの言葉の使い方に応じて変えられたものである。
33 もしわたしたちの版が十分に大きかったならば、わたしたちはヘブライ語で書き記したであろう。しかし、ヘブライ語もわたしたちによって変えられてきた。もしわたしたちがヘブライ語で書き記せたならば、見よ、わたしたちの記録は不完全なところがまったくなかったであろう。
34 しかし主は、わたしたちが書き記してきたことを御存じであり、またわたしたちの言語を知っている民はほかにないということも、御存じである。そして、わたしたちの言語を知っている民はほかにないので、主はわたしたちの言語を翻訳する手段を備えられた。
35 また、これらのことを書き記したのは、不信仰に陥った同胞の血が、わたしたちの衣に降りかかるのを避けるためである。
36 見よ、わたしたちが同胞について望んできたこれらのこと、まことに、彼らが再びキリストについて知ることができるようにすることは、この地に住んでいたすべての聖徒たちの祈りにかなっている。
37 主イエス・キリストが、信仰に応じて彼らの祈りを聞き届けてくださるように。また父なる神が、イスラエルの家と交わされた聖約を思い起こしてくださるように。そして、父なる神が彼らを、イエス・キリストの名を信じる信仰によって、とこしえに祝福してくださるように。アーメン。