エテル書


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モーサヤ王の時代にリムハイの民が発見した、24枚の版から取ったヤレド人の記録。

第1章

モロナイ、エテルの書いた記録を短くまとめる。エテルの系図。ヤレド人の言語、バベルの塔のある地で乱されることを免れる。主はヤレド人をえり抜きの地に導き、大いなる国民とすることを約束される。

01 わたしモロナイは、この北の地の面で主の手によって滅ぼされた、昔のあの民について話をすることにする。
02 わたしは、リムハイの民が発見した24枚の版から取ってわたしの記録とする。その版はエテル書と呼ばれている。
03 その版の記録の最初の部分には、世界の創造とアダムが造られたこと、そのときから大塔に至るまでの話、それに大塔のときまでに人の子らの中に起こったことが載っているが、この部分はユダヤ人も持っていると思うので、
04 わたしは、アダムの時代から大塔のときまでに起こったそれらの事柄については書き記さない。それらの事柄はその版に載っているので、その版を見つける者は、すべての内容を手に入れる力を持つであろう。
05 しかし見よ、わたしが記すのはすべての話ではない。塔のときから彼らが滅びるときまで、話の一部のみを記す。
06 わたしが記す話は次のとおりである。この記録を書き記したのはエテルであって、コリアントルの子孫であった。
07 コリアントルはモロンの息子であり、
08 モロンはイーサムの息子であり、
09 イーサムはエーハの息子であり、
10 エーハはセツの息子であり、
11 セツはシブロンの息子であり、
12 シブロンはコムの息子であり、
13 コムはコリアンタムの息子であり、
14 コリアンタムはアムニガダの息子であり、
15 アムニガダはアロンの息子であり、
16 アロンはヘテの子孫であり、ヘテはヒアルサムの息子であり、
17 ヒアルサムはリブの息子であり、
18 リブはキシの息子であり、
19 キシはコロムの息子であり、
20 コロムはレビの息子であり、
21 レビはキムの息子であり、
22 キムはモリアントンの息子であり、
23 モリアントンはリプレーキシの子孫であり、
24 リプレーキシはシェズの息子であり、
25 シェズはヘテの息子であり、
26 ヘテはコムの息子であり、
27 コムはコリアンタムの息子であり、
28 コリアンタムはイーマーの息子であり、
29 イーマーはオメルの息子であり、
30 オメルはシュールの息子であり、
31 シュールはキブの息子であり、
32 キブはオライハの息子であり、オライハはヤレドの息子であった。

33 ヤレドは彼の一人の兄弟と彼らの家族、および何人かのほかの人々と彼らの家族と一緒に、大塔のある所から出て来た。それは、主が民の言語を乱し、また激しく怒って民を地の全面に散らすと誓われたときのことである。そして、主の言葉のとおりに民は散らされた。

34 ヤレドの兄弟は体の大きな強い人であり、主から大いに恵みを受けていた人であったので、彼の兄弟ヤレドは彼に言った。「主がわたしたちの言語を乱して、わたしたちが自分たちの言葉を理解できなくなることのないように、主に祈り願ってほしい。」

35 そこで、ヤレドの兄弟が主に叫び求めたところ、主はヤレドを哀れんで、ヤレドの言語を乱されなかった。そのため、ヤレドと彼の兄弟には言語の混乱はなかった。
36 その後、ヤレドは彼の兄弟に言った。「もう一度主に叫び求めてほしい。そうすれば、主はわたしたちの友である人々から怒りを解いて、彼らの言語を乱されないかもしれない。」
37 そこでヤレドの兄弟が主に叫び求めたところ、主は彼らの友人たちとその家族も哀れんで、彼らの言語も乱されなかった。
38 そして、ヤレドは再び彼の兄弟に言った。「主がわたしたちをこの地から追い出すおつもりかどうか、行って主に尋ねてほしい。そして、もし主がわたしたちをこの地から追い出すおつもりであれば、わたしたちはどこに行くのか、主に祈って尋ねてもらいたい。主は、全地の中でえり抜きの地に、わたしたちを連れ出してくださるかもしれない。もしそうであれば、わたしたちはそこを受け継ぎとして頂けるように、主に忠実であろうではないか。」
39 そこでヤレドの兄弟は、ヤレドの口を通して述べられたとおりに主に叫び求めた。
40 そこで主は、ヤレドの兄弟の祈りを聞き、彼を哀れんで言われた。

41 「行って、あなたの家畜の群れを全種類雄も雌も集め、また地の種も全種類にわたって集めなさい。また、あなたの家族と、あなたの兄弟ヤレドと彼の家族、あなたの友人たちと彼らの家族、ヤレドの友人たちと彼らの家族を集めなさい。

42 そして、あなたはこれを終えたら、彼らを率いて北方にある谷に下って行きなさい。そこでわたしはあなたに会おう。そして、わたしはあなたの前を行き、地のあらゆる土地に勝ったえり抜きの土地へとあなたを導こう。
43 そしてわたしは、あなたとあなたの子孫をそこで祝福し、またあなたの子孫と、あなたの兄弟の子孫と、あなたがたとともに行く者たちの子孫から、わたしのために一つの大いなる国民を起こそう。わたしがあなたがたの子孫からわたしのために起こす国民よりも大いなる国民は、地の全面に一つもないであろう。わたしがあなたにこのように行うのは、あなたがこのように長い間わたしに叫び求めてきたからである。」


【動画】バベルを離れるヤレドの民


第2章

ヤレド人、約束の地へ旅立つ用意をする。約束の地はえり抜きの地であり、この地の人々はキリストに仕えなければ一掃される。主は3時間ヤレドの兄弟に語られる。ヤレド人、数隻の船を造る。主はヤレドの兄弟に、どのようにして船内を明るくすることを望むかお尋ねになる。

01 さて、ヤレドと彼の兄弟と、彼らの家族と、ヤレドの友人たちと、ヤレドの兄弟の友人たちと、友人たちの家族は、彼らの集めたあらゆる家畜の群れを雄も雌も連れて、北方にある谷に下って行った。(その谷の名は、力ある狩人にちなんで名付けられ、ニムロデといった。)

02 彼らはまた、わなを仕掛けて空の鳥を捕らえた。また、器を用意して水の魚を運んだ。

03 また、彼らはデゼレトも運んだ。デゼレトとは、蜜蜂という意味である。このようにして、彼らは幾つかの蜂の群れを運び、また地の面にあるあらゆるもの、あらゆる種も携えて行った。
04 さて、彼らがニムロデの谷に下って行くと、主が降って来て、ヤレドの兄弟と話された。しかし、主は雲の中におられたので、ヤレドの兄弟には主が見えなかった。

05 そこで主は彼らに、荒れ野の中へ、すなわち、これまで人が決して住んだことのない地方へ行くように命じられた。そして、主は彼らの前を行かれた。また、主は雲の中に立って彼らと話し、彼らの旅をする方向について指示を与えられた。
06 そこで、彼らは荒れ野を旅し、数隻の船を造ってそれで多くの水を渡り、絶えず主の手に導かれて行った。

07 主は、彼らが海を越えた荒れ野にとどまることを許さず、彼らが約束の地まで行くことを望まれた。約束の地とは、ほかのあらゆる地に勝ったえり抜きの地で、主なる神が義にかなった民のために残しておかれた所である。
08 また主は激しく怒って、この約束の地を所有する者はだれでもそのときから後とこしえに、主に、すなわちまことの唯一の神に仕えなければならず、さもなければ神の限りない怒りが彼らに下るときに彼らは一掃されると、ヤレドの兄弟に誓っておられた。
09 さて、わたしたちは、約束の地であるこの地について神の定めを知ることができる。この地を所有する国民はどの国民も神に仕えなければならない。さもなければ、神の限りない怒りが彼らに下るときに彼らは一掃される。また、彼らの罪悪が熟したときに、神の限りない怒りが彼らに下るのである。
10 見よ、まことにこの地が、ほかのあらゆる地に勝ったえり抜きの地だからである。したがって、この地を所有する者は神に仕えなければならない。さもなければ一掃される。これは神の永遠の定めである。しかし、この地の子らの中に罪悪が満ちるまで、彼らが一掃されることはない。
11 おお、異邦人よ、この記録をあなたがたに伝えるのは、あなたがたに神の定めを知らせるためである。また、あなたがたが悔い改めて、罪悪の満ちるまであなたがたの罪悪を続けることのないように、またこれまで、この地に住む民が自分のうえに神の限りない怒りを招いてきたようなことを、あなたがたもすることのないようにさせるためである。
12 見よ、この地はえり抜きの地であり、この地を所有する民はどの国民も、この地の神に仕えさえすれば、奴隷の状態にも囚われの身にもなることなく、天下のほかのどのような国民からも支配を受けない。この地の神とはイエス・キリストであり、わたしたちが書き記してきたことによって明らかにされた御方である。

13 さて、わたしは自分の記録を続けよう。見よ、主はヤレドと彼の同行者たちを、陸地と陸地を分けている大海まで導かれた。そこで彼らは、海に着くと天幕を張り、その場所をモリアンカマーと名付けた。そして、彼らは天幕に住んだ。彼らは4年間、その海岸で天幕に住んだ。

14 さて、4年の終わりに、主は再びヤレドの兄弟を訪れ、雲の中に立って彼と話された。そして、主は3時間ヤレドの兄弟と話し、彼が主の名を呼ぶことを思い起こさなかったので、彼を懲らしめられた。

15 そこでヤレドの兄弟は、自分が行った悪を悔い改め、自分とともにいた同行者たちのために主の名を呼んだ。すると、主は彼に言われた。「わたしはあなたを赦し、またあなたの同行者たちの罪を赦そう。あなたはもう罪を犯してはならない。あなたがたは覚えておきなさい。わたしの御霊はいつでも人を励ますわけではない。したがってあなたがたは、罪の熟するまで罪を犯すならば、主の前から絶たれるであろう。これが、受け継ぎとしてあなたがたに与える土地についてのわたしの考えである。なぜならば、この地は、ほかのあらゆる地に勝ったえり抜きの地だからである。」


16 また主は、「仕事に取りかかり、あなたがたが前に造った船に倣って船を造りなさい」と言われた。そこで、ヤレドの兄弟と彼の同行者たちは仕事に取りかかり、主の指示のとおりに、彼らがかつて造った方法で数隻の船を造った。その船は小さく、水の上に軽く浮き、まるで水の上に軽く浮いた鳥のようであった。

17 またその船は、透き間がなく非常によく造られており、水の漏れないことは皿のようであった。その船底は皿のように透き間がなく、船腹も皿のように透き間がなく、船のへさきとともはとがっており、船の屋根も皿のように透き間がなく、その船の長さは1本の木の長さであった。また、船の入り口は、閉じると皿のように透き間がなかった。
18 さて、ヤレドの兄弟は主に祈って言った。「おお、主よ、わたしはあなたから命じられた務めを果たし、あなたから指示されたとおりに船を造りました。

19 まことに、おお、主よ、船の中には光がありません。わたしたちはどこへ向かえばよいのでしょうか。また、わたしたちは死んでしまうことでしょう。船の中にある空気だけでは呼吸ができなくなるからです。それゆえ、わたしたちは死んでしまうでしょう。」

20 すると、主はヤレドの兄弟に言われた。「見よ、屋根と船底に一つずつ穴を作りなさい。そして、空気で苦しむようになったら、その穴の栓を抜いて空気を入れなさい。もし水が入って来るようであれば、水があふれて死ぬことのないように、見よ、その穴をふさぎなさい。」
21 そこでヤレドの兄弟は、主から命じられたとおりにした。

22 そして、彼は再び主に祈って言った。「おお、主よ、わたしはあなたから命じられたように行いました。そして、わたしの民のために船を準備しました。しかし、船の中には光がありません。まことに、おお、主よ、あなたはわたしたちに、暗闇の中でこの大海を渡らせようとなさるおつもりですか。」

23 主はヤレドの兄弟に言われた。「あなたがたは、船の中に光があるようにするために、わたしに何をしてもらいたいのか。窓はばらばらに砕けるので、見よ、窓を付けることはできない。また、火を携えることもない。火の光を使って旅をすることはないからである。
24 見よ、あなたがたは、海の中の鯨のようになるであろう。山のような波があなたがたに打ちつける。しかし、わたしは再び海の深みからあなたがたを連れ出そう。風はわたしの口から吹き出し、また雨と多くの水もわたしは送り出した。
25 見よ、わたしはこれらのものに対してあなたがたを備えさせる。わたしが海の波と、吹きつける風と、寄せ来る多くの水に対してあなたがたを備えさせなければ、あなたがたはこの大いなる深みを渡ることができないからである。したがって、あなたがたが海の深みにのまれるときに光があるように、あなたがたはわたしに何をしてもらいたいか。」


【動画】約束の地へ向うヤレドの民


第3章

ヤレドの兄弟、主が16個の石に触れられたときに主の指を見る。キリスト、ヤレドの兄弟に御自分の霊体をお見せになる。完全な知識を持つ者は、幕の内側を見ることを禁じられない。ヤレド人の記録を明るみに出すために解訳器が準備される。



01 さて(このときに準備された船の数は8隻であった)、ヤレドの兄弟は、非常に高いために彼らがシーレム山と名付けた山に行き、一つの岩から16個の小さな石を溶かし出した。その石は白く、透き通っており、透明なガラスのようであった。そして、彼はそれらの石を両手に持って山の頂上に登り、再び主に祈って言った。
02 「おお、主よ、あなたは、わたしたちが必ず水の深みに取り囲まれると言われました。まことに、おお、主よ、あなたの僕があなたの御前にあって弱いからということで、あなたの僕をお怒りにならないでください。わたしたちはあなたが聖なる御方であり、天に住んでおられること、そしてわたしたちがあなたの御前に取るに足りない者であることを存じています。堕落のために、わたしたちの性質は絶えず悪くなっています。にもかかわらず、おお、主よ、あなたはわたしたちに戒めを与えられ、わたしたちの望みに応じてあなたから得られるようにあなたに請い願わなければならないと言われました。
03 まことに、おお、主よ、あなたはわたしたちの罪悪のためにわたしたちを打ち、わたしたちを追い出されました。そして、わたしたちはこれまで何年間も荒れ野で暮らしてきました。それでも、あなたはわたしたちに憐れみをかけられました。おお、主よ、わたしたちを哀れと思い、あなたのこの民からあなたの怒りを遠ざけ、この民が暗闇の中でこの荒れ狂う深みを越えて行くことのないようにしてください。わたしが岩から溶かし出したこれらのものを御覧ください。

04 おお、主よ、わたしはあなたが一切の権威をお持ちであり、あなたが人のために望まれることは何でもおできになることを存じています。ですから、おお、主よ、これらの石にあなたの指で触れて、これらの石が暗闇の中で光を放つものとなるようにしてください。そうすれば、これらの石はわたしたちが準備した船の中でわたしたちのために光を放ち、わたしたちは海を渡る間、光を得ることができるでしょう。
05 まことに、おお、主よ、あなたにはこれがおできになります。わたしたちはあなたが大いなる力を示されることを存じています。その力は人々の理解では小さく見えますが、実は大いなるものです。」


06 そして、ヤレドの兄弟がこれらの言葉を述べ終えると、見よ、主は手を差し伸べて、指で一つ一つ石に触れられた。すると、ヤレドの兄弟の目から幕が取り除かれ、彼は主の指を見た。それは人の指のようで、血肉の指に似ていた。ところが、ヤレドの兄弟は恐怖に打たれ主の前に倒れた。
07 主はヤレドの兄弟が地に倒れたのを見て、彼に言われた。「立ち上がりなさい。なぜあなたは倒れたのか。」
08 そこで彼は主に答えた。「わたしは主の指を見て、主に打たれるのではないかと恐れました。主が血肉をお持ちであることを知らなかったからです。」
09 すると主は彼に言われた。「あなたは信仰があるので、わたしが将来血肉を受けるのを見たのである。これまでにあなたのような深い信仰をもって、わたしの前に来た者は一人もいない。もしそうでなければ、あなたはわたしの指を見ることができなかったであろう。あなたはこれ以外に何かを見たか。」
10 そこで彼は答えた。「いいえ、主よ、わたしに御自身を現してください。」
11 すると主は彼に言われた。「あなたはわたしが告げる言葉を信じるか。」
12 そこで、彼は答えた。「はい。主よ、わたしはあなたが真実を告げられることを存じています。あなたは真理の神であり、偽りを言われることはありません。」

13 彼がこれらの言葉を述べ終えると、見よ、主は彼に御自身を現して言われた。「あなたはこれらのことを知っているので、堕落から贖われ、わたしの前に連れ戻されている。そこで、わたしはあなたにわたし自身を現す。

14 見よ、わたしは、自分の民を贖うために世の初めから備えられた者である。わたしはイエス・キリストである。わたしは父であり、子である。わたしによって全人類は命を得る。すなわち、わたしの名を信じる者は永遠に命を得る。そして、これらの者はわたしの息子となり、娘となる。
15 わたしは、これまでわたしの造った者に一度もわたし自身を現したことはない。あなたほど深くわたしを信じた者がいなかったからである。あなたは、あなたがたがわたし自身の形に造られていることが分かったか。まことに、すべての人は初めにわたし自身の形に造られたのである。
16 見よ、あなたが今見ているこの体は、わたしの霊の体である。わたしは自分の霊の体に倣って人を造った。わたしは今、霊の状態であなたに現れているように、将来肉にあってわたしの民に現れる。」
17 さて、わたしモロナイは、書き記されているこれらのことについて、すべてを記すことはできないと前に述べたので、次のことを言えばわたしにとって十分である。すなわちイエスは、ニーファイ人に御自身を現されたときと同じように、同じ体の形で、霊の状態でこの人に御自身を現された。
18 またイエスは、ニーファイ人を教え導かれたように、彼をも教え導かれた。これはすべて、主がこれまでこの人に示された多くの大いなる業によって、御自分が神であられることを彼に知らせるためであった。
19 この人は知識があったので、幕の内側を見るのを禁じられなかった。そして彼は、イエスの指を見て、見たときに恐れて倒れてしまった。それが主の指であることを知ったからである。彼が得ているものは、もはや信仰ではなかった。なぜなら、彼は何の疑いもなく知ったからである。
20 したがって、彼は神についてのこの完全な知識を得たので、幕の内側を見るのを禁じられなかった。それゆえ彼は、イエスにまみえ、イエスから教えと導きを授けられたのであった。
21 さて、主はヤレドの兄弟に言われた。「見よ、わたしが肉にあってわたしの名に栄光を受ける時が来るまで、あなたは見聞きしたこれらのことを、世の人々に公にしてはならない。あなたは見聞きしたことを心に留めておき、だれにもそれを知らせてはならない。
22 見よ、あなたはわたしのもとに来るとき、これらのことを書き記し、それを封じて、だれもこれらのことを解釈できないようにしなさい。あなたは人々が読めない言語でこれらのことを書き記すので、だれも読むことができない。
23 見よ、これらの二つの石をあなたに与えよう。あなたは書き記すこととともに、これらの石も封じなさい。
24 見よ、あなたが書き記す言語はわたしがすでに乱したので、わたしは自分がふさわしいと思うときに、あなたが書き記すこれらのことを、これらの石によって人々の目に明らかにさせよう。」

25 主はこれらの御言葉を語ると、かつてこの世にいた地のすべての民と、これからこの世に来るすべての民をヤレドの兄弟にお見せになった。また主は彼らを、地の果てに至るまで彼に見せずにはおかれなかった。
26 主は以前に何度か、もし自分を信じるならばあらゆるものを見せることができる、必ず見せると、彼に言っておられた。そこで主は、彼に何事も見せずにはおかれなかった。彼は、主があらゆるものを自分に見せることがおできになることを、知っていたからである。
27 主は彼に言われた。「これらのことを書き記して封じなさい。わたしは自分がふさわしいと思うときに、これらのことを人の子らに知らせよう。」
28 そして主は彼に、彼の受け取った二つの石も封じて、主がこれらのことを人の子らに示されるときまで、これを示してはならないと命じられた。

第4章

モロナイ、ヤレドの兄弟の記録を封じるように命じられる。その記録は、人々がヤレドの兄弟のような信仰を持つまで明らかにされない。キリスト、御自分の言葉と弟子たちの言葉を信じるように人々に命じられる。人々は、悔い改めて福音を信じることによって救いを得るように命じられる。

01 主はヤレドの兄弟に、主の前を去って山を下り、見たことを書き記すように命じられた。しかし、書き記す内容は、主が十字架に上げられる後まで、人の子らに明らかにするのを禁じられた。このためにモーサヤ王は、キリストが御自分の民に御自身を現される後まで、その記録が世の人々に明らかにされることのないように保存したのであった。
02 そしてキリストは、実際に御自分の民に御自身を現された後、それを明らかにするようにと命じられたのである。
03 その後、彼らは皆不信仰に陥り、今はレーマン人のほかにはだれもいない。そして、レーマン人もキリストの福音を拒んだので、わたしはその記録を再び地の中に隠すように命じられている。
04 見よ、わたしは、ヤレドの兄弟が見たとおりのことをこの版に書き記した。ヤレドの兄弟に明らかにされたこと以上に大いなることは、いまだかつて明らかにされたことがない。
05 そこで主はわたしに、それらのことを書き記すように命じられた。そして、わたしはそれを書き記した。すると、主はわたしに、それを封じるように命じられた。また、主がその解訳も封じるようにと命じられたので、わたしは主の命じられたとおりに解訳器も封じた。
06 主がわたしに、「異邦人が彼らの罪悪を悔い改めて、わたしの前に清くなる日まで、これらのものは異邦人に伝わることがないであろう」と言われたからである。
07 また、主は言われる。「彼らがわたしによって聖い者となるために、ヤレドの兄弟のようにわたしを信じる日に、わたしはヤレドの兄弟が見たことを彼らに示し、わたしが啓示したことをすべて彼らに明らかにしよう」と、神の御子であり、天地とその中にある万物の父であるイエス・キリストは言われる。
08 「主の言葉に逆らう者はのろわれよ。これらのことを否定する者ものろわれよ。わたしはそのような者には、これ以上大いなることを示すまい。このように語るのはわたしである」と、イエス・キリストは言われる。
09 「わたしの命令で天は開かれ、また閉ざされる。わたしの言葉で地は揺れ動く。また、わたしの命令で、地に住む者はまさに火で焼かれるようにして世を去る。
10 わたしの言葉を信じない者は、わたしの弟子たちをも信じない。わたしが語っていないかどうか、考えてみなさい。今語っているのがわたしであることを、あなたがたは終わりの日に知るであろう。
11 わたしが語ったこれらのことを信じる者に、わたしはわたしの御霊の示しを与えるので、その者は知って、証を述べるであろう。わたしの御霊のゆえに、その人はこれらのことが真実であることを知るであろう。わたしの御霊は、善を行うように人々を促すからである。
12 善を行うように人々を促すものはすべて、わたしから出る。善はわたし以外の者からは出ない。人々をあらゆる善に導く者はわたしである。わたしの言葉を信じない者は、わたしを、すなわちわたしが実在していることを信じない。わたしを信じない者は、わたしを遣わされた父をも信じない。見よ、わたしは父であり、光であり、命であり、世の真理である。
13 おお、異邦人よ、わたしのもとに来なさい。わたしはもっと大いなること、すなわち不信仰のために隠されている知識をあなたがたに示そう。
14 おお、イスラエルの家よ、わたしのもとに来なさい。父が世の初めから、あなたがたのためにどれほど大いなるものを備えてこられたかを、あなたがたに示そう。それがまだあなたがたに知らされていないのは、不信仰のためである。
15 見よ、おお、イスラエルの家よ、あなたがたを恐ろしい邪悪な状態、心のかたくなな状態、思いをくらまされた状態にとどめさせるあの不信仰の幕をあなたがたが裂くとき、世の初めからあなたがたに対して隠されてきた大いなる驚くべきことが明らかにされるであろう。まことに、打ち砕かれた心と悔いる霊をもってわたしの名によって父に呼び求めるとき、あなたがたは、父があなたがたの先祖に立てられた聖約をすでに思い出されたことを知るであろう。
16 その後、わたしが僕ヨハネに書き記させたわたしの啓示は、すべての民の目に明らかにされるであろう。覚えておきなさい。あなたがたはこれらのことを目にするとき、その啓示が実際に明らかにされる時の近いことが分かるであろう。
17 したがって、あなたがたはこの記録を受けるとき、父の業が地の全面で始まっているのを知るであろう。
18 だから、地の果てに至るすべての者よ、悔い改めてわたしのもとに来なさい。そして、わたしの福音を信じて、わたしの名によってバプテスマを受けなさい。信じてバプテスマを受ける者は救われる。しかし、信じない者は罰の定めを受ける。わたしの名を信じる者にはしるしが伴う。
19 終わりの日に、わたしの名に忠実であると認められる者は幸いである。そのような者は高く上げられて、世の初めから用意されている王国に住むであろう。見よ、これを語ったのはわたしである。アーメン。」

第5章

3人の証人と書物そのものが、『モルモン書』が真実であることの証となる。

01 さて、わたしモロナイは、命じられた言葉を記憶に従って書き記してきた。また、わたしが封じたものについてもあなたに告げた。したがって、封じられているものに手を着けて翻訳しようとしてはならない。そのことは禁じられているからである。しかし、やがてそれが神の知恵にかなう時が来るであろう。
02 また見よ、あなたは、この書物を出す助けをする者たちに版を見せるのを、特別に許されるであろう。
03 版は神の力によって3人の者に示されるので、その3人はこれらのことが真実であるのを確かに知るであろう。
04 そして、3人の証人の口を通してこれらのことは確認される。また、3人の証とこの書物、すなわち、御父と御子と聖霊が証しておられる神の言葉と神の力を明らかにするこの書物は、終わりの日に世の人々に対する証となるであろう。
05 もしも世の人々が悔い改めて、イエスの名によって御父のもとに来るならば、彼らは神の王国に迎え入れられるであろう。
06 さて、これらのことを述べる権能がわたしにないかどうか、考えてみなさい。あなたがたは終わりの日にわたしに会い、ともに神の前に立つとき、わたしに権能があることを知るであろう。アーメン。

第6章

ヤレド人の船は風に運ばれて約束の地に向かう。民は主の慈しみを思い、主をほめたたえる。オライハ、民を治める王に選ばれる。ヤレドと彼の兄弟、死ぬ。

01 さて、わたしモロナイは、ヤレドと彼の兄弟についての記録を書き進めよう。

02 さて、ヤレドの兄弟が山に持って登った石を主が備えてくださった後、ヤレドの兄弟は山を下り、すでに準備しておいた船の中の、へさきとともにその石を一つずつ置いた。すると見よ、その石によって船の中が明るくなった。
03 このように主は、暗闇の中で石が輝くようにして、男や女、子供たちが暗闇の状態で大海を渡らなくてもよいように、彼らに光を与えられた。

04 さて、彼らは海の上で暮らせるように、あらゆる食物を準備し、また大小の家畜の群れと、一緒に連れて行くあらゆる獣や動物や鳥のためのえさも準備した。そして、これらのことをすべて終えると、彼らのはしけのような船に乗り込み、主なる神に身を託して海に出た。
05 そこで主なる神は、水の面に約束の地に向かって吹く激しい風を起こされた。そのために、船は追い風を受けて海の波の上を運ばれて行った。

06 そして船は、砕ける山のような波と、激しい風によって生じたすさまじい大暴風雨のために、何度も海の深みに沈められた。
07 さて、彼らの船は深みに沈められても、皿のように透き間がなく、ノアの箱船のようにしっかりして水が漏らなかったので、彼らは少しも水による害を受けなかった。そこで彼らは、海の深みに沈むと、主に叫び求めた。すると、主は船を再び水面に引き戻された。
08 そして、船が海上にある間、風は一度もやむことなく約束の地に向かって吹き続けた。そのために、彼らは追い風を受けて進んだ。
09 そして、彼らは主に賛美の歌を歌った。まことに、ヤレドの兄弟は主に賛美の歌を歌い、一日中主に感謝し、主をほめたたえた。夜になっても、彼らは主をほめたたえるのをやめなかった。
10 このようにして、彼らは進んで行き、海の怪物も彼らの船を裂くことができず、鯨も彼らの船を害することができなかった。また、海上にあるときも、海中にあるときも、いつも彼らには光があった。

11 このようにして、船は海上を344日間運ばれて行った。

12 そして、彼らは約束の地の海岸に上陸した。彼らは約束の地の海岸に足を踏み下ろすと、地の面にひれ伏して主の前にへりくだり、主が深い憐れみを豊かにかけてくださったことについて、主の前に喜びの涙を流した。

13 そして彼らは、地の面に出て行き、地を耕し始めた。
14 ヤレドには4人の息子がおり、その息子はジェコム、ギルガ、メーハ、オライハと呼ばれた。
15 また、ヤレドの兄弟も息子たちと娘たちをもうけた。
16 また、ヤレドの友人たちとヤレドの兄弟の友人たちの人数はおよそ22人であり、彼らも約束の地に来る前に息子たちと娘たちをもうけていた。そのために彼らは多くなり始めた。
17 彼らは主の前をへりくだって歩むことを教えられ、天からも教えを受けた。

18 そして彼らは、地の面に広がり、増えて、土地を耕し始め、その地で強くなった。
19 ヤレドの兄弟は老いが進んで、間もなく墓に入らなければならないことを知った。そこで、彼はヤレドに言った。「わたしたちの民の人数を数えるために、またわたしたちが墓に入る前に、民がわたしたちに何を望むかを知るために、民を集めよう。」
20 そこで、民が集められた。ヤレドの兄弟の息子、娘の人数は22人、ヤレドの息子、娘の人数は12人で、ヤレドには4人の息子がいた。
21 さて、彼らは民の人数を数えた。そして、人数を数え終えると、彼らは自分たちが墓に入る前に何をしてほしいか、民に尋ねた。
22 そこで民は、彼らの息子たちの中の一人に油を注いで、民を治める王にするように求めた。
23 さて見よ、これは彼らにとって嘆かわしいことであった。そこで、ヤレドの兄弟は、「そのようなことをすれば、必ず囚われの身に陥ることになる」と民に言った。
24 しかし、ヤレドは彼の兄弟に、「彼らが王を持つのを許そう」と言った。そこでヤレドの兄弟は、「わたしたちの息子たちの中から、あなたがたが望む者を王に選びなさい」と民に言った。
25 そこで、彼らはヤレドの兄弟の長男を選んだ。彼の名はペーガグといった。ところが、彼は断って、王になろうとしなかった。そこで民は彼の父に、彼を何としてでも王にするように願ったが、父はそうしようとせず、王になることをだれにも強いてはならないと民に命じた。
26 そして、民はペーガグの兄弟を次々に選んだが、彼らはだれも応じなかった。
27 そして、ヤレドの息子たちも、ただ一人を除いてだれも望まなかったので、オライハが油を注がれて、民を治める王になった。
28 そして、オライハが統治し始め、民は栄えるようになり、非常に豊かになった。
29 そして、ヤレドが死に、彼の兄弟も死んだ。
30 そして、オライハは主の前をへりくだって歩み、主が彼の父のためにどれほど偉大なことを行われたかを覚え、また主が民の先祖のためにどれほど大いなることを行われたかを民に教えた。


【動画】ヤレドの民の滅亡


第7章

オライハ、義をもって治める。侵略と争いの中で、シュールの王国とコーホルの王国が互いに敵対して築かれる。預言者たちが民の悪事と偶像礼拝を非難し、民は悔い改める。

01 さて、オライハは生涯この地で義をもって裁きを行い、彼の一生は非常に長かった。
02 また、彼は息子たちと娘たちをもうけた。すなわち、彼は31人の子供をもうけ、その中の23人が息子であった。
03 そして、彼は年老いてキブをもうけた。そして、キブが彼に代わって統治し、またキブはコリホルをもうけた。
04 ところがコリホルは、32歳のときに父に背いて、ニーホルの地へ行って住んだ。そして彼は、息子たちと娘たちをもうけた。ところが、子供たちが非常に美しくなったので、コリホルは多くの人を引き寄せて自分につかせた。
05 そして彼は、軍隊を召集すると、王の住んでいたモロンの地へ上って行き、王を捕らえた。このことによって、囚われの身に陥るであろうというヤレドの兄弟の言葉が事実となったのであった。
06 王が住んでいたモロンの地は、ニーファイ人がデソレションと呼んでいる地に近かった。
07 そして、キブは高齢になるまで囚われの身で暮らし、彼の民も、キブの息子であるコリホルの下で囚われの身であった。それでもキブは、囚われの状態にありながら、年老いてシュールをもうけた。
08 さて、シュールは兄のことを怒った。シュールは強くなり、体力の点でも強くなり、また判断力も優れた者になった。
09 さて、彼はエフライムの丘に行き、その丘で金属を溶かし出し、自分に引き寄せていた者たちのために鋼で剣を造った。そして彼は、剣で彼らを武装させてから、ニーホルの町に引き返し、兄のコリホルを攻めた。その結果、彼は王国を手中に収め、それを父キブに返した。
10 すると、シュールがこのことを行ったので、父は王位をシュールに授けた。そこで、シュールは父に代わって統治し始めた。
11 そして彼は、義をもって裁きを行い、また民が非常に大勢になったので、地の全面に王国の領土を広げた。
12 そして、シュールも多くの息子、娘をもうけた。
13 さらに、コリホルが彼の行った多くの悪事を悔い改めたので、シュールは彼に王国内で力を持たせた。
14 さて、コリホルにも多くの息子、娘がおり、息子たちの中にノアという名の者がいた。
15 さて、ノアは、王のシュールと父コリホルに背いて、兄弟コーホルとほかの兄弟全員と多くの人を味方に引き入れた。
16 そして彼は、王のシュールを攻めて、彼らの最初の受け継ぎの地を手に入れ、この地方を治める王になった。
17 そして彼は、また王のシュールを攻めて捕らえ、モロンに連れ去った。
18 そして、ノアがまさにシュールを殺そうとしたときに、シュールの息子たちは、夜に紛れてノアの家に忍び込んでノアを殺し、牢の扉を壊して父を連れ出した。そして彼らは、シュールをシュール自身の王国で王座に着かせた。
19 また、ノアの息子もノアに代わって王国を築き上げたが、彼らは二度と王のシュールを支配する勢力を持つことはなかった。そして、シュール王の統治下にある人々は、非常に栄えて富んだ。
20 しかし、国は分割され、二つの王国、すなわち、シュールの王国と、ノアの息子コーホルの王国があった。
21 ノアの息子コーホルは、民にシュールを攻めさせたが、その戦いでシュールは彼らを打ち負かして、コーホルを殺した。
22 コーホルには、ニムロデと呼ばれた息子がいた。このニムロデは、コーホルの王国をシュールに譲り渡し、シュールの好意を得た。その結果、彼はシュールから大いに引き立てられ、シュールの王国内で自分の思いどおりのことを行った。
23 また、シュールの治世に、主から遣わされた預言者たちが民の中にやって来て、民の悪事と偶像礼拝が地にのろいを招いており、もし悔い改めなければ民は滅ぼされると預言した。
24 さて民は、その預言者たちをののしり、あざけった。そこでシュール王は、預言者たちをののしったすべての者を罰した。
25 また彼は、全地で法律を施行し、その法律によって預言者たちに、彼らの望む所へはどこへでも行ける権限を与えた。このことによって、民は悔い改めるようになった。
26 そして民が、彼らの罪悪と偶像礼拝を悔い改めたので、主は彼らを赦された。そして彼らは、再び地に栄え始めた。またシュールは、年老いて息子たちと娘たちをもうけた。
27 シュールの時代には、もはや戦争はなかった。そして彼は、主が自分の先祖のために数々の偉大なことを行って、大いなる深みを渡らせて先祖を約束の地に導いてくださったことを思い起こし、生涯義をもって裁きを行った。

第8章

王国全体に対立と争いがある。エーキシ、王を殺すために誓いの言葉で結ばれた秘密結社を作る。秘密結社は悪魔から出たものであり、結局は国々を滅ぼす。あらゆる地、あらゆる国民、あらゆる国々の自由を覆そうとする秘密結社について、現代の異邦人に警告が発せられる。

01 さて、シュールはオメルをもうけ、オメルがシュールに代わって統治した。また、オメルはヤレドをもうけ、ヤレドは息子たちと娘たちをもうけた。
02 そして、ヤレドは父に背き、ヘテの地に行って住んだ。彼は巧みな言葉で多くの人にへつらい、とうとう王国の半分を得るに至った。
03 そして彼は王国の半分を得ると、父を攻め、父を連れ去って囚われの状態に置き、囚われの状態で仕えさせた。
04 オメルは彼の統治の間、生涯の半分を囚われの身で過ごした。それから彼は息子たちと娘たちをもうけ、その中にエズロムとコリアンタマーがいた。
05 この二人は自分たちの兄ヤレドの行ったことを非常に怒り、軍隊を組織してヤレドを攻めた。そして夜に紛れて、二人は彼を攻めたのである。
06 そして彼らは、ヤレドの軍隊を滅ぼしてしまうと、ヤレドも殺してしまおうとした。するとヤレドは、殺さないでほしい、そうすれば王国を父に譲り渡そうと言って懇願した。そこで彼らは彼の命を許した。
07 さて、ヤレドは王国と世の誉れに執着していたので、王国を失ったことを非常に悲しく思った。
08 ところで、ヤレドの娘は非常に利口であったので、父が悲しんでいるのを見て、父のために王国を取り戻す策を講じようとした。
09 ヤレドの娘は非常に美しかった。そこで彼女は父と語って言った。「父上はどうしてそのようにひどく悲しんでおられるのですか。わたしたちの先祖が大いなる深みを渡って持って来た記録を、お読みになったことがないのですか。秘密のはかりごとによって王位と大きな栄華を得た、昔の人々についての話があるではありませんか。
10 父上、キムノルの息子のエーキシを迎えにやってください。まことに、わたしは美しいので、彼の前で踊り、彼を喜ばせて、わたしを妻にしたいと思わせるようにしましょう。もし彼がわたしを妻にしたいと父上に願ったら、そのとき父上は、『王であるわたしの父の首をわたしのところに持って来れば娘を与えよう』と言ってください。」
11 オメルはエーキシの友人であった。さて、ヤレドがエーキシを迎えにやると、ヤレドの娘は彼の前で踊って彼を喜ばせたので、彼は彼女を妻にしたいと思った。そして、彼はヤレドに、「あなたの娘をわたしに妻として下さい」と言った。
12 そこで、ヤレドは彼に言った。「王であるわたしの父の首をわたしのところに持って来れば娘を与えよう。」
13 そこでエーキシは、ヤレドの家に自分の親族を皆集めて言った。「わたしがこれから頼むことについて、わたしに忠誠を誓ってくれるだろうか。」
14 そこで彼らは皆、エーキシが求めた援助を行わない者はだれでも首をはねられ、また、エーキシから知らされたことを何事でも漏らす者はだれでも命を失うと、天の神にかけて、また天にかけ、地にかけて、さらに自分の頭にかけて彼に誓った。
15 そして、彼らはエーキシに同意した。そこでエーキシは、権力を求めて昔の人々が行った誓いを彼らに立てさせた。これらの誓いは、世の初めから人殺しであったカインから伝えられてきたものである。
16 この誓いは、民にこの誓いを立てさせて民を暗闇の中にとどめるために、また権力を求める者に権力を得させ、殺人と略奪と偽りと、あらゆる悪事とみだらな行いを犯させるために、悪魔の力によって保たれてきたものであった。
17 ヤレドの心の中に、これらの昔のことを探り出す気持ちを起こさせたのは、ヤレドの娘であった。そして、ヤレドがその気持ちをエーキシの心の中に起こさせたので、エーキシは自分の親族と友人たちに誓いを立てさせ、もっともらしい約束で彼らを惑わして、自分の求めることを何事でも行わせたのであった。
18 そして、彼らは昔の人々のように秘密結社を作った。この結社は、神の目から見て、どのようなものにも増して最も忌まわしく、邪悪なものである。
19 主は秘密結社によって事を行われることはなく、また主は、人が血を流すことを望まれず、人が造られて以来あらゆることにおいてそれを禁じてこられた。
20 さて、わたしモロナイは、彼らの誓いの方法と結社の様式について書き記さない。これらがあらゆる民の中にあり、レーマン人の中にもあることが、わたしに知らされたからである。
21 これらが、わたしの今述べているこの民の滅亡を引き起こしたのである。また、ニーファイの民の滅亡も同じである。
22 権力と利益を得るために、このような秘密結社が全地に広がるまで支援する国民は、見よ、どのような国民でも滅ぼされる。なぜならば、秘密結社によって流される主の聖徒たちの血が、秘密結社への報復を訴えて地からいつまでも主に叫ぶのに、主が秘密結社に報復なさらないということはあり得ないからである。
23 おお、あなたがた異邦人よ、これらのことがあなたがたに知らされるのは、神の知恵にかなっている。それによってあなたがたが罪を悔い改めることができるようにするためであり、また権力と利益を得るために築かれるこれらの殺人結社に支配されることのないようにするためであり、滅亡の業があなたがたに及ばないようにするためである。もしこれらのことが起こるのを許すならば、永遠なる神の罰の剣があなたがたに下り、あなたがたは打ち倒され、滅びるであろう。
24 そこで、主はあなたがたに、これらのものがあなたがたの中に起こるのを見るときに、自分たちがひどい状態にいるという意識に目覚めるようにと命じておられる。この秘密結社があなたがたの中にあるからである。殺された者たちの血のゆえに、秘密結社は災いである。これらの者たちの血が、秘密結社への、また秘密結社を築いた者たちへの報復を訴えて、地から叫ぶからである。
25 さて、秘密結社を築く者はあらゆる地、国民、国々の自由を覆そうとする。そして、秘密結社はあらゆる民の滅亡をもたらす。それはあらゆる偽りの父である悪魔によって築かれるからである。悪魔はわたしたちの始祖をだましたあの偽り者であり、また初めから人に殺人を犯させたあの偽り者であり、また人々の心をかたくなにして、初めから人々に預言者を殺させ、石で打たせ、追い出させたあの偽り者である。
26 そこでわたしモロナイは、これらのことを書き記すように命じられている。このことによって、悪がなくなるようにするためであり、またサタンが人の子らの心を支配する力を持つことなく、彼らが絶えず善を行うように促されてあらゆる義の源に来て、救われる時が来るようにするためである。

第9章

血統により、また陰謀と殺人により、王位が次々に移る。イーマー、義の御子にまみえる。多くの預言者が悔い改めを叫ぶ。飢饉と毒蛇が民を苦しめる。

01 さて、わたしモロナイは記録を続ける。さて見よ、エーキシと彼の仲間たちは、彼らの秘密結社でオメルの王国を倒した。
02 それでも主は、オメルとオメルを殺そうとしなかった彼の息子たちと娘たちに憐れみをかけられた。
03 そして主は、その地を去るように夢の中でオメルに警告された。そこでオメルは、家族を連れてその地を去り、幾日もの間旅をして、シムの丘のそばを通り、ニーファイ人が滅ぼされた地方の近くを通り、そこから東の方に向かって、海岸に近いアブロムと呼ばれる地方に着いた。そして彼はそこに天幕を張り、またヤレドと彼の家族を除く、オメルの息子たちと娘たち、およびオメルの家のすべての者が皆、そこに天幕を張った。
04 さて、ヤレドは、悪の手によって油を注がれて、民を治める王になり、娘をエーキシに妻として与えた。
05 さて、エーキシは義父の命を取ろうとして、昔の人々の誓いの言葉で誓っていた仲間に頼んだ。そして彼らはエーキシの義父の首をはねた。それは、彼が王座に着いて、民の訴えを聞いていた最中のことであった。
06 この邪悪な秘密結社は、その広がりが非常に大きく、すでにすべての民の心を腐敗させていた。そのために、ヤレドは王座に着いていて殺され、エーキシが彼に代わって統治したのであった。
07 さて、エーキシは息子をねたむようになり、息子を牢に閉じ込めてほとんど食物を与えず、とうとう飢え死にさせてしまった。
08 すると、死んだ息子の兄弟(その名をニムラという)が、自分の兄弟に対して行った父の仕打ちのことで父を怒った。
09 そしてニムラは、少数の人々を集めてその地から逃げ出し、オメルのもとに行ってともに住んだ。
10 さて、エーキシはほかにも息子たちをもうけた。しかし、その息子たちは、父から求められるままにあらゆる悪事を行うと父に誓っていたにもかかわらず、民の信用を得た。
11 エーキシが権力を得たいと望んでいたように、エーキシの民も利得を得ることを望んでいたので、エーキシの息子たちは彼らに金銭を与えて、民の大半を引き寄せて自分たちに従わせたのである。
12 そこで、エーキシの息子たちとエーキシの間で戦争が始まり、その戦争は何年間も続いた。そして、王国の民はほとんど皆滅びてしまった。まことに、30人の者と、オメルの家族と一緒に逃げた者たちを除く全員が死んでしまった。
13 そこで、オメルは再び自分の受け継ぎの地へ戻った。
14 さて、オメルは年を取ったが、それでも老年に及んでイーマーをもうけた。そして、オメルはイーマーに油を注ぎ、彼を自分に代わって統治する王とした。
15 オメルは、油を注いでイーマーを王とした後、2年間、国の平和な有様を見てから死んだ。彼の一生は非常に長かったが、悲しみに満ちたものであった。その後、イーマーが父に代わって統治し、父の足跡を歩んだ。
16 主は再び地からのろいを取り去られ、イーマーの家はイーマーの統治の間に非常に栄えた。そして、62年の間に彼らは大きな力をつけ、非常に豊かになった。
17 彼らはあらゆる果物や穀物、絹布や織り目の細かい亜麻布、また金や銀や貴重な品々を持つようになり、
18 またあらゆる家畜、雄牛、雌牛、羊、豚、やぎ、そのほか人の食用となる多くの動物も持つようになった。
19 彼らは馬とろばも持ち、また象とクレーロムとクモムもいた。これらはすべて人のために役立ったが、特に象とクレーロムとクモムは役に立った。
20 このように、主はほかのあらゆる地に勝ったえり抜きのこの地に祝福を注がれた。そして主は、この地を所有する者はだれであろうと、主のためにここに住まなければならず、さもなければ、民の罪悪が熟したときに民は滅ぼされると命じられた。なぜならば主は、「わたしはそのような者にわたしの限りない怒りを注ぐ」と言われるからである。
21 イーマーは生涯義をもって裁きを行い、また多くの息子たちと娘たちをもうけた。また、彼はコリアンタムをもうけ、彼に油を注いで自分に代わって統治させた。
22 彼は自分に代わって統治するようにコリアンタムに油を注いだ後、4年間生き長らえ、国の平和な有様を見た。また、彼は義の御子にさえまみえ、主の日を喜んで誇りに思い、そして安らかに死んだ。
23 さて、コリアンタムは父の足跡に従って歩んだ。そして、多くの大きな町を築き、生涯民に良いものを与えた。しかし、高齢になるまで彼には子供がいなかった。
24 そして、彼の妻が102歳で死んだので、コリアンタムは老年に及んで若いおとめをめとり、息子たちと娘たちをもうけた。彼は142歳まで生き長らえた。
25 そして、彼はコムをもうけ、コムが彼に代わって統治した。コムは49年間統治した。また、彼はヘテをもうけ、ほかにも息子たちと娘たちをもうけた。
26 民はすでに再び地の全面に広がっており、地の面でひどい大きな悪事が行われ始めた。そして、ヘテは自分の父を殺そうとして、昔の秘密のはかりごとをまた受け入れるようになった。
27 そして、彼は自分の剣で父を殺して王位から退け、自分が代わって統治した。
28 すると、またこの地に預言者たちがやって来て、民に悔い改めを叫び、民は主の道を備えなければならない、さもなければ地の面にのろいが下る、すなわち、悔い改めなければひどい飢饉があって滅ぼされる、と告げた。
29 しかし民は預言者たちの言葉を信じることなく、彼らを追い出した。また、民はある預言者たちを穴の中に投げ込み、そのまま放置しておいて死なせた。そして、民はこれらのことをすべて、ヘテ王の命令によって行ったのであった。
30 さて、地にひどい飢饉が起こり、その飢饉のためにその地に住む者たちが次から次へと死んでいった。地の面に雨が少しも降らなかったからである。
31 また、地の面に毒蛇も現れ、多くの人がその毒で死んだ。そして、彼らの家畜の群れは毒蛇に追われて、ニーファイ人がゼラヘムラと呼んだ南方の地へ向かって逃げ始めた。
32 そして、途中でその多くが死んだ。それでも、ある群れは南方の地へ逃げ込んだ。
33 そこで主は蛇にそれ以上家畜の群れを追うのをやめさせ、人々が通り抜けられないようにその道をふさがせて、通り抜けようとする者が毒蛇のために倒れるようにされた。
34 そして、民は家畜の逃げた道をたどり、途中で倒れた家畜の死体をむさぼり食い、一つも残さずに食い尽くした。そして民は今や自分たちの滅びるのが避けられないことを知ると、罪悪を悔い改めて主に叫び求め始めた。
35 そして、彼らが主の前に十分にへりくだったので、主は地の面に雨を降らせられた。そこで民は再び力を取り戻し、また北の地方と周りのあらゆる地方で、実がとれ始めた。このようにして、主は民を飢饉から守ることによって彼らに御自分の力を示された。

第10章

王が何代も代わる。義にかなった王もいれば、邪悪な王もいる。義が勝利を得ているとき、民は主によって祝福され、栄える。

01 さて、ヘテと彼の家のすべての者は、シェズを除いて全員飢饉のために死んでしまった。そこで、ヘテの子孫であったシェズは、離散した民を再び立て直し始めた。
02 そしてシェズは、先祖が滅びたことを忘れず、義にかなった王国を築いた。彼は、主がヤレドと彼の兄弟に大海を渡らせるに当たって行われたことを覚えていたからである。そして彼は主の道を歩み、また息子たちと娘たちをもうけた。
03 ところが、シェズという名の彼の長男が彼に背いた。しかし、このシェズは非常に多くの富を持っていたために、強盗の手で殺されてしまった。そして、再び彼の父に平和が戻った。
04 さて、彼の父は地の面に多くの町を築き、民はまた地の全面に広がり始めた。そしてシェズは高齢になるまで生き長らえた。また彼はリプレーキシをもうけた。そして、彼が死ぬと、代わってリプレーキシが統治した。
05 さて、リプレーキシは、主の目から見て正しいことを行わなかった。彼は多くの妻とそばめを持ち、また堪え難い重荷を人々の肩に負わせたからである。彼は重い税を人々に課し、その税で多くの大きな建物を建てた。
06 彼は自分のために非常に美しい王座を作り、また牢もたくさん建てた。そして、課税に服そうとしない者を牢に入れ、また税を納める能力のない者も牢に入れて、彼らを絶えず働かせて生計を立てさせた。また彼は、働くことを拒む者を殺させた。
07 また彼は見事な品物をすべて手に入れた。彼は牢の中で純金を精錬させ、あらゆる見事な細工を造らせて、それを自分のものとした。そして彼は、みだらな行いと忌まわしい行いをして民を苦しめた。
08 そこで、彼が42年間統治した後、民は彼に対して謀反を起こした。そして、国でまた戦争が始まり、リプレーキシは殺され、彼の子孫は国から追放された。
09 さて、それから長年たって、(リプレーキシの子孫であった)モリアントンが追放された者たちを大勢集め、出て行って民を攻め、多くの町の支配権を得た。そこで、戦争は非常に激しくなり、何年もの長い間続いた。そして彼は全地の支配権を得て、自分で全地を治める王になった。
10 彼は自分で王になった後、民の負担を軽くして、民の好意を得た。そこで民は彼に油を注いで、彼を自分たちの王とした。
11 彼は民に対しては公正であったが、自分自身に対してはそうではなかった。多くのみだらな行いをしていたからである。そのために、彼は主の前から絶たれてしまった。
12 さて、モリアントンは多くの町を築き、民は彼の統治の間に非常に豊かになった。そして、建物や金や銀、また穀物の栽培、大小の家畜の群れ、および彼らに回復されたそのほかのものに富むようになった。
13 また、モリアントンは非常に高齢になるまで生き長らえ、老年にキムをもうけた。そして、キムが父に代わって統治し、8年治めたときに父は死んだ。キムは義をもって統治しなかったので、主の恵みを受けなかった。
14 その後、彼の兄弟が彼に対して謀反を起こし、彼を囚われの身に陥れた。そして彼は生涯囚われの身で過ごし、囚われの身で息子たちと娘たちをもうけた。そして彼は年取ってからレビをもうけて死んだ。
15 さて、レビは父の死後42年間、囚われの身にあって仕えた。その後、彼は国の王と戦い、その戦争によって王位を得た。
16 彼は王位を得た後、主の目から見て正しいことを行い、民はこの地で栄えた。そして彼は高齢になるまで生き長らえ、息子たちと娘たちをもうけた。彼はまたコロムをもうけ、油を注いで自分に代わる王とした。
17 そして、コロムは生涯主の目から見て善いことを行い、また多くの息子たちと娘たちをもうけた。彼は多くの日を過ごした後、世のほかの人々と同じように世を去った。そして、キシが彼に代わって統治した。
18 そして、キシも世を去り、リブが彼に代わって統治した。
19 さて、リブも主の目から見て善いことを行った。また、リブの時代に毒蛇が全滅したので、人々は南方の地へ行き、狩りをして民の食糧を手に入れた。その地には森の動物が満ちていたからである。そして、リブ自身も卓越した狩人になった。
20 また、彼らは地峡のそばに、すなわち海によって陸が分けられている場所の近くに一つの大きな町を築いた。
21 また、彼らは南方の地を、猟の獲物をとる荒れ野としてそのまま残しておいた。そして北方の地には、全面にわたって人々が住んでいた。
22 彼らは非常に勤勉であり、売買し、互いに交易して利益を得た。
23 また、彼らはあらゆるあらがねで物を造った。彼らは金や銀や鉄や真鍮、そのほかあらゆる金属を造った。彼らはあらがねを地の中から掘り出したので、金や銀や鉄や銅のあらがねを得るために大きな土の山が幾つもできた。そして彼らはあらゆる見事な細工を造った。
24 彼らは絹布とより糸で織った亜麻布を得ていた。また、裸を覆うためにあらゆる織物を作った。
25 また、彼らは地を耕すあらゆる道具を造り、すく道具、種をまく道具、刈り取る道具、脱穀する道具を造った。
26 また、彼らは家畜に付けて働かせるためのあらゆる道具を造った。
27 彼らはあらゆる武器を造った。また彼らは非常に入念な造りのあらゆる細工を造った。
28 彼らほど祝福された民、また彼らほど主の手によって繁栄を得た民はなかった。彼らはあらゆる地に勝ったえり抜きの地に住んでいた。主がそのように言われたからである。
29 さて、リブは長年生きて、息子たちと娘たちをもうけ、またヒアルサムをもうけた。
30 そして、ヒアルサムが父に代わって統治した。しかし、ヒアルサムは24年間統治して、見よ、王位を奪われた。そして、彼は囚われの身で何年もの長い間、まことに、余生を仕えて暮らしたのであった。
31 また、彼はヘテをもうけ、ヘテも囚われの身で生涯を送った。そしてヘテはアロンをもうけ、アロンも囚われの身で生涯を送った。そして彼はアムニガダをもうけ、アムニガダも囚われの身で生涯を送った。そして彼はコリアンタムをもうけ、コリアンタムも囚われの身で生涯を送った。そして彼はコムをもうけた。
32 さて、コムは王国の半分を引き寄せ、42年間王国の半分を統治した。それから彼はアムギド王と戦うために出て行き、両者は長年の間戦った。その間にコムはアムギドに対する支配権を得て、王国の残りも治める権力を手に入れた。
33 ところが、コムの時代に国に強盗が出始めた。そして強盗たちは昔のはかりごとを取り入れ、昔の人々に倣って誓いを立て、またもや王国を滅ぼそうとした。
34 そこでコムは大いに彼らと戦ったが、彼らに勝てなかった。

第11章

戦争、不和、悪事がヤレド人の生活を支配する。預言者たち、悔い改めなければヤレド人が完全に滅びることを預言する。民は預言者たちの言葉を拒む。


01 コムの時代にまた多くの預言者が来て、この大いなる民は、悔い改めて主に立ち返り、殺人と悪事を捨てなければ滅びると預言した。

02 さて、預言者たちは民に拒まれ、民に殺されそうになったため、保護を求めてコムのもとに逃げた。
03 そして彼らはコムに多くのことを預言し、コムは残りの全生涯にわたって祝福を受けた。
04 そして彼は高齢になるまで生き長らえ、シブロムをもうけた。そして、シブロムが彼に代わって統治した。ところが、シブロムの兄弟が彼に背き、全地で非常に大きな戦争が始まった。
05 そして、シブロムの兄弟は民の滅亡を預言したすべての預言者を殺させた。
06 すると、全地にひどい災いが生じた。かつて預言者たちが、もしも民が悪事を悔い改めなければ、ひどいのろいが地と民に下り、地の面にかつてなかったほどのひどい滅亡が彼らの中にあり、彼らの骨は土の山のように地の面に積み上げられると証していた。

07 ところが民は邪悪な結社があったために、主の声に聞き従わなかった。そのために、全地で戦争と争いが始まり、また多くの飢饉と疫病が起こって、地の面にこれまでまったく知られていなかったほどのひどい滅亡が生じた。これはすべて、シブロムの時代に起こったことである。
08 すると民は自分たちの罪悪を悔い改め始めた。そして、彼らが悔い改めたので、主は彼らに憐れみをかけられた。
09 さて、シブロムは殺され、セツは囚われの身に陥って、生涯囚われの状態で過ごした。
10 そして、彼の息子エーハは王位を得て、生涯民を治めた。しかし彼は生涯あらゆる罪悪を行い、多くの血を流したので、彼の一生は短かった。
11 また、イーサムはエーハの子孫であり、王位を得たが、彼もまた生涯邪悪なことを行った。
12 そして、イーサムの時代に多くの預言者が来て、民に再び預言をした。預言者たちは、民が悔い改めなければ、主は地の面から民をことごとく滅ぼしてしまわれると預言した。
13 さて、民は心をかたくなにして、預言者たちの言葉に聞き従おうとしなかった。そこで預言者たちは、悲しみながら民の中から去って行った。
14 さて、イーサムは生涯悪をもって裁きを行った。そして彼はモロンをもうけた。その後、モロンが彼に代わって統治し、主の前に邪悪なことを行った。
15 さて、民の中に謀反が起こった。それは権力と利益を得るために築かれたあの秘密結社のために生じたものである。また民の中に、罪悪に勢いのある一人の男が現れ、モロンと戦って、その戦いで王国の半分を打ち破った。そして、彼は長年の間その王国の半分を治めた。
16 さて、モロンはこの男を倒して、再び王位を取り戻した。
17 そして、また別の勢いのある男が現れた。彼はヤレドの兄弟の子孫であった。
18 そして、彼はモロンを打ち破って、王位を得た。そのために、モロンは囚われの身で余生を送り、コリアントルをもうけた。
19 そして、コリアントルも囚われの身で生涯を送った。
20 また、コリアントルの時代に多くの預言者が来て、大いなる驚くべきことを預言し、民に悔い改めを叫んで、もしも悔い改めなければ、主なる神が彼らに対して裁きを行って、彼らを完全に滅ぼされると告げた。
21 また主なる神が、かつてこの民の先祖を導いたように御自分の力によって別の民を送り、いや、別の民を導いてこの地を所有させられると、預言者たちは告げた。
22 しかし、民は彼らの秘密結社と邪悪な忌まわしい行いのために、預言者たちの言葉をことごとく拒んだ。
23 さて、コリアントルはエテルをもうけ、囚われの身で生涯を過ごして死んだ。

第12章

預言者エテル、神を信じるよう民に説き勧める。モロナイ、信仰によって行われた数々の不思議と驚くべきことを列挙する。信仰によってヤレドの兄弟がキリストにまみえたこと。主は人々が謙遜になるように、人々に弱さを与えられる。ヤレドの兄弟が信仰によってゼリン山を移したこと。信仰と希望と慈愛は救いに欠かせない。モロナイ、顔と顔を合わせてイエスにまみえる。

01 さて、エテルとコリアンタマーは同時代の人である。このコリアンタマーは、全地を治める王であった。

02 エテルは主の預言者であった。そこで、エテルはコリアンタマーの時代に出て行って、民に預言し始めた。彼の内に主の御霊があったために、そうせずにはおれなかったからである。
03 彼は朝から日の沈むまで大声を上げ、滅ぼされることのないように、神を信じて悔い改めることを民に勧め、また信仰によってすべてが成就することを彼らに告げた。

04 さて、神を信じる者はだれであろうと、もっと良い世界を、まことに神の右に一つの場所を、確かに望むことができる。この望みは信仰から生じ、人々にとってその心をしっかりとした不動のものにする錨となる。そしてそのような人々はいつも多くの善い行いをし、神をあがめるようになる。

05 そして、エテルは数々の大いなる驚くべきことを民に預言した。しかし彼らは、現実にそれらのことを見なかったので信じなかった。
06 さて、わたしモロナイはこれらのことについて少々述べたい。信仰とは待ち望んでいながらまだ見ていないものであることを、世の人々に示したい。あなたがたは、自分が見ていないからということで疑ってはならない。信仰が試されてからでなければ、証は得られないからである。
07 キリストが死者の中からよみがえられた後、わたしたちの先祖に御自身を現されたのは、信仰による。先祖がキリストを信じてからでなければ、キリストは先祖に御自身を現されなかった。したがって、キリストを信じていた人々がいたに違いない。キリストは、俗世の人々には御自身を現されなかったからである。
08 しかし、人々が信じたので、キリストは世の人々に御自身を現し、御父の名の栄光を表し、さらに、ほかの人々が天の賜物にあずかる者となれるように、また、彼らがまだ見ていないものを待ち望むことができるように、道を備えられた。
09 したがって、あなたがたも信仰を持ちさえすれば、望みを持つことができ、賜物にあずかる者となれるのである。
10 見よ、昔の人々が神の聖なる位に従って召されたのは、信仰による。
11 それで、信仰によってモーセの律法が与えられた。しかし神は、御子を送ることによってもっとすばらしい方法を備えられた。そして、信仰によって、モーセの律法が成就したのである。
12 もしも人の子らの中にまったく信仰がなければ、神は人の子らの中で何の奇跡も行うことがおできにならない。したがって、彼らが信じてからでなければ、神は御自身を現されなかった。
13 見よ、牢を地に倒したのは、アルマとアミュレクの信仰であった。
14 見よ、レーマン人に変化を生じさせて、彼らに火と聖霊によるバプテスマを受けさせたのは、ニーファイとリーハイの信仰であった。
15 見よ、レーマン人の中であのように大きな奇跡を行ったのは、アンモンと彼の同僚たちの信仰であった。
16 そして、奇跡を行った者は皆、キリスト以前にいた者でも、キリスト以後にいた者でも、信仰によって奇跡を行った。
17 3人の弟子たちが死を味わわないという約束を得たのは、信仰によるものであった。しかし彼らは、信じてからでなければ、その約束を得なかった。
18 どのようなときでも、信じてからでなければ奇跡を行った者はいない。したがって、奇跡を行った者はまず神の御子を信じたのである。
19 キリストが来られる以前にも、非常に深い信仰を持っていた人々が多くおり、これらの人は幕の内側を見るのを禁じられなかったので、彼らは実際に自分の目で様々なものを見た。それらのものは、彼らがすでに信仰の目で見ていたものである。そして、彼らは喜んだ。
20 見よ、この記録で分かるように、これらの人の中の一人がヤレドの兄弟であった。神を信じる彼の信仰が非常に深かったので、神は御自分の指を差し伸べられたときに、ヤレドの兄弟の目からその指を隠すことがおできにならなかった。神が以前に彼に言われた御言葉があったからである。その御言葉は、ヤレドの兄弟が信仰によって得たものである。
21 また、主の指を見た後、ヤレドの兄弟には信仰によって得た約束があったので、主は彼の目から何も隠すことがおできにならなかった。そこで、主は彼にすべてのものをお見せになった。彼はもはや幕の外側にとどめられなかったからである。
22 また、これらのことが異邦人を通じて同胞に伝わるという約束をわたしの先祖が得たのも、信仰による。そのために、主は、すなわちイエス・キリストは、わたしに命じられたのである。
23 わたしは主に言った。「主よ、わたしたちの物を書き記す力が弱いので、異邦人はこれらのことをあざけるでしょう。主よ、あなたはわたしたちを、信仰によって言葉に力のある者とされましたが、物を書き記す力のある者とはされませんでした。あなたはこの民に聖霊をお授けになり、聖霊のためにすべての者が大いに語れるようにされました。
24 また、わたしたちの手が不器用であったために、わたしたちがわずかしか書けないようにされました。まことに、あなたはわたしたちを、ヤレドの兄弟のように物を書き記す力のある者とはされませんでした。あなたはヤレドの兄弟を物を書き記す力のある者とされたので、彼の書き記したことはあなた御自身のように力強く、それを読む者を圧倒するほどのものとなりました。
25 あなたはまた、わたしたちの言葉を力強くまた大いなるものとし、わたしたちがそれを書き記せないほどのものとされました。そのため、わたしたちは書き記すときに、わたしたちの弱さを知り、またわたしたちの言葉の用法を誤ってしまいます。ですから、異邦人がわたしたちの言葉をあざけるのではないかと心配です。」
26 わたしがこのように言うと、主はわたしに言われた。「愚か者はあざけるが、後に嘆き悲しむ。わたしの恵みは柔和な者に十分であり、彼らがあなたの弱さに付け込むことはない。
27 もし人がわたしのもとに来るならば、わたしは彼らに各々の弱さを示そう。わたしは人を謙遜にするために、人に弱さを与える。わたしの前にへりくだるすべての者に対して、わたしの恵みは十分である。もし彼らがわたしの前にへりくだり、わたしを信じるならば、そのとき、わたしは彼らの弱さを強さに変えよう。
28 見よ、わたしは異邦人に彼らの弱さを示し、また信仰と希望と慈愛が彼らをわたしのもとに、すなわち、あらゆる義の源に導くことを彼らに示そう。」
29 わたしモロナイは、これらの御言葉を聞くと慰めを得て言った。「おお、主よ、あなたの義の御心が行われますように。わたしはあなたが人の子らのために、彼らの信仰に応じて働かれることを存じています。
30 ヤレドの兄弟がゼリン山に向かって、『移れ』と言うと、移りました。もし彼に信仰がなかったならば、移らなかったでしょう。ですから、人々が信仰を持った後に、あなたは働かれます。
31 このようにあなたは、弟子たちに御自身を現されました。彼らが信仰を持ち、あなたの御名によって語った後に、あなたは大いなる力をもって彼らに御自身を現されました。
32 わたしはまた、あなたの言われたことを覚えています。あなたは御父の住まいの中に、人のために住む所を用意したと言われました。人がもっと大きな希望を持てるようにするためでした。ですから、人は希望を持たなければなりません。さもなければ、あなたの用意してくださった場所に受け継ぎを得ることができません。
33 さらに、わたしはあなたの言われたことを覚えています。あなたは、世のために御自分の命を捨てるほどこの世を愛したと言われました。あなたは再び御自分の命を得て、人の子らのための場所を用意するために、御自分の命を捨てられたのです。
34 あなたが人の子らに対して抱いておられたこの愛が慈愛であることを、わたしは存じています。ですから、人は慈愛を持たなければ、あなたが御父の住まいに用意してくださった場所を受け継ぐことができません。
35 ですから、あなたの言われたこのことから、もし異邦人がわたしたちの弱さを見て慈愛を持たなければ、あなたは彼らを試し、彼らのタラントを、彼らがすでに得ているものまでも取り上げて、もっと豊かに持っている者たちに与えられるということが分かります。」
36 そしてわたしは、異邦人が慈愛を持てるように、主が彼らに恵みを授けてくださることを主に祈った。
37 そこで主はわたしに言われた。「たとえ彼らに慈愛がなくても、あなたにとっては問題ではない。あなたは忠実であったので、あなたの衣は清くされるであろう。また、あなたは自分の弱さを認めたので、強くされて、わたしが父の住まいに用意した場所に座せるようになるであろう。」
38 さて、わたしモロナイは、キリストの裁きの座の前で会うときまで、異邦人とわたしの愛する同胞に別れを告げる。その裁きの座の前で、すべての人は、わたしの衣があなたがたの血で汚れていないことを知るであろう。
39 またそのとき、あなたがたはわたしがイエスにまみえたことと、イエスが顔と顔を合わせてわたしと話をされたことと、人が人に語るようにまったく謙遜に、イエスがわたしの言語でわたしにこれらのことについて話されたことを知るであろう。
40 しかし、わたしは物を書き記す力が弱いので、少ししか書き記さなかった。
41 わたしは、預言者たちと使徒たちが書き記してきたイエスを求めるように、あなたがたに勧めたい。そうすれば、父なる神と主イエス・キリストと、この御二方のことを証される聖霊の恵みが、とこしえにあなたがたの内にとどまるであろう。アーメン。

第13章

エテル、ヨセフの子孫によって新エルサレムがアメリカに築かれることを述べる。エテルは預言し、追い出され、ヤレド人の歴史を書き記し、ヤレド人の滅亡を予告する。全地で激しい戦争が起こる。

01 さて、わたしモロナイは、これまでこの民のことを書き記してきたが、民の滅亡についてのわたしの記録を続けて、これを終えることにしよう。
02 見よ、彼らはエテルの言葉をことごとく拒んだ。エテルは、人の始まりからの一切のことを実際に彼らに告げた。水がこの地の面から引いた後、この地がほかのあらゆる地に勝ったえり抜きの地、すなわち主の選ばれた土地になったので、主はこの地の面に住むすべての人に、御自分に仕えることを望まれたと、エテルは告げた。
03 またこの地は新エルサレムが天から降って来る場所であり、主の聖所であると、彼は告げた。
04 見よ、エテルはキリストの時代を目にし、またこの地の新エルサレムについて述べた。
05 彼はイスラエルの家と、リーハイが出て来るエルサレムについても述べた。エルサレムは破壊された後、主のために聖なる都として再び築かれる。したがって、それは昔存在していたので、新しいエルサレムではあり得ないが、それは再び築かれて、主の聖なる都となる。それはイスラエルの家のために築かれる。
06 また新エルサレムは、ヨセフの子孫の残りの者のためにこの地に築かれる。このことについてはすでに予型があった。
07 ヨセフは自分の父をエジプトの地に導いたので、父はそこで死んだ。そして主は、ヨセフの父が滅びないように、彼に憐れみをかけられたと同様に、ヨセフの子孫が滅びないように、彼らに憐れみをかけ、ヨセフの子孫の残りの者をエルサレムの地から導き出された。
08 ヨセフの家の残りの者は将来この地で増えて、この地は彼らの受け継ぎの地となる。そして、彼らは主のために昔のエルサレムのような聖なる都を築く。また、彼らはもはや乱されることはなく、終わりが来て大地が過ぎ去る。
09 しかも、新しい天と新しい地がある。その天と地は以前のものに似ている。ただ以前のものは過ぎ去り、すべてのものが新しくなるだけである。
10 その後、新エルサレムが成る。そこに住む者たちは幸いである。彼らの衣は小羊の血によって白いからである。彼らは、イスラエルの家に属するヨセフの子孫の残りの者の中に数えられる者たちである。
11 またそのときに、昔のエルサレムも成る。そこに住む者たちは幸いである。彼らは、小羊の血によって洗われているからである。彼らは散らされた後に、地の四方および北の地方から集められた者たちであり、神が彼らの先祖アブラハムと交わされた聖約を果たされるときに、それにあずかる者たちである。
12 これらのことが起こるときに、先にいた者で後になる者がおり、また後にいた者で先になる者がいる、という聖文が事実となる。

13 わたしはもっと書き記そうとしたが、そうすることを禁じられた。エテルの預言は大いなる驚くべきものであった。ところが民は、彼を取るに足りない者と見なして、追い出してしまった。そこで彼は日中は岩の洞穴に身を隠し、夜に出て行って、民に及ぶ様々な出来事を見た。

14 また彼は岩の洞穴に住んでいたときに、民に及んだ滅亡を夜の間に見て、この記録の残りの部分を記した。
15 さて、彼が民の中から追い出されたその年に、民の中に大きな戦争が始まり、力のある者たちが多く立って、前に述べた悪事の秘密のはかりごとによって、コリアンタマーを滅ぼそうとした。

16 ところがコリアンタマー自身も、あらゆる戦術と世のあらゆる悪知恵を研究していたので、自分を滅ぼそうとした者たちを攻めた。
17 しかし彼は悔い改めなかった。また、彼の麗しい息子たちや娘たちも、コーホルの麗しい息子たちや娘たちも、コリホルの麗しい息子たちや娘たちも、要するに全地の面にいる麗しい息子たちと娘たちはだれ一人、自分の罪を悔い改めなかった。
18 さて、エテルが岩の洞穴に住むようになった最初の年に、王位を得ようとしてコリアンタマーと戦った、あの秘密結社の者たちの剣で殺された者がたくさんいた。
19 そして、コリアンタマーの息子たちは大いに戦い、ひどく傷ついた。
20 そして、第2年に主の言葉がエテルに下り、コリアンタマーのもとに行って預言するようにと言われた。その預言は次のとおりである。すなわち、もし彼と彼の家のすべての者が悔い改めるならば、主は彼に王位を与え、民の命を救われる。
21 さもなければ、彼らは滅ぼされ、彼の家のすべての者も彼一人を除いて全員が滅ぼされる。そして、彼はただ一人生き長らえて、この地を受け継ぎとして受ける別の民について前に述べられている預言が成就するのを見る。その後、コリアンタマーは彼らによって葬られる。コリアンタマーを除いてすべての者が滅ぼされる。

22 さて、コリアンタマーも、彼の家の者たちも、民も悔い改めず、戦争はやまなかった。そして、民はエテルを殺そうとした。しかし、彼は民の前から逃げて、再び岩の洞穴に隠れた。
23 そして、シェレドが立って、彼もコリアンタマーを攻めた。そして、シェレドはコリアンタマーを打ち負かし、第3年に彼を囚われの身に陥れた。
24 しかし、第4年にコリアンタマーの息子たちがシェレドを打ち負かし、父のために王位を取り戻した。
25 さて、地の全面で戦争が始まり、男は皆それぞれ自分の仲間とともに、自分の望みを遂げようとして戦った。
26 また、強盗もいた。要するに、地の全面であらゆる悪事が行われていた。
27 さて、コリアンタマーはシェレドのことを非常に怒り、軍隊を伴って彼と戦うために出て行った。そして、両者はひどい怒りを抱いて出会い、ギルガルの谷で戦いを交えた。その戦いは非常に激しいものとなった。
28 そしてシェレドは、3日間コリアンタマーと戦った。その後、コリアンタマーは彼を打ち負かし、ヘシロンの平原に着くまで追撃した。
29 そこでシェレドはその平原でまたコリアンタマーと戦い、見よ、今度は彼を打ち負かして、ギルガルの谷までまた追い返した。
30 そしてコリアンタマーはギルガルの谷でまたシェレドと戦い、彼を打ち負かして殺してしまった。
31 しかし、コリアンタマーはシェレドのためにももを負傷した。そのために、彼は2年間戦いに出なかった。その間、地の面で民は皆、血を流し続け、それを止める者はだれもいなかった。

第14章

民の罪悪が地にのろいを招く。コリアンタマー、ギレアデと戦い、次いでリブと戦い、シズと戦う。流血と虐殺が地を覆う。


01 さて、民の罪悪のために、全地にひどいのろいが下り始めた。人が自分の道具や剣を棚の上か、それを保管しておく場所に置いておくと、見よ、翌日にはそれを見つけることができなかったほど、地に下ったのろいはひどかった。
02 そこで、人は皆、自分のものをしっかりと手に握り締め、借りようとも貸そうともしなかった。そして男は皆、自分の財産と命と妻子を守るために、いつも右手に剣の柄を握っていた。
03 さて、シェレドが死んだ後2年たって、見よ、今度はシェレドの兄弟が立ち、コリアンタマーを攻めた。しかし、コリアンタマーは彼を打ち負かし、エーキシの荒れ野まで彼を追撃した。
04 そこでシェレドの兄弟は、エーキシの荒れ野で彼に攻めかかって来た。そして、戦いは非常に激しくなり、何千人も剣で倒れた。
05 そこでコリアンタマーは荒れ野を包囲した。しかし、シェレドの兄弟は夜に紛れて荒れ野から出て来て、コリアンタマーの軍隊の一部が酒に酔っていたので、彼らを殺した。
06 そして彼はモロンの地へ進んで行って、コリアンタマーの王座に上った。
07 そこで、コリアンタマーは2年間、軍隊とともに荒れ野の中で暮らし、大きな兵力を加えた。
08 シェレドの兄弟はその名をギレアデといい、秘密結社のおかげで彼もまた軍隊に大きな兵力を加えた。
09 さて、彼が王座に着いていたときに、彼の大祭司が彼を殺してしまった。
10 そして、秘密結社に属する者の一人が、間道でその大祭司を殺し、王位を奪った。この男の名はリブといった。リブは非常に背丈の高い男で、民の中のだれよりも高かった。
11 さて、リブの治世第1年に、コリアンタマーはモロンの地へ上って行き、リブを攻めた。
12 そして、彼はリブと戦ったが、リブに腕を打たれて負傷した。しかし、コリアンタマーの軍隊がリブに攻めかかったので、リブは海岸の境の地へ逃げて行った。
13 そこでコリアンタマーは彼を追撃した。するとリブは、海岸で彼に攻めかかって来た。
14 そして、コリアンタマーの軍隊はリブに打たれ、またもやエーキシの荒れ野に逃げた。
15 そして、リブはコリアンタマーをエーゴシの平原に着くまで追撃した。しかし、コリアンタマーはリブに追われて逃げながら、自分の逃げた地方の民をことごとく引き連れて行った。
16 そして彼はエーゴシの平原に着くと、リブに攻めかかり、彼を討って、とうとう殺してしまった。ところが、今度はリブの兄弟がリブに代わってコリアンタマーを攻め、戦いは非常に激しくなった。そして、コリアンタマーはまたもやリブの兄弟の軍隊の前から逃げた。
17 リブの兄弟の名はシズと呼ばれた。シズはコリアンタマーの後を追い、多くの町を滅ぼし、女も子供も殺し、幾つもの町を焼いた。
18 そして、シズに対する恐れが全地に広がり、「だれがシズの軍隊の前に立てようか。見よ、シズは地を荒らして行く」という叫び声が全地に広がった。

19 さて、民は地の全面で群れを成し、幾つもの集団となった。
20 そして、彼らは分かれ、ある者たちはシズの軍隊へ逃げ込み、またある者たちはコリアンタマーの軍隊へ逃げ込んだ。
21 戦争は大規模で、長期間続き、また流血と虐殺の有様が久しく続いたので、地の全面に死体が散乱していた。
22 また、戦争は急激で速やかであったことから、残って死者を葬る者がなく、彼らは流血から流血へと進んで行き、男女子供の区別なく死体が地の面に散乱したまま、肉に付くうじのえさになるに任された。
23 そして、そのにおいが地の面に、すなわち地の全面に広がったので、民は昼も夜もそのにおいに悩まされた。
24 それでもシズは、コリアンタマーを追撃するのをやめなかった。それは彼が、殺された自分の兄弟の血のために、コリアンタマーに報復すると誓っていたからであり、またコリアンタマーが剣によって倒れることはないという主の言葉が、エテルに下されていたからである。
25 これによって分かるように、主は限りない怒りをもって彼らを罰せられた。そして、彼らは悪事と忌まわしい行いによって、自分たちの永遠の滅亡の道を備えていたのである。
26 さて、シズはコリアンタマーを追いかけて東の方向へ、海岸に近い境の地まで進んでいた。すると、そこでコリアンタマーがシズに攻めかかり、3日間戦った。
27 そして、シズの軍隊の被った損害が非常にひどかったため、民はおびえて、コリアンタマーの軍隊の前から逃げ始めた。そして彼らはコリホルの地まで逃げ、その途中で、自分たちに合流しようとしない民をことごとく滅ぼした。
28 それから彼らはコリホルの谷に天幕を張った。一方コリアンタマーはシャーの谷に天幕を張った。シャーの谷はコムノルの丘に近かった。そこで、コリアンタマーはコムノルの丘の上に軍隊を集め、シズの軍隊を戦いに誘い出すために、彼らに向かってラッパを吹き鳴らした。
29 そこで彼らは出て来たが、また撃退された。そして、再度出て来たが、再び撃退された。それから、彼らが3度目に出て来ると、戦いは非常に激しくなった。
30 そして、シズはコリアンタマーを打ち、多くの深手を負わせた。そのため、コリアンタマーは血を失って意識をなくし、まるで死んだ者のように運び去られた。
31 さて、両軍ともに男女子供の区別なく死者が非常に多かったので、シズは民に、コリアンタマーの軍隊を追わないように命じた。そこで、彼らは自分たちの宿営に引き返した。

第15章

数百万人のヤレド人、戦いで死ぬ。シズとコリアンタマー、民をことごとく集めて決戦に備える。主の御霊、民を励ますのをやめる。ヤレド人の国は完全に滅びる。コリアンタマー、ただ一人生き残る。

01 さて、コリアンタマーは傷が快復すると、エテルが告げた言葉を思い出した。
02 彼は、民が200万人ほど剣で殺されたのを見て、心の中で嘆いた。また、200万人の屈強な男だけでなく、彼らの妻子も殺されていた。
03 彼は自分がこれまで行ってきた悪事を悔い改め始め、すべての預言者たちの口を通して述べられてきた御言葉を思い出した。彼はこれまでそれらの預言がことごとく成就したのを見て、嘆き悲しみ、決して安らぐことはなかった。
04 そして、彼はシズに手紙を書き、民の命を助けてほしい、そうすれば民の命の代わりに王位を譲ろうと告げた。
05 そこでシズは、コリアンタマーの手紙を受け取ると返事を書き、もしコリアンタマー自身がシズの剣で殺されるためにその身を引き渡すならば、民の命を助けると告げた。
06 さて、民は罪悪を悔い改めなかった。そして、コリアンタマーの民はシズの民に対して怒りをかき立てられ、シズの民もコリアンタマーの民に対して怒りをかき立てられた。そこでシズの民は、コリアンタマーの民に攻めかかった。
07 コリアンタマーは自分がまさに敗れそうであるのを見て、またもやシズの民の前から逃げた。
08 そして、彼はリプリアンクムの海に着いた。リプリアンクムとは、広大な、すなわち、すべてをしのぐという意味である。彼らはこの海に着くと、天幕を張った。シズもまた彼らの近くに天幕を張った。そして翌日、彼らは戦いに出た。
09 そして、彼らは非常に激しく戦い、コリアンタマーはまた負傷し、血を失って意識をなくした。
10 さて、コリアンタマーの軍隊はシズの軍隊を攻め立てて打ち負かし、彼らを敗走させた。そして、シズの軍隊は南方に逃げて、オーガスと呼ばれた場所に天幕を張った。
11 そして、コリアンタマーの軍隊は、ラマの丘の近くに天幕を張った。その丘は、わたしの父モルモンが主に託して神聖な記録を隠したあの丘である。
12 そして彼らは、それまでに殺されなかった地の全面の民を、エテルを除いてことごとく集めた。
13 さて、エテルは民の行ったことをすべて見た。彼は、コリアンタマーに味方する者がコリアンタマーの軍隊に集まり、シズに味方する者がシズの軍隊に集まるのを見た。
14 彼らは4年の間、地の面にいるすべての者を集めて、得られるかぎりの兵力をすべて得ようと、民を集め続けた。
15 そして、すべての者が妻子を伴い、それぞれ自分の望む軍隊に集まった。男も女も子供も、武器で身を固め、盾と胸当てとかぶとを身に着け、戦いのいでたちで集まった。それから彼らは、戦うために互いに進軍し、一日中戦ったが、勝負がつかなかった。
16 そして夜になると、彼らは疲れ果てて、それぞれの宿営に引き揚げた。そして彼らは宿営に引き揚げた後、民の殺された者たちのために泣き叫び、悲しんだ。彼らの泣き叫び、悲しむ声は非常に大きく、大気を激しくつんざくほどであった。
17 そして翌日、彼らはまた戦いに出た。その日は大変な恐ろしい日であったが、それでも勝負がつかなかった。そして、また夜がやって来ると、彼らは民の殺された者たちのために泣き叫び、悲しむ声が大気をつんざくほどであった。
18 そこでコリアンタマーは、再びシズに手紙を書いて、もう戦いに出て来ないように、王位を譲ってよいので民の命を助けてほしいと告げた。

19 しかし見よ、主の御霊は民を励ますのをやめており、サタンが民の心を完全に支配していた。そして彼らは心をかたくなにし、思いをくらませるに任され、滅びに至るようにされたのである。そこで彼らは、またもや戦いに出て行った。
20 そして、彼らは一日中戦い、夜になると、剣を手にしたまま眠った。
21 翌日も、彼らは夜になるまで戦った。
22 夜になると、彼らはまるでぶどう酒に酔っている者のように、怒りに酔った。そして、また剣を手にしたまま眠った。
23 その翌日、彼らはまた戦った。そして、夜になったときには、52人のコリアンタマーの民と69人のシズの民を除いて、全員が剣で倒れていた。
24 そしてこの残った者たちは、その夜も剣を手にしたまま眠り、翌日、再び戦った。彼らは剣と盾をもって、一日中、力のかぎり戦った。
25 そして、夜になったときには、シズの民が32人で、コリアンタマーの民が27人になっていた。
26 そこで彼らは食べて眠り、翌日の死に備えた。彼らは体の大きな、体力のある男たちであった。
27 そして、彼らは3時間戦い、血を失って意識をなくした。
28 さて、コリアンタマーの兵たちは、力を得て歩けるようになると、命を惜しんで逃げ出そうとした。ところが見よ、シズと彼の兵たちは立ち上がり、シズはコリアンタマーを殺す、そうでなければ剣で死ぬと、怒って誓いを立てた。

29 そのため、彼はコリアンタマーの民を追いかけて、翌日彼らに追いつき、彼らはまた剣で戦った。そして、コリアンタマーとシズを除く全員が剣で倒れた後、見よ、シズは血を失って意識をなくした。
30 そこでコリアンタマーは、自分の剣に寄りかかって少し休んでから、シズの首を打ち落とした。
31 そして、彼がシズの首を打ち落としたところ、シズは両手で身をもたげてから倒れ、息をしようともがいた後に死んだ。
32 そして、コリアンタマーも地に倒れ、まるで死んだ者のようになった。

33 そこで、主はエテルに、「出て行きなさい」と言われた。そして、エテルは出て行くと、主の言葉がことごとく成就したのを見た。そして、彼は記録を書き終えて(わたしはその100分の1も書いていない)、それを隠し、後にリムハイの民がそれを発見したのである。
34 エテルの書き記した最後の言葉は、次のとおりである。「主がわたしの身を変えてわたしを天に移すことを望まれようと、あるいはわたしが肉にあって生き長らえ、主の御心に従うことを望まれようと、わたしは神の王国に救われるのであれば、それはどうでもよい。アーメン。」