ヒラマン書


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ニーファイ人についての話。彼らの戦争と争いと、彼らの不和についての話。キリストの来臨前の、多くの聖なる預言者たちの預言についての話。ヒラマンの息子であるヒラマンの記録、および彼の息子たちの記録によるもので、キリストの来臨の時にまで至る。また、多くのレーマン人が改宗する。彼らの改宗についての記事。レーマン人の義、およびニーファイ人の悪事と忌まわしい行いについての記事。ヒラマンと彼の息子たちの記録によるもので、キリストの来臨の時にまで至る。この記録はヒラマン書と呼ばれる。

第1章

パホーラン2世、大さばきつかさになり、キシクメンに殺される。パクメナイ、さばきつかさの職に就く。コリアンタマー、レーマン人の軍隊を率いてゼラヘムラを奪い、パクメナイを殺す。モロナイハ、レーマン人を破り、ゼラヘムラを取り返す。コリアンタマー、殺される。紀元前約52年から50年に至る。

01 さて見よ、ニーファイの民のさばきつかさの統治第40年の初めに、ニーファイ人の民の中に一つの重大な問題が起こった。
02 見よ、パホーランが死んで、世のすべての人の行く道を行ってしまったので、だれがさばきつかさの職に就くべきかについて、パホーランの息子たちである兄弟の中で深刻な争いが起こったからである。
03 さばきつかさの職のために争って、民をも争わせたこの兄弟たちの名は、パホーラン、パアンカイ、パクメナイという。
04 パホーランの息子はこの3人だけではない。(彼には多くの息子がいた。)しかし、さばきつかさの職のために争ったのはこの3人であり、彼らは民を3つの集団に分裂させてしまった。
05 それでも、パホーランが民の声によって大さばきつかさとなり、ニーファイの民を治める総督となるように任命された。
06 そしてパクメナイは、自分がさばきつかさの職を得られないことを知ると、民の声に同意した。
07 しかし見よ、パアンカイと、彼が総督になることを願った民の一部の者たちは、非常に怒った。そのため彼は、その人々にへつらって、同胞に対して謀反を起こさせようとした。
08 そして彼は、まさにそれを実行しようとしたときに、捕らえられ、民の声によって裁かれ、死刑を宣告された。彼が謀反を起こし、民の自由を損なおうとしたからである。
09 ところが、彼が総督になることを願った者たちは、彼に死刑が宣告されたことを知って怒った。そして彼らは、キシクメンという者をさばきつかさの職にあるパホーランのもとに遣わし、さばきつかさの席に着いているパホーランを殺した。
10 パホーランの従者たちはキシクメンを追いかけたが、キシクメンの逃げ足が非常に速かったので、だれも彼に追いつけなかった。
11 そして、彼は自分を行かせた者たちのところに帰り、彼らは全員誓いを立てた。すなわち、彼らはキシクメンがパホーランを殺したことをだれにも話さないと、自分たちの永遠の造り主にかけて誓ったのである。
12 そのためキシクメンは、パホーランを殺したときに姿を変えていたので、ニーファイの民に知られることはなかった。そしてキシクメンも、彼と誓った仲間も、見つかることのないように民の中に交じっていたが、見つかった者は皆、死刑を宣告された。
13 さて見よ、パクメナイが民の声によって大さばきつかさとなり、民の総督となるように任命され、彼の兄弟パホーランに代わって治めることになった。それは彼の権利にかなっていた。これはすべてさばきつかさの統治第40年にあったことであり、この年は終わった。
14 さて、さばきつかさの統治第41年に、レーマン人はおびただしい数の兵を集めて、剣と三日月刀、弓、矢、かぶと、胸当て、それにあらゆる盾で武装させていた。
15 そして彼らは、ニーファイ人と戦うためにまたもややって来た。彼らはコリアンタマーという名の男に率いられていた。この男はゼラヘムラの子孫であり、ニーファイ人からの離反者であって、大きな強い男であった。
16 それで、アモロンの息子で名をツバロスというレーマン人の王は、コリアンタマーが強い男であり、彼の力と深い知恵でニーファイ人に立ち向かえると思ったので、彼を行かせてニーファイ人を支配する権力を得ようとした。
17 そこでツバロスは、レーマン人を扇動して怒らせ、自分の軍隊を集め、コリアンタマーを軍隊の指揮官に任命して、ニーファイ人と戦うために彼らをゼラヘムラの地へ進軍させた。
18 さて、ニーファイ人は、政府内に多くの争いと多くの問題があったので、ゼラヘムラの地に十分な見張りの兵を配置していなかった。彼らはレーマン人があえて自分たちの地の中央部に入って来て、この大きな町ゼラヘムラを攻撃することはないと思っていたからである。
19 ところが、コリアンタマーは大軍を率いて進み、その町に住む者を襲ったのである。しかも、彼らの進軍が非常に速かったので、ニーファイ人は軍隊を集める暇がなかった。
20 そのためコリアンタマーは、町の入り口の近くで警備兵を切り倒し、全軍を率いて町に入った。そして、彼らは手向かう者をすべて殺し、町全体を占領した。
21 さて、大さばきつかさであったパクメナイは、コリアンタマーから逃れて町の城壁の所まで行った。しかし、そこで城壁に寄りかかった状態でコリアンタマーに討たれ、死んだ。このようにして、パクメナイの生涯は終わった。
22 コリアンタマーは、ゼラヘムラの町が手に入ったのを見て、またニーファイ人がレーマン人の前から逃げ出し、殺され、捕らえられ、牢に入れられなどして、自分が全地で最も堅固なとりでの占領を終えたのを見て、心が奮い立ち、全地に向かって出て行こうとした。
23 そして、彼はゼラヘムラの地に長居せず、大軍を伴ってバウンティフルの町に向かって進軍した。それは、進んで行って剣で道を切り開き、国の北部も手に入れようと決意していたからである。
24 また彼は、ニーファイ人の軍隊の主力が国の中央部にいると思っていたので、ニーファイ人が幾つかの小さな軍隊に集まる以外に集まる暇のないように進軍した。このようにして、彼らはニーファイ人を攻め、地に切り倒したのであった。
25 しかし見よ、国の中央部を通ったこのコリアンタマーの進軍は、殺されたニーファイ人がおびただしい数に上ったにもかかわらず、彼らに対してモロナイハを非常に有利な立場に置くことになった。
26 見よ、モロナイハは、レーマン人があえて国の中央部に入って来ることはなく、これまで行ってきたように、境の地の方々の町を攻撃して来るであろうと思い、ニーファイ人の強い軍隊に境の地の方々を守らせていたからである。
27 しかし見よ、レーマン人は彼の願ったようには恐れず、国の中央部に入って来て首府であるゼラヘムラの町を奪い、国の最も重要な地方を経由して進みながら、男、女、子供の区別なく民を大勢殺し、多くの町と多くのとりでを占領した。
28 モロナイハはこれを知ると、彼らがバウンティフルの地へ達する前に遠回りして彼らの進路を断つため、すぐにリーハイを軍隊とともに派遣した。
29 そして、リーハイはそのように行った。彼はレーマン人がバウンティフルの地に達する前に、彼らの進路を断って攻撃したので、彼らはゼラヘムラの地へ向かって退却し始めた。
30 そこでモロナイハも、退却中の彼らの退路を断って攻撃した。そのため、非常に血なまぐさい戦いになった。まことに、多くの者が殺され、殺された者たちの中にコリアンタマーもいた。
31 さて、レーマン人はあらゆる方向からニーファイ人に取り囲まれたので、北にも、南にも、東にも、西にも、どの方向にも退却できなかった。
32 このように、コリアンタマーがレーマン人をニーファイ人のただ中へ突入させたので、彼らはニーファイ人の手中に落ちて、コリアンタマー自身も殺されてしまった。そして、レーマン人はニーファイ人に降伏した。
33 そこでモロナイハは、ゼラヘムラの町を取り返し、捕虜になったレーマン人を安らかに国外へ去らせた。
34 このようにして、さばきつかさの統治第41年が終わった。

第2章

ヒラマンの息子ヒラマン、大さばきつかさになる。ガデアントン、キシクメンの団を率いる。ヒラマンの僕がキシクメンを殺し、ガデアントンの団は荒れ野へ逃げる。紀元前約50年から49年に至る。

01 さて、さばきつかさの統治第42年に、モロナイハはニーファイ人とレーマン人の間に再び和平を成立させていたが、さばきつかさの職に就く人はだれもいなかった。そのため、だれがさばきつかさの職に就くべきかについて、民の中に再び争いが起こった。
02 そして、ヒラマンの息子であるヒラマンが、民の声によって選ばれ、さばきつかさの職に就いた。
03 しかし見よ、以前にパホーランを殺したキシクメンは、ヒラマンをも殺そうとして待ち伏せした。彼は自分の仲間に支援され、その仲間はだれにもキシクメンの悪事を知らせないという誓いを立てていた。
04 多くの言葉を非常に巧みに操り、またひそかに殺人と強盗を行う悪知恵にも非常にたけていたガデアントンという者がいた。この男はこのように巧みな者であったので、キシクメンの団の首領になった。
05 そこで彼は、仲間とキシクメンとをおだてて、もし自分をさばきつかさの職に就かせてくれるならば、団に所属する者たちを民の中で権力と権威のある地位に就かせようと言った。そこでキシクメンはヒラマンを殺そうとしたのである。
06 さて、キシクメンがヒラマンを殺すためにさばきつかさのもとへ向かっていたとき、ヒラマンの僕に会った。この僕は、前に夜出て行って姿を変えてこの団に紛れ込み、この団がヒラマンを殺すために企てた計画を知っていた。
07 そこで彼は、キシクメンに会うと合図を送った。それでキシクメンは自分がしようとしていることを打ち明け、ヒラマンを殺せるように自分をさばきつかさの席に案内してもらいたいと言った。
08 ヒラマンの僕はキシクメンの心がすべて分かった。人を殺すことが彼の目的であり、また人を殺し、盗み、権力を得ることが彼の団に所属しているすべての者の目的であった。(これが彼らの陰謀であり、彼らの結社である。)ヒラマンの僕はこのことを知ると、キシクメンに、「さばきつかさの席へ行こう」と言った。
09 キシクメンはこれを非常に喜んだ。自分の企てを遂げられると思ったからである。ところが見よ、さばきつかさの席へ行く途中、ヒラマンの僕がキシクメンを心臓まで突き刺したので、キシクメンはうめき声さえ立てずに死んで倒れた。そこで、ヒラマンの僕は走って行き、自分が見たこと、聞いたこと、行ったことをすべてヒラマンに告げた。
10 そこでヒラマンは、この強盗団の者たちを法律によって処刑するために、人々を送って彼らを捕らえようとした。
11 しかし見よ、ガデアントンは、キシクメンが帰って来ないのを知ると、自分が殺されることになるのではないかとひどく心配になり、仲間に自分について来るように告げた。そして彼らは、間道を通ってその地から荒れ野へ逃げ出した。したがって、ヒラマンが彼らを捕らえるために人々を送ったときには、彼らはどこにもいなかった。
12 このガデアントンのことは、後でもっと述べることにする。このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第42年が終わった。
13 そして見よ、あなたがたは本書の終わりで、このガデアントンがニーファイの民を覆す、まことにほとんど完全に滅ぼしてしまう元になることを知るであろう。
14 見よ、わたしが言うのは、ヒラマン書の終わりではなく、わたしがこれまで書いてきたすべての話の基であるニーファイの書の終わりのことである。

第3章

多くのニーファイ人が北方の地へ移住する。彼らはセメントで家を造り、また多くの記録を記す。数万人が改宗し、バプテスマを受ける。神の言葉は人を救いに導く。ヒラマンの息子ニーファイ、さばきつかさの職に就く。紀元前約49年から39年に至る。

01 さて、さばきつかさの統治第43年には、ニーファイの民の中にまったく争いがなかった。ただ教会員の中に少し高慢があり、それが民の中に多少の不和を引き起こしたが、第43年の終わりにはその問題は解決した。
02 また、第44年には民の中にまったく争いがなく、第45年にもひどい争いはなかった。
03 さて、第46年には、ひどい争いと多くの離反があった。そのために、ゼラヘムラの地を去り、北方の地へ行ってそこに住もうとした者が非常に大勢いた。
04 彼らは非常に遠くまで旅をし、幾つもの大きな湖沼と多くの川のある所に着いた。
05 そして、彼らはその地の全域に広がった。以前にその地に住んでいた多くの者のために荒らされておらず、樹木もなくなっていない方々の地方に広がった。
06 その地はどこも樹木のほかは少しも荒れていなかった。しかし、前にその地に住んでいた人々の滅亡がひどかったので、荒れ果てた地と呼ばれた。
07 その地の面には樹木がほとんどなかったので、そこへやって来た人々はセメントの工事が非常に上手になった。そこで彼らは、セメント造りの家を建てて住んだ。
08 そして彼らは増え、広がり、南方の地から北方の地へ移り、広がったので、南の海から北の海まで、西の海から東の海まで、全地の面を覆い始めた。
09 北方の地にいた人々は天幕やセメント造りの家に住んでいた。そして彼らは、その地の面に生える木はどんなものでも育てるようにして、将来材木を得て自分たちの家を建てられるように、まことに自分たちの町を築き、自分たちの神殿や会堂、聖堂、そのほかあらゆる建物を建てられるようにした。
10 そして、北方の地には材木が非常に乏しかったので、南方の地の人々は船で多くの材木を送った。
11 このようにして、彼らは北方の地の人々が、多くの町を木とセメントの両方で建設できるようにした。
12 そして、生まれがレーマン人であったアンモンの民も、多くの者がこの地に移った。
13 ところで、この民の多くの者がこの民の行ってきたことを書き続けてたくさんの記録を残しており、その記録は詳細で非常に大部である。
14 しかし見よ、この民が行ってきたことの100分の1も、本書に載せることができない。すなわち、レーマン人についての話とニーファイ人についての話、彼らの戦争と争いと不和、宣教と預言、海運と船の建造、神殿と会堂と聖堂の建設、義と悪、殺人と強盗と略奪、あらゆる忌まわしい行いとみだらな行い、これらについての話の100分の1も載せることはできない。
15 しかし見よ、多くの書とあらゆる多くの記録がある。これらはおもにニーファイ人が書き記してきたものである。
16 そして、ニーファイ人が戒めに背き、殺され、略奪され、狩り出され、追い出され、虐殺され、地の面に散らされ、レーマン人と交じってもはやニーファイ人と呼ばれなくなり、邪悪で野蛮で残忍になり、まことにレーマン人になってしまうまで、これらはニーファイ人によって代々伝えられてきた。
17 さて、わたしの話に戻ろう。わたしがこれまで述べてきたことは、ニーファイの民の中にひどい争い、騒動、内戦、不和があった後に起こったことである。
18 さばきつかさの統治第46年が終わった。
19 そして、この地にはなお、第47年にも、第48年にもひどい争いがあった。
20 それでもヒラマンは、公正と公平をもってさばきつかさの職を務めた。まことに彼は、神の掟と裁決と戒めを守るように努めた。そして、引き続き神の目から見て正しいことを行った。また彼は、自分の父の道を歩んだので、この地で栄えた。
21 さて、彼には二人の息子がおり、兄にニーファイという名を付け、弟にリーハイという名を付けた。そして、二人は成長して主の役に立つようになった。
22 そして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第48年の末には、ニーファイ人の民の中の内戦と争いは多少収まり始めた。
23 さて、さばきつかさの統治第49年には、秘密結社を別にして、国内は引き続き平和が確立されていた。強盗のガデアントンは、人々が住んでいる地域の大半ですでにこの秘密結社を設けていたが、当時この秘密結社は、政府の指導的な立場にある人々には知られていなかったので、この国から駆逐されていなかった。
24 そして、この同じ年に、教会は非常に大きな発展を遂げ、数千人が教会に加わって悔い改めのためのバプテスマを受けた。
25 教会の発展は著しく、また人々に注がれた祝福はとても多く、大祭司たちや教師たちでさえ非常に驚いたほどであった。
26 そして、主の業は発展し、バプテスマを受けて神の教会に加わった人は多く、まことに数万人に及んだ。
27 これによって分かるように、主は、真心から主の聖なる名を呼ぼうとするすべての人に憐れみをかけられる。
28 まことに、これによって分かるように、天の門はすべての人に、言い換えれば、神の御子イエス・キリストの名を信じようとする人々に開かれているのである。
29 まことに、望む者はだれでも、神の言葉を手に入れることができるということも、わたしたちに分かるのである。この神の言葉は生きていて力があり、悪魔の悪知恵とわなと策略をことごとく断つ。また、悪人をのみ込むために備えられている、あの不幸の永遠の淵を横切る狭くて細い道にあって、キリストの人を導き、
30 また彼らを、まことに彼らの不滅の霊を天の王国におられる神の右に至らせ、もはや外に出されることなく、アブラハム、イサク、ヤコブ、およびわたしたちのすべての聖なる先祖とともに座に着かせるものである。
31 この年には、ゼラヘムラの地と周辺のすべての地方、まことにニーファイ人が所有していた全地に引き続き喜びがあった。
32 そして、第49年の残りの期間は平和であり、非常に大きな喜びがあった。また、さばきつかさの統治第50年も引き続き平和であり、大きな喜びがあった。
33 さばきつかさの統治第51年も、教会の中に入り込んできた高慢を別にすれば、平和であった。教会の中に入り込んできたと言ったが、神の教会の中ではなく、神の教会に属していると公言する人々の心の中に入り込んできたのである。
34 そして彼らは高慢になり、多くの兄弟たちを迫害するようになった。これは大きな悪であり、このために彼らよりも謙遜な人々はひどい迫害を受け、多くの苦難を踏み越えなければならなかった。
35 それでも彼らは、しばしば断食して祈り、ますます謙遜になり、ますますキリストを信じる信仰を確固としたものにしたので、喜びと慰めで満たされ、まことに清められ、心の聖めを受けた。この聖めは、彼らが心を神に従わせたために受けたのである。
36 そして、第52年も平穏に終わったが、民の心の中には大変にひどい高慢が入り込んでいた。それは彼らが非常に豊かに富み、その地で栄えていたためであり、それは日に日に募ってきた。
37 さて、さばきつかさの統治第53年にヒラマンが死んで、彼の長男ニーファイが彼に代わって治め始めた。彼は公正と公平をもってさばきつかさの職を務め、まことに、神の戒めを守り、自分の父の道を歩んだ。

第4章

ニーファイ人の離反者とレーマン人、軍隊を連合して、ゼラヘムラの地を奪う。ニーファイ人、自らの悪事のために敗北する。教会は衰え、民はレーマン人のように弱くなる。紀元前約38年から30年に至る。

01 さて、第54年に教会内に多くの不和があった。また、民の中にも争いがあり、多くの流血があった。
02 そして謀反を起こした者たちは、殺されたり、国から追放されたりした。そこでこれらの者は、レーマン人の王のもとへ行った。
03 そして彼らは、レーマン人を扇動してニーファイ人と戦わせようとしたが、レーマン人は非常に恐れて、離反者たちの言葉を聴こうとしなかった。
04 ところが、さばきつかさの統治第56年にも、ニーファイ人のもとからレーマン人のもとへ行った離反者たちがおり、彼らはほかの者たちとともに、レーマン人を扇動してニーファイ人に対して怒りを抱かせるのに成功した。そこで、彼らはその年の間、戦争の準備をした。
05 第57年に、彼らはニーファイ人のもとに来て戦い、死の業を開始した。そして、さばきつかさの統治第58年に、彼らはゼラヘムラの地と、またバウンティフルの地に近い地方まですべての地を占領することに成功した。
06 そして、ニーファイ人とモロナイハの軍隊は、バウンティフルの地に追い込まれた。
07 そこで彼らは、西の海から東の海に至るまで、その地でレーマン人に対する防備を固めた。彼らが北の地を守るために防備を固めて軍隊を配備したその境界線上では、西の海から東の海まで、ニーファイ人が1日旅をすれば行ける距離であった。
08 このようにして、ニーファイ人の離反者たちは、レーマン人の大軍の助けを得て、南方の地にあるニーファイ人の領土をすべて手に入れたのであった。これはすべて、さばきつかさの統治第58年と第59年にあったことである。
09 さて、さばきつかさの統治第60年に、モロナイハは軍隊をもってその地の多くの地方を手に入れることに成功した。まことに、彼らはレーマン人の手に落ちていた多くの町を取り返した。
10 そして、さばきつかさの統治第61年には、彼らは自分たちの全領土の半分まで取り返すことに成功した。
11 ところで、ニーファイ人の被ったこの大きな損害と、彼らの中で行われたひどい殺戮は、彼らの中にあった悪事と忌まわしい行いがもしもなかったならば、起こらなかったであろう。この悪事と忌まわしい行いは、神の教会に属していると公言する者たちの中にもあった。
12 彼らは非常に富んでいたために心が高慢になり、また飢えている者に食物を与えず、着る物のない者に着る物を与えず、謙遜な同胞の頬を打つなどして貧しい者を虐げ、神聖なものをあざけり、預言と啓示の霊を否定し、人を殺し、略奪し、偽りを言い、盗み、姦淫を犯し、ひどい争いを起こし、ニーファイの地へ逃げて行ってレーマン人に加わったために、
13 すなわち、彼らはこのように大きな悪事を行ったために、また自分の力を誇ったために、自分の力しか頼れない状態に置かれたのであった。したがって、彼らは栄えることなく、苦しめられ、悩まされ、レーマン人の前から追い出されて、とうとうほとんどすべての所有地を失ってしまった。
14 しかし見よ、モロナイハは民が罪悪を犯していたので彼らに多くのことを説き、またヒラマンの息子であるニーファイとリーハイも民に多くのことを説き、また彼らの罪深い状態と、罪を悔い改めなければ彼らに起こることについて、多くのことを預言した。
15 そこで、彼らは悔い改めた。そして、悔い改めた程度に応じて栄え始めた。
16 モロナイハは民が悔い改めたのを見ると、大胆にもあちらこちらに、また町から町へと彼らを率いて行き、ついに彼らは自分たちの所有物の半分とすべての所有地の半分を取り返した。
17 このようにして、さばきつかさの統治第61年が終わった。
18 さて、さばきつかさの統治第62年には、モロナイハはそれ以上レーマン人から領土を取り返すことができなかった。
19 それで彼らは、残りの土地を手に入れる計画を断念した。レーマン人が非常に大勢であったので、ニーファイ人は彼らに勝って勢力を得ることが不可能になったからである。そこでモロナイハは、それまでに取り返した地方を守るために、自分の全軍を使った。
20 そして、レーマン人の数が非常に多かったので、ニーファイ人は打ち負かされ、踏みにじられ、殺され、滅ぼされるのではないかとひどく恐れた。
21 まことに彼らは、アルマの預言とモーサヤの言葉を思い出し始めた。そして彼らは、自分たちが強情な民であったこと、また神の戒めを軽んじてきたこと、
22 自分たちがモーサヤの法律、すなわち主が民に与えるようにとモーサヤに命じられた法律を変更し、足で踏みつけてきたことを知った。また彼らは、自分たちの法律が不正なものになってしまったこと、そして自分たちが邪悪な民になってしまったために、まさにレーマン人のように悪くなっていることを知った。
23 また、彼らの罪悪のために、教会は衰え始めていた。そして彼らは、預言の霊と啓示の霊を信じなくなり、神の裁きは彼らの目前に迫っていた。
24 彼らは、自分たちが同胞のレーマン人のように弱くなってしまったこと、また主の御霊がもはや自分たちを守ってくださらないことを知った。まことに、主の御霊は清くない宮にはとどまらないので、彼らから去ってしまわれたのである。
25 したがって主は、奇跡を起こすたぐいない力で彼らを守ることをおやめになった。彼らが不信仰な、ひどい邪悪な状態に陥っていたからである。また彼らは、レーマン人が自分たちよりもはるかに大勢であり、もし自分たちが主なる神に堅くすがらなければ必ず滅びるに違いないということを知った。
26 見よ、彼らは、レーマン人の兵力が自分たちの兵力と同等であり、一人一人を比べても同等であることを知ったからである。このように彼らは大きな背きに陥っていた。まことに、彼らは背きに陥ったので、このように、わずかな歳月で弱くなってしまったのであった。

第5章

ニーファイとリーハイ、宣教に専念する。この二人の名は、先祖に倣って生活するように彼らを促すものである。キリストは悔い改める人々を贖われる。ニーファイとリーハイ、多くの人を改宗させ、投獄され、火に包まれる。暗黒の雲が300人を覆う。大地が揺れ動き、悔い改めるように命じる声が人々に聞こえる。ニーファイとリーハイ、天使たちと語り、群衆は火に包まれる。紀元前約30年。

01 さて、この同じ年に、ニーファイはセゾーラムという名の人にさばきつかさの職を譲った。
02 それは、ニーファイ人の法律と彼らの政体が民の声によって定められ、悪を選んだ者が善を選んだ者よりもはるかに大勢であったために、法律が改悪されて彼らの滅亡の機が熟していたからである。
03 また、これだけではない。彼らは強情な民であったので、法律によっても正義によっても彼らを治めることができず、ただ滅亡があるのみであった。

04 そしてニーファイは、彼らの罪悪にうんざりしてしまった。そこで彼はさばきつかさの職を譲り、神の言葉を宣べ伝える務めに余生をささげた。また、彼の弟リーハイも同じ務めに余生をささげた。
05 彼らは父ヒラマンが自分たちに語った言葉を思い出したからである。ヒラマンが語った言葉は次のとおりである。
06 「見よ、わが子らよ、わたしはあなたたちが神の戒めを守ることを忘れないようにと願っている。また、次の言葉を民に告げ知らせてもらいたい。わたしは、エルサレムの地からやって来たわたしたちの最初の先祖の名を、あなたたちに付けた。わたしがこうしたのは、あなたたちが自分の名を思うときに先祖を思い起こせるように、そして先祖を思い起こすときに先祖の行いを思い起こせるように、そして先祖の行いを思い起こすときに、先祖の行いが善かったことがどのように言い伝えられ、書き記されているか分かるようにするためである。
07 わが子らよ、あなたたちは先祖について言い伝えられ、書き記されてきたように、自分たちについても言い伝えられ、書き記されるように善いことをしてもらいたい。
08 わが子らよ、見よ、あなたたちに望むことがもう少しある。それは、誇るためにこれらのことを行うのではなく、まことに永遠の、消えてなくなることのない宝を自分自身のために天に蓄えるため、これらのことを行うようにということ、そしてわたしたちの先祖にすでに与えられていると考えて当然である、あの貴い永遠の命の賜物をあなたたちも持てるようにということである。

09 おお、覚えておきなさい。わが子らよ、ベニヤミン王が彼の民に語った言葉を覚えておきなさい。まことに、将来来られるイエス・キリストの贖いの血によってのみ人は救われるのであり、ほかには一切道も手段もないことを覚えておきなさい。まことに、イエス・キリストが世を贖うために来られることを覚えておきなさい。
10 また、アミュレクがアモナイハの町でゼーズロムに語った言葉も覚えておきなさい。アミュレクは彼に、主は確かに主の民を贖うために来られるが、彼らを罪のあるまま贖うためではなく、彼らを罪から贖うために来られるのであると語った。
11 主は、彼らが悔い改めるときに彼らを罪から贖うために、御父から授けられた力を持っておられるのである。したがって、主は悔い改めの条件について告げ知らせるために、天使たちを遣わしてこられた。この悔い改めは人々を贖い主の力のもとに導き、彼らに救いを得させるものである。
12 わが子らよ、覚えておきなさい。あなたたちは、神の御子でありキリストである贖い主の岩の上に基を築かなければならないことを覚えておきなさい。そうすれば、悪魔が大風を、まことに旋風の中に悪魔の矢を送るときにも、まことに悪魔の雹と大嵐があなたたちを打つときにも、それが不幸と無窮の苦悩の淵にあなたたちを引きずり落とすことはない。なぜならば、あなたたちは堅固な基であるその岩の上に建てられており、人がその上に基を築くならば、倒れることなどあり得ないからである。」
13 さてこれは、ヒラマンが息子たちに教えた言葉である。まことに、彼はここに書き記されていない多くのことと、ここに書き記されている多くのことを彼らに教えた。

14 ヒラマンの息子たちは父の言葉を思い出したので、神が命じられるままに、ニーファイのすべての民の中で神の言葉を教えるために出て行った。そして、最初にバウンティフルの町で教えた。
15 そして、そこからギドの町へ行き、ギドの町からミュレクの町へ行った。
16 そして、町から町へと巡って、ついに彼らは南方の地にいたすべてのニーファイの民の間を巡り終え、そこからゼラヘムラの地へ行ってレーマン人の中に入って行った。
17 そして彼らは、大きな力をもって教えを説き、前にニーファイ人から別れて去った離反者たちの多くを説き破った。そこで、これらの者たちは進み出て、罪を告白し、悔い改めのためのバプテスマを受け、以前にニーファイ人に対して自分たちが行った不当な仕打ちを償うために、すぐにニーファイ人のもとに帰って行った。
18 そしてニーファイとリーハイは、レーマン人にも同じように大きな力と権能をもって教えを説いた。彼らは語ることができるように力と権能を与えられており、また語るべき事柄も示されたからである。
19 そこで彼らは語ってレーマン人を非常に驚かせ、彼らに確信を抱かせたので、ゼラヘムラの地とその周りで悔い改めのためのバプテスマを受け、自分たちの先祖の言い伝えが正しくないことを確信したレーマン人は8000人に上った。

20 そして、ニーファイとリーハイはそこからニーファイの地へ向かった。
21 さて、彼らは、レーマン人の軍隊に捕らえられ、牢に入れられてしまった。まことに、アンモンと彼の同僚たちがリムハイの部下によって入れられた、あの牢であった。

22 ニーファイとリーハイが食べ物もなく牢に入れられたまま幾日も過ぎてから、見よ、人々が二人を連れ出して殺そうと、牢の中に入って来た。
23 さて、ニーファイとリーハイは火のようなものに包まれていた。そのため、人々は自分たちが焼かれてしまうのではないかと恐れ、あえて二人に手をかけようとしなかった。それでも、ニーファイとリーハイは焼かれなかった。二人は火の中に立っているようでありながら焼かれなかった。

24 二人は、自分たちが火の柱に包み込まれていながらも焼かれないのを見て、心に勇気を得た。
25 二人は、レーマン人があえて自分たちに手をかけようとせず、またあえて近づこうともせず、驚きのあまり物が言えなくなったかのような有様で立っているのを見たからである。
26 そこで、ニーファイとリーハイは進み出て、彼らに語り始めた。「恐れてはならない。見よ、あなたがたにこの驚くべきことを示されたのは神である。わたしたちに手をかけて殺すことはできないということが、これによってあなたがたに示されているのである。」

27 見よ、二人がこれらの言葉を語り終えると、大地が激しく揺れ動き、牢の壁がまさに地に崩れ落ちるほどに揺れた。それでも壁は倒れなかった。このときに牢の中にいた者たちは、レーマン人と、離反者のニーファイ人であった。
28 そして彼らは、暗黒の雲に覆われ、非常な恐怖に襲われた。


29 そして、その暗黒の雲の上の方から聞こえるかのように、一つの声があって言った。「悔い改めよ、悔い改めよ。よきおとずれを告げ知らせるためにあなたがたのもとに遣わした僕たちを、二度と滅ぼそうとしてはならない。」
30 さて、彼らはこの声を聞いたが、それは雷のような声ではなく、大きな騒々しい音でもなく、まるでささやきのような、まったく優しい静かな声であり、それでいて心の底までも貫いた。
31 その声は優しかったにもかかわらず、見よ、大地は激しく揺れ動き、まさに地に崩れ落ちるほどに牢の壁は再び揺れた。見よ、彼らを覆っていた暗黒の雲は消え去らなかった。
32 そして見よ、再び声が聞こえた。「悔い改めよ、悔い改めよ。天の王国は近いからである。二度とわたしの僕たちを滅ぼそうとしてはならない。」その後、再び大地が揺れ動き、壁が揺れた。

33 それから3度目の声が聞こえ、人に言い表せない驚くべき言葉を彼らに告げた。そして、またもや壁が揺れ、大地がまさに引き裂けるほどに揺れ動いた。
34 さてレーマン人は、暗黒の雲に覆われていたので、逃げることができなかった。また恐怖に打たれていたので、動くこともできなかった。

35 このレーマン人の中に、生まれがニーファイ人で、かつて神の教会に属していたが、その後教会から離反していた者が一人いた。

36 そして、彼は振り返ると、暗黒の雲を通してニーファイとリーハイの顔を見た。すると見よ、二人の顔はまるで天使の顔のように非常に輝いていた。また彼は、二人が目を天に向けて、二人には見えているある人に語りかけて、すなわち声を上げているような様子であるのも見た。
37 そこでこの男は大勢の者たちに、振り向いて見るように叫んだ。そして見よ、振り向いて見る力が彼らに与えられたので、彼らはニーファイとリーハイの顔を見た。
38 そして彼らはその男に、「見よ、これは一体どういうことなのだ。この者たちが話している相手はだれなのか」と尋ねた。

39 その男の名はアミナダブといった。アミナダブは彼らに、「二人は神の天使たちと話している」と言った。

40 そこで、レーマン人は彼に、「我々を覆っているこの暗黒の雲が離れ去るようにするには、我々はどうすればよいのか」と言った。
41 そこでアミナダブは彼らに、「あなたがたは悔い改めて、アルマとアミュレクとゼーズロムがあなたがたに教えた、キリストを信じる信仰を持てるまで、先ほどの声に向かって叫び求めなければならない。このようにするときに、あなたがたを覆っている暗黒の雲は離れ去るだろう」と言った。

42 そこで、彼らは皆、大地を震わせた御方の声に向かって叫び求め、まことに、暗黒の雲が消え去るまで叫び求めた。

43 そして周りを見回すと、彼らを覆っていた暗黒の雲は離れ去り、見よ、彼らは一人残らず火の柱に包み込まれていた。

44 そして、ニーファイとリーハイが彼らの真ん中にいた。まことに、彼らは包み込まれ、まるで燃える火の中にいるかのようであったが、その火は彼らを損なうことなく、また牢の壁に燃えつくこともなかった。また彼らは、言いようのない、栄光に満ちた喜びに満たされた。
45 そして見よ、神の聖なる御霊が天から降って、彼らの心の中に入られたので、彼らはあたかも火で満たされたかのようになり、驚くべき言葉を語ることができた。

46 そして彼らに声が、すなわち、まるでささやくような快い声が聞こえた。
47 「平安があるように。あなたがたは世の初めからいる、わたしの心から愛する者を信じているので、あなたがたに平安があるように。」

48 彼らはこの声を聞くと、どこから声が聞こえてくるのか見ようとするかのように仰ぎ見た。すると見よ、天が開くのが見えた。そして、天使たちが天から降って来て、彼らを教え導いた。

49 これらのことを見聞きした者はおよそ300人であった。彼らは不思議に思うことなく、また疑うこともなく出て行くように命じられた。


50 そこで、彼らは出て行き、民を教え、自分たちが見聞きしたすべてのことを、周りのすべての地方に告げ知らせた。その結果、レーマン人の大半がそれらのことを確信するようになった。彼らの得た証拠が偉大であったからである。
51 そして、確信を得た者たちは皆、武器を捨て、また憎悪と先祖の言い伝えも捨てた。
52 そして彼らは、ニーファイ人の所有地をニーファイ人に譲り渡した。


【動画】牢屋に入れられたニーファイとリーハイ


第6章

義人のレーマン人、悪人のニーファイ人に教えを説く。民はともに栄え、平和で豊かな時代を迎える。罪の根源であるルシフェル、悪人とガデアントンの強盗たちの心をかき立て、殺人と悪事を行わせる。強盗たち、ニーファイ人の政権を握る。紀元前約29年から23年に至る。


01 さて、さばきつかさの統治第62年が終わったときには、これらのことがすべて起こり、レーマン人はその大半が義人になっていたので、レーマン人の義はニーファイ人の義をしのいでいた。彼らは確固として揺るぎない信仰を抱いていたからである。
02 見よ、ニーファイ人の多くはかたくなになり、悔い改めをせず、非常に邪悪になっていたので、神の言葉と彼らの中で行われた宣教と預言を少しも受け入れなかった。
03 にもかかわらず、教会の人々は、レーマン人が改宗したことと、レーマン人の中に神の教会が設立されたことで大きな喜びを得た。そして両者は互いに親しく交わり、またともに喜び、大きな幸せを得た。
04 そして、多くのレーマン人がゼラヘムラの地にやって来て、自分たちが改宗した次第をニーファイ人の民に告げ知らせ、信仰をもって悔い改めるように勧めた。
05 そして、多くの者が非常に大きな力と権能をもって教えを説き、ニーファイ人の多くを心底謙遜にへりくだらせ、神と小羊に謙遜に従う者とした。
06 そして、多くのレーマン人が北方の地へ行き、ニーファイとリーハイも民に教えを説くために北方の地へ行った。このようにして、第63年が終わった。
07 見よ、全地が平和であったので、ニーファイ人はニーファイ人の中であろうとレーマン人の中であろうと、自分が行きたい所へはどこへでも行った。
08 そしてレーマン人も、レーマン人の中であろうとニーファイ人の中であろうと、自分の行きたい所へはどこへでも行った。このようにして、彼らは互いに自由に交流し、自分たちの思いのままに売買をして利益を得た。
09 そしてレーマン人もニーファイ人も、ともに非常に豊かになった。また、南の地でも北の地でも、彼らは非常にたくさんの金と銀とあらゆる貴い金属を持っていた。
10 ところで、南の地はリーハイと呼ばれ、北の地はゼデキヤの息子にちなんでミュレクと呼ばれた。主がミュレクを北の地へ導き、リーハイを南の地へ導いてこられたからである。
11 見よ、これらの地には両方とも、あらゆる金と銀、あらゆる貴いあらがねがあった。また、あらゆるあらがねを加工し精錬する、技量の優れた職人たちもおり、そのために彼らは豊かになった。
12 彼らは北でも南でも豊かに穀物を栽培し、北でも南でも非常に栄えた。また、彼らは増えて、その地で非常に力をつけた。そして、多くの大小の家畜の群れ、多くの肥えた若い家畜を飼育した。
13 見よ、女たちは骨折って働き、糸を紡ぎ、裸にまとうためにあらゆる織物を、すなわち、より糸で織った亜麻布とあらゆる織物を作った。このようにして、第64年が平穏に過ぎ去った。
14 第65年も、大きな喜びがあり、平和であって、まことに多くの宣教が行われ、将来起こることについて多くの預言が述べられた。このようにして、第65年が過ぎ去った。
15 さて、さばきつかさの統治第66年に、セゾーラムが、さばきつかさの席に着いていたときに何者かによって殺された。また、同じ年に、彼に代わって民によって任じられた彼の息子も殺されてしまった。このようにして、第66年が終わった。
16 第67年の初めに、民はまた非常に悪くなり始めた。
17 見よ、主が長い間、世の富を彼らに恵んでこられたので、彼らは扇動されて怒ることも、戦うことも、流血を起こすこともなかった。そのため、彼らは富に執着するようになり、互いに相手の上に立てるように、利益を得ようと求め始めた。その結果、彼らは暗殺や強盗や略奪をして利益を得始めたのである。
18 さて見よ、そのような殺人者たちと略奪者たちは、キシクメンとガデアントンが作った団に所属していた。そして、ニーファイ人の中にさえガデアントンの団に所属している者が大勢おり、レーマン人の中の悪い者たちの中にはもっと多くの者がいた。そして彼らは、ガデアントンの強盗および殺人者と呼ばれた。
19 大さばきつかさセゾーラムとその息子を、さばきつかさの職にある間に殺したのは彼らであったが、殺人者は見つからなかった。
20 さて、レーマン人は自分たちの中に強盗がいることを知ると、非常に嘆いた。そして彼らは、できるかぎりあらゆる手段を使って、地の面から強盗たちを滅ぼし去ろうとした。
21 ところが見よ、ニーファイ人の大半はサタンにひどく心をあおり立てられ、それらの強盗の団に加わった。そして彼らは、どのような困難な状態に置かれても、自分たちの殺人や略奪や盗みのために苦しみを受けることのないように、互いに保護し、守り合うという誓約と誓いを交わした。
22 そして、彼らには合図、すなわち秘密の合図と秘密の言葉があった。これは、仲間がどのような悪事を働いても、その仲間から、すなわちこの誓いを立てて団に所属した者たちから害を受けることのないように、誓いを立てた仲間を確認できるようにするためのものであった。
23 したがって彼らは、国の法律にも神の律法にも背いて人を殺し、略奪し、盗み、みだらな行いをし、あらゆる悪事を行うことができた。
24 また、団に所属している者はだれであろうと、彼らの悪事と忌まわしい行いを世の人々に漏らしたならば、国の法律によってではなく、ガデアントンとキシクメンが定めた、彼らの邪悪な掟によって裁かれることになっていた。
25 さて見よ、これらの秘密の誓いの言葉と誓約こそ、アルマが息子に、民を滅亡に至らせる手段とならないように世の人々に公にしてはならないと命じたものである。
26 見よ、それらの秘密の誓いの言葉と誓約は、ヒラマンに渡された記録からガデアントンに伝わったのではない。それらは、禁断の実を食べるようにわたしたちの始祖をそそのかした者によって、ガデアントンの心に植え付けられたのである。
27 まことにその者は、弟のアベルを殺しても、世の人々には分からないと、カインとはかりごとを巡らしたその者である。その者は、そのとき以来、カインおよび彼に従う者たちとはかりごとを巡らしてきた。
28 また、十分に高い塔を建てて天に達することができるようにしようという思いを、民の心に与えたのも、その者である。その塔からこの地に来た人々を惑わし、闇の業と忌まわしい行いを地の全面に広め、ついに民を完全に滅ぼし、永遠の地獄に引きずり落としてしまったのも、その者である。
29 まことに、闇の業と暗殺の業をなお続けようという思いをガデアントンの心に与えたのも、その者である。彼は人類の始まりから現在に至るまで、それを続けてきた。
30 見よ、彼こそ、あらゆる罪の根源である。見よ、彼は、人の子らの心を支配できるかぎり代々闇の業と暗殺の業を続け、カインと彼に従う者たちのはかりごとと、誓いの言葉と、誓約と、恐ろしい悪事の策を伝えている。
31 さて見よ、彼は、すでにニーファイ人の心を大いに支配しており、そのために、彼らは非常に邪悪になっていた。彼らの大半はすでに義の道を離れており、神の戒めを足の下に踏みつけ、自分勝手な道に向かい、自分のために金と銀で偶像を造っていた。
32 そして、これらの罪悪はすべて、わずかな年数で彼らに起こった。しかもそのほとんどは、ニーファイの民のさばきつかさの統治第67年に彼らに起こったのであった。
33 そして彼らは、第68年にもますます罪悪を募らせ、義人の深い悲しみと嘆きを誘った。
34 このことから分かるように、ニーファイ人は不信仰に陥って、ますます悪事と忌まわしい行いをするようになった。一方レーマン人は、神をますます深く知るようになった。まことに、彼らは神の掟と戒めを守り、神の前を真理にかなってまっすぐに歩み始めたのであった。
35 またこのことから、ニーファイ人の心が邪悪でかたくなであったので、主の御霊が彼らから去り始めたことが分かる。
36 またこのことから、レーマン人が主の言葉を容易に喜んで信じたので、主が彼らに主の御霊を注ぎ始められたことも分かる。
37 そしてレーマン人は、ガデアントンの強盗団を捜し、強盗団の中のひときわ悪い者たちの中で神の言葉を宣べ伝えたので、この強盗団はレーマン人の中から完全に絶えてしまった。
38 そして、他方ニーファイ人は、強盗団の中のひときわ悪い者たちをはじめとして、強盗団を盛り上げ、彼らを支援した。そのため、ついに強盗団はニーファイ人の地の全体に広がり、義人の大半を惑わしてしまった。そしてついには、これらの者たちも強盗団の行うことを信頼し、奪ったものの分け前をもらうようになり、彼らと暗殺を共にし、彼らの秘密結社に加わるようになった。
39 このようにして、強盗団は政府のすべての管理権を手に入れ、貧しい者と柔和な者と神に謙遜に従う者を足の下に踏みつけ、打ち、裂き、また彼らを無視した。
40 このことから、彼らが恐ろしい状態にあり、永遠の滅びの機が熟してきたことが分かる。
41 そして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第68年が終わった。

ヒラマンの息子であるニーファイの預言――神はニーファイの民に、悪事を悔い改めなければ怒りを下して罰し、ことごとく滅ぼしてしまおうと脅される。神は疫病をもってニーファイの民を打たれる。ニーファイの民、悔い改めて神に立ち返る。レーマン人サムエル、ニーファイ人に預言する。次の第7〜16章がそれに相当する。

第7章

ニーファイ、北方で拒まれ、ゼラヘムラの地に帰る。ニーファイ、自分の庭にある塔の上で祈り、次いで民に悔い改めるように求め、悔い改めなければ滅びることを告げる。紀元前約23年から21年に至る。

01 見よ、ニーファイ人の民のさばきつかさの統治第69年に、ヒラマンの息子であるニーファイは、北方の地からゼラヘムラの地に帰って来た。
02 彼は北方の地にいる人々の中を巡って、彼らに神の言葉を宣べ伝え、また多くのことを彼らに預言した。
03 ところが、彼らがその御言葉をまったく受け入れなかったので、彼は彼らの中にとどまっていることができず、生まれ故郷に帰って来たのであった。

04 そして、彼が見ると、民はひどく邪悪な状態にあり、あのガデアントンの強盗たちがさばきつかさの職に就いていて、国の権力と権威を奪い取っていた。また、強盗たちは神の戒めを捨て、神の前に少しも正しいことを行わず、人の子らをまったく公正に扱わず、
05 義人を彼らの義のゆえに罪に定め、罪人と悪人は金銭を受け取って無罪放免とし、さらに自分たちが利益と世の誉れを得られるように、またもっと安易に姦淫を犯し、盗み、殺し、自分の思いどおりのことを行えるように、政府の要職に就いて統治し、自分の思いどおりに行っていた。

06 このひどい罪悪は、わずかな年数でニーファイ人に及んでいた。ニーファイはそれを見ると、悲しみで胸が詰まり、苦しみもだえて叫んだ。
07 「おお、わたしの先祖のニーファイが初めてエルサレムの地からやって来たその時代にわたしも生きていて、約束の地で先祖のニーファイと一緒に喜ぶことができたらよかったのに。当時のニーファイの民は容易に勧告に従い、神の戒めを確固として守り、罪悪を犯すように誘われるのは遅く、主の御言葉を聴くのは早かった。
08 まことに、もしわたしがその時代に生きていたら、同胞の義を喜んだことだろう。
09 しかし見よ、わたしはこの時代を自分の時代とし、同胞のこの悪事を見て悲しみに打ちひしがれるように定められている。」

10 さて見よ、それは、ニーファイの庭にある塔の上で叫んだことであった。彼の庭はゼラヘムラの町にある最も大きな市場へ通じている大通りのそばにあった。そしてニーファイは、自分の庭にあるその塔の上でひれ伏していた。その塔も大通りに出る庭の門の近くにあった。

11 さて、ある人々が近くを通りかかり、ニーファイが塔の上でその心を神に注ぎ出しているのを見た。そして、彼らは走って行って、自分たちの見たことを人々に告げた。すると人々は、彼が民の悪事をそのように深く嘆いている訳を知ろうとして、大勢集まって来た。

12 さて、ニーファイは立ち上がると、大勢の人々が集まっているのを見た。
13 そして彼は口を開くと、彼らに言った。「見よ、何のためにあなたがたは集まって来たのか。あなたがたの罪悪についてわたしに語らせるためか。
14 まことに、それはわたしがあなたがたの罪悪のことで心に深い憂いを覚え、その心を神に注ぎ出すために塔に登ったからである。
15 わたしが嘆き、悲しんでいるので、あなたがたは集まって驚いている。あなたがたは大いに驚く必要がある。あなたがたは悪魔に引き渡されて、心をこのように大いに支配されてきたので、驚いて当然である。
16 まことに、どうしてあなたがたは、永遠の不幸と無窮の苦悩へ投げ落とそうとしている者の誘惑に身をゆだねることができたのか。
17 おお、悔い改めなさい、悔い改めなさい。なぜあなたがたは死のうとするのか。立ち返りなさい、主なるあなたがたの神に立ち返りなさい。なぜ主はあなたがたを見捨てられたのか。
18 それは、あなたがたが心をかたくなにしたからである。まことに、あなたがたは、良い羊飼いの声を聴こうとしない。まことに、あなたがたは、自分たちのことで良い羊飼いを怒らせてしまったのだ。
19 見よ、あなたがたが悔い改めようとしなければ、羊飼いはあなたがたを集めるどころか、追い散らして犬と野獣のえじきにされるであろう。
20 おお、どうしてあなたがたは、神が助けてくださったその日に、神を忘れることができたのか。
21 しかし見よ、それは利益を得、人々から称賛され、また金と銀を得ようとするからである。あなたがたは富と、この世のむなしいものに執着してきた。そのためにあなたがたは人を殺し、略奪し、盗み、隣人に不利な偽証をし、あらゆる罪悪を行っている。

22 だから、悔い改めなければ、あなたがたに災いが下るであろう。もしあなたがたが悔い改めようとしなければ、見よ、わたしたちの所有地にあるこの偉大な町も、周りの偉大な町々もすべて奪われ、そこにあなたがたの居場所はなくなるであろう。見よ、主は、これまでしてくださったようには、敵を防ぐ力をあなたがたに与えてくださらないからである。
23 見よ、主はこう言われる。『自分たちの罪を悔い改め、わたしの言葉に聞き従う者でなければ、わたしは悪人にはほかの者以上に力を示すまい。』そのため、同胞よ、あなたがたが悔い改めなければ、レーマン人の方があなたがたよりも幸いであることを知ってほしい。

24 見よ、彼らは、あなたがたに与えられてきたあの大いなる知識に対して罪を犯さなかったので、あなたがたよりも義にかなっている。そのため、主は彼らに憐れみをかけられる。まことに、主は彼らの日を長くして、子孫を増し加えられる。一方あなたがたは、悔い改めなければことごとく滅ぼされる。
25 まことに、あなたがたの中に起こったあのひどく忌まわしいもののために、あなたがたは災いである。あなたがたはその忌まわしいもの、ガデアントンが設けたあの秘密の団に加わっている。
26 まことに、あなたがたの心に募る高慢のために、災いが下るであろう。その高慢は、あなたがたが非常に多くの富を得たために、度を越してあなたがたを高ぶらせた。
27 まことに、あなたがたの悪事と忌まわしい行いのために、あなたがたは災いである。

28 あなたがたは悔い改めなければ滅びるであろう。すなわち、あなたがたの土地は奪われ、あなたがたは地の面から滅ぼし去られるであろう。
29 見よ、わたしは、これらのことが起こるであろうと、わたし自身から言うのではない。わたしがこれらのことを知っているのは、わたしが独りで知ったのではない。しかし見よ、主なる神がこれらのことを知らせてくださったので、わたしはこれらのことが真実であると知っているのである。したがって、これらのことが将来起こると証する。」

第8章

邪悪なさばきつかさたち、民をそそのかしてニーファイのことを怒らせようとする。アブラハム、モーセ、ゼノス、ゼノク、イザイアス、イザヤ、エレミヤ、リーハイ、ニーファイは皆、キリストについて証した。ニーファイ、大さばきつかさが殺されたことを霊感によって告げる。紀元前約23年から21年に至る。


01 さて、ニーファイがこれらの言葉を語り終えたとき、見よ、そこには、さばきつかさでありながらガデアントンの秘密の団にも所属している男たちがおり、彼らは怒ってニーファイに非難の声を上げ、人々に言った。「なぜあなたがたはこの男を捕らえて連れて来て、この男が犯した罪科に応じて罪に定められるようにしないのか。
02 なぜあなたがたはこの男に見とれていて、この男がこの民と我々の法律を非難するのを聞いているのか。」
03 見よ、ニーファイが、彼らの法律が腐敗していることについて彼らに語ったからである。まことに、ニーファイはここに書き記せない多くのことを語った。しかし、神の戒めに反することは何一つ言わなかった。
04 ところが、ニーファイがさばきつかさたちの隠れた闇の業について、彼らにあからさまに語ったので、さばきつかさたちは、彼に対して怒ったのである。それでもさばきつかさたちは、あえて彼を捕らえようとはしなかった。彼らは、人々が自分たちに非難の声を上げるのではないかと恐れたからである。
05 それで彼らは、人々に向かって叫んだ。「なぜあなたがたはこの男が我々を非難するのを許しておくのか。この男はこの民の全員に滅亡を宣告している。そのうえ、これらの偉大な町が我々から奪われ、そこに我々の居場所がなくなるとも言っている。
06 我々は、このようなことがあり得ないのを知っている。まことに、我々は強く、町は偉大であるので、敵は我々を支配する権力を持てないからだ。」

07 そして、彼らは人々を扇動してニーファイのことを怒らせ、人々の中に争いを生じさせた。というのは、次のように叫んだ人々もいたからである。「この人をそのままにしておけ。この人は立派な人だ。我々が悔い改めなければ、この人の言うことは必ず起こるだろう。
08 そして見よ、この人が我々に証した裁きは、すべて我々に下るだろう。我々は、この人が我々の罪悪について正しく証したのを知っている。見よ、我々の罪悪は多い。この人は、我々の罪悪を知っているように、将来我々に起こるすべてのことも知っている。
09 まことに見よ、もしこの人が預言者でなかったならば、それらのことについて証ができなかっただろう。」
10 そして、ニーファイを殺そうとした者たちは恐れ、彼を捕らえることはどうしてもできなかった。そこで彼は、ある人々が自分に好意を寄せ、またそのことでほかの者が恐れているのを見て、人々に再び話し始めた。
11 彼はもっと話すように強く促されて、人々に言った。「見よ、同胞よ、あなたがたは神が一人の人モーセに、紅海の水を打つ力を与えられたことを読んだことがないのか。紅海の水は右と左に分かれたので、わたしたちの先祖であるイスラエル人は、乾いた地を通って出て来た。また、その水はエジプト人の軍勢の上に閉じ、彼らをのみ尽くしてしまった。
12 そして見よ、神がかつてこのような力をこの人に与えられたのであれば、なぜあなたがたは互いに論じ合うのか。悔い改めなくしてはもたらされない、裁きについて知ることのできる力を、神がわたしに与えられなかったと言うのか。
13 しかし見よ、あなたがたは、わたしの言葉を否定しているだけでなく、わたしたちの先祖が語ったすべての言葉と、このような偉大な力を与えられたこのモーセが語った言葉、まことに、彼がメシヤの来臨に関して語った言葉をも否定している。
14 まことに彼は、神の御子が将来来られることを証しなかったか。彼が荒れ野で青銅の蛇を上げたように、将来来られる神の御子も上げられるであろう。
15 また、その蛇を仰ぎ見る者が皆生きたように、悔いる霊を抱いて、信仰をもって神の御子を仰ぎ見る者は皆、生きることができ、永遠であるあの命にあずかるであろう。
16 さて見よ、これらのことを証したのはモーセだけではない。彼の時代からアブラハムの時代にさかのぼる聖なる預言者たちも皆、証した。
17 そして見よ、アブラハムは、神の御子の来臨を見て、喜びに満たされ、うれしく思った。
18 見よ、あなたがたに言うが、これらのことを知っていたのはアブラハムだけではない。アブラハムの時代以前にも、神の位に従って、すなわち神の御子の位に従って召された人々が多数いた。これは、神の御子の来臨に先立つ何千年も前に、将来贖いが与えられるということを民に示すためであった。
19 またあなたがたは、アブラハムの時代以降にもこれらのことを証した預言者が多くいたということを知ってほしい。まことに、預言者ゼノスは大胆に証し、そのために殺された。
20 また見よ、ゼノクも、イザイアスも、イザヤも、エレミヤもいた。(エレミヤとは、エルサレムの滅亡について証したあの預言者である。)そしてわたしたちは、エルサレムがエレミヤの言葉のとおりに滅ぼされたことを知っている。おお、それならば、どうして彼の言葉のとおりに神の御子が来られないことがあろうか。
21 あなたがたはエルサレムが滅ぼされたという事実に反論するつもりか。あなたがたは、ゼデキヤの息子たちがミュレクのほか皆殺されたのに、殺されなかったと言うつもりか。ゼデキヤの子孫がエルサレムの地を追われ、今わたしたちとともにいるのを、あなたがたは見ていないのか。しかし見よ、これだけではない。
22 わたしたちの先祖リーハイは、これらのことを証したためにエルサレムから追い出された。ニーファイもこれらのことを証し、現在に至るまでの先祖たちもほとんど皆、証した。彼らはキリストの来臨について証し、将来を見通し、将来来るキリストの日を喜んだ。
23 見よ、キリストは神であり、今わたしたちの先祖とともにおられる。また、キリストは彼らに御自身を現し、彼らがキリストによって贖われることを告げられた。そこで彼らは、将来起こることのために、キリストに栄光を帰した。
24 あなたがたはこれらのことを知っており、偽りを言うのでなければこれらのことを否定できないので、このことにおいてあなたがたは罪を犯した。あなたがたは、このように多くの証拠を与えられてきたにもかかわらず、これらのことをすべて受け入れなかったからである。まことに、あなたがたはこれらのことが真実であるという証拠として、万物を、すなわち天にあるものと地にある万物を、ともに与えられてきた。

25 しかし見よ、あなたがたは真実を受け入れず、聖なる神に背いてきた。そして、今でさえあなたがたは、何ものも朽ちない、また清くないものは何一つ入れない天に、自分自身のために宝を蓄えるのではなく、裁きの日に対して自分自身のために激しい怒りを積み重ねている。
26 まことに、今でさえあなたがたは、殺人と不貞と悪事のために永遠の滅びの機を熟させつつある。悔い改めなければ、それは間もなくあなたがたに及ぶであろう。

27 まことに見よ、それは今まさにあなたがたの戸口にある。さばきつかさのいる所へ行って調べてみなさい。見よ、あなたがたのさばきつかさは殺されており、血の中に横たわっている。彼はさばきつかさの職に就くことを求めている自分の兄弟に殺されたのである。
28 見よ、彼らは二人とも、あなたがたの秘密の団に所属している。その秘密の団の創設者は、ガデアントンと、人々の霊を滅ぼそうとしている悪しき者である。」

第9章

使いの者たち、大さばきつかさがさばきつかさの席で死んでいるのを発見する。彼らは投獄され、後に釈放される。ニーファイ、霊感によってセアンタムを殺人者と断定する。ニーファイ、ある人々から預言者として受け入れられる。紀元前約23年から21年に至る。


01 さて見よ、ニーファイがこれらの言葉を語り終えると、彼らの中のある者たちがさばきつかさのいる所へ走って行った。すなわち、5人の者が行き、行く途中で互いに言った。
02 「見よ、この男が預言者かどうか、またこのような驚くべきことを我々に預言するように、神がこの男に命じたのかどうか、必ず分かるだろう。見よ、我々は神が命じたとは信じない。まことに、彼が預言者であるとも信じない。しかし、彼が大さばきつかさについて言ったこのことがほんとうで、大さばきつかさが死んでいれば、彼の語ったほかの言葉もほんとうだと、我々は信じよう。」

03 そして彼らは力のかぎり走って、さばきつかさのいる所に入って行った。すると見よ、大さばきつかさが地に倒れ、血の中に横たわっていた。
04 さて見よ、彼らはこれを見ると非常に驚き、地に倒れてしまった。彼らはニーファイが大さばきつかさについて語った言葉を信じていなかったからである。
05 しかし、彼らは見て信じ、ニーファイの語った裁きがすべて民に下るのではないかという恐れに打たれた。そして、そのために彼らは震えおののき、地に倒れてしまったのである。

06 ところで、さばきつかさが殺されるとすぐに、すなわち、彼の兄弟がひそかに彼を突き刺して逃げるとすぐに、従者たちは走って行き、人々に殺害のことを大声で告げ知らせた。
07 すると見よ、人々はさばきつかさの席のある場所に集まって来たが、見よ、驚いたことに、5人の者が地に倒れていた。

08 さて見よ、人々は、ニーファイの庭に集まっていた大勢の者のことは何も知らなかったので、互いに、「この男たちはさばきつかさを殺した者たちだ。この男たちが我々から逃げられないように、神が打たれたのだ」と言った。

09 そして彼らは、この5人を捕らえて縛ると、牢に入れた。それから、さばきつかさが殺され、殺人者たちが捕らえられて牢に入れられたということが広く告げ知らされた。

10 そしてその翌日、殺された大さばきつかさの埋葬に当たって、人々は哀悼の意を表し、断食するために集まった。
11 そのため、ニーファイの庭にいて、彼の言葉を聞いたさばきつかさたちも、埋葬に集まっていた。
12 そして彼らは人々の中で、「大さばきつかさが死んでいるかどうか調べるために遣わされた5人の者はどこにいるだろうか」と尋ねた。すると人々は、「あなたがたが遣わしたと言うその5人については、我々は知りませんが、殺人者である5人の者は牢に入れてあります」と答えた。

13 そこでさばきつかさたちは、彼らを連れて来るように求め、彼らは連れて来られた。見よ、それは遣わされた5人の者たちであった。そこで見よ、さばきつかさたちは、その件について彼らに尋ね、彼らは自分たちの行ったことをすべて、さばきつかさたちに話した。

14 「わたしたちは走って、さばきつかさのいる所に行きました。そして、ニーファイが証したとおりのことをすべて見たので、驚いて地に倒れてしまいました。そして、驚きが収まって正気に戻ると、牢に入れられていました。

15 この方の殺害に関しては、わたしたちはだれがそれを行ったのか知りません。わたしたちの知っているのは、あなたがたに求められたとおりにわたしたちは走って行き、ニーファイの言葉のとおりに、この方が死んでいるのを見たことだけです。」
16 そこでさばきつかさたちは、人々にそのことをよく説明し、ニーファイを非難して叫んで言った。「見よ、我々は知っている。そのニーファイという者がだれかと共謀して、さばきつかさを殺したに違いない。そして彼は、その後に我々にそのことを告げ、我々を彼の信仰に転向させて、自分が神の選ばれた偉大な者に、また預言者になろうとしたのだ。
17 さて見よ、我々はその男を調べよう。その男は自分の悪事を自白し、このさばきつかさのほんとうの殺害者を我々に告げるだろう。」

18 そして5人の者は、埋葬の日に釈放された。しかし彼らは、さばきつかさたちがニーファイを非難して語った言葉のことで、さばきつかさたちをたしなめ、彼らの一人一人と論じ合って、彼らを言い伏せた。
19 にもかかわらず、さばきつかさたちはニーファイを捕らえて縛らせ、群衆の前に連れて来させた。そして彼らは、いろいろな方法で彼を尋問し、彼に矛盾したことを言わせて、死刑にする訴えを起こせるように謀った。

20 そして、彼らは彼に言った。「おまえは共謀者だ。この殺害を行った当人はだれだ。我々に話して、おまえの悪事を認めよ。」また言った。「見よ、ここに金がある。もしおまえが我々に話して、おまえが殺人者と取り決めを結んだことも認めるならば、我々はおまえの命を許してやろう。」
21 しかし、ニーファイは彼らに言った。「おお、愚かな者、心に割礼のない者、盲目な者、強情な民よ。あなたがたがこの罪の道を歩き続けるのを、主なる神がいつまで許されるか、あなたがたは知っているのか。

22 おお、あなたがたは悔い改めなければ、今あなたがたを待ち受けているひどい滅亡のために、泣きわめき、嘆き悲しむようになるに違いない。
23 見よ、わたしがある男と共謀して、わたしたちの大さばきつかさであるセゾーラムを殺させたと、あなたがたは言う。しかしまことに、あなたがたに言うが、あなたがたがそう言うのは、あなたがたがこのことについて知ることができるように、わたしが証したためである。すなわち、あなたがたの中にある悪事と忌まわしい行いを知っている証拠として、あなたがたに証したためである。
24 ところが、わたしがこのようにしたので、あなたがたは、わたしがある男と共謀してこのことを行わせたと言う。また、わたしがこのしるしをあなたがたに示したので、あなたがたはわたしのことを怒り、わたしの命を取ろうとしている。
25 さて見よ、わたしはもう一つのしるしをあなたがたに示し、あなたがたがこのことで、わたしを殺そうとするかどうかを見よう。
26 見よ、あなたがたに言う。セゾーラムの兄弟であるセアンタムの家に行き、彼に、

27 『この民について非常に多くの災いを預言している、自称預言者のニーファイがあなたと共謀し、それであなたがたが兄弟のセゾーラムを殺したのですか』と言いなさい。
28 見よ、彼は、『そうではない』とあなたがたに言うだろう。

29 そこで、あなたがたは彼に、『あなたが兄弟を殺したのですか』と言いなさい。
30 すると彼は恐れて立ち尽くし、言葉に詰まる。そして彼はあなたがたの言葉を打ち消し、驚いたふりをするだろう。それでも、自分は潔白であるとあなたがたに告げるだろう。
31 しかし彼をよく調べなさい。そうすれば、彼の外套のすそに血が見つかるだろう。
32 あなたがたはこれを見たら、『この血はどこでついたのですか。これはあなたの兄弟の血ではないですか』と言いなさい。

33 すると彼は震えおののき、まるで死んだように蒼白になる。
34 そこであなたがたは、『このように恐れ、また顔色が蒼白になったからには、きっとあなたが罪を犯したのだろう』と言いなさい。
35 すると彼は、ますます恐れて、やがてあなたがたに自白し、自分がこの殺害を行ったことをもはや否定しないだろう。
36 それから彼は、神の力によってわたしニーファイにそれが示されたのでなければ、そのことについて分かるはずがないと、あなたがたに告げるだろう。そのときあなたがたは、わたしが正直な男であり、あなたがたのもとに神から遣わされていることを知るだろう。」

37 そこで彼らは行って、ニーファイから言われたとおりにした。するとまことに、彼の言った言葉はほんとうであった。セアンタムはその言葉のとおりに否定し、またその言葉のとおりに自白した。
38 そして、彼自身がまさにその殺害者であることが立証されたので、5人の者は釈放され、ニーファイも釈放された。
39 ニーファイの言葉を信じた者がニーファイ人の中に何人もおり、また5人の者が証したことで信じた者も何人もいた。5人の者は、牢の中にいた間に改心していたからである。

40 そして、ニーファイは預言者であると言う者が、民の中に何人もいた。
41 また、「神でなければすべてのことを知ることができないので、まことにこの人は神だ。この人はわたしたちの心の思いを告げ、またいろいろなこともわたしたちに告げてきた。わたしたちの大さばきつかさのほんとうの殺害者さえも教えてくれた」と言う者たちもいた。

第10章

主、ニーファイに結び固めの権威を授けられる。ニーファイ、地上でも天でもつなぎ、解く力を付与される。ニーファイ、悔い改めるように民に命じ、悔い改めなければ滅びることを告げる。ニーファイ、御霊によって群衆から群衆へと連れて行かれる。紀元前約21年から20年に至る。


01 さて、民の中に不一致が生じたため、彼らはあちらこちらに分かれて、それぞれ去って行った。そしてニーファイは、彼らの真ん中に立っていて、ただ一人残された。
02 そこでニーファイも、主が自分に示してくださったいろいろなことを深く考えながら、家路に就いた。
03 そして、彼は深く考え、ニーファイの民の悪事と、彼らの隠れた闇の業と、殺人と、略奪と、あらゆる罪悪のことでひどく沈んでいた。そして、彼がこのように心の中で深く考えていたとき、まことに一つの声が彼に聞こえて、こう言われた。

04 「ニーファイ、あなたはこれまで行ってきたことのために幸いである。わたしがあなたに授けた言葉を、あなたが根気よくこの民に告げ知らせたことを、わたしは見たからである。あなたは彼らを恐れることなく、また自分の命を得ようとせず、わたしの思いを求め、わたしの戒めを守ろうとしてきた。

05 さて、あなたがこのように根気よくこのことを行ってきたので、見よ、わたしはとこしえにあなたを祝福しよう。また、わたしはあなたを言葉にも行いにも、信仰にも働きにも、力のある者にしよう。あなたはわたしの思いに反することを求めないので、まことに、すべてのことがあなたの言葉のとおりに行われるであろう。
06 見よ、あなたはニーファイであり、わたしは神である。見よ、わたしは天使たちの前であなたに宣言する。あなたはこの民に対して力を持ち、またこの民の悪に応じて飢饉、疫病、破壊で地を打つであろう。
07 見よ、あなたが地上で結ぶことは何でも天で結ばれ、あなたが地上で解くことは何でも天で解かれるように、わたしはあなたに力を授ける。したがって、あなたはこの民の中で力を持つであろう。
08 したがって、もしあなたがこの神殿に向かって二つに裂けるように言えば、そのとおりになるであろう。
09 もしあなたがこの山に向かって、『崩れて平らになれ』と言えば、そのとおりになるであろう。
10 また見よ、もしあなたが神はこの民を打たれると言えば、そのようになるであろう。

11 さて見よ、今わたしはあなたに命じる。あなたは行ってこの民に、『全能者である主なる神は、「あなたがたは悔い改めなければ滅びるまで打たれる」と言われる』と告げ知らせなさい。」
12 さて見よ、主がこれらの御言葉をニーファイに言われると、ニーファイは立ち止まり、自分の家に帰らず、地の面の方々に散っている群衆のもとへ戻って行った。そして、彼らは悔い改めなければ滅びるという、自分に告げられた主の言葉を彼らに告げた。
13 さて見よ、ニーファイが大さばきつかさの死について彼らに告げて行った、あの大きな奇跡があったにもかかわらず、彼らは心をかたくなにし、主の言葉に聞き従わなかった。
14 そこでニーファイは、彼らに主の言葉を告げ、「『あなたがたは悔い改めなければ滅びるまで打たれる』と主が言われる」と語った。

15 さて、ニーファイが彼らにその御言葉を告げても、見よ、彼らはなおも心をかたくなにし、彼の言葉に聞き従おうとしなかった。そして彼らは、ニーファイをののしり、また牢に入れるために彼を捕らえようとした。
16 しかし見よ、神の力がニーファイとともにあったので、彼らはニーファイを捕らえて牢に入れることができなかった。彼は御霊によって取り上げられ、彼らの中から連れ去られてしまったからである。

17 そして、彼は御霊の内にあって群衆から群衆へと巡り、神の言葉を告げ知らせた。そして、ついに彼はすべての者に神の言葉を告げ終え、すべての民の中に神の言葉を伝え終えた。
18 さて、彼らはニーファイの言葉を聴こうとしなかった。そして、争いが起こったため、彼らは分かれて互いに剣で殺し合うようになった。
19 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第71年が終わった。


【動画】ニーファイ,大きな力を授かる


第11章

ニーファイ、民の戦争の代わりに飢饉があるように主に願う。多くの人が死ぬ。人々は悔い改め、ニーファイは主に雨を請い願う。ニーファイとリーハイ、多くの啓示を受ける。ガデアントンの強盗たち、その地で勢力を確立する。紀元前約20年から6年に至る。


01 さて、さばきつかさの統治第72年に、争いが激しくなり、国中至る所ですべてのニーファイの民の中に戦争が起こった。
02 この滅亡と悪の業を行ったのは、あの秘密強盗団であった。この戦争は年内続き、第73年にも続いた。

03 そしてこの年に、ニーファイは主に叫び求めた。
04 「おお、主よ、この民が剣で滅びることのないようにしてください。主よ、むしろ国内に飢饉があるようにし、彼らに主なる彼らの神を思い起こさせてください。きっと彼らは悔い改めて、あなたに立ち返るでしょう。」

05 すると、ニーファイの言葉のとおりになった。その地に、すなわちすべてのニーファイの民の中に大飢饉があった。このようにして、第74年にも飢饉は続き、剣による滅亡の業はやんだが、飢饉によって滅亡がひどくなった。

06 この滅亡は第75年にも続いた。地は打たれて乾き、穀物の実る季節にも穀物を産しなかった。また、全地が打たれて、ニーファイ人の中だけでなくレーマン人にも影響が及んだ。その結果、民は打たれ、ひときわ邪悪な地方では何千もの人々が死んだ。
07 そこで人々は、自分たちがまさに飢饉によって滅びようとしているのを見て、主なる神を思い起こすようになり、またニーファイの言葉を思い返すようになった。

08 そして人々は、自分たちの大さばきつかさたちと指導者たちに、ニーファイに対して次のように言うよう頼んだ。「まことに、わたしたちはあなたが神の人であることを知っています。ですから、あなたがわたしたちの滅亡について語った言葉がすべて成就することのないように、主なるわたしたちの神に、この飢饉を遠ざけてくださるよう叫び求めてください。」

09 そこでさばきつかさたちは、人々が望んだ言葉のとおりにニーファイに言った。するとニーファイは、人々が悔い改め、粗布をまとってへりくだっているのを見て、再び主に叫び求めて言った。
10 「おお、主よ、この民は悔い改めています。彼らが自分たちの中からガデアントンの団を一掃したため、団の者たちはいなくなり、彼らは秘密のはかりごとを地中に隠してしまいました。
11 おお、主よ、このように彼らは謙遜になっていますので、あなたの怒りを解いてください。あなたがすでに滅ぼされたあの悪人たちの滅亡をもって、あなたの怒りを和らげてください。
12 おお、主よ、あなたの怒り、まことにあなたの激しい怒りを解いて、この地における飢饉をやませてください。
13 おお、主よ、わたしの祈りをお聴きください。わたしの言葉のとおりになり、地の面に雨が降り、穀物の実る季節に、地が果実と穀物を産するようにしてください。
14 おお、主よ、わたしが、『飢饉があって、剣による滅亡がやむようにしてください』と申し上げたときに、あなたはわたしの言葉をお聴きくださいました。また、あなたがかつて、『この民が悔い改めるならば、わたしは彼らの命を助けよう』と言われましたので、わたしはこの度も、あなたがわたしの言葉をお聴きくださることを存じています。
15 まことに、おお、主よ、彼らに起こった飢饉と疫病と滅亡のために、彼らがすでに悔い改めていることを、あなたは御存じです。
16 おお、主よ、あなたの怒りを解き、彼らがあなたに仕えるかどうかもう一度お試しください。もし仕えるならば、おお、主よ、かつて言われた御言葉のとおりに、彼らを祝福してください。」

17 そこで、第76年に、主は民から怒りを遠ざけて地に雨が降るようにされたので、地は果実の実る季節に果実を産した。また、穀物の実る季節に穀物を産した。
18 そこで見よ、民は喜び、神をあがめ、喜びが地の全面に満ちた。そして彼らは、もうニーファイを殺そうとせず、彼を偉大な預言者として、また神から授けられた大いなる力と権能を持つ神の人として尊んだ。
19 見よ、彼の弟リーハイも、義にかかわることに関しては少しもニーファイに劣らなかった。

20 さて、ニーファイの民は再びその地で栄えるようになり、荒れ果てた所を建て直し始めた。また彼らは、増えて広がり始め、ついに北方と南方の地の全面を、西の海から東の海に至るまで覆った。
21 そして、第76年が平穏に終わり、第77年も平穏に始まった。教会は全地の面に広がり、ニーファイ人もレーマン人も、民の大半が教会に所属し、彼らはその地で非常に大いなる平和を得た。このようにして、第77年が終わった。
22 また第78年も、預言者たちによって定められた教義の幾つかの点について少し争いがあったほかは、平和であった。
23 ところが第79年に、多くの争いが始まった。しかし、ニーファイとリーハイと、彼らの同僚たちの多くは、教義の真の要点について理解し、日々多くの啓示を受けていたので、人々に教えを説き、その年のうちに争いを鎮めた。

24 さて、何年か前にニーファイの民からレーマン人のもとへ行き、自らレーマン人と名乗った離反者たちがおり、また、その離反者たちによって怒りをかき立てられたレーマン人の実の子孫たちもいて、ニーファイの民のさばきつかさの統治第80年に、これらの者たちが同胞と戦争を始めた。
25 彼らは殺人と略奪を行っては、山の中や荒れ野や隠れ場に引き揚げて身を隠し、見つからないようにしていた。そして、彼らのもとに行く離反者たちがいたため、日々その人数が増えた。

26 このようにしてついに、何年もたたないうちに、彼らは非常に大きな強盗団になった。そして彼らは、ガデアントンの秘密のはかりごとをすべて探し出し、ガデアントン流の強盗になった。
27 さて見よ、この強盗たちは、ニーファイの民の中に、またレーマン人の民の中にも、ひどい荒廃、まことにひどい滅亡をもたらした。
28 そこで、この滅亡の業をやめさせることが必要であったので、この強盗団を捜し出して滅ぼすために、荒れ野と山に強い兵から成る軍隊が送り込まれた。
29 しかし見よ、その年のうちに、兵はそれぞれの地へ追い返された。このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第80年が終わった。
30 さて、第81年の初めに、彼らは再びこの強盗団に向かって出て行き、多くの者を殺した。しかし、彼らもひどい損害を受けた。
31 また、山や荒れ野に群れを成していたその強盗たちの数が非常に多かったので、兵は再び荒れ野と山からそれぞれの地に引き揚げざるを得なかった。
32 そして、このようにしてこの年は終わった。強盗たちは依然として増え続け、強くなったため、ニーファイ人とレーマン人の全軍をものともしなかった。そして、彼らは地の全面で人々をひどく恐れさせた。
33 まことにそれは、彼らが多くの地方を襲って、民にひどい滅亡をもたらしたからである。すなわち、多くの者を殺し、またある者たちを、特に、女たちと子供たちを捕らえて荒れ野へ連れ去ったからである。
34 そこで民は、自分たちの罪悪のために受けたこの大きな災いに促され、再び主なる彼らの神を思い起こすようになった。
35 このようにして、さばきつかさの統治第81年が終わった。
36 ところが第82年に、彼らはまた主なる神を忘れ始めた。そして第83年に、彼らはさらに罪悪を募らせ、第84年にも行いを改めなかった。
37 そして第85年には、彼らはますます高慢と悪事を募らせ、そのために再び滅亡の機が熟してきた。
38 このようにして、第85年が終わった。

第12章

人は不安定で、愚かで、悪を行うのが早い。主は御自分の民を懲らしめられる。人の無力さと対比される神の力。裁きの日に、人は永遠の命か永遠の罰の定めかのどちらかを受ける。紀元前約6年。


01 このことからわたしたちは、人の子らの心がどれほど不誠実で不安定であるかを知ることができる。まことに、主を信頼する者たちを、主が大いなる限りない慈しみをもって祝福し、栄えさせられるということも、わたしたちは知ることができる。
02 また、主が御自分の民を栄えさせられるまさにそのとき、まことに、民の畑と家畜の群れを増し、金銀と、あらゆる自然の貴重な品々と人工の貴重な品々を与え、民の命を助け、敵の手から民を救い出し、また宣戦することのないように敵の心を和らげ、要するに御自分の民の繁栄と幸いのためにあらゆることを行われるそのときに、彼らは心をかたくなにし、主なる神を忘れ、聖者を足の下に踏みつけるということが、わたしたちに分かるのである。これは、彼らが安楽で、非常に豊かに繁栄したためである。
03 またこのことから、主が多くの苦難をもって御自分の民を懲らしめられなければ、まことに、死と恐怖と飢饉とあらゆる疫病を下されなければ、彼らは主を思い起こそうとしないことが分かる。
04 おお、人の子らは何と愚かで、虚栄心が強く、邪悪で悪魔に従い、何と罪悪を行うのが早く、善を行うのが遅いことか。何と悪しき者の言葉を聴くのが早く、俗世のむなしいものに執着するのが早いことか。
05 まことに、何と高慢になるのが早いことか。何と誇るのが早く、あらゆる罪悪を行うのが早いことか。人の子らは何と主なる神を思い起こすのが遅く、主の勧告に耳を傾けるのが遅いことか。何と知恵の道を歩むのが遅いことか。
06 見よ、人の子らは、自分たちを造ってくださった主なる神に治められ、統治されるのを望まない。主が深い慈しみと憐れみをかけてくださっているのに、人の子らは主の勧告を軽んじ、主が自分たちの導き手になってくださるのを望まない。
07 おお、人の子らは何と無力なことか。まことに、地のちりよりも劣っている。
08 見よ、地のちりは、わたしたちの大いなる永遠の神の命令に応じてあちらこちらに動いて分かれる。
09 まことに見よ、神の声によって丘と山は揺れ動き、震える。
10 神の声の力によってそれらは崩れて平らになり、まことに谷のようにさえなる。
11 まことに、神の声の力によって全地が揺れ動く。
12 まことに、神の声の力によって地の基がその中心までも振動する。
13 そして、もし神が大地に向かって、「動け」と言われれば、大地は動く。
14 まことに、もし神が大地に向かって、「逆に進んで、昼を何時間も長くせよ」と言われれば、そのとおりになる。
15 このように、神の言葉のとおりに大地は逆に進むので、人には太陽が静止しているように見える。見よ、これは事実である。確かに動いているのは大地であり、太陽ではないからである。
16 また見よ、もし神が大いなる深みの水に向かって、「干上がれ」と言われれば、そのとおりになる。
17 見よ、もし神がこの山に向かって、「持ち上がって、行ってあの町の上に落ち、町を埋めよ」と言われれば、見よ、そのとおりになる。
18 見よ、もしある人が地中に宝を隠し、主が、「それを隠した者の罪悪のために、それはのろわれよ」と言われれば、見よ、それはのろわれる。
19 もし主が、「今から後とこしえにだれにも見つからないように、おまえはのろわれよ」と言われれば、見よ、これから先とこしえに、だれもそれを得られない。
20 見よ、もし主がある人に向かって、「あなたは自分の罪悪のためにとこしえにのろわれる」と言われれば、そのとおりになるであろう。
21 もし主が、「あなたは自分の罪悪のためにわたしの前から絶たれる」と言われれば、主はそのようになさるであろう。
22 主からこのように言われる者は災いである。罪悪を行う者はそのとおりになり、その者は救われないからである。このため、人々が救われるように、悔い改めが告げ知らされてきたのである。
23 したがって、悔い改めて、主なる神の声に聞き従おうとする者は幸いである。救われるのはこれらの者だからである。
24 神が御自分の大いなる完全さに照らして、人々を悔い改めと善行に導き、それぞれの行いに応じた恵みに回復してくださるように。
25 わたしはすべての人が救われることを願っている。しかし、わたしたちの読んだところによれば、大いなる終わりの日には、捨てられる者たち、まことに、主の前から追い出される者たち、
26 まことに、無窮の惨めな状態に置かれる者たちがいるとのことである。そして、「善を行った者は永遠の命を受け、悪を行った者は永遠の罰の定めを受ける」という御言葉が成就するのである。まことにそのとおりである。アーメン。

レーマン人サムエルがニーファイ人に語った預言。次の第13〜15章がそれに相当する。

第13章

レーマン人サムエル、ニーファイ人は悔い改めなければ滅亡することを預言する。ニーファイ人と彼らの富はのろわれる。ニーファイ人は預言者たちを拒んで石を投げつけ、悪霊たちに取り囲まれ、罪悪を行うことに楽しみを求める。紀元前約6年。


01 さて、第86年にも、ニーファイ人は依然として悪事を、まことに大きな悪事を続けていた。一方レーマン人は、モーセの律法に従って神の戒めを厳密に守るように努めていた。


02 そしてこの年に、レーマン人のサムエルという者がゼラヘムラの地にやって来て、民に教えを説き始めた。彼は幾日もの間、民に悔い改めを宣べ伝えたが、民が彼を追い出したので、彼は自分の国へ帰ろうとした。

03 ところが見よ、主の声が彼に聞こえて、もう一度引き返し、心の中に浮かぶことを、どのようなことであろうと民に預言するように言われた。

04 さて、民は、彼が町に入るのを許さなかった。そこで彼は、町の城壁の上に登り、手を伸ばして大声で叫び、主が心に与えてくださることをすべて民に預言した。

05 彼は民に言った。「見よ、わたし、レーマン人サムエルは、主がわたしの心に与えてくださる主の御言葉を告げる。この民に告げるように主がわたしの心に与えてくださったことは次のとおりである。罰の剣が今この民のうえに迫っている。400年たたないうちに、罰の剣はこの民のうえに振り下ろされる。
06 まことに、ひどい滅亡がこの民を待ち受けており、それは必ずこの民に下る。悔い改めて、主イエス・キリスト、すなわち、将来必ずこの世に来て、多くの苦しみを受け、御自分の民のために殺される主イエス・キリストを信じる以外に、何事もこの民を救うことはできない。
07 そして見よ、主の天使がそれをわたしに告げた。また主の天使は、わたしに喜びのおとずれを携えて来た。見よ、あなたがたもその喜ばしいおとずれを得られるように、わたしはあなたがたにそれを告げ知らせるために遣わされたのである。しかし見よ、あなたがたはわたしを受け入れようとしなかった。
08 したがって、主は次のように言われる。『ニーファイ人の民の心がかたくなであるので、彼らが悔い改めなければ、彼らからわたしの言葉を取り去ろう。また、わたしの霊も取り去ろう。そしてわたしは、もはや彼らをそのままにはしておかず、彼らの同胞に彼らに対する敵対心を抱かせよう。
09 400年たたないうちに、わたしは彼らが打たれるようにしよう。まことに、わたしは剣と飢饉と疫病を彼らに及ぼそう。
10 まことにわたしは、激しい怒りをもって彼らを罰しよう。あなたがたの敵の第4世代の者の中には、生き長らえて、あなたがたの完全な滅亡を見る者がいるであろう。あなたがたが悔い改めなければ、このことは必ず起こる』と、主は言われる。『その第4世代の者たちがあなたがたを滅ぼすであろう。
11 しかし、もしあなたがたが悔い改めて、主なるあなたがたの神に立ち返るならば、わたしは怒りを解こう』と、主は言われる。まことに、主は次のように言われる。『悔い改めてわたしに立ち返ろうとする者は幸いである。しかし、悔い改めない者は災いである。
12 まことに、この大きなゼラヘムラの町は災いである。見よ、この町が今救われているのは、義を守っている者たちのおかげである。まことに、この大きな町は災いである。多くの者、まことにこの大きな町の大半の者が将来わたしに対して心をかたくなにすることを、わたしは知っているからである』と、主は言われる。
13 『しかし、悔い改める者は幸いである。わたしはその者たちの命を救うからである。しかし見よ、もしこの大きな町に義人がいなければ、見よ、わたしは天から火を下し、この町を滅ぼしていたであろう。
14 しかし見よ、この町が今助かっているのは、義人のためである。しかし見よ、あなたがたが義人を追い出す時が来る。そのとき、あなたがたの滅亡の機は熟する』と、主は言われる。『まことに、この大きな町は、その中にある悪事と忌まわしい行いのために災いである。
15 また、ギデオンの町も、その中にある悪事と忌まわしい行いのために災いである。
16 また、周りの地にあるニーファイ人が所有しているすべての町は、その中にある悪事と忌まわしい行いのために災いである。』
17 また見よ、万軍の主は言われる。『この地にいる民のために、まことに彼らの悪事と忌まわしい行いのために、のろいが地に下るであろう。』
18 そしてこのように、万軍の主、まことにわたしたちの大いなるまことの神は言われる。『地中に宝を隠す者は、その者が義人であって、主に託してそれを隠すのでなければ、地のひどいのろいのために、もはや二度とそれを見いだせないであろう。』
19 主は言われる。『宝を隠す者はわたしに託して隠すようにわたしは望む。わたしに託すことなく宝を隠す者はのろわれる。義人以外にはだれも、わたしに託して宝を隠さないからである。わたしに託すことなく宝を隠す者はのろわれるし、その宝ものろわれる。また、地がのろわれるために、それを取り出す者はだれもいない。
20 人々が富に執着して自分の宝を隠す日が来る。人々は自分の富に執着し、敵の前から逃げるときに自分の宝を隠すであろう。しかし、彼らは宝を隠すときにわたしに託さないので、彼らも宝ものろわれる。そしてその日に彼らは打たれる』と、主は言われる。
21 見よ、あなたがた、この大きな町の民よ、注意を払い、わたしの言葉を聴きなさい。まことに、主が言われる御言葉を聴きなさい。あなたがたは富のためにのろわれると、主は言われる。また、あなたがたが富に執着し、それを授けてくださった御方の御言葉に聞き従わなかったので、あなたがたの富ものろわれると、主は言われる。
22 あなたがたは、主なる神が授けてくださったものについて、主を思い起こさない。あなたがたはいつも富のことを心にかけていて、主なるあなたがたの神に富のことを感謝するのを忘れている。まことに、あなたがたの心は主に向いておらず、ひどくおごり高ぶって、誇りや大言壮語、ねたみ、争い、悪意、迫害、殺人、そのほかあらゆる罪悪に陥っている。
23 このために、主なる神は、のろいが地に下るように、またあなたがたの富にも下るようにされた。それはあなたがたの罪悪のためである。
24 まことに、この民は災いである。あなたがたは昔の人々が行ったように、今、預言者たちを追い出し、あざけり、石を投げつけ、彼らを殺し、また彼らに対してあらゆる罪悪を行っているからである。
25 あなたがたは語るとき、『わたしたちは、もし昔の先祖の時代に生きていたならば、預言者たちを殺さなかったであろう。預言者たちに石を投げつけることも、彼らを追い出すこともしなかったであろう』と言う。
26 見よ、あなたがたは彼らよりも悪い。主が生きておられるように確かに、もし預言者があなたがたの中に来て、あなたがたの罪と不義を証する主の御言葉を告げ知らせたならば、あなたがたはその預言者のことを怒り、追い出し、あらゆる方法を使って殺そうとする。まことに、彼があなたがたの行いは悪いと証するので、あなたがたは、彼は偽預言者であり、罪人であり、悪魔から出た者であると言う。
27 しかし見よ、もしある人があなたがたの中に来て、『これを行いなさい。行っても罪悪ではない。それを行いなさい。行っても苦しみを受けない』と言えば、また、『あなた自身の心の高ぶりに従って歩きなさい。まことに、あなたの目の高ぶりに従って歩きなさい。あなたの心が望むことを何でも行いなさい』と言えば、すなわち、もしある人があなたがたの中に来てこのように言えば、あなたがたは彼を受け入れ、彼は預言者であると言うであろう。
28 まことに、あなたがたは彼をあがめ、彼にあなたがたの持ち物を与え、彼にあなたがたの金銀を与え、また彼に高価な衣服を着せるであろう。そして、彼があなたがたにへつらいの言葉を語り、万事よしと言うので、あなたがたは彼を非難しないであろう。
29 おお、邪悪でよこしまな人々よ。かたくなで強情な民よ。あなたがたは、主がいつまであなたがたをそのままにしておかれると思っているのか。まことに、あなたがたはいつまで愚かな盲目の導き手たちに引かれていくつもりか。まことに、あなたがたはいつまで光よりも闇を選ぶつもりか。
30 まことに見よ、主の怒りはすでにあなたがたに向かって燃えている。見よ、主はあなたがたの罪悪のために地をのろわれた。
31 また見よ、主があなたがたの富をのろわれて、それがなくなりやすくなり、あなたがたがそれを保つことのできない時が来る。あなたがたは、貧しいときにそれを保てない。
32 あなたがたの貧しいときに、あなたがたは主に叫び求めるであろう。しかし、あなたがたが叫び求めても無駄である。すでに荒廃があなたがたに及んでおり、あなたがたの滅亡が確定しているからである。そして、『その日、あなたがたは涙を流し、泣きわめくであろう』と、万軍の主は言われる。また、そのときあなたがたは嘆いて、
33 『おお、わたしは悔い改め、預言者たちを殺さず、石を投げつけず、追い出さなければよかった』と言うであろう。まことに、その日にあなたがたは言うであろう。『おお、主なるわたしたちの神が富を与えてくださったその日に、主を思い起こしておけばよかった。そうすれば、富がなくなりやすくなって、それを失うということはなかったであろう。見よ、わたしたちの富は今はもうわたしたちのもとにない。
34 見よ、わたしたちがここに道具を置くと、翌日にはそれはなくなる。見よ、戦いのために自分の剣を捜す日には、それはなくなっている。
35 まことに、わたしたちは自分の宝を隠しておいたのに、地ののろいのために失われてしまった。
36 おお、主の御言葉がわたしたちに及んだ日に、悔い改めておけばよかった。今、地はのろわれ、すべてのものがなくなりやすくなっており、わたしたちはそれらを保てない。
37 見よ、わたしたちは悪霊に取り囲まれている。わたしたちの霊を滅ぼそうとしてきた者の使いに取り囲まれている。わたしたちの罪悪は大きい。おお、主よ、あなたの怒りを解いていただけませんでしょうか。』これがその日にあなたがたの言う言葉である。
38 しかし見よ、あなたがたの試しの日はすでに過ぎ去った。あなたがたは自分の救いの日を引き延ばしたので、とうとう永遠に間に合わなくなってしまい、あなたがたの滅亡は確定してしまった。まことに、あなたがたは手に入れることのできないものを、生涯をかけて求めてきたのである。あなたがたは、罪悪を行いながら幸福を求めてきた。それはわたしたちの大いなる永遠の頭の内にある、あの義の本質に反することである。
39 おお、この地の民よ、わたしの言葉を聞いてもらいたい。わたしは主の怒りが解かれるように、またあなたがたが悔い改めて救われるようにと祈っている。」


【動画】レーマン人サムエル,イエス・キリストについて話す


第14章

サムエル、キリストの降誕の時には夜中も明るく、一つの新しい星が現れることを予告する。キリストは人々を肉体の死と霊の死から贖われる。キリストの死のしるしとして、3日間の暗闇があり、岩が裂け、自然の大変動がある。紀元前約6年。

01 さて、レーマン人サムエルは、ほかにもここに書き記せない非常に多くのことを預言した。

02 見よ、彼は民に言った。「見よ、わたしはあなたがたにしるしを与える。もう5年たつと、見よ、神の御子がその御名を信じるすべての人を贖うために来られる。

03 見よ、神の御子の来臨の時のしるしとして、あなたがたに次のことを知らせておく。見よ、天に大いなる光があるために、神の御子が来られる前の夜は暗闇がなく、人にはまるで昼のように思われる。
04 したがって、2昼1夜がまるで1日のようであって、夜がない。これがあなたがたへのしるしである。あなたがたには日の出も日の入りも分かるので、2昼1夜であることが確かに分かる。しかし、夜は暗くならない。それが神の御子のお生まれになる前夜である。
05 また見よ、あなたがたが一度も見たことのないような一つの新しい星が現れる。これもあなたがたへのしるしである。
06 そして見よ、これだけではない。天には多くのしるしと不思議がある。
07 そして、あなたがたは皆、驚き、不思議に思い、地に倒れるであろう。
08 そして、神の御子を信じる者は皆、永遠の命を受ける。
09 見よ、わたしが来て、このことをあなたがたに告げるように、主は天使を通じてわたしに命じられた。まことに、これらのことをあなたがたに預言するようにと、主は命じられた。まことに、主はわたしに、『悔い改めて主の道を備えよと、この民に叫びなさい』と言われた。
10 ところが、わたしがレーマン人であって、主から命じられた御言葉をあなたがたに語ったので、また、それがあなたがたにとって堪え難かったので、あなたがたはわたしを怒って、わたしを殺そうとし、あなたがたの中からわたしを追い出した。
11 あなたがたは、わたしの言葉を聞かなければならない。わたしがこの町の城壁に登ったのは、あなたがたの罪悪のゆえにあなたがたを待ち受けている神の裁きについて、あなたがたが聞いて知ることができるように、またあなたがたが悔い改めの条件を知ることができるようにするためである。
12 また、あなたがたがイエス・キリスト、すなわち神の御子、天地の父、時の初めからの万物の創造主の来臨を知ることができるようにするためであり、さらにあなたがたがイエス・キリストの来臨のしるしを知って、イエス・キリストの御名を信じられるようにするためである。
13 あなたがたは、イエス・キリストの御名を信じるならば、罪をすべて悔い改めるであろう。それによってあなたがたは、イエス・キリストの功徳を通じて罪の赦しを得るのである。
14 見よ、さらにわたしはもう一つのしるし、すなわち、イエス・キリストの死のしるしをあなたがたに知らせておく。
15 見よ、イエス・キリストは必ず死ななくてはならない。救いがもたらされるためである。まことに、それはイエス・キリストの務めである。死者の復活をもたらし、それによって人々が主の御前に導かれるようにするために、イエス・キリストが死なれることが必要になっているのである。
16 まことに見よ、この死は復活をもたらし、第1の死、すなわちあの霊の死から全人類を贖う。全人類は、アダムが堕落したことによって主の御前から絶たれているので、現世の事柄に関しても霊的な事柄に関しても、ともに死んだと考えられているからである。
17 しかし見よ、キリストの復活は人類、まことに全人類を贖って主の御前に連れ戻す。
18 そして、それは悔い改めの条件を果たし、悔い改める者は、切り倒されて火の中に投げ込まれることはないが、悔い改めない者は皆、切り倒されて火の中に投げ込まれる。そしてこれらの者には、再び霊の死、まことに第2の死が及ぶ。彼らは義にかかわる事柄に関して再び絶たれるからである。
19 だから、あなたがたは悔い改めなさい、悔い改めなさい。さもなければ、あなたがたはこれらの事柄を知っていて行わないので、罪の宣告を受けることになり、またこの第2の死に落とされることになる。

20 ところで見よ、前に言ったように、もう一つのしるし、すなわちキリストの死のしるしについて述べると、見よ、キリストが死なれる日には、太陽は暗くなって、あなたがたにその光を与えようとしない。また、月も星も同様である。キリストが亡くなられるときから3日間、すなわちキリストが再び死者の中からよみがえられるときまで、この地の面にはまったく光がない。

21 まことに、キリストが息を引き取られるときには、何時間も雷と稲妻があり、大地が振動し、揺れ動くであろう。また、この地の面にある岩は地上の岩も地下の岩も、今あなたがたの知っているように堅固であり、その大半は頑丈な一つの塊であるが、それが砕かれるであろう。
22 まことに、それらの岩は二つに裂けて、ひびや割れ目や砕けた破片がその後いつまでも、全地の面に、また地上にも地下にも見いだされるであろう。
23 また見よ、大暴風雨があるであろう。そして、多くの山が谷のように低くなり、現在谷と呼ばれている多くの場所が、非常に高い山となるであろう。
24 また、多くの街道が破壊され、多くの町が荒れ果てるであろう。
25 さらに、多くの墓が開かれて、多くの死者を出し、多くの聖徒が多くの人に現れるであろう。
26 見よ、このように天使がわたしに語った。何時間にもわたって雷と稲妻があると、天使はわたしに言った。
27 また天使はわたしに、これらのことは、このように雷と稲妻と暴風雨が続く間にあり、さらにまた暗闇が3日間、全地の面を覆うと言った。
28 また天使はわたしに、これらのしるしとこれらの不思議がこの地の全面に現れることを、多くの者が信じられるように、また人の子らの中に不信仰の起こることがないように、多くの者はこれらのことよりも大いなることを見るであろうと言った。
29 またこれは、信じる者が皆救われ、信じない者に義の裁きが下るようにするためでもある。そして、もし彼らが罪に定められるとすれば、自分の罪の宣告を自分自身に招くのである。
30 覚えておきなさい。わたしの同胞よ、覚えておきなさい。滅びる者は自分で滅び、罪悪を行う者は自分でそれを行うのである。なぜなら、あなたがたは自由であり、あなたがたは随意に行動することを許されているからである。見よ、神はあなたがたに知識を与えて、あなたがたを自由にしてくださったからである。
31 神はあなたがたが善悪をわきまえられるようにしてくださり、また、あなたがたが生でも死でも選べるようにしてくださった。あなたがたは善を行って、善であるものに回復される。言い換えれば、あなたがたに回復された善であるものを持つことができる。また、あなたがたは悪を行って、あなたがたに回復された悪であるものを持つこともできるのである。」

第15章

主はニーファイ人を愛しておられたので、彼らを懲らしめられた。改宗したレーマン人は信仰が確固として堅固である。主は末日にレーマン人に憐れみをかけられる。紀元前約6年。

01 「わたしの愛する同胞よ、見よ、あなたがたに告げる。悔い改めなければ、あなたがたの家は荒れ果てたまま残されるであろう。
02 まことに、あなたがたが悔い改めなければ、あなたがたの婦人たちは乳を飲ませる日に嘆き悲しむことになる。あなたがたは逃げようとするが、避け所となる場所がない。また、子供を宿している婦人たちは災いである。身重で逃げられないからである。したがって、その婦人たちは踏みにじられ、置き去りにされて死ぬであろう。
03 まことに、ニーファイの民と呼ばれているこの民は、自分たちに示されるこれらのしるしと不思議をすべて見るときに、悔い改めなければ災いである。まことに、彼らは主の選ばれた民であったからである。まことに、ニーファイの民を主は愛してこられ、また主はこの民を懲らしめてこられた。主はニーファイの民を愛しておられたので、彼らが罪悪を犯した日に彼らを懲らしめられた。
04 しかし見よ、わたしの同胞よ、主はレーマン人を憎んでこられた。彼らの行いがいつも悪かったからであり、これは彼らの先祖の言い伝えが正しくなかったためである。ところが見よ、ニーファイ人の宣教によって、救いがレーマン人に与えられ、このために主は彼らの時代を引き延ばされた。
05 またあなたがたは、レーマン人の大半が自分の義務の道にあり、神の御前を注意深く歩み、モーセの律法に従って神の戒めと神の掟と神の裁決を守るように努めているのを、見てもらいたい。
06 まことに、あなたがたに言うが、彼らの大半がこのように行っている。そして彼らは、残りの同胞にも真理を知らせようと熱心に勤勉に努めているので、日々彼らの仲間に加わる者が多い。
07 見よ、あなたがた自身見て知っているとおり、彼らの多くは今真理を知っており、彼らの先祖の言い伝えが邪悪で忌まわしいことも知っており、また聖文、まことに書き記されている聖なる預言者たちの預言を信じるようになっている。これらの預言は主を信じる信仰と悔い改めに彼らを導き、その信仰と悔い改めが彼らに心の変化をもたらしている。
08 したがって、あなたがた自身知っているとおり、このようになった者は皆、信仰において、また彼らに自由を得させた事柄において確固として堅固である。
09 また、あなたがたも知っているように、彼らは自分たちの武器を埋めてしまった。そして彼らは、決して罪を犯してはならないと思い、武器を取ることを恐れている。まことに、あなたがたは彼らが罪を犯すのを恐れているのを見ることができる。見よ、彼らは敵に踏みにじられて殺されるに任せ、敵に対して剣を振り上げようとしない。これは、彼らがキリストを信じているためである。
10 また彼らには、自分の信じていることを信じる確固とした強さがあり、一度啓発されると固く守り通す強さもあるので、彼らが罪悪を犯したにもかかわらず、見よ、主は将来彼らを祝福し、彼らの時代を引き延ばされるであろう。
11 まことに、たとえ彼らが不信仰に陥ったとしても、主は彼らの時代を引き延ばされ、わたしたちの先祖と預言者ゼノスとそのほか多くの預言者が語ってきた時が訪れるであろう。すなわち、同胞であるレーマン人に、再び以前のように真理が知らされることについて語ってきた、その時が訪れるであろう。
12 まことに、あなたがたに言う。末の時代における主の約束はわたしたちの同胞であるレーマン人に与えられている。彼らは多くの苦難に遭い、地の面であちらこちらへ追い立てられ、狩り出され、打たれ、広く散らされて、避け所となる場所がなくなるにもかかわらず、主は彼らに憐れみをかけられる。
13 これは、彼らが真実の知識、すなわち彼らの贖い主、彼らの大いなるまことの羊飼いを知る知識に再び導かれて、その羊飼いの羊の中に数えられるという預言にかなっている。
14 したがって、あなたがたに言う。あなたがたが悔い改めなければ、彼らの方があなたがたよりも幸いである。
15 見よ、これまであなたがたに示されてきた力ある業が、彼らに、まことに先祖の言い伝えのために不信仰に陥っている彼らに示されていたならば、彼らは決して二度と不信仰に陥らなかったであろう。あなたがた自身、それを見ることができる。
16 したがって主は、『彼らを完全には滅ぼさず、わたしの知恵にかなう日に、彼らを再びわたしに立ち返らせよう』と言われる。
17 また見よ、主は、ニーファイ人の民について、『もし彼らが悔い改めてわたしの思いを行うように努めなければ、わたしが彼らの中で行ってきた多くの力ある業にもかかわらず、彼らは不信仰であるので、わたしは彼らをことごとく滅ぼそう。主が生きているように確かに、これらのことは行われる』と言われる。」

第16章

サムエルの言葉を信じたニーファイ人、ニーファイからバプテスマを受ける。悔い改めないニーファイ人の矢も石も、サムエルを殺すことはできない。ある者は心をかたくなにし、別の者は天使を見る。キリストを信じることも、エルサレムにキリストが来臨されることを信じることも道理にかなっていないと、不信者たちは言う。紀元前約6年から1年に至る。


01 さて、レーマン人サムエルが町の城壁の上で語る言葉を聞いた者は大勢いた。そして、彼の言葉を信じた者は皆、出て行ってニーファイを捜した。彼らは行ってニーファイを見つけると、バプテスマを受けて主のものとなることを願って、罪を彼に告白して否定しなかった。

02 しかし、サムエルの言葉を信じない者たちもおり、彼らは皆サムエルに腹を立てた。そして彼らは、城壁の上にいる彼に石を投げつけた。また、城壁の上に立っている彼に多くの者が矢を射かけた。しかし、主の御霊が彼に伴っていたので、彼らは石も矢も当てることができなかった。

03 そして、当てることができないのを見て、さらに多くの者が彼の言葉を信じた。そして彼らは、バプテスマを受けるためにニーファイのもとへ行った。

04 見よ、それは、ニーファイがバプテスマを施し、預言し、教えを説き、民に悔い改めを叫び、またキリストが間もなく必ず来られることを民に知らせるために、数々のしるしと不思議を示し、彼らの中で数々の奇跡を行っていたからである。
05 ニーファイは、間もなく起こることを民に告げていた。それらのことが実際に起こったときに信じることができるように、あらかじめそれが知らされていたということを認めさせ、思い起こさせるためであった。そこで、サムエルの言葉を信じた者は皆、バプテスマを受けるためにニーファイのもとへ行った。彼らは悔い改め、罪を告白するために行ったのである。

06 しかし、民の大半はサムエルの言葉を信じなかった。そこで彼らは、石も矢も彼に当てることができないのを見ると、彼らの隊長たちに叫び、「この男を捕らえて、縛ってくれ。この男には悪霊がついている。この男の内にある悪魔の力のために、我々は石も矢も当てることができない。だから、この男を捕らえて、縛り、追い払ってくれ」と言った。


07 そこで、隊長たちが行ってサムエルを捕らえようとしたところ、見よ、彼は城壁から飛び降りて、彼らの地から逃げ出し、自分の国へ帰って行った。そして彼は、自分の民の中で教えを説き、預言し始めた。
08 見よ、彼がニーファイ人を訪れたという話は一度もない。民の状況は以上のとおりであった。
09 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第86年が終わった。
10 また、さばきつかさの統治第87年もこのようにして終わり、民の大半は依然として高慢で悪事を続けており、神の前をさらに注意深く歩んでいたのは、少数の者にすぎなかった。
11 さばきつかさの統治第88年もこのような状態であった。
12 また、さばきつかさの統治第89年も、民がさらに罪悪にふけるようになり、ますます神の戒めに反することを行うようになったことを除けば、民の状況はほんの少し変わっただけであった。
13 ところが、さばきつかさの統治第90年になると、民に数々の大きなしるしと不思議が与えられ、預言者たちの言葉が成就し始めた。
14 また、天使たちが人々、すなわち賢い人々に現れ、胸躍る大いなる喜びのおとずれを彼らに告げ知らせた。このように、聖文に記されていることがこの年に成就し始めた。
15 にもかかわらず、ニーファイ人もレーマン人も、民の中で最も信仰の深い人々を除いて、彼らは皆、心をかたくなにし始め、自分自身の力と自分自身の知恵に頼るようになって、こう言った。
16 「このように多くのことの中で、彼らがうまく言い当てたことも幾らかある。しかし見よ、これまで述べられてきたこれらの大いなる驚くべき業が、すべて現実に起こることはあり得ないのを我々は知っている。」
17 また、彼らは互いに論じ、論争して言った。
18 「キリストのような者が来ることは道理に合わない。仮にそうだとして、これまで言われてきたように、その人が神の御子であり天地の父であるとすれば、なぜエルサレムにいる者たちだけでなく、我々にも現れないのか。
19 まことに、なぜエルサレムの地だけでなく、この地にも姿を現さないのか。
20 しかし見よ、我々は、これが我々の先祖から伝えられてきた悪い言い伝えであることを知っている。これが伝えられたのは、将来起こるある大いなる驚くべきことを我々に信じさせるためであるが、それは我々の中ではなく、我々の知らない遠くの地で起こる。だから、我々はその言い伝えがほんとうであることを自分の目で見ることができないので、彼らは我々を無知の中にとどめておくことができる。
21 また彼らは、悪しき者の悪知恵と不思議な術策によって、我々の理解できないある大きな奇跡を起こし、我々を従えて彼らの言葉の奴隷とし、彼らの僕にしようとする。それは、我々が彼らから御言葉を教わろうとするからである。このように我々が彼らに自分の身をゆだねようとすれば、彼らは生涯我々を無知の中にとどめておくだろう。」
22 民は、愚かでむなしいことをほかにもたくさん心に思い浮かべた。またサタンが絶えず罪悪を行うように彼らをあおり立てたので、彼らはひどく心を乱された。まことに、サタンは方々を巡って地の全面にうわさと争いを広め、善いことと将来起こることに対して民の心をかたくなにさせたのであった。
23 そして、主の民の中で数々のしるしと不思議が行われ、また主の民が多くの奇跡を行ったにもかかわらず、サタンは地の全面で人々の心を大いに支配するようになった。
24 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第90年が終わった。
25 これでヒラマンと彼の息子たちの記録によるヒラマン書は終わる。