アルマ書
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アルマの息子アルマの書
アルマの息子であり、ニーファイの民を治める最初のさばきつかさであり、大さばきつかさでもあり、教会の大祭司でもあったアルマについての話。さばきつかさの統治と、民の中の戦争と争いについての話。ニーファイ人とレーマン人の間の戦争についての話。これは、最初のさばきつかさであり、大さばきつかさであったアルマの記録による。
第1章
ニーホル、偽りの教義を教え、教会を設立し、偽善売教を始め、ギデオンを殺す。ニーホル、罪科に応じて死刑にされる。偽善売教と迫害が民の中に広まる。祭司たちは自活し、民は貧しい人々を助け、教会は栄える。紀元前約91年から88年に至る。
01 さて、モーサヤ王は善の戦いに従事し、神の前をまっすぐに歩み、自分に代わって統治する者をだれも残すことなく、世のすべての人の行く道を行ったが、世を去る前に法律を制定し、民がそれを承認した。したがって、ニーファイの民を治めるさばきつかさの統治の第1年以降、民はモーサヤ王の定めた法律に従わなければならなかった。
02 さて、アルマがさばきつかさの職に就いて治めた最初の年に、裁判を受けるために、彼の前に連れ出された一人の男がいた。その男は体が大きく、力が強いことで名高かった。
03 彼は人々の中を巡り歩いて、自分で神の言葉と称したことを彼らに宣べ伝え、教会に圧迫を加え、また、祭司と教師は皆、人望を得るはずであって、自分の手で働く必要はなく、人々によって生活を支えられて当然であると宣言した。
04 彼はまた、全人類は終わりの日に救われるので、人は恐れる必要もおののく必要もない、むしろ頭を上げて喜ぶがよい、主がすべての人を造られ、すでにすべての人を贖っておられ、結局すべての人が永遠の命を得るからであると、人々に公言した。
05 さて、彼はこれらのことを多く教えたので、多くの者が彼の言葉を信じ、彼の生活を支え、金銭を彼に贈るようになった。
06 そこで彼は、高慢な心で高ぶり始め、非常に高価な衣服を身に着けるようになり、自分の説き教えることにかなう教会を設立するようにさえなった。
07 そして彼は、自分の言葉を信じる者たちに説教するために出かけて行く途中で、神の教会に属する者、すなわち教会の教師の一人に出会った。そこで彼はその人と激しく論争し、教会の人々を惑わそうとした。しかし、その人は彼に反論し、神の言葉をもって彼を諭した。
08 さて、その人の名はギデオンという。かつて、神の手に使われる者となって、リムハイの民を奴隷の状態から救い出した人である。
09 さて、ギデオンが神の言葉をもって彼に反論したので、彼はギデオンに対して腹を立て、剣を抜いてギデオンに打ちかかった。ところが、ギデオンは年を取っていたので、その男が切りかかってくるのに抗することができず、剣によって殺されてしまった。
10 それで、ギデオンを殺したその男は教会の人々に捕らえられて、アルマの前に連れて行かれ、彼の犯した罪科に従って裁判されることになった。
11 そこで彼は、アルマの前に立つと非常に大胆に自己弁護をした。
12 しかし、アルマは彼に言った。「見よ、この民の中で偽善売教が起こったのは、これが初めてである。見よ、あなたは偽善売教の罪を犯しただけでなく、剣によってそれを強要しようとした。この民の中で偽善売教が行われれば、民は完全に滅びてしまうであろう。
13 また、あなたは義人、まことに、この民の中で多くの善を行ってきた人の血を流したので、もしわたしたちがあなたを赦したならば、彼の血が報復を求めてわたしたちに降りかかるであろう。
14 したがって、わたしたちの最後の王モーサヤから与えられた法律により、あなたに死刑を宣告する。この法律はこの民によって承認されたものであるから、この民はこの法律に従わなければならない。」
15 そして、人々は彼を捕らえた。彼の名はニーホルといった。そして人々は、彼をマンタイの丘の頂上に運んで行った。そこにおいて彼は、自分が民に教えてきたことが神の言葉に反するものであったことを、天地の間で白状させられた。いや、自分から認めた。そして、彼は不名誉な最期を遂げた。
16 にもかかわらず、偽善売教が国中に広まるのはやまなかった。俗世のむなしいものを非常に好む者が大勢いたからである。彼らは出て行って偽りの教義を宣べ伝えた。富と誉れを得ようとして、このように行ったのであった。
17 それでも、偽りを言う者は罰せられるので、彼らは法律を恐れて、あえて公然とは偽りを言わなかった。それで、自分の信条に従って教えを説いているふりをした。法律は、人の信条については、だれをも罰する力を持たなかったからである。
18 また、盗みを働く者は罰せられるので、彼らは法律を恐れて、あえて盗みをしなかった。彼らは奪い取ることもしなかったし、人も殺さなかった。人を殺す者は死刑に処せられたからである。
19 しかし、神の教会に加わっていない者たちは、神の教会に属してキリストの名を受けた人々を迫害し始めた。
20 まことに彼らは、神の教会に属する人々を迫害し、あらゆる言葉で苦しめ悩ました。これは、教会の人々が謙遜であり、彼らの目に高ぶりがなく、また金を出さず、代価を払わないで、互いに神の言葉を教え合っていたからである。
21 さて、教会の人々の中には厳しい律法があり、教会に属している人は、教会に属していない人を苦しめてはならない、また互いに苦しめ合ってはならないとされていた。
22 にもかかわらず、彼らの中には高ぶり、相手と激しく論争して殴り合いさえするようになった者が大勢いた。まことに、彼らは互いにこぶしで殴り合った。
23 さて、これはアルマの統治第2年にあったことで、教会がひどい苦しみに遭う原因となり、まことに、ひどい試練を受ける原因となった。
24 それは、多くの者の心がかたくなであったからである。そして、これらの者の名が消されたため、彼らはもはや神の民の中で思い出されることはなかった。また、多くの者が自ら神の民のもとを去った。
25 さて、これは信仰にしっかりと立っている人々にとって大きな試練であった。にもかかわらず、彼らは確固として動かずに神の戒めを守り、また自分たちに加えられる迫害に辛抱強く耐えた。
26 そして、祭司たちが神の言葉を民に告げるために仕事を休めば、民もまた神の言葉を聞くために仕事を休んだ。そして、祭司たちが彼らに神の言葉を告げ終えると、彼らは皆、再び自分たちの仕事に戻り、熱心に働いた。教えを説く者は聞く者よりも偉いわけではなく、教える者は学ぶ者よりも偉いわけではないので、祭司は自分自身を自分の話を聞く者よりも優れているとは思わなかった。このように、彼らは皆、平等であった。そして、彼らは皆、各々自分の力に応じて働いた。
27 また彼らは、各々自分の持っている分に応じて、貧しい者や乏しい者、病気の者、苦しんでいる者に自分の持ち物を分け与えた。彼らは高価な衣服を身に着けてはいなかったが、その装いはこざっぱりして麗しかった。
28 このように、彼らは教会の諸事を整えた。また、あらゆる迫害にもかかわらず、彼らはまた引き続き平和を保つようになった。
29 さて、教会員は堅実であったので、非常に物持ちになり、自分たちが必要としたすべてのものを豊かに持つようになった。すなわち、大小の家畜の群れや、あらゆる若い肥えた家畜、それに穀物や金や銀や貴重な品々、また絹や、より糸で織った亜麻布、あらゆる丈夫で素朴な織物、これらのものを豊かに持つようになった。
30 このようにして、彼らは裕福な暮らしの中で、着る物のない者や飢えている者、渇いている者、病気の者、栄養の足りない者を追い払うことがなかった。また、彼らは富に執着することもなかった。そのため、老いた者にも若い者にも、束縛された者にも自由な者にも、男にも女にも、また教会員であるなしの区別なく、助けの必要な人々については人を偏り見ることなく、すべての人に物を惜しまなかった。
31 このように彼らは栄え、教会に属していない者たちよりもはるかに裕福になった。
32 それは、教会に属していない者が魔術や偶像礼拝にふけり、あるいは怠惰に浸り、また無駄話やねたみや争いにふけり、高価な衣服を身に着け、高慢な目で高ぶり、迫害し、さらには偽りを言い、盗み、強盗をし、みだらな行いをし、人を殺し、そのほかあらゆる悪事を行ったからである。しかし、法律に背いた者にはすべて、できるかぎりその法律が適用された。
33 そして、法律に背いた者には、その法律が適用され、すべての者が自分の行ったことに応じて処罰されたので、彼らは前よりも穏やかになり、あえて公然とこのような悪事を行おうとしなかった。そのため、さばきつかさの統治第5年まで、ニーファイの民の中は十分に平和が保たれていた。
第2章
アムリサイ、王になろうとするが、民の声により拒絶される。アムリサイに従う者たち、アムリサイを王にする。アムリサイ人、ニーファイ人に戦争を仕掛け、打ち負かされる。レーマン人の軍隊とアムリサイ人の軍隊が連合するが、打ち負かされる。アルマ、アムリサイを殺す。紀元前約87年。
01 さて、さばきつかさの統治第5年の初めに、民の中に争いが起こった。これは、アムリサイという男のために起こったものである。この男は非常に狡猾な男、まことに、俗世の知恵に関していえば賢い男であり、かつて剣でギデオンを殺し、法律によって死刑にされた男の教団に属していた。
02 さて、このアムリサイは、悪知恵によって多くの人を引き寄せて自分につかせた。そして、その人数が非常に多かったので、彼らは大いに勢力を増し、アムリサイを立てて民を治める王にしようとし始めた。
03 さて、これは教会の人々にとっても、また、アムリサイの説得に引き寄せられなかったすべての人にとっても、憂慮すべきことであった。法律によれば、このようなことは民の声によって決めなければならないということを、彼らは知っていたからである。
04 したがって、もし民の支持を得るようなことになれば、アムリサイは邪悪な男であったので、教会の権利と特権を民から奪うつもりであった。神の教会を滅ぼすことが彼の目的であったからである。
05 さて、人々は国の至る所で各々思いのままに、アムリサイに味方する者と反対する者が分かれて集まり、そこには、ひどい論争と驚くほどの争いが見られた。
06 このようにして、彼らは集まってこの件について投票し、その投票をさばきつかさたちの前に置いた。
07 そして、民の声はアムリサイに反対であったので、彼は民を治める王になれなかった。
08 さてこれは、彼に反対であった人々には大いに喜ばしいことであった。しかし、アムリサイは自分に好意を寄せる者たちを扇動し、自分に好意を寄せない人々に対して怒りを抱かせた。
09 そして、彼らは集まり、アムリサイを自分たちの王に任じた。
10 さて、アムリサイは彼らを治める王になると、同胞に対して武器を取るように彼らに命じた。彼は民を自分に従わせようとして、このように行ったのである。
11 ところで、アムリサイの民はアムリサイの名で区別されて、アムリサイ人と呼ばれ、残りの者はニーファイ人、すなわち神の民と呼ばれた。
12 ニーファイ人はアムリサイ人の意図を知って、彼らと戦いを交える用意をした。まことに、彼らは剣と三日月刀、弓と矢、また石と石投げ、そのほかあらゆる武器で武装した。
13 このように、彼らはアムリサイ人が攻めて来たときのために、彼らと戦いを交える用意をした。また、人数に応じて隊長と大隊長、連隊長が任命された。
14 また、アムリサイもあらゆる武器で自分の兵を武装させ、自分の民をつかさどる統率官と指揮官を任命し、同胞と戦う指揮を執らせた。
15 そしてアムリサイ人は、ゼラヘムラの地のそばを流れるシドン川の東にあるアムナイフの丘にやって来て、そこでニーファイ人と戦いを始めた。
16 さて、アルマはニーファイの民の大さばきつかさであり、総督であったので、自分の民とともに、すなわち隊長や連隊長たちとともに、まことに軍隊を率いて、戦うためにアムリサイ人に向かって行った。
17 そして、彼らはシドン川の東の丘でアムリサイ人を殺し始めた。しかし、アムリサイ人が非常な力でニーファイ人と戦ったので、多くのニーファイ人がアムリサイ人の前に倒れた。
18 それでも、主がニーファイ人の手を強くされたので、彼らはアムリサイ人を大勢殺し、アムリサイ人は彼らの前から逃げ始めた。
19 そこで、ニーファイ人は終日アムリサイ人を追撃し、多くの者を殺したので、アムリサイ人の戦死者は12532人に及び、またニーファイ人の戦死者も6562人に及んだ。
20 そしてアルマは、もはやアムリサイ人を追撃できなくなると、民にギデオンの谷で天幕を張らせた。この谷は、ニーホルの手によって剣で殺されたあのギデオンにちなんで名付けられた所である。この谷で、ニーファイ人はその夜天幕を張った。
21 また、アルマは密偵を遣わしてアムリサイ人の残りの者を追わせ、彼らの計画と陰謀を知ろうとした。そうすることによって、彼らに対する防備を固め、自分の民が滅びるのを防ごうとしたのである。
22 さて、アムリサイ人の宿営をうかがうために遣わされたのは、ゼラム、アムノル、マンタイ、リムハーという名の者たちであった。これらの者たちは、アムリサイ人の宿営をうかがうために、自分たちの兵を連れて出かけた。
23 さて、その翌日、彼らは大いに驚き、またひどく恐れて、ニーファイ人の宿営に大急ぎで帰って来て言った。
24 「まことに、わたしたちはアムリサイ人の軍を追って行きましたが、何とも驚いたことに、ニーファイの地へ行く途中の、ゼラヘムラの地の上に当たるマイノンの地で、レーマン人の大軍を見ました。まことに、アムリサイ人は彼らと連合しています。
25 そして、彼らはその地でわたしたちの同胞を襲い、同胞は家畜の群れと妻子を連れて、彼らの前をわたしたちの町を目指して逃げています。急がなければ彼らはわたしたちの町を占領し、わたしたちの父と妻子たちを殺してしまうことでしょう。」
26 そこでニーファイの民は天幕を携え、ギデオンの谷を出て、自分たちの町であるゼラヘムラの町へ向かった。
27 そして見よ、彼らがシドン川を渡っていたときに、まるで海の砂のようにおびただしいレーマン人とアムリサイ人が、彼らを滅ぼそうと襲いかかって来た。
28 にもかかわらず、ニーファイ人は主の手によって強くされ、また彼らが敵の手から救い出されるようにと主に熱烈に祈ったので、主は彼らの嘆願を聞いて強くしてくださり、レーマン人とアムリサイ人は彼らの前に倒れた。
29 さて、アルマはアムリサイと一対一で、剣で戦った。彼らは互いに激しく戦った。
30 そして、神の人であったアルマは、強い信仰に鼓舞され、叫んで言った。「おお、主よ、わたしを憐れんで命を助け、わたしがあなたの御手に使われる者となってこの民を救い、守ることができるようにしてください。」
31 さて、アルマはこのように言い終えると、再びアムリサイと戦った。そして、アルマは強くされたので、剣でアムリサイを殺した。
32 彼はまたレーマン人の王とも戦った。しかし、レーマン人の王はアルマの前から逃げ帰り、自分の衛兵を出してアルマと戦わせた。
33 しかし、アルマは自分の衛兵とともにレーマン人の王の衛兵と戦い、ついに彼らを殺し、また追い返した。
34 このようにして、彼はその地の、いや、シドン川の西の岸の妨げとなるものを一掃し、殺されたレーマン人の死体をシドンの水に投げ込んだ。そうすることによって、彼の民が川を渡り、シドン川の西側でレーマン人およびアムリサイ人と戦う場所を得られるようにしたのである。
35 さて、彼らが全員川を渡り終えると、レーマン人とアムリサイ人は数え切れないほど大勢であったにもかかわらず、彼らの前から逃げ始めた。
36 そして、レーマン人とアムリサイ人は、ニーファイ人の前から、境の地のはるか向こう、西と北の荒れ野へと逃げ出したので、ニーファイ人は力のかぎり彼らを追撃して殺した。
37 まことに、彼らは至る所で戦いを交え、殺され、追われ、西へ北へと散らされて、ついにハーモンツという荒れ野に行き着いた。そこは飢えた猛獣が群れを成して住んでいる荒れ野の一部であった。
38 そして多くの者は、負傷していたためにその荒れ野で死に、それらの獣や空を飛ぶはげたかに食われてしまった。後に、彼らの骨が探し出されて、地上に積み上げられた。
【動画】アムリサイ人
第3章
アムリサイ人、預言された言葉のとおりに自分の身にしるしを付ける。レーマン人は背いたためののろいをすでに受けていた。人は自分の招いたのろいを自分自身に受ける。ニーファイ人、レーマン人のほかの軍隊を打ち破る。紀元前約87年から86年に至る。
01 さて、武器によって殺されなかったニーファイ人は、殺された者たちを葬った後、すなわち、殺された者はおびただしい数に及んだので、それを数えることもなく死体を葬り終えた後、彼らは皆、自分たちの土地、自分たちの家、自分たちの妻子のもとに帰った。
02 ところが、多くの女と子供たちが剣で殺されており、家畜の群れも多く殺され、また穀物畑の多くも軍隊に踏み荒らされていた。
03 さて、シドン川の岸で殺されたレーマン人とアムリサイ人の多くは、シドンの水に投げ込まれたので、見よ、彼らの骨は今、海の深みにあり、その数は多い。
04 アムリサイ人はレーマン人に倣って、額に赤いしるしを付けていたので、ニーファイ人と見分けることができた。しかし彼らは、レーマン人のようにその頭髪をそってはいなかった。
05 一方、レーマン人は頭髪をそっており、腰に皮をまとい、よろいを着け、弓と矢、石と石投げなどを持っているほかは裸であった。
06 またレーマン人の肌は、彼らの先祖に付けられたしるしのとおりに黒ずんでいた。そのしるしは、先祖が戒めに背き、兄弟たちに背いたために受けたのろいであった。また、その兄弟たちとは、正しい聖なる人々であったニーファイとヤコブ、ヨセフ、サムである。
07 これらの人々の兄たちは、これらの人々を滅ぼそうとしたために、のろわれたのであった。主なる神が彼ら、まことにレーマンとレムエル、およびイシマエルの息子たちとイシマエル人の女たちにしるしを付けられたのである。
08 そして、このことが行われたのは、彼らの子孫をその兄弟たちの子孫と見分けられるようにするためであった。それによって主なる神は、御自分の民がのろいを受けた民と縁を結んで間違った言い伝えを信じ、滅びることがないように、彼らを守ろうとされたのである。
09 さて、自分の子孫をレーマン人の子孫と結婚させた者はだれであろうと、その子孫に同じのろいを招いた。
10 したがって、レーマン人に惑わされた者はだれであろうと、その呼び名で呼ばれ、しるしを付けられた。
11 そして、レーマン人の言い伝えを信じようとせずに、エルサレムの地から持って来たあの記録と先祖の正しい言い伝えを信じた者、神の戒めを信じて守った者はだれであろうと、そのとき以降、ニーファイ人、すなわちニーファイの民と呼ばれた。
12 そしてこの民は、自分の民とレーマン人の民についての記録を書き継いでおり、その記録は真実である。
13 さて、再びアムリサイ人のことに話を戻すと、彼らもまたしるしを付けた。まことに、彼らは自分の身にしるしを、すなわち自分の額に赤いしるしを付けた。
14 このようにして、神の言葉は成就した。神がかつてニーファイに言われた御言葉は次のとおりである。「見よ、わたしはレーマン人をのろった。わたしは彼らにしるしを付けて、今より後とこしえに、彼らと彼らの子孫が悪を悔い改めてわたしに立ち返らないかぎり、あなたとあなたの子孫から区別されるようにする。
15 そしてまた、わたしはあなたの兄弟たちと種を交える者にもしるしを付け、彼らものろおう。
16 そしてまた、わたしはあなたやあなたの子孫と戦う者にもしるしを付けよう。
17 そしてまた、あなたのもとを去る者は、もはやあなたの子孫と呼んではならない。わたしはあなたと、またあなたの子孫と呼ばれる者たちを、これから先とこしえに祝福しよう。」これは、ニーファイと彼の子孫にあてた主の約束である。
18 ところで、アムリサイ人はその額に自分でしるしを付け始めたとき、自分たちが神の言葉を成就しているのを知らなかった。しかし、彼らは公然と神に背いた。したがって、のろいが彼らに下って当然であった。
19 さて、あなたがたは、彼らが自分自身にのろいを招いたということを知ってほしい。また、のろいを受ける者は皆、そのように自分自身に自分の罪の宣告を招くのである。
20 さて、レーマン人とアムリサイ人によるゼラヘムラの地での戦闘の後、あまり日のたたないうちに、レーマン人の別の軍隊がニーファイ人の民を襲撃した。そこは、かつてレーマン人の最初の軍隊がアムリサイ人と合流した所である。
21 そこで、彼らをその地から追い払うために軍隊が派遣された。
22 さて、アルマ自身は負傷していたので、出て行ってレーマン人と戦うことはしなかった。
23 しかし、彼は大規模な軍隊を派遣した。そして、軍隊は出て行って多くのレーマン人を殺し、残りの者たちを境の地から外へ追い払った。
24 そして、彼らはまた帰って来て、その後しばらく敵に悩まされなかったので、国内に平和を確立した。
25 さて、これらのことはすべて、さばきつかさの統治第5年に起こった。まことに、これらの戦争と争いはすべて、その年に始まって同じ年に終わった。
26 そしてその1年間に、何千何万という人々が永遠の世に送られた。彼らはそこで、自分の行いが善いか、それとも悪いか、その行いに応じて報いを刈り取り、自分が従おうとした霊が善い霊であったか悪い霊であったか、その霊に応じて永遠の幸福あるいは永遠の不幸を刈り取るのである。
27 人は皆、自分が従おうとした者から報いを受けるものである。これは預言の霊の言葉によるものであるから、真理にかなってそのようになるであろう。このようにして、さばきつかさの統治第5年が終わった。
第4章
アルマ、改心した数千の人々にバプテスマを施す。罪悪が教会に入り込み、教会の発展が妨げられる。ニーファイハ、大さばきつかさに任命される。アルマ、大祭司としての務めに専念する。紀元前約86年から83年に至る。
01 さて、ニーファイの民のさばきつかさの統治第6年には、ゼラヘムラの地に争いも戦争もなかった。
02 しかし、民は同胞を失い、大小の家畜の群れを失い、レーマン人によって足で踏みつけられ、荒らされて穀物畑を失ったので苦しんだ。
03 すべての者が嘆き悲しんで当然なほど、彼らの受けた苦難はひどいものであった。そして彼らは、自分たちの悪事と忌まわしい行いのために神の裁きが下されたと思い、目覚めて自分たちの義務を思い起こした。
04 そして彼らは、さらに完全に教会を確立する業に取りかかり、多くの人がシドンの水でバプテスマを受けて、神の教会に加えられた。彼らはアルマの手によってバプテスマを受けた。このアルマは、彼の父アルマの手によって、教会の人々を見守る大祭司に聖任されていた。
05 さて、さばきつかさの統治第7年には、神の教会に加わった者、バプテスマを受けた者は、およそ3500人に上った。このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第7年が終わり、その間は引き続き平和であった。
06 さて、さばきつかさの統治第8年には、教会の人々は次第に高慢になり始めた。それは、彼らが勤勉であることによって得た非常に多くの富と織り目の細かい絹と、より糸で織った亜麻布と、大小の多くの家畜の群れと、金と銀、あらゆる貴重な品々のためであった。彼らはこれらのものに恵まれて非常に高価な衣服を身に着けるようになり、高慢な目をもって高ぶった。
07 これは、アルマにとっても、またアルマから教会を見守る教師や祭司、長老の職に任じられた多くの人にとっても、ひどい苦痛の種であった。彼らの多くは、すでに悪が教会の人々の中に入り始めているのを見て、非常に嘆いた。
08 教会の人々は高慢な目をもって高ぶり、富や俗世のむなしいものに執着するようになり、互いにあざけり合い、自分たちの思いと望みに添った考え方をしない者を迫害するようになってきた。アルマは、このような有様を見て、非常に憂い悲しんだ。
09 このようにして、さばきつかさの統治第8年に、教会の人々の中にひどい争いが起こった。すなわち、ねたみ、争い、悪意、迫害、高慢があり、彼らの高慢は神の教会に属していない者の高慢よりもひどかった。
10 このようにして、さばきつかさの統治第8年が終わった。教会員の悪事は、教会に属していない者たちにとって大きなつまずきの石となり、そのために教会の発展が鈍り始めた。
11 そして第9年の初めに、アルマは教会員の悪事を見た。また、教会員の良くない手本のために信仰心のない者たちが次々と罪悪を犯し、民の滅亡が訪れようとしているのも見た。
12 まことに彼は、人々の中にひどい不平等があり、一部の者たちが高慢になって高ぶり、ほかの者をさげすみ、乏しい者や着る物のない者、飢えている者、渇いている者、病気の者、苦しんでいる者に背を向けているのも見た。
13 さてこれは、人々の中に憂いをもたらした大きな原因であったが、その一方で、ある人々はへりくだり、自分の持ち物を貧しい者や乏しい者に分け与え、飢えている者に食物を与えるなどして、助けを必要としている者を助けており、さらにあらゆる苦難に耐えていた。彼らは預言の霊の示すとおりに、将来来られるキリストを信じていたからである。
14 また彼らは、キリストの来臨の日を待ち望んで、罪の赦しを保ち、イエス・キリストの御心と力と死の縄目からの解放とによって死者の復活がもたらされることを考えて、大きな喜びに満たされた。
15 さて、アルマは神に従う謙遜な人々の受けている苦難と、ほかの者たちが彼らに加える迫害と、民のあらゆる不平等を見て、非常に嘆いたが、それでも主の御霊は彼から離れなかった。
16 アルマは教会の長老たちの中から一人の賢明な人を選び、民の声によって彼に権限を授けて、彼がすでに定められている法律に添う法律を制定する権限と、また人々の悪と罪科とに応じてその法律を適用する権限を持てるようにした。
17 さて、この人の名はニーファイハといって、大さばきつかさに任命された。そして、彼は人々を裁判し、また治めるために、さばきつかさの職に就いた。
18 しかしアルマは、教会の大祭司としての職は彼に授けることなく、大祭司の職は自分で保有し、さばきつかさの職だけをニーファイハに譲った。
19 彼がこのようにしたのは、彼自身が民の中に、すなわちニーファイの民の中に出て行って、人々に神の言葉を宣べ伝えて、彼らの義務を思い起こすように促すため、また人々の中にあるあらゆる高慢と悪巧みと争いを、神の言葉によって取り除くためである。それは、純粋な証をもって責めるほかに、人々を改心させる方法がないことを知っていたからである。
20 このように、ニーファイの民のさばきつかさの統治第9年の初めに、アルマはニーファイハにさばきつかさの職を譲り、自分はひたすら神の聖なる位の大祭司の職に専念し、啓示と預言の霊に従って御言葉を証した。
【動画】アルマ、神の言葉を宣べ伝える
【動画】アモナイハで伝道するアルマ
神の聖なる位による大祭司であるアルマが、全地の町と村で人々に告げた言葉。次の第5章がそれに相当する。
第5章
救いを得るために、人は悔い改めて戒めを守り、再び生まれ、キリストの血によって衣を清め、へりくだって高慢とねたみを除き去り、義の業を行わなければならない。良い羊飼いは自分の民を呼び集める。悪い行いをする者は悪魔の子である。アルマ、自分の語る教義が真実であることを証し、人々に悔い改めるように命じる。義人の名は命の書に書き記される。紀元前約83年。
01 さて、アルマは最初にゼラヘムラの地で、その後、国内の至る所で、人々に神の言葉を告げ始めた。
02 アルマ自身の記録によると、彼がゼラヘムラの町に設けられた教会で人々に語った言葉は、次のとおりである。
03 「わたしアルマは、父アルマによって神の教会の大祭司に聖任された。父はこのことを行う力と権能を神から授かっていたからである。見よ、わたしはあなたがたに言う。父はニーファイの地の境、まことに、モルモンの地と呼ばれた所で教会の設立に取りかかり、モルモンの泉で同胞にバプテスマを施した。
04 そして見よ、わたしはあなたがたに言う。彼らは神の憐れみと力により、ノア王の民の手から救い出された。
05 そして見よ、その後、彼らは荒れ野でレーマン人の手によって奴隷の状態となった。あなたがたに言う。まことに、彼らは囚われの状態にあったが、再び主は、御言葉の力によって彼らを奴隷の状態から救い出された。そしてわたしたちはこの地に導かれ、この地でも至る所に神の教会を設立するようになった。
06 さて見よ、今この教会に属している同胞よ、わたしはあなたがたに言う。あなたがたは、先祖が囚われの状態にあったことをよく覚えているか。先祖に対する神の憐れみと寛容をよく覚えているか。また神が彼らを地獄から救い出されたことをよく覚えているか。
07 見よ、神は彼らの心を改めさせ、彼らを深い眠りから覚まされたので、彼らは目覚めて神に従った。見よ、彼らはかつて暗闇のただ中にいたにもかかわらず、後に永遠の御言葉の光に照らされるようになった。まことに彼らは死の縄目と地獄の鎖に縛られ、永遠の滅びが彼らを待ち受けていた。
08 さて、わたしの同胞よ、わたしはあなたがたに尋ねる。彼らは滅ぼされたか。見よ、あなたがたに言う。いや、滅ぼされなかった、と。
09 わたしはまた尋ねる。死の縄目は断たれ、彼らを縛っていた地獄の鎖は解かれたか。わたしはあなたがたに言う。そのとおり、死の縄目と地獄の鎖は解かれ、彼らの心は広がり、彼らは贖いをもたらした愛について歌った。彼らは今、救われている、とわたしはあなたがたに言う。
10 それではあなたがたに尋ねるが、彼らはどのような条件で救われているのであろうか。まことに、彼らは何を根拠にして、救いを望むことができたのであろうか。彼らが死の縄目と地獄の鎖から解かれた理由は何であろうか。
11 見よ、わたしはあなたがたに告げることができる。父アルマは、アビナダイの口から告げられた御言葉を信じなかったか。アビナダイは聖なる預言者ではなかったか。彼は神の御言葉を語らなかったか。父アルマはそれを信じなかったか。
12 父は信じたので、心の中に大きな変化が生じた。見よ、わたしはあなたがたに言う。このことはすべて真実である。
13 そして見よ、父はあなたがたの先祖に御言葉を宣べ伝え、彼らの心の中にも大きな変化が生じた。そして、彼らはへりくだり、まことの生ける神に信頼を寄せた。そして見よ、彼らは最後まで忠実であったので、救われたのである。
14 さて見よ、教会の同胞よ、わたしはあなたがたに尋ねる。あなたがたは霊的に神から生まれているか。あなたがたの顔に神の面影を受けているか。あなたがたは心の中に、この大きな変化を経験したか。
15 あなたがたは、自分たちを造られた御方の贖いを信じる信仰を働かせているか。あなたがたは信仰の目をもって待ち望み、この死すべき体がよみがえって不死のものとなり、この朽ちるものがよみがえって朽ちないものとなって、死すべき体にあってなした行いに応じて裁かれるために神の御前に立っている有様を見ているか。
16 わたしはあなたがたに言う。あなたがたはその日、『祝福された者たちよ、わたしのもとに来なさい。見よ、地の面でのあなたがたの行いは義の業であった』と言われる主の声を聞く自分自身を、今、心に描くことができるか。
17 それとも、あなたがたが今、心に描いているのは、その日主に向かって偽りを言い、『主よ、地の面でのわたしの行いは義にかなった行いでした』と語って、主から救いを得ようとしている自分自身であろうか。
18 それとも、自分のすべての罪を思い起こし、まことに、自分の犯したすべての悪をことごとく思い出し、まことに、神の戒めを無視してきたことを思い起こしながら、罪悪感と悔恨の情にさいなまれながら、神の裁きの座に連れ出される自分自身を、今、心に描くことができるであろうか。
19 わたしはあなたがたに言う。あなたがたはその日、純真な心と清い手をもって神を仰ぎ見ることができるか。あなたがたに言うが、あなたがたは、自分の顔に神の面影を刻まれた有様で仰ぎ見ることができるか。
20 わたしはあなたがたに言う。あなたがたは、たとえ自分の身をゆだねて悪魔の手下になったとしても救われる、と考えているだろうか。
21 わたしはあなたがたに言う。あなたがたが救いを得られないことは、その日に分かるであろう。だれも衣を白く洗い清められないかぎり、救いを得られないからである。まことに、人の衣は、わたしたちの先祖がこれまで語ってきた御方の血によって、すべての汚れがきれいになるまで清められなければならない。その御方は、御自分の民を罪から贖うために必ず来られる。
22 そこで、わたしの同胞よ、わたしはあなたがたに尋ねる。あなたがたの中で血とあらゆる汚れで汚れた衣を着たまま神の法廷に立つ人がいるとすれば、その人はどのように感じるであろうか。見よ、それらのものは、あなたがたについてどのような不利な証言をするであろうか。
23 見よ、それらのものは、あなたがたが人殺しであること、また、あらゆる悪事を犯した者であることを証言しないであろうか。
24 見よ、わたしの同胞よ、あなたがたはこのような人が、今清められていて染みのない、清くて白い衣を着ているアブラハム、イサク、ヤコブ、そのほかすべての聖なる預言者とともに、神の王国で座に着く場所を得られると思うか。
25 わたしはあなたがたに言う。それは得られない。あなたがたがわたしたちの創造主を世の初めからの偽り者としないかぎり、または世の初めからの偽り者であると思わないかぎり、このような人々が天の王国で住む場所を得られるとは思えない。かえって、このような人々は悪魔の王国の子であるから、追い出されるであろう。
26 さて見よ、わたしの同胞よ、わたしはあなたがたに言う。もしあなたがたが心の変化を経験しているのであれば、また、贖いをもたらす愛の歌を歌おうと感じたことがあるのであれば、今でもそのように感じられるか尋ねたい。
27 あなたがたは、罪のない状態で神の御前を歩んできたか。あなたがたは、もし今死ぬように召されたとして、心の中で自分は十分にへりくだっていると言えるであろうか。また、自分の衣は、将来御自分の民を罪から贖うために来られるキリストの血によって清められ、白くされていると言えるであろうか。
28 見よ、あなたがたは高慢な心を取り去っているか。わたしはあなたがたに言う。もし取り去っていなければ、神にお会いする用意ができていない。見よ、あなたがたは早く用意をしなければならない。天の王国はすでに近く、このような人は永遠の命を得られないからである。
29 見よ、わたしは言う。あなたがたの中にねたみを取り去っていない人がいるか。わたしはあなたがたに言う。このような人は用意ができていないので、早く用意をしてほしい。時は近づいており、いつその時が来るか分からないからである。そして、このような人は罪がないとは認められない。
30 また、わたしはあなたがたに言う。あなたがたの中に自分の兄弟をあざけっている人、あるいは兄弟に迫害を加えている人がいるか。
31 このような人は、用意ができていないので災いである。悔い改めなければならない時が近づいている。悔い改めなければ救われないであろう。
32 まことに、罪悪を行う人はすべて災いである。『悔い改めよ。悔い改めよ』と主なる神は言われた。
33 見よ、主はすべての人を招き、憐れみの御腕を伸べて、『悔い改めよ、そうすれば、わたしはあなたがたを受け入れよう』と言われる。
34 まことに、主は言われる。『わたしのもとに来なさい。あなたがたは命の木の実を食べるであろう。あなたがたは価なしに命のパンを食べ、命の水を飲むであろう。
35 まことに、わたしのもとに来て、義の業を行いなさい。そうすれば、あなたがたは切り倒されて火の中に投げ込まれることはない。
36 見よ、良い実を結ばない者、すなわち義の業を行わない者の嘆き悲しむ時が近づいている。』
37 おお、罪悪を行う人々よ。俗世のむなしいものを誇る人々よ。義の道を知っていると公言しながら、羊飼いがこれまでも、また現在も呼んでおられるにもかかわらず、その声を聴こうとしないで、まるで羊飼いのいない羊のように迷っている人々よ。
38 見よ、あなたがたに言う。良い羊飼いはあなたがたを呼んでおられる。しかも御自分の御名、すなわちキリストの御名によってあなたがたを呼んでおられる。もしあなたがたがその良い羊飼いの声を、将来その名によってあなたがたが呼ばれるその御名を聴こうとしないならば、見よ、あなたがたはその良い羊飼いの羊ではない。
39 さて、もし良い羊飼いの羊でなければ、あなたがたは何の羊の群れに属しているのであろうか。見よ、わたしはあなたがたに言う。悪魔があなたがたの羊飼いであり、あなたがたは悪魔の羊の群れに属している。これを否定できる者がだれかいるであろうか。見よ、わたしはあなたがたに言う。これを否定する者は偽り者であり、悪魔の子である。
40 わたしはあなたがたに言う。善いものは何であろうと神から出、悪いものは何であろうと悪魔から出るからである。
41 したがって、人がもし善い行いをするならば、その人は良い羊飼いの声を聴き、良い羊飼いに従う。しかし、悪い行いをする者はだれであろうと、悪魔の子になる。悪魔の声を聴き、悪魔に従うからである。
42 そして、このように行う者はだれであろうと、悪魔から報いを受ける。したがって、このような者はすべての善い行いに対して死んだ有様になるので、義にかかわることについて報いとして死を受けるのである。
43 さて、わたしの同胞よ、わたしの言うことを聞いてほしい。わたしは心を込めて語っており、またあなたがたが誤解しないように、見よ、分かりやすく語ってきた。すなわち、神が命じられるままに語ってきた。
44 わたしは、キリストなるイエスにある神の聖なる位に従って、このように語るように召されているからである。まことに、わたしは、将来起こることについて先祖が語ってきたことを、立ってこの民に証するように命じられている。
45 そしてこれだけではない。あなたがたは、わたしが自分でこれらのことについて知っていることに気づかないのか。見よ、わたしは、自分が語ってきたこれらのことが真実であることを知っている。あなたがたは、わたしがどのようにしてこれらのことが確かであるのを知ったと思うか。
46 見よ、わたしはあなたがたに言う。これらのことは、神の聖なる御霊によってわたしに知らされているのである。見よ、わたしは自分でこれらのことを知ることができるように、幾日もの間、断食をして祈ってきた。そして、これらのことが真実であるのを、わたしは今、自分自身で知っている。主なる神が神の聖なる御霊によってこれらのことをわたしに明らかにされたからである。わたしの内にある啓示の霊によって知らされたのである。
47 さらに、あなたがたに言う。先祖が語ってきた言葉が真実であることは、わたしの内にある預言の霊によってもわたしに示されてきた。これはまた、神の御霊の現れによるものである。
48 わたしはあなたがたに言う。将来起こることについてこれからあなたがたに語ることは、何事もすべて真実であると、わたしは自分で知っている。わたしはあなたがたに言う。わたしはイエス・キリストが将来来られることを知っている。イエス・キリストは御子、すなわち御父の独り子で、恵みと憐れみと真理に満ちておられる。見よ、世の罪、まことにその御名を確固として信じるすべての人の罪を取り除くために来られるのは、この御方である。
49 わたしはあなたがたに言う。まことに、わたしの愛する同胞とこの地に住むすべての人に教えを説き、まことに、老いた人にも若い人にも、束縛された人にも自由な人にも、まことに、老人にも中年の人にも青年にも、すべての人に教えを説き、まことに、彼らに悔い改めて再び生まれなければならないことを叫び求めること、これが、わたしが召された位である。
50 まことに御霊は言われる。『地の果てに至るすべての者よ、悔い改めよ。天の王国はもう近い。まことに、神の御子は、栄光、威勢、尊厳、力、主権を帯びて来られる。』まことに、わたしの愛する同胞よ、わたしはあなたがたに言う。御霊は、『見よ、全地の王であり、また天の王でもある御方の栄光が、間もなくすべての人の子らの中に輝き渡る』と言われる。
51 御霊はまたわたしに語り、まことに、力強い声でわたしに叫んで、『出て行ってこの民に、「悔い改めよ。悔い改めないかぎり決して天の王国を受け継ぐことはできない」と言いなさい』と言われる。
52 またわたしはあなたがたに言う。御霊は言われる。『見よ、斧は木の根元に置かれている。したがって、良い実を結ばない木はことごとく切り倒されて火の中に、まことに燃え尽きることのない火、すなわち消すことのできない火の中に投げ込まれる。見よ、聖者がこのように言われたということをよく覚えておきなさい。』
53 さて、わたしの愛する同胞よ、わたしはあなたがたに言う。あなたがたはこれらの御言葉に反論できるか。まことに、これらのことを退け、聖者を足の下に踏みつけることができるか。まことに、あなたがたの心を高慢にして誇ることができるか。まことに、あなたがたはこの後もなお、高価な衣服を着て、俗世のむなしいもの、自分の富に執着し続けるつもりか。
54 まことに、あなたがたはこの後もなお、自分はほかの者よりも優れていると思い続けるつもりか。まことに、へりくだり、神の聖なる位に従って歩む同胞を、迫害し続けるつもりか。その同胞は、神の聖なる位によってこの教会に導かれ、聖なる御霊によって聖められており、そして今、悔い改めにふさわしい行いをしている。
55 また、あなたがたはこの後もなお、貧しい人や乏しい人に背を向け、彼らにあなたがたの持ち物を与えないつもりか。
56 最後に、自分の悪の中にとどまるつもりのすべての人に言う。これらの人々は、すぐに悔い改めないかぎり、切り倒されて火の中に投げ込まれてしまうであろう。
57 さて、良い羊飼いの声に従いたいと望んでいるすべての人に、わたしは言う。悪人から去り、離れ、彼らの清くないものに触れてはならない。見よ、悪人の名は消され、義人の名の中には数えられない。それは神の御言葉が成就するためである。神は言われる。『悪人の名が、わたしの民の名とともに並べられることはない。
58 義人の名は命の書に書き記されるからである。わたしは義人に、わたしの右において受け継ぎを授ける』と。さて、わたしの同胞よ、あなたがたはこれに対して、何か反論することがあるであろうか。わたしはあなたがたに言う。たとえ反論したとしても、大したことはない。神の御言葉は必ず成就するからである。
59 多くの羊を飼っているとき、おおかみが入って来て、羊の群れを食い尽くすことのないように、羊の番をしない羊飼いがあなたがたの中にいるであろうか。そして見よ、おおかみが羊の群れの中に入って来れば、羊飼いはそのおおかみを追い払わないであろうか。そして最後に、できれば羊飼いは、そのおおかみを殺すであろう。
60 さて、わたしはあなたがたに言う。良い羊飼いは今、あなたがたを呼んでおられる。あなたがたがその声を聴くならば、良い羊飼いはあなたがたを御自分の羊の群れに導き入れ、あなたがたは良い羊飼いの羊になる。また良い羊飼いは、あなたがたが滅びることのないように、飢えたおおかみをあなたがたの中に決して入れてはならないと、あなたがたに命じておられる。
61 さて、わたしアルマは、あなたがたに語ってきた言葉を、わたしに命じられた御方の御言葉のとおり実行するように、あなたがたに命じる。
62 わたしは教会に属しているあなたがたに、これらのことを命令として告げる。そして、教会に属していない人々には、招きの言葉として次のように言う。『あなたがたも命の木の実を食べる者となれるように、来て、悔い改めのためのバプテスマを受けなさい』と。」
第6章
ゼラヘムラの教会は清められ、整えられる。アルマ、教えを説くためにギデオンへ行く。紀元前約83年。
01 さて、アルマはゼラヘムラの町に設けられた教会の人々に語り終えると、神の位に従って、按手により、教会を管理し見守る祭司たちと長老たちを聖任した。
02 そして、教会に属していない者たちの中で、罪を悔い改めた者は、悔い改めのためのバプテスマを受け、教会に受け入れられた。
03 そして、教会に属していながら自分の悪事を悔い改めず、神の前にへりくだらない者、すなわち高慢な心で高ぶる者はだれであろうと、拒まれて、その名は消され、彼らの名は義人の中に数えられなかった。
04 このようにして祭司たちと長老たちは、ゼラヘムラの町で教会の秩序を確立するようになった。
05 さて、あなたがたは神の言葉がすべての人に自由に与えられたこと、神の言葉を聞くために集会をする特権が、だれからも奪われなかったことを理解してほしい。
06 それでも神の子たちは、しばしば集まって、神を知らない者たちの幸いのためにともに断食し、熱烈に祈るように命じられた。
07 さて、アルマはこのように整え終えると、彼らのもとを、まことに、ゼラヘムラの町にある教会を去り、シドン川の東に渡ってギデオンの谷へ行った。ニーホルの手によって剣で殺された、ギデオンの名にちなんで名付けられたこの谷には、ギデオンの町という一つの町があった。
08 そして、アルマはそこへ行き、彼の先祖が語った言葉が真実であることを告げる啓示に従って、また彼の内にある預言の霊に従って、さらに、御自分の民を罪から贖うために来られる神の御子イエス・キリストの証と、彼が召された聖なる位によって、ギデオンの谷に設けられている教会に神の言葉を宣言した。書き記されているのは以上のとおりである。アーメン。
アルマがギデオンに住む民に告げた言葉。これはアルマ自身の記録による。次の第7章がそれに相当する。
第7章
キリストはマリヤからお生まれになる。キリストは死の縄目を解き、御自分の民の罪を負われる。悔い改めてバプテスマを受け、戒めを守る者は、永遠の命を得る。汚れた者は神の王国を受け継ぐことができない。謙遜と信仰、希望、慈愛が求められる。紀元前約83年。
01 「見よ、わたしの愛する同胞よ、わたしはあなたがたのもとに来る機会を得たので、わたし自身の言葉で、まことに、わたしの口からあなたがたに話したいと思う。わたしにはあなたがたのもとに来られないほど多くの務めがあり、さばきつかさの職にすっかり掛かり切りになっていたので、直接あなたがたに語るのはこれが初めてである。
02 また、もしもさばきつかさの職を、わたしに代わって治めるほかの人に譲れなかったとしたら、わたしはこの度も来られなかったであろう。しかし主は、深い憐れみをもって、わたしがあなたがたのもとに来られるようにしてくださった。
03 また見よ、わたしはあなたがたが神の御前にへりくだり、神の恵みを懇願し続けていること、あなたがたが神の御前に罪のないこと、ゼラヘムラに住んでいる同胞が陥っているひどい苦境にあなたがたが陥っていないこと、これらのことを知りたいという大きな期待と深い望みを抱いてやって来た。
04 神の御名をほめたたえまつる。ゼラヘムラに住んでいる同胞が再び神の義の道に堅く立っていることを、神はわたしに知らせてくださり、まことにそれによって、非常に大きな喜びをわたしに与えてくださったからである。
05 わたしは、自分の内にある神の御霊によって、あなたがたについても喜べるであろうと確信している。しかしわたしは、あなたがたについての喜びが、ゼラヘムラの同胞のことで感じたような、ひどい苦しみと悲しみの末に得られるものでないことを願っている。見よ、彼らについてのわたしの喜びは、ひどい苦しみと悲しみに耐え抜いた末に得られたものだからである。
06 しかし見よ、わたしは、あなたがたが同胞のようにひどい不信仰な状態にないことを確信している。わたしは、あなたがたが高慢な心で高ぶっていないことを確信している。まことに、あなたがたが富や俗世のむなしいものに執着していないことを、わたしは確信している。まことに、あなたがたが偶像を礼拝しておらず、まことの生ける神を礼拝していること、そして、永遠の信仰をもって、将来与えられる自分の罪の赦しを待ち望んでいることを、わたしは確信している。
07 見よ、わたしはあなたがたに言う。将来多くのことがある。そして見よ、それらのどれよりも重要なことが一つある。見よ、贖い主が命を得て、御自分の民の中に来られる時は遠くない。
08 見よ、贖い主が御自分の死すべき幕屋に宿っておられるときにわたしたちの中に来られるとは、わたしは言わない。見よ、御霊はそのようにはわたしに言われなかった。今わたしは、このことについては知らない。しかし主なる神が、御自分の御言葉のとおりにすべてのことを行う力をお持ちであるということ、これについてわたしは知っている。
09 しかし見よ、御霊はわたしにこれだけを言われた。『この民に叫んで言いなさい。「悔い改めよ。主の道を備えよ。まっすぐな主の道を歩め。見よ、天の王国は近づいており、神の御子は地の面に来られるからである」と。』
10 そして見よ、神の御子は、わたしたちの先祖の地であるエルサレムで、マリヤからお生まれになる。マリヤは聖霊の力により覆われて身ごもり、男の子、まことに神の御子をもうけるおとめであって、尊い、選ばれた器である。
11 そして神の御子は、あらゆる苦痛と苦難と試練を受けられる。これは、神の御子は御自分の民の苦痛と病を身に受けられるという御言葉が成就するためである。
12 また神の御子は、御自分の民を束縛している死の縄目を解くために、御自身に死を受けられる。また神の御子は、肉において御自分の心が憐れみで満たされるように、また御自分の民を彼らの弱さに応じてどのように救うかを肉において知ることができるように、彼らの弱さを御自分に受けられる。
13 さて、御霊はすべてのことを御存じである。にもかかわらず、神の御子は御自分の民の罪を負い、御自分の解放の力によって彼らの背きを取り消すために、肉において苦しみを受けられる。さて見よ、これがわたしの内にある証である。
14 さて、わたしはあなたがたに言う。あなたがたは悔い改め、再び生まれなければならない。再び生まれなければ天の王国を受け継ぐことができない、と御霊が言われるからである。したがって、自分の罪から洗い清められ、神の小羊を信じる信仰を持てるように、やって来て、悔い改めのためのバプテスマを受けなさい。神の小羊は世の罪を取り除く御方であり、人々を救い、すべての不義から清める力を持つ御方である。
15 まことに、あなたがたに言う。来なさい。恐れてはならない。たやすくまとわりつき、あなたがたを束縛して滅亡に至らせるすべての罪を捨てなさい。まことに、来て、罪を進んで悔い改める気持ちのあること、また、神の戒めを守るという神との聖約に進んで入ることを、神に示しなさい。そして、今日バプテスマの水に入ることによって、神にそのことを証明しなさい。
16 だれであってもこのように行い、その後、神の戒めを守る人は、わたしがその人に言うことを覚えているであろう。まことに、わたしの内で証する聖なる御霊の証によって、わたしがその人に永遠の命を得るであろうと語ったことを、その人は覚えているであろう。
17 さて、わたしの愛する同胞よ、あなたがたはこれらのことを信じるか。見よ、あなたがたに言う。まことに、わたしは、あなたがたがこれらのことを信じているのを知っている。あなたがたがこれらのことを信じていることが分かるのは、わたしの内にある御霊の示しによる。そしてそれについて、すなわちわたしが語ってきた事柄について、あなたがたが深く信じているので、わたしは大いに喜んでいる。
18 わたしは初めに、あなたがたが同胞のように苦境に陥っていないことを深く望んでいると言ったが、わたしの望みがそのとおりにかなえられたことを、わたしは知った。
19 それは、あなたがたが義の道にいることがわたしには分かるからである。あなたがたが神の王国に通じる道にいること、まことに、神の道をまっすぐにしていることが、わたしには分かる。
20 神は曲がった道を歩まれないということが、神の御言葉の証によってあなたがたに知らされてきたことを、わたしは知っている。神は一度言われたことは変更されないし、右から左へ、すなわち正しいことから誤ったことへ転じる気配さえもお見せにならない。したがって、神の道は一つの永遠の環である。
21 また、神は清くない宮には住まわれない。そればかりでなく、汚れや清くないものは神の王国に受け入れられない。したがって、わたしはあなたがたに言う。汚れている者が、その汚れの中にとどまる時が来る。それは終わりの日である。
22 さて、わたしの愛する同胞よ、これらのことをあなたがたに語ってきたのは、神への義務感をあなたがたに自覚させ、あなたがたが神の御前を罪のない状態で歩めるように、またあなたがたが、かつてそれによって受け入れられた聖なる位に従って歩めるようにするためである。
23 さて、わたしはあなたがたが謙遜であり、従順で素直であり、容易に勧告に従い、忍耐と寛容に富み、すべてのことについて自制し、いつも熱心に神の戒めを守るように、また霊的にも物質的にも、必要としているものは何でも求め、与えられるものについては何であろうといつも神に感謝するように願っている。
24 また、あなたがたは信仰と希望、慈愛を必ず持つようにしてほしい。そうするときに、あなたがたはいつも多くの善い行いをするであろう。
25 主があなたがたを祝福し、あなたがたの衣を染みのない状態に保ってくださって、最後にはアブラハム、イサク、ヤコブ、および世界が始まって以来この世に住んだ聖なる預言者たちとともに、彼らの衣が染みのない状態であるようにあなたがたも染みのない衣を着て、もはや外に出されることなく天の王国で座に着けるように。
26 さて、わたしの愛する同胞よ、わたしは自分の内で証する御霊によって、これらの言葉をあなたがたに語ってきた。あなたがたが非常に熱心に、注意深くわたしの言葉を聞いてくれたので、心からうれしく思う。
27 神の平安が、あなたがたの信仰と善い行いに応じて、今から後とこしえに、あなたがたと、あなたがたの住まい、土地、家畜の群れ、すべての所有物、および婦人たちと子供たちのうえにとどまるように。」わたしが語ったのは以上のとおりである。アーメン。
第8章
アルマ、ミレクで教えを説き、バプテスマを施す。アモナイハで拒まれ、そこを去る。一人の天使が、引き返して民に悔い改めを叫ぶようにアルマに命じる。アルマ、アミュレクに迎えられる。アルマとアミュレク、アモナイハで教えを説く。紀元前約82年。
01 さて、アルマはここに書き記せない多くのことをギデオンの民に教え、また、以前ゼラヘムラの地で行ったように教会の秩序を確立した後、まことに、ギデオンの地からゼラヘムラの自宅に帰り、それまで果たしてきた務めを離れて休んだ。
02 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第9年が終わった。
03 そして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第10年の初めに、アルマはゼラヘムラを出て、シドン川の西にあって西方に荒れ野を望むミレクの地へ旅立った。
04 そして彼は、自分が召された神の聖なる位に従って、ミレクの地で人々を教え始めた。彼はミレクの全地で人々を教え始めたのである。
05 そこで、その地の荒れ野の境の全域で、人々が彼のもとにやって来た。そして、その地の全域で、人々はバプテスマを受けた。
06 このようにして、彼はミレクの地で務めを終えると、そこを去り、ミレクの地の北方を3日間旅した。そして、アモナイハという町に着いた。
07 さて、ニーファイの民の地や町や村は、小さい村であってもすべて、最初にそこを所有した人の名を付けるというのが彼らの習わしであった。アモナイハの地についても同様であった。
08 さて、アルマはアモナイハの町に着くと、人々に神の言葉を宣べ伝え始めた。
09 しかし、サタンがすでにアモナイハの町の人々の心をしっかりと捕らえていたので、彼らはアルマの言葉を聴こうとしなかった。
10 それでも、アルマは精神を込めて熱心に働き、神に取りすがって熱烈に祈り、その町に住む人々に御霊を注いでくださるように、また、彼らに悔い改めのためのバプテスマを施させてくださるように願った。
11 それでも、彼らは心をかたくなにして、彼に言った。「見よ、我々はおまえがアルマであることを知っている。またおまえが、おまえたちの言い伝えによって国内の多くの場所に設けた教会の大祭司であることも、我々は知っている。我々はおまえの教会の者ではないし、そのような愚かな言い伝えは信じていない。
12 また、我々はおまえの教会の者ではないから、おまえには我々を治める力がないことも、我々は知っている。おまえはもうさばきつかさの職をニーファイハに譲ってしまったので、我々を治める大さばきつかさではない。」
13 人々はこのように言って、彼の言葉にことごとく反論し、彼をののしり、彼につばきを吐きかけ、彼を自分たちの町から追い出したので、彼はそこを去ってアロンという町へ向かって旅立った。
14 さて、彼がアモナイハの町に住んでいる人々の悪事のために悲しみに打ちひしがれ、多くの艱難と苦しみに耐えながら旅をしていたときに、すなわち、アルマがこのように悲しみに打ちひしがれていたときに、見よ、主の天使が彼に現れて言った。
15 「アルマ、あなたは幸いである。頭を上げて喜びなさい。あなたには喜んでよい十分な理由がある。あなたは初めて神から御告げを受けて以来、忠実に神の戒めを守ってきたからである。見よ、わたしはあなたにその御告げを伝えた者である。
16 そして見よ、わたしが遣わされたのは、あなたがアモナイハの町へ引き返してその町の民にもう一度教えを説くように、あなたに命じるためである。まことに、彼らに教えを説きなさい。まことに、悔い改めなければ主なる神が彼らを滅ぼされることを告げなさい。
17 見よ、彼らは今、あなたの民の自由を損なおうともくろんでいる。(主がこのように言われる。)それは、神が御自分の民に与えられた掟と裁決と戒めに反することである。」
18 さて、アルマは主の天使から御告げを受けると、すぐにアモナイハの地へ引き返した。そして、別の道、すなわちアモナイハの町の南にある道を通って町に入った。
19 町に入ったとき、彼は飢えていたので、一人の人に、「神の至らない僕に何か食べるものを下さいませんか」と言った。
20 するとその人は、彼に言った。「わたしはニーファイ人であり、あなたが神の聖なる預言者であることを存じています。示現の中で天使が、『迎えなさい』と、あなたのことを告げたからです。ですから、一緒にわたしの家においでください。わたしの食べ物を差し上げます。わたしは、あなたがわたしと家族に祝福をもたらす方であることを存じています。」
21 そしてその人は、アルマを自分の家に迎えた。その人はアミュレクといった。彼はパンと肉を運んで来ると、アルマの前に置いた。
22 そこでアルマは、パンを食べて満たされた。そして彼は、アミュレクとその家族を祝福し、また神に感謝をささげた。
23 彼は食事をして満たされると、アミュレクに言った。「わたしはアルマであり、全地の神の教会を管理する大祭司です。
24 そしてまことに、わたしは啓示と預言の霊によって、このすべての民の中で神の御言葉を宣べ伝えるように召されて、この地にやって来ましたが、人々はわたしを受け入れようとせず、追い出しました。そこでわたしは、とこしえにこの地に背を向けるつもりでした。
25 ところがまことに、わたしはもう一度引き返してこの民に預言し、彼らの罪悪について彼らを責める証を述べるように命じられました。
26 さて、アミュレク、あなたは食べ物を与え、わたしを受け入れてくれたので、祝福を受けます。わたしは幾日もの間断食をしていたので、飢えていました。」
27 それからアルマは民に教えを説き始めるまで、幾日もの間アミュレクの家に滞在した。
28 さて、民はますますひどい罪悪を犯すようになった。
29 そこで、御言葉がアルマに下った。「行きなさい。また、わたしの僕アミュレクにも告げなさい。『出て行って、この民に預言し、悔い改めるように言いなさい。悔い改めなければ主は怒ってこの民を罰し、その激しい怒りを解かれないと言いなさい』と。」
30 それでアルマとアミュレクは、神の言葉を告げ知らせるために人々の中に出て行った。そして、二人は聖霊に満たされた。
31 また彼らは、だれも彼らを地下牢に閉じ込めることもできなければ、殺すこともできないほどの力を与えられていた。それでも彼らは、縄で縛られて牢に投げ込まれるまで、その力を使わなかった。それは、主が彼らによって主の力を現されるようにするためであった。
32 さて、彼らは出て行くと、主から授かった御霊と力によって、人々に教えを説き、また預言し始めた。
【動画】アルマ、神の言葉を宣べ伝えるようにと天使に告げられる
アモナイハの地にいる民に告げ知らされたアルマの言葉とアミュレクの言葉。アルマとアミュレクは牢に投げ込まれたが、彼らの内にある奇跡を起こす神の力によって救われる。これはアルマの記録による。次の第9〜14章がそれに相当する。
第9章
アルマ、アモナイハの民に悔い改めるように命じる。主は終わりの時にレーマン人に憐れみを示される。ニーファイ人は、光を捨てればレーマン人によって滅ぼされる。神の御子が間もなく来られる。神の御子は、悔い改めてバプテスマを受け、御子の名を信じる人々を贖われる。紀元前約82年。
01 さらに、わたしアルマは、アミュレクを連れて出て行って、もう一度この民に、すなわちアモナイハの町にいる人々に教えを説くように神から命じられたので、彼らに教えを説き始めたところ、彼らはわたしと論争を始めて言った。
02 「おまえは何者だ。人一人が大地は過ぎ去ると我々に説いて、我々がその人の証を信じるとでも思うのか。」
03 彼らは、自分たちの語った言葉を理解していなかった。大地が過ぎ去ることを、彼らは知らなかったからである。
04 彼らはまた、「たとえおまえが、この大きな町が1日で滅びてしまうと預言しても、我々はおまえの言葉を信じない」と言った。
05 彼らは、心がかたくなで強情な民であったので、神にそのような驚くべき業がおできになることが分からなかった。
06 また彼らは言った。「神は何者なので、そのように大いなる驚くべき業が現実に起こることをこの民に告げ知らせるのに、権能を持つ者をたった一人しか送らないのか。」
07 そして、彼らはわたしを捕らえようとして進んで来たが、しかし見よ、捕らえなかった。そこで、わたしは彼らに告げ知らせるために勇気を奮って立ち、まことに、彼らに大胆に証して言った。
08 「見よ、おお、邪悪でよこしまな時代の人々よ、どうしてあなたがたは先祖の言い伝えを忘れてしまったのか。まことに、何と早く神の戒めを忘れてしまったことか。
09 あなたがたは、わたしたちの先祖リーハイが神の御手によってエルサレムから導き出されたことを覚えていないのか。あなたがたは、彼らが皆、神に導かれて荒れ野を通り抜けたことを覚えていないのか。
10 またあなたがたは、神が何度もわたしたちの先祖を敵の手から救い出し、また、彼ら自身の同胞の手にかかって滅びることのないように彼らを守ってくださったことを、こんなに早く忘れてしまったのか。
11 まことに、もしも神のたぐいない力と、神の憐れみと、わたしたちに対する神の寛容がなかったならば、わたしたちは間違いなく、はるか以前に地の面から絶たれていたであろうし、また恐らく無窮の惨めで不幸な状態に置かれていたことであろう。
12 見よ、あなたがたに言う。神はあなたがたに、悔い改めるように命じておられる。悔い改めなければ、あなたがたは決して神の王国を受け継ぐことはできない。しかし見よ、そればかりではない。神はあなたがたに悔い改めるように命じてこられたので、悔い改めなければ、神はあなたがたを地の面からことごとく滅ぼされるであろう。まことに、神は怒ってあなたがたを罰し、その激しい怒りを解かれることはないであろう。
13 見よ、あなたがたは、神がリーハイに、『あなたがたはわたしの命令を守るかぎり地に栄える』と言われた御言葉を覚えていないのか。また神は、『わたしの命令を守らなければ、わたしの前から絶たれる』とも言っておられる。
14 レーマン人は神の戒めを守らなかったので、主の御前から絶たれた。あなたがたはこのことを覚えておいてほしい。わたしたちは、このことにおいて主の御言葉がすでに実証されていることを知っている。レーマン人はこの地で戒めに背き、主の御前から絶たれた。
15 にもかかわらず、わたしはあなたがたに言う。もしあなたがたが自分の罪の中にとどまるならば、裁きの日には、彼らの方があなたがたよりも堪えやすいであろう。また、あなたがたが悔い改めなければ、まことに、この世でも彼らの方があなたがたよりも堪えやすいであろう。
16 それは、レーマン人に与えられている約束が多くあるからである。彼らを無知の状態にとどめたのは、彼らの先祖の言い伝えである。したがって、主は彼らを憐れみ、彼らがこの地に長く住めるようにされるであろう。
17 そして、彼らはある時期に、導かれて主の御言葉を信じ、自分たちの先祖の言い伝えが正しくないことを知るようになるであろう。そして、彼らの多くが救われるであろう。主は御名を呼ぶすべての人に憐れみを示されるからである。
18 しかし見よ、わたしはあなたがたに言う。もしあなたがたが悪事を続けるならば、この地でのあなたがたの生涯は延ばされない。レーマン人があなたがたのもとに送られるからである。もしあなたがたが悔い改めなければ、彼らが気づかないうちにやって来て、あなたがたは完全な滅亡に見舞われるであろう。これは主の激しい怒りによるのである。
19 あなたがたが罪悪のあるまま生き続けて主の民を滅ぼすことを、主は許されないからである。わたしはあなたがたに、そのとおりであると言う。もしニーファイの民と呼ばれる主の民が、主なる自分たちの神から授けられた非常に多くの光と非常に多くの知識を受けた後、罪と背きに陥るようなことがあるとすれば、主はむしろレーマン人がニーファイの民をことごとく滅ぼすのを許されるであろう。
20 まことに、ニーファイの民は、そのように主から厚い恵みを受けた民であり、まことに、ほかのあらゆる国民、部族、国語の民、民族に勝る恵みを受け、彼らの望みと信仰と祈りに応じて、過去、現在、未来のことをすべて示され、
21 また、神の御霊の訪れを受け、天使と語り、主の声による御告げを受け、預言の霊と啓示の霊と、そのほか異言で語る賜物、説教の賜物、聖霊の賜物、翻訳の賜物など、多くの賜物を受けてきた。
22 また、神によりエルサレムの地から主の御手によって救い出され、飢饉や病気、あらゆる患いから救われ、戦闘の際には滅ぼされないように強くされ、幾度も奴隷の状態から導き出されて現在に至るまで守られ、保護され、そしてこのように栄えてあらゆるものに富むようになった。
23 さて見よ、わたしはあなたがたに言う。このように多くの祝福を主の御手から受けてきたこの民が、もし現在受けている光と知識に背くとすれば、わたしはあなたがたに言うが、もし彼らが戒めに背くならば、レーマン人の方がこの民よりもはるかに堪えやすいであろう。
24 見よ、主の約束がレーマン人に与えられているからである。しかし、あなたがたが戒めに背くならば、主の約束はあなたがたには及ばない。もし主に背くならば、あなたがたは地の面からことごとく滅ぼされてしまうと、主がはっきり約束し、そう明確に定めておられないであろうか。
25 このために、すなわちあなたがたが滅ぼされることのないために、主は天使を遣わして御自分の民の多くの者を訪れさせられた。そして、天使はこれらの者に、出て行って、この民に次のように力強く叫ぶように告げた。『悔い改めよ。天の王国は近づいている。
26 今から多くの日が過ぎないうちに、神の御子が栄光のうちに来られる。神の御子の栄光は御父の独り子の栄光であり、その独り子は恵みと公平と真理に満ち、忍耐と憐れみと寛容に富み、御自分の民の嘆願を聞くのも、また彼らの祈りにこたえるのも早い御方である。
27 そして見よ、神の御子は、御子の御名を信じて悔い改めのためのバプテスマを受ける人々を贖うために来られる。
28 だから、主の道を備えなさい。すべての人が自分の行いに応じて、その行いの報いを刈り取る時が近づいているからである。すなわち、人はその行いが義にかなっていれば、イエス・キリストの力と解放によって自分自身の救いを刈り取り、その行いが悪ければ、悪魔の力と束縛によって自分自身の罰の定めを刈り取ることになる。』
29 さて見よ、これが民に向かって叫ぶ天使の声である。
30 そこで、わたしの愛する同胞よ、あなたがたはわたしの同胞であるから、愛されて当然である。しかし、あなたがたの心は神の御言葉に対して非常にかたくなになっており、あなたがたは、迷い堕落した民となっているので、悔い改めに導く行いをしなくてはならない。」
31 さて、わたしアルマがこれらの言葉を語り終えると、見よ、人々はわたしに腹を立てた。わたしが彼らのことを、心のかたくなな、強情な民であると言ったからである。
32 また、わたしが彼らのことを迷い堕落した民であるとも言ったので、彼らは腹を立て、わたしを捕らえて牢に投げ込もうとした。
33 しかしそのとき、主は彼らがわたしを捕らえて牢に投げ込むのを許されなかった。
34 そこで、アミュレクも進み出て、彼らに教えを説き始めた。この書にはアミュレクの言葉をすべては書き記さず、その言葉の一部だけを記すことにする。
第10章
リーハイはマナセの子孫である。アミュレク、アルマの世話をするように天使から命じられたことを述べる。義人の祈りは人々の命が救われる元となる。不義な法律家とさばきつかさが、民の滅亡の基を据える。紀元前約82年。
01 さて、アミュレクがアモナイハの地に住む人々に説いた言葉は、次のとおりである。
02 「わたしはアミュレクである。わたしはギドーナの子であり、ギドーナはイシマエルの子、イシマエルはアミナダイの子孫である。このアミナダイは、神殿の壁に神の指で書き記された言葉を解き明かした、あのアミナダイである。
03 そして、アミナダイはニーファイの子孫であり、ニーファイはエルサレムの地から来たリーハイの子、リーハイはマナセの子孫、マナセは兄たちの手によってエジプトに売られたヨセフの子である。
04 そして見よ、わたしも、わたしを知っているすべての人の中では少なからず信望を得ている者であり、まことに見よ、わたしには多くの親族と友人がいる。わたしはまた勤勉に働いて大きな富も得た。
05 それでもわたしは、主の道と、主の奥義と、驚くべき力については、まだ多くのことを知らない。いや、わたしはこれらのことについて多くを知らないと言ったが、しかし見よ、それは間違いである。わたしはすでに、主の奥義と、まことにこの民の命を守るために現された主の驚くべき力を、多く見てきたからである。
06 それでもわたしは、心をかたくなにした。幾度となく呼ばれたが、わたしは聞こうとしなかった。だからわたしは、これらのことについて知っていながら、知りたいと思わなかった。そこでわたしは、悪い心のまま、さばきつかさの統治第10年のこの7月の4日まで、神に背き続けた。
07 そしてわたしが、ごく身近な親族に会おうとして出かけたときに、見よ、主の天使がわたしに現れてこう言った。『アミュレクよ、あなたは主の預言者に食べ物を与えなければならないので、家へ戻りなさい。その預言者は聖なる人であり、神の選ばれた人である。その人は、この民の罪のために、幾日もの間断食をして飢えている。あなたは彼を自分の家に迎え、食べ物を与えなさい。そうすれば、彼はあなたとあなたの家族を祝福し、主の祝福があなたとあなたの家族のうえにとどまるであろう。』
08 そこでわたしは、その天使の声に従い、我が家へ向かった。そして、我が家へ帰る途中で、天使がわたしに『自分の家に迎えよ』と言ったその人に会った。その人こそ、これまであなたがたに神にかかわる事柄について語ってこられた、この方である。
09 天使は、この方が聖なる人であるとわたしに言った。それでわたしは、この方が聖なる人であることを知っている。神の天使がそう言ったからである。
10 わたしはまた、この方が証されたことが真実であることを知っている。見よ、わたしはあなたがたに言う。主が生きておられるように確かに、主は御自分の天使を遣わして、これらのことをわたしに明らかにしてくださった。この方アルマがわたしの家に住んでおられたときに、天使がこれを明らかにしたのである。
11 見よ、この方はわたしの家族を祝福された。わたしと、女たち、子供たち、わたしの父、わたしの親族、すなわちわたしの一族全員を祝福されたので、この方の告げられた言葉のとおりに、主の祝福がわたしたちのうえにとどまった。」
12 さて、アミュレクがこれらの言葉を語り終えると、人々は、自分たちが責めを受けている事柄について証する証人が一人にとどまらなかったので、またその証人たちがその内にある預言の霊によって将来起こることも証したので、驚いた。
13 それでも彼らの中には、この二人を問い詰めようと考えた者たちがいた。これらの者は、狡猾な策略によって二人の言葉じりをとらえ、彼らに不利な証拠を見つけ、彼らをさばきつかさたちに引き渡して法律によって裁いてもらい、自分たちが彼らについて見せかけることができた、あるいは証明できた罪科に応じて彼らを殺すか、あるいは投獄するかしようとした。
14 さて、この二人を滅ぼそうとしたのは法律家たちであった。法律家とは、人々が裁判のときに、すなわち人々がさばきつかさの前で犯罪の審理を受けるときに、彼らに雇われて、または任命されて法律を取り扱う者たちであった。
15 この法律家たちは、民のあらゆる策略と悪知恵に通じていた。そして、それによって彼らはその職業を巧みにこなしていた。
16 さて、彼らはアミュレクに質問を始め、彼に言葉の混乱を起こさせようと、すなわち、彼の語る言葉に矛盾を生じさせようとした。
17 しかし彼らは、アミュレクに自分たちの企てが知れてしまったのを知らなかった。彼らが質問を始めたとき、アミュレクは彼らの思いを見抜いて言った。「おお、邪悪でよこしまな時代の人々よ、法律家たちと偽善者たちよ。あなたがたは悪魔の基を据えている。神の聖なる人々を捕らえるために、わなと落とし穴を仕掛けている。
18 義人の道を曲げるために策を巡らし、自分たちの頭に、この民が全滅するまで神の怒りを招こうとしている。
19 まことに、我々の最後の王モーサヤが王位を譲ろうとしたときに言ったことは、適切であった。モーサヤ王が王位を譲る相手がだれもいなかったので、この民は、民自身の声によって治められることになった。そのときに、もしこの民の声が罪悪を選ぶ時が来れば、すなわちこの民が戒めに背く時が来れば、民の滅亡の機が熟しているとモーサヤ王が言ったが、実にそのとおりであった。
20 さて、わたしはあなたがたに言う。主があなたがたの罪悪を裁かれるのはふさわしいことである。主が御自分の天使たちの声によってこの民に、『悔い改めよ。悔い改めよ。天の王国は近づいているからである』と叫ばれるのはふさわしいことである。
21 まことに、主が天使の声によって、『わたしは公平と公正を手に携えて、わたしの民の中に降ろう』と叫ばれるのはふさわしいことである。
22 また、わたしはあなたがたに言う。もしも今、この地に住む義人の祈りがなかったならば、あなたがたは完全な滅亡に見舞われていたことであろう。しかし、それはノアの時代の人々のように洪水によるのではなく、飢饉と疫病と剣によったことであろう。
23 しかし、あなたがたが救われているのは、義人の祈りによる。したがって、もしあなたがたが自分たちの中から義人を追い出すならば、そのときに主は手をとどめず、激しい怒りのうちに降って来て、あなたがたを責められるであろう。そのとき、あなたがたは飢饉と疫病と剣によって打たれるであろう。あなたがたが悔い改めなければ、その時はすでに近い。」
24 そこで、民はますますアミュレクに腹を立て、「この男は我々の公正な法律と我々の選んだ賢い法律家をののしっている」と叫んだ。
25 しかし、アミュレクは手を伸ばし、さらに力強く彼らに叫んだ。「おお、邪悪でよこしまな時代の人々よ、なぜサタンはこのようにあなたがたの心をしっかりと捕らえたのか。なぜあなたがたはサタンに自分自身をゆだねようとするのか。サタンはあなたがたに告げられている御言葉を、あなたがたがその真実なままに理解しないように、あなたがたを支配する力を得て、あなたがたの目をくらましている。
26 見よ、わたしはあなたがたの法律に逆らう証を述べたか。あなたがたは分かっていない。あなたがたは、わたしがあなたがたの法律をけなしたと言うが、わたしはそのようなことはしていない。むしろわたしは、あなたがたの法律を支持し、あなたがたが罪に定められることを語った。
27 見よ、わたしはあなたがたに言う。あなたがたの法律家たちとさばきつかさたちの不義によって、この民の滅亡の基が据えられている。」
28 さて、アミュレクがこれらの言葉を語ったところ、人々は彼を非難して叫んだ。「我々には分かる。この男は悪魔の子だ。我々にうそを言っている。この男は我々の法律をけなした。それなのに、法律をけなさなかったと言っている。
29 そのうえこの男は、我々の法律家とさばきつかさをののしった。」
30 そして法律家たちは、アミュレクを責めるためにこれらの事柄を覚えておくように、人々の心の中にそれを植え付けたのである。
31 その法律家たちの中に、ゼーズロムという名の者がいた。彼は法律家の中では最も有能な者の一人であり、民の中で多くの仕事を抱えていたので、アミュレクとアルマを責めた中心人物であった。
32 この法律家たちの目的は、利益を得ることであり、彼らは自分の働きに応じて利益を得たのであった。
第11章
ニーファイ人の貨幣制度についての説明。アミュレク、ゼーズロムと論じ合う。キリストは人々を罪のあるままでは救われない。天の王国を受け継ぐ人々だけが救われる。すべての人が不死不滅の状態によみがえる。復活後には死はない。紀元前約82年。
01 さて、モーサヤ王の法律では、法律のさばきつかさであるすべての者、すなわち、さばきつかさとして任命されている者たちは、彼らの前に連れて来られた者たちを裁判するために働いた時間に応じて、俸給を受けることになっていた。
02 そこで、もしある人がほかの人に借金をしてそれを返さないならば、その人はさばきつかさに訴えられた。すると、さばきつかさは職権を行使し、役人たちを遣わしてその人を自分の前に連れて来させた。そして、さばきつかさはその人を法律と、その人に対して提出された証拠によって裁判した。その結果、その人は強制的に借金を払わされるか、強制的に持ち物を取り上げられるか、または盗人や強盗として強制的に民の中から追い出された。
03 また、さばきつかさは自分の働いた時間に応じて俸給を受けた。すなわち、1日について金1セナイン、または銀1セヌムを受けた。銀1セヌムは金1セナインに相当する。これは、定められた法律による。
04 さて、ニーファイ人の各種の金貨と銀貨の名称は、その価値に従って挙げると次のとおりである。この名称はニーファイ人が付けたものである。彼らはエルサレムにいたユダヤ人の方法では計算していなかった。また、ユダヤ人の方法で量ることもしなかった。彼らはモーサヤ王が確立したさばきつかさの治世に至るまで、民の意向と状況に応じて、時代ごとに貨幣単位と度量法を変えてきたのである。
05 さて、その貨幣単位は次のとおりである。すなわち、金1セナイン、金1セオン、金1シュム、金1リムナ。
06 銀1セヌム、銀1アムノル、銀1エズロム、銀1オンタイがあり、
07 銀1セヌムは金1セナインに等しく、どちらも大麦1升、または各種の穀物1升分に相当した。
08 さて、金1セオンの額はセナインの2倍の価値があり、
09 また、金1シュムはセオンの2倍の価値があり、
10 また、金1リムナは、1セナインと1セオンと1シュムを合わせた価値があった。
11 また、銀1アムノルは2セヌムに等しく、
12 また、銀1エズロムは4セヌムに等しく、
13 また、銀1オンタイは、1セヌムと1アムノルと1エズロムを合わせたものに等しかった。
14 さて、貨幣単位の小さいものの価値は次のとおりである。
15 1シブロンは1セヌムの半分である。したがって、1シブロンは大麦半升分に相当する。
16 また、1シブルムは1シブロンの半分であり、
17 そして、1レアは1シブルムの半分である。
18 さて、これがニーファイ人の貨幣評価による数の取り方である。
19 また、金1アンテオンは3シブロンに等しい。
20 さて、さばきつかさたちは利益を得ることを唯一の目的としており、自分たちの働きに応じて俸給を受けたので、騒動を起こすように、またあらゆる争いと悪事を行うように人々を扇動した。それは、自分たちがさらに多くの働きができるように、そして、自分たちの前に持ち出される訴訟によって金銭を得られるようにするためであった。そこで、彼らは人々を扇動してアルマとアミュレクに逆らわせたのである。
21 それで、ゼーズロムはアミュレクに質問を始め、「わたしが尋ねる少しの質問に答えてもらえるだろうか」と言った。ゼーズロムは善いことを損なうために悪魔の策略に長じていた男であったので、アミュレクに、「わたしが質問することに答えてもらえるだろうか」と尋ねたのである。
22 そこで、アミュレクは彼に、「もしそれがわたしの内にある主の御霊にかなうならば答える。わたしは主の御霊にかなわないことは何も言わない」と答えた。するとゼーズロムは彼に、「見よ、ここに銀6オンタイがある。あなたが至高者の実在を否定するならば、わたしはこれをすべてあなたに進呈しよう」と言った。
23 そこでアミュレクは言った。「おお、地獄の子よ、なぜわたしをそそのかすのか。義人はこのような誘惑に決して屈しないことを、あなたは知っているではないか。
24 あなたは神がおられないと信じているのか。いや、わたしはあなたに言うが、あなたは神がおられることを知っている。しかし、あなたは神よりもその金の方を愛している。
25 さて、あなたは神の御前でわたしに偽りを言った。あなたはわたしに、『この大枚の6オンタイを見なさい。これを進呈しよう』と言ったが、あなたは心の中では、それをわたしに渡すまいと考えている。あなたの望みはただ、わたしにまことの生ける神を否定させて、わたしを滅ぼす口実を得ることであった。さて見よ、あなたはこの大きな悪事のために報いを受けるであろう。」
26 そこで、ゼーズロムがまた彼に、「あなたはまことの生ける神がいると言うのか」と問うた。
27 そこでアミュレクは、「そのとおり、まことの生ける神がおられる」と答えた。
28 そこでゼーズロムが、「神は何人もいるのか」と問うので、
29 彼は、「そうではない」と答えた。
30 またゼーズロムが重ねて、「どうしてあなたは、これらのことを知っているのか」と問うので、
31 彼は、「天使がわたしにそれを知らせてくれた」と答えた。
32 そして、ゼーズロムがまた、「将来来るというのはだれか。神の子なのか」と問うので、
33 彼は「そのとおり」と答えた。
34 ゼーズロムはまた、「神の子は、自分の民を罪があるまま救うのか」と言った。そこで、アミュレクは答えて言った。「わたしはあなたに、そうではないと言おう。神の御子は御自分の御言葉を否定し得ないからである。」
35 ここで、ゼーズロムは人々に向かって言った。「あなたがたはこれらのことをしっかり覚えていてほしい。この男は、神はただ一人であると言った。しかし、神の子は将来来るが、自分の民を救わないとこの男は言う。まるで、この男は神に命じる権能を持っているかのようだ。」
36 さて、アミュレクはまた彼に言った。「あなたは偽りを言っている。神の御子が御自分の民を罪のあるまま救われないとわたしが言ったことで、わたしが神に命じる権能を持っているかのように語ったとあなたは言う。
37 わたしはもう一度あなたに言う。神の御子は人々を罪のあるまま救うことはおできにならない。わたしは神の御子の御言葉を否定することはできない。神の御子は、清くない者は決して天の王国を受け継ぐことができないと言われた。天の王国を受け継がなければ、どうして救われるであろうか。だから、あなたがたは罪のあるまま救われることはできないのである。」
38 さて、ゼーズロムはまた彼に、「神の子はまことの永遠の父であるのか」と尋ねた。
39 そこでアミュレクは彼に答えた。「そのとおり。神の御子は、天地とその中にある万物のまことの永遠の父である。神の御子は初めであり終わりであり、最初であり最後である。
40 また、神の御子は御自分の民を贖うために、将来この世に来られ、御自分の御名を信じる人々の背きを負われる。これらの人々は永遠の命を得る人々であり、これ以外の人々に救いは与えられない。
41 したがって、悪人はあたかも贖いがなかったかのような有様であり、ただ死の縄目からの解放だけがある。見よ、すべての人が死者の中からよみがえって神の御前に立ち、自分の行いに応じて裁かれる日が来るからである。
42 さて、肉体の死と呼ばれる死がある。そして、キリストの死は将来この肉体の死の縄目を解き、すべての人がこの肉体の死からよみがえる。
43 霊と体は再び結合して完全な形になり、手足も関節も、ちょうど今のわたしたちのような、その本来の造りに回復される。そして、わたしたちは今持っている知識を保ったまま、神の御前に連れ出されて立ち、自分のすべての罪をはっきりと思い出す。
44 さて、この復活は、老いた人にも若い人にも、束縛された人にも自由な人にも、男にも女にも、悪人にも義人にも、すべての人に与えられる。そして、髪の毛一筋さえも失われることはなく、すべてのものが今あるような、その完全な造りに、すなわち体に回復される。それから、自分の行いが善いか、それとも悪いか、行いに応じて裁かれるために、一つの永遠の神である御子なるキリストと御父なる神と聖なる御霊との法廷に連れ出され、罪の有無を問われる。
45 さて見よ、わたしは死すべき体の死について、また死すべき体の復活についてあなたに語ってきた。わたしはあなたに言う。この死すべき体は不死不滅の体によみがえる。死から、すなわち第1の死から命に移り、すべての人がもう死ぬことはあり得ない。彼らの霊は体と結合して、決して分離しない。このように相合したものは、霊的な、不死不滅のものとなり、彼らはもはや朽ちることがない。」
46 さて、アミュレクがこれらの言葉を語り終えると、人々はまた驚き、ゼーズロムもおののき始めた。このようにして、アミュレクの話は終わった。すなわち、わたしが書き記した言葉はこれだけである。
第12章
アルマ、ゼーズロムと論じ合う。神の奥義は忠実な人々にだけ示される。人は自分の思い、信じていること、言葉、行いによって裁かれる。悪人は霊の死を受ける。この死すべき生涯は試しの状態である。贖いの計画は復活をもたらし、また信仰によって罪の赦しももたらす。悔い改めた者は、神の独り子を通じて憐れみを受ける権利を持つ。紀元前約82年。
01 さて、ゼーズロムは、アミュレクを滅ぼすための偽りと欺きをアミュレクに見破られ、彼の言葉に沈黙してしまうとともに、自分の罪を自覚して震えおののき始めた。アルマはその様子を見ると、口を開いてゼーズロムに語り、アミュレクの言葉を確認し、さらに多くのことを説き始めた。すなわち、アミュレクよりもさらに詳しく聖文を説き明かし始めた。
02 さて、アルマがゼーズロムに語った言葉は、取り巻いていた人々にも聞こえた。群衆は大勢であった。アルマは次のように語った。
03 「ゼーズロムよ、あなたの偽りと悪巧みは見破られている。あなたは人に偽りを言っただけでなく、神にも偽りを言ったのだ。見よ、神はあなたの思いをすべて御存じである。そして、あなたも分かっているように、あなたの思いは神の御霊によってわたしたちに知らされている。
04 あなたも分かっているように、わたしたちは、あなたのはかりごとが悪魔の狡猾さによって非常に狡猾であって、この民を偽り欺いて彼らにわたしたちに対する反感を抱かせ、わたしたちをののしり、追い出させるのに有効であることを知っている。
05 これはあなたの敵のはかりごとであって、彼はあなたの中で力を行使してきたのである。さて、わたしがあなたに告げることは、すべての人に告げることでもある。あなたがたはそのことを覚えておいてほしい。
06 見よ、わたしはあなたがた全員に言う。これはこの民を捕らえるために敵対する者の仕掛けたわなであり、これによって彼は、あなたがたを自分に服従させ、鎖であなたがたを縛り、束縛の力によってあなたがたに鎖をかけたまま、永遠の滅びに陥れようとしたのである。」
07 さて、アルマがこれらの言葉を語り終えると、ゼーズロムはさらにひどくおののき始めた。彼はますます神の力を感じ、またアルマとアミュレクが自分のことを知っていると分かったからである。彼は、二人が自分の心の思いと志を知っていることに気づいた。彼ら二人は、預言の霊によってこれらのことが分かるように、力を与えられたのである。
08 そこでゼーズロムは、神の王国についてもっと多く知ろうとして、熱心に彼らに尋ね、アルマにこう言った。「アミュレクが死者の復活について語り、すべての人は正しい者も正しくない者も死者の中からよみがえり、ともに行いに応じて裁かれるために神の御前に引き出されて立つと言ったのは、どういう意味ですか。」
09 そこでアルマは、このことを次のように詳しく述べて彼に言った。「神の奥義を知ることは多くの人に許されている。しかしこれらの人々は、神が人の子らに授けておられるだけの御言葉しか伝えてはならないという、厳しい命令を受けている。神の御言葉は、人の子らが神に寄せる注意力と熱意の度合いに応じて与えられる。
10 したがって、心をかたくなにする者はわずかな御言葉しか受けないが、心をかたくなにしない者は、さらに多くの御言葉を与えられて、ついに神の奥義が十分に分かるようになるまで、奥義を知ることが許される。
11 また、心をかたくなにする者はわずかな御言葉しか与えられず、ついに神の奥義をまったく知らない有様となる。その後、これらの者は悪魔に捕らえられて、悪魔の意のままに滅びに引き込まれる。地獄の鎖とはこのことを意味する。
12 そしてアミュレクは、死と、この死すべき状態から不死不滅の状態によみがえることと、行いに応じて裁かれるために神の法廷に連れ出されることについて分かりやすく話した。
13 したがって、もしわたしたちの心がかたくなであり、まことに、わたしたちが御言葉に対して心をかたくなにして、御言葉がわたしたちの中に見いだされないようになれば、そのとき、わたしたちの状態は恐ろしいものになるであろう。そのとき、わたしたちは罪に定められるからである。
14 わたしたちの言葉がわたしたちを罪に定め、まことに、行いもすべてわたしたちを罪に定めるので、わたしたちは染みのない者とは認められない。また、わたしたちの思いもわたしたちを罪に定める。そして、このような恐ろしい状態の中で、わたしたちはあえて神を仰ぎ見ようとはしないであろう。そして、神の御前から隠れるために、岩や山に自分の上に落ちてくるように命じることができれば、喜んでそうするであろう。
15 しかし、それはできない。わたしたちは出て来て、栄光と力、威勢、尊厳、主権を帯びておられる神の御前に立ち、永遠の恥辱を感じながら、神の裁きがすべて公正であること、神がすべての業を公正に進めておられること、神が人の子らに対して憐れみに富んでおられること、神が御名を信じて悔い改めにふさわしい実を結ぶあらゆる人を救う一切の権威を持っておられることを、認めなければならない。
16 さて見よ、わたしはあなたに言う。そのときに死がやって来る。第2の死、すなわち霊の死がやって来る。それは、肉体の死に関して罪のあるまま死ぬ者が霊の死をも受ける時である。まことにその人は、義にかかわることについて死ぬのである。
17 それは、彼らの受ける苦痛が、炎がとこしえに立ち上って消えることのない、火と硫黄の池のようになる時である。またそれは、彼らがサタンの力と束縛によって鎖をかけられて、永遠の滅びに至る時である。それは、サタンが意のままに彼らを従わせてしまったからである。
18 またあなたに言う。そのとき、彼らはあたかも贖いがなかったかのようになるであろう。彼らは神の正義によれば、贖いを受けることができないからである。また彼らは、もはや朽ちることがないので、死ぬこともできない。」
19 さて、アルマがこれらの言葉を語り終えると、人々はことのほか驚いた。
20 ところが、人々の中に高官の一人でアンテオナという人がいた。彼は進み出ると、アルマに言った。「人は死者の中からよみがえって、この死すべき状態から、決して死ぬことのできない不死不滅の状態に変えられるとあなたは言ったが、それはどういうことか。
21 聖文には、神がエデンの園の東にケルビムと燃える剣を置いて、わたしたちの始祖が園に入って命の木の実を食べ、とこしえに生きることのないようにされたとあるが、それはどういう意味か。そうであるとすれば、わたしたちの始祖がとこしえに生きるという可能性がまったくないことになる。」
22 そこで、アルマは彼に言った。「わたしは、それを説明しようと思っていた。わたしたちの知っているように、アダムは禁断の実を食べたことによって神の御言葉のとおりに堕落した。また、わたしたちの知っているように、アダムが堕落したことにより、全人類は迷い堕落した民となった。
23 さて見よ、わたしはあなたに言う。もしそのときにアダムが命の木の実を食べることができたとすれば、死ぬことはなく、御言葉はむなしくなって、神は偽り者とされていたことであろう。なぜなら神は、『もし食べればあなたは必ず死ぬであろう』と言われたからである。
24 そして、わたしたちの知っているように、現在、死が人類に及んでいる。まことに、アミュレクが語った死、つまり肉体の死が及んでいる。にもかかわらず、人が悔い改めることができるように、猶予期間が与えられた。したがって、この世の生涯は試しの状態、すなわち神にお会いする用意をする時期、わたしたちが前に語った死者の復活後に訪れるあの無窮の状態に対して用意をする時期となった。
25 さて、もし世の初めから備えられていた贖いの計画がなかったならば、死者の復活はあり得なかったであろう。しかし、前に語った死者の復活をもたらす贖いの計画はすでに備えられていた。
26 さて見よ、もしもわたしたちの始祖が行って命の木から食べることができたとすれば、準備の状態がまったくないので、始祖はとこしえに不幸な状態でいたことであろう。したがって、贖いの計画は挫折し、神の御言葉はむなしくなって、何も成就しなかったであろう。
27 しかし見よ、実際はそのようにはならず、人々は死ななければならないこと、そして死後に裁きを受けなければならないことが定められた。その裁きとは、わたしたちが前に語ったあの裁きであり、すなわち終わりである。
28 また、神はこれらのことが人に起こるように定められた後、見よ、御自分が人のために定められたことについて、人が知っておくのが望ましいと認められた。
29 そこで神は天使たちを遣わして人々と語らせ、天使たちは人々に神の栄光を示した。
30 すると人々は、そのときから神の御名を呼ぶようになった。そこで神は人々と語り、世の初めから備えられていた贖いの計画を人々に示された。これを神は、彼らの信仰と悔い改め、彼らの聖なる行いに応じて示された。
31 そして、神は人々に数々の戒めを与えられた。人々がすでに現世にかかわることについての最初の戒めに背き、神々のように善悪をわきまえて行動する状態に自分自身を置いたため、すなわち、自分の意のまま、思いのままに、悪でも善でも行える状態に置かれたためである。
32 そこで神は、贖いの計画を人々に示された後、悪を行ってはならないという戒めを彼らに与えられた。悪を行うことに対する罰は第2の死、すなわち義にかかわることについての永遠の死であった。このような者には、贖いの計画は何の力も及ぼさない。神の至善によれば、正義の働きが損なわれてはならないからである。
33 しかし神は、御自分の御子の御名によって人々に勧めて言われた。(これが用意された贖いの計画である。)『もしあなたがたが悔い改めて、心をかたくなにしなければ、そのとき、わたしは独り子を通じてあなたがたに憐れみを示そう。
34 それゆえ、悔い改めて、心をかたくなにしない者はだれであろうと、わたしの独り子を通じて憐れみを受け、罪の赦しを得る権利を持つ。これらの者はわたしの安息に入るであろう。
35 しかし、心をかたくなにして、罪悪を行おうとする者はだれであろうと、見よ、わたしは怒って、その者をわたしの安息に入れないと誓う。』
36 さて、わたしの同胞よ、見よ、わたしはあなたがたに言う。もしあなたがたが心をかたくなにするならば、あなたがたは主の安息に入れないであろう。そこで、あなたがたの罪悪は神を怒らせ、ちょうど人々が最初、神の怒りを引き起こしたときのように、神はあなたがたに怒りを下される。まことに、最初の時と同じように、最後の時にも神の御言葉のとおりに怒りが下され、あなたがたは永遠の滅びに至るのである。したがって、あなたがたは神の御言葉のとおりに、最初の死と同じように最後の死も受ける。
37 さて、わたしの同胞よ、わたしたちはこれらのことを知っており、これはほんとうのことであるので、主なるわたしたちの神がわたしたちに与えてくださったこれらの第2の戒めについて神を怒らせ、神の激しい怒りを招くことのないように、悔い改めて、心をかたくなにしないようにしようではないか。そして、神の御言葉のとおりに備えられている神の安息に入ろうではないか。」
第13章
人々が大祭司として召されるのは、その人自身の非常に深い信仰と善い行いのためである。大祭司は戒めを教えなければならない。彼らは義によって聖められ、主の安息に入る。メルキゼデクはその一人であった。天使たち、国中で喜びのおとずれを告げ知らせる。天使たちは将来、キリストの実際の来臨を知らせる。紀元前約82年。
01 「さて、わたしの同胞よ、主なる神が御自分の子供たちにこれらの戒めを与えられたときのことに、あなたがたの注意を向けたいと思う。あなたがたは、主なる神が、御子の位に従う聖なる位に従って祭司たちを聖任し、民にこれらの戒めを教えるようにされたことを覚えておいてほしい。
02 その祭司たちは神の御子の位に従って聖任されたが、人々はその聖任の仕方から、どのようにすれば神の御子を待ち望んで贖いを得られるかを知ることができた。
03 そして、祭司たちが聖任された方法は次のとおりである。すなわち、祭司たちは彼らの非常に深い信仰と善い行いのために、神の先見の明によって世の初めから召され、備えられていた。彼らは初めに善を選ぶのも悪を選ぶのも任されていた。そこで彼らは、善を選んで、非常に深い信仰を働かせたので、現在、聖なる召しを受けている。まことに、このような者のために前もって用意された贖いとともに備えられ、また贖いに応じて備えられた、その聖なる召しを受けている。
04 このように、祭司たちは彼らの信仰のゆえにこの聖なる召しを受けたのである。一方、ほかの者たちは、その心がかたくなで、思いをくらませているために、神の御霊を拒んだ。もしそうでなかったならば、彼らはその同胞と同じ大きな特権を得ることができたであろう。
05 要するに、彼らは初めはその同胞と同じ立場にいた。このように、この聖なる召しは、心をかたくなにしない人々のために世の初めから備えられており、前もって用意された神の独り子の贖罪によって、また贖罪を通して定められている。
06 このように、祭司たちは人の子らに神の戒めを教えて、彼らも神の安息に入ることができるようにするため、この聖なる召しによって召され、神の聖なる位の大神権に聖任されたのである。
07 この大神権は神の御子の位に従うものであり、その位は世の初めから存在していた。言い換えれば、それは日の初めもなく年の終わりもなく、すべての物事に対する神の先見の明によって、永遠から永遠にわたって備えられているのである。
08 さて、彼らは次のようにして聖任された。すなわち、彼らは聖なる召しによって召され、聖なる儀式によって聖任されて、聖なる位の大神権を受けた。この召しと儀式と大神権は、初めもなく終わりもない。
09 このようにして、彼らはとこしえに御子の位に従う大祭司となる。この御子は御父のもうけられる独り子であり、日の初めもなく年の終わりもない御方であり、恵みと公平と真理に満ちておられる御方である。まことにそのとおりである。アーメン。
10 さて、この聖なる位、すなわち大神権について述べたように、聖任されて神の大祭司になった人は大勢いた。それは彼らの非常に深い信仰と悔い改めと、神の御前での彼らの義によるものであり、彼らは滅びることよりも、むしろ悔い改めて義を行う方を選んだのである。
11 そのために、彼らはこの聖なる位に従って召され、聖められて、彼らの衣は小羊の血によって白く洗い清められた。
12 そして彼らは、聖霊によって聖められ、衣を白くされ、神の御前に清く、染みのない状態になったので、罪を見て忌み嫌うのを禁じることができなかった。このように清められて、主なる神の安息に入った人々は大勢おり、非常に多くの数に上った。
13 さて、わたしの同胞よ、あなたがたもその安息に入れるように、神の御前にへりくだり、悔い改めにふさわしい実を結んでほしい。
14 まことに、メルキゼデクの時代の民のようにへりくだりなさい。メルキゼデクも、わたしがこれまで語ってきたこの同じ位に従う大祭司であり、とこしえに大神権を受けた人である。
15 アブラハムが什分の一を納めた相手はこのメルキゼデクであった。まことに、わたしたちの先祖アブラハムは、彼の所有したすべてのものの10分の1をこの人に納めたのである。
16 さて、これらの儀式は、それによって人々が神の御子を待ち望めるように定められた。それは神の御子の位の予型、すなわち神の御子の位そのものであった。これが行われたのは、人々が自分の罪の赦しを受けるために神の御子を待ち望んで、主の安息に入れるようにするためであった。
17 ところで、このメルキゼデクは、サレムの地を治める王であった。彼の民はかつて罪悪と忌まわしい行いを募らせていた。彼らは皆迷って、あらゆる悪事にふけっていたのである。
18 しかし、メルキゼデクは力強い信仰を働かせ、神の聖なる位に従う大神権の職を受けたので、民に悔い改めを説いた。すると見よ、彼らは悔い改めた。そして、メルキゼデクは生涯その地に平和を確立した。そのために、彼はサレムの王であったので、平和の君と呼ばれた。彼はその父の下で国を治めた。
19 さて、メルキゼデクよりも前に多くの人がおり、メルキゼデクより後にも多くの人がいたが、彼よりも偉大な人は一人もいなかった。そのため、人々が彼について述べることは特別であった。
20 さて、わたしがそのことを並べ立てる必要はなく、これまで語ってきたことで十分であろう。見よ、聖文はあなたがたの前にある。もし聖文を曲げて解釈するならば、あなたがた自身の滅びを招くであろう。」
21 さて、アルマは彼らにこれらの言葉を語り終えると、彼らに向かって手を伸ばし、力強い声で叫んだ。「今こそ悔い改める時である。救いの日は近づいている。
22 主の声は、天使たちの口を通して、すべての国民にそれを告げ知らせておられる。まことに、彼らが胸躍る大いなる喜びのおとずれを得られるように、それを告げておられる。主は御自分のすべての民の中に、すなわち地の面に広く散らされている御自分の民に、これらの喜びのおとずれを告げて広めておられる。そして、それはわたしたちにも明らかにされたのである。
23 また、そのおとずれは、わたしたちが誤りなく理解できるように、分かりやすい言葉で知らされている。これは、わたしたちが異郷で流浪の民となっているからである。このようにわたしたちは、自分のぶどう園の全域でこれらの喜びのおとずれを告げ知らされているので、非常に恵まれている。
24 見よ、天使たちはわたしたちの地で多くの人にそれを宣言している。これは、主が栄光のうちに来られるときに、人の子らが主の御言葉を受け入れるように、彼らの心を備えさせるためである。
25 そして、今や主の来臨について、天使たちの口を通してわたしたちに告げ知らされる、喜びに満ちたおとずれを聞くのを待つばかりである。どれくらい早く来るか分からないが、その時が来るからである。それがわたしの生きている間であるようにと神に願っている。しかし、それが早くても遅くても、わたしはそれを喜ぶ。
26 主の来臨の時には、そのことが天使たちの口を通して、正しい聖なる人々に知らされるであろう。それは、わたしたちの先祖が彼らの内にある預言の霊に従って主について語ってきたとおりに、彼らの言葉が成就するためである。
27 さて、わたしの同胞よ、まことにわたしが心痛を感じるほどにひどく心配するとともに、心の底から願っていることがある。それは、あなたがたがわたしの言葉を聴き、罪を捨て、悔い改めの日を先に延ばすことのないようにということである。
28 しかし、あなたがたは主の御前にへりくだり、主の聖なる御名を呼び、自分が耐えられないような誘惑を受けないように、目を覚ましていて絶えず祈りなさい。そのようにして、聖なる御霊の導きを得て、謙遜、柔和、従順になり、忍耐強くなり、愛に富み、限りなく寛容になって、
29 さらに主を信じる信仰を持ち、永遠の命を得る希望を抱き、常に心の中に神の愛を持って、終わりの日に上げられて神の安息に入れるようにしてほしい。
30 主があなたがたに悔い改めることを許してくださって、あなたがたが主の激しい怒りを招くことのないように、また地獄の鎖につながれることのないように、そして、第2の死を受けることのないように願っている。」
31 アルマはこの書に書き記されていないもっと多くの言葉を人々に語った。
第14章
アルマとアミュレク、投獄され、打たれる。信じた者たちと彼らの聖文が火で焼かれる。これらの殉教者たち、栄光のうちに主によって受け入れられる。牢の壁は裂けて崩れ落ちる。アルマとアミュレクは救われ、迫害者たちは殺される。紀元前約82年から81年に至る。
01 さて、アルマが人々に語り終えた後、多くの人がアルマの言葉を信じ、悔い改めて聖文を調べ始めた。
02 しかし大半の人々は、アルマとアミュレクを殺してしまいたいと思っていた。アルマがゼーズロムにあからさまに語ったことで、彼らはアルマに怒りを抱いたからである。彼らはまた、アミュレクが自分たちに偽りを言い、自分たちの法律と、法律家と、さばきつかさをののしったと言った。
03 彼らは、アルマとアミュレクのことを怒った。そして、二人が彼らの悪事をあからさまに証言したので、二人をひそかに殺してしまおうとした。
04 しかし、結局彼らはそうせずに、二人を捕らえ、丈夫な縄で縛って、その地の大さばきつかさの前に連れて行った。
05 そして、人々は進み出て、二人について不利な証言をした。彼らは二人が法律とその地の法律家たち、さばきつかさたち、またその地にいるすべての人をののしり、さらに、唯一の神がおられてその御子を人々の中に遣わされるが、御子は人々を救われないと述べたと証言した。人々はアルマとアミュレクについてこのように多くの不利な証言をした。これはその地の大さばきつかさの前で行われた。
06 そこでゼーズロムは、告げられた言葉に驚くとともに、自分の虚言によって人々の思いがくらまされたのを知った。そのため、彼は自分の罪を自覚して心をひどく苦しめ始めた。まことに、彼は地獄の苦しみに包まれ始めたのである。
07 そしてゼーズロムは、人々に向かって叫び、「見よ、わたしには罪がある。この方々は神の御前に染みがない」と言った。そして彼は、そのときから二人の弁護を始めた。しかし、人々は彼をののしり、「おまえも悪魔に取りつかれたのか」と言って、彼につばきを吐きかけて、彼を追い出した。また、アルマとアミュレクの語った言葉を信じた人々も全員追い出された。人々はこれらの人を追い出したうえ、追手を出してこれらの人に石を投げつけさせた。
08 また彼らは、追い出された人々の妻子たちを集めて、神の言葉を信じている者たちと信じるように教えられた者たちを火の中に投げ込ませた。さらに彼らは、神の言葉を信じる者たちが持っていた聖文の載っている記録を持ち出し、それも火の中に投げ込んで、焼き捨ててしまった。
09 そして彼らは、アルマとアミュレクを引き出すと、二人を殉教の場へ運んで行き、火で焼かれている人々の死ぬ様子を見せた。
10 するとアミュレクは、火で焼かれている女や子供たちの苦しみを見て自分も苦痛を感じ、アルマに向かって、「この痛ましい有様をどうして見ていられましょうか。わたしたちの手を伸べ、わたしたちの内にある神の力を行使して、彼らを炎から救い出しましょう」と言った。
11 しかし、アルマは彼に言った。「御霊が、手を伸べてはならないとわたしを制されます。まことに、主はこの人々を栄光のうちに御自分のみもとに受け入れられるからです。主は彼らがこのことを行うのを、すなわち人々が心のかたくななままにこの人々にこのことを行うのを黙認しておられます。それは、主が怒って彼らに下される罰が公正なものとなるためです。罪のない者の血は彼らを責める証拠となり、終わりの日に彼らを非難して激しく叫ぶことでしょう。」
12 すると、アミュレクはアルマに、「まことに、きっと彼らはわたしたちも火あぶりにするでしょう」と言った。
13 そこで、アルマは言った。「主の御心のままであるように。しかしまことに、わたしたちの務めはまだ終わっていないので、彼らがわたしたちを火あぶりにすることはないでしょう。」
14 さて、火の中に投げ込まれた人々の体と、また彼らとともに火の中に投げ込まれた記録が焼けてしまうと、その地の大さばきつかさが縛られたままのアルマとアミュレクの前にやって来て立ち、手で二人の頬を打って言った。「おまえたちはこれを見てもなお、この民に、火と硫黄の池に投げ込まれるとまた説くつもりか。
15 見よ、おまえたちが分かったように、おまえたちには、火に投げ込まれた者たちを救い出す力はない。彼らはおまえたちと同じ信仰を持っていたが、神は彼らを救わなかったではないか。」それから、このさばきつかさはまた二人の頬を打ち、「おまえたちは何と弁解するのか」と言った。
16 ところで、このさばきつかさはギデオンを殺したニーホルの教団に属し、同じ信仰を持っていた者である。
17 さて、アルマとアミュレクはさばきつかさに何も答えなかった。そこで、彼はもう一度二人を打ち、役人に引き渡して牢に入れさせた。
18 そして、二人が牢に入れられて3日後、ニーホルの教団に属している多くの法律家やさばきつかさ、祭司、教師たちがやって来て牢の中に入り、二人に会った。そして彼らは、二人に多くの事柄について質問したが、二人は何も答えなかった。
19 そこで、あのさばきつかさが二人の前に立って、「なぜこの人々の質問に答えないのか。おまえたちを炎の中に投げ込ませる力がわたしにあることを、おまえたちは知らないのか」と言った。そして、彼は答えるように二人に命じたが、二人は答えなかった。
20 そこで彼らは去って行った。ところが、彼らはまた翌日にやって来て、あのさばきつかさがまた二人の頬を打った。それから、ほかに多くの者たちも進み出て、二人を打って言った。「おまえたちはまた立ってこの民を裁き、我々の法律を非難するつもりか。おまえたちにそのような大きな力があるならば、なぜ自分自身を救わないのか。」
21 そして、彼らは歯ぎしりをし、二人につばきを吐きかけながら、このようにたくさんのことを並べ立て、「我々は罰の定めを受けるとき、どのような有様なのか」と言った。
22 また彼らはたくさんのことを、まことにこのようなことをいろいろと二人に言った。このように、彼らは幾日もの間二人をあざけった。そのうえ彼らは、二人を飢えさせるために食物を与えず、渇かせるために水も飲ませず、また、二人の着物をはぎ取って裸にした。このようにして二人は、丈夫な縄で縛られ、牢に閉じ込められていた。
23 そして、二人がこのように幾日もの間苦しんだ後(ニーファイの民のさばきつかさの統治第10年の10月12日に)、アモナイハの地の大さばきつかさと、多くの教師と法律家が、アルマとアミュレクが縄で縛られて閉じ込められていた牢に入って来た。
24 そして、大さばきつかさは二人の前に立つと、二人をまた打ち、「もしおまえたちに神の力があるのであれば、この縄から自分自身を解き放て。そうすれば、おまえたちの言葉のとおりに主がこの民を滅ぼすということを、我々は信じよう」と言った。
25 そして、ほかの者たちも、最後の一人に至るまで皆進み出て、大さばきつかさと同じことを言いながら二人を打った。ところが、最後の者が二人に言い終えたとき、神の力がアルマとアミュレクに下った。そこで、二人は起きて、立ち上がった。
26 そして、アルマは叫んで言った。「おお、主よ、わたしたちはいつまでこのようなひどい苦しみに耐えればよろしいのでしょうか。おお、主よ、キリストを信じるわたしたちの信仰に応じて、自由になる力をわたしたちにお与えください。」そして二人は、自分たちを縛っていた縄を断ち切った。人々はそれを見ると、滅ぼされるのではないかという恐怖に襲われ、逃げ始めた。
27 さて、彼らの恐れは非常に大きかったので、彼らは地に倒れ、牢の外側の出口までも逃げ出せなかった。そして、地が激しく揺れ動き、牢の壁が二つに裂けて崩れ落ち、アルマとアミュレクを打った大さばきつかさと法律家たち、祭司たちは、崩れ落ちた壁に打たれて死んでしまった。
28 そして、アルマとアミュレクは牢を出た。二人はキリストを信じる彼らの信仰に応じて主から力を授けられていたので、傷も負っていなかった。彼らは牢からすぐに出て来たが、彼らを縛っていた縄は解けていた。牢はすでに崩れ落ちており、牢の中にいた者は、アルマとアミュレクを除いてことごとく死んだ。そこで、二人はすぐに町に入って行った。
29 そのとき、大きな物音を聞いた民が、その訳を知ろうとして群れを成して走って来た。そして彼らは、アルマとアミュレクが牢から出て来たのを目にし、また牢の壁が地に崩れ落ちているのを見ると、ひどい恐怖に襲われ、アルマとアミュレクの前から逃げた。それはまるで、やぎが子やぎを連れて2頭のライオンの前から逃げるのに似ていた。このように彼らは、アルマとアミュレクの前から逃げたのである。
第15章
アルマとアミュレク、シドムへ行き、教会を設立する。アルマ、ゼーズロムを癒し、ゼーズロムは教会に加入する。多くの人がバプテスマを受け、教会が栄える。アルマとアミュレク、ゼラヘムラへ向かう。紀元前約81年。
01 さて、アルマとアミュレクはその町を立ち去るように命じられたので、そこを去ってシドムの地へ行った。すると見よ、彼らはそこで、アモナイハの地を出て来たすべての人に会った。これらの人々は、アルマの言葉を信じたために追い出され、石を投げつけられた人々である。
02 そこで、二人は彼らに、彼らの妻子たちの身の上に起こった出来事をすべて話し、また自分たちのことと、自分たちを解放した力のことについても述べた。
03 また、ゼーズロムもシドムにいて、燃えるような高熱を出して病床に伏していた。その高熱は、自分の悪事のことで心にひどい苦しみを受けたために起こったものであった。彼はアルマとアミュレクがもう生きていないと思い、二人が殺されたのは自分の罪悪のためであると考えたからである。この大きな罪と、そのほか数多くの罪により心をひどく苦しめられて、とうとう介抱する手立てもないほど心をひどく痛めてしまった。そして、そのために彼は燃えるような熱で身を焼かれ始めたのである。
04 ところがゼーズロムは、アルマとアミュレクがシドムの地にいると聞くや、心が奮い立ち、すぐに二人に伝言を送って、自分のもとに来てほしいと伝えた。
05 そこで二人は、ゼーズロムからの伝言に応じてすぐに出かけた。そして、ゼーズロムのいる家に入って行ったところ、彼は燃えるような高熱で実に弱々しい有様で病んで床に伏していた。また彼は、自分の罪悪のためにひどく心を痛めていた。そして、二人を見ると、手を伸ばし、癒してほしいと懇願した。
06 そこでアルマは彼の手を取って、「あなたは救いを得させるキリストの力を信じますか」と尋ねた。
07 すると彼はそれに答え、「はい。わたしはあなたが教えた言葉をすべて信じています」と言った。
08 そこでアルマは、「キリストの贖いを信じるならば、あなたは癒しを得られます」と言った。
09 すると彼は、「はい。わたしはあなたの言葉のとおりに信じています」と答えた。
10 そこでアルマは、主に叫び求めて言った。「おお、主なるわたしたちの神よ、この人に憐れみを示し、キリストを信じるこの人の信仰に応じて癒しをお与えください。」
11 アルマがこれらの言葉を語り終えると、ゼーズロムは立ち上がり、そして歩き始めた。これは、民のすべての者にとって大きな驚きであった。そして、このことはシドムの全地に知れ渡った。
12 アルマはゼーズロムにバプテスマを施して主に属する者とし、ゼーズロムはそのとき以来、民に教えを説き始めた。
13 そしてアルマは、シドムの地に教会を設立し、その地で祭司たちと教師たちを聖任して、バプテスマを受けたいと望むすべての人にバプテスマを施し、主に属する者とするようにした。
14 さて、バプテスマを受けたいと望む人々は多く、シドムの周囲のすべての地方から群れを成してやって来て、バプテスマを受けた。
15 しかし、アモナイハの地に住む人々は依然として心のかたくなな、強情な民であったので、アルマとアミュレクの力はすべて悪魔によるものであるとして、自分たちの罪を悔い改めなかった。彼らはニーホルの教団に属しており、自分たちの罪を悔い改める必要があるとは信じていなかったからである。
16 さて、アミュレクはかつて自分の友であった者たちから拒まれ、また自分の父親や親族からも拒まれたので、アモナイハの地にある自分の金、銀、貴重な品々をすべて神の言葉のために捨てた。
17 したがって、アルマはシドムに教会を設立した後、大きな抑制が働いたこと、まことに、民がその心の高ぶりを抑え、神の前にへりくだるようになり、聖壇の前で神を礼拝するために聖堂に集まって、サタンと死と滅亡から救われるように、目を覚ましていて絶えず祈るようになったことを知り、
18 すでにわたしが語ったように、アルマはこれらのことをすべて見てから、アミュレクを連れてゼラヘムラの地へ向かい、自分の家に彼を迎えた。そして、艱難に遭っているアミュレクに必要なものを与え、主にあって彼を強くした。
19 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第10年が終わった。
第16章
レーマン人、アモナイハの民を滅ぼす。ゾーラム、ニーファイ人を率いてレーマン人に勝利を得る。アルマとアミュレクとそのほか多くの人、御言葉を宣べ伝え、キリストが復活後にニーファイ人に御自身を現されることを教える。紀元前約81年から77年に至る。
01 さて、ゼラヘムラの地は非常に平和であり、ニーファイの民のさばきつかさの統治第11年2月5日までの数年の間、戦争もなければ争いもなかった。ところが、第11年の2月5日に、全地で戦争を告げる叫びが聞かれた。
02 見よ、レーマン人の軍隊がすでに荒れ野の方から境の地に侵入してアモナイハの町に入り、民を殺して町を破壊し始めたからである。
03 そして、ニーファイ人がレーマン人をその地から追い払うに足る軍隊を起こす前に、レーマン人はアモナイハの町にいた人々を殺し、ノアの地の境付近でもかなりの人々を殺し、また残りの人々を捕らえて荒れ野へ連れ去ってしまった。
04 そこでニーファイ人は、囚われの身となって荒れ野に連れ去られた人々を取り戻したいと思った。
05 そのため、ニーファイ人の軍隊を指揮する司令官に任命された人(その名はゾーラムといい、彼には二人の息子、リーハイとエーハがいた)、すなわち、ゾーラムと彼の二人の息子は、アルマが教会を管理する大祭司であることを知っており、またアルマが預言の霊を受けていることも聞いて知っていたので、彼のもとを訪れ、レーマン人に捕らえられた同胞を捜すのに、主は自分たちが荒れ野のどこへ行くのを望んでおられるか知りたいと彼に告げた。
06 そこでアルマは、その件について主に尋ねた。それから戻って来ると、彼らに言った。「見よ、レーマン人はマンタイの地の境のはるか向こうにある南の荒れ野でシドン川を渡るでしょう。見よ、あなたがたはシドン川の東側で彼らを迎えて戦いなさい。そうすれば主はあなたがたに、レーマン人に捕らえられた同胞を渡されます。」
07 そこで、ゾーラムと息子たちは、軍隊を率いてシドン川を渡り、マンタイの地の境を越えて、シドン川の東側に当たる南の荒れ野まで進軍した。
08 そして彼らは、レーマン人の軍隊に攻めかかり、レーマン人を散り散りに荒れ野の中へ追い払った。このようにして彼らは、レーマン人に捕らえられていた同胞を取り戻した。しかも、捕らえられていた同胞は一人も失われていなかった。そして彼らは、同胞に連れられて、それぞれの土地に帰った。
09 このようにして、さばきつかさの統治第11年が終わった。レーマン人はすでにその地から追い払われ、アモナイハの民は滅びた。まことに、アモナイハ人はことごとく殺され、非常に大きいので神でも破壊できないと彼らが述べた、その大きな町もまた滅びた。
10 見よ、その町は1日で荒れ廃れた所となり、しかばねは犬と荒れ野の野獣に食い裂かれてしまった。
11 それでも多くの日の後、彼らの死体は地の面に積み上げられ、薄く土がかけられた。しかし、そのにおいがとてもひどかったので、長年の間、アモナイハの地に来てそこを所有しようとする者はいなかった。そして、その土地は「ニーホル人の廃虚」と呼ばれた。それは、そこで殺された者たちがニーホルの教団に属し、彼らの地が荒れ廃れたままであったからである。
12 ニーファイの民のさばきつかさの統治第14年まで、レーマン人は再びやって来てニーファイ人と戦うことをしなかった。このようにして3年間、ニーファイの民は引き続き全地に平和を保った。
13 そして、アルマとアミュレクは出て行って、ユダヤ人に倣って建てられた神殿や聖堂や会堂で、民に悔い改めを宣べ伝えた。
14 そして彼らは、自分たちの言葉を聞こうとするすべての人に、偏り見ることなく、引き続き神の言葉を告げた。
15 このように、アルマとアミュレクと、その務めを果たすように選ばれたさらに多くの人は、全地に御言葉を宣べ伝えるために出て行った。そして全地で、すなわち周辺のすべての地方で、ニーファイ人に属するすべての人の中に広く教会が設立されるようになった。
16 また、教会員の中には少しの不平等もなかった。主は人の子らの心を備えさせるために、すなわち、主の来臨の時に、彼らの中で教えられる御言葉を受け入れるように彼らの心を備えさせるために、その地の全面に主の御霊を注がれた。
17 彼らが御言葉に対してかたくなになることがなく、また不信仰になって滅亡に至ることもなく、むしろ喜んで御言葉を受け入れて、一つの枝としてまことのぶどうの木に接がれ、主なる彼らの神の安息に入れるようにするためである。
18 さて、民の中に出て行ったその祭司たちは、あらゆる偽りと欺き、ねたみ、争い、悪意、ののしり、盗み、強盗、略奪、殺人、姦淫、およびあらゆる好色を責める教えを説き、これらのことを行ってはならないと訴えた。
19 そして彼らは、間もなく必ず起こること、まことに、神の御子の来臨と、御子のお受けになる苦しみと死、死者の復活について説いた。
20 それで多くの人は、神の御子が来られる場所について尋ね、神の御子が復活後にこの民に御自身を現されるということを教わった。そして人々は、これを聞いて非常に喜んだ。
21 このように、教会が全地に設立され、悪魔に勝利し、神の言葉が純粋なままに国中に宣べ伝えられて、主は人々に祝福を注がれた。このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第14年が終わった。
神の言葉のために王位を継ぐ権利を放棄し、レーマン人に教えを説こうとしてニーファイの地へ上って行ったモーサヤの息子たちの話。彼らの受けた苦難と解放。これはアルマの記録による。次の第17〜27章がそれに相当する。
第17章
モーサヤの息子たち、預言と啓示の霊を受ける。レーマン人に御言葉を告げ知らせるために、各々別々の道を行く。アンモン、イシマエルの地へ行き、ラモーナイ王の僕になる。アンモン、セブスの泉のそばで王の羊の群れを救い、敵を殺す。第1〜3節は紀元前約77年、第4節は約91〜77年、第5〜39節は約91年の出来事である。
01 さて、アルマはギデオンの地から南方のマンタイの地へ向かって旅をしていたとき、見よ、思いがけず、ゼラヘムラの地を指して旅をしていたモーサヤの息子たちに出会った。
02 モーサヤのこの息子たちは、天使が初めてアルマに現れたときにアルマとともにいた人々である。そのため、アルマは自分の仲間に会えたことでひとかたならず喜んだ。しかも、彼らがなおも主にあって兄弟であったので、その喜びはいっそう深かった。さらに、彼らは正しい理解力を備えた人々であり、また神の言葉を知るために聖文を熱心に調べてきたので、すでに真理を深く知るようになっていた。
03 そればかりではない。彼らはしばしば祈り、また断食もしたので、預言の霊と啓示の霊を受けていた。そして、教えるときには、神の力と権能をもって教えた。
04 そして彼らは、それまで14年間レーマン人の中で神の言葉を教えて、多くの人に真理を知らせるのに大きな成功を収めていた。まことに、彼らの言葉の力によって、多くの人が神の聖壇の前に導かれ、神の名を呼び、神の前で自分たちの罪を告白した。
05 さて、彼らが旅をしていた間の状況は次のとおりである。彼らは多くの苦難に遭い、飢えや渇き、疲労、多くの霊的な労苦など、肉体的にも精神的にもひどく苦しんだ。
06 さて、彼らの旅は次のとおりであった。彼らの父モーサヤが彼らに王位を譲りたいと思い、また民も同じ思いを抱いていたが、彼らは王位を受けることを辞退し、さばきつかさの統治の第1年に、父に別れを告げて出かけた。
07 彼らは、譲位の話があったにもかかわらずゼラヘムラの地を去ったのである。彼らは自分たちの剣と槍、弓、矢、石投げを持って行った。荒れ野で食べ物を手に入れるためであった。
08 このように、彼らはすでに選んでおいた人々とともに荒れ野に旅立ち、レーマン人に神の言葉を宣べ伝えるためにニーファイの地へ上って行った。
09 そして、彼らは荒れ野の中を幾日も旅をした。また彼らは、主が御霊の一部を授けて自分たちに伴わせてくださり、またとどめてくださることを願って、大いに断食し、大いに祈った。それは、彼らが神の手に使われる者となり、できれば自分たちの同胞であるレーマン人に真理を知らせ、彼らの先祖の正しくない言い伝えが不純であることを知らせるためであった。
10 そこで主は彼らに御霊を下し、「慰めを得なさい」と言われた。そこで彼らは慰めを得た。
11 主はまた彼らに、「あなたがたの同胞であるレーマン人の中へ行き、わたしの言葉を確立しなさい。しかし、あなたがたはわたしにあって彼らに良い模範を示せるように、長い苦しみと苦難の中で忍耐強くありなさい。そうすれば、わたしはあなたがたをわたしの手に使われる者として多くの人を救おう」と言われた。
12 そこで、モーサヤの息子たちと、一緒にいた人々は、レーマン人のところへ行って彼らに神の言葉を告げ知らせる勇気を得た。
13 そこで彼らは、レーマン人の地の境に着くと、主が刈り入れの後に自分たちを再会させてくださることに信頼を寄せ、各々別れて次々に去って行った。彼らは自分たちが取りかかった業が大変なものであると考えていた。
14 そして確かに、それは大変なものであった。彼らは、野蛮でかたくなで残忍な民に神の言葉を宣べ伝えようとしていたからである。その民は、ニーファイ人を殺したり、ニーファイ人のものを盗んだり、奪ったりすることを喜びとしていた。また彼らは、富、すなわち金銀や宝石に執着しており、しかも彼らは、これらのものを手に入れるのに自分の手で働くことなく、殺人や略奪によって手に入れようとしていた。
15 このように、彼らは非常に怠惰な民であり、その中の多くの者は偶像を礼拝していた。そして、彼らの先祖の言い伝えのために、神ののろいが彼らに下っていた。それでも、悔い改めを条件として、主の約束が彼らに与えられていたのである。
16 したがって、モーサヤの息子たちは、きっと彼らを悔い改めさせることができるであろうと思い、またきっと彼らに贖いの計画を知らせることができるであろうと思って、その業に着手したのであった。
17 そこで彼らは、各々別れて、自分に与えられた神の言葉と力をもって、独りでレーマン人の中へ入って行った。
18 さて、アンモンは彼らの指導者であったので、いや、彼らに必要なものを与え、各々の職に応じて彼らに祝福を授け、彼らに神の言葉を告げた後、すなわち自分の出発に先立って彼らに祝福を授けた後、彼らのもとを去った。このようにして、彼らはそれぞれ別れて全地に旅立った。
19 そして、アンモンはイシマエルの地へ行った。そこは、レーマン人となったイシマエルの息子にちなんで名付けられた地である。
20 アンモンがイシマエルの地へ入ったところ、レーマン人は彼を捕らえて縛った。レーマン人は、自分たちの手に落ちたニーファイ人を皆縛って、王の前に連れて行くのを習わしとしていたからである。そして、捕らえたニーファイ人を殺すか、束縛の身に置くか、牢に入れるか、それともその地から追い出すか、それは王の意のまま、思いのままに任されていた。
21 このようにして、アンモンはイシマエルの地を治めている王の前に連れて行かれた。この王は名をラモーナイといって、イシマエルの子孫であった。
22 王はアンモンに、この地にいてレーマン人の中で暮らしたいか、すなわち自分の民の中で暮らしたいかどうか尋ねた。
23 そこでアンモンは王に、「はい。しばらくこの民の中で暮らしたいと思います。死ぬまでここに住むかもしれません」と答えた。
24 そこでラモーナイ王は、アンモンのことを非常に気に入り、彼を縛っている縄を解かせた。そして、アンモンに自分の娘の一人を妻にめとらせようとした。
25 しかしアンモンは、「そうではなく、王の僕になりたいのです」と言い、ラモーナイ王の僕になった。そして彼は、レーマン人の習わしに従って、ほかの僕たちの中に加えられてラモーナイ王の家畜の群れを守ることになった。
26 そして彼は、3日間王に仕えた後、レーマン人である僕たちとともに、家畜の群れを水のある場所へ連れて行くことになった。その場所はセブスの泉と呼ばれた。レーマン人は皆、それぞれ家畜の群れをここに追って来て水を飲ませるのである。
27 こうして、アンモンと王の僕たちが家畜の群れをこの水のある場所に追って行く途中、見よ、すでに家畜の群れに水を飲ませてしまったあるレーマン人の一団が立っていて、アンモンと王の僕たちが連れた家畜の群れを追い散らした。そして、彼らが追い散らしたために、家畜は方々に逃げ去ってしまった。
28 すると、王の僕たちは、「我々の仲間は前に、この連中の悪事のために群れを追い散らされたので、王に殺されてしまった。我々も王に殺される」とつぶやき始めた。そして、「見よ、我々の群れはもう散ってしまった」と言いながら、激しく泣き始めた。
29 彼らは殺されるのを恐れて泣いたのである。アンモンはこれを見ると喜びで胸がいっぱいになり、「王のためにこの家畜を元どおりにして、同僚であるこの僕たちにわたしの力を、すなわちわたしの内にある力を示し、同僚であるこの僕たちの信頼を得て、彼らにわたしの言葉を信じさせるようにしよう」と言った。
30 さて、これはアンモンが自分の同僚と呼んだ者たちの悩む様子を見て、心に思ったことであった。
31 そしてアンモンは、次のように言って彼らをなだめた。「同僚たち、元気を出してください。群れを捜しに行きましょう。群れを集めて水のある場所へ連れ戻しましょう。こうして王のために群れを守れば、王はわたしたちを殺さないでしょう。」
32 そして、彼らは群れを捜しに行った。彼らはアンモンに従って大急ぎで走って行き、王の家畜の先に立って、群れを再び水のある場所に集めた。
33 ところが、あの男たちが、アンモンたちの家畜の群れを追い散らそうとしてまた立っていた。そこでアンモンは同僚たちに、「群れが逃げ出さないように周りを囲んでいてください。わたしは行って、わたしたちの群れを散らすあの男たちと戦います」と言った。
34 そこで彼らは、アンモンから指示されたとおりにした。一方、アンモンは進んで行くと、セブスの泉のそばに立っている者たちと戦う身構えをした。しかし、相手は少ない数ではなかった。
35 そのため彼らは、独りでも思いのままにアンモンを殺せると思い、彼を恐れなかった。主がモーサヤに、レーマン人の手から彼の息子たちを救い出すと約束しておられたことを、彼らは知らなかったからである。彼らはまた、主のことをまったく知らなかったので、自分たちの同胞が滅びるのを喜びとしていた。そのために彼らは、王の家畜の群れを追い散らそうと待ち構えていたのである。
36 そこでアンモンは、進み出て身構えると、石投げを使って彼らに石を投げ始めた。まことに、彼は大いなる力で彼らの中に石を投げた。このようにして、彼がその幾人かを殺したので、彼らはその力に驚き始めた。それでも、彼らは仲間の中の殺された者のために怒り、アンモンを必ず倒そうと心に決めた。そこで彼らは、石でアンモンを撃てないことを知ると、こん棒を持って近づき、彼を殺そうとした。
37 しかし見よ、アンモンを打とうとしてこん棒を振り上げた者は、ことごとくアンモンの剣で腕を切り落とされた。アンモンが剣の刃で彼らの腕を打って、彼らが打ちかかってくるのを防いだからである。そのため彼らは驚いて、彼の前から逃げ始めた。彼らの数は少なくなかったが、アンモンはその腕の力によって彼らを退けたのである。
38 ところで、石投げで倒れた者は6人であったが、アンモンは首謀者のほかは剣でだれも殺さず、自分に向かって腕を振り上げた者の腕を切り落としただけであった。それでも、その数は少なくなかった。
39 アンモンは彼らを追い払うと、引き返して来た。そして彼らは群れに水を飲ませ、王の牧場に群れを連れ戻した。それから彼らは、アンモンを殺そうとした者たちの、剣で切り落とされた腕を持って王のもとへ行った。それらの腕は、彼らが行ったことの証拠として、王のもとに運ばれたのである。
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第18章
ラモーナイ王、アンモンを大霊であると思う。アンモン、創造と、人々に対する神の計らいと、キリストを通じて与えられる贖いについて王に教える。ラモーナイ、それを信じて地に倒れ、死んだようになる。紀元前約90年。
01 さて、ラモーナイ王は僕たちを前に立たせ、その事件について見たことをすべて証言させた。
02 そして、彼らが皆自分たちの見たことを証言したので、王はアンモンが忠実に自分の家畜の群れを守ったことと、また彼を殺そうとした者たちと戦ったときに大いなる力を振るったことを知った。そして王は非常に驚いて、「確かに、その人は人間以上の人である。見よ、彼は、この民が行う殺人の罪のために重い罰を下す、あの大霊ではないだろうか」と言った。
03 すると、彼らは王に答えて言った。「彼が大霊か、それとも人間か、わたしどもには分かりません。しかし、彼は王様の敵に殺されるような人ではなく、また技量と大きな力があるので、わたしたちと一緒にいるときには敵も王様の群れを追い散らせないということだけは、わたしどもにも分かります。わたしどもは、彼が王様の味方であることを知っています。王様、ただの人間にこのような大きな力があるとは思えません。彼はほかの者に殺されるような人ではないことを、わたしどもは知っているからです。」
04 すると王は、これらの言葉を聞いて彼らに言った。「わたしにはその人が大霊であることが分かる。わたしは前におまえたちの仲間を殺したが、それと同じようにおまえたちを殺すことのないよう、その人はおまえたちの命を守るために降って来たのだ。その人は我らの先祖が語っていた大霊だ。」
05 このように、大霊が実在するということは、ラモーナイが彼の父から受けた言い伝えであった。そして彼らは、大霊を信じていたにもかかわらず、自分たちの行うことはすべて正しいと思っていた。しかしラモーナイは、僕たちを殺したことで自分が間違いを犯したのではないかという恐れを抱き、非常に心配になってきた。
06 僕たちが水のある場所で同胞によって家畜の群れを追い散らされたことで、王は大勢の僕を殺していたからである。このように、僕たちは家畜を散らされたために殺されていた。
07 さて、これらのレーマン人たちは、いつもセブスの泉のそばに立っていて、民の家畜の群れを追い散らしていた。そして、散った家畜をたくさん自分たちの地へ追い立てて行くのである。これが彼らの略奪の手口であった。
08 さて、ラモーナイ王は僕たちに、「そのような大きな力のあるその人はどこにいるか」と尋ねた。
09 すると彼らは、「王様の馬にえさをやっています」と答えた。王は僕たちに、王の馬と馬車を用意してニーファイの地へ案内して行くようにと、彼らが群れに水を飲ませに行く前に命じておいたのである。全地を治める王であるラモーナイの父が、ニーファイの地で盛大な宴会を催すことになっていたからである。
10 さて、ラモーナイ王は、アンモンが王の馬と馬車の用意をしていると聞いて、アンモンの忠義にますます驚いて言った。「まことにわたしの僕の中にいまだかつてこの人のように忠実な者はいなかった。この人はわたしの命じたことをよく覚えていて、すべてそれを行う。
11 わたしにはこの人が大霊であることが確かに分かる。わたしのところに来てもらいたいと思ってはいるが、わたしにはその勇気がない。」
12 さて、アンモンは王と僕たちのために馬と馬車の用意を終えると、王のもとに入って来た。しかし、王の顔色が変わったのを見て、彼は王の前を立ち去ろうとした。
13 そのとき、王の僕の一人が彼に、「ラバナ」と言った。ラバナとは勢力のある王、すなわち大王という意味である。彼らの王は皆、勢力があると考えられていたのである。このように王の僕の一人が彼に、「ラバナ、王様はあなたがいてくださることを願っておいでです」と言った。
14 そこでアンモンは、王に向き直って、「王様、わたしが何をすることをお望みでしょうか」と尋ねた。ところが王は、何と言ってよいか分からなかったので、彼らの時間で1時間、アンモンに返答しなかった。
15 そこで、アンモンはもう一度王に、「わたしに何をお望みですか」と尋ねたが、この度も返答がなかった。
16 さて、アンモンは神の御霊に満たされ、王の思いを見抜いて言った。「王様は、わたしが王様の僕たちと家畜の群れを守って、石投げと剣で同国人を7人殺し、また王様の家畜の群れと僕たちを守るために、ほかの者たちの腕を切り落としたと聞いて、そのことで驚いておられるのですか。
17 王様に申し上げますが、王様はどうしてそんなに驚いておられるのですか。まことに、わたしはただの人間であって、王様の僕です。ですから、わたしは王様がお望みになることで正しいことは何でもいたします。」
18 王はその言葉を聞くと、アンモンが自分の思いを見抜くことができたのを知って、またもや驚いた。しかし、それでもラモーナイ王は口を開き、「おまえはだれなのだ。すべての物事を知っているあの大霊か」と尋ねた。
19 アンモンは王に答えて、「そうではありません」と言った。
20 すると、王は言った。「どうしてわたしの心の思いが分かるのか。はっきりと言ってよい。わたしに話しなさい。わたしの家畜の群れを追い散らす同国人を殺したり、その腕を切り落としたりしたのは何の力によったのかも、わたしに話してくれ。
21 おまえがもし、これらのことをわたしに話してくれるなら、何でも望むものをやろう。必要であれば、軍隊でおまえを守ろう。しかし、おまえがわたしの全軍よりも強いことを、わたしは知っている。それでも、おまえがわたしに望むものは何でもやろう。」
22 アンモンは賢いけれども素直な人であったので、ラモーナイ王にこう言った。「もしわたしが何の力によってこれらのことを行ったか申し上げれば、王様はわたしの言葉をお聞きくださいますか。わたしが王様に望むのはそのことです。」
23 すると王は、彼に答えて、「分かった。わたしはおまえの言葉をすべて信じよう」と言った。このようにして、王は策に乗ったのである。
24 そこでアンモンは、王に大胆に語り始めて、「王様は神のましますことを信じますか」と尋ねた。
25 すると王は答えて、「わたしにはそれがどういう意味か分からない」と言った。
26 そこでアンモンは、「王様は大霊のましますことを信じますか」と尋ねた。
27 すると王は、「信じる」と答えた。
28 そこでアンモンは、「その大霊が神です」と言った。アンモンはまた王に、「王様は、神でましますこの大霊が天地にある万物を創造されたことを信じますか」と尋ねた。
29 すると王は、「信じる。わたしは神が地にある万物を創造されたことを信じる。しかし、わたしは天というものを知らない」と答えた。
30 そこで、アンモンは王に、「天とは、神と神のすべての聖なる天使が住んでおられる所です」と言った。
31 するとラモーナイ王は、「それは地の上の方にあるのか」と言った。
32 そこでアンモンは、「そのとおりです。そして、神はすべての人の子らを見下ろしておられます。また、人の子らはすべて初めから神の御手によって造られたので、神はその心の思いと志をすべて御存じです」と言った。
33 するとラモーナイ王は、「わたしはあなたの語ったこれらのことをすべて信じよう。あなたは神から遣わされたのか」と言った。
34 アンモンは王に言った。「わたしはただの人間です。人は初めに神の形に造られました。わたしはこの民にこれらのことを教えて、正しい真実のことを知らせるために、神の聖なる御霊によって召されています。
35 そして、その御霊の一部がわたしの内にとどまっていて、神に対するわたしの信仰と望みに応じて、理解と力を与えてくれるのです。」
36 さて、アンモンはこれらの言葉を述べてから、世界の創造とアダムの造られたことから始めて、人の堕落に関する一切のことを告げ、また預言者たちが語ってきたことを、自分たちの先祖リーハイがエルサレムを去った当時に至るまで語り、その民の記録と聖文を王の前に置いた。
37 アンモンはまた彼ら(王と王の僕たち)に、自分たちの先祖が荒れ野を旅したことと、彼らが飢えや渇きに苦しんだこと、彼らの労苦など、すべてのことを語った。
38 また彼は、レーマンとレムエルとイシマエルの息子たちの反抗についても彼らに語った。まことに、彼は彼らの反抗についてすべて話した。そして彼は、リーハイがエルサレムを去ったときからその時点までのすべての記録と聖文について、彼らに説き明かしたのである。
39 しかも、それだけではなかった。彼は世の初めから備えられていた贖いの計画についても彼らに説き明かし、またキリストの来臨についても彼らに知らせ、主のすべての業について彼らに明らかにしたのである。
40 さて、アンモンがこれらのことをすべて述べ、王にそれを説き明かしたところ、王は彼の言葉をすべて信じた。
41 そして王は主に向かって、「おお、主よ、憐れみをおかけください。あなたがこれまでニーファイの民に示してこられた深い憐れみにより、わたしとわたしの民にも憐れみをおかけください」と叫び求めた。
42 そして、王はそのように言うと、地に倒れて死んだようになった。
43 そこで王の僕たちは、王を王妃のもとに運んで行き、床の上に横たえた。王は2日2晩まるで死んだように横たわっていた。また、王妃と王の息子たちと娘たちは、王を亡くしたことを深く悲しみ、レーマン人の習わしに従って王の喪に服した。
第19章
ラモーナイ、永遠の命の光を受け、贖い主を見る。王の家の者たち、意識を失って倒れ、多くの者たちは天使を見る。アンモン、奇跡的に守られる。アンモン、多くの人にバプテスマを施し、彼らの中に教会を設立する。紀元前約90年。
01 さて、2日2晩たってから、彼らは死者を葬るために造っておいた墓に王の遺体を運んで、まさに葬ろうとしていた。
02 そのとき、王妃はアンモンの名声を聞いていたので、人を遣わして、アンモンに自分のところに来てほしいと告げた。
03 そこでアンモンは、命じられたとおりに王妃のもとへ行き、自分が何をすることを望んでいるのか知りたいと言った。
04 すると、王妃は彼に言った。「夫の僕たちは、あなたが聖なる神の預言者であり、あなたには神の御名によって多くの力ある業を行う力があると、わたしに教えてくれました。
05 もしそうであれば、入ってわたしの夫に会ってほしいのです。夫は2日2晩の間、床に伏したままです。夫はまだ死んでいないと言う者もいれば、もう死んでいて悪臭を放っているので墓に葬らなければならないと言う者もいます。しかし、わたしが見たところ、においはありません。」
06 さて、これはアンモンが望んでいたことであった。アンモンは、ラモーナイ王が神の力の下にあることを知っていたからである。アンモンは、王の心から不信仰という暗黒の覆いが取り除かれつつあること、そしてその心を照らす光、神の栄光の光であり神の慈しみの驚くべき光であるこの光が、まことに、王自身の中に大きな喜びを注ぎ込んで暗黒の雲が消え去り、永遠の命の光が王自身の中にともされたことを知っていた。まことに、アンモンはこれが王の肉体に打ち勝って、王が神によって意識を失っていたことを知っていたのである。
07 したがって、王妃が彼に求めたことは、彼がただ一つ願っていたことであった。そこで、彼は王妃から求められるままに、王に会うために入って行った。そして、彼は王を見ると、王がまだ死んでいないことが分かった。
08 そこで彼は王妃に、「王は亡くなっていません。神によって眠っているので、明日、再び起き上がります。ですから王を葬ってはなりません」と言った。
09 そしてアンモンは王妃に、「このことをお信じになりますか」と尋ねた。すると、王妃は彼に、「あなたの言葉とわたしたちの僕たちの言葉のほかに何の証拠もありませんが、あなたの言ったとおりになると信じます」と答えた。
10 そこで、アンモンは王妃に言った。「お妃様は信仰が非常に深いので幸いです。お妃様、わたしは申し上げます。ニーファイ人のすべての民の中にさえ、これほどの深い信仰はありませんでした。」
11 さて、王妃はそのときから、王が起き上がるとアンモンが告げた翌日のその時刻まで、夫の床のそばで起きていた。
12 そして王は、アンモンの言葉のとおりに起き上がった。そして王は、起き上がると、王妃に向かって手を伸ばして言った。「神の御名がほめたたえられるように。また、あなたは幸いである。
13 あなたが生きているように確かに、見よ、わたしは贖い主を見た。贖い主は将来おいでになり、一人の女からお生まれになり、御名を信じるすべての人を贖われる。」王はこれらの言葉を言い終えると、胸がいっぱいになり、喜びのあまり再び倒れてしまった。すると、王妃も御霊に強く感じて倒れた。
14 アンモンは、罪悪と言い伝えのためにこれまでニーファイ人の中に、すなわち神のすべての民の中にひどい嘆きをもたらしてきた同胞のレーマン人に、自分の祈りに応じて主の御霊が注がれたのを見て、ひざまずいた。そして、その心を注ぎ出して祈り、神が自分の同胞のために行ってくださったことについて神に感謝した。それから、彼もまた喜びのあまり力を失ってしまった。このように、彼らは3人とも地に倒れたのであった。
15 さて、王の僕たちは彼らが倒れたのを見ると、主への畏れが生じていたので、彼らもまた神に叫び求めた。以前に王の前に立って、アンモンの大きな力について王に証言したのは、この僕たちであった。
16 そして彼らは、力のかぎり主の名を呼び、ついに一人のレーマン人の女を除いて、全員が地に倒れてしまった。この女は名をエービシといい、父の驚くべき示現のために、何年も前からすでに主に帰依していた。
17 このようにして、エービシは主に帰依していたので、ほかの者たちにはそのことを知られてはいなかったものの、ラモーナイの僕たちが皆、地に倒れ、また自分の主である王妃も王も、またアンモンまでが地に倒れて横たわっているのを見ると、それが神の力であることを知った。そして、この機会に彼らの中に起こったことを知らせてこの有様を見せれば、人々は神の力を信じるようになるであろうと思ったので、エービシは家から家へと走り回って、人々にそのことを知らせた。
18 そこで人々は、王の宮殿に集まり始めた。そして、大勢の人がそこにやって来ると、驚いたことに、王と王妃と彼らの僕たちが地に倒れていた。彼らは皆、死んだようにそこに横たわっていた。また、人々はアンモンも見たが、見よ、その人はニーファイ人であった。
19 そこで人々は、互いにつぶやき始めた。そして、ある者たちは、王がこのニーファイ人にこの地に住むことを許したので、彼ら、すなわち王と王の家に属するすべての者に大きな災いが及んだのだと言った。
20 しかし、別の者たちは彼らをたしなめて、「王はセブスの泉で家畜の群れを追い散らされた僕たちを殺したために、この災いを王の家に属するすべての者に招いてしまったのだ」と言った。
21 しかし、こう言った者たちも、セブスの泉のそばに立っていて王の家畜の群れを追い散らした者たちからとがめられた。これらの者たちは、アンモンがセブスの泉で王の家畜の群れを守ったときに仲間を何人も殺したことで、アンモンに怒りを抱いていたからである。
22 そして、その中に、アンモンの剣によって兄弟を殺された者がいた。その男はアンモンのことを非常に怒っていたので、剣を抜くと前に進み出て、その剣でアンモンを殺そうとした。そして、アンモンを殺そうとして剣を振り上げたところ、見よ、その男は倒れて死んでしまった。
23 これでわたしたちは、だれもアンモンを殺せないことが分かる。主が彼の父モーサヤに、「わたしは彼の命を救おう。あなたの信仰に応じてそれは彼に起こる」と言われ、モーサヤが主にアンモンのことをお任せしたからである。
24 さて、大勢の人は、アンモンを殺そうとして剣を振り上げた男が倒れて死んだのを見て、皆恐れを抱き、アンモンにも、倒れているほかの者にも、あえて手を伸ばして触れようとはしなかった。そして彼らは、この大きな力の元は何であろうか、これらのことは皆どのような意味があるのか、と思い始めた。
25 さて、彼らの中には、アンモンが大霊であると言う者が多かったが、大霊から遣わされたのだと言う者もいた。
26 しかし、その両者をたしなめて、アンモンは自分たちを苦しめるためにニーファイ人から遣わされた怪物であると言う別の者たちもいた。
27 またある者たちは、アンモンは自分たちが罪悪を犯したので、自分たちを苦しめるために大霊から遣わされた者であり、大霊はいつもニーファイ人についていて、自分たちの手から彼らを救い出してきたとも言った。これらの者たちは、自分たちの同胞であるレーマン人を大勢滅ぼしてきたのはこの大霊であると言った。
28 このようにして、彼らの中で非常に激しい争いが起こった。そして、彼らがそのように言い争っていたときに、その大勢の人を集めたはしためがやって来た。その女は大勢の人が言い争っているのを見ると、ひどく嘆いて涙を流した。
29 そしてその女は、王妃のそばに行くと、王妃を地から起き上がらせようとでもするかのように、その手を取った。すると、その女が王妃の手に触れた途端、王妃は起きて立ち上がり、大声で叫んだ。「おお、恐ろしい地獄からわたしを救われた、祝福に満ちたイエス様、おお、祝福に満ちた神様。この民に憐れみをおかけください。」
30 そして、王妃はこのように言うと、喜びに満たされて両手を組み、人々の理解できない多くの言葉を語った。そして、語り終えて、ラモーナイ王の手を取ると、王も起きて立ち上がった。
31 そして、王は民の間に争いがあるのを知ると、すぐに出て行って彼らをたしなめ、アンモンから聞いた言葉を彼らに教え始めた。すると、王の言葉を聞いた人々は皆信じて、主に帰依した。
32 しかし、王の言葉を聞こうとしない者たちもたくさんいて、彼らは立ち去った。
33 そして、アンモンも起き上がると、彼らに教えを授け、ラモーナイの僕たちも皆同じようにした。彼らは皆すでにその心が改まっており、もう二度と悪を行いたいとは思わなかったので、そのことを口をそろえて人々に告げた。
34 そして見よ、多くの僕たちが天使を見、また天使と話をしたと告げた。このように、彼らは神と神の義にかかわることを人々に述べたのである。
35 そして、彼らの言葉を信じた人々は大勢いて、信じた人々は皆バプテスマを受け、義にかなった民となり、自分たちの中に教会を設けた。
36 このようにして、主の業がレーマン人の中に始まり、主は彼らに主の御霊を注がれた。このことから、主の腕が、悔い改めて主の名を信じるすべての人に伸べられることが分かるのである。
【動画】アンモン,ラモーナイ王の父に会う
第20章
アンモンが牢にいる兄弟たちを救い出せるように、主は彼をミドーナイの地に遣わされる。アンモンとラモーナイ、全地を治める王であるラモーナイの父に会う。アンモン、その年取った王に自分の兄弟たちの釈放を認めさせる。紀元前約90年。
01 さて、彼らがその地に教会を設立した後、ラモーナイ王はアンモンを自分の父に会わせたいと思い、自分とともにニーファイの地へ行くように彼に求めた。
02 すると、主の声がアンモンに聞こえて、「あなたはニーファイの地へ上って行ってはならない。王があなたの命をねらうであろう。見よ、あなたの兄弟アロンと、ミュロカイ、アンマが牢に入っているので、ミドーナイの地へ行きなさい」と言われた。
03 さて、アンモンはこの御言葉を聞くと、ラモーナイに言った。「見よ、わたしの兄弟と同僚たちがミドーナイの牢に入れられているので、わたしは行って彼らを救い出します。」
04 すると、ラモーナイはアンモンに言った。「わたしはあなたが主の力で何事でもできることを知っています。しかし見よ、わたしも一緒にミドーナイの地へ行きましょう。ミドーナイの地の王はその名をアンテオムノといい、わたしの友です。ですから、わたしもミドーナイの地へ行って、その地の王をなだめましょう。そうすれば、彼はあなたの兄弟たちを牢から出してくれるでしょう。」また、ラモーナイは彼に、「あなたの兄弟たちが牢に入っているとあなたに告げたのはだれですか」と尋ねた。
05 そこでアンモンは彼に、「わたしに告げたのはほかでもない、神です。神がわたしに、『あなたの兄弟たちがミドーナイの地で牢に入っているので、行って救い出しなさい』と言われたのです」と答えた。
06 ラモーナイはこの言葉を聞くと、僕たちに自分の馬と馬車を用意させた。
07 そして、彼はアンモンに言った。「さあ、わたしもあなたとともにミドーナイの地へ行き、あなたの兄弟たちを牢から出すように王に頼みましょう。」
08 さて、アンモンとラモーナイがその地へ向かって旅をしていたところ、彼らは途中で、ラモーナイの父である全地を治める王に出会った。
09 すると見よ、ラモーナイの父はラモーナイに、「わたしが息子たちと民のために宴会を催したあの特別な日に、なぜおまえはその宴会に来なかったのか」と尋ね、
10 また、「おまえは偽り者の子孫の一人であるこのニーファイ人と連れ立って、どこへ行こうとしているのか」と言った。
11 そこでラモーナイは、父を怒らせるのを恐れて、自分がどこへ行こうとしているかを語った。
12 彼はまた、父が用意した宴会に出るために父のもとへ行かずに自分の国にいた理由をすべて父に告げた。
13 さて、ラモーナイがこれらのことをすべて語ったところ、見よ、意外なことに、彼の父は彼に怒りを示し、「ラモーナイ、おまえはそのニーファイ人たちを救い出そうとしているが、その者たちは偽り者の子孫だ。見よ、その偽り者は我らの先祖から物を奪った。そして、今その子孫も我らの中にやって来て、悪知恵と偽りによって我らを欺き、また我らから持ち物を奪おうとしている」と言った。
14 そしてラモーナイの父は、剣でアンモンを殺すようにラモーナイに命じた。また、ミドーナイの地へ行かず、自分とともにイシマエルの地へ帰るように命じた。
15 しかし、ラモーナイは父に言った。「わたしはアンモンを殺すつもりはありませんし、イシマエルの地へも帰りません。ミドーナイの地へ行って、アンモンの兄弟たちを解き放します。わたしは彼らが正しい人々であり、まことの神の聖なる預言者であることを知っているからです。」
16 彼の父はこれらの言葉を聞くと、彼に怒りを発し、剣を抜いて彼を地に打ち倒そうとした。
17 そのとき、アンモンが進み出て、ラモーナイの父に言った。「まことに、あなたは自分の息子を殺してはなりません。彼はすでに罪を悔い改めているので、もし殺されたとしても、あなたが倒れるよりはよいでしょう。しかし、あなた自身は、今怒ったまま倒れるならば救われません。
18 あなたは思いとどまった方がよいでしょう。もしあなたが自分の息子を殺せば、彼には罪がないので、彼の血は地から主なる神に向かって、あなたに報復するように叫ぶでしょう。そして、恐らくあなたは命を失うでしょう。」
19 アンモンがラモーナイの父にこれらの言葉を語り終えると、彼はそれに答えて、「わたしは、息子を殺せば罪のない者の血を流すことになるのを知っている。おまえこそわたしの息子を滅ぼそうとした者だ」と言った。
20 そして、彼は腕を伸ばして、アンモンを殺そうとした。しかし、アンモンは彼が打ちかかってくるのを防ぐとともに、彼の腕を打ってその腕を利かなくした。
21 そこで王は、アンモンに自分を殺す力があるのを知って、命を助けてほしいとアンモンに懇願し始めた。
22 しかし、アンモンは剣を振り上げ、「まことに、わたしの兄弟たちを牢から出すのを認めないかぎり、わたしはあなたを討つ」と言った。
23 すると王は、命を失うのを恐れて、「わたしの命を助けてくれれば、おまえの求めるものは何でも与えよう。王国の半分でも与える」と言った。
24 そこでアンモンは、自分の望みどおりにその年老いた王に影響を与えることができたのを知って、こう言った。「わたしの兄弟たちを牢から出すことと、ラモーナイに彼の王位を保たせることと、ラモーナイに対して怒りを示さず、何事でも彼の望むままに彼の考えていることを行わせることを認めるならば、わたしはあなたの命を助けよう。そうでなければ、あなたを地に打ち倒す。」
25 さて、アンモンがこれらの言葉を語り終えると、王は自分の命が助かることを喜んだ。
26 また彼は、アンモンが自分を殺す気がなく、また息子ラモーナイを深く愛していることを知って、非常に驚いて言った。「おまえが求めたのはただ、おまえの兄弟たちを釈放することと、わたしの息子ラモーナイに彼の王位を保たせること、それだけであるから、まことにわたしは、これから先とこしえに息子に王位を保たせ、今後二度と息子に指図をするまい。
27 わたしはまた、おまえの兄弟たちを牢から出すことと、おまえとおまえの兄弟たちがわたしの国でわたしのもとに来ることを認めよう。わたしはぜひおまえに会いたいからである。」王はアンモンが語った言葉と、息子ラモーナイが語った言葉に非常に驚き、それを知りたいと思ったのである。
28 さて、アンモンとラモーナイは、ミドーナイの地へ旅を続けた。そして、ラモーナイはその地の王の好意を得、アンモンの兄弟たちは牢から連れ出された。
29 アンモンは、彼らに会うと非常に心を痛めた。見よ、彼らが裸であったうえに、丈夫な縄で縛られていたため、体の皮膚がすりむけていたからである。また、彼らは飢えと渇きとあらゆる苦難を受けて苦しんでいた。それでも、彼らはすべての苦しみに耐えていたのである。
30 このように、彼らはアンモンが出会った人々よりももっとかたくなで、もっと強情な人々の手に落ちる巡り合わせにあったのである。人々は彼らの言葉を聴こうとせず、彼らを追い出し、打ちたたき、家から家へ、こちらからあちらへと彼らを追い払い、とうとう彼らはミドーナイの地へやって来た。そこで彼らは捕らえられ、牢に入れられて丈夫な縄で縛られ、幾日もの間牢に閉じ込められていて、ラモーナイとアンモンによって救い出されたのであった。
アロンとミュロカイと彼らの同僚たちがレーマン人に教えを説いたことについての話。次の第21〜26章がそれに相当する。
第21章
アロン、アマレカイ人にキリストとキリストの贖罪について教える。アロンと彼の同僚たち、ミドーナイで投獄される。アロンたち、解放された後、会堂で教え、多くの人を改宗させる。ラモーナイ、イシマエルの地の人々に信教の自由を認める。紀元前約90年から77年に至る。
01 さて、アンモンと彼の同僚たちがレーマン人の国の境でそれぞれ別れたとき、アロンは、レーマン人がエルサレムと名付けた地を指して旅をした。そこは彼らの先祖の生まれた地にちなんで名付けられた所で、はるか遠くモルモンの地と境を接していた。
02 レーマン人とアマレカイ人とアミュロンの民は、そこに大きな町を築き、エルサレムと名付けた。
03 ところで、レーマン人はもともと相当にかたくなであったが、アマレカイ人とアミュロン人はことのほかかたくなであったので、彼らはレーマン人の心をさらにかたくなにさせ、悪事と忌まわしい行いにふけるようにさせた。
04 さて、アロンはエルサレムの町に着くと、最初にアマレカイ人に教えを説き始めた。アロンは彼らの会堂で教えを説き始めたが、それは彼らがニーホルの教団の会堂を幾つも建てていたからである。アマレカイ人とアミュロン人の多くがニーホルの教団に属していたのであった。
05 そこでアロンが、人々に教えを説くために、彼らの会堂の一つに入って彼らに語っていたときに、一人のアマレカイ人が立ち上がり、アロンと論じ始めた。「おまえが証したのは何のことだ。おまえは天使に会ったのか。なぜ天使は我々にも現れないのか。この民はおまえの民よりも善くないと言うのか。
06 おまえはまた、我々が悔い改めないかぎり滅びると言ったが、どうしておまえに我々の心の思いと志が分かるのか。我々に悔い改めなければならない理由があることがどうしておまえに分かるのか。我々が義にかなった民でないことがどうしておまえに分かるのか。見よ、我々は聖堂を建てたし、神を礼拝するために集まっている。我々は、神がすべての人を救われることを信じている。」
07 そこでアロンは彼に、「あなたは、神の御子が人類を罪から贖うために来られるということを信じていますか」と尋ねた。
08 するとその人はアロンに言った。「我々は、おまえにそのようなことが分かるとは信じない。我々はそのような愚かな言い伝えは信じない。また、おまえに将来のことが分かるとも信じないし、おまえの先祖と我々の先祖が、自分たちが語った将来のことについて分かっていたとは信じない。」
09 そこでアロンは、キリストの来臨と死者の復活についての聖文を彼らに説明し、キリストの死と苦しみと、キリストの血による贖罪によるほかに、人類のための贖いはあり得ないことを話し始めた。
10 そして、アロンがこれらのことを彼らに説き明かしたところ、彼らはアロンに怒りを示し、また彼をあざけり始めた。そして、彼らは彼の語る言葉を聞こうとしなかった。
11 そこでアロンは、彼らが自分の言葉を聞こうとしないのを見て、会堂を去り、アナイ・アンタイと呼ばれている村を訪れた。そこで彼は、人々に御言葉を宣べ伝えていたミュロカイに出会い、またアンマと彼の同僚たちに会った。それから彼らは、御言葉について多くの人と論じ合った。
12 そして彼らは、人々が心をかたくなにするのを見て、そこを去り、ミドーナイの地を訪れた。そして彼らは、多くの人に御言葉を宣べ伝え、わずかな人が彼らの教えた御言葉を信じた。
13 にもかかわらず、アロンと彼の同僚たちの中の数人は、捕らえられて牢に入れられた。また、残りの同僚たちは、ミドーナイの地から周辺の地へ逃れて行った。
14 そして、牢に入れられた人々は多くの苦しみを受けたが、後にラモーナイとアンモンの手によって救い出された。そして、食べる物と着る物を与えられたのである。
15 それから、彼らは御言葉を告げ知らせるために再び出て行った。彼らが初めて牢から救い出された次第は以上のとおりであり、彼らが苦しんだ次第も以上のとおりである。
16 そして彼らは、主の御霊に導かれる所へならばどこへでも行き、彼らが入ることのできたアマレカイ人のすべての会堂で、またレーマン人のすべての集会で、神の言葉を宣べ伝えた。
17 そこで、主が彼らに祝福を授けてくださるようになり、彼らは多くの人に真理を知らせることができた。すなわち、彼らは多くの人に、各自に罪のあることと、彼らの先祖の言い伝えが正しくないことを納得させた。
18 そして、アンモンとラモーナイは、ミドーナイの地からラモーナイと彼の民の受け継ぎの地であるイシマエルの地へ帰った。
19 ラモーナイ王は、アンモンを自分に仕えさせようとせず、自分の僕でいることを許そうとしなかった。
20 また王は、イシマエルの地に幾つもの会堂を建てさせた。また彼は自分の民、すなわち自分の統治下にある人々をともに集めさせた。
21 そこで彼は、集まった人々を見て喜び、彼らに多くのことを教えた。また、彼らが自分の下にある民であることと、自分の父である王の圧制を受けない自由の民であることを彼らに告げ知らせた。ラモーナイ王の父が彼に、イシマエルの地とその周辺の全地にいる人々を治めることを認めたからである。
22 ラモーナイ王はまた、自分の統治下にある地であればどこででも、自分たちの望むままに、主なる自分たちの神を礼拝する自由が彼らにあることを告げ知らせた。
23 そしてアンモンは、ラモーナイ王の民に教えを説いた。彼は、義にかかわることについてあらゆる事柄を民に教えた。アンモンは日々力のかぎり彼らに説き勧め、また彼らは彼の言葉を心に留めて、熱心に神の戒めを守った。
第22章
アロン、創造と、アダムの堕落と、キリストによる贖いの計画についてラモーナイの父に教える。王と王の家のすべての者が改宗する。ニーファイ人とレーマン人の領土の区分についての説明。紀元前約90年から77年に至る。
01 さて、アンモンはこのようにして引き続きラモーナイの民を教えていたので、話をアロンと彼の同僚たちのことに戻そう。アロンはミドーナイの地を去った後、御霊によってニーファイの地へ導かれ、王の宮殿に行った。この王は、イシマエルの地を除く全地を治めている王であり、ラモーナイの父であった。
02 そこでアロンは、彼の同僚たちとともに王の宮殿に入り、王のもとに進み出て、王の前にひれ伏して言った。「まことに、王様、わたしたちはアンモンの仲間であり、あなたに牢から救い出していただいた者であります。
03 王様、わたしたちの命を助けてくださるならば、わたしたちは王様の僕になります。」すると王は彼らに言った。「立ちなさい。わたしはあなたがたの命を許そう。しかし、わたしの僕になることは認めない。その代わりに、わたしにぜひとも教えてもらいたい。あなたの兄弟アンモンの言葉が寛大であり、偉大であったので、わたしは少々心に思い悩んでいることがある。また、アンモンがあなたとともにミドーナイから上って来なかった理由も知りたい。」
04 そこでアロンは王に、「まことに、主の御霊が彼をほかの場所へ呼ばれたのです。彼はラモーナイの民を教えるために、イシマエルの地へ行きました」と言った。
05 すると、王は彼に言った。「あなたは主の御霊について語っているが、それはどういうことなのか。見よ、わたしが思い悩んでいるのはそのことである。
06 アンモンは、『悔い改めるならば救われるが、悔い改めなければ終わりの日に捨てられる』と言ったが、それはどういうことなのか。」
07 そこでアロンは王に答えて、「王様は神がましますことを信じておられますか」と言った。すると、王は、「アマレカイ人が神がいると言っているのは知っている。わたしは彼らが集まって神を礼拝することができるように、幾つかの聖堂を建てることを彼らに許してきた。だから、今あなたが神はましますと言うならば、見よ、わたしは信じよう」と答えた。
08 さて、アロンはこれを聞いて心に喜びを覚え、「王様、まことに、あなたが今生きておられるように確かに、神は生きておられます」と言った。
09 すると王は、「神とは、我らの先祖をエルサレムの地から導き出したあの大霊のことか」と尋ねた。
10 そこでアロンは王に、「そのとおりです。神とはあの大霊のことです。神は天と地の両方で万物を創造されました。王様はこのことをお信じになりますか」と言った。
11 すると、王は答えた。「まことに、わたしは信じる。わたしは大霊が万物を創造されたことを信じる。だから、これらすべてのことについてわたしに話してほしい。わたしはあなたの言葉を信じよう。」
12 そこでアロンは、王が自分の言葉を信じようとするのを見て、聖文を王に読んで聞かせながら、アダムの造られたこと、すなわち神が御自分の形に人を創造されたことから始めて、神がアダムに戒めを与えられたことや、人が背きのために堕落したことを話して聞かせた。
13 そしてアロンは、アダムが造られたことから始めて王に聖文を説き明かし、人が堕落したことと、人類のこの世の状態と、贖いの計画について話した。この贖いの計画は、キリストの名を信じようとするすべての人のために、キリストによって世の初めから備えられたものである。
14 また人類は堕落したので、自分自身で何も良い報いを得ることはできなかった。しかし、信仰と悔い改めなどによって、キリストの苦しみと死が彼らの罪を贖うのである。そして、キリストは死の縄目を断ち、墓は勝利を得ず、死のとげは栄光の望みの中にのみ込まれてしまう。アロンはこれらのことをすべて王に説き明かした。
15 さて、アロンがこれらのことを王に説き明かした後、王は言った。「あなたの語ったこの永遠の命を得るには、まことに、わたしは何をすればよいのか。わたしは何をすれば、この悪い霊をわたしの胸からことごとく取り除いて、神から生まれ、神の御霊を受けて、喜びに満たされ、終わりの日に捨てられなくて済むのか。見よ、この大きな喜びを得るために、わたしは持ち物をすべて捨てよう。まことに、王位も譲ろう。」
16 しかし、アロンは王に言った。「あなたがこのことを願い、神の御前にひれ伏すならば、まことに、あなたの罪をすべて悔い改め、神の御前にひれ伏して、与えられると信じて信仰をもって神の御名を呼ぶならば、そのときあなたは、今願っているものを得るでしょう。」
17 そして、アロンがこれらの言葉を語ると、王はひざまずいて主の前にひれ伏した。まことに、王は地に平伏し、熱烈に叫び求めた。
18 「おお、神よ、アロンは、あなたがましますことをわたしに告げました。もしも神が生きてましますならば、そしてあなたがその神であられるならば、あなた御自身のことをわたしにお知らせください。わたしはあなたを知り、死者の中からよみがえり、終わりの日に救われるように、自分の罪をすべて捨てます。」王はこれらの言葉を語り終えると、倒れて死んだようになった。
19 さて、王の僕たちが走って行って、王の身に起こったことをすべて王妃に知らせたので、王妃は王のもとに来た。そして、死んだように横たわっている王と、張本人であるかのように立っているアロンと彼の同僚たちを見て、王妃は彼らに怒りを発し、自分の僕たち、いや王の僕たちに、彼らを捕らえて殺すように命じた。
20 ところが僕たちは、王が倒れた訳を知っていたので、アロンと彼の同僚たちにあえて手をかけようとせず、王妃に懇願して言った。「どうしてこの人々を殺すようにお命じになるのですか。この人々の一人は、わたしたち全員よりも強いのです。わたしたちはこの人々の前で倒れてしまうでしょう。」
21 すると王妃は、僕たちが恐れているのを見て、自分に何か災いが及ぶかもしれないと思い、非常に恐れ始めた。そして、自分の僕たちに、行って人々を呼び集め、アロンと彼の同僚たちを殺させるように命じた。
22 さて、アロンは王妃の決意を知ると、人々の心がかたくなであるのも知っていたので、大勢の人が集まって、彼らの中にひどい争いと騒動が起こるのではないかと心配した。そこで彼は、手を差し伸べて王を地から起こし、「立ちなさい」と言った。すると、王は力を得て立ち上がった。
23 さて、このことは王妃と多くの僕たちの前で行われた。そこで彼らは、それを見ると非常に驚き、恐れた。すると、王は前に進み出て、彼らを教え始めた。そして、王が彼らを教えたので、王の家のすべての者が主に帰依した。
24 ところが、すでに王妃が命令を出していたので、大勢の人が集まって来た。そして彼らは、アロンと彼の同僚たちのことでひどくつぶやき始めた。
25 しかし、王が出て行って彼らの中に立ち、彼らを教えたので、彼らはアロンと、また彼と一緒にいた人々に対して心を和らげた。
26 そして王は、人々が心を和らげたのを見ると、アロンと彼の同僚たちを群衆の中に行かせて立たせ、彼らに御言葉を宣べ伝えさせた。
27 そして王は全地に、すなわち自分の国内にいるすべての民と、その周辺の全地方にいるすべての民に布告を出した。この国は東と西で海に接しており、またゼラヘムラの地とは、東の海から西の海まで続いている細長い荒れ野で隔てられていた。また、この荒れ野は海岸線で湾曲しており、その北方の境はゼラヘムラの地からマンタイの境を通り、また東から西に流れるシドン川の源まで達していた。レーマン人とニーファイ人はこのようにして分かれていた。
28 さて、レーマン人の中でさらに怠惰な者たちは荒れ野にいて、天幕に住んでいた。彼らはニーファイの地に含まれる西方の荒れ野全体に広く住んでおり、また、ゼラヘムラの地の西方の海岸に近い境の地付近にも、さらには、ニーファイの地の西方の、彼らの先祖が最初受け継ぎの地とした所にも住んでいた。このように、彼らは海沿いの境の地に住んでいた。
29 また、東方の海岸近くにも多くのレーマン人がいた。彼らはニーファイ人によってそこに追い込まれたのである。このように、ニーファイ人はほとんどレーマン人に囲まれていた。それでも、ニーファイ人はシドン川の源で荒れ野に接する地の北部全体を所有してきた。その地は東から西まで荒れ野に沿っており、北方は彼らがバウンティフルと名付けた地まで達していた。
30 バウンティフルの地は、ニーファイ人がデソレションと名付けた地に接していた。そのデソレションの地ははるか北方にあって、かつて人々が住んでいたが今はもう滅びてしまい、前に述べたようにゼラヘムラの民がその人々の骨を発見した地である。またそこは、ゼラヘムラの民が最初に上陸した所でもある。
31 彼らはそこから南の荒れ野へ上って来た。このようにして、北方の地はデソレションと呼ばれ、南方の地は、あらゆる野生動物で満ちている荒れ野があったので、バウンティフルと呼ばれた。その野生動物の一部は、食べ物を求めて北方の地から来たものであった。
32 さて、東の海から西の海までは、バウンティフルとデソレションの地の境界線上をニーファイ人が1日半旅をすれば行けるわずかな距離であった。このように、ニーファイの地とゼラヘムラの地はほとんど海に囲まれており、北方の地と南方の地の間には小さい地峡があった。
33 そしてニーファイ人は、東の海から西の海に至るまでバウンティフルの地に住んでいた。このように、ニーファイ人は賢明に彼らの見張りの兵と軍隊をもってレーマン人を南方に閉ざし、レーマン人が北方に領土を持って北方の地で増え広がることのないようにした。
34 そのためにレーマン人は、ニーファイの地と周辺の荒れ野の中にしか領土を持てなかった。これはニーファイ人の知恵であった。レーマン人は彼らの敵であったので、彼らはあらゆる方面で苦難を受けることのないようにし、またどこへでも思うままに逃げて行く先を確保できるようにしたのである。
35 さて、このことはこれで終わりとし、再びアンモンとアロン、オムナーとヒムナイ、および彼らの同僚たちの話に戻ることにする。
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第23章
信教の自由が宣言される。7つの地と町のレーマン人が改宗する。彼らはアンタイ・ニーファイ・リーハイ人と自称し、のろいを解かれる。アマレカイ人とアミュロン人、真理を拒む。紀元前約90年から77年に至る。
01 さて見よ、レーマン人の王はすべての民の中に布告を出して、国内のどこにおいても、民はアンモンやアロン、オムナー、ヒムナイ、そのほか神の言葉を宣べ伝えながら旅をしているその同僚たちに、手をかけてはならないと告げた。
02 まことに、王は民に布告を出して、民は彼らを捕らえて縛ったり、牢に入れたりしてはならない、つばきを吐きかけたり、打ったり、会堂から追い出したり、鞭打ったりしてはならない、また彼らに石を投げつけてはならない、むしろ彼らが民の家や、神殿や、聖堂に自由に出入りできるようにしなければならないとした。
03 そのため彼らは、思いのままに巡り歩いて御言葉を宣べ伝えることができた。それは、王と王の家のすべての者が主に帰依したからである。王は民にあてて全地に布告を出し、神の言葉が何の妨げにも遭うことなく国中に伝わって、先祖の言い伝えが正しくないことを民が納得するように、また自分たちは皆同胞であるので、殺人や略奪、盗み、姦淫、そのほかどのような悪事も行ってはならないことを納得するように仕向けた。
04 さて、王がこの布告を出した後、アロンと彼の同僚たちは町から町へ、また礼拝の建物から建物へと巡って、国中のレーマン人の中に教会を設け、祭司たちと教師たちを聖任して、彼らの中で神の言葉を宣べ伝え、教えるようにした。このようにして、彼らは大きな成功を収め始めた。
05 そして、何千もの人々が主を知るようになった。まことに、何千もの人々がニーファイ人の言い伝えを信じるようになったのである。そしてこれらの人々には、その当時まで伝えられてきた数々の記録と預言が教えられた。
06 そして、主が生きておられるように確かに、アンモンと彼の同僚たちが啓示と預言の霊によって行った宣教と、彼らを通じて数々の奇跡を行われた神の力によって信仰を持つようになったすべての人、すなわち真理を知るようになったすべての人は、あなたがたに申し上げるが、主が生きておられるように確かに、彼らの説教を信じて主に帰依したレーマン人は皆、二度と道を踏み外さなかった。
07 彼らは義にかなった民となったのである。まことに、彼らは謀反に使う武器を捨てて、もはや神と戦わず、同胞のだれとも戦わなかった。
08 さて、主に帰依したのは次の人々である。
09 すなわち、イシマエルの地にいたレーマン人の民、
10 また、ミドーナイの地にいたレーマン人の民、
11 また、ニーファイの町にいたレーマン人の民、
12 また、シャイロムの地、シェムロンの地、レムエルの町、シムナイロムの町にいたレーマン人の民。
13 以上は主に帰依したレーマン人の住んでいた町の名であり、また謀反に使う武器、すなわち戦争に使うすべての武器を捨てた人々である。彼らはすべてレーマン人であった。
14 ところが、アマレカイ人はたった一人が改宗しただけであり、アミュロン人はだれも改宗しなかった。むしろ彼らは心をかたくなにし、彼らの住んでいる地で、すなわち彼らのすべての村と彼らのすべての町で、レーマン人の心をかたくなにさせた。
15 そのために、悔い改めて真理を知り、改宗したレーマン人の住む町の名を、すべて挙げたのである。
16 さて、王と改宗した人々は、彼らの同国人と区別される名を持ちたいと望んだ。そこで王は、何という名を受けて区別されるのがよいかについて、アロンと多くの祭司たちに意見を求めた。
17 そして彼らは、自分たちをアンタイ・ニーファイ・リーハイ人と名付けた。彼らはこの名で呼ばれるようになり、もはやレーマン人とは呼ばれなかった。
18 そして彼らは、非常に勤勉な民になった。また彼らは、ニーファイ人と親しくなったので、ニーファイ人と交わりを持つようになった。そして、神ののろいはもはや彼らから離れ去った。
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第24章
レーマン人、神の民を攻める。アンタイ・ニーファイ・リーハイ人、キリストのことを喜び、天使たちの訪れを受ける。彼らは自衛するよりもむしろ死ぬ方を選ぶ。さらに多くのレーマン人が改宗する。紀元前約90年から77年に至る。
01 さて、アミュロンの地、またヘラムの地、さらにエルサレムの地、要するに周辺の全地にいて、改宗しておらず、アンタイ・ニーファイ・リーハイの名も受けていないアマレカイ人とアミュロン人とレーマン人たちは、アマレカイ人とアミュロン人に扇動されて同胞に怒りを示すようになった。
02 そして、同胞に対する彼らの憎しみは非常にひどくなって、ついに彼らは自分たちの王に背くようになり、その王が自分たちの王であることを望まなくなった。その結果、彼らはアンタイ・ニーファイ・リーハイの民に対して武器を取った。
03 ところで、王は息子に王位を譲り、彼の名をアンタイ・ニーファイ・リーハイと呼んだ。
04 そして王は、レーマン人が神の民と戦うための準備を始めたその年に亡くなった。
05 さて、アンモンと彼の同僚たちと、彼と行動を共にしていたすべての人は、レーマン人がその同胞を滅ぼす準備をしているのを見て、ミデアンの地へ向かった。そこでアンモンは同僚たち全員と落ち合い、そこから彼らはイシマエルの地へ向かった。ラモーナイおよび彼の兄弟であるアンタイ・ニーファイ・リーハイとともに、レーマン人に対して自衛するために何をすればよいか協議するためであった。
06 ところが、すでに主に帰依していた人々の中には、その同胞に対して武器を取ろうとする人はだれ一人いなかった。それだけでなく、彼らは戦いの準備をすることさえも望まなかった。また、彼らの王も戦いの準備をしてはならないと命じたのである。
07 さて、王がこの件について民に語った言葉は次のとおりである。「愛する民よ、わたしは神に感謝する。大いなる神は慈しみをもって、同胞であるこのニーファイ人たちを我らのもとに遣わしてくださった。そして、我らに教えを説き、また、不義な先祖の言い伝えが正しくないことを認めさせてくださった。
08 また見よ、我らの心を和らげるために、大いなる神が御霊の一部をお授けくださったことに、わたしは感謝している。おかげで我らは、同胞であるこれらのニーファイ人たちと行き来するようになった。
09 また見よ、行き来することによって、我らが自分たちの罪と、これまでに犯した多くの殺人を自覚するようになったことも、わたしは神に感謝している。
10 さらに、わたしの神、まことに大いなる神は、我らがこれらのことを悔い改められるようにしてくださり、またこれまでに犯した多くの罪と殺人の罪を赦し、神の御子の功徳によって我らの心から罪を取り除いてくださった。わたしはこのことも神に感謝している。
11 さて見よ、わたしの同胞よ、(我らは全人類の中で最も霊的にすさんだ者であったので)我らができることはただ、我らのすべての罪と、これまでに犯した多くの殺人の罪を悔い改めて、我らの心からそれらのものを神に取り去っていただくことであった。我らができることはただ、神に我らの汚れを取り除いていただけるように、神の御前に十分に悔い改めをすることであったからである。
12 さて、わたしの最愛の同胞よ、神がすでに我らの汚れを取り除いてくださり、我らの剣は光を放つようになったので、剣を二度と同胞の血で汚すことのないようにしようではないか。
13 見よ、わたしはあなたがたに言う。我らは剣が同胞の血で汚されることのないようにしようではないか。恐らく、もし我らが再び剣を汚すならば、それらは、将来我らの罪の贖いのために流される、大いなる神の御子の血によって洗われて光を放つことは二度とないであろう。
14 大いなる神は我らを憐れみ、我らが滅びないようにこれらのことを知らせてくださった。神は我らの子供たちを愛するように我らも愛してくださっているので、これらのことをあらかじめ知らせてくださったのである。そのために、神は憐れみをもって天使たちを遣わして、将来の子孫と同じように我らにも救いの計画を知らせてくださっている。
15 おお、我らの神は何と憐れみ深いことか。さて見よ、我らは汚れを取り除いていただくためにできることはすべて行ってきて、今我らの剣は光っているので、その輝きを保てるように、それを隠してしまおうではないか。そうすればその剣は、終わりの日に、すなわち裁きを受けるために神の御前に連れ出される日に、神の御言葉を伝えて我らを清めてくださって以来、我らが剣を同胞の血で汚したことはないという、神への証拠となることであろう。
16 さて、わたしの同胞よ、たとえ同胞が我らを殺そうとしても、見よ、我らは剣を隠してしまおう。それを決して使わなかったという証拠として、終わりの日に輝きを保っているように、それを地中深く埋めてしまおう。そうすれば、たとえ同胞に殺されても、見よ、我らは神のみもとへ行き、救われることであろう。」
17 さて、王がこのように語り終えると、民は皆集まり、自分たちの剣と、かつて人の血を流すのに使ったあらゆる武器を取って来て、それを地中深く埋めてしまった。
18 彼らがこのようにしたのは、こうすることが、武器を使って人の血を流すことは決してないことを神と人に示す証拠になると考えたからである。彼らはこのようにして、同胞の血を流すよりは自分の命を捨て、同胞から奪うよりは同胞に与え、怠惰に生涯を送るよりは自分の手を使って一生懸命に働くつもりであることを証明し、神に聖約したのである。
19 このことから分かるように、このレーマン人たちは信仰を持ち、真理を知るようになったときに、確固とした者になり、罪を犯すよりは死に至るまでも苦しみに耐えようとしたのである。また、前に述べたことから分かるように、彼らは平和の武器、すなわち平和を得るための戦いの武器を埋めてしまったのである。
20 さて、彼らの同胞であるレーマン人は戦いの準備を整え、ニーファイの地に向かって来た。彼らが目的としていたのは、王を殺してほかの者を代わりに立て、アンタイ・ニーファイ・リーハイの民もまたその地から滅ぼし尽くすことであった。
21 さて、アンタイ・ニーファイ・リーハイの民は、レーマン人が攻めて来るのを見ると、出て行って彼らに会い、彼らの前で地に身を伏せて、主の名を呼び始めた。彼らがこのような姿勢を取っていたところ、レーマン人は彼らに襲いかかり、彼らを殺し始めた。
22 このようにして、レーマン人は何の抵抗も受けることなく、アンタイ・ニーファイ・リーハイ人を1005人殺した。これらの人々は神とともに住むために世を去ったので幸いであることを、わたしたちは知っている。
23 ところでレーマン人は、自分たちの同胞が剣から逃れようとせず、右にも左にも身をかわそうとせずに、伏したまま死のうとしており、剣に倒れるその最中でさえ神をほめたたえるのを見て、
24 すなわち、レーマン人はそれを見て、彼らを殺すのをやめた。そして、多くの者が自分たちのしたことを悔い、剣に倒れた同胞のためにひどく心を痛めた。
25 そして、これらの者は自分たちの武器を投げ捨て、人を殺してきたことにひどく苦しみを覚え、二度と武器を取ろうとしなかった。それから彼らは、同胞と同じように身を伏せて、彼らを殺すために腕を振り上げた者たちのなすがままに任せたのであった。
26 そしてその日、殺された人の数よりも多くの者が神の民に加わった。また、殺された人々は義にかなった人々であったので、彼らが救われたことは決して疑う余地がない。
27 また、このようにして死んだ人々の中には一人の悪人もなく、しかも真理を知るようになった人々は1000人を越えた。このことから、主は御自分の民を救うために様々な方法を用いられることが分かる。
28 ところで、そのように多くの同胞を殺したレーマン人に属する者の大多数は、アマレカイ人とアミュロン人であり、しかもその大多数はニーホルの教団に属する者であった。
29 主の民に加わった人々の中には、アマレカイ人やアミュロン人、あるいはニーホルの教団に属する者はだれ一人おらず、主の民に加わったのはレーマンとレムエルの実の子孫だけであった。
30 このことから明らかに分かるように、民は一度神の御霊に照らされ、義にかかわることに関して大いなる知識を得てから、その後、罪と背きに陥ると、前よりもいっそうかたくなになる。したがって彼らの状態は、これらのことをまったく知らない場合よりももっと悪くなるのである。
第25章
レーマン人の侵略が広がる。ノアの祭司たちの子孫、アビナダイが預言したように滅びる。多くのレーマン人が改宗し、アンタイ・ニーファイ・リーハイの民に加わる。彼らはキリストを信じ、モーセの律法を守る。紀元前約90年から77年に至る。
01 さて見よ、そのレーマン人は自分たちの同胞を殺すことになったのでますます怒り、ニーファイ人への報復を誓った。そして、そのときにはもうアンタイ・ニーファイ・リーハイ人を殺そうとはしなかった。
02 その代わりに、彼らは軍隊を率いてゼラヘムラの地の境を越え、アモナイハの地にいる民を攻めて滅ぼした。
03 その後、彼らはニーファイ人と何度も戦ったが、その戦いで追い払われ、殺された。
04 そして、ノアの祭司であったアミュロンと彼の仲間たちの子孫は、そのほとんど全員が殺されてレーマン人の戦死者の中にいた。彼らはニーファイ人の手によって殺されたのである。
05 また、生き残った者たちは東の荒れ野に逃げ込んで、レーマン人を支配する権力と権能を奪い取り、彼らが信仰を持っているという理由でレーマン人の多くを火あぶりにして殺させた。
06 それというのも、レーマン人の中の多くの者たちが、多くの同胞を失い、非常に多くの苦難を受けた後、かつてアロンと彼の同僚たちが自分たちの地で宣べ伝えた言葉を思い出すに至ったからである。そして、これらの者たちは、先祖の言い伝えを信じるのをやめて主を信じるようになり、また主がニーファイ人に大きな力を与えられたことを信じるようになったのである。このように、荒れ野の中で大勢のレーマン人が改宗した。
07 さて、アミュロンの子孫の生き残りの者で支配者になった者たちは、まことに、これらのことを信じているすべての人を殺させてしまった。
08 すると、この殉教を見て多くの同胞が怒りをかき立てられ、荒れ野で争いが起こった。そして、レーマン人がアミュロンと彼の仲間の子孫を狩り出して殺し始めたため、彼らは東の荒れ野に逃げ込んでしまった。
09 そして見よ、彼らは今でもレーマン人に追い回されている。このようにして、自分を焼き殺すように仕向けた祭司たちの子孫について、アビナダイの述べた言葉は成就した。
10 アビナダイは、「あなたがたがわたしに行うことは、将来起こることの予型である」と言ったからである。
11 さて、アビナダイは神を信じているという理由で火あぶりにされて死んだ最初の人であった。したがって、彼が言おうとしたことは、多くの人が自分と同じように火あぶりにされて死ぬということである。
12 アビナダイはノアの祭司たちに、彼らの子孫はアビナダイが殺されるのと同じ方法で多くの人を殺すが、その後彼らは、羊飼いのいない羊が野獣に追われて殺されるように、方々に散らされて殺されると述べた。見よ、これらの言葉は実証されたのである。祭司たちの子孫はレーマン人に追われ、狩り出され、打たれたからである。
13 さて、レーマン人はニーファイ人を打ち負かせないことを知ると、再び自分の国に引き揚げた。そして、その中の多くの者がイシマエルの地とニーファイの地に移り住み、神の民、すなわちアンタイ・ニーファイ・リーハイの民に加わった。
14 彼らもまた、その同胞がしたように自分たちの武器を埋め、義にかなった民になった。そして主の道を歩み、主の戒めと主の掟を守るように努めた。
15 また、彼らはモーセの律法も守った。モーセの律法はまだすべては成就していなかったので、彼らはモーセの律法を守る必要があったからである。しかし彼らは、モーセの律法を守っていたにもかかわらず、キリストの来臨を待ち望んでいた。彼らは、モーセの律法はキリストの来臨の予型であると考え、キリストが自分たちに御姿を現されるときまでは、それらの外形上の勤めを守らなければならないと信じていたからである。
16 ところで彼らは、モーセの律法によって救いが得られるとは思っていなかった。しかしモーセの律法は、キリストを信じる信仰を強めるのに役立った。このようにして彼らは、将来起こることについて告げる預言の霊に頼りながら、信仰をもって永遠の救いにあずかることができるという希望を抱き続けたのである。
17 さて見よ、アンモンとアロン、オムナー、ヒムナイ、およびその同僚たちは、主が彼らの祈りに応じて願いをかなえてくださり、またすべてのことについて御自身の言葉を実証してくださったことを知って、彼らがレーマン人の中で得た成功に非常に喜びを得たのであった。
第26章
アンモン、主を誇って喜ぶ。忠実な者は主によって強められ、知識を与えられる。人は信仰によって何千もの人々を悔い改めさせることができる。神は一切の権威を持ち、すべてのことを悟っておられる。紀元前約90年から77年に至る。
01 さて、アンモンが同僚たちに語った言葉は、次のとおりである。「わたしの兄弟たちと同僚たちよ、わたしはあなたがたに言いたい。わたしたちは大いに喜んでよい。わたしたちは、ゼラヘムラの地を出たときに、神がこれほどまでに大きな祝福を与えてくださると想像できただろうか。
02 さて、わたしは尋ねるが、神はわたしたちにどんな大きな祝福を与えてくださっただろうか。あなたがたはそれを告げることができるだろうか。
03 見よ、あなたがたに代わってわたしが答えよう。わたしたちの同胞のレーマン人は、かつて暗闇の中に、まことに最も暗い、深い淵の中にいた。しかし今は何と多くのレーマン人が神の驚くべき光を見るようになったことか。わたしたちがこの大いなる業を成し遂げるために、神の御手に使われる者とされたことは、わたしたちに与えられた祝福である。
04 見よ、何千人ものレーマン人が今喜びを得ており、神の羊の群れに入っている。
05 見よ、畑は熟していた。そして、あなたがたは鎌を入れ、力を尽くして刈り入れ、まことに一日中働いたので、あなたがたは幸いである。見よ、あなたがたの得た束は何と多いことか。それらの束は、無駄にならないように倉に納められるであろう。
06 まことに、それらの束は終わりの日に嵐に打たれることなく、旋風に巻き上げられることもない。嵐が来るときに、それらの束はそのあるべき場所に集められるので、嵐がその束に吹きつけることはない。まことに、敵が追いやろうと思う所に暴風で押しやられることもないであろう。
07 しかし見よ、それらの束は収穫をつかさどる主の御手の中にあり、それらは主のものである。主は終わりの日にそれらの者をよみがえらせてくださる。
08 神の御名がほめたたえられるように。わたしたちの神を賛美して歌おう。神の聖なる御名に感謝をささげよう。神はとこしえに義を行われるからである。
09 もしわたしたちがゼラヘムラの地から来なかったならば、わたしたちを今心から愛してくれている、またわたしたちが深く愛するこの同胞は、今もなおわたしたちに対する憎しみで苦しみ、また神を知らなかったであろう。」
10 そして、アンモンがこれらの言葉を語り終えると、兄弟のアロンが彼をたしなめて言った。「アンモン、あなたは喜びのあまり、我を忘れて誇るようになってしまったのではないか。」
11 そこで、アンモンはアロンに言った。「わたしは自分の力も知恵も誇ってはいない。しかし見よ、わたしの喜びは満ちており、胸は喜びでいっぱいである。だから、わたしは主にあって喜ぼう。
12 まことに、わたしは自分が何の価値もない者であることを知っている。わたしは力の弱い者である。だから、わたしは自分のことを誇るつもりはない。しかし、わたしは神のことを誇ろう。わたしは神の力によって何事でもすることができるからである。まことに見よ、わたしたちはこの地で多くの偉大な奇跡を行ってきた。だから、とこしえに神の御名をほめたたえよう。
13 見よ、神が地獄の苦痛から解き放してくださった同胞の数は、何千人にも上るではないか。彼らは今、贖いをもたらした愛について歌うようになっている。これはわたしたちの内にある神の御言葉の力のおかげである。だから、大いに喜んでよいのではないだろうか。
14 まことにわたしたちは、とこしえに神をほめたたえて当然である。わたしたちの神はいと高き神であり、わたしたちの同胞を地獄の鎖から解き放してくださった。
15 まことに、わたしたちの同胞はかつて永遠の暗闇と滅びに取り巻かれていたが、しかし見よ、神は彼らを御自分の永遠の光の中に、まことに永遠の救いの中に導いてくださった。そして今、彼らはたぐいない豊かな神の愛に取り巻かれている。そして、わたしたちは神の御手に使われる者となって、この大いなる驚くべき業を行ってきた。
16 だから、わたしたちは誇って喜ぼう。まことに、主を誇って喜ぼう。まことに、わたしたちの喜びは満ちているので、喜びを味わおう。まことに、とこしえに神をほめたたえよう。見よ、主を誇って喜びすぎるということがあり得ようか。まことに、主の大いなる力と、主の憐れみと、人の子らに対する主の寛容について語りすぎるということがあり得ようか。見よ、わたしはあなたがたに言うが、わたしは感じていることの万分の一も言い表せない。
17 神はわたしたちを恐ろしい、罪深い、汚れた状態から救い出してくださったが、神がそのように憐れみ深い御方であられることを、だれが想像できただろうか。
18 見よ、かつてわたしたちは怒って出て行き、ひどい脅迫によって神の教会を滅ぼそうとした。
19 おお、そのときに神は、なぜわたしたちを恐ろしい滅びに引き渡されなかったのだろうか。まことに、なぜわたしたちに罰の剣を下し、わたしたちを永遠の絶望の淵に落とされなかったのだろうか。
20 おお、そのことを考えると、わたしは消え入ってしまいそうである。見よ、神はわたしたちに御自分の正義を行使されることなく、深い憐れみによって、死と不幸のあの永遠の淵からわたしたちを救いに導いてくださった。
21 さて見よ、兄弟たちよ、生まれながらの人でこれらのことを知っている人がいるだろうか。わたしはあなたがたに言う。悔い改めた人以外、これらのことを知っている人はだれもいない。
22 まことに、悔い改めて信仰を働かせ、善い行いをし、絶えず祈り続ける人には、神の奥義を知ることが許され、まことに、まだ明らかにされていないことを明らかにすることが許される。また、この同胞を悔い改めに導く務めがわたしたちに与えられたように、何千もの人々を悔い改めに導く務めがその人に与えられる。
23 さて、兄弟たちよ、わたしたちがゼラヘムラの地に住む同胞に、わたしたちの同胞であるレーマン人に教えを説くためにニーファイの地へ行くと言ったとき、彼らがわたしたちをあざけり笑ったのを覚えているだろうか。
24 彼らはわたしたちに言った。『あなたがたはレーマン人に真理を知らせることができると思っているのか。今見るとおりの強情な民であるレーマン人に、彼らの先祖の言い伝えが正しくないことを納得させることができると思っているのか。彼らは今でも血を流すことを喜びとしており、日々ひどい罪悪に明け暮れ、彼らの生活は初めから背く者の生活だ。』兄弟たち、あなたがたは彼らがこう言ったのを覚えているはずである。
25 また彼らは、『レーマン人に打ち負かされて滅びることのないように、我々は武器を取って、彼らと彼らの罪悪を地から一掃しよう』とも言った。
26 しかし見よ、愛する兄弟たちよ、わたしたちは同胞を滅ぼすためではなく、わずかな人でも救えるのではないかということで荒れ野にやって来た。
27 そして、わたしたちが意気消沈して、まさに引き返そうとしたときに、見よ、主はわたしたちを慰め、『あなたがたの同胞であるレーマン人の中に行き、忍耐して苦難に耐えなさい。そうすれば、あなたがたに成功を得させよう』と言われた。
28 さて見よ、わたしたちはレーマン人の中に来て方々を巡り、様々な苦難に耐え、あらゆる窮乏をしのいできた。まことに、世の人々の憐れみに頼りながら、家々を訪れた。世の人々の憐れみばかりでなく、神の憐れみにも頼ってきた。
29 そして、わたしたちは彼らの家に入って、彼らを教え、また通りでも、丘の上でも教えた。彼らの神殿や会堂にも入って教えた。そして、わたしたちは追い出され、あざけられ、つばきを吐きかけられ、頬を打たれた。また、石を投げつけられ、捕らえられて丈夫な縄で縛られ、牢に入れられた。その後、わたしたちは神の力と知恵によって、再び救い出された。
30 また、わたしたちはあらゆる苦難に耐えてきた。これはすべて、だれか一人でも救う仲立ちになれるようにと行ってきたことであった。わたしたちは、だれかを救う仲立ちになれたら喜びに満たされるだろうと思った。
31 さて見よ、わたしたちは、自分たちの労苦の成果を見て、それを目にすることができる。その成果はわずかだろうか。あなたがたに言う。いや、その成果は多い、と。また、彼らが同胞とわたしたちに示してきた愛から、彼らの誠実さを見ることができる。
32 見よ、彼らは、敵の命であっても、その命を奪うよりはむしろ自分の命を犠牲にする方を選んだ。そして彼らは、同胞を愛していたので、自分たちの武器を地中深く埋めてしまった。
33 さて見よ、わたしはあなたがたに言う。これまで全地でこれほどの深い愛があっただろうか。見よ、あなたがたに言う。いや、ニーファイ人の中にさえなかった、と。
34 見よ、ニーファイ人ならば、同胞に対して武器を取るであろう。殺されるに任せることはないであろう。しかし見よ、これらのレーマン人の何と多くが命を捨てたことか。これらの人々は愛があり、罪を憎んでいたので、自分たちの神のみもとに行ったことをわたしたちは知っている。
35 それでも、喜んでよい理由はないのだろうか。あると、あなたがたに言おう。世界が始まって以来、わたしたちほど喜んでよい、立派な理由を持っている者はいない。わたしは神にあって自分の喜びを誇るほどまでに、今喜びに浸り切っている。神は、一切の権威とあらゆる知恵、あらゆる理解を備えておられる。神はすべてのことを悟っておられる。神は憐れみ深い御方であり、悔い改めて神の御名を信じる人々に救いを与えてくださる。
36 さて、もしこれが誇っていることになると言うのであれば、わたしはこれからもこのように誇ろう。この御方はわたしの命、わたしの光、わたしの喜び、わたしの救いであり、またわたしを永遠の苦悩から贖ってくださる御方である。まことに、イスラエルの木の1枝であって、親木から分けられて異郷でさまよっているこの民を心にかけてくださった神の御名がほめたたえられるように。まことに、異郷で流浪の民となっているわたしたちを心にかけてくださったわたしの神の御名がほめたたえられるように。
37 さて、兄弟たち、神は民がどの地に住んでいようとも、すべての民を心にかけられることが分かる。まことに、神は御自分の民を数えておられ、神の憐れみの心は全地のうえに及んでいる。これがわたしの喜びであり、わたしの深く感謝しているところである。わたしはとこしえに神に感謝をささげよう。アーメン。」
第27章
主はアンモンに、アンタイ・ニーファイ・リーハイの民を安全な地に導くように命じられる。アンモン、アルマに出会い、喜びのあまり力を失う。ニーファイ人、アンタイ・ニーファイ・リーハイの民にジェルションの地を譲り与える。アンタイ・ニーファイ・リーハイの民は、アンモンの民と呼ばれる。紀元前約90年から77年に至る。
01 さて、ニーファイ人に向かって進んだレーマン人は、ニーファイ人を攻めて、彼らを滅ぼそうと何度も戦闘を繰り返した後、彼らを滅ぼそうとしても無駄であることを知って、ニーファイの地へ引き揚げた。
02 そして、アマレカイ人は仲間を失ったことで非常に怒っていたので、ニーファイ人に報復する機会が得られなくなったのを知ると、民を扇動して、同胞であるアンタイ・ニーファイ・リーハイの民に対して怒りを抱かせた。そこで彼らは、再びアンタイ・ニーファイ・リーハイの民を殺し始めた。
03 ところがこの民は、またもや武器を取ることを拒み、相手の思いのままに殺されるに任せた。
04 アンモンと彼の同僚たちは、自分たちが非常に深く愛するとともに、また自分たちを非常に深く愛してくれた民の中でこのような殺害が行われているのを見て、すなわち、アンモンと彼の同僚たちは、永遠の滅びからその民を救うために神より遣わされた天使であるかのような扱いを受けていたので、このようなひどい殺害が行われているのを見て哀れみの情に動かされ、王に言った。
05 「この主の民を集めて、わたしたちの同胞であるニーファイ人のいるゼラヘムラの地へ下って行き、滅ぼされることのないように敵の手から逃れましょう。」
06 しかし、王は彼らに、「見よ、我らはこれまで、ニーファイ人に対して殺人と罪を度々犯してきたので、ニーファイ人は我らを殺すであろう」と答えた。
07 そこでアンモンは、「わたしは行って、主に尋ねましょう。もし主がわたしたちの同胞のところへ行くように言われたら、あなたがたは行かれますか」と尋ねた。
08 すると、王は彼に言った。「そうしよう。主がもし行くように言われるなら、我らは同胞のところへ行こう。そして、これまで彼らに対して度々犯してきた殺人と罪の償いを終えるまで、彼らの奴隷になろう。」
09 しかし、アンモンは王に言った。「わたしたちの同胞の中に奴隷がいることは、わたしの父が制定した法律に反することです。ですから、行って、同胞の憐れみにすがりましょう。」
10 しかし、王は彼に、「主に尋ねてほしい。もし主が行くように言われるなら、我らは行く。そうでなければ、我らはこの地で滅びよう」と言った。
11 そこで、アンモンが行って主に尋ねると、主はアンモンにこう言われた。
12 「この民が滅びないように、この地を立ち去らせなさい。サタンがアマレカイ人の心をしっかりと捕らえているからである。アマレカイ人はレーマン人を扇動して、その同胞に対して怒りを抱かせ、殺させようとしている。それゆえ、あなたがたはこの地を立ち去りなさい。この時代のこの民は幸いである。わたしがこの民を守るからである。」
13 そこで、アンモンは王のもとに行き、主が言われた御言葉をすべて王に告げた。
14 すると彼らは、自分たちの民、すなわち主の民を全員集め、また彼らの家畜の群れもすべて集めて、その地を去り、ニーファイの地とゼラヘムラの地を隔てる荒れ野に入って行った。そして彼らは、ゼラヘムラの地の境の近くにやって来た。
15 そして、アンモンは彼らに言った。「わたしと同僚たちはゼラヘムラの地へ行きます。あなたがたは、わたしたちが戻って来るまでここで待っていてください。あなたがたがその地に入ることをわたしたちの国の者が許すかどうか、彼らの気持ちを探って来ます。」
16 そして、アンモンがその地に向かっていたときに、彼と同僚たちは、前に述べた場所でアルマに出会ったのである。そして見よ、これは喜ばしい出会いであった。
17 アンモンの喜びはたとえようもなく、胸にあふれるほどであった。まことに、彼は力が尽きてしまうほどに神の喜びにのまれてしまった。そして、彼はまたもや地に倒れた。
18 これは非常な喜びではなかっただろうか。見よ、これは心から悔いて謙遜に幸福を求める者でなければ得られない喜びである。
19 同僚たちに出会ったときのアルマの喜びはまことに大きく、また、アロンとオムナー、ヒムナイの喜びも大きかった。しかし見よ、彼らの喜びはその身の力をしのぐほどではなかった。
20 さて、アルマは同僚たちをゼラヘムラの地へ案内して帰り、自分の家に連れて行った。それから彼らは、大さばきつかさのもとに行き、自分たちの同胞であるレーマン人の中にいた間にニーファイの地で自分たちに起こったことを、すべて彼に話した。
21 そこで大さばきつかさは全地に布告を出し、同胞であるアンタイ・ニーファイ・リーハイの民を国に入れることについて民の声を求めた。
22 そして、民の声は次のとおりであった。「見よ、我々は、東の方の海のそばにあり、バウンティフルの地の南方にあって、バウンティフルの地と境を接しているジェルションの地を譲ろう。このジェルションの地を受け継ぎの地として同胞に譲ろう。
23 見よ、我々は、ジェルションの地とニーファイの地の間に軍隊を配備して、ジェルションの地の同胞を守る。彼らが同胞に対して武器を取ることにより罪を犯すことになるのを恐れるからである。彼らがこのことをひどく恐れるのは、彼らがかつて多くの殺人と恐ろしい悪事を行ってきたことについて、つらい悔い改めをしたからである。
24 さて見よ、我々は同胞のためにこのようにして、彼らがジェルションの地を受け継ぐことができるようにしよう。また、彼らが物資の一部を提供して、我々の軍隊を維持できるように援助するという条件の下に、我々は軍隊をもって彼らをその敵から守ろう。」
25 さて、アンモンはこれを聞くと、アンタイ・ニーファイ・リーハイの民が天幕を張っている荒れ野へアルマと一緒に引き返し、これらのことをすべて彼らに知らせた。そしてアルマもまた、自分がアンモンやアロン、そのほかの同僚たちとともに改心したときのことを彼らに話した。
26 さて、アンタイ・ニーファイ・リーハイの民は非常に喜び、ジェルションの地へ下って行って、そこを所有した。また彼らは、ニーファイ人からアンモンの民と呼ばれたので、その後いつまでもその名によって区別された。
27 また彼らは、ニーファイの民の中にあり、神の教会に属する民の中に数えられた。さらに彼らは、神と人々に貢献する熱心さでも秀でていた。彼らはすべてのことについてまったく正直でまっすぐであり、また最後まで確固としてキリストを信じた。
28 そして彼らは、同胞の血を流すことを最も忌まわしいことであると考えていた。そこで彼らは、同胞に対して武器を取るように説かれても決してそれに応じなかった。また彼らは、キリストと復活についての望みと思いがあったので、死を少しも恐ろしいと思わなかった。彼らにとっては、死はすでにそれに打ち勝つキリストの勝利にのまれてしまったのである。
29 したがって彼らは、剣や三日月刀を取って同胞を討つよりも、むしろ同胞が加える最も無残で痛ましい死を受ける方を望んだ。
30 このように、彼らは熱心な愛すべき民であり、主から厚い恵みを受けた民であった。
第28章
レーマン人は激しい戦闘で敗れる。その戦闘で、数万の人々が死ぬ。悪人は無窮の不幸な状態に置かれ、義人は決して終わりのない幸福を得る。紀元前約77年から76年に至る。
01 さて、アンモンの民がジェルションの地に定住し、教会もジェルションの地に設けられ、ニーファイ人の軍隊がジェルションの地の周囲に、まことに、ゼラヘムラの地の周囲の境の全域に配備された後、見よ、レーマン人の軍隊が彼らの同胞を追って荒れ野に進んで来た。
02 このようにして、すさまじい戦闘が始まった。まことに、リーハイがエルサレムを去って以来、この地で人々が一度も経験したことのない規模の戦闘であった。そして、殺され、方々に追い散らされたレーマン人は数万人にも及んだ。
03 また、ニーファイの民にもすさまじい殺戮が及んだが、それでもレーマン人は追い払われ、散らされた。そしてニーファイの民は、再び自分たちの地に帰った。
04 これによって国中至る所に、すなわちニーファイのすべての民の中に大きな嘆きと悲しみの声が起こった。
05 まことに、やもめは夫のことを嘆き、父は息子のことを、娘は兄弟のことを、まことに、兄弟は父のことをそれぞれ嘆いて泣き叫んだ。このようにすべての人の中で、殺された親族のことを嘆く叫び声が聞かれた。
06 さて、これはまことに嘆きに満ちた日であり、まことに、厳粛な時、断食と祈りを重ねた時であった。
07 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第15年が終わる。
08 アンモンと彼の同僚たちがニーファイの地を旅したことと、その地で受けた苦しみ、悲嘆、苦難、計り知れない喜び、同胞がジェルションの地に迎えられて安全に暮らしたことについての話は、以上のとおりである。万人の贖い主である主が、とこしえに彼らを祝福してくださるように。
09 ニーファイ人の中の戦争と争い、およびニーファイ人とレーマン人の間の戦争についての話は以上のとおりである。これで、さばきつかさの統治第15年が終わる。
10 さばきつかさの統治の第1年から第15年までの間に、何千もの人々が殺された。まことに、その間に流血の惨事もあった。
11 そして、何千もの遺体が地中に葬られたが、地の面に積み上げられたまま朽ちている遺体も何千とある。また、身内を失ったことで嘆いている人々も何千人といる。彼らが嘆くのは、主の約束によってその親族が無窮の不幸な状態に置かれることを恐れる理由があるからである。
12 また一方では、親族を失ったことをまことに悲しみながらも、彼らがよみがえって、決して終わることのない幸福な状態で神の右に住むであろうという望みに喜びを感じ、また主の約束によってそれを知ってさえいる人々が何千人もいる。
13 以上のことから、悪魔が人の心を捕らえようとして企てた狡猾な策謀によって生じる、罪と背きと悪魔の力とのために、人々の差異がどれほど大きくなるものであるかが、わたしたちに分かるのである。
14 また以上のことから、主のぶどう園で働く人々が勤勉であるように大いに求められていることも分かる。さらに、悲しみの大きな原因と喜びの大きな原因についても分かる。悲しみは人々の中の死と滅亡のために生じ、喜びは命に至るキリストの光のために生じるのである。
第29章
アルマ、天使のような熱意をもって悔い改めを叫ぶことを望む。主はすべての国民のために教える人々を与えられる。アルマ、主の業を誇り、またアンモンと彼の同僚たちの成功を誇る。紀元前約76年。
01 「おお、わたしが天使であって、わたしの心の願いを遂げることができればよいものを。わたしの心の願いとは、出て行って、神のラッパのように地を震わせる声で語り、すべての民に悔い改めを叫ぶことである。
02 まことに、わたしは雷のような声で、あらゆる人に悔い改めと贖いの計画を告げ知らせ、もはや地の全面に悲しみのないように、悔い改めて神のみもとに来ることを彼らに勧めたい。
03 しかし見よ、わたしはただの人であり、このように願うことさえも罪である。わたしは主から与えられたもので満足すべきだからである。
04 わたしは、公正な神の堅い定めを、わたしの願いによって乱してはならないのである。人が死ぬことを望もうと生きることを望もうと、神が彼らの望むままにされることを知っているからである。まことに、人々が救いを望もうと滅びを望もうと、神は彼らの意のままに、不変の定めを彼らに布告されるということをわたしは知っている。
05 またわたしは、善と悪がすべての人の前にあることも知っている。善悪の分からない人は、罪のない状態にある。しかし、善悪の分かる人には、善を望もうと悪を望もうと、生を望もうと死を望もうと、喜びを望もうと良心のとがめを望もうと、自分の望むままに与えられるのである。
06 さて、わたしはこれらのことを知っていながら、どうして自分の召された務めを果たすこと以上に多くのことを望んでよいだろうか。
07 わたしはどうして、天使になって地の果てに至るすべての人に語ることができればと願ってよいだろうか。
08 見よ、主はすべての国民に、その国民を使い、その国民の言葉を使って主の御言葉を教えることを許されるからである。まことに、主は賢明にも、御自分が彼らにとってふさわしいと思われるすべての事柄を教えることを許される。したがって、賢明にも主は正しく真実なことに応じて勧告されるということが、わたしたちには分かるのである。
09 わたしは主から命じられた事柄を知っており、それに誇りを感じている。わたしは自分自身のことを誇らないで、主から命じられた事柄を誇る。神の御手に使われる者となって幾人かでも悔い改めに導けること、これがわたしの誇りであり、喜びである。
10 見よ、わたしは、多くの同胞が心から悔いて、主なる神のみもとに来るのを見るとき、喜びに満たされる。またそのとき、わたしは主がわたしのために行ってくださったこと、すなわちわたしの祈りを聞き届けてくださったことを思い出す。まことに、わたしはそのときに、主がかつてわたしに憐れみ深い御腕を伸べてくださったことを思い出す。
11 わたしはまた、先祖が囚われの状態にあったことも思い出す。主がわたしの先祖を奴隷の状態から救い出し、そうすることによって御自分の教会を設けられたことを、わたしは確かに知っているからである。まことに、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主なる神は、わたしの先祖を奴隷の状態から救い出してくださったのである。
12 まことにわたしは、先祖が囚われの状態にあったことをいつも思い出す。わたしの先祖をエジプト人の手から救い出してくださったその同じ神が、わたしの先祖を奴隷の状態からも救い出してくださった。
13 まことに、その同じ神がわたしの先祖の中に御自分の教会を設けられた。また、その同じ神が、この民に御言葉を宣べ伝えるために、聖なる召しによってわたしを召し、わたしに大きな成功を得させてくださった。そして、その成功によってわたしは喜びに満たされている。
14 しかしわたしは、自分の成功だけを喜ぶことはしない。ニーファイの地へ行ったわたしの兄弟たちの成功で、わたしはなおさら喜びに満たされている。
15 見よ、彼らは非常によく働き、大きな成果を得た。将来彼らの得る報いは何と大きいことだろう。
16 さて、この兄弟たちの成功を考えると、わたしの喜びは大きくて、まるで自分の霊が肉体を離れるかと思うほどに我を忘れてしまう。
17 わたしの兄弟であるこれらの人々が神の王国で座に着くことを、神がお許しくださり、また彼らの労苦の結ぶ実であるすべての人が、もはや二度と出て行くことなく、とこしえに神をほめたたえることもお許しくださるように。神がわたしの言葉のとおりに、すなわち、わたしがこれまで語ってきたようになることをお許しくださるように。アーメン。」
第30章
反キリストのコリホル、キリストと贖罪と預言の霊をあざける。コリホル、神は存在せず、人の堕落はなく、罪に対する罰はなく、キリストも存在しないと教える。アルマ、将来キリストが来られることと、万物が神の存在を示していることを証する。コリホル、しるしを求め、物が言えなくなる。悪魔が天使のようにコリホルに現れ、語ることを彼に教えていた。コリホル、踏みつけられて死ぬ。紀元前約76年から74年に至る。
01 さて見よ、アンモンの民がジェルションの地に定住した後、またレーマン人がその地から追い払われ、レーマン人の死体がその地の民によって葬られた後、
02 レーマン人の死者はおびただしい数であったので数えられることなく、ニーファイ人の死者も数えられなかったが、その地の民が彼らの死者を葬った後、そして断食と喪と祈りの日々が終わった後、(ニーファイの民のさばきつかさの統治第16年には)全地に平和が続くようになった。
03 そして民は、主の戒めを守るように努め、またモーセの律法に従って神の儀式を厳密に守った。彼らはモーセの律法が成就するまで、その律法を守るように教えられていたからである。
04 このように、ニーファイの民のさばきつかさの統治第16年には、1年間、国民の間にまったく不和がなかった。
05 そして、さばきつかさの統治第17年の初めも、引き続き平和であった。
06 ところが、第17年の末に、ゼラヘムラの地に一人の男がやって来た。その男は反キリストであった。彼は預言者たちがキリストの来臨について語った預言に反対して、民に教えを説き始めた。
07 このときには、人の信条を禁止する法律はなかった。人々を不平等な立場に置く法律があることは、まったく神の戒めに反していたからである。
08 聖文には、「あなたがたの仕える者を、今日、選びなさい」とある。
09 そこで、もし人が神に仕えたいと思うならば、神に仕える特権があった。いや、その人が神を信じるならば、神に仕える特権があった。しかし、たとえ人が神を信じなくても、その人を罰する法律はなかった。
10 しかし、人殺しをすれば、その人は死刑に処せられた。また、略奪する者も罰せられ、盗む者も罰せられ、姦淫を行う者も罰せられた。まことに、すべてこのような悪事を行う者は罰せられた。
11 人々は罪科に応じて裁かれるという法律があったからである。にもかかわらず、人の信教に反対する法律はなかった。したがって、人は自分の行った犯罪についてだけ罰せられたので、すべての人が平等な立場にあった。
12 そして、名前をコリホルというこの反キリストは、(法律は彼をまったく拘束できなかったので)キリストはいないと民に教えを説き始めた。そして、彼は次のように述べた。
13 「おお、愚かでむなしい希望の下に縛られている人々よ、あなたがたはどうしてこのような愚かなことに束縛されているのか。あなたがたはどうしてキリストを待ち望んでいるのか。だれも将来起こることを知ることはできない。
14 見よ、あなたがたが預言と呼び、聖なる預言者から伝えられたと言っているこれらのことは、見よ、あなたがたの先祖の愚かな言い伝えである。
15 あなたがたはどのようにしてそれが確かであると分かるのか。見よ、あなたがたはまだ見ていない物事を知ることはできない。だから、将来キリストが現れるということを前もって知ることはできないのである。
16 あなたがたは将来を見通して、自分たちの罪が赦されるのが分かると言う。しかし見よ、それは精神がおかしくなっている結果である。このような精神の錯乱は、実際にはないことを信じるように惑わす、あなたがたの先祖の言い伝えのために生じたものである。」
17 コリホルはこのようなことをほかにも多く民に語り、人々の罪のために行われる贖罪などあり得ないこと、人は皆、この世の生涯を善く暮らすも悪く暮らすも、その人の対処の仕方次第であるから、人は皆自分の素質に応じて栄え、自分の力に応じて勝利を得ること、また人がすることはどんなことも決して罪にならないことを民に告げた。
18 彼は民にこのように説いて、多くの人の心を惑わし、平然と悪事を犯させ、まことに、多くの男女を惑わしてみだらな行いをさせた。そして、人が死ねばそれで終わりである、と民に語った。
19 またこの男は、かつてレーマン人であったアンモンの民の中でこのことを教えようとして、ジェルションの地へも行った。
20 しかし見よ、アンモンの民は多くのニーファイ人よりも賢明であった。彼らはコリホルを捕らえて縛り、その民の大祭司であるアンモンの前に連れて行った。
21 そこでアンモンは、彼をその地から連れ出させた。そこで彼はギデオンの地へ行き、その地の民にも教えを説き始めた。しかし、ここでもあまり成果は上がらなかった。彼は捕らえられて縛られ、その地の大祭司と大さばきつかさの前に連れて行かれたからである。
22 そこで、大祭司はコリホルに、「なぜあなたは方々歩き回って主の道を曲げようとしているのか。なぜキリストは現れるはずがないとこの民に教えて、彼らの喜びを妨げるのか。なぜ聖なる預言者たちのすべての預言に逆らって語るのか」と尋ねた。
23 この大祭司の名はギドーナであった。コリホルはギドーナに答えた。「その訳は、わたしがあなたがたの先祖の愚かな言い伝えをこの民に教えていないからであり、また昔の祭司たちによって設けられた愚かな儀式と勤めに自分自身を縛りつけるように、この民に教えていないからである。昔の祭司たちは民を支配する権力と権能を奪い取り、民がその頭を上げることなくあなたの言葉に従うようにするために、民を無知の中にとどめておこうとして、それらの儀式と勤めを設けたのだ。
24 あなたがたは、この民は自由の民であると言う。見よ、わたしに言わせれば、この民は奴隷の状態にある。あなたがたは昔の預言は真実であると言う。見よ、それらが真実であることはあなたがたには分からない、とわたしは言おう。
25 あなたがたは、この民は親の背きのために罪のある堕落した民になっていると言う。見よ、子は親のために罪を負わない、とわたしは言おう。
26 またあなたがたは、将来キリストが来るとも言っている。しかし見よ、将来キリストが来ることはあなたがたには決して分からない、とわたしは言う。あなたがたはまた、キリストが世の罪のために殺されるとも言っている。
27 このようにしてあなたがたは、先祖の愚かな言い伝えによって、あなたがたの望むままにこの民を惑わしている。そしてあなたがたは、この民の労苦で飽きるほどに食べようと、まるで奴隷でもあるかのように民を抑圧している。そのため、民はあえて勇気を奮って頭を上げようとせず、またあえて自分たちの権利と特権を享受しようともしない。
28 まことにこの民は、祭司たちを怒らせるのを恐れて、自分自身のものもあえて使おうとしない。この祭司たちは自分たちの望むままに民にくびきをかけ、また自分たちの言い伝えと幻想と気まぐれと空想と偽りの奥義によって、もし民が祭司たちの言葉のとおりに行わなければ、民は神と呼ばれる未知の存在者を怒らせることになると民に信じ込ませた。しかし、彼らの言う神は、いまだかつて人が見たこともなく知ってもおらず、過去にも現在にも未来にも決して存在しない者である。」
29 さて、大祭司と大さばきつかさは、コリホルの心がかたくなであるのを見ると、また彼が神さえもののしろうとするのを見ると、彼の言葉にまったく応じることなく、彼を縛らせて役人の手に引き渡し、ゼラヘムラの地へ送った。それは、彼をアルマと全地の総督である大さばきつかさの前に引き出すためであった。
30 さてコリホルは、アルマと大さばきつかさの前に引き出されても、ギデオンの地で語ったように語り、不敬な言葉を吐き続けた。
31 また彼は、アルマの前で大言壮語し、祭司たちと教師たちをののしり、彼らは民の労苦によって飽きるほど食べるために先祖の愚かな言い伝えで民を惑わしていると言って彼らを非難した。
32 そこで、アルマは彼に言った。「あなたは我々が民の労苦で飽きるほど食べるようなことはしていないことを知っている。見よ、わたしは、民に神の御言葉を告げ知らせるために何度も国の方々を旅したが、さばきつかさの統治の初めから今に至るまで、自分の手で働いて生活の糧を得てきた。
33 またわたしは、教会で多くの務めを果たしてきたが、これまで自分の働きに対して1セナインも報酬を受けたことはなかった。わたしの同胞も、さばきつかさの職を務める者のほかは皆そうである。そして、さばきつかさの職にある者も、法律に定められたとおり、務めた時間の分の報酬を受けるだけである。
34 では、もし教会での働きに対して何も報酬を受けないとすれば、我々は、真理を告げ知らせて同胞の喜ぶのを見て喜びとするほかに、どのような得があって教会で働くのであろうか。
35 また、あなた自身、我々が何の報酬も受けていないことを知っているのに、どうして我々が利を得るためにこの民に教えを説いていると言うのか。また、あなたは、この民の心の中にこのような喜びが満ちているのは、我々がこの民を欺いているためだとでも思っているのか。」
36 するとコリホルはアルマに、「そのとおり」と答えた。
37 そこで、アルマは彼に、「あなたは神がましますことを信じるか」と尋ねた。
38 すると彼は、「いや」と答えた。
39 また、アルマは彼に言った。「あなたは神がましますことをまたもや否定し、キリストも否定するのか。見よ、あなたに言う。わたしは神のましますことと、将来キリストが来られることを知っている。
40 あなたは何の証拠があって神は実在せず、またキリストは来られないと言うのか。あなたの言葉のほかには何一つ証拠がないと、わたしはあなたに告げる。
41 しかし見よ、わたしはすべての事物をもって、これらのことが真実であると証する。また、これらのことが真実であることを証するすべての事物があなたにもあるのである。それでもあなたは、これらのことを否定するつもりか。あなたはこれらのことが真実であることを信じるか。
42 見よ、わたしは、あなたが信じていることを知っている。ところがあなたは偽りを言う霊に取りつかれている。あなたが自分に神の御霊が宿らないように遠ざけてしまったので、悪魔があなたを支配する力を持ったのである。そして、悪魔は神の子たちを滅ぼすために様々な策略を働かせ、あなたを方々に行かせるのである。」
43 すると、コリホルはアルマに、「もしあなたが、神のいることを確信させるしるしをわたしに見せ、まことに、神に力のあることを示してくれるなら、あなたの言葉が真実であることを納得するだろう」と言った。
44 しかし、アルマは彼に言った。「あなたはすでに数々のしるしを十分に持っている。あなたは神を試みようとするのか。あなたの同胞であるこのすべての人の証と、すべての聖なる預言者たちの証があるのに、あなたは『しるしを見せてくれ』と言うのか。あなたの前に聖文が置いてある。まことに、万物は神がましますことを示している。まことに、大地も、大地の面にある万物も、大地の運動も、また各々整然と運行しているすべての惑星も、それらのすべてが至高全権の創造主がましますことを証している。
45 それでも、あなたは方々を歩き回ってこの民の心を惑わし、神は実在しないと彼らに証するつもりか。また、あなたはそれでも、このように証するすべてのものに逆らって否定するつもりか。」するとコリホルは、「そのとおり。しるしを見せてくれないかぎり、わたしは否定する」と答えた。
46 そこでアルマは彼に言った。「まことに、あなたの心がかたくなであって、なおも真理の霊に逆らって霊の滅びを招こうとしていることを、見よ、わたしは嘆かわしく思う。
47 しかし見よ、あなたが仲立ちになって、あなたの偽りとへつらいの言葉により多くの人を滅びに至らせるよりは、むしろあなた自身が滅びる方がよい。したがって、もしあなたがもう一度否定するならば、まことに神はあなたを打たれるであろう。あなたは物が言えなくなり、二度と口を開くことができず、もはやこの民を欺くことができなくなるであろう。」
48 ところが、コリホルはアルマに、「わたしは神の存在を否定はしないが、神がいるとは信じない。だから、神がいることはあなたたちには分からないと言っているのだ。しるしを見せてくれなければ、わたしは信じない」と言った。
49 そこで、アルマは彼に、「あなたにしるしを示そう。あなたはわたしの言うとおり物が言えなくなるというのがそれである。わたしは神の御名によって言う。あなたは物が言えなくなり、今後二度と口を利くことができないであろう」と言った。
50 アルマがこの言葉を言い終えると、アルマの言葉のように、コリホルは物が言えなくなり、語ることができなくなった。
51 さて、大さばきつかさはこれを見ると、手を差し伸べてコリホルに書き示し、「あなたは神の力を認めるか。あなたはだれにしるしを示すようにアルマに求めたのか。あなたにしるしを示すために、彼がほかの人々を苦しめることを願ったか。見よ、彼はもうすでにあなたにしるしを示した。それでもなおあなたは反論するか」と告げた。
52 するとコリホルも、手を差し伸べて書き示し、言った。「わたしは今、話すことができないので、物が言えなくなったことを認めます。また、神の力によるのでなければ、わたしにこのようなことが決して起きないことも、わたしは知っています。また、わたしは神がましますことを前から知っていました。
53 しかし見よ、悪魔がわたしを欺いたのです。悪魔は天使の姿でわたしに現れて、『この民は皆、未知の神を求めて迷っているので、行って改心させよ』と言いました。また悪魔はわたしに、『神はいない』と言い、わたしが言うべきことも教えてくれました。そこで、わたしは悪魔の言葉を教えてきました。わたしは、悪魔の言葉が肉の思いに快いので、それを教えてきたのです。また、わたしはそれを教えてついに大きな成功を収めたので、自分でもそれが真実だとまったく信じるようになりました。このようなわけで、わたしは真理に逆らい、とうとうこの大きなのろいを招いてしまいました。」
54 さて、コリホルはこのように言うと、そののろいが取り去られるように神に祈ってほしいとアルマに懇願した。
55 しかし、アルマは彼に、「こののろいがあなたから取り去られると、あなたはまた、この民の心を惑わすようになるであろう。だから、主が望まれるとおりになるがよい」と言った。
56 そして、そののろいはコリホルから取り去られなかった。そして、彼は追い出され、食べ物を請うて家々を巡るようになった。
57 一方、コリホルの身に起こったことは、すぐ全地に告げ知らされた。まことに、大さばきつかさが国のすべての人に布告を出し、コリホルの言葉を信じた人々に、同じ裁きを受けることのないように速やかに悔い改めなければならないと告げたのである。
58 そこで彼らは皆、コリホルの悪事を認め、再び主に帰依するようになった。そして、これによってコリホルに倣った罪悪は後を絶った。コリホルは家々を巡り、食べ物を請うて命をつないだ。
59 さて、ニーファイ人から分かれ、ゾーラムという名の男に率いられて自分たちをゾーラム人と呼ぶようになった民があったが、コリホルはその民の中を歩き回っていたときに、見よ、突き倒されて踏みつけられ、とうとう死んでしまった。
60 このことから、主の道を曲げる者の末路が分かる。また、悪魔は終わりの日には自分の子らを助けようとせず、速やかに地獄に引きずり込むということも、わたしたちに分かるのである。
【動画】コリホル
第31章
アルマ、神の教えに背いているゾーラム人を改心させるために、先頭に立って伝道の業に従事する。ゾーラム人、キリストを否定し、選民についての間違った考えを信じ、決まり文句の祈りで礼拝する。宣教師たち、聖なる御霊に満たされる。彼らの苦難はキリストの喜びにのまれてしまう。紀元前約74年。
01 さて、コリホルの死後、アルマは、ゾーラム人が主の道を曲げており、また彼らの指導者であるゾーラムが人々の心を迷わせて、物の言えない偶像を拝ませているという知らせを受けたので、その民の罪悪のために再び心を痛めた。
02 自分の民の中に罪悪があるのを知ることは、アルマにとって深い嘆きの種であったからである。したがって、ゾーラム人がニーファイ人から別れたことで、彼は心に非常な悲しみを覚えた。
03 ところで、ゾーラム人は彼らがアンテオヌムと名付けた地に集まっていた。その地はゼラヘムラの地の東にあり、ほとんど海岸に接しており、ジェルションの地の南にあって、南方の荒れ野にも接していた。その南方の荒れ野にはレーマン人が大勢いた。
04 そこでニーファイ人は、ゾーラム人がレーマン人と行き来し、そのためにニーファイ人の側に大きな損害が出るのではないかとひどく恐れた。
05 ところで、御言葉を説き教えることは民に正しいことを行わせるのに大きな効果があり、まことにそれは、剣やそのほか、これまで民に起こったどのようなことよりも民の心に力強い影響を及ぼしたので、アルマはこの度も神の言葉の力を使うのが望ましいと思った。
06 それでアルマは、アンモンとアロンとオムナーを連れて出かけた。アルマはヒムナイをゼラヘムラの教会に残して、先の3人とミレクにいたアミュレクとゼーズロム、および自分の二人の息子を連れて行ったのである。
07 このとき、アルマは長男を連れて行かなかった。その長男の名はヒラマンという。また、彼が連れて行った息子たちの名は、シブロンとコリアントンである。以上が、ゾーラム人に御言葉を宣べ伝えるために、アルマと一緒にゾーラム人の中に出かけて行った人々の名である。
08 さて、ゾーラム人はニーファイ人から離反した者たちであったので、彼らは以前に御言葉を聞いていた。
09 しかし彼らは、モーセの律法に従って神の戒めと神の掟を守ろうと努めなかったので、大きな過ちに陥っていた。
10 また彼らは、誘惑に陥らないために神への祈りと嘆願を日々続けるようにという教会の決まりを守ろうとしなかった。
11 要するに、彼らは非常に多くの点で主の道を曲げていた。それでアルマと彼の同僚たちは、彼らに御言葉を伝えようとしてその地に入って行ったのである。
12 さて、彼らがその地に入ってみると、見よ、驚いたことに、ゾーラム人は会堂を幾つも建てており、1週のうちの1日を主の日と呼んで、その日に集まることにしていた。そして彼らは、アルマと彼の同僚たちがまだ一度も見たことのない方法で礼拝していた。
13 彼らは会堂の中央に一つの場所、すなわち立ち台を設けていた。それは人の背丈よりも高く、その上の部分は人が一人しか立てない広さであった。
14 そして、礼拝したいと思う者はだれでも、進み出てその台の上に立ち、両手を天に向けて伸ばし、大声で次のように叫ばなければならなかった。
15 「聖なる、聖なる神よ、わたしたちはあなたが神でましますことを信じています。あなたが聖なる御方であり、あなたが過去に霊であり、現在も霊であり、将来もとこしえに霊であられることを、わたしたちは信じています。
16 聖なる神よ、わたしたちは、あなたがわたしたちを同胞から分けられたことを信じています。わたしたちは、同胞の先祖が愚かにも同胞に伝え、彼らが今もなお受け入れている言い伝えを信じていません。しかし、あなたがわたしたちをあなたの聖なる子となるように選ばれたこと、またわたしたちにキリストが現れることはないと知らせてくださったことを、わたしたちは信じています。
17 またあなたは、昨日も、今日も、とこしえに変わらない御方でまします。あなたはわたしたちを選んで、わたしたちが将来救われるようにしてくださいました。一方、わたしたちの周りの者は皆、あなたの怒りによって地獄に投げ込まれるように定められています。おお、神よ、わたしたちを聖い者としてくださったことを、わたしたちは感謝します。また、わたしたちを選んで、同胞の愚かな言い伝えに惑わされることのないようにしてくださったことを感謝します。その愚かな言い伝えは彼らを束縛してキリストを信じさせ、彼らの心を神でましますあなたから遠く引き離しています。
18 おお、神よ、今一度、わたしたちが選ばれた聖なる民であることをあなたに感謝します。アーメン。」
19 さて、アルマと同僚たちと彼の息子たちは、この祈りを聞いて非常に驚いた。
20 見よ、すべての男が進み出て、この同じ祈りをささげたからである。
21 ところで、ゾーラム人はその場所をラミアンプトムと名付けた。それは聖台という意味である。
22 さて、彼らは一人残らずこの台からまったく同じ祈りを神にささげ、自分たちが神から選ばれていること、また神が自分たちを同胞の言い伝えに惑わされないようにされたこと、また心を奪われて、自分たちのまったく知らない将来のことを信じるように仕向けられることのなかったことを、自分たちの神に感謝した。
23 人々は皆この方法で感謝をささげてから各々の家に帰ったが、その後は、再びその方法で感謝をささげるためにその聖台に集まるまで、神のことをまったく口にしなかった。
24 さて、アルマはこれを見ると、心が痛んだ。彼らが邪悪でよこしまな民であるのを見たからである。まことに彼らが、金銀そのほかあらゆる立派な品々に執着しているのを見たからである。
25 アルマはまた、彼らが心を高ぶらせて、非常に誇るようになり、高慢になっているのも見た。
26 そこでアルマは、天に向かって声を上げ、叫び求めた。「おお、主よ、あなたは僕たちがいつまで肉にあってこの地上で暮らし、人の子らの中でこのようなひどい悪事を見るのをそのままにしておかれるのでしょうか。
27 まことに、おお、神よ、この民はあなたに叫び求めていますが、その心は高慢にのまれています。神よ、まことに彼らは口ではあなたに叫び求めながら、俗世のむなしいものをもって、甚だしく誇り高ぶっています。
28 まことに、おお、わたしの神よ、彼らの高価な衣服と小環、腕輪、金の装身具、そのほか装飾に用いるすべての高価な品々を御覧ください。まことに、彼らはそれらのものに執着していながら、あなたに叫び求め、『神よ、ほかの人々は滅びますが、わたしたちはあなたにとって選ばれた民であることを、あなたに感謝します』と言っています。
29 また彼らは、キリストは現れることはないと、あなたが彼らに示されたと言っています。
30 おお、主なる神よ、いつまでこのような悪事と不信仰がこの民の中にあるのをお許しになるのでしょうか。主よ、わたしが自分の弱さに耐えられるように、どうかわたしに力をお与えください。わたしは弱い者であり、この民の中のこのような悪がわたしを苦しめます。
31 おお、主よ、わたしの心は非常に嘆いています。どうか、キリストにあってわたしを慰めてください。おお、主よ、この民の罪悪のためにこれから先わたしに降りかかるこれらの苦難を、忍耐をもって乗り切ることができるように、どうか力を得させてください。
32 おお、主よ、どうかわたしを慰め、わたしに成功を収めさせてください。また、わたしとともにいる同僚のアンモンとアロン、オムナー、アミュレク、ゼーズロム、および二人の息子たちにも成功を収めさせてください。おお、主よ、これらの人々をすべて慰めてください。どうかキリストにあって彼らを慰めてください。
33 民の罪悪のために彼らに降りかかる苦難に耐えることができるように、どうか彼らに力を得させてください。
34 おお、主よ、どうかわたしたちがこの民をキリストにあって再びあなたのみもとに連れ戻すのに、成功を収められるようにしてください。
35 まことに、おお、主よ、彼らは貴い人々であり、その多くはわたしたちの同胞です。ですから、主よ、わたしたちが同胞であるこれらの人々を再びあなたのみもとに連れ戻すことができるように、わたしたちに力と知恵をお与えください。」
36 さて、アルマはこれらの言葉を述べ終えると、ともにいたすべての人に手を置いた。すると見よ、アルマが手を置いたので、彼らは聖なる御霊に満たされた。
37 その後、彼らはそれぞれ分かれて出かけたが、何を食べようか、何を飲もうか、何を着ようかなどと思い煩うことはまったくなかった。
38 彼らが飢えることも渇くこともないように、主が彼らのために備えをされたのである。また主は、彼らに力を与え、キリストの喜びにのまれてしまう苦難のほか、彼らがどのような苦難も受けることがないようにされた。これはアルマの祈りによるものであった。彼が信仰をもって祈ったので、このようになったのである。
【動画】アルマとアミュレク、イエス・キリストの信仰について教える
【動画】ゾーラム人とラミアンプトム
第32章
アルマ、多くの苦しみを受けて謙遜になった貧しい人々を教える。信仰とはまだ見ていない真実のことを待ち望むことである。アルマ、天使たちが男も女も、子供たちをも教え導くことを証する。アルマ、御言葉を種にたとえる。それは植えて養いを与えなければならない。そうすればそれは生長して木になり、永遠の命の実を得ることができる。紀元前約74年。
01 さて、アルマと同僚たちは出て行って、ゾーラム人の会堂や彼らの家に入り、人々に神の言葉を宣べ伝え始めた。彼らはまた、通りでも御言葉を宣べ伝えた。
02 そして、人々の中で多くの労苦を重ねた末、彼らは貧しい階層の人々の中で成功を収め始めた。見よ、これらの人々は、衣服が粗末であるために会堂から追い出されていたからである。
03 これらの人々は衣服が粗末なため汚れた者と見なされ、会堂に入って神を礼拝することを許されていなかった。彼らは貧しく、同胞からかすのように見なされていたので、この世のものに関して貧しく、心が謙遜であった。
04 さて、アルマがオナイダの丘で人々に教え、語っていたときに、今述べた人々、すなわちこの世のものに関して貧しいために心が謙遜になっている人々が、大きな群れを成してアルマのもとにやって来た。
05 そして、彼らはアルマのもとにやって来ると、その群衆の中心になっている一人の人がアルマに言った。「まことに、ここにいるわたしの仲間は、どうすればよいのでしょうか。この人々は、貧乏であるためにすべての人から見下されています。とりわけ祭司たちに嫌われています。祭司たちは、わたしたちが自分の手を使って大いに働いて建てた会堂から、わたしたちを追い出しました。わたしたちがひどく貧乏だからということで、わたしたちを追い出したのです。わたしたちには神を礼拝する場所がどこにもありません。どうすればよいでしょうか。」
06 アルマはこれを聞くと、振り返って彼の方に面と向かい、非常に喜びながらじっと彼を見詰めた。彼らが多くの苦しみを受けて心がへりくだっており、御言葉を聞く用意のできていることが、アルマに分かったからである。
07 そこでアルマは、もうほかの群衆にそれ以上語るのをやめ、しかし、目の前にいる、心から悔い改めている彼らに向かって手を伸ばして大声で言った。
08 「わたしの見るところ、今あなたがたの心はへりくだっている。もしそうならば、あなたがたは幸いである。
09 見よ、あなたがたの仲間の一人は、『どうすればよいでしょうか。わたしたちは会堂から追い出され、自分たちの神を礼拝できません』と言った。
10 見よ、あなたがたに尋ねたい。あなたがたは自分たちの会堂でしか神を礼拝することができないと思っているのか。
11 そして、さらに尋ねたい。あなたがたは週に一度しか神を礼拝してはならないと思っているのか。
12 あなたがたに言う。会堂から追い出されていることは、あなたがたが謙遜になれるので、また知恵を得られるのでよいことである。あなたがたが知恵を得ることは必要だからである。あなたがたが今へりくだった心でいるのは、追い出されているためであり、また非常に貧しいために同胞から見下されているためである。あなたがたは、やむを得ずへりくだっている。
13 さて、やむを得ずへりくだっているので、あなたがたは幸いである。人は時々、やむを得ずへりくだっていても悔い改めようとするからである。そして、悔い改める人はだれでも、必ず憐れみを受ける。そして、憐れみを受けて最後まで堪え忍ぶ人は救われる。
14 わたしは、あなたがたがやむを得ずへりくだっているので幸いであると言ったが、御言葉のために自ら進んで心からへりくだる人々は、なおさら幸いであると思わないか。
15 まことに、自ら進んで心からへりくだり、罪を悔い改め、最後まで堪え忍ぶ人は祝福を受ける。まことにこのような人は、非常に貧しいためにやむを得ずへりくだっている人々よりも、なおさら祝福を受ける。
16 したがって、やむを得ずへりくだるのではなく、自らへりくだる人々は幸いである。いや、心をかたくなにすることなく、また御言葉を知るように仕向けられたり、知るように強いられたりして初めて信じるというのではなく、進んで神の御言葉を信じ、バプテスマを受ける人は幸いである。
17 まことに、もし天からしるしを見せてくれれば、それが確かなことが分かるから信じようと言う人々が大勢いる。
18 さて、わたしは尋ねる。これは信仰であろうか。見よ、わたしはそうではないと答える。もし人がある物事を知っているならば、それを信じる理由はない。すでに知っているからである。
19 さて、神の御心を知っていながらそれを行わない人は、ただ信じているだけで、あるいは信じる理由があるだけで背いてしまうよりも、どれほどひどいのろいを受けることであろう。
20 このことについて、あなたがたは判断しなければならない。見よ、わたしはあなたがたに言う。両者はそれぞれ同様に裁かれ、人は皆、各々の行いに応じて報われるのである。
21 さて、信仰についてわたしがすでに語ったように、信仰とは物事を完全に知ることではない。したがって、もし信仰があれば、あなたがたはまだ見ていない真実のことを待ち望むのである。
22 さて見よ、あなたがたに言う。このことを覚えておいてほしい。それは、神は御自分の御名を信じるすべての人に憐れみをかけられるということである。したがって、神はまず初めに、あなたがたが、まことに神の御言葉を信じることを望んでおられる。
23 さて、神は天使によって、人々に、まことに男ばかりでなく女にも御自分の御言葉を伝えられる。それだけではない。知者や学者を辱める御言葉が、これまで何度も幼い子供に与えられてきた。
24 さて、わたしの愛する同胞よ、あなたがたは今、苦しめられ、追い出されているので、どうすればよいかわたしから聞いて知りたいと望んでいる。ところで、わたしは事実によってだけあなたがたのことを判断しようとしていると思われたくない。
25 つまり、あなたがた全員がやむを得ずへりくだっているのではないということである。どのような境遇にあっても進んでへりくだろうとする人々が、あなたがたの中に何人もいることを、わたしは確かに信じているからである。
26 さて、信仰についてわたしが言ったように、信仰とは完全に知ることではない。わたしの言葉についてもそのとおりである。信仰が完全に知ることではないのと同じように、あなたがたはわたしの言葉が確かであることも最初から完全に知ることはできない。
27 しかし見よ、もしあなたがたが目を覚まし、能力を尽くしてわたしの言葉を試し、ごくわずかな信仰でも働かせようとするならば、たとえ信じようとする望みを持つだけでもよい。わたしの言葉の一部分でも受け入れることができるほどの信仰になるまで、その望みを育ててゆけ。
28 さて、御言葉を一つの種にたとえてみよう。さて、もしあなたがたが心の中に場所を設けて、種をそこに植えるようにするならば、見よ、それがほんとうの種、すなわち良い種であり、またあなたがたが主の御霊に逆らおうとする不信仰によってそれを捨てるようなことがなければ、見よ、その種はあなたがたの心の中でふくらみ始めるであろう。そして、あなたがたは種がふくらみつつあるのを感じると、心の中で次のように思うであろう。『これは良い種、すなわち御言葉は良いものに違いない。これはわたしの心を広げ、わたしの理解力に光を注ぎ、まことに、それはわたしに良い気持ちを与え始めている。』
29 さて見よ、これによってあなたがたの信仰は増さないであろうか。わたしはあなたがたに言う。信仰は増す、と。にもかかわらず、まだ完全に知るというところまでは行かない。
30 しかし見よ、その種がふくらんで芽を出し、生長し始めると、あなたがたはその種を良いものであると思うに違いない。見よ、それがふくらんで芽を出し、生長しているからである。さて見よ、これはあなたがたの信仰を強めないであろうか。まことに、それはあなたがたの信仰を強めるであろう。あなたがたは、『これは良い種であることが分かる』と言う。見よ、それが芽を出し、生長し始めているからである。
31 ところで見よ、あなたがたはこれが良い種であると確信しているであろうか。確信していると、わたしはあなたがたに言う。種はその種独自の形を生じるからである。
32 したがって、もし種が芽を出して生長するならば、それは良い種である。しかし、芽を出さなければ、見よ、それは良い種ではないので捨てられる。
33 さて見よ、あなたがたはすでに試して種を植え、その種がふくらんで芽を出し、生長し始めているので、その種が良いものであることを知るに違いない。
34 さて見よ、あなたがたの知識は完全であろうか。そのとおり、あなたがたの知識はそのことに関しては完全であるが、あなたがたの信仰は眠ったままである。この理由はあなたがたが知っている。というのは、あなたがたは、御言葉があなたがたの心を高めたのを知っており、またあなたがたは、それがすでに芽を出し、あなたがたの理解力に光が注がれ、あなたがたの心が広がり始めているのを知っているからである。
35 おお、それならば、このことはほんとうではないだろうか。わたしはあなたがたに言う。確かにほんとうである、と。なぜなら、それは光だからである。光は何であろうと善である。というのは、そのように見分けがつくからであり、こうしてあなたがたは、それが善であることを必ず知るようになる。さて見よ、この光を経験した後、あなたがたの知識は完全であろうか。
36 見よ、そうでないとあなたがたに言おう。あなたがたは自分の信仰を捨ててはならない。あなたがたは、種が良いものかどうかを知ろうとして、ただ信仰を働かせてその種を植えてみただけだからである。
37 そして見よ、木が生長し始めると、あなたがたは、『この木が根付き、生長し、わたしたちのために実を結ぶように、十分に注意して養いを与えよう』と言うであろう。さて見よ、あなたがたが十分に注意して養いを与えれば、それは根付き、生長し、実を結ぶであろう。
38 しかし、もしあなたがたがその木に構わず、養い育てることに心を配らなければ、見よ、それが根付くことはないであろう。そして、太陽の暑さが及んでその木を熱すると、その木はまったく根がないので枯れてしまうであろう。そこであなたがたは、その木を抜いて捨てる。
39 さてこれは、種が良くなかったからでもなければ、実が好ましいものでなかったからでもない。ただ、あなたがたの土地がやせているためである。あなたがたがその木に養いを与えようとしないので、実を得ることができないのである。
40 このように、もし信仰の目をもって実を期待しながら御言葉を養おうとしなければ、あなたがたは決して命の木の実を得ることができない。
41 しかし、あなたがたが御言葉に養いを与えようとすれば、つまり、その木が生長を始めるときに、非常な熱意と、忍耐を伴う信仰を働かせてその実を期待しながら養いを与えようとすれば、それは根付くであろう。そして見よ、それは生長して永遠の命をもたらす木になるであろう。
42 あなたがたは、御言葉が自分の中に根付くように、熱意と信仰と忍耐をもってそれを養うので、見よ、やがてその実を得るであろう。その実は最も価値があり、どんな甘いものよりも甘く、どんな白いものよりも白く、どんな清いものよりも清い。また、あなたがたは満ち足りるまでその実を食べて、もう飢えることも、渇くこともないであろう。
43 それで、わたしの同胞よ、そのときにあなたがたは、その木があなたがたのために実を結ぶのを待ちながら示した、あなたがたの信仰と熱意と忍耐と寛容の報いを刈り入れるのである。」
【動画】信仰と神の言葉について教えるアルマ
第33章
ゼノス、人はどんな場所でも祈り、礼拝すべきであることと、御子のゆえに裁きが遠ざけられることを教える。ゼノク、御子のゆえに憐れみがかけられることを教える。モーセが荒れ野で神の御子の予型を掲げたこと。紀元前約74年。
01 アルマがこれらの言葉を語り終えると、彼らはアルマのもとに人をやって、彼が述べたその実を得るためには、唯一の神を信じなければならないのかどうか、その種、すなわち心の中に植えなければならないとアルマが述べたその御言葉をどのようにして植えればよいのか、すなわち、どのような方法で信仰を働かせ始めればよいのかを知りたいと伝えさせた。
02 そこで、アルマは彼らに言った。「見よ、あなたがたは、自分たちの会堂から追い出されているので、神を礼拝できないと言っている。しかし見よ、わたしはあなたがたに言う。もし神を礼拝できないと思っているのであれば、あなたがたはひどく誤解している。聖文を調べてみるべきであろう。もしあなたがたが聖文からそのことを教わったと思っているのであれば、あなたがたは聖文を理解していない。
03 あなたがたは、昔の預言者ゼノスが祈りについて、すなわち礼拝について述べたものを以前に読んだのを覚えているだろうか。
04 ゼノスはこう述べている。『おお、神よ、あなたは憐れみ深い御方です。わたしが荒れ野にいたときでさえ、わたしの祈りを聞き届けてくださいました。またわたしが敵について祈ったときも、憐れみ深くあって、彼らがわたしに心を向けるようにしてくださいました。
05 まことに、おお、神よ、わたしが畑で叫び求めたとき、わたしを憐れんでくださいました。あなたに叫び求めたとき、わたしの祈りを聞き届けてくださいました。
06 さらにまた、おお、神よ、わたしが家に向かったときも、わたしの祈りを聞き届けてくださいました。
07 また、おお、主よ、わたしが自分の部屋に戻ってあなたに祈ったとき、わたしの祈りを聞き届けてくださいました。
08 まことに、あなたの子供たちが人々にではなくあなたに聞いていただくために叫び求めるとき、あなたは彼らを憐れんで、彼らの祈りを聞き届けてくださいます。
09 まことに、おお、神よ、あなたはわたしを憐れんで、会衆の中でわたしの嘆願をお聞きくださいました。
10 また、あなたはわたしが敵から追い出され、さげすまれたときにも、わたしの祈りをお聞きくださいました。まことに、わたしの嘆願を聞き届け、わたしの敵に怒りを示されました。そして、怒って彼らを速やかに滅ぼされました。
11 わたしが苦難に遭いながらも誠実であったので、あなたはわたしの祈りをお聞きくださいました。あなたがこのようにわたしを憐れんでくださったのは、御子のおかげです。ですからわたしは、これからもあらゆる苦難のさなかで、あなたに叫び求めます。あなたの内にわたしの喜びがあるからです。あなたは御子のゆえに、わたしからあなたの裁きを遠ざけてくださったからです。』」
12 また、アルマは彼らに言った。「あなたがたは昔の人々が書いた聖文を信じているか。
13 見よ、もし信じているならば、ゼノスが述べたことも信じているに違いない。見よ、ゼノスは、『あなたは御子のゆえに、あなたの裁きを遠ざけてくださいました』と述べた。
14 さて見よ、わたしの同胞よ、あなたがたは聖文を読んだことがあるかどうか、わたしは尋ねたい。もし読んだことがあるならば、どうして神の御子を信じないでいられようか。
15 ゼノスだけがこれらのことを述べたとは書き記されていない。ゼノクもこれらのことについて述べた。
16 見よ、ゼノクはこう述べている。『おお、主よ、あなたが御子のゆえにこの民にかけてこられた憐れみを、この民が理解しようとしないので、あなたはこの民のことを怒っておられます。』
17 さて、わたしの同胞よ、このことから分かるように、昔の預言者がもう一人神の御子について証を述べている。ところが民は、この預言者の言葉を理解しようとしないで、彼を石で打ち殺してしまった。
18 しかし見よ、これだけではない。神の御子について述べたのは、これらの人々だけではない。
19 見よ、モーセも神の御子について述べた。荒れ野で一つの予型が掲げられ、それを仰ぎ見ようとした者はだれでも、生き延びられるようにされた。そして、多くの人がそれを見て生き延びた。
20 しかし、そのことの意味を理解した人はわずかであった。彼らの心がかたくなであったからである。そして、予型を見ようともしないほどかたくなな人が大勢おり、彼らは死んでしまった。彼らが見ようとしなかったのは、それで自分が癒されるとは信じなかったからである。
21 おお、わたしの同胞よ、もしあなたがたが癒しを得るために、目を向けるだけでよいとしたら、あなたがたはすぐにも見ようとしないだろうか。それとも、不信仰のままで心をかたくなにし、怠けて目を向けようとしないで死ぬことを望むだろうか。
22 もしそうであれば、災いがあなたがたに降りかかるであろう。しかし、それを望まなければ、あなたがたの目を向けて、神の御子を信じるようにしなさい。神の御子が将来、御自分の民を贖うために降臨されること、御子がその民の罪を贖うために苦しみを受け、死なれること、御子が死者の中からよみがえり、復活をもたらされること、終わりの裁きの日に、すべての人が各々の行いに応じて裁きを受けるために神の御子の御前に立つこと、これらのことを信じてほしい。
23 さて、わたしの同胞よ、あなたがたがこの御言葉を心の中に植えて、それがふくらみ始めたら、あなたがたの信仰によってそれを養い育ててほしい。そうすれば見よ、それはあなたがたの心の中で生長して、永遠の命をもたらす木になるであろう。そのときに、神があなたがたのために、神の御子の喜びによって重荷を軽くしてくださるように。これまで述べてきたことは、もしあなたがたにこれを行う意志さえあれば、すべて行えることである。アーメン。」
第34章
アミュレク、御言葉はキリストの内にあって救いを得させるものであることを証する。贖罪が行われないかぎり、全人類は必ず滅びる。モーセの全律法が神の御子の犠牲を指し示している。永遠の贖いの計画は信仰と悔い改めに基づいている。物質的な祝福のためにも、霊的な祝福のためにも祈ること。現世の生涯は人が神にお会いする用意をする時期である。神の前に畏れて自分の救いを達成すること。紀元前約74年。
01 さて、アルマは彼らにこれらの言葉を語り終えると、地に腰を下ろした。次いでアミュレクが立ち上がり、彼らを教え始めた。
02 「わたしの同胞よ、今わたしたちはキリストが神の御子であると教えたが、わたしが思うに、そのキリストの来臨についてこれまで述べられてきたことを、あなたがたが知らないはずはない。あなたがたがわたしたちから背いて去る前に、これらのことがあなたがたに十分教えられていたことを、わたしは知っている。
03 あなたがたは苦難に遭っているので、どうしたらよいか教えてほしいとわたしの愛する兄弟に頼み、わたしの兄弟はあなたがたに心の備えをさせるために、多少のことを述べてきた。また彼は、信仰と忍耐をあなたがたに勧めた。
04 まことに、御言葉を心に植えるほどの信仰を持ち、その御言葉の良さを試してみるように、あなたがたに勧めた。
05 そしてわたしたちは、その御言葉が神の御子の内にあるのかどうか、キリストが将来降臨されるのかどうかという大きな疑問が、あなたがたの心の中にあることが分かった。
06 また、あなたがたも見たように、わたしの兄弟は、その御言葉がキリストの内にあって救いに至らせるものであることを、多くの例を引きながらあなたがたに立証した。
07 わたしの兄弟は、贖いが神の御子を通して与えられるというゼノスの言葉と、またゼノクの言葉を参照した。また、モーセも引き合いに出して、これらのことが真実であることを立証した。
08 さて見よ、わたしも、これらのことが真実であることをあなたがたに証しよう。見よ、あなたがたに言う。将来キリストは、御自分の民の背きを御自身に負うために人の子らの中に来られ、世の罪を贖われる。わたしはこのことを知っている。主なる神がそう言われたからである。
09 贖罪が行われることは必要である。というのは、永遠の神の偉大な計画によって贖罪が行われなければならず、そうでなければ、全人類が滅びるのは避けられないからである。まことに、すべての人はかたくなになっており、堕落し、迷った状態にあるので、贖罪によらなければ必ず滅びる。贖罪は必ず行われなければならない。
10 大いなる最後の犠牲が必要である。それは、人を犠牲にすることでも、獣や鳥類を犠牲にすることでもない。人の犠牲であってはならず、無限にして永遠の犠牲でなければならない。
11 さて、自分の血をささげてほかの人の罪を贖うことができる人など、だれ一人いない。さて、ある人が人を殺した場合、見よ、わたしたちの公正な法律は、その人の兄弟の命を奪おうとするだろうか。そのようなことはないと、わたしはあなたがたに言う。
12 そうではなく、法律は人を殺した当人の命を要求する。したがって、無限の贖罪でなくては世の罪を十分に贖うことはできない。
13 それゆえ、大いなる最後の犠牲が必要である。そのときに、血を流すことは終わるであろうし、また、やめなければならない。それで、モーセの律法が成就するのである。まことに、モーセの律法は一点一画に至るまでことごとく成就し、むなしくなるものは何一つない。
14 見よ、これが律法の目的そのものであり、すべての部分がこの大いなる最後の犠牲を指し示している。そして、この大いなる最後の犠牲となるのが神の御子であるので、まことに、これは無限にして永遠の犠牲である。
15 このように神の御子は、その御名を信じるすべての人に救いをもたらされる。この最後の犠牲の目的は、憐れみの心を成し遂げることであり、この憐れみは正義に打ち勝ち、また人々が悔い改めを生じる信仰を持てるようにするその道を設けるのである。
16 このように、憐れみは正義の要求を満たし、これらの人々を腕に包み込んで保護する。一方、悔い改めを生じる信仰を少しも働かせない人は、正義を要求するすべての律法にこたえなければならない。したがって、偉大な永遠の贖いの計画は、悔い改めを生じる信仰のある人のためにだけ備えられている。
17 それゆえ、神がわたしの同胞であるあなたがたに、あなたがたが悔い改めを生じる信仰を働かせて、神の聖なる御名を呼び始め、神の憐れみを得られるようにしてくださいますように。
18 まことに、神に憐れみを叫び求めなさい。なぜなら、神は人を救う力を備えておられるからである。
19 まことに、へりくだって、神に祈り続けなさい。
20 牧場にいるときには、まことに、すべての家畜の群れについて神に叫び求めなさい。
21 家にいるときには、まことに、あなたがたの家のすべての者について、朝も昼も晩も神に叫び求めなさい。
22 まことに、敵の力を防ぐことができるように、神に叫び求めなさい。
23 まことに、あらゆる義の敵である悪魔を防ぐことができるように、神に叫び求めなさい。
24 あなたがたの畑の収穫が豊かであるように、作物について神に叫び求めなさい。
25 あなたがたの牧場の家畜が増えるように、家畜の群れについて叫び求めなさい。
26 しかし、これだけではない。あなたがたは自分の部屋でも、人目に触れない場所でも、荒れ野でも、あなたがたの心を注ぎ出さなければならない。
27 また、声に出して主に叫び求めないときでも、あなたがたの幸いと、あなたがたの周りの人々の幸いを気遣う気持ちを心に満たし、それが絶えず主への祈りになるようにしなさい。
28 さて見よ、わたしの愛する同胞よ、あなたがたに言う。これですべてであると思ってはならない。これらのことをすべて行っても、もし乏しい人や着る物のない人を追い払ったり、病気の人や苦しんでいる人を見舞わなかったり、自分には持ち物がありながら、それを必要としている人々に分け与えなかったりするならば、あなたがたに言うが、もしあなたがたがこれらのことのどれも行うことがなければ、見よ、あなたがたの祈りはむなしく、何の役にも立たない。あなたがたは信仰を否定する偽善者と同じである。
29 したがって、もし愛を示すことを覚えていなければ、あなたがたは精錬する者たちが(価値のないものとして)捨てて、人が足で踏みつけるかすのようなものである。
30 さて、わたしの同胞よ、あなたがたはすでに多くの証拠を得ており、聖文がこれらのことを立証しているのも知っているので、進み出て悔い改めの実を結んでもらいたい。
31 まことに、進み出て、もはや心をかたくなにしないでほしい。見よ、今があなたがたの救いの時であり、救いの日である。したがって、あなたがたが悔い改めて心をかたくなにしなければ、偉大な贖いの計画はすぐにあなたがたに効果を及ぼすであろう。
32 見よ、現世は人が神にお会いする用意をする時期である。まことに、現世の生涯は、人が各自の務めを果たす時期である。
33 さて、前に話したように、あなたがたにはすでに非常に多くの証拠があるので、最後まで悔い改めの日を引き延ばすことのないように切に勧める。永遠に備えるためにわたしたちに与えられている現世の生涯を終えると、見よ、もしわたしたちが現世にいる間に時間を有益に用いなければ、後から暗闇の夜がやって来る。そして、そこでは何の働きもできない。
34 あなたがたはその恐ろしい危機に陥るときに、『わたしは悔い改めて神に立ち返ろう』と言うことはできない。あなたがたはこのように言うことはできない。なぜならば、現世を去るときにあなたがたの肉体を所有しているその同じ霊が、あの永遠の世で、あなたがたの肉体を所有する力を持つからである。
35 見よ、もし死ぬときまで悔い改めの日を引き延ばしたならば、見よ、あなたがたはすでに悪魔の霊の支配を受けるようになっているので、悪魔はあなたがたに自分のものであるという印を押す。したがって、主の御霊はもはや退き去って、あなたがたの内に決して宿ることはなく、悪魔があなたがたを支配するすべての力を得る。これが悪人の最後の状態である。
36 わたしはこのことを知っている。主は清くない宮に住まず、義人の心に住むと言われたからである。主はまた、義人は主の王国で座に着いて二度とそこを去ることがなく、義人の衣は小羊の血によって白くされるとも言われた。
37 さて、わたしの愛する同胞よ、わたしはあなたがたがこれらのことを思い出すように、また神を畏れて自分の救いを達成するように、さらに、キリストの来臨を二度と否定することのないように願っている。
38 また、あなたがたがこれから二度と聖霊に逆らうことなく、聖霊を受け、キリストの御名を受けるように、そして地に伏すほどにへりくだり、どこにいても霊とまことをもって神を礼拝するように、さらに、神が授けてくださる多くの憐れみと祝福を日々感謝しながら生活するように、わたしは願っている。
39 また、わたしの同胞よ、悪魔の誘惑に惑わされることなく、悪魔に打ち負かされることなく、終わりの日に悪魔の手下になることのないように、絶えず祈りに心を配ることを、あなたがたに勧める。見よ、悪魔はあなたがたに決して良いものを報いとして与えないからである。
40 わたしの愛する同胞よ、忍耐するように、そしてあらゆる苦難に耐えるように、あなたがたに勧める。また、ひどく貧乏だからということであなたがたを追い出した者のような罪人にならないために、彼らをののしることのないように勧める。
41 むしろあなたがたは忍耐し、いつの日かあらゆる苦難を離れて休めるという確固とした望みをもってそれらの苦難に耐えるように、あなたがたに勧める。」
第35章
御言葉が宣べ伝えられたことで、ゾーラム人の誤った慣行が崩れる。ゾーラム人から追い出された改宗者たち、ジェルションの地に住むアンモンの民に加わる。アルマ、民の悪を嘆く。紀元前約74年。
01 さて、アミュレクがこれらの言葉を語り終えると、二人は群衆のもとを去り、ジェルションの地へ行った。
02 また、ほかの兄弟たちも、ゾーラム人に御言葉を宣べ伝えた後、ジェルションの地へ行った。
03 さて、ゾーラム人の中で多数派を占める者たちは、ゾーラム人に宣べ伝えられた御言葉について協議した後、御言葉のために自分たちの慣行が崩れたことに腹を立て、宣べ伝えられた御言葉に聞き従わないことにした。
04 そして、彼らは使いを出し、その地の至る所にいるすべての民を集め、宣べられた御言葉について彼らの意見を求めた。
05 さて、ゾーラム人の指導者たちと祭司たちと教師たちは、自分たちの意図していることを民に知らせず、ひそかに民の意向をうかがった。
06 そして、彼らがすべての人の意向を探り出した後、アルマと彼の兄弟たちが語った言葉を支持した人々は、その地から追い出された。これらの人々の数は多く、彼らもまたジェルションの地へ行った。
07 そこで、アルマと彼の兄弟たちは、これらの人々に教えを授けた。
08 さて、ゾーラム人の民は、ジェルションにいるアンモンの民に腹を立てた。また、ゾーラム人の指導者の長は、非常に悪い男であったので、アンモンの民に使いを送り、ゾーラム人の地から彼らの地に行ったすべての人を、その地から追い出すように求めた。
09 また彼は、アンモンの民を脅す言葉をたくさん吐いた。ところが、アンモンの民は彼らの言葉を恐れなかったので、これらの人々を追い出すことなく、自分たちのもとに来たすべての貧しいゾーラム人を受け入れた。そして彼らは、これらの人々に食べる物や着る物を与え、また土地を受け継ぎとして譲り与えた。彼らは、これらの人々の入り用に応じて必要なものを提供したのであった。
10 さて、このことによってゾーラム人は、アンモンの民に対する怒りをかき立てられた。そして、彼らはレーマン人と交わり始め、レーマン人を扇動してアンモンの民に対して怒らせるようにした。
11 このようにして、ゾーラム人とレーマン人は、アンモンの民とニーファイ人に対して戦う用意を始めた。
12 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第17年が終わった。
13 アンモンの民はジェルションの地を去ってミレクの地に移り、ジェルションの地をニーファイ人の軍に明け渡して、ニーファイ人の軍がジェルションの地でレーマン人の軍およびゾーラム人の軍と戦えるようにした。このようにして、さばきつかさの統治第18年に、レーマン人とニーファイ人の間で戦争が始まった。この戦争の話は後に述べることにする。
14 アルマとアンモンと彼らの兄弟たちとアルマの二人の息子は、神の手に使われる者となって多くのゾーラム人を悔い改めさせた後、ゼラヘムラの地に帰った。また、悔い改めに導かれた人々は皆、自分たちの地から追い出されたが、ジェルションの地で自分たちの受け継ぎの土地を得た。そして、自分自身と妻子、および自分たちの土地を守るために武器を取った。
15 さて、アルマは自分の民の罪悪、すなわち民の中にある戦争と流血と争いを嘆き、出かけて行って、すなわち遣わされて、あらゆる町のすべての民に御言葉を告げ知らせた。ところが、民の心はかたくなになり、また御言葉が厳しいために彼らは次第に怒るようになった。それを見たアルマの心は非常な憂いにさいなまれた。
16 そこで、アルマは息子たちを集め、義にかかわることについて、息子たちにそれぞれの責任を与えることにした。アルマが息子たちを戒めた事柄の記録は今わたしたちの手もとにあるが、これはアルマ自身が記録したものである。
アルマが息子のヒラマンに与えた戒め。次の第36〜37章がそれに相当する。
第36章
アルマ、自分が天使によって改心に導かれたことをヒラマンに証する。アルマが罰の定めを受けた者の苦痛を経験し、イエスの名を呼び、神から生まれたこと。快い喜びに満たされたこと。神をほめたたえる天使の群れを見たこと。多くの改宗者も、アルマと同じように味わい、同じような光景を見た。紀元前約74年。
01 「わが子よ、わたしの言葉に耳を傾けなさい。わたしはあなたに誓う。あなたは神の戒めを守るかぎり地に栄えるであろう。
02 あなたはわたしと同じように、わたしたちの先祖が囚われの身にあったことを思い起こしてもらいたい。わたしたちの先祖は奴隷の状態にあり、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神のほかにはだれも彼らを救い出せなかった。そして神は、確かに苦難の中にいる彼らを救い出された。
03 わが子ヒラマンよ、見よ、あなたは若い。だから、わたしの言葉を聞いて、わたしに学ぶように勧める。神に頼る者はだれであろうと、試練や災難や苦難の中にあって支えられ、また終わりの日に高く上げられるということをわたしは知っているからである。
04 しかし、わたしがそれを自分独りで知ったと思ってもらいたくない。物質的なものからではなく、霊的なものから知ったのであり、肉の思いからではなく、神から知らされたのである。
05 見よ、わたしはあなたに言う。わたしは神から生まれていなかったならば、これらのことを知ることはなかったであろう。しかし、神は聖なる天使の口を通して、これらのことをわたしに知らせてくださった。わたし自身はまったくふさわしくなかったにもかかわらず、そうしてくださった。
06 わたしはかつてモーサヤの息子たちと一緒に歩き回って、神の教会を滅ぼそうとしていた。ところが見よ、神は、聖なる天使を遣わして、道の途中でわたしたちを止められた。
07 見よ、その天使はわたしたちに語りかけたが、それはまるで雷の音のようであった。そして、大地全体がわたしたちの足もとで揺れ動き、わたしたちは皆、地に伏した。主への畏れを覚えたからである。
08 ところが見よ、その声がわたしに、『起きなさい』と言った。そこでわたしは起き上がって立ち、その天使を見た。
09 すると、天使はわたしに、『たとえあなた自身が滅ぼされようとも、これ以上、神の教会を滅ぼそうとしてはならない』と言った。
10 そして、わたしは地に倒れた。そして3日3晩、口を利くことができず、手足を動かすこともできなかった。
11 天使はわたしにもっと多くのことを語り、仲間はそれを聞いたが、わたしには聞こえなかった。わたしは、『たとえあなた自身が滅ぼされようとも、これ以上、神の教会を滅ぼそうとしてはならない』という言葉を聞いたときに、自分は滅ぼされるのではないかというひどい恐れと驚きに打たれて地に倒れ、それ以上は何も聞こえなかったからである。
12 しかしわたしは、永遠の苦痛に責めさいなまれた。わたしはきわめてひどい苦しみを受け、自分のすべての罪に責めさいなまれた。
13 まことに、わたしは自分のあらゆる罪と不義を思い出し、そのために地獄の苦しみを味わった。わたしは自分が神に逆らってきたことと、神の聖なる戒めを守っていなかったことを知ったのである。
14 また、わたしは神の子供たちを大勢殺した。いや、彼らを惑わして滅びに至らせた。要するに、わたしの罪悪が非常に大きかったので、神の御前に行くことを考えるだけで、わたしは言いようのない恐怖に責めさいなまれた。
15 おお、そのときにわたしが思ったのは、自分が追放されて霊と肉体がともになくなってしまえば、神の御前に立たされて自分の行いを裁かれることはないだろうということであった。
16 さて、3日3晩、わたしはまさに罰の定めを受けた者の苦痛に責めさいなまれた。
17 そして苦痛に責めさいなまれていたときに、わたしは自分の多くの罪を思い出してひどく苦しみながら、見よ、かつて父がイエス・キリストという御方の来臨について民に預言するのを聞いたことを思い出した。イエス・キリストは神の御子であり、世の罪を贖うために来られるというのである。
18 心にこの思いがはっきりと浮かんできたとき、わたしは心の中で、『おお、神の御子イエスよ、苦汁の中におり、永遠の死の鎖に縛られているわたしを憐れんでください』と叫んだ。
19 さて見よ、このことを思ったとき、わたしはもはや苦痛を忘れることができた。まことに、わたしは二度と罪を思い出して苦しむことがなくなった。
20 おお、何という喜びであったことか。何という驚くべき光をわたしは見たことか。まことに、わたしは前に感じた苦痛に勝るほどの喜びに満たされたのである。
21 わが子よ、まことに、あなたに言うが、わたしはほかにあり得ないほど激しく、またつらい苦痛を味わった。また息子よ、わたしは言う。それとは反対に、わたしはほかにあり得ないほど麗しく、また快い喜びを味わった。
22 思うに、ちょうどわたしたちの先祖リーハイが見たように、わたしも神が御座に着き、神を賛美しほめたたえる様子で群れ集まる無数の天使たちに取り囲まれておられるのを見た思いがした。そして、わたしはそこに行きたいと切に望んだ。
23 すると見よ、わたしの手足は再び力を取り戻した。そこでわたしは立ち上がり、自分が神から生まれたことを民に言明した。
24 また、そのときからまさに現在まで、わたしは絶えず働き続け、人々を悔い改めに導き、わたしが味わった非常な喜びを味わわせ、彼らも神から生まれ、聖霊に満たされるようにしてきた。
25 そして、わが子よ、見よ、今主はわたしの労苦の結ぶ実によって非常に大きな喜びをわたしに与えてくださっている。
26 主がわたしに告げてくださった御言葉のために、見よ、多くの人が神から生まれ、わたしの味わったように味わい、わたしが見たように目の当たりに見た。そのために彼らは、わたしが述べてきたこれらのことを、わたしが今知っているように知っている。わたしが今知っていることは、神から出たものである。
27 そしてわたしは、あらゆる試練と災難の下で、またあらゆる苦難の中で支えられてきた。まことに、神は牢から、また束縛から、死からわたしを救い出してくださった。わたしは神を信頼している。神はこれからもわたしを救い出してくださるであろう。
28 わたしは、神が終わりの日にわたしをよみがえらせ、栄光のうちに御自身とともに住めるようにしてくださることを知っている。わたしは神をとこしえにほめたたえよう。神はわたしたちの先祖をエジプトから導き出してくださったからである。神はエジプト人を紅海の中にのみ込ませ、御自分の力によって、わたしたちの先祖を約束の地に導かれた。また神は、何度も奴隷と束縛の状態から先祖を救い出してくださった。
29 神はまた、エルサレムの地からわたしたちの先祖を連れ出してくださった。また、永遠の力によって、今日に至るまで何度も奴隷と束縛の状態から先祖を救い出してくださった。わたしは先祖が囚われの身にあったことをいつも思い起こすようにしてきた。あなたもわたしと同じように、先祖が囚われの身にあったことを思い起こすようにしなければならない。
30 しかし見よ、わが子よ、それだけではない。神の戒めを守るかぎり地に栄えることを、わたしが知っているように、あなたも知らなければならない。また、神の戒めを守らなければ神の御前から絶たれるということも、あなたは知らなければならない。これは神の御言葉による。」
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第37章
真鍮の版とそのほかの聖文が、人々を救いに導くために保存される。ヤレド人が彼らの悪事のために滅ぼされたこと。ヤレド人の秘密の誓いの言葉と誓約は民に隠しておかなければならない。自分のすべての行いについて主と相談すること。リアホナがニーファイ人を導いたように、キリストの言葉は人々を永遠の命に導く。紀元前約74年。
01 「さて、わが子ヒラマンよ、わたしはあなたに、これまでわたしに託されてきた記録を受け取るように告げる。
02 また、わたしが行ってきたように、この民の記録をニーファイの版に書き続け、またわたしが行ってきたように、これまでわたしが保存してきたこれらのものをすべて神聖に保つようあなたに告げる。これらのものは、ある賢明な目的のために保存されているからである。
03 また、この真鍮の版も保存しなさい。この真鍮の版には様々な記録が刻まれており、聖文も記されていて、まことに世の初めからのわたしたちの先祖の系図も載っている。
04 見よ、わたしたちの先祖が預言したように、この版はあらゆる国民、部族、国語の民、民族に明らかに示されて、彼らがこれに書き記されている奥義を知るようになるときまで、これは代々保存され、伝えられ、また主の御手によって保存され、残されることになっている。
05 さて見よ、この版は、保存されるならばその輝きを保つに違いない。確かに、この版はその輝きを保つであろう。また、聖文の載っている版はすべてそうである。
06 記録を保存するのはわたしが愚かだからであると、あなたは思うかもしれない。しかし見よ、わたしはあなたに言う。小さな、簡単なことによって大いなることが成し遂げられるのである。そして、小さな手段が度々知者を辱める。
07 主なる神は偉大な永遠の目的を達するために、様々な手段によって事を行われる。また、ごく小さな手段によって、主は知者を辱め、また多くの人を救われる。
08 これまでこれらの記録が残されてきたのは、神の知恵によるものであった。見よ、これらの記録はこの民に多くのことを思い出させ、また多くの人に彼らの行いが誤っていることを納得させ、神について知らせて彼らが救われるようにしてきたからである。
09 まことに、わたしはあなたに言う。もしこれらの記録に載っている、すなわちこれらの版に載っているこれらのものがなければ、アンモンと彼の同僚たちは何千人ものレーマン人に、彼らの先祖の言い伝えが正しくないことを納得させることはできなかったであろう。これらの記録と彼らの言葉は、レーマン人を悔い改めに導いた。すなわち、これらの記録と彼らの言葉は、レーマン人に主なる神について知らせ、彼らの贖い主イエス・キリストのことを喜ぶように彼らを導いた。
10 また、だれもこれらの記録が、将来何千人ものレーマン人と、また今、罪と悪事の中で心をかたくなにしている、わたしたちの強情な同胞である何千人ものニーファイ人に、彼らの贖い主について知らせる手段にならないとは言い切れない。
11 これらの奥義は、まだ全部はわたしに知らされていないので、わたしはそれを語ることを控えなければならない。
12 ただこれらの記録は、神が御存じの、ある賢明な目的のために残されるとだけ言えば、それで十分であろう。神は御自分が造られたすべてのものに知恵をもって助言を与えられる。そして、主の道はまっすぐで、その道は一つの永遠の環である。
13 おお、覚えておきなさい。わが子ヒラマンよ、神の戒めがどれほど厳しいか覚えておきなさい。神は、『あなたがたはわたしの戒めを守るかぎり地に栄える』と言われた。しかし、神の戒めを守らなければ、神の御前から絶たれるであろう。
14 わが子よ、神がこれらのものをあなたに託されたということを覚えておきなさい。これらのものは神聖であり、神はこれまでこれらのものを神聖に保ってこられた。そしてこれからも、御自分の力を後の時代の人々に示せるように、御自分の内にある賢明な目的のためにこれらのものを保存し、守られるであろう。
15 さて見よ、わたしは預言の霊によってあなたに告げる。もしあなたが神の戒めに背くならば、これらの神聖なものは神の力によってあなたから取り去られる。そして、あなたはサタンに引き渡され、サタンはあなたを風に吹かれるもみ殻のようにふるいにかけるであろう。
16 しかし、あなたが神の戒めを守り、主から命じられるとおりにこれらの神聖なものを扱うならば(すなわち、あなたはこれらのものをどのように扱わなければならないかについて、一切のことを主に請い求めなければならない)、見よ、この世のどのような力も、地獄のどのような力も、決してあなたからこれらのものを取り去ることはできない。神は御自分の御言葉をすべて成就する十分な力を持っておられる御方だからである。
17 神は、あなたに立てるすべての約束を果たされる。神はこれまでもわたしたちの先祖と交わした約束を果たしてこられたからである。
18 神は、御自分の力を後の時代の人々に示せるように、御自分の内にある賢明な目的のためにこれらのものを守ろうと、わたしたちの先祖に約束された。
19 さて見よ、神はすでに一つの目的を達せられた。何千人ものレーマン人が再び真理を知るようになったのである。そして、神はこれらの記録によって御自分の力を示された。神はまた後の時代の人々にも、これらの記録によって御自分の力を示されるであろう。そのために、これらのものは残される。
20 そこで、わが子ヒラマンよ、わたしはあなたに告げる。あなたは勤勉にわたしのすべての言葉に従いなさい。また、神の戒めを記されているとおりに熱心に守りなさい。
21 また、あの24枚の版について話そう。あなたはあの版を保存し、様々な秘密の行いと闇の業、隠れた業、すなわち滅ぼされてしまったあの民の秘密の業が、この民に明らかにされるようにしなさい。すなわち、彼らのあらゆる殺人、強盗、略奪、またあらゆる悪事と忌まわしい行いがこの民に明らかにされるようにしなさい。また、あなたはこの解訳器も保存しなさい。
22 見よ、主は、御自分の民が暗闇の中で業を行い始めたこと、すなわち暗殺と忌まわしい行いをするようになったことを御覧になった。そこで主は、もし悔い改めなければ、彼らは地の面から滅ぼし去られると言われた。
23 また、主は言われた。『わたしは暗闇の中で輝いて光を放つ一つの石を、わたしの僕ガゼレムのために用意しよう。それによってわたしは、わたしに仕える民のために彼らの同胞の業、すなわち同胞の秘密の業、闇の業、悪事と忌まわしい行いを明らかにしよう。』
24 わが子よ、この解訳器は神の御言葉が成就するように備えられたものである。神はこれについて次のように言われた。
25 『わたしは彼らのあらゆる秘密の業と忌まわしい行いを暗闇から明るみに出そう。また、彼らが悔い改めなければ、彼らを地の面から滅ぼし去ろう。そしてわたしは、彼らのあらゆる秘密と忌まわしい行いを、今後この地を所有するすべての国民に明らかに示そう。』
26 さて、わが子よ、わたしたちが知っているように、彼らは悔い改めなかったので滅ぼされてしまった。そして、これまで神の御言葉は成就し、彼らの秘密の忌まわしい行いは暗闇から出されて、わたしたちに知らされてきた。
27 わが子よ、あなたに告げる。彼らのあらゆる誓いの言葉と誓約と、彼らの秘密の忌まわしい行いについての取り決めを忘れないようにしなさい。また、彼らのすべての合図と不思議なことをこの民に隠して、この民がそれらのものを知ることなく、彼らも暗闇に陥って滅ぼされることのないようにしなさい。
28 見よ、この地の全体に、一つののろいがあるからである。そののろいとは、闇の業を行う者たちの悪が完全に熟すとき、神の力によってそれらの者たちが皆滅ぼされるというものである。わたしはこの民が滅ぼされることのないように願っている。
29 だからあなたは、彼らの誓いの言葉と誓約から成る秘密のはかりごとを、この民に隠しなさい。彼らの悪事と殺人と忌まわしい行いだけをこの民に知らせて、そのような悪事と忌まわしい行いと殺人を忌み嫌うように彼らに教えなさい。また、これらの人々が彼らの悪事と忌まわしい行いと殺人のために滅ぼされたことも、彼らに教えなさい。
30 見よ、彼らは自分たちの中にやって来て、その罪悪について告げ知らせた主の預言者をすべて殺した。そのため、彼らに殺された人々の血が、主なる神に向かって、自分たちを殺した者たちに報復するように叫んだ。その結果、神の裁きが、これらの闇の業を行い、秘密結社を作った者たちに下ったのである。
31 また、それらの闇の業を行い、秘密結社を作った者たちに対して、この地はとこしえにいつまでものろわれる。彼らは、悪事が完全に熟す前に悔い改めなければ滅びるであろう。
32 わが子よ、わたしがあなたに語ってきた言葉を覚えておきなさい。あの秘密のはかりごとをこの民に明らかにすることなく、罪と悪事を永遠に憎むことを教えなさい。
33 悔い改めと主イエス・キリストを信じる信仰についてこの民に宣べ伝えなさい。謙遜になるように、また柔和で心のへりくだった者になるように教えなさい。主イエス・キリストを信じる信仰をもって、悪魔のあらゆる誘惑に立ち向かうように教えなさい。
34 善い行いをするのに決して疲れず、柔和で心のへりくだった者になるようにこの民に教えなさい。このような者は、その霊に安息を得るであろう。
35 わが子よ、忘れずに若いうちに知恵を得なさい。まことに、神の戒めを守ることを若いうちに習慣としなさい。
36 また、あなたの必要とするあらゆる助けを神に叫び求めなさい。まことに、あなたの行うことはすべて、主のために行うようにしなさい。どこへ行くにも主にあって行くようにしなさい。まことに、あなたの思いを常に主に向けるようにしなさい。まことに、あなたの心の愛情をとこしえに主に向けるようにしなさい。
37 あなたのすべての行いについて主と相談しなさい。そうすれば、主はあなたのためになる指示を与えてくださる。まことに、夜寝るときは、眠っている間も主が見守ってくださるように、主に身を託して寝なさい。そして、朝起きるときに、神への感謝で心を満たしなさい。これらのことを行うならば、終わりの日に高く上げられるであろう。
38 さて、わが子よ、わたしは先祖が球、すなわち指示器と呼んだものについて少々話しておかなければならない。先祖はこれをリアホナと呼んだ。それは、羅針盤という意味である。主が用意してくださったのである。
39 見よ、これほど入念に細工のできる人はあり得ない。それは、先祖に荒れ野の中で旅をする進路を教えるために用意されたものであった。
40 そしてこれは、神を信じる先祖の信仰に応じて働いた。したがって、先祖が信仰を持ち、神がその指針によって自分たちの行くべき方向を示してくださると信じたときには、見よ、そのようになった。そこで彼らは、この奇跡と、また日々神の力によって行われたほかの多くの奇跡を経験したのである。
41 しかし、それらの奇跡は小さな手段によって行われたため、それは彼らに数々の驚くべき業を示した。ところが、彼らが怠けて、信仰を働かせることと熱意を示すことを忘れると、それらの驚くべき業は止まってしまい、彼らの旅は進まなかった。
42 そのために彼らは、荒れ野に長居することになってしまった。すなわち、彼らはまっすぐな道を進まず、自分たちの背きのために飢えと渇きに苦しんだのである。
43 さて、わが子よ、このようなことには必ず影があることを理解してもらいたい。先祖はこの羅針盤を心に留めることを怠ったので(これらは物質的なことであり)、旅は順調ではなかった。霊的なことについても同様である。
44 見よ、キリストの御言葉は、永遠の喜びに至るまっすぐな道を指し示すものであるが、その御言葉を心に留めることが容易であるのは、約束の地に至るまっすぐな道を示すこの羅針盤に注意を払うのが、先祖にとって容易であったのと同じである。
45 さて、わたしは尋ねるが、このことの中に予型はないだろうか。この指示器がその示す道をたどる先祖を約束の地に導いたように、確かにキリストの御言葉は、わたしたちがキリストの御言葉の示す道をたどるならば、この悲しみの谷を越えてはるかに良い約束の地へわたしたちを導き入れてくれるのである。
46 わが子よ、方法が容易だからということで怠けないようにしよう。わたしたちの先祖がそうであったからである。それは先祖のために備えられたもので、彼らがそれを見ていたら生き延びることができたであろう。わたしたちについても同様である。方法はすでに備えられており、わたしたちが見ようとすれば、とこしえに生きることができるであろう。
47 さて、わが子よ、あなたはこれらの神聖なものを大切にしなさい。神に頼って生きるようにしなさい。この民のところへ出て行き、御言葉を告げ知らせなさい。まじめでありなさい。さらば、わが子よ。」
アルマが息子のシェブロンに与えた戒め。次の第38章がそれに相当する。
第38章
シブロンは義のために迫害された。救いは世の命であり光であるキリストの内にある。自分の激情をすべて制すること。紀元前約74年。
01 「わが子よ、わたしの言葉に耳を傾けなさい。わたしはヒラマンに言ったようにあなたにも言う。あなたは神の戒めを守るかぎり地に栄えるであろう。また、神の戒めを守ろうとしなければ、神の御前から絶たれるであろう。
02 わが子よ、あなたが確固としており、神に忠実であるので、わたしはあなたによって大きな喜びを得られると確信している。あなたは若いときから主なる神に頼り始めたので、これからも神の戒めを守り続けるようにしてもらいたい。最後まで堪え忍ぶ者は幸いだからである。
03 わが子よ、わたしはあなたに言う。あなたはゾーラム人の民の中にあって忠実で、勤勉で、忍耐強く、寛容であったので、わたしはあなたによってすでに大きな喜びを得た。
04 わたしは、あなたが縛られていたのを知っているからである。また、御言葉のために石を投げられたのも知っている。主があなたとともにおられたので、あなたは忍耐してこれらすべてのことに耐えた。そして、今あなたは、神があなたを救い出してくださったことを知っている。
05 わが子シブロンよ、神を信頼すればするほど、あなたはそれだけ試練や災難や苦難から救い出され、そして終わりの日に高く上げられるということを覚えていてもらいたい。
06 わが子よ、わたしは、自分独りでこれらのことを知ったとあなたに思ってもらいたくない。わたしの内にある神の御霊が、これらのことをわたしに知らせてくださるのである。もし神から生まれていなかったならば、わたしはこれらのことを知ることはなかったであろう。
07 しかし見よ、主は深い憐れみをもって、主の民の中での滅びの業をやめなければならないとわたしに告げるために、主の天使を遣わされた。そして、わたしは顔と顔を合わせて天使を見、天使はわたしに語った。その天使の声はまるで雷鳴のようで、大地全体を揺り動かした。
08 そして、わたしは3日3晩、激烈な苦痛と苦悩にさいなまれ、主イエス・キリストに憐れみを叫び求めるまでは、決して罪の赦しを受けなかった。しかし見よ、主に叫び求めたところ、自分の霊に安息を得た。
09 わが子よ、このことをあなたに話したのは、あなたが知恵を得るため、また人が救われるのはただキリストにより、キリストを通じてだけであり、決してほかの方法や手段はないことを、わたしから学べるようにするためである。見よ、キリストは世の命であり光であられる。見よ、キリストは真理と義の御言葉であられる。
10 あなたは御言葉を教え始めているので、今後も教え続けてもらいたい。そして、すべてのことに勤勉であり、自制するようにしてもらいたい。
11 高慢にならないようにしなさい。自分の知恵や優れた力を誇らないようにしなさい。
12 大胆でありなさい。しかし、尊大であってはならない。また、激情をすべて制し、愛で満たされるようにしなさい。怠惰にならないようにしなさい。
13 ゾーラム人のように祈ってはならない。あなたが見たとおり、彼らは人に聞こえて自分の知恵が称賛されるように祈っているからである。
14 『おお、神よ、わたしたちが同胞よりも優れていることを感謝します』と祈ってはならない。むしろ、『主よ、わたしがふさわしくない者であることをお許しください。憐れみをもってわたしの同胞を思い起こしてください』と祈りなさい。まことに、いつも神の御前で自分がふさわしくないことを認めなさい。
15 主があなたを祝福し、終わりの日にあなたを王国に迎え入れて、安らかに座に着かせてくださるように。さあ、わが子よ、行ってこの民に御言葉を教えなさい。まじめでありなさい。さらば、わが子よ。」
アルマが息子のコリアントンに与えた戒め。次の第39〜42章がそれに相当する。
第39章
性的な罪は忌まわしい行いである。コリアントンの罪は、ゾーラム人が御言葉を受け入れる妨げとなった。キリストの贖いは、それよりも前の時代の忠実な人々をもさかのぼって救う。紀元前約74年。
01 「わが子よ、あなたには、あなたの兄弟に言ったことよりも少し多く言っておきたい。あなたは自分の兄弟が神の戒めを守るのに確固としており、忠実であり、勤勉であったのを見なかったか。見よ、彼はあなたのために良い模範を示さなかったか。
02 あなたはゾーラム人の民の中で、あなたの兄弟のようにはわたしの言葉に注意を払わなかった。わたしがあなたに戒めたいのはこのこと、すなわち、あなたが自分の力と知恵を自慢し続けたことである。
03 わが子よ、それだけではない。あなたはわたしを悲しませることをした。あなたは神の道を説く務めを放棄して、レーマン人の境にあるサイロンの地まで娼婦イザベルを追って行った。
04 この娼婦は多くの人の心を奪ったが、だからといって、わが子よ、これはあなたにとって決して言い訳にはならない。あなたは自分に託された務めに心を注ぐべきであった。
05 わが子よ、あなたはこのことが主の目から見て忌まわしい行いであること、まことに、罪のない者の血を流すことや聖霊を否定することを除いて、どのような罪よりも非常に忌まわしい行為であることを知らないのか。
06 見よ、聖霊が一度あなたに宿ってから、あなたがその聖霊を否定するならば、しかも自分で聖霊を否定していることを知っているならば、見よ、これは赦されない罪である。神の光と知識に逆らって人を殺す者が赦しを得るのは容易ではない。まことに、わが子よ、あなたに言うが、このような者が赦しを得るのは容易ではない。
07 わが子よ、あなたはそのような重大な罪を犯さなければよかったものを。あなたの罪についてくどくどと述べてあなたをひどく苦しめることが、あなたのためにならないようであれば、わたしはそうはしなかったであろう。
08 しかし見よ、あなたは自分の罪を神から隠すことはできない。また、悔い改めなければ、あなたの罪は終わりの日にあなたを責める証となるであろう。
09 わが子よ、悔い改めて自分の罪を捨て、これからはもう自分の目の欲を追うことなく、これらのことをすべて断つようにしてほしい。そうしなければ、決して神の王国を受け継ぐことができないからである。おお、このことを覚えて、これらのことを必ず断つようにしなさい。
10 また、あなたが行おうとすることについて、必ず兄たちと相談するように、わたしはあなたに告げておく。見よ、あなたはまだ若く、兄たちから助けを受ける必要があるからである。兄たちの忠告を心に留めなさい。
11 どんなむなしいものにも、愚かなものにも惑わされてはならない。二度と心を悪魔に惑わされて、あの邪悪な娼婦たちを追ってはならない。見よ、おお、わが子よ、あなたは何と大きな罪悪をゾーラム人に招いたことか。彼らはあなたの行いを見て、わたしの言葉を信じなかった。
12 それで、主の御霊はわたしに、『あなたの子供たちが多くの人の心を惑わして滅びに至らせることのないように、善を行うことを彼らに命じなさい』と言われる。したがって、わが子よ、わたしは神を畏れてあなたに命じる。罪悪から遠ざかりなさい。
13 思いと勢力と力を尽くして主に立ち返りなさい。だれの心をも悪いことを行うように惑わしてはならない。むしろ彼らのところに帰り、あなたの過ちと、あなたが行った悪事を認めなさい。
14 富やこの世のむなしいものを求めてはならない。見よ、あなたはそれらのものを携えて行くことはできないからである。
15 さて、わが子よ、キリストの来臨についてあなたに少し述べておきたい。見よ、あなたに言う。キリストは確かに世の罪を取り除くために来られる。キリストは御自分の民に救いの喜びのおとずれを告げ知らせるために来られる。
16 さて、わが子よ、あなたが召された務めは、この民にこの喜びのおとずれを告げ知らせて、彼らの心を備えること、いや、救いがこの民に与えられるようにすること、この民がその子孫の心を備えて、キリストの来臨の時に御言葉を聞けるようにすることであった。
17 さて、わたしはこの件についてあなたの心を少し軽くしよう。見よ、あなたはどうしてこれらのことが、このようにずっと前から分かるのかと不思議に思っている。見よ、あなたに言おう。今の人はキリストが来られる時代の人と同じように、神にとって貴い存在ではないだろうか。
18 贖いの計画は、この民の子孫と同じように、この民にも知らされることが必要ではないだろうか。
19 今、主が天使を遣わして、この喜びのおとずれをわたしたちに告げ知らせてくださるのは、わたしたちの子孫に宣言されるのと同様に、あるいはキリストの来臨の後に宣言されるのと同様に容易なことではないだろうか。」
第40章
キリストはすべての人の復活を実現される。義人の死者はパラダイスへ行き、悪人は外の暗闇に追い出されて、それぞれ復活の日を待つ。復活の際、すべてのものが本来の完全な体の造りに回復される。紀元前約74年。
01 「さて、わが子よ、あなたに言っておきたいことがもう少しある。死者の復活について、あなたが心を悩ましていることが分かるからである。
02 見よ、わたしはあなたに言っておく。キリストの来臨後までは復活はない。言い換えれば、そのときまで、この死すべき体が不死のものを着ることはなく、この朽ちるものが朽ちないものを着ることはないということである。
03 見よ、キリストは、死者の復活を実現される。しかしわが子よ、その復活の時はまだ来ていない。あなたに一つの奥義を明らかにしよう。神御自身のほかだれも知らない隠されている奥義がたくさんある。しかし、わたしが知りたいと思って神に熱心に尋ねた一つのことについて、あなたに告げよう。それは復活に関することである。
04 見よ、すべての人が将来、死者の中から出て来る定められた時がある。さて、その時がいつやって来るかはだれも知らない。しかし、神は定められているその時を御存じである。
05 さて、人が死者の中から出て来るのは1度だけか、それとも2度か、3度か、それは重要ではない。神はこれらのことをすべて御存じだからである。これが事実であるということ、すなわち、すべての人が死者の中からよみがえる時が定められているということが分かれば、わたしにはそれで十分である。
06 さて、死ぬ時と復活の時の間には、時の隔たりが必ずあるに違いない。
07 そこでわたしは尋ねたい。人が死んだ時から復活の定められた時に至るまで、どのようなことが人に起こるのだろうか。
08 人がよみがえるように定められている時が2度以上あるのかどうか、それは重要ではない。すべての人は同時には死なないからである。また、このことも重要ではない。すなわち、神にあってはすべてが1日のようであり、時が計られるのは人に対してだけである。
09 したがって、人に対して、死者の中からよみがえるように定められた時がある。そして、死ぬ時と復活の時の間には、時の隔たりがある。この時の隔たりに関してどのようなことが人の霊に起こるのか、それが知りたくて、わたしは主に熱心に尋ねた。そして、このことをわたしは今知っている。
10 すべての人がよみがえる時が来ると、神は人に定められている時をすべて御存じであるということが分かるであろう。
11 さて、死と復活の間の人の状態についてであるが、見よ、天使がわたしに知らせてくれたところによれば、すべての人の霊は、この死すべき体を離れるやいなや、まことに、善い霊であろうと悪い霊であろうと、彼らに命を与えられた神のみもとへ連れ戻される。
12 そして、義人の霊はパラダイスと呼ばれる幸福な状態、すなわち安息の状態、平安な状態に迎え入れられ、彼らはそこであらゆる災難と、あらゆる不安と憂いを離れて休む。
13 さて、そのときの悪人の霊の状態はといえば、見よ、彼らは少しも主の御霊を受けずに、見よ、善い行いよりも悪い行いを好んだので、悪魔の霊が彼らの内に入り込んで、彼らの体を支配していた。それで、これらの霊は外の暗闇に追い出され、そこで涙を流し、泣きわめき、歯ぎしりをする。これは、彼ら自身の罪悪のために、悪魔の意のままに捕らえられて連れ去られた結果である。
14 さて、これが悪人の霊の状態である。まことに、暗闇の中で、自分たちに下る火の憤りのような神の激しい怒りを、ひどく恐れながら待っている状態である。義人がパラダイスにとどまるように、彼らはこのように、自分たちの復活の時までこの状態にとどまるのである。
15 さて、ある人々は、復活前の霊のこの幸福な状態とこの不幸な状態を、第1の復活と解釈してきた。まことに、わたしに告げられた御言葉からすれば、霊すなわち魂が引き上げられて幸福か不幸かの状態に置かれることを復活と呼んでもよいとわたしは認める。
16 また見よ、別に第1の復活があると述べられているが、それは過去にいたすべての人、現在いるすべての人、死者の中からキリストが復活されるまでの将来のすべての人の復活である。
17 さて、このように述べられているこの第1の復活とは、霊の復活があって幸福か不幸かの状態に置かれることではないと、わたしは考えている。これがそういう意味であると考えてはならない。
18 見よ、わたしはあなたに言うが、そうではなく、それはアダムの時代からキリストの復活に至るまでの人々の、霊と体との再結合を意味する。
19 さて、これらの人々が、義人だけでなく悪人でも皆その霊と体が再結合されるかどうか、わたしは言わない。ただ、彼らは皆出て来る、すなわちキリストの復活後に死ぬ人々の復活に先立って彼らの復活が起こると言えば十分である。
20 さて、わが子よ、わたしは彼らの復活がキリストの復活の時に起こるとは言わない。しかし見よ、わたしの考えとして述べるならば、義人の霊と体はキリストの復活の時、またキリストの昇天の時に再結合される。
21 しかし、それがキリストの復活の時かその後か、わたしは言わない。しかし、肉体の死と復活の間には時の隔たりがあるとだけ言っておこう。また、霊は幸福か不幸かいずれかの状態に置かれ、この状態は神が定められた時まで続く。その時が来ると、死者は出て来てその霊と体とが再結合され、神の御前に連れ出されて立ち、自分の行いに応じて裁かれるのである。
22 まことに、これがそれらのものの回復をもたらし、その回復については、預言者たちの口を通して語られてきたとおりである。
23 霊は体に回復され、体は霊に回復される。そして、手足と関節はことごとくその体に回復される。まことに、髪の毛一筋さえも失われることなく、すべてのものが本来の完全な造りに回復される。
24 わが子よ、これこそが預言者たちの口を通して語られてきた回復なのである。
25 そのとき、義人は神の王国で輝きを放つ。
26 しかし見よ、悪人には恐ろしい死が及ぶ。彼らは清くないので、義にかかわることに関して死んだ状態になるからである。清くない者は決して神の王国を受け継ぐことができず、彼らは追い出されて、自分の働きの成果、すなわち自分の悪い行いの結果を受けるように定められる。そして、苦い杯のかすを飲むのである。」
第41章
復活の時に、人々は出て来て、無窮の幸福な状態か、無窮の不幸な状態に入る。悪事は決して幸福を生じたことがない。この世的な状態にある者は、現世で神なしに生きている。人は皆、死すべき状態にあって身に付けた特質と性質を、回復の時に再び受ける。紀元前約74年。
01 「さて、わが子よ、今述べた回復について言っておくことが少しある。見よ、ある人々は聖文を曲げて解釈し、このことについて大いに迷っているからである。また、あなたもこのことについて心を悩ませてきたことが分かる。しかし見よ、このことについてあなたに説明しよう。
02 わが子よ、あなたに言っておく。回復の計画は神の正義にとって必要である。すべてのものがふさわしい状態に回復されることは必要だからである。見よ、キリストの力と復活からいえば、人の霊がその体に回復されることと、体のあらゆる部分が体そのものに回復されることは、必要であり正当なことである。
03 また、人々が自分の行いに応じて裁かれること、そして現世での彼らの行いが善く、心の望みも善かったならば、彼らが終わりの日に善なるものに回復されることは、神の正義にとって必要である。
04 また、彼らの行いが悪ければ、それらの行いは災いとして彼らに回復される。したがって、すべてのものはふさわしい状態に回復され、あらゆるものはその本来の体に回復されるのである。すなわち、死すべき状態は不死に、朽ちるものは朽ちないものによみがえるのである。そして、無窮の幸福な状態によみがえって神の王国を受け継ぐか、あるいは無窮の不幸な状態によみがえって悪魔の王国を受け継ぐ。すなわち、前者は一方にあり、後者は他方にある。
05 前者は幸福を望んだことによって幸福に、すなわち善を望んだことによって善によみがえり、後者は悪を望んだことによって悪によみがえる。後者は終日悪を行うことを望んだので、夜がやって来ると、報いとして災いを受けるからである。
06 もう一方も同様である。罪を悔い改めて、生涯の最後まで義を望む者は、義にかなう報いを与えられるであろう。
07 このような人々は主に贖われる。まことに、このような人々は、あの無窮の暗黒の夜から連れ出され、救われるのである。このようにして、人々は立ったり倒れたりする。見よ、人々は善を行うか悪を行うか自分で判断するからである。
08 さて、神の定めは変えることができない。そして、道は用意されており、望む者はだれでもその道を歩いて、救われるようになっている。
09 さて見よ、わが子よ、あなたはこれまで、教義のある点について罪を犯すという危険を冒してきたが、もう二度とその点について、神に対して罪を犯さないようにしなさい。
10 回復について述べられているというので、罪から幸福へ回復されると思ってはならない。見よ、あなたに言っておくが、悪事は決して幸福を生じたことがない。
11 さて、わが子よ、生まれながらの状態、すなわちこの世的な状態にあるすべての人は、苦汁の中にあり、罪悪の縄目を受けている。彼らはこの世で神なしに生きている人々であり、神の性質に反して行動してきた。したがって彼らは、幸福の本質に反する状態にある。
12 さて見よ、回復とは、あるものを自然の状態から取り去って不自然な状態、すなわちそのものの本質に反する状態に置くことであろうか。
13 おお、わが子よ、そうではない。回復とは悪を悪に、肉欲を肉欲に、悪心を悪心に、善を善に、義を義に、正義を正義に、憐れみを憐れみに再び返すことである。
14 したがって、わが子よ、同胞に対して常に憐れみ深くありなさい。公正に振る舞い、義にかなって裁き、絶えず善を行いなさい。これらのことをすべて行えば、そのときあなたは報いを受けるであろう。まことに、あなたに憐れみが再び回復され、再び公正が回復され、再び義にかなった裁きが回復され、再び善が報われるであろう。
15 あなたから出るものがあなたに返って来て、回復されるからである。したがって、回復という言葉は罪人をさらにはっきりと罪に定めるのであって、決して義とはしないのである。」
第42章
死すべき状態の現世は、人が悔い改めて神に仕えることを可能にする試しの時期である。堕落は全人類に肉体の死と霊の死をもたらした。贖いは悔い改めを通じて与えられる。神御自身が世の罪のために贖いをなさる。憐れみは悔い改める人々のためにある。悔い改めない者は皆、神の正義の支配を受ける。憐れみは贖罪により与えられる。心から悔い改める者だけが救われる。紀元前約74年。
01 「さて、わが子よ、今あなたの心を悩ましている、あなたの理解できないことがほかにも多少あることを、わたしは知っている。それは罪人を罰する神の公正についてである。あなたは罪人が不幸な状態に置かれるのは不当であると思っている。
02 さて見よ、わが子よ、このことをあなたに説明しよう。見よ、主なる神はわたしたちの始祖をエデンの園から追い出して、彼らの肉体が造られた土を耕すようにされた後、まことに主なる神は人を追い出された後、エデンの園の東の端にケルビムとあらゆる方向に回る燃える剣を置いて、命の木を守らせられた。
03 わたしたちが知っているように、人は神のようになり、善悪をわきまえるようになった。そこで、人が手を伸ばして命の木からも取って食べ、とこしえに生き長らえることのないように、主なる神はケルビムと燃える剣とを置いて、人がその木の実を食べられないようにされた。
04 このことから分かるように、人が悔い改めることを許された期間があった。まことに、それは試しの時期であり、悔い改めて神に仕える時期である。
05 見よ、もしアダムがすぐに手を伸ばして命の木から取って食べていたら、彼は悔い改めの期間がまったくないまま、神の御言葉のとおりにとこしえに生き長らえたであろう。そして、神の御言葉はむなしくなり、偉大な救いの計画は挫折していたことであろう。
06 しかし見よ、人は死ぬものと定められた。そこで人は、命の木から絶たれたときに、地の面から絶たれることとなった。そして人は、とこしえに迷った状態になり、まことに、堕落した者となったのである。
07 さて、これによって分かるように、わたしたちの始祖は、肉体的にも霊的にも主の御前から絶たれてしまった。このようにして、わたしたちが知っているように、彼らは自分の意志に従う者となったのである。
08 さて見よ、そのときすぐに人がこの肉体の死から救われることは、偉大な幸福の計画を損なうことになるので適当ではなかった。
09 そこで、魂は決して死ぬことがあり得ず、また堕落は全人類に肉体の死だけでなく霊の死ももたらしたので、すなわち彼らは主の御前から絶たれたので、人類はこの霊の死から救われることが望まれた。
10 人類は生まれながらの本性のために、肉欲や官能におぼれ、悪魔に従う者となったので、この試しの状態は彼らが用意をする状態となった。すなわち、準備の状態となったのである。
11 さて、わが子よ、覚えておきなさい。もし贖いの計画がなければ(それを捨てるならば)、人が死ぬとすぐに、その霊は主の御前から絶たれるので不幸な状態に陥ったであろう。
12 さて、人々をこの堕落した状態から救い出す手段はまったくなかった。この堕落した状態は、人が自分の不従順のために自分自身に招いたものである。
13 したがって、正義によれば、贖いの計画はこの試しの状態、すなわちこの準備の状態で人々が悔い改めるという条件がなければ成し遂げられない。これらの条件がなければ、正義の働きを損なうことなしに憐れみが効力を発することは不可能だからである。正義の働きが損なわれることはあり得ない。もしそのようなことがあれば、神は神でなくなる。
14 このようにして、わたしたちが知っているように、全人類は堕落した状態になり、正義の支配下に入った。まことに、この正義は神の正義であり、全人類がとこしえに神の御前から絶たれることになったのである。
15 さて、憐れみの計画は、贖罪が行われなければ成し遂げることができなかった。したがって、神は憐れみの計画を成し遂げるため、正義の要求を満たすため、また御自分が完全で公正な神、憐れみ深い神であり続けるために、御自分で世の罪の贖いをされるのである。
16 さて、罰がなければ、人は悔い改めをすることができなかった。この罰も霊の命と同じように永遠のものであり、霊の命と同じように永遠である幸福の計画に相対して定められたのである。
17 人は罪を犯さなければ、どうして悔い改めることができようか。律法がまったくなければ、どのようにして人は罪を犯すことができようか。罰がなければ、どうして律法があり得ようか。
18 罰が定められ、公正な律法が与えられて、それらが人に良心のとがめを生じさせた。
19 もしも、人殺しをした者は死ななければならないという律法が与えられていなければ、人は人殺しをすれば自分が死ぬことになると恐れるであろうか。
20 また、もし罪を禁じる律法がまったく与えられていなければ、人は罪を犯すことを恐れないであろう。
21 もし律法がまったく与えられていなければ、たとえ人が罪を犯しても、正義や憐れみに何ができるであろうか。正義も憐れみもその人について何も要求する権利を持たないであろう。
22 しかし、現在、律法が与えられ、罰が定められており、悔い改めが許されている。そして、憐れみは悔い改めを要求する。そうでなければ、正義がその人について権利を主張し、律法を執行し、律法は罰を負わせる。もしそうでなければ、正義の働きは損なわれ、神は神でなくなる。
23 しかし、神が神でなくなることはなく、憐れみは悔い改める者について権利を主張する。憐れみは贖罪によって与えられるのである。そして、贖罪は死者の復活をもたらし、死者の復活は人を神の御前に連れ戻す。このようにして、人は神の御前に連れ戻され、律法と正義により、自分の行いに応じて裁かれる。
24 見よ、正義は正義のすべての要求を働かせ、また、憐れみは憐れみを受ける資格のあるすべての者について権利を主張する。したがって、心から悔い改める者のほかにはだれも救われない。
25 あなたは憐れみが正義から何を奪うことができると思うか。いや、何も奪うことができない、とわたしは言おう。もし奪えるようであれば、神は神でなくなる。
26 このようにして神は、世の初めから用意されていた御自分の偉大な永遠の目的を達せられる。そしてこのようにして、人の救いと贖いと、また滅びと不幸が生じるのである。
27 したがって、わが子よ、来たいと思う者はだれでも来て、価なしに命の水を飲むことができる。また、来たいと思わない者はだれも来るように強いられない。しかしその者は、終わりの日にその行いに応じて回復を受ける。
28 もし彼が悪を行いたいと望んで、生涯悔い改めなければ、神の回復の原則によって、見よ、彼に災いが及ぼされる。
29 さて、わが子よ、あなたはこれからはもう、これらのことに思い悩まされることなく、ただ自分の罪にだけ心を悩まし、その悩みによって悔い改めに導かれるようにしてもらいたい。
30 おお、わが子よ、あなたはこれからはもう、神の正義を否定しないようにしてもらいたい。神の正義を否定することによって、どんなささいなことでも罪の言い訳をしようとしてはならない。むしろ、神の正義と憐れみと寛容があなたの心の中で存分に力を振るえるようにし、そのためにへりくだって地にひれ伏すことができるようにしなさい。
31 さて、おお、わが子よ、あなたはこの民に御言葉を告げ知らせるために神から召されている。わが子よ、あなたの道を行き、誠実にまじめに御言葉を告げ知らせて、人々を悔い改めに導き、偉大な憐れみの計画が彼らについて権利を主張できるようにしなさい。神がまことにわたしの言葉のとおりにあなたにかなえてくださるように。アーメン。」
第43章
アルマとその息子たち、御言葉を宣べ伝える。ゾーラム人とほかのニーファイ人の離反者たち、レーマン人となる。レーマン人、ニーファイ人を攻める。モロナイ、ニーファイ人に防御用の武具を着けさせる。主、アルマにレーマン人の作戦を明らかにされる。ニーファイ人、自分たちの家と自由、家族、宗教を守る。モロナイの軍隊とリーハイの軍隊、レーマン人を包囲する。紀元前約74年。
01 さて、アルマの息子たちは御言葉を告げ知らせるために民の中に出て行った。また、アルマ自身も休んでいることができず、彼もまた出て行った。
02 ところで、彼らの宣教についてはこれ以上述べないが、ただ、彼らが預言と啓示の霊によって御言葉と真理を宣べ伝えたとだけ言っておく。彼らは召されている神の聖なる位に従って教えを説いた。
03 ここで、ニーファイ人とレーマン人の間の戦争の話に戻ろう。それはさばきつかさの統治第18年のことである。
04 さて見よ、ゾーラム人はレーマン人となってしまった。そして第18年の初めに、ニーファイ人の民はレーマン人が攻め寄せて来るのを見て、戦争の準備をした。すなわち、彼らはジェルションの地に軍隊を集めた。
05 さて、レーマン人は数千人の軍勢でやって来ると、ゾーラム人の土地であるアンテオヌムの地に入って来た。彼らの指揮官はゼラヘムナという名の男であった。
06 ところで、アマレカイ人は元来レーマン人よりももっと邪悪で、殺人を好む気質を持った者たちであったので、ゼラヘムナがレーマン人を率いる連隊長として任命した者たちは皆、アマレカイ人とゾーラム人であった。
07 彼がこのようにしたのは、レーマン人に引き続きニーファイ人を憎ませ、レーマン人を服従させて自分の企てを果たすためであった。
08 見よ、彼の企ては、レーマン人をそそのかしてニーファイ人に対して怒りを抱かせることであった。彼がこのようにしたのは、レーマン人を支配する大きな権力を自分のものとし、さらにニーファイ人を奴隷にして彼らを支配する権力をも得るためであった。
09 ところが、ニーファイ人の目的は、自分たちの土地と家、妻子を保護して、これらのものが敵の手に落ちないようにすること、また自分たちの権利と特権と、望みのままに神を礼拝できる自由を保つことであった。
10 彼らは、もしレーマン人の手に落ちれば、霊とまことをもって神を、すなわちまことの生ける神を礼拝する者を皆、レーマン人が殺すことを知っていたからである。
11 彼らはまた、レーマン人が彼らの同胞、すなわちアンモンの民と呼ばれているアンタイ・ニーファイ・リーハイ人に対してひどい憎しみを抱いていることも知っていた。アンモンの民は武器を取ろうとしなかった。彼らは聖約を交わしており、それを破ろうとはしなかった。したがって、もしレーマン人の手に落ちれば、彼らは滅ぼされたであろう。
12 ニーファイ人は、彼らが滅ぼされるままにしておくのを望まなかったので、彼らに受け継ぎとして土地を譲った。
13 そして、アンモンの民はニーファイ人に、彼らの軍隊を支援するために自分たちの持ち物の多くを提供した。このようなわけで、ニーファイ人はやむを得ず単独でレーマン人に立ち向かうことになった。一方レーマン人は、レーマンとレムエルとイシマエルの息子たちの子孫、およびニーファイ人から離反してアマレカイ人やゾーラム人になったすべての者、ならびにノアの祭司たちの子孫から成っていた。
14 ノアの祭司たちの子孫はニーファイ人とほぼ同数であった。したがって、ニーファイ人は自分たちの同胞と血を流してでも戦わざるを得なかった。
15 さて、レーマン人の軍隊がアンテオヌムの地に集まっていたので、見よ、ニーファイ人の軍隊はジェルションの地で彼らと戦いを交える用意をした。
16 ところで、ニーファイ人の指揮官、すなわちニーファイ人を率いる司令官に任命された人、この司令官がニーファイ人の全軍の指揮を執ったが、その人はモロナイという名であった。
17 モロナイは一切の指揮を執り、軍政をつかさどった。彼がニーファイ人の軍隊を率いる司令官に任命されたのは、わずか25歳のときであった。
18 さて、彼はジェルションの地の境でレーマン人と相対した。このとき、彼の民は剣と三日月刀、そのほかあらゆる武器で武装していた。
19 レーマン人の軍隊がニーファイの民を見ると、モロナイは胸当てと腕盾と、頭部を防御する防具を彼の民に装備させていた。また、彼らは厚手の衣を着ていた。
20 ところが、ゼラヘムナの軍隊はそのようなものは着けておらず、ただ剣と三日月刀、弓と矢、石と石投げを携えているだけであった。また、腰に皮をまとっているほかは裸であった。ゾーラム人とアマレカイ人以外、全員が裸であった。
21 そのように、彼らは胸当てや盾で武装していなかったので、ニーファイ人より人数が多かったにもかかわらず、ニーファイ人の軍隊の武具を見てひどく恐れた。
22 見よ、そこで彼らは、ジェルションの地の境であえてニーファイ人を攻めようとせず、アンテオヌムを去って荒れ野へ向かった。そして、はるかシドン川の源の近くを、荒れ野の中を遠回りして進み、マンタイの地に入ってその地を占領しようとした。彼らは自分たちがどこへ行ったかモロナイの軍隊には分からないであろうと思ったからである。
23 しかし、彼らが荒れ野に向かって出発するとすぐに、モロナイは数人の密偵を荒れ野に送り込んで、彼らの陣営をうかがわせた。モロナイはまた、アルマの数々の預言のことを知っていたので、ある人々をアルマのもとに遣わし、レーマン人を防ぐためにニーファイ人の軍隊はどこへ行けばよいか、主に尋ねてほしいと願った。
24 そこで、主の言葉がアルマに下った。そして、アルマはモロナイの使者たちに、レーマン人の軍隊は荒れ野の中を遠回りして進んでおり、彼らはマンタイの地へ行って民の弱い部分に攻撃を仕掛けようとしていると告げた。そこで、使者たちは帰って、モロナイにその伝言を伝えた。
25 そこでモロナイは、軍隊の一部をジェルションの地に残して、レーマン人の一部がその地にやって来て町を占領することのないように備えておき、軍隊の残りを率いてマンタイの地へ進軍した。
26 そしてモロナイは、その地のすべての人を集め、レーマン人と戦って彼らの土地と国、権利と自由を守らせるようにした。このようにして彼らは、レーマン人の来襲に備えたのである。
27 さて、モロナイは、シドン川の岸に近い谷に自分の軍隊を隠した。そこはシドン川の西方の荒れ野の中であった。
28 またモロナイは、方々に密偵を配置し、レーマン人の軍隊が来たときにそれが分かるようにした。
29 モロナイはレーマン人の目的を知っていた。彼らの目的は、自分たちの同胞を滅ぼすか、そうでなければ同胞を服従させて奴隷にし、全地に彼ら自身のための王国を築くことであった。
30 またモロナイは、ニーファイ人のただ一つの望みが自分たちの土地と自由と教会を守ることであるのを知っていたので、計略を用いてニーファイ人を守ることは少しも罪ではないと思った。そこで彼は何人もの密偵を使って、レーマン人がどの進路を取ろうとしているかを探った。
31 その結果、彼は自分の軍隊を分けて、一部を川を渡らせて谷に入れ、東方に、すなわちリプラの丘の南方に彼らを隠した。
32 また、残りの兵をシドン川の西方の西の谷に、マンタイの地の境に至るまで隠した。
33 このように彼は、自分の望むままに軍隊を配置し、レーマン人と戦いを交える用意をした。
34 そして、レーマン人はモロナイの軍隊の一部が隠れている丘の北方を上って来た。
35 そして彼らは、リプラの丘を過ぎて谷に入り、シドン川を渡り始めた。そこで、丘の南方に隠れていて、リーハイという名の人に率いられていた軍隊が、彼の指揮の下に東方からレーマン人の背後を包囲した。
36 そこでレーマン人は、ニーファイ人が背後から攻めて来るのを見て、向きを変えてリーハイの軍隊と戦い始めた。
37 そして、双方ともに死者が出始めたが、死者はレーマン人の方がはるかに多かった。レーマン人はニーファイ人の剣と三日月刀による激しい攻撃にその裸の体をさらしており、ほとんど一太刀ごとに死んだからである。
38 一方、ニーファイ人は体の特に大切な部分が保護されていたので、すなわち、体の特に大切な部分が胸当てと腕盾とかぶとでレーマン人の攻撃から保護されていたので、レーマン人の剣に触れ、血を失ったことにより倒れる者が時折いたくらいであった。このようにニーファイ人はレーマン人を殺し続けた。
39 そこでレーマン人は、味方が大勢殺されたことでおびえ、とうとうシドン川の方へ逃げ始めた。
40 そして彼らは、リーハイと彼の兵たちに追撃され、リーハイによってシドンの水の中に追い込まれて、シドンの水を渡った。しかしリーハイは、軍隊をシドン川の岸にとどめ、彼らには川を渡らせなかった。
41 そして、モロナイと彼の軍隊がシドン川の対岸の谷でレーマン人を迎え、攻めかかって彼らを殺し始めた。
42 そこでレーマン人は、再び彼らの前から逃げ出し、マンタイの地へ向かった。ところが、またしてもモロナイの軍隊に出会ってしまった。
43 するとこの度は、レーマン人も激しく戦った。レーマン人はいまだかつて知られていないほど、すなわち、両者の戦争が始まって以来一度もなかったほど、非常に大きな力と勇気を奮って戦った。
44 彼らは自分たちの連隊長であり指揮官であるゾーラム人とアマレカイ人、および総隊長すなわち総指揮官であり総司令官であるゼラヘムナに励まされた。まことに、彼らは龍のように戦い、多くのニーファイ人が彼らの手によって殺された。まことに、彼らはニーファイ人のかぶとをたくさん打ち割り、ニーファイ人の胸当てをたくさん刺し貫き、ニーファイ人の腕をたくさん切り落とした。このようにレーマン人は激しく怒って打ちかかった。
45 しかし、ニーファイ人はもっと良い動機に励まされていた。彼らは君主制のために戦ったのではなく、権力のためでもなく、自分たちの家と自由と、妻子と、自分たちのすべてのもののために、特に礼拝の儀式と教会のために戦っていた。
46 彼らは、神に義務を負っていると感じていたことを行っていたのである。主は彼らに、また彼らの先祖に、「あなたがたは最初の攻撃についても、2度目の攻撃についても、罪を犯していないかぎり、敵の手によって殺されるに任せてはならない」と言われたからである。
47 主はまた、「あなたがたは血を流してでも自分たちの家族を守りなさい」とも言われた。したがって、ニーファイ人は自分自身と家族、土地、国、権利、宗教を守るためにレーマン人と戦っていたのである。
48 さて、モロナイの兵たちは、レーマン人の勇猛ぶりと怒りを見ると、恐れをなして逃げ出そうとした。しかしモロナイは、兵たちの思いを見抜くと、使者を出し、次のこと、すなわち自分たちの土地と自由のこと、まことに奴隷の状態に陥るのを免れることを思い出させて、彼らの心を奮い立たせた。
49 そこで彼らは、レーマン人の方に向き直り、声を合わせて主なる神に、自由を保ち、奴隷の状態に陥るのを免れることができるように叫び求めた。
50 そして彼らは、力を得てレーマン人に立ち向かった。すると、彼らが主に自由を叫び求めると同時にレーマン人は彼らの前から逃げ始め、シドンの水際まで退いた。
51 レーマン人はニーファイ人よりも多く、まことに倍以上の人数であったにもかかわらず、彼らは追いやられて、その谷でシドン川の岸に一団となって集まった。
52 そこで、モロナイの軍隊は彼らを包囲した。すなわち、リーハイの兵たちが川の東側にいたため、川の両側から包囲する形になった。
53 ゼラヘムナはシドン川の東にいるリーハイの兵とシドン川の西にいるモロナイの軍隊を見て、自分たちがニーファイ人に包囲されているのを知り、彼らは恐れおののいた。
54 モロナイは彼らが恐れているのを見て、血を流すのをやめるように兵に命じた。
【動画】司令官モロナイ,ゼラヘムナを打ち負かす
第44章
モロナイ、平和の誓いを立てるようにレーマン人に命じ、そうしなければ滅びると警告する。ゼラヘムナ、その申し出を拒絶し、戦いが続く。モロナイの軍隊、レーマン人を打ち負かす。紀元前約74年から73年に至る。
01 さて、モロナイの兵は戦うのをやめて、レーマン人から一歩退いた。そこで、モロナイはゼラヘムナに言った。「見よ、ゼラヘムナよ、我々は血を流す者にはなりたくない。おまえたちにも分かるとおり、おまえたちは我々の手の中にある。しかし、我々はおまえたちを殺したくない。
02 見よ、我々がおまえたちと戦うためにやって来たのは、おまえたちの血を流して権力を得るためでは決してない。また、だれかに奴隷のくびきをかけたいと思っているためでもない。しかし、おまえたちが我々を攻めて来たのは、まさにこのためである。そのうえ、おまえたちは我々の宗教のことで我々に腹を立てている。
03 しかし、おまえたちの見るとおり、主は我々とともにおられる。おまえたちの見るとおり、主はおまえたちを我々の手に渡された。主が我々にこうしてくださったのは、我々の宗教とキリストを信じる我々の信仰のためであることを知ってもらいたい。また、おまえたちの見るとおり、おまえたちはこの我々の信仰を打ち砕くことはできない。
04 おまえたちの見るとおり、これは神のまことの信仰である。まことに、おまえたちの見るとおり、我々が神と自分の信仰と宗教に忠実であるかぎり、神は我々を支え、保ち、守ってくださる。また、我々が戒めに背いて自分の信仰を否定するようなことがなければ、主は我々が滅ぼされるのを決してそのままにしておかれない。
05 ゼラヘムナよ、我々の腕を強くしておまえたちを打ち負かす力を得させてくださったあの全能の神の御名によって、また我々の信仰、宗教、礼拝の儀式、教会にかけて、妻子を養う神聖な務めにかけて、我々の国土に愛着を起こさせる自由にかけて、我々のあらゆる幸福の源である神の神聖な御言葉を守る行為にかけて、また我々にとって非常に大切なすべてのものにかけて、わたしはおまえに命じる。
06 それだけではない。おまえたちが生き延びたいと思っている望みにかけて、おまえに命じる。我々に武器を引き渡せ。そうすれば、我々はおまえたちの血を求めない。もしおまえたちが去って、再び攻めて来ないというのであれば、命を助けてやろう。
07 しかし、もしそうしないのであれば、見よ、おまえたちは我々の手の中にあるので、わたしは兵に命じて攻撃させ、おまえたちの身に致命傷を負わせて全滅させよう。そのときに、我々のどちらがこの民を治める権力を持ち、どちらが奴隷になるかが分かるであろう。」
08 さて、ゼラヘムナはこれらの言葉を聞くと、前に進み出て、剣と三日月刀と弓をモロナイの手に渡して言った。「見よ、我々の武器はこのとおりおまえたちに渡そう。しかし、将来我々も子孫も破ると分かっている誓いについては、これをおまえたちに立てることはできない。だが、武器を受け取り、我々を荒れ野へ去らせてくれ。さもなければ、我々は自分の剣を渡さずに、滅びるか勝利を得るか決するまで戦い続ける。
09 見よ、我々は、おまえたちと同じ信仰を持ってはいない。神が我々をおまえたちの手に渡したなどとは信じない。我々は、おまえたちを我々の剣から守ったのはおまえたちの悪知恵であると思っている。見よ、おまえたちを守ったのは胸当てと盾だ。」
10 ゼラヘムナがこれらの言葉を語り終えると、モロナイは受け取った剣と武器をゼラヘムナに返して言った。「さあ、戦いの決着をつけよう。
11 わたしはすでに語った言葉を取り消すことができないので、主が生きておられるように確かに、二度と我々のもとに戻って来て戦わないと誓って去るのでなければ、おまえたちを去らせるわけにはいかない。おまえたちは我々の手の中にあるので、我々はおまえたちの血を地上に流そう。それが嫌ならば、おまえたちはわたしの告げた条件に従え。」
12 モロナイがこれらの言葉を述べると、ゼラヘムナは剣を取った。そして、モロナイのことを怒り、モロナイを殺そうとして駆け寄った。しかし、ゼラヘムナが剣を振り上げたとき、見よ、モロナイの兵の一人がそれを地にたたき落とした。すると、それは柄のところで折れてしまった。その兵はまた、ゼラヘムナを打って彼の頭の皮をはぎ、それを地に落とした。そこでゼラヘムナは、自分の兵の中に逃げ込んでしまった。
13 そして、傍らに立っていたゼラヘムナの頭の皮をはぎ取った兵は、その頭皮を、髪をつかんで地から拾い上げ、剣の先に引っかけてレーマン人の方に差し伸べ、大声で彼らに言った。
14 「おまえたちが武器を引き渡して平和の誓いを立てて去らなければ、おまえたちの指揮官のこの頭の皮が地に落ちたように、おまえたちも地に倒れることになるだろう。」
15 レーマン人はこの言葉を聞き、剣にかけられている頭の皮を見て、多くの者が恐れをなした。そして、多くの者が進み出て、モロナイの足もとに武器を投げ出し、平和の誓いを立てた。そして、誓いを立てた者は皆、荒れ野へ立ち去ることを許された。
16 そこで、ゼラヘムナは非常に怒り、残った兵たちをそそのかして怒らせ、前よりもさらに激しくニーファイ人と戦わせた。
17 そして、モロナイもレーマン人が強情であることを怒って、彼らを攻めて殺すように民に命じた。そこで、彼の民はレーマン人を殺し始め、レーマン人も剣を振るい、力を尽くして応戦した。
18 しかし見よ、レーマン人は、むき出しの肌と覆いのない頭をニーファイ人の鋭い剣にさらしており、まことに見よ、彼らは刺し貫かれ、討たれて、ニーファイ人の剣の前で見る間に倒れていった。そして、モロナイの兵が預言したように、彼らは一掃され始めた。
19 するとゼラヘムナは、彼らが皆殺しにされてしまいそうなのを見て、モロナイに必死に叫び求めて、残った者の命を助けてくれるならば自分も部下も二度と攻めて来ないと誓うことを約束した。
20 そこでモロナイは、再び殺すのをやめさせ、レーマン人から武器を取り上げた。こうしてレーマン人は、モロナイと平和の誓いを立てた後、荒れ野へ立ち去ることを許された。
21 両軍の死者は多数に及んだために数えられなかった。死者の数はニーファイ人側でもレーマン人側でも非常に多かった。
22 そこで彼らは死体をシドンの水に投げ込み、死体は流れて行って海の深みに葬られた。
23 その後、ニーファイ人の軍隊、すなわちモロナイの軍隊は引き揚げ、自分たちの家と土地へ帰って行った。
24 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第18年が終わった。これでニーファイの版に書き記されていたアルマの記録は終わった。
ヒラマンの時代のニーファイの民と、彼らの戦争と不和についての話。ヒラマンが生涯書き続けた記録による。次の第45〜62章がそれに相当する。
第45章
ヒラマン、アルマの言葉を信じる。アルマ、ニーファイ人の滅亡を預言する。アルマ、地を祝福し、またのろう。アルマ、モーセのように御霊によって取り上げられたと伝えられる。教会の中に不和が募る。紀元前約73年。
01 さて見よ、主が再び敵の手から救ってくださったので、ニーファイの民は非常に喜び、主なる神に感謝をささげた。そして、彼らは大いに断食し、大いに祈り、非常に大きな喜びをもって神を礼拝した。
02 さて、ニーファイの民のさばきつかさの統治第19年に、アルマは息子ヒラマンのところに来て、「これまで書き継がれてきた記録についてあなたに語った言葉を信じるか」と彼に言った。
03 そこで、ヒラマンは、「はい、信じています」と言った。
04 すると、アルマはまた、「将来来られるイエス・キリストを信じるか」と言った。
05 そこで彼は、「はい。お父さんの言った言葉をすべて信じています」と言った。
06 すると、アルマはまた彼に、「あなたはわたしの命じてきたことを守るか」と言った。
07 そこで彼は、「はい、命じられたことを、わたしは心を尽くして守ります」と言った。
08 すると、アルマは彼に言った。「あなたは幸いだ。主はあなたをこの地で栄えさせてくださるであろう。
09 見よ、あなたに預言しておくことが少しある。しかし、わたしがあなたに預言することを公にしてはならない。まことに、わたしがあなたに預言することは、その預言が成就するまで公にしてはならない。だから、わたしが告げる言葉を書き留めなさい。
10 その言葉は次のとおりである。見よ、わたしは自分の内にある啓示の霊によって知っている。この民、ニーファイ人は、イエス・キリストがこの民に御自身を現されるときから400年たつと不信仰に陥る。
11 そのときに彼らは戦争と疫病、まことに、飢饉と流血を目にし、ついにニーファイの民は全滅するであろう。
12 これは、彼らが不信仰になり、また闇の業と好色とすべての罪悪に陥るからである。わたしはあなたに言う。彼らが非常に大きな光と知識に対して罪を犯すからである。まことに、言っておくが、その日から第4世代の人々が全員世を去る前に、この大きな罪悪が起こるであろう。
13 その大いなる日が来ると、見よ、今いる者たち、今ニーファイの民の中に数えられている者たちの子孫がもはやニーファイの民の中に数えられない時がすぐに来る。
14 そのときに生き残って、大いなる恐るべき日に滅ぼされない者は、主の弟子と呼ばれる少数の者を除いて、皆レーマン人の中に数えられ、レーマン人のようになる。しかも、主の弟子と呼ばれる者たちもレーマン人に追われ、ついに彼らも絶えてしまう。罪悪のために、将来この預言は成就するであろう。」
15 さて、アルマはヒラマンにこれらのことを述べた後、彼を祝福し、ほかの息子たちをも祝福し、さらに義人のために地をも祝福した。
16 そして、アルマは言った。「主なる神は言われる。『地は、まことにこの地は悪を行うあらゆる国民、部族、国語の民、民族に対してのろわれる。悪が完全に熟すとき、彼らは滅びるであろう。』必ずわたしが言ったようになる。これは神が地に下されたのろいであり、祝福だからである。主はほんのわずかでも、罪を見過ごしにされることはないからである。」
17 アルマはこれらの言葉を語り終えると、教会員を、すなわちそのときから後信仰にしっかりと立つすべての人を祝福した。
18 そして、アルマはこれを済ませると、ミレクの地へ向かうようにゼラヘムラの地を出て行った。ところがそれ以降、彼の消息は絶えてしまった。彼の死や埋葬についてわたしたちは知らない。
19 見よ、わたしたちが知っているのは、彼が義人であったということである。また、彼は御霊によって取り上げられた、すなわち、モーセのように主の手によって葬られたという説が教会員の間に広まった。しかし見よ、聖文には主がモーセを御自分のもとに受け入れられたと述べられているので、わたしたちは主がアルマも霊にあって御自分のもとに受け入れられたと考えている。このために、わたしたちは彼の死と埋葬について何も知らないのである。
20 さて、ニーファイの民のさばきつかさの統治第19年の初めに、ヒラマンは御言葉を告げ知らせるために民の中に出て行った。
21 見よ、レーマン人との戦争のため、また民の中にあった多くの小さな不和と騒動のために、神の言葉を民の中で告げ知らせることと、教会全体にわたって統一を図ることが必要になったからである。
22 そこで、ヒラマンと彼の同僚たちは、すべての地に、すなわちニーファイの民が所有している全地のすべての町に再び教会を設けるために出て行った。そして彼らは、全地の至る所でそれぞれの教会をつかさどる祭司と教師を任命した。
23 そして、ヒラマンと彼の同僚たちがそれぞれの教会をつかさどる祭司と教師を任命した後、教会員の中に不和が起こり、彼らはヒラマンと彼の同僚たちの言葉を心に留めようとしなくなった。
24 彼らは非常に豊かに富を持つようになったために、心の中で高ぶり、次第に高慢になった。そのため、彼らはますます富に目を向けるようになり、また、神の前をまっすぐに歩むようにという、ヒラマンとその同僚たちの言葉を心に留めようとしなくなった。
第46章
アマリキヤ、王になろうとたくらむ。モロナイ、自由の旗を掲げる。モロナイ、宗教を守るために民を呼び集める。まことの信者はクリスチャンと呼ばれる。ヨセフの残りの者が守り残される。アマリキヤと離反者たち、ニーファイの地へ逃げる。自由の大義を支持しようとしない者たちは死刑に処せられる。紀元前約73年から72年に至る。
01 さて、ヒラマンと彼の同僚たちの言葉に聞き従おうとしない者たちは皆、同胞に対抗するために集まった。
02 そして見よ、彼らはひどく怒って、同胞を殺そうと決意した。
03 このように同胞に対して怒った者たちの首謀者は、大きな強い男で、その名をアマリキヤといった。
04 アマリキヤは王になることを望んでおり、また、怒りを抱いた者たちも、彼が王になることを願った。これらの者たちはその大半が国の下級さばきつかさであり、権力を得ようとしていた。
05 彼らは、もし自分を支持して王に立ててくれれば民の指導者にしようという、アマリキヤの甘言に乗ったのである。
06 このようにして、ヒラマンと彼の同僚たちが教えを説いたにもかかわらず、また、教会をつかさどる大祭司であった彼らの、教会に対する非常に深い配慮があったにもかかわらず、これらの者たちはアマリキヤに惑わされて離反してしまった。
07 そして、アマリキヤのへつらいの言葉を信じた者が教会の中に大勢おり、彼らは教会から離反してしまった。ニーファイの民はレーマン人に対して大勝利を収め、主の手によって解放されたことで大きな喜びを得たにもかかわらず、このように彼らの状態は非常に不安定で危険であった。
08 以上のことから、人の子らが主なる神を忘れるのがどれほど早く、また罪悪を行うことや悪しき者に惑わされることがどれほど早いかが分かる。
09 さらに、一人の非常に悪い人間が、人の子らの中に大きな悪事を引き起こす原因になることがあるということも分かる。
10 また、わたしたちの知っているように、アマリキヤは狡猾な策略に通じた男であり、多くのへつらいの言葉に長じた男であったので、多くの人の心を惑わして悪いことを行わせ、また神の教会を滅ぼさせようとし、さらに神がニーファイ人に与えられた自由の基、すなわち神が義人のために地の面に送られた祝福である自由の基を損なわせようとした。
11 さて、ニーファイ人の軍隊の総司令官であったモロナイは、これらの離反について聞き、アマリキヤのことを怒った。
12 そして、自分の衣を裂いて、その一片を取り、それに「我々の神と宗教、自由、平和、妻子のために」と書いて、竿の先にしっかりとくくり付けた。
13 それから、彼は自分のかぶとと胸当てと盾をしっかりと身に着け、よろいを腰にまとい、先端に裂いた衣を付けた竿を取って(彼はそれを自由の旗と呼んだ)、地にひれ伏し、そしてクリスチャンの一団が残ってその地を所有しているかぎり、自分の同胞に自由の祝福をとどめてくださるようにと、熱烈に神に祈った。
14 神の教会に属しているキリストのまことの信者は皆、教会に属していない者たちからクリスチャンと呼ばれていた。
15 教会に属している人々は忠実であった。キリストのまことの信者であった人々は皆、将来来られるキリストを信じていたので、呼ばれるままにキリストの名、すなわちクリスチャンという名を喜んで受けた。
16 したがって、このときモロナイは、クリスチャンの大義と国の自由に神の恵みがあるようにと祈ったのであった。
17 さて、彼はその心を神に注ぎ出してから、デソレションの地の南の全地を、要するに、北方も南方も含めた全地を、選ばれた地、自由の地と名付けた。
18 そして、彼は言った。「わたしたちはキリストの御名を受けているためにさげすまれるが、わたしたちが自分の背きによって自分の身に災いを招くまでは、決して神はわたしたちが踏みにじられ、滅ぼされるのをお許しにならない。」
19 モロナイはこの言葉を述べてから、民の中に出て行き、裂いた衣の一片に書いた文字がすべての人に見えるように、その裂いた衣を空中で打ち振り、大声で叫んで言った。
20 「見よ、この地にこの旗を立てて守ろうとする者たちは皆、主の力をもって出て来なさい。そして、主なる神から祝福を頂けるように、自分たちの権利と宗教を守るという聖約を交わそうではないか。」
21 さて、モロナイがこの言葉を宣言したところ、見よ、人々は腰によろいをまとって走ってやって来て、主なる神を捨てないしるしとして、すなわち聖約として自分たちの衣を裂いた。言い換えれば、もし神の戒めに背くならば、すなわち律法に背いてキリストの名を受けるのを恥とするならば、自分たちが衣を裂いたように、主が自分たちを裂かれてもよいということであった。
22 これが彼らの交わした聖約である。そして彼らは、自分たちの衣をモロナイの足もとに投げ出して言った。「わたしたちは神と聖約します。わたしたちはもし戒めに背くならば、北方の地の同胞のように滅ぼされるでしょう。まことに、もし戒めに背くならば、わたしたちが衣をあなたの足もとに投げ出し、踏みつけられるに任せるように、神がわたしたちを敵の足もとに投げ出されますよう。」
23 そこでモロナイは、彼らに言った。「見よ、わたしたちはヤコブの子孫の残りの者である。また、わたしたちは兄弟に衣をずたずたに裂かれた、ヨセフの子孫の残りの者である。見よ、わたしたちは神の戒めを守るのを忘れないようにしよう。さもなければ、わたしたちの衣は同胞によって裂かれ、わたしたちは牢に入れられるであろう。あるいは売られたり、殺されたりするであろう。
24 わたしたちはヨセフの残りの者として自由を保とう。ヤコブが死ぬ前に語った言葉を覚えておこう。見よ、ヤコブはヨセフの衣の切れ端が保存されており、朽ちていないのを見て言った。『息子の衣のこの切れ端が保存されてきたように、息子の子孫の一部の者は神の御手によって守られ、神御自身のみもとに受け入れられるであろう。しかし、ヨセフの子孫の残りの者は、彼の衣のほかの部分のように滅びてしまう。
25 さて見よ、これはわたしにとって悲しいことだが、息子の子孫の一部の者が神のみもとに受け入れられるので、わたしはその息子のために喜ぶ。』
26 見よ、ヤコブはこのように語った。
27 ヨセフの衣のように滅びてしまうヨセフの残りの者とは、わたしたちから離反した者たちではないと、だれに分かるであろうか。わたしたちがキリストの信仰をもってしっかりと立たなければ、それはわたしたち自身にさえ当てはまるであろう。」
28 さて、モロナイはこれらの言葉を語り終えると出て行き、また離反のあったすべての地方へ使者を送って、アマリキヤと、すでに離反してアマリキヤ人と呼ばれている者たちとに立ち向かって、自分たちの自由を守りたいと望むすべての人を集めた。
29 さて、アマリキヤは、モロナイの民がアマリキヤ人よりも多いのを見て、また自分の民が自分たちの行ってきたことの正当性に疑いを抱いているのを知ると、目的を達せられなくなるのを恐れて、その民の中で行くことを望んだ者たちを連れてニーファイの地へ向かった。
30 しかしモロナイは、レーマン人がこれ以上の兵力を持つことは望ましくないと思ったので、アマリキヤの民の合流を阻むか、そうでなければ彼らを捕らえて連れ戻し、アマリキヤを殺してしまおうと思った。まことに、アマリキヤがレーマン人を扇動してニーファイ人に対して怒りを抱かせ、ニーファイ人を攻めるように仕向けることを知っていたからである。モロナイは、アマリキヤが自分の目的を達するためにこのようにするのを知っていた。
31 そこでモロナイは、すでに集まって武装し、平和を守るという聖約を交わしている自分の軍隊を率いて行くのがよいと思った。このようにして彼は、荒れ野でアマリキヤの進路を断つために、軍隊を率いて、天幕を携えて荒れ野に進軍した。
32 そして彼は、自分の望むままに行い、荒れ野に進軍し、アマリキヤの軍隊の前に立ちはだかった。
33 そこでアマリキヤは、少数の兵とともに逃げ去った。そして、残りの者たちはモロナイの手に引き渡されて、ゼラヘムラの地へ連れ戻された。
34 さて、モロナイは大さばきつかさたちと民の声とによって任命されていたので、ニーファイ人の軍隊については自分の意のままにこれを組織することも、軍隊に対する権威を行使することもできる権限を持っていた。
35 そこでモロナイは、アマリキヤ人の中の、自由政体を守るために自由の大義を支持するという誓いを立てようとしなかった者をすべて殺させた。しかし、自由の誓いを拒否した者はごくわずかであった。
36 そして彼は、ニーファイ人が所有していた全地にあるすべての塔の上に自由の旗を掲げさせた。モロナイはこのようにニーファイ人の中に自由の旗を掲げさせた。
37 そしてニーファイ人は、再び国内に平和を保つようになった。このようにして、彼らはさばきつかさの統治第19年の終わりごろまで国内に平和を保った。
38 また、ヒラマンと大祭司たちも、教会内の秩序を保った。そして、4年の間、教会の中には大いに平安と喜びがあった。
39 そして、死んだ人が大勢いたが、彼らは主イエス・キリストによって贖われることを固く信じていたので、喜びながらこの世を去った。
40 またある季節になると、この地によく熱病が起こったので、それにかかって死んだ人々もいた。しかし、熱病で死んだ人はそれほど多くはなかった。多くの草根木皮の効能が著しかったからである。これらの草根木皮は、特有な気候の下で人がかかりやすい病気を原因から取り除くために、神が用意してくださったものであった。
41 さらに、老衰で死んだ人も多かった。キリストを信じながら死んだ人々は、今キリストにあって幸いを得ていると確信できる。
【動画】自由の旗を掲げるモロナイ
【動画】モロナイと自由の旗
第47章
アマリキヤ、裏切りと殺人と陰謀によってレーマン人の王となる。ニーファイ人の離反者たち、レーマン人よりも邪悪で残忍な者となる。紀元前約72年。
01 さて、アマリキヤおよび彼とともに荒れ野へ逃げて行った者たちの記録に戻ろう。見よ、アマリキヤは、自分に従う者たちを連れてニーファイの地へ上って行き、レーマン人の中に行って、レーマン人を扇動してニーファイの民に対して怒らせた。そのため、レーマン人の王は国中至る所に、すなわち自分のすべての民の中に、ニーファイ人との戦いに出るためもう一度集まるようにという布告を出した。
02 そして、その布告が彼らの中に出されると、彼らはひどく恐れた。王の気持ちを損ねるのを恐れるとともに、ニーファイ人と戦うために出て行けば命を失うことになるのではないかと恐れたのであった。そこで彼らは、正確に言えば彼らの大半は、王の命令に従おうとしなかった。
03 そして王は、彼らが従おうとしないので怒った。そして王は、自分の軍隊の中の、命令に従順な者たちに対する指揮権をアマリキヤに与え、行って強制的に彼らに武器を取らせるように彼に命じた。
04 さて見よ、これはアマリキヤの願っていたことであった。アマリキヤは悪を行うのに非常に巧みな男であったので、レーマン人の王を王位から退ける計画を心の中で練っていた。
05 彼はレーマン人の中の、王を支持する者たちに対する指揮権を得たので、次に、従わない者たちの歓心を買おうとした。そこで彼は、オナイダと呼ばれている所へ進んで行った。レーマン人は皆、そこへ逃げていたからである。彼らは軍隊がやって来るのを知ると、自分たちを滅ぼすために来たのだと思い、オナイダ、すなわち武器の場所へ逃げたのである。
06 そして彼らは、ニーファイ人と戦わされることのないようにしようと固く決意していたので、一人の男を任命して自分たちを治める王とし、また指揮官としていた。
07 そして彼らは、戦う準備をして、アンテパスと呼ばれている山の頂上に集まっていた。
08 ところで、王の命令に従って彼らと戦うことは、アマリキヤの本意ではなかった。しかし見よ、彼の目的はレーマン人の軍隊の歓心を買い、自分が彼らの長の地位に就き、王を退位させて、自分が王位を手に入れることであった。
09 見よ、そこで彼は、自分の軍隊にアンテパス山に近い谷で天幕を張らせた。
10 そして夜になると、彼は密使を一人アンテパス山に派遣し、その名をレホンタイという、山上にいる者たちの指揮官に、会談したいので山のふもとに下りて来るように求めた。
11 さて、レホンタイはその伝言を受けても、山のふもとに下りて来ようとはしなかった。そこでアマリキヤは再度伝言を送って、下りて来るように彼に求めた。それでもレホンタイは下りて来ようとしなかった。そこで彼は、3度目の伝言を送った。
12 さて、アマリキヤは、レホンタイを山から下りて来させることができないのを知ると、自分から山を登って行き、レホンタイの宿営の近くまで行った。そして彼は、4度目の伝言をレホンタイに送り、下りて来るように、また衛兵を連れて来るように求めた。
13 そして、レホンタイが衛兵とともにアマリキヤのところに下りて来たとき、アマリキヤは彼に、夜の間に軍隊を率いて下りて来て、王が自分に指揮権を与えてくれた宿営中の兵を包囲するように求めた。また、もしレホンタイが自分(アマリキヤ)を全軍の副指揮官にしてくれるならば、その兵をレホンタイの手に引き渡してもいいと言った。
14 そこでレホンタイは、兵を率いて下りて来て、アマリキヤの兵を包囲した。このようにアマリキヤの兵は、夜が明けて目を覚ます前にレホンタイの軍隊に包囲されたのであった。
15 さて、アマリキヤの兵は、自分たちが包囲されているのを見ると、滅ぼされることのないように同胞に合流させてもらいたいとアマリキヤに懇願した。これはまさにアマリキヤが願っていたことであった。
16 そこで彼は、王の命令に背いて兵を引き渡した。これは王を退位させるという企てを成し遂げるために、アマリキヤが願っていたことであった。
17 ところで、レーマン人の中では、総指揮官が殺されることがあれば、副指揮官を総指揮官に任命するというのが習わしであった。
18 そこでアマリキヤは、部下の一人を使って、少しずつレホンタイに毒を盛らせた。そのために彼は死んでしまった。
19 さて、レホンタイが死ぬと、レーマン人はアマリキヤを自分たちの指揮官、自分たちの総司令官に任命した。
20 そして、アマリキヤは(自分の望みを達したので)軍隊を率いてニーファイの地へ、すなわち首府であるニーファイの町へ向かった。
21 すると王は、衛兵を伴い、彼を迎えるために出て来た。王は、アマリキヤが自分の命令を果たし、ニーファイ人に向かって戦いに出るために、これほどの大軍を集めてきたのだと思ったからである。
22 ところが見よ、王が迎えようとして出て来ると、アマリキヤは部下を先に行かせて王を迎えさせた。彼の部下は王の前に出ると、王が偉大であるために王を敬うかのように王の前にひれ伏した。
23 そこで王は、手を差し伸べて彼らを立たせようとした。そうすることがレーマン人の習わしであり、平和のしるしであった。彼らはこの習わしをニーファイ人から取り入れたのであった。
24 そして、王が最初の者を地から立たせたとき、見よ、その男は王の心臓を突き刺したので、王は地に倒れた。
25 これを見て、王の僕たちは逃げ出した。そこで、アマリキヤの部下たちは叫んだ。
26 「見よ、王の僕たちが王の心臓を突き刺し、王を倒して逃げた。来て確かめてみよ。」
27 そこで、アマリキヤは自分の兵に、行って、王に何事が起こったのか見るように命じた。そして、彼らがその場に着いて、血まみれになって倒れている王を見つけたとき、アマリキヤは怒ったふりをして、「王を愛していた者は皆行って、王の僕たちを追いかけて殺せ」と言った。
28 そこで、王を愛していた者たちは皆、この言葉を聞くと、王の僕たちの後を追いかけた。
29 王の僕たちは軍隊が自分たちを追って来るのを見て、またもやおびえ、荒れ野へ逃げ込んだ。そして、ゼラヘムラの地へ行って、アンモンの民に加わった。
30 一方、彼らを追いかけた軍隊は、追跡が無駄に終わって戻って来た。このようにして、アマリキヤは欺瞞によって民の信用を得た。
31 そして、その翌日、彼は軍隊を率いてニーファイの町に入り、町を支配下に置いた。
32 さて、王妃は王が殺されたことを聞くと――というのは、アマリキヤはすでに使者を遣わして、王が王の僕たちによって殺されたことと、自分が軍隊を率いて彼らを追いかけたが、そのかいがなく彼らを取り逃がしてしまったことを、王妃に知らせておいたからである――
33 したがって、王妃はこの知らせを受けると、アマリキヤに使者を送って、その町の民の命を助けてくれるように求めた。また王妃は、彼に自分のもとに来てほしいと伝え、さらに王の死について立証する証人たちを一緒に連れて来てほしいと告げた。
34 そこでアマリキヤは、王を殺したその部下、および一緒にいたすべての者を連れて王妃のもとへ、王妃の座している所へ入って行った。そして、彼らは皆、王が王自身の僕たちによって殺されたことを王妃に証言し、また、「彼らは逃げました。このことは彼らに対する証拠にならないでしょうか」と言った。このようにして、彼らは王の死について王妃の問いに十分に答えたのであった。
35 そして、アマリキヤは王妃の歓心を買うように努め、王妃を妻にした。このようにして、彼は欺瞞により、また悪賢い部下たちの助けによって王位を得、全地の至る所で、レーマン人のすべての民の中で王と認められた。このレーマン人の民は、レーマン人とレムエル人、イシマエル人、それにニーファイの統治からその当時に至るまでのニーファイ人のすべての離反者から成っていた。
36 これらの離反者たちは、ニーファイ人と同じ教えと同じ知識を得ていた。また、同じように主について知る教えを受けていた。にもかかわらず、不思議な話であるが、離反後間もなく、レーマン人よりもかたくなで悔い改めない者、また彼らよりも野蛮で邪悪、残忍な者となってしまい、レーマン人の言い伝えを受け入れ、怠惰やあらゆる好色に身を任せ、主なる神をすっかり忘れてしまったのである。
第48章
アマリキヤ、レーマン人を扇動してニーファイ人に反感を抱かせる。モロナイ、クリスチャンの大義を守るために民を備える。モロナイは自由と解放を喜ぶ偉大な神の人である。紀元前約72年。
01 さて、アマリキヤは王位を得るやいなや、ニーファイの民に反感を抱くようにレーマン人の心をあおり始めた。彼は幾人かの者たちを任じて、方々の塔からレーマン人に向かってニーファイ人の悪口を言わせた。
02 このようにして、彼はニーファイ人に反感を抱くように彼らの心をあおった。そして、さばきつかさの統治第19年の末に、彼はそれまで自分の企てを成し遂げていたので、すなわちすでにレーマン人を治める王になっていたので、全地と全地のすべての人、すなわちレーマン人だけでなくニーファイ人をも支配しようとした。
03 彼はレーマン人の心をかたくなにし、思いをくらまし、彼らの怒りをかき立てるのに成功して、自分の企てを成し遂げたので、ニーファイ人に対して戦いに出て行くために大軍を召集した。
04 彼は自分の民がおびただしい数であったので、ニーファイ人を打ち負かして奴隷にしようと決意した。
05 そのため彼は、ゾーラム人の中から連隊長を任命した。ゾーラム人がニーファイ人の戦う力と、彼らが身を隠す場所と、方々の町の最も弱い箇所を最もよく知っていたので、軍隊の連隊長に任命したのであった。
06 そして彼らは、それぞれ軍隊を率いて、ゼラヘムラの地を指して荒れ野の中を進んだ。
07 さて、アマリキヤがこのように欺瞞と偽りによって権力を手に入れていた間、一方でモロナイは、主なる神に忠実であるように民の心を備えさせていた。
08 また彼は、ニーファイ人の軍隊を強化し、小さいとりで、すなわち身を隠す場所を幾つも築き、軍隊を囲む土手を造り、また軍隊を囲む石垣も築いて、ニーファイ人の方々の町と方々の地の境、まことに国の周囲一帯を囲った。
09 また彼は、防御の最も弱いとりでにさらに多くの兵を配備した。このようにして彼は、ニーファイ人の所有する地の防備を固め、強化した。
10 このように彼は、ニーファイ人の自由と土地、妻子、平和を維持する備えをして、彼らが主なる神のために生きることができるように、また敵からクリスチャンの大義と呼ばれているものを保つことができるようにした。
11 モロナイは屈強で勢いのある人であり、完全な理解力を備えた人であり、また流血を喜ばない人であった。そして、自分の国が自由であり、同胞が束縛や奴隷の状態にないことを喜びとした人であった。
12 まことに彼は、神が民に授けてくださった多くの特権と祝福について、神への感謝で胸をいっぱいにした人であり、民の幸いと安全のために大いに働いた人であった。
13 また彼は、確固としてキリストを信じた人であり、血を流してでも、自分の民と、自分の権利と、自分の国と、自分の宗教を守ると固く誓っていた。
14 ニーファイ人は、必要であれば血を流してでも敵に対して自衛するように教えられていた。さらに、自分から危害を加えないように、また敵に立ち向かうのでなければ、すなわち自分の命を守るためでなければ、決して剣を振り上げないようにとも教えられていた。
15 そのようにすれば、神は自分たちをこの地で栄えさせてくださると、彼らは信じていた。言い換えれば、神の戒めを忠実に守るならば、神は自分たちをこの地で栄えさせてくださり、また自分たちの直面する危険に応じて、逃れるように、あるいは戦争の準備をするように警告してくださると、彼らは信じていた。
16 また、神は敵を防ぐためにどこへ行けばよいかを自分たちに知らせてくださり、そのとおりにすれば主は自分たちを救ってくださることも、彼らは信じていた。これはモロナイが信じていたことであり、彼は心の中でそのことに誇りを感じていた。すなわち、血を流すことではなく、善を行うこと、民を守ること、神の戒めを守ること、罪悪に立ち向かうことに誇りを感じていた。
17 まことに、まことに、わたしはあなたがたに言う。もし過去、現在、未来のすべての人がモロナイのようであれば、見よ、地獄の力でさえもとこしえにくじかれてしまい、また悪魔は決して人の子らの心を支配する力を持たないであろう。
18 見よ、モロナイは、モーサヤの息子アンモンや、モーサヤのほかの息子たち、またアルマとアルマの息子たちのような人であった。彼らは皆、神の人であったからである。
19 さて見よ、ヒラマンと彼の同僚たちも、モロナイに劣らず民のためによく働いた。彼らは神の言葉を宣べ伝え、また彼らの言葉を聴くすべての人に悔い改めのためのバプテスマを施した。
20 そのために彼らは出て行った。そして人々は、彼らの言葉のために謙遜になったので、主から豊かに恵みを授けられた。したがって4年の間、ニーファイ人の中には戦争も争いもなかった。
21 しかし、前に述べたように、第19年の末に、ニーファイ人の中は平和であったにもかかわらず、彼らは不本意ながら同胞のレーマン人と戦わざるを得なくなった。
22 要するに、甚だ不本意ではあったが、レーマン人との戦争が長年の間絶えなかった。
23 ニーファイ人は血を流すことは喜ばなかったので、レーマン人に対して武器を取るのをつらく思った。それだけではない。神にお会いする用意ができていない多くの同胞を、自分たちがこの世から永遠の世に送り込むことになるのをつらく思った。
24 それでも、彼らは命を捨てるわけにはいかなかった。命を捨てれば、妻や子供たちが、かつて同胞であった者たちの野蛮なむごい仕打ちによって虐殺されることになるからである。その同胞はニーファイ人の教会から離反し、彼らのもとを去り、レーマン人に加わって彼らを滅ぼそうとしていた。
25 まことにニーファイ人は、神の戒めを守る者がいるかぎり、その同胞がニーファイ人の血を流すことを喜ぶのに耐えられなかった。それは、主の戒めを守るかぎりニーファイ人はその地で栄えるであろうという、主の約束があったからである。
第49章
侵攻して来たレーマン人は、防備を施したアモナイハの町とノアの町を攻略できない。アマリキヤ、神をのろい、モロナイの血を飲むと誓う。ヒラマンと同僚たち、教会を強化し続ける。紀元前約72年。
01 さて、第19年の11月10日に、レーマン人の軍隊がアモナイハの地に近づいて来るのが見えた。
02 見よ、すでにその町は再建されており、モロナイは町の境の近くに軍隊を配備していた。そして彼らは、レーマン人の矢と石を避けるために、周囲に土を盛り上げておいた。レーマン人は石と矢で戦ったからである。
03 見よ、わたしはアモナイハの町が再建されたと述べたが、町は一部分再建されたと言い直そう。レーマン人は、民の罪悪のためにその町がかつて滅ぼされたことがあるので、再びそこが容易に自分たちのえじきになるであろうと思ったのである。
04 しかし見よ、彼らの期待は何と大きく外れたことか。ニーファイ人は自分たちの周囲に土手を築き上げており、それが非常に高かったので、レーマン人はニーファイ人に石を投げても矢を射ても効果を上げることができず、また入り口からでなければ彼らを攻めることができなかったのである。
05 このとき、レーマン人の連隊長たちは、ニーファイ人が防御の場所を備えるに当たって知恵を働かせたことに非常に驚いた。
06 レーマン人の指揮官たちは、自分たちの人数が非常に多かったので、これまでと同じように当然ニーファイ人を攻めることができると思っていた。また、レーマン人も盾と胸当てを装備し、さらに皮の衣、まことに裸を覆う非常に厚い衣を着ていた。
07 このように装備を整えていたので、レーマン人は、自分たちの意のままに容易に同胞を打ち負かして、彼らに奴隷のくびきをかけることができる、そうでなければ彼らを殺し、虐殺できると思っていた。
08 しかし見よ、まったく驚いたことに、ニーファイ人はこれまでリーハイの子孫の中にまったく知られていなかった方法で、レーマン人に対する備えをしていた。ニーファイ人はモロナイの指示に従って、レーマン人と戦う備えをしていたのである。
09 そして、レーマン人、いやアマリキヤ人はニーファイ人の戦いの備え方に非常に驚いた。
10 さて、もしアマリキヤ王が軍隊を率いてニーファイの地から下って来ていたら、きっと彼はレーマン人にアモナイハの町でニーファイ人を攻撃させていたことであろう。見よ、彼は自分の民の血など気にもかけなかったからである。
11 しかし見よ、アマリキヤ自身は戦うために下って来てはいなかった。そこで彼の連隊長たちは、アモナイハの町であえてニーファイ人を攻撃しようとしなかった。モロナイがニーファイ人の中の諸事の管理体制を変えていたからである。そのため、レーマン人はニーファイ人が避難する場所を設けていたことに期待を裏切られ、彼らを攻めることができなかった。
12 そこで彼らは荒れ野へ退き、軍隊を率いてノアの地へ向かって進軍した。そこがニーファイ人を攻める次の最適地だと思ったからである。
13 彼らはモロナイがすでに国中のすべての町で防備を固めていたこと、すなわち防御のとりでを築いていたことを知らなかった。そのため、彼らは固い決意をもってノアの地へ進軍した。実に、彼らの連隊長たちは前に進み出て、その町の民を滅ぼすと誓ったのであった。
14 しかし見よ、驚いたことに、これまで弱い所であったノアの町は、モロナイの働きによって今や堅固になっており、アモナイハの町の堅固さをしのぐほどになっていた。
15 さて見よ、これはモロナイの知恵によるものであった。モロナイは、彼らがアモナイハの町に驚くであろうと思い、またこれまでノアの町がその地でいちばん弱い所であったので、彼らはそこへ進軍して戦おうとするであろうと思ったからである。そして、それは彼の望みどおりになった。
16 見よ、すでにモロナイはリーハイを、その町の兵を指揮する司令官に任命していた。このリーハイはシドン川の東の谷でレーマン人と戦ったあのリーハイである。
17 さて見よ、レーマン人はリーハイがその町で指揮を執っていることを知ると、またもや意気消沈した。彼らはリーハイを非常に恐れていたのである。それでも、彼らの連隊長たちはその町を攻撃すると固く誓っていたので、それぞれの軍隊を率いて攻め寄せた。
18 見よ、周囲に築き上げられた土手は高く、堀は深かったので、レーマン人は入り口による以外、ほかの道からニーファイ人の防御のとりでに入ることはできなかった。
19 このように、ニーファイ人は入り口以外の所からとりでに入ろうとして登って来る者たちに、上から石を投げつけ、矢を射て全員を殺してしまおうと備えをしていた。
20 また彼らは、ニーファイ人の中でも最も強い兵の一団を置いて、入り口からニーファイ人の防御地に入って来ようとするすべての者を、剣と石投げで打ち倒そうと待ち構えていた。このように彼らは、レーマン人に対して自衛する備えをしていた。
21 さて、レーマン人の隊長たちは、それぞれの軍隊を入り口の前に率いて行き、ニーファイ人の防御地に入ろうとしてニーファイ人と戦い始めた。しかし見よ、彼らは何度も撃退され、おびただしい数の死者を出した。
22 彼らはその通路でニーファイ人に勝てないことを知ると、次に、土手を掘り崩してニーファイ人の軍隊に近づく道を開き、対等に戦う機会を得ようとした。しかし見よ、その最中に彼らは石を投げつけられ、矢を射られて倒された。そのため、土手を掘り崩して堀を埋める代わりに、死者や負傷者の体で多少堀が埋められることになった。
23 このように、ニーファイ人はあらゆる点で敵に勝っていた。また、このようにレーマン人はニーファイ人を滅ぼそうと試みたが、とうとう彼らの連隊長たちは全員殺されてしまった。そして、1000人を越えるレーマン人が殺された。一方、ニーファイ人で殺された者はただの一人もいなかった。
24 しかし、負傷者がおよそ50人いた。それは通路でレーマン人の矢が当たった者たちである。彼らは盾と胸当てとかぶとで保護されていたので、負傷した箇所は足で、その多くが重傷であった。
25 さて、レーマン人は、連隊長たちが全員殺されたのを知ると、荒れ野へ逃げて行った。そして彼らはニーファイの地へ引き返し、生まれはニーファイ人でありながら今は王となっているアマリキヤに、自分たちの被った大きな損害について報告した。
26 そこで彼は、自分の民をひどく怒った。ニーファイ人を支配するという望みを達せられず、ニーファイ人に奴隷のくびきをかけることができなかったからである。
27 まことに、彼はひどく怒り、神とモロナイをのろい、必ずモロナイの血を飲むと誓った。それは、モロナイが神の命じられたことを守って、民を保護する備えをしたからである。
28 さて一方、ニーファイの民は、主がたぐいない力で自分たちを敵の手から救ってくださったことを、主なる神に感謝した。
29 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第19年が終わった。
30 そして、彼らの中には引き続き平和があり、また彼らが神の言葉に注意を払い、勤勉であったために、教会は非常に大きな繁栄を見た。神の言葉はヒラマンとシブロン、コリアントン、アンモン、彼の同僚たち、および悔い改めのためのバプテスマを受けて神の聖なる位によって聖任され、民の中で教えを説くように遣わされたすべての人により、彼らに告げ知らされたのである。
第50章
モロナイ、ニーファイ人の住む方々の地の防備を固める。ニーファイ人、多くの新しい町を築く。ニーファイ人が悪事と忌まわしい行いに陥った時代には、戦争と滅亡がニーファイ人に降りかかった。モリアントンと彼に従う離反者たち、テアンクムに打ち負かされる。ニーファイハが死んで、その息子パホーランがさばきつかさの職に就く。紀元前約72年から67年に至る。
01 さて、モロナイは戦争の準備をし、レーマン人から民を守る準備を整えるのをやめなかった。彼はさばきつかさの統治第20年の初めに、軍隊に命じて、ニーファイ人が所有していた全地の至る所ですべての町の周囲に土を盛り上げて土塁を築く作業を開始させた。
02 彼はまた、町を囲むこれらの土手の上に木材を、すなわち人の背丈ほどの高さの木材の建造物を築かせた。
03 そして、町を囲むこれらの木材の建造物の上に、先端のとがった杭で柵を造らせた。この杭は丈夫で、丈が高かった。
04 また彼は、この柵を見下ろすやぐらを建てさせ、そのやぐらの上に防御の場所を造らせて、レーマン人の石や矢がそこにいる人々に当たらないようにした。
05 また、ニーファイ人の兵たちは自分たちの思うままに、また力の及ぶかぎり、そのやぐらの上から石を投げつけ、町の防壁に近づこうとする者を殺せるように備えをした。
06 このように、モロナイは全地のすべての町の周囲にとりでを築いて、敵の来襲に備えた。
07 そしてモロナイは、軍隊を東の荒れ野に行かせた。そこで、彼らは出て行って、東の荒れ野にいたすべてのレーマン人を、ゼラヘムラの地の南にある彼らの土地へ追い払った。
08 ニーファイの地は、東の海からまっすぐ西の海に及んでいた。
09 さて、モロナイは、彼らの所有地の北方にある東の荒れ野からすべてのレーマン人を追い払うと、ゼラヘムラの地とその周辺の地に住む者たちを東の荒れ野に行かせ、海岸に近い地方までやって、その地に住まわせた。
10 彼はまた、南方の彼らの領土の境に軍隊を配置して、軍隊と民が敵の手から守られるように幾つものとりでを築かせた。
11 このようにして、彼は東の荒れ野のレーマン人のとりでをすべて断ち切り、また西の方でも同様にして、ニーファイ人とレーマン人の間の境界線上をとりでで固めた。この境界線はゼラヘムラの地とニーファイの地の間にあり、西の海からシドン川の源の付近を走っていた。ニーファイ人はその北方の全地を、すなわち、バウンティフルの地の北方にある全地を自分たちの好むままに所有した。
12 このようにして、モロナイは自分の軍隊をもって、すなわち、彼の働きによって守りが与えられると確信して日々増え続ける軍隊をもって、レーマン人の兵力と勢力をニーファイ人の所有地から断ち切り、レーマン人がニーファイ人の所有地でまったく権力を振るえなくしようと努めた。
13 そしてニーファイ人は、一つの町の建設を始め、その町の名をモロナイと呼んだ。それは東の海の近くで、レーマン人の領土の境界線に近い南の方にあった。
14 彼らはまた、モロナイの町とアロンの町の間に、アロンの町の境とモロナイの町の境に接して一つの町の建設を始めた。そして彼らは、その町の名、すなわちその地の名をニーファイハと呼んだ。
15 彼らはまた、同じ年に北の方で多くの町を築き始めた。その代表的なものはリーハイと名付けた町で、北の方の海岸に近い所にあった。
16 このようにして、第20年が終わった。
17 また、ニーファイの民のさばきつかさの統治第21年の初めに、ニーファイの民はこのように繁栄していた。
18 彼らは非常に栄え、豊かになり、また増えて、その地で強くなった。
19 以上のことから、主が人の子らに言われた御言葉をすべて成就されるに当たって、主の計らいが皆どれほど憐れみ深く、公正であるかが分かる。また、主がリーハイに言われた御言葉が今このときでさえ実証されていることを、わたしたちは知ることができるのである。主の言われた御言葉は次のとおりである。
20 「あなたとあなたの子孫とは幸いである。彼らは祝福を受けるであろう。彼らはわたしの命令を守るかぎり地に栄える。しかし、わたしの命令を守らなければ主の前から絶たれるということを覚えておきなさい。」
21 そして今わたしたちは、この約束がニーファイの民に実証されていることを知っている。彼らの中に口論や争い、殺人、略奪、偶像礼拝、みだらな行い、忌まわしい行いがあって、それらが彼らに戦争と滅亡を招いたからである。
22 しかし、主の命令を忠実に守っていた人々はいつも救い出された。一方、邪悪な同胞は何千人も奴隷の状態に陥ったり、剣で殺されたり、不信仰に陥ってレーマン人と混じり合ったりした。
23 しかし見よ、ニーファイの時代からこのかた、ニーファイの民にとって、モロナイの時代、すなわちさばきつかさの統治第21年当時以上に幸せな時はかつて一度もなかった。
24 そして、さばきつかさの統治第22年が平穏に終わり、第23年も同様であった。
25 さて、さばきつかさの統治第24年の初めも、リーハイの地とモリアントンの地について起こった争いがなければ、ニーファイの民の中には平和が続いたことであろう。このモリアントンの地はリーハイの地と境を接しており、両方とも、海岸に近い地方にあった。
26 見よ、モリアントンの地を所有していた人々が、リーハイの地の一部について所有権を主張したのである。そのため、両者の間に激しい争いが起こり、モリアントンの民は同胞に対して武器を取り、剣で相手を殺そうとした。
27 しかし見よ、リーハイの地を所有していた人々はモロナイの宿営に逃げ込んで、モロナイに助けを求めて訴えた。彼らに非がなかったからである。
28 さて、モリアントンという名の男の指導下にあったモリアントンの民は、リーハイの民がモロナイの宿営に逃げ込んだことを知ると、モロナイの軍隊がやって来て自分たちは滅ぼされてしまうのではないかと非常に恐れた。
29 そこでモリアントンは、大きな湖沼がたくさんある北方の地へ逃げて行って北方の地を占有しようとする思いを民の心に抱かせた。
30 そして見よ、彼らはこの計画を実行しようとした。(これが成功していれば、悲しい事態が生じていたであろう。)しかし見よ、モリアントンは、ひどく怒りっぽい男であったので、はしための一人に腹を立て、なぐりかかってその女をひどく打ちたたいてしまった。
31 そこでその女は、逃げ出してモロナイの宿営にやって来ると、その件について、また北方の地へ逃げようとしている彼らの企てについて、すべてのことをモロナイに告げた。
32 さて見よ、バウンティフルの地にいる人々は、いや、モロナイは、バウンティフルの地にいる人々がモリアントンの言葉に聞き従って彼の民に加わり、そのために彼がその地の各所の支配権を得てニーファイの民の中に重大な結果をもたらし、ニーファイの民の自由を覆すことになるのではないかと懸念した。
33 そこでモロナイは、モリアントンの民の行く手を遮って、彼らが北方の地へ逃げるのを阻止するために、装備を整えた軍隊を派遣した。
34 さて、デソレションの地の境に達するまで、彼らはモリアントンの民の進路を断てなかった。それでも、海に近く北方の地に通じており、また西も東も海に近い地峡のそばで、彼らはモリアントンの民の進路を断つことができた。
35 そして、モロナイによって派遣され、テアンクムという名の人によって率いられた軍隊は、モリアントンの民と相対した。ところが、モリアントンの民は(モリアントンの悪事とへつらいの言葉に感化されて)非常にかたくなになっていたので、両者の間で戦いが始まった。そして、その戦いでテアンクムはモリアントンを殺し、彼の軍隊を破って彼らを捕虜にし、モロナイの宿営に帰った。このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第24年が終わった。
36 モリアントンの民はこのようにして連れ戻された。そして彼らは、平和を守ると誓ってモリアントンの地へ返され、彼らとリーハイの民の間で和合が成立した。そして、リーハイの民も自分たちの土地へ戻った。
37 さて、ニーファイの民が平和を取り戻したその同じ年に、2代目の大さばきつかさであったニーファイハが、神の前に完全に正しくさばきつかさの職を果たして亡くなった。
38 ニーファイハは神の前に完全に正しい人であったが、アルマと彼の先祖たちが最も神聖であると見なしていた、数々の記録と品々をアルマから預かることは辞退していた。そこでアルマは、それらのものを息子ヒラマンに託していた。
39 見よ、ニーファイハの息子が、父に代わってさばきつかさの職を務めるように任命された。まことに、彼は義にかなって裁判すること、民の平和と自由を守ること、民に彼らの主なる神を礼拝する神聖な特権を与えること、生涯神の大義を支持し、守ること、悪人にそれぞれの罪科に応じた罰を科すこと、これらのことを誓って、神聖な儀式により民の大さばきつかさ兼総督に任命された。
40 見よ、この人の名はパホーランという。彼が父の座に着き、第24年の終わりにニーファイの民を治める彼の統治が始まった。
第51章
王政党の者たち、法律を変えて王を立てようとする。パホーランと自由党、民の声によって支持される。モロナイ、王政党の者たちに、戦って国を守るように求め、従わなければ処刑することを告げる。アマリキヤとレーマン人はとりでで固められた多くの町を占領する。テアンクム、レーマン人の侵略を撃退し、アマリキヤを天幕の中で殺す。紀元前約67年から66年に至る。
01 さて、ニーファイの民のさばきつかさの統治第25年の初めには、彼らはリーハイの民とモリアントンの民との間に彼らの土地のことについて和解を確立しており、第25年が平穏に始まった。
02 しかし、国内の完全な平和は長くは続かなかった。大さばきつかさのパホーランについて民の中に争いが起こったのである。というのは、法律の条項を少し変えてほしいと望んだ者たちが民の中にいたからである。
03 しかし見よ、パホーランは法律を変えることを望まず、また法律が変えられるのを認めようとも思わなかった。そのため、法律の変更について請願の形で意見を表明した者たちの言うことにも、彼は耳を傾けなかった。
04 そのため、法律が変更されることを願った者たちは彼に腹を立て、彼が引き続き国の大さばきつかさであるのを望まなかった。その結果、その件について激しい論争が起こったが、血を流すには至らなかった。
05 さて、パホーランをさばきつかさの職から退けることを願った者たちは、王政党と呼ばれた。彼らは法律を変更して自由政体を廃し、国を治める王を立てることを願ったからである。
06 また、パホーランが引き続き国を治める大さばきつかさでいることを願った人々は、自ら自由党と称した。このようにして、民の中に分裂が生じた。自由党の人々は、自由政体によって自分たちの権利と宗教の特権を守ることを誓った。すなわち聖約したからである。
07 さて、両者の争いに関するこの件は、民の声により解決された。そして、民の声により自由党が支持を受け、パホーランはさばきつかさの職を保った。これはパホーランの同胞と自由を願う多くの人に大きな喜びを与えた。また、このようにして彼らは王政党の者たちを沈黙させたので、王政党の者たちはあえて反対せず、仕方なしに自由の大義を守ることになった。
08 王を立てることを支持した者たちは上流の生まれの者であり、自分が王になろうとしていた。そして彼らは、民を治める権力と権能を得ようとした者たちから支持を受けた。
09 しかし見よ、このような争いがニーファイの民の中にあったこのときは、危機であった。アマリキヤが再びレーマン人の民の心をあおって、ニーファイ人の民に対して反感を抱かせていたからである。そして彼は、自分の国の全地方から兵を集め、彼らを武装させ、着々と戦争の準備をしていた。彼はモロナイの血を飲むと誓っていたからである。
10 しかし見よ、後に分かるように、彼が立てた約束は無分別なものであった。それでも、彼はニーファイ人を攻めるために、自分自身と自分の軍隊を備えていた。
11 彼の軍隊はすでにニーファイ人の手によって何千人も殺されていたので、その人数は以前ほど多くなかった。しかし、多大の損害を被っていたにもかかわらず、アマリキヤは驚くほどの大軍を集めたので、ゼラヘムラの地へ向かうことを恐れなかった。
12 まことに、アマリキヤ自身がレーマン人を率いて下って来た。それはさばきつかさの統治第25年のことであり、大さばきつかさパホーランに関する争いの問題が収まり始めたちょうどそのときであった。
13 さて、王政党と呼ばれた人々は、レーマン人がニーファイ人と戦うために進んで来ていると聞いて内心喜んだ。そして彼らは、武器を取ることを拒んだ。彼らは大さばきつかさと自由を願う人々のことをひどく怒っていたので、武器を取って国を守る気持ちがなかったからである。
14 さて、モロナイはこのことを知り、さらにレーマン人が国境を越えているのを知ると、自分がこれまでそれらの人々を守るために精いっぱい努めてきたにもかかわらず、彼らがかたくなであるのを非常に怒った。彼は激怒し、彼の心は彼らに対する怒りでいっぱいになった。
15 そして彼は、民の声を受けて、国の総督に請願書を送ってそれを読むように求め、自分たちの国を守るようにそれらの離反者たちに強要する力と、また従わなければ彼らを処刑する力を自分(モロナイ)に与えてほしいと願った。
16 彼が第一になすべきことは、民の中にこのような争いと不和をなくすことであった。というのは、見よ、民の中の争いと対立がこれまで彼らの被ったすべての滅亡の原因となってきたからである。そしてそれは、民の声に応じて聞き届けられた。
17 そこでモロナイは、自分の軍隊に、それら王政党の者たちと戦って彼らの高慢と特権意識を打ち倒し、彼らを地に倒すように、そうでなければ彼らに武器を取って自由の大義を守らせるように命じた。
18 そこで、軍隊が彼らに向かって進軍し、彼らの高慢と特権意識を打ち倒した。彼らの中で武器を振り上げてモロナイの兵に立ち向かう者は、切られて地に倒された。
19 そして、離反者たちの中の4000人が剣で切り倒された。また、戦いで殺されなかった彼らの指導者たちは、捕らえられて、すぐに審理する暇がなかったので牢に入れられた。
20 また、残りの離反者たちは、剣によって地に打ち倒されるよりも自由の旗に従うことを選んだ。そして、仕方なく自分たちのやぐらと自分たちの町に自由の旗を掲げ、また国を守るために武器を取った。
21 このようにして、モロナイは王政党の者たちを滅ぼし、王政党という名で知られる者はだれ一人いなくなった。また、このようにして彼は、高貴な血統の出であると主張した者たちの強情と高慢をくじいた。そして彼らは、同胞のように謙遜になり、奴隷とならないために勇敢に戦うようになった。
22 さて見よ、モロナイがこのように自分の民の中の戦いと争いを鎮め、民の中に平和と秩序を確立し、レーマン人と戦う準備をするための規則を定めている間に、レーマン人は海岸に近い地方にあるモロナイの地に入って来た。
23 そして、モロナイの町にいたニーファイ人は耐えられるほど強くなかったので、アマリキヤは彼らを追い出し、多くの者を殺した。そして、アマリキヤはその町を占領し、まことにすべてのとりでを占領した。
24 そこで、モロナイの町から逃げ出した人々は、ニーファイハの町へ行った。また、リーハイの町の民も集まって準備を整え、レーマン人を迎え撃つ用意をした。
25 しかし、アマリキヤはレーマン人にニーファイハの町を攻めさせようとしないで、海岸近くに彼らをとどめ、それぞれの町にそこを守る兵を置いた。
26 このようにして、彼は進軍を続けて、ニーファイハの町、リーハイの町、モリアントンの町、オムナーの町、ギドの町、ミュレクの町などの多くの町を占領した。これらの町はすべて海岸に近い東の国境地方にあった。
27 このように、レーマン人はアマリキヤの悪知恵と無数の軍勢によって非常に多くの町を手に入れた。しかも、これらの町はどれも皆モロナイのとりでの築き方に倣って強固に防備が固められており、レーマン人はこれらをすべて自分たちのとりでとした。
28 そして、彼らは行く手のニーファイ人を追い払い、また多くの者を殺しながら、バウンティフルの地に進軍した。
29 ところが、彼らはテアンクムと相対することになった。このテアンクムはかつてモリアントンが逃走しようとしたときに彼を殺し、彼の民の前に立ちはだかった人である。
30 そして、このテアンクムがここでまたアマリキヤの前に立ちはだかったのである。このときアマリキヤは、バウンティフルの地とその北方の地を占領しようとして、大軍を率いて進んでいた。
31 しかし見よ、テアンクムとその兵が偉大な戦士であったために、アマリキヤは彼らに撃退されて望みを遂げることができなかった。テアンクムの兵は一人残らず体力の面で、また戦いの技術の面でレーマン人をしのいでいたので、彼らはレーマン人よりも優位に立った。
32 そして、テアンクムとその兵はレーマン人を休みなく攻め、暗くなるまで彼らを殺した。それから、テアンクムとその兵はバウンティフルの地の境で天幕を張った。また、アマリキヤも海岸に近い境の地で天幕を張った。彼らはここまで追われたのである。
33 さて、夜になると、テアンクムとその部下は夜に紛れてひそかに出て行き、アマリキヤの宿営に忍び込んだ。すると見よ、レーマン人は、日中の戦いと暑さのためにひどく疲れて眠り込んでいた。
34 そこでテアンクムは王の天幕に忍び込み、投げ槍を王の心臓に突き立てて王を即死させたので、王は僕たちを起こすことができなかった。
35 それから、テアンクムがひそかに自分の宿営に帰ると、見よ、兵は眠っていた。そこで彼は兵を起こして、自分が行ってきたことをすべて告げた。
36 また彼は、レーマン人が目を覚まして攻め寄せて来るのではないかと案じ、軍隊に準備をして待ち受けさせた。
37 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第25年が終わり、またアマリキヤの生涯も終わるのである。
【動画】王政党と自由党
第52章
アモロン、アマリキヤの跡を継いでレーマン人の王となる。モロナイとテアンクムとリーハイ、ニーファイ人を率いて戦い、レーマン人に勝利を得る。ミュレクの町は取り返され、ゾーラム人ヤコブは死ぬ。紀元前約66年から64年に至る。
01 さて、ニーファイの民のさばきつかさの統治第26年の1月1日の朝、見よ、レーマン人は目を覚まし、見よ、アマリキヤが彼の天幕の中で死んでいるのを発見した。また彼らは、テアンクムがその日彼らと戦う準備をしているのも見た。
02 レーマン人はこれを見て驚き恐れ、北方の地へ進軍する企てを捨てて、全軍がミュレクの町へ退き、とりでにこもって守りを固めようとした。
03 そして、アマリキヤの兄弟が民を治める王に選ばれた。その王の名はアモロンという。このようにアマリキヤ王の兄弟であるアモロン王が選ばれ、アマリキヤ王に代わって治めることになった。
04 そしてアモロン王は、血を流して奪い取ったそれらの町を守り通すように民に命じた。彼らが多くの血を失わずに奪い取った町は一つとしてなかったからである。
05 さて、テアンクムは、レーマン人がこれまでに奪い取ったそれらの町と、手に入れたそれらの土地を守り通そうと決意しているのを知り、また彼らの人数がおびただしいのを見て、とりでにこもっている彼らを攻撃しようとするのは得策ではないと思った。
06 それでも彼は、戦う準備をしているかのように、兵をとりでの近くにとどめておいた。そして、実際はその間に方々に防壁を築き、身を隠す場所を用意して、レーマン人の来襲を防ぐ準備を進めていた。
07 そして、彼が戦いの準備を続けていると、やがてモロナイからテアンクムの軍隊を強化する大勢の兵が送られてきた。
08 また、モロナイからテアンクムに、彼の手に落ちた捕虜は全員そのまま捕らえておくようにとの命令も届いた。レーマン人も大勢を捕虜にしていたので、レーマン人に捕らえられている人々と交換するために、レーマン人の捕虜を全員残しておく必要があったからである。
09 モロナイはまた、バウンティフルの地の防備を固めて北方の地に通じる地峡を守り、レーマン人がその地点に達して四方からニーファイ人を攻め悩ます力を持たないようにすることをテアンクムに命じた。
10 さらにモロナイは彼に伝言を送り、忠実にその地域を守るように、またニーファイ人の手から奪い取られたそれらの町を、計略やそのほかの方法で再び取り返すことができるかもしれないので、できるかぎりあらゆる機会を求めてその地域でレーマン人を苦しめ悩ますように、さらに、レーマン人の手に落ちていない方々の町を防備を固めて強化するように求めた。
11 また、モロナイは彼に、「わたしはあなたのところに行きたいが、まことにレーマン人が西の海に近い境の地でわたしたちを攻めて来ているので、あなたのところへは行けない」とも述べた。
12 さて、(アモロン)王はゼラヘムラの地を去って、王妃に自分の兄弟の死について知らせ、大勢の兵を集めて、西の海に近い境の地でニーファイ人と戦うために軍隊を進めていた。
13 このようにして、彼はニーファイ人を休みなく攻めて、その地域にニーファイ人の軍の一部を引き寄せるようにした。その一方で、彼は以前に奪い取った町を守るために残してきた者たちにも、東の海に近い境の地でニーファイ人を休みなく攻め、兵力の及ぶかぎりできるだけニーファイ人の地を占領するように命じておいた。
14 ニーファイの民のさばきつかさの統治第26年の終わりに、ニーファイ人はこのような危うい状況にあった。
15 しかし見よ、さばきつかさの統治第27年には、モロナイは南と西の境を守る軍隊の組織を終え、以前に失った町をテアンクムと彼の兵が取り返すのを助けるために、バウンティフルの地へ軍隊を進めた。
16 さて、テアンクムは、ミュレクの町に攻撃を加えて、できればそこを取り返すようにという命令を受けていた。
17 そこでテアンクムは、ミュレクの町に攻撃を加える準備をし、軍隊を率いてレーマン人に攻めかかる準備を整えた。しかし、レーマン人がとりでの中にいる間は打ち負かせないことを知ったので、その計画を断念し、バウンティフルの町に引き返してモロナイの到着を待ち、軍隊を増強することにした。
18 そして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第27年の末に、モロナイが軍隊を率いてバウンティフルの地に到着した。
19 また、第28年の初めに、モロナイとテアンクムと多くの連隊長たちが作戦会議を開き、レーマン人を外に出して戦わせるにはどうすればよいか、また何らかの方法で彼らをとりでから誘い出し、彼らより優位に立って再びミュレクの町を取り返すにはどうすればよいかを協議した。
20 そして彼らは、ミュレクの町を守っているレーマン人の軍隊に、すなわちヤコブという名の彼らの指揮官に使者を送り、軍隊を率いて出て来て二つの町の間の平原で戦いを交えるように求めた。しかし見よ、ゾーラム人であったヤコブは、軍隊を率いて出て来て平原で戦いを交えようとはしなかった。
21 そこでモロナイは、対等の条件で彼らと戦いを交える望みを失ったため、策を用いてレーマン人をとりでから誘い出すことにした。
22 彼はテアンクムに少数の兵を連れて海岸の近くを下って行かせた。また、モロナイと彼の軍隊は夜に紛れてミュレクの町の西方の荒れ野に進軍した。するとその翌朝、レーマン人の見張りの兵たちがテアンクムを見つけ、走って行って、そのことを自分たちの指揮官であるヤコブに知らせた。
23 そして、レーマン人の軍隊は、テアンクムの兵の数が少なかったので自分たちの手勢で打ち負かせると思い、テアンクムに向かって進んで行った。そこでテアンクムは、レーマン人の軍隊が自分に向かって出て来たのを見て、海岸の近くを北方に退却し始めた。
24 さて、レーマン人は、彼が逃げ出したのを見て勇み立ち、勢いよく彼らを追った。また、テアンクムが無駄な追跡をして来るレーマン人をこのように誘い出している間に、見よ、モロナイは自分が率いていた軍の一部に、町に入ってそこを占領するように命じた。
25 そこで彼らは、町に入ってそこを占領し、町を守るために残っていたすべての者、すなわち武器を引き渡そうとしないすべての者を殺した。
26 このようにしてモロナイは、自分の軍の一部をもってミュレクの町を手に入れるとともに、自分はテアンクムの追跡から戻って来るレーマン人と戦いを交えるために、残りの兵を率いて進軍した。
27 さて、レーマン人はテアンクムを追跡し、ついにバウンティフルの町の近くまでやって来た。そして、彼らはそこで、バウンティフルの町を守るために残っていたリーハイと少数の軍隊に出会った。
28 さて見よ、レーマン人の連隊長たちは、リーハイが彼の軍隊を率いて向かって来るのを見たとき、自分たちがミュレクの町に帰り着く前にリーハイに追いつかれるのではないかと大慌てで逃げ出した。彼らは行軍のために疲れているのに、リーハイの兵たちは元気であったからである。
29 さて、このときレーマン人は、モロナイが彼の軍隊を率いて彼らの後方に迫っていたのを知らず、ただリーハイとその兵だけを恐れていた。
30 ところでリーハイは、モロナイとその軍隊に出会うまで、彼らに追いつこうとしなかった。
31 そしてレーマン人は、遠くへ退く前にニーファイ人に取り囲まれてしまった。一方にはモロナイの兵、もう一方にはリーハイの兵がいて、どちらも皆、元気で力に満ちあふれていた。それに引き替え、レーマン人は長い行軍で疲れ切っていた。
32 そこで、モロナイは兵に、彼らが武器を引き渡すまで攻撃を続けるように命じた。
33 さて、レーマン人の指揮官ヤコブはゾーラム人であり、不屈の精神を持っていたので、レーマン人を率いてモロナイに向かって猛烈な戦いを仕掛けてきた。
34 モロナイがレーマン人の行く手を遮っていたので、ヤコブはモロナイの兵を殺し、道を切り開いてミュレクの町へ帰ろうと決意したのであった。しかし見よ、モロナイとその兵の方が強く、レーマン人に道を譲らなかった。
35 そして彼らは、どちらも非常に激しく戦った。そして、双方ともに多くの者が殺され、モロナイは負傷し、ヤコブは死んだ。
36 また、リーハイが屈強な兵を率いて激しくレーマン人の後方を攻め立てたので、後方のレーマン人は武器を引き渡した。また残りの者たちもひどくうろたえ、どこへ行けばよいのか、どこを攻めればよいのか分からない有様であった。
37 それでモロナイは、彼らがうろたえているのを見て、「もし武器を持って進み出て、それを引き渡すならば、おまえたちの血を流すのをやめよう」と彼らに告げた。
38 さて、レーマン人がこの言葉を聞くと、まだ殺されていないその連隊長たちは皆進み出て、武器をモロナイの足もとに投げ出し、兵たちにも同じようにすることを命じた。
39 しかし見よ、そうすることを望まない者も多かった。そこで、剣を引き渡そうとしない者たちは捕らえられて縛られ、武器を取り上げられた。そして、彼らの仲間とともにバウンティフルの地へ引っ立てられて行った。
40 捕らえられた捕虜の人数は、殺された者の数よりも、まことに両軍の殺された者の数よりも多かった。
第53章
レーマン人の捕虜はバウンティフルの町の防備を固めるために働かされる。ニーファイ人の中の不和がもとで、レーマン人が勝利を得る。ヒラマン、アンモンの民から出た2000人の青年の指揮を執る。紀元前約64年から63年に至る。
01 さて、ニーファイ人は捕虜のレーマン人を見張る番兵を置き、その捕虜たちにレーマン人の死体と、殺されたニーファイ人の死体とを葬らせた。モロナイは、彼らが働いている間彼らを見張る兵を置いた。
02 またモロナイは、リーハイとともにミュレクの町へ行き、その町の指揮権を掌握し、それをリーハイに与えた。見よ、このリーハイは、モロナイが戦闘に出るときにはほとんどいつも彼とともにいた人で、モロナイに似た人物であった。そして、二人は互いの無事を喜び合い、また互いに愛し合い、ニーファイの民も皆この二人を愛していた。
03 さて、レーマン人は同胞の死体とニーファイ人の死体を葬り終えると、バウンティフルの地へ連れ戻された。それからテアンクムは、モロナイの命令によって彼らにその地、もっと正確に言えばその町、バウンティフルの町の周りに堀を築く作業を開始させた。
04 またテアンクムは、彼らに堀の内土手の上に木材で胸壁を築かせ、さらにその胸壁に堀から上げた土を盛らせた。このようにニーファイ人はレーマン人を働かせて、ついにバウンティフルの町を木材と土から成る非常に高い丈夫な防壁で囲んだ。
05 この町は、それ以来非常に堅固なとりでとなった。そして、彼らはこの町の中で、すなわち捕虜のレーマン人の手で築かせた防壁を持つこの町の中で、捕虜たちを見張ったのであった。レーマン人が働いている間は彼らを見張るのは容易であり、またレーマン人に攻撃を仕掛けるのに全軍が欲しかったので、モロナイはどうしてもレーマン人を働かせなければならなかった。
06 そしてモロナイは、レーマン人の中で最強の軍隊の一つに勝利を収め、またニーファイの地におけるレーマン人の最も堅固なとりでの一つであるミュレクの町を手に入れたのである。そして、捕虜を抑留するとりでも一つ築いたのであった。
07 さて、彼はその年にはもうレーマン人と戦いをしようとせずに、兵を使って戦争の準備をし、レーマン人を防ぐためのとりでを築き、ニーファイ人の女子供を飢饉と苦難から救い、またニーファイ人の軍隊のために兵糧の備えをした。
08 さて、ニーファイ人の中に大きな陰謀が企てられて彼らの中に不和が生じたため、モロナイが出かけて不在になった間に、西の海に近い南方のレーマン人の軍隊がニーファイ人に対して多少優勢になり、その地方でニーファイ人の町をまとめて占領した。
09 このようにして、ニーファイ人は自分たちの罪悪のために、すなわち自分たちの中の不和と陰謀のために、最も危険な状況に陥った。
10 さて見よ、アンモンの民について少々述べておかなければならない。アンモンの民は初めはレーマン人であったが、アンモンとその同僚たちによって、いや、神の力と言葉によって主を信じるようになった。そして彼らは、ゼラヘムラの地に連れて来られ、それ以来ニーファイ人によって守られてきた。
11 また彼らは、誓いを立てていたので、同胞に対してこれまで武器を取らなかった。彼らは、これからはもう決して血を流さないと誓いを立てていたからである。したがって、もしアンモンとその同僚たちが彼らに示した同情と深い愛情がなければ、彼らは自分たちの誓いのために滅ぼされていたであろう。すなわち、甘んじて同胞の手に落ちていたことであろう。
12 このようなわけで、彼らはゼラヘムラの地に連れて来られ、ニーファイ人によって守られてきたのである。
13 しかし、彼らは自分たちのためにニーファイ人が危険に遭い、多くの苦難と艱難を負っているのを見て申し訳なく思い、自分たちの国を守るために武器を取りたいと願った。
14 しかし見よ、彼らはまさに武器を取ろうとしたときに、ヒラマンやその同僚たちの説得を受けて心を翻した。このようにヒラマンたちが彼らを説得したのは、彼らが以前に立てた誓いをまさに破ろうとしていたからである。
15 ヒラマンは、彼らがそうすることによって滅びることになりはしないかと懸念したのである。このようにして、以前にこの誓いを立てたすべての人は、当時の危うい状況の中で彼らの同胞が何とか苦難を切り抜けるのを見ているほかなかった。
16 しかし見よ、彼らには多くの息子たちがおり、その息子たちは武器を取って敵を防ぐことはしないという誓いをまだ立てていなかった。そこで、彼らの中で武器を取ることのできる者は皆このときに集まり、自分たちをニーファイ人と呼んだ。
17 そして彼らは、ニーファイ人の自由のために戦うという、つまり自分たちの命を捨ててでも国を守るという誓いを立てた。また、自分たちの自由を決して放棄することなく、ニーファイ人と自分たちが奴隷の状態に陥らないようにするために、どのような場合でも戦うと誓った。
18 さて見よ、この誓いを立てて、国を守るために武器を取った青年たちは、2000人であった。
19 見よ、この青年たちは、これまで一度もニーファイ人にとって負担となったことがなく、この度も大いなる助け手となった。彼らは武器を取り、ヒラマンが自分たちの指揮官になることを願った。
20 彼らは皆、青年であって、非常に勇敢であり、体力と活力がみなぎっていた。しかも見よ、それだけではなく、彼らは託されたことは何であろうと、いつでも誠実に果たす者たちであった。
21 まことに彼らは神の戒めを守り、神の前をまっすぐに歩むように教えられていたので、誠実でまじめな者たちであった。
22 そしてヒラマンは、西の海に近い南方の境の地にいる人々を支援するために、この2000人の若い兵士を率いて行った。
23 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第28年が終わった。
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【動画】ヒラマンと2,000人の若い兵士たち
第54章
アモロンとモロナイ、捕虜の交換を交渉する。モロナイ、撤兵して残忍な攻撃をやめるようレーマン人に要求する。アモロン、武器を捨ててレーマン人に服従することをニーファイ人に要求する。紀元前約63年。
01 さて、さばきつかさの統治第29年の初めに、アモロンは捕虜を交換することを求めて、使者をモロナイに送ってきた。
02 そして、モロナイはこの要請を非常に喜んだ。というのは、捕虜のレーマン人を養うのに使っている食糧を自分の民を養うのに充てたいと思い、また民を返してもらって自分の軍隊を増強したいとも思っていたからである。
03 ところで、レーマン人は多くの女子供を捕らえていたが、モロナイのすべての捕虜、すなわち、モロナイが捕らえていた捕虜の中には女と子供はいなかった。そこでモロナイは、できるだけ多くのニーファイ人の捕虜をレーマン人から取り返すために、一つの策を講じることにした。
04 それでモロナイは手紙をしたため、自分に手紙を持って来てくれたアモロンの部下にそれを託した。彼がアモロンに書いた言葉は次のとおりである。
05 「アモロンよ、見よ、あなたがわたしの民に仕掛けたこの戦争、いや、あなたの兄弟がわたしの民に仕掛け、あなたが兄弟の死後もなお続けようとしているこの戦争について、わたしは以前に少しあなたに書き送ったことがある。
06 見よ、わたしは、神の正義と神の激しい怒りの剣について、少しあなたに告げたい。あなたがたが悔い改めて、軍隊をあなたの土地、すなわち、あなたの所有地であるニーファイの地に撤退させなければ、神の激しい怒りの剣があなたのうえに迫るであろう。
07 まことに、もしこれらのことを聴く度量があなたにあるならば、まことにわたしはあなたに告げたい。すなわち、あなたがたが悔い改めて残忍なもくろみを捨て、軍隊を率いて自分の土地へ帰らなければ、あの恐ろしい地獄があなたやあなたの兄弟のような殺人者を迎え入れようと待ち受けていることを、あなたに告げたい。
08 しかし、あなたはかつてこれらのことを拒み、主の民に敵対して戦ったので、わたしはあなたがまたそのようにするであろうと思う。
09 さて見よ、我々にはあなたがたを迎え撃つ用意ができている。また、あなたは自分のもくろみを捨てなければ、あなたが拒んだあの神の激しい怒りを自分の身に受け、完全な滅亡を被るであろう。
10 あなたがたが撤退しなければ、主が生きておられるように確かに、我々の軍隊はあなたがたに攻め上り、あなたがたは間もなく死に見舞われるであろう。我々は自分たちの町と土地を保有し、また自分たちの宗教と神の大義を守るつもりだからである。
11 しかし見よ、これらのことをあなたに述べても無駄であるとわたしには思われる。また、あなたは地獄の子であるようにわたしには思われる。したがってわたしは、手紙を結ぶに当たって告げる。一人の捕虜に対して男一人とその妻とその子供たちを引き渡すという条件に同意しなければ、わたしは捕虜の交換をしない。もしあなたがたがそのようにするならば、交換をしよう。
12 見よ、もしあなたがたがこれを行わなければ、わたしは軍隊を率いてあなたがたを攻めるつもりである。まことに、わたしは女たちと子供たちを武装させてあなたを攻め、我々の最初の受け継ぎの地である現在のあなたがたの地までも追って行こう。そして、血には血を、命には命を求めよう。そしてわたしは、あなたがたが地の面から滅ぼし去られるまで戦おう。
13 見よ、わたしは怒っており、わたしの民も怒っている。あなたがたはこれまで我々を殺そうとしてきたが、我々は防衛にのみ努めてきた。しかし、もしあなたがたがこれ以上我々を滅ぼそうとするならば、我々もあなたがたを滅ぼすようにしよう。そして、我々は自分たちの土地、すなわち我々の最初の受け継ぎの地を手に入れるであろう。
14 これでわたしは手紙を結ぶ。わたしはモロナイであり、ニーファイ人の民の指揮官である。」
15 さて、アモロンはこの手紙を受け取ると腹を立て、モロナイに手紙をもう1通書いた。彼が書いた言葉は次のとおりである。
16 「わたしはレーマン人の王、アモロンであり、おまえたちが殺したアマリキヤの兄弟である。見よ、わたしはおまえたちに、兄弟の血の報復をするつもりである。またわたしは、おまえの脅迫など恐れないので、軍隊を率いておまえたちを攻めよう。
17 見よ、おまえの先祖は自分の兄たちを不当に扱った。統治権は正当にはその兄たちのものであったのに、おまえの先祖はそれを兄たちから奪った。
18 さて見よ、もしおまえたちが武器を捨てて、統治権の正当な所有者の統治に服するならば、そのとき、わたしも民に武器を捨てさせ、もう決して戦争をさせないようにしよう。
19 見よ、おまえはわたしとわたしの民に脅迫の言葉をたくさん吐いたが、我々はおまえの脅迫を恐れない。
20 しかしながら、わたしは喜んでおまえの求めるとおりに捕虜を交換することを認め、食糧をわが軍の兵たちのために蓄えておくようにしよう。そして、我々はニーファイ人が我々の権威に服従するまで、そうでなければ、ニーファイ人を永遠に絶滅させるまで、いつまでも戦争を続けよう。
21 また、我々が拒んだとおまえの言うその神についてであるが、見よ、我々はそのような者を知らないし、おまえにも分かるはずがない。しかし、もしそのような者がいるとすれば、その者はおまえだけでなく、我々をも造ったことになる。
22 また、もし悪魔がおり、地獄があるとすれば、わたしの兄弟を殺したうえに、彼はそのような場所に行ったとほのめかすおまえたちも、悪魔によってそこへ送り込まれ、わたしの兄弟とともにそこで住むことにならないだろうか。しかし、これらのことはどうでもよい。
23 わたしはアモロンであって、おまえの先祖によって無理やりにエルサレムから連れ出されたゾーラムの子孫である。
24 そして見よ、今やわたしは勇敢なレーマン人である。見よ、この戦争はレーマン人が受けた不当な扱いの報復をし、レーマン人の統治権を守り、手に入れるために行われてきたものである。これでモロナイにあてた手紙を結ぶ。」
第55章
モロナイ、捕虜を交換することを断る。レーマン人の番兵たちは誘いに負けて酔っ払い、捕虜のニーファイ人は解放される。ギドの町は血を流すことなく取り返される。紀元前約63年から62年に至る。
01 さて、モロナイはこの手紙を受け取ると、アモロンが彼自身の欺瞞をよくよく承知しているのを知り、またニーファイの民と戦争をするのが正当な動機によるものではないことも承知しているのを知り、ますます怒った。
02 そして、彼は言った。「見よ、わたしが手紙の中で述べたように、もしアモロンが彼のもくろみを捨てなければ、わたしは彼と捕虜の交換をしない。彼がこれまで得てきた力以上に大きな力を持つことを、彼に認めるつもりはないからである。
03 見よ、わたしは、レーマン人が捕虜にしたわたしの民をどこで見張っているのか、その場所をよく知っている。手紙に記したわたしの要求をアモロンが認めようとしないので、見よ、わたしは、自分の言葉のとおりに彼に行おう。まことに、彼らが和平を求めるまで彼らの中に死を求めよう。」
04 さて、モロナイはこの言葉を語り終えると、自分の兵の中にレーマンの子孫に当たる者がいるかもしれないと思い、兵の中を調べさせた。
05 そして、レーマンという名の者が見つかった。この者はアマリキヤによって殺された王の僕の一人であった。
06 そこでモロナイは、レーマンと自分の少数の兵を、ニーファイ人を見張っている番兵たちのところへ行かせた。
07 ニーファイ人はギドの町に囚われていたので、モロナイはレーマンを任命し、少数の兵を彼とともに行かせた。
08 そして、夜になってレーマンがニーファイ人を見張っている番兵たちのもとへ行くと、見よ、彼らはレーマンがやって来るのを見て、彼に呼びかけた。そこで、レーマンは彼らに言った。「怖がるな。わたしはレーマン人だ。我々はニーファイ人のもとから逃げ出して来た。ニーファイ人は今眠っている。だから、ぶどう酒を手に入れて持って来た。」
09 さて、レーマン人はこの言葉を聞くと、喜んで彼を迎え入れ、「ぶどう酒を我々にも飲ませてくれ。我々は疲れているので、このようにおまえがぶどう酒を持って来てくれたことはうれしいことだ」と彼に言った。
10 ところがレーマンは、「ニーファイ人に向かって戦いに出るまで我々のぶどう酒は取っておこう」と彼らに言った。しかしこの言葉は、そのぶどう酒を飲みたいという彼らの気持ちを募らせるばかりであった。
11 そして、彼らは言った。「疲れているから、今そのぶどう酒を飲もう。そのうちに配給のぶどう酒が来る。ニーファイ人に向かって行く力はそれでつけることにしよう。」
12 そこで、レーマンは彼らに、「思うとおりにするがよい」と言った。
13 そこで彼らは、ぶどう酒をふんだんに飲んだ。しかも、彼らの味の好みに合っていたので、彼らはなおさらふんだんに飲んだ。ところが、そのぶどう酒は濃く造られていたので、強かった。
14 そして彼らは、飲むといい気持ちになり、やがて全員酔っ払ってしまった。
15 さて、レーマンと兵たちは、番兵たちが全員酔ってぐっすり眠っているのを見て、モロナイのもとに引き返して事の次第をすべて報告した。
16 これはモロナイの計画のとおりであり、モロナイは兵たちに武器を持たせて準備を整えていた。そして、レーマン人が酔って熟睡している間に、ギドの町へ行って町に武器を投げ込み、捕虜たちに渡した。そこで捕虜は皆武装した。
17 モロナイが捕虜を全員武装させたとき、武器を使える者は、女や子供に至るまで全員が武装した。これらのことはすべてまったく静かに行われた。
18 しかし、たとえレーマン人を起こしたとしても、見よ、ニーファイ人は彼らを殺すことができたであろう。
19 しかし見よ、それはモロナイが願っていたことではなかった。彼は殺人や流血を喜ばず、自分の民を滅亡から救うことを喜びとしていた。そして彼は、不当な行為を働くことができなかったので、レーマン人が酔っている間に彼らを襲って殺すことは望まなかった。
20 それでも彼は、自分の願いを達していた。彼は町の城壁の内側にいる捕虜のニーファイ人を武装させ、城壁内の町を手に入れる力を彼らに与えていたからである。
21 それから彼は、自分の率いる兵を彼らから一歩退かせて、レーマン人の軍隊を包囲させた。
22 さて見よ、これは夜間に行われたので、朝レーマン人が目を覚まして見ると、外側はニーファイ人が包囲しており、内側では捕虜たちが武装していた。
23 このようにして彼らは、ニーファイ人が自分たちを打ち負かす力を得ているのを知った。このような状況の中で、彼らはニーファイ人と戦うのは得策ではないのを知ったので、彼らの連隊長たちは武器の引き渡しを命じた。そこで彼らは、武器を持って来てニーファイ人の足もとに投げ出し、連隊長たちは哀れみを請うた。
24 さて見よ、これはモロナイが願っていたことであった。そこでモロナイは、彼らを捕虜にして、その町を占領し、捕虜になっていたニーファイ人を全員解放した。そしてこれらの人々は、モロナイの軍隊に加わり、彼の軍隊にとって大きな力となった。
25 そして、彼は捕虜にしたレーマン人に、ギドの町の周囲の防備を強固にする仕事を始めさせた。
26 そして彼は、自分の望みどおりにギドの町の防備を固め終えると、捕虜たちをバウンティフルの町へ連れて行かせた。そして、彼はまた非常に強力な軍隊でその町を守った。
27 そして、レーマン人の陰謀が何度かあったにもかかわらず、彼らはそれまでに捕らえたすべての捕虜を見張って守り、また取り返したすべての土地を守り通し、優位を保ち続けた。
28 そしてニーファイ人は、再び勝利を収めるようになり、自分たちの権利と特権を取り戻し始めた。
29 レーマン人は何度も夜に紛れてニーファイ人を包囲しようとしたが、その度に彼らは、多くの者を捕虜として失った。
30 また彼らは、ニーファイ人にぶどう酒を飲ませて毒で殺すことや、酔わせて殺すことを何度も企てた。
31 しかし見よ、ニーファイ人は、この苦難のときにすぐ主なる神を思い起こした。そのため、レーマン人のわなにかからなかった。彼らはまず捕虜のレーマン人の幾人かに飲ませてからでなければ、レーマン人のぶどう酒を飲もうとはしなかったのである。
32 彼らはこのように用心したので、彼らの中には毒を飲まされた者は一人もいなかった。もしぶどう酒がレーマン人を中毒させるようであれば、それはニーファイ人をも中毒させるからである。このように、彼らはレーマン人の酒をすべて試したのであった。
33 さて、モロナイは、モリアントンの町を攻撃するために様々な準備を整える必要があった。見よ、レーマン人が自ら骨折ってモリアントンの町の防備を固め、それが非常に堅固なとりでとなっていたからである。
34 そして彼らは、絶えずその町に新たな軍隊と食糧を運び込んでいた。
35 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第29年が終わった。
第56章
ヒラマン、モロナイに手紙を送り、レーマン人との戦いの状況を詳しく述べる。アンテプスとヒラマン、レーマン人に大勝利を収める。ヒラマンの2000人の息子たちは奇跡的な力で戦い、一人も殺されない。第1節は紀元前約62年、第2〜19節は約66年、第20〜57節は約65〜64年の出来事である。
01 さて、さばきつかさの統治第30年の初め、1月2日にモロナイはヒラマンから手紙を受け取ったが、それには彼がいる地方の民に関する事柄が述べられていた。
02 ヒラマンが書いた言葉は次のとおりである。「戦時の艱難の中にあっても、主にあっても兄弟である、わたしの心から深く愛する兄弟、モロナイ殿。まことに、愛する兄弟、わたしはこの地方の戦況について少々お知らせしておきたいと思います。
03 まことに、それは、アンモンがニーファイの地から連れて来た人々の息子たち2000人のことについてです。御存じのように、アンモンが連れて来たこれらの人々は、わたしたちの先祖リーハイの長男であるレーマンの子孫です。
04 わたしがあなたに彼らの言い伝えや不信仰について事細かに述べるまでもなく、あなたはこれらのことをすべて御存じです。
05 ですから、この2000人の青年たちが武器を取り、わたしに彼らの指揮官になるように望んだこと、そしてわたしたちが自分の国を守るために出て行ったこと、これらのことだけあなたに申し上げれば十分です。
06 そして、あなたはまた、彼らの先祖が交わした、同胞に対して武器を取って血を流すことはしないという聖約についても御存じです。
07 しかし、第26年に、彼らはわたしたちが彼らのために苦難と艱難に陥っているのを見て、わたしたちを援護するために、彼らが以前に交わした聖約を破って武器を取ろうとしました。
08 しかし、わたしは神がわたしたちを強くしてくださるので、彼らが自分たちの立てた誓いを守るならばわたしたちはそれ以上苦しみを受けないであろうと思い、彼らが以前に交わしたこの聖約を破ることを認めませんでした。
09 しかしまことに、わたしたちにとって非常にうれしいことが一つあります。第26年に、わたしヒラマンはこの2000人の青年たちを率いて、アンテプスを助けるためにユダヤの町へ進軍しました。このアンテプスは、あなたがその地の民の指揮官に任命した人です。
10 そしてわたしは、アンテプスの軍隊にわたしの2000人の息子たち(彼らは息子と呼ばれるにふさわしい人々です)を加えたので、アンテプスはその兵力を非常に喜びました。というのは、まことにレーマン人の軍隊によっておびただしい数の兵が殺され、彼の軍隊の兵の数が減っていたからです。このように大勢の人が殺されたことを、わたしたちは嘆き悲しまないではいられません。
11 にもかかわらず、わたしたちは、彼らが自分たちの国と神のために死んで、今幸せな状態にあるということで、自らを慰めることができます。
12 レーマン人はまた多くの捕虜を残しており、その全員が連隊長です。彼らはほかの者をだれ一人生かしておかなかったからです。彼らは今ニーファイの地にいると思います。殺されていなければそこにいます。
13 レーマン人が、そのように多くのわたしたちの勇敢な兵たちの血を流して支配権を得た町は、次のとおりです。
14 マンタイの地、すなわちマンタイの町、ゼーズロムの町、クメナイの町、アンテパラの町。
15 以上は、わたしがユダヤの町に着いたときにレーマン人が占領していた町です。またわたしは、アンテプスとその兵がユダヤの町の防備を固めるのに力を尽くしているのを見ました。
16 そして彼らは、町を守り抜くために昼は勇ましく戦い、夜は夜で苦労を重ねていたので、肉体も精神も疲れ切っていました。彼らはこのように、ありとあらゆるひどい苦難に耐えてきました。
17 また彼らは、この地で勝利を得るか、そうでなければ死のうと決意していたので、あなたにも十分に想像がつくと思いますが、わたしが連れて来たこの小さな軍隊、すなわちわたしの息子たちは、彼らに大きな希望と大きな喜びを与えました。
18 さて、レーマン人は、アンテプスが軍隊に援兵を得たのを知ると、アモロンの命令で、戦闘のためにユダヤの町に来るのを、すなわちわたしたちを攻めるのを禁じられました。
19 このようにして、わたしたちは主の恵みを受けました。というのは、もし彼らがこの弱い状態にあるわたしたちに攻め寄せていたら、わたしたちの小さな軍隊は恐らく滅ぼされていたことでしょう。しかし、このようにしてわたしたちは守られたのです。
20 彼らは、それまでに奪ってきた町を守るようにアモロンから命じられたのです。このようにして、第26年が終わりました。第27年の初めに、わたしたちは自分たちの町と自分自身を守る準備を終えました。
21 そしてわたしたちは、レーマン人が攻めて来てくれることを願いました。わたしたちは、とりでにこもっている彼らを攻撃することを望まなかったからです。
22 そして、レーマン人が夜に紛れて、あるいは日中にでも、わたしたちのもとを通り過ぎて北方にあるほかの町に攻撃を加えるようなことがないよう、わたしたちはレーマン人の動きを見張るために方々に密偵を置きました。
23 北方にあるそれらの町の人々には、レーマン人と交戦できるほどの力がないことをわたしは知っていたからです。したがって、もしレーマン人がそばを通り過ぎるようであれば、彼らを背後から攻めて、正面からの交戦と同時に、背後からも彼らを攻めたいと思っていました。そうすれば彼らを打ち負かせると思ったのですが、まことに、この望みはくじかれてしまいました。
24 彼らは、あえて全軍でわたしたちのそばを通り過ぎようとはせず、また軍隊の一部でも、力が足りなくて負けるのを心配して通り過ぎようとしませんでした。
25 また彼らは、あえてゼラヘムラの町に対して進軍することも、またシドンの源を越えてニーファイハの町へ向かうこともしませんでした。
26 このように彼らは、以前に奪ったそれらの町を自分たちの軍隊で守ろうと決意していたのです。
27 さて、この年の2月に、わたしの2000人の息子たちの父親から多くの食糧がわたしたちのもとに届きました。
28 さらに、ゼラヘムラの地からわたしたちのもとに、2000人の兵も送られてきました。このようにして、わたしたちには10000人の兵と、この兵たちとその妻子たちのための食糧が備わりました。
29 レーマン人は、このようにわたしたちの軍隊が日々増大し、またわたしたちの支えである食糧が届くのを見て恐れ始め、できればわたしたちにもう食糧と兵力を得させないようにしようということで、出撃して来るようになりました。
30 わたしたちは、レーマン人がこのように次第に不安になり始めたのを知ると、彼らに一つの策を講じたいと思いました。そこでアンテプスの命を受け、わたしはあたかも食糧を運んでいるところであるかのように、若い息子たちとともに近隣のある町へ出かけて行くことになりました。
31 わたしたちはアンテパラの町の近くを、あたかも海岸に近い地方にあるその先の町へ向かっているかのように進むことになりました。
32 そして、食糧を運んでその町へ向かっているかのように進軍しました。
33 そしてアンテプスも、町を守るために彼の軍隊の一部を残し、残りの兵とともに進軍しました。しかし、わたしが自分の若い軍隊とともにアンテパラの町に近づくまで、彼は進軍しませんでした。
34 アンテパラの町には、レーマン人の最強の軍隊が最大の規模で配備されていました。
35 さて彼らは、密偵から知らせを受けると、軍隊を出し、わたしたちに向かって進んで来ました。
36 そこでわたしたちは、彼らの前を北方へ逃げました。このようにしてわたしたちは、レーマン人の最も強い軍隊を連れ出したのです。
37 まことに、かなり遠くまで連れ出しました。彼らは、アンテプスの軍隊が全力で追って来るのを知ると、右にも左にも曲がらず、まっすぐにわたしたちを追って来ました。今思うに、彼らはアンテプスに追いつかれる前にわたしたちを殺し、わたしたちの民に取り囲まれることのないようにしようと考えたようです。
38 アンテプスは、わたしたちが危ういのを見て、行軍の速度を増しましたが、しかしまことに、夜になってしまいました。そのため、レーマン人はわたしたちに追いつかず、アンテプスもレーマン人に追いつかなかったので、わたしたちは夜の間野営しました。
39 そして、夜明け前に、レーマン人はまたわたしたちを追って来ました。しかしわたしたちは、彼らと戦えるほど強くなく、またわたしは若い息子たちを彼らの手に落としたくないと思ったので、そのまま行軍を続け、荒れ野へ向かいました。
40 レーマン人は取り囲まれることを恐れて、あえて右にも左にも曲がらず、わたしも彼らに追いつかれるのを恐れて、右にも左にも曲がりませんでした。わたしたちは追いつかれれば抵抗できず彼らに殺され、彼らは逃れていたことでしょう。したがって、暗くなるまで、わたしたちは一日中荒れ野の中を逃げました。
41 そして、また翌日夜が明けると、わたしたちはレーマン人が追って来るのを見て、彼らの前から逃げました。
42 ところが、彼らはわたしたちを遠く追わないうちに立ち止まりました。それは7月3日の朝のことでした。
43 わたしたちには、アンテプスが彼らに追いついたのかどうか分かりませんでしたが、わたしは兵たちに言いました。『見よ、彼らは我々に攻撃をさせ、我々をわなにかけて捕らえるために止まったのかもしれない。
44 したがって、わたしの息子たちよ、あなたがたはどうだろうか。彼らと戦うつもりがあるか。』
45 愛する兄弟、モロナイ殿。わたしは申し上げます。わたしはこれまでこのような大いなる勇気を一度も見たことがありません。ニーファイ人の中にはないことでした。
46 わたしがいつも彼らを(皆、非常に若かったので)わたしの息子たちと呼んできたように、彼らもわたしに、『父よ、まことに、神はわたしたちとともにいて、わたしたちが敗れることのないようにしてくださいます。ですから、出て行きましょう。もしわたしたちの同胞が仕掛けてこなければ、わたしたちは彼らを殺しません。彼らがアンテプスの軍隊を打ち負かすことのないように、わたしたちは行きましょう』と言いました。
47 彼らはまだ一度も戦ったことがありませんでしたが、死を恐れませんでした。そして彼らは、自分の命よりも父親たちの自由のことを考えていました。彼らは母親から、疑わなければ神が救ってくださると教わっていたのです。
48 そして彼らは、わたしに母親たちの言葉を告げて、『わたしたちは、母たちがそれを知っていたことを疑いません』と言いました。
49 そこで、わたしたちを追って来たレーマン人と戦うために、わたしは2000人の兵とともに引き返しました。すると、アンテプスの軍隊が彼らに襲いかかり、激しい戦いが始まっていました。
50 しかも、アンテプスの軍隊はそのようなわずかな日時で長い道のりを進んだことで疲れており、まさにレーマン人の手に落ちようとしていたところでした。もしわたしが2000人の兵とともに引き返さなければ、レーマン人は彼らの目的を達していたことでしょう。
51 アンテプスと彼の指揮官たちの多くが、行軍が速かったために疲れ果てて、すでに剣に倒れていたからです。そしてアンテプスの兵たちは、指揮官たちが倒れたことでうろたえ、レーマン人の前から退却を始めました。
52 そこでレーマン人は勇み立ち、彼らを追撃し始めました。このように、レーマン人が激しい勢いで彼らを追撃していたときに、ヒラマンが2000人の兵とともにレーマン人の背後から攻めかかり、彼らを大いに殺し始めたのです。そこでレーマン人の全軍は立ち止まって、今度はヒラマンに向かいました。
53 するとアンテプスの民は、レーマン人が向きを転じたのを見て自分たちの兵を集め、再びレーマン人の背後を攻めました。
54 そして、わたしたちニーファイの民、すなわちアンテプスの民とわたしとわたしの2000人の兵がレーマン人を取り囲み、彼らを殺したので、彼らは仕方なく武器を引き渡し、捕虜となりました。
55 さて、彼らがわたしたちに降伏したので、わたしはともに戦ってきた青年たちが大勢殺されたのではないかと心配になり、彼らの人数を数えました。
56 ところがまことに、非常にうれしいことに、彼らの中で地に倒れた者は一人もいませんでした。彼らはまるで神の力を得たかのように戦いました。このように奇跡的な力で戦った人はこれまでに一人もいません。彼らはレーマン人が肝をつぶすほどの大いなる力で彼らに攻めかかり、そのために、レーマン人は降伏して捕虜になりました。
57 また、そこには捕虜をレーマン人の軍隊から遠ざけて見張っておける場所がなかったので、わたしたちは殺されなかったアンテプスの兵の一部を付けて、彼らをゼラヘムラの地に送りました。そして、残りの兵はわたしが率いて若いアンモン人に加え、ユダヤの町に引き返しました。」
第57章
ヒラマン、アンテパラの奪回と明け渡しと、クメナイの防御について述べる。アンモン人の青年たち、勇敢に戦う。全員が負傷するが、一人も死なない。ギド、捕虜のレーマン人の殺害と逃亡について報告する。紀元前約63年。
01 「さて、わたしは王のアモロンから手紙を受け取りましたが、それは、もしわたしたちが捕らえた捕虜を引き渡すならば、アンテパラの町をわたしたちに譲り渡そうというものでした。
02 しかし、わたしは王に手紙を送り、わたしたちの軍隊には自力でアンテパラの町を取り返す力があると確信しているので、捕虜と町を交換するのは賢明ではないと思う、したがって、捕虜同士を交換するときにのみ捕虜を引き渡すつもりである、と告げました。
03 するとアモロンは、捕虜の交換はしたくなかったので、わたしの手紙での申し出を拒絶しました。そこでわたしたちは、アンテパラの町を攻める準備を整えました。
04 ところが、アンテパラの民はその町を去り、彼らが支配していたほかの町へ逃げて行き、それらの町の防備を固めました。このようにして、アンテパラの町はわたしたちの手に落ちました。
05 このようにして、さばきつかさの統治第28年が終わりました。
06 さて、第29年の初めに、わたしたちはゼラヘムラの地と周辺の地から、食糧と6000人の援兵を受け、またほかにアンモン人の息子たち60人が彼らの同胞、すなわち2000人から成るわたしの小さな軍隊に加わりました。そしてまことに、わたしたちは強くなり、また食糧もたくさん補給されました。
07 そこでわたしたちは、クメナイの町を守るために配置されている軍隊と一戦交えたいと思いました。
08 さて、まことに、わたしたちがやがて自分たちの望みを遂げたことをあなたに明らかにしたいと思います。まことにわたしたちは、クメナイの町の者が食糧を受け取ることになっていた少し前から、わたしたちの強い軍隊をもって、いや、わたしたちの強い軍隊の一部をもって、夜その町を包囲しました。
09 そしてわたしたちは、幾晩もその町の周囲で野営しました。しかしわたしたちは、夜に紛れてレーマン人に襲われ、殺されることのないように、剣を身に着けたまま眠り、また見張りの兵を置きました。それでも彼らは、何度も襲撃を試みて、その度に彼らの血が流されたのでした。
10 そのうちにやっと彼らの食糧が到着し、レーマン人は夜に紛れて町に入ろうとしました。ところが、わたしたちはレーマン人ではなくニーファイ人であったので、彼らを捕らえ、彼らの食糧を奪いました。
11 しかしレーマン人は、このようにして補給を断たれたにもかかわらず、なおもその町を守り通そうと決意していました。そこでわたしたちは、それらの食糧を運んでユダヤに送り、また捕虜はゼラヘムラの地に送る必要がありました。
12 そして、それほど多くの日数がたたないうちに、レーマン人は救援を得られる望みをすっかり失い、その町をわたしたちの手に明け渡しました。このようにして、わたしたちはクメナイの町を手に入れる計画を達成しました。
13 しかし、捕虜の数が甚だ多かったので、わたしたちの兵の数が非常に多かったにもかかわらず、わたしたちは彼らを見張るのに全軍を用いるか、そうでなければ彼らを処刑するかしなければなりませんでした。
14 というのは、まことに彼らは大勢で逃げ出し、石やこん棒や、そのほか手に入るものを何でも手に取って戦おうとしたからです。そのために、彼らが降伏して捕虜になった後、わたしたちは彼らの中の2000人以上を殺しました。
15 そのようなわけで、わたしたちは彼らの命を取るか、そうでなければ剣を手にしたまま彼らをゼラヘムラの地へ護送して行くことが必要になりました。そのうえ、わたしたちが以前にレーマン人から奪った食糧があったにもかかわらず、食糧はわたしたちの軍隊にも十分ではありませんでした。
16 そのような危うい状況の下で、この捕虜たちについて判断を下すことは非常に重大な問題となりました。にもかかわらず、彼らをゼラヘムラの地へ送ることにしました。そして、兵の一部を選んで捕虜を見張る任務を彼らに与え、ゼラヘムラの地へ下って行かせました。
17 ところがその翌日、彼らは戻って来ました。しかし、わたしたちは彼らに捕虜のことを尋ねませんでした。まことに、わたしたちはそのときレーマン人に攻められており、彼らはちょうどよいときに戻って来て、わたしたちがレーマン人の手に落ちるのを救ってくれたからです。というのは、まことに、レーマン人を支援するために、アモロンが新たな食糧と大勢の兵を送ってきたからでした。
18 そして、わたしたちが捕虜に付けて送り出した兵たちは、わたしたちがまさにレーマン人に負かされようとしたときに、ちょうど折よく到着して彼らを食い止めてくれたのです。
19 しかしまことに、2060人の兵から成るわたしの小さな軍隊は必死に戦い、まことに、彼らはレーマン人の前に確固として立ちはだかり、向かって来るすべての者を殺しました。
20 わたしたちの軍隊のほかの兵たちがレーマン人の前から退却しようとしていたときに、まことにその2060人の兵は確固としており、ひるみませんでした。
21 まことに、彼らはすべての号令に従ってそのとおりに行うように努めたのです。そして、実に彼らの信仰に応じて、そのようになりました。そのことでわたしは、彼らが母親たちから教わったと言ってわたしに話してくれた言葉を思い出しました。
22 わたしたちがこの大勝利を収めたのは、実にわたしのこの息子たちと、選ばれて捕虜を護送して行ったその兵たちのおかげです。レーマン人を打ち負かしたのは、これらの兵たちでした。そしてレーマン人は、マンタイの町へ追い返されました。
23 わたしたちはクメナイの町を守り、全員が剣で滅ぼされることは避けられたものの、それでもわたしたちは大きな損害を被っていました。
24 さて、レーマン人が逃げ去った後、わたしはすぐに、負傷した兵を死者の中から連れ出すように命令を下し、彼らの傷の手当てをし、包帯をさせました。
25 さて、わたしの2060人の兵のうち、200人が失血のために意識を失っていました。にもかかわらず、神の慈しみによってだれ一人死なずに済んだことは、わたしたちにとってまったく驚きであり、またわたしたち全軍の喜びでもありました。彼らの中には傷をたくさん負わなかった者は一人もいませんでした。
26 彼らが守られたのは、わたしたち全軍にとって驚きでした。1000人の同胞が殺されながら、彼らは命を救われたのです。それは神の奇跡を起こす力によったものと考えざるを得ません。彼らは信じるように教えられたことを深く信じていたので、すなわち、公正な神がましますことと、疑わない者はだれでも神の驚くべき力によって守られるということを深く信じていたので、それが起こったのです。
27 わたしの述べてきたこれらの者たちは、これを信じていました。彼らは若いながらも考えはしっかりしていて、絶えず神に頼っています。
28 さて、このように味方の負傷兵の世話を終え、味方の死者と多くのレーマン人の死者を葬り終えた後、わたしたちはギドに、彼らがゼラヘムラの地へ連れて行った捕虜たちのことを尋ねました。
29 ギドは、その地に彼らを護送して行くように任命された軍隊の連隊長でした。
30 ギドがわたしに述べた言葉は、次のとおりです。『まことに、わたしたちは捕虜を連れてゼラヘムラの地へ下って行くために出発しました。すると途中で、レーマン人の軍を見張るために遣わされていたわたしたちの軍の密偵たちに出会いました。
31 ところが、彼らはわたしたちに向かって、「レーマン人の軍がクメナイの町へ向かって進んでいる。彼らはクメナイの町にいる者を襲い、わたしたちの民を滅ぼすつもりだ」と叫んだのです。
32 そこで捕虜たちは、彼らの叫び声を聞いて勇み立ち、わたしたちに対して暴動を起こしました。
33 さて、彼らが暴動を起こしたので、わたしたちは剣で彼らを討ちました。彼らが一団となってわたしたちの剣を目がけて走り寄って来たため、わたしたちは彼らの大半を殺しました。しかし、残りの者たちはわたしたちを押し分けて逃げて行ってしまいました。
34 まことに、彼らが逃げてしまい、追いつけなかったので、わたしたちはクメナイの町へ向かって急いで進み、まことに、ちょうどよいときに到着して、町を守っていた同胞を助けることができました。
35 まことにわたしたちは、敵の手からまた救い出されました。わたしたちの神の御名がほめたたえられますように。まことに、わたしたちの神はわたしたちを救い出し、まことに、わたしたちのためにこのような大いなることを行ってくださいました。』
36 さて、わたしヒラマンはギドのこの言葉を聞くと、わたしたちを守ってわたしたち全員が滅びることのないようにしてくださっている神の慈しみを思い、非常な喜びに満たされました。またわたしは、これまでに殺された人々の霊がすでに神の安息に入っているものと信じています。」
第58章
ヒラマンとギドとテオムナー、策を用いてマンタイの町を取り返す。レーマン人、撤退する。アンモンの民の息子たち、しっかりと立って自分たちの自由と信仰を擁護するときに守られる。紀元前約63年から62年に至る。
01 「さて、まことに、わたしたちの次の目標は、マンタイの町を手に入れることでしたが、わたしたちの小さな軍隊ではどうしてもレーマン人をその町から誘い出せませんでした。彼らはわたしたちがこれまでに行ったことを覚えていたため、彼らをとりでからおびき出せませんでした。
02 また、彼らがわたしたちの軍隊よりもはるかに大勢であったので、わたしたちはあえて出て行って、とりでにこもっている彼らを攻撃しませんでした。
03 また、わたしたちは、これまでに取り返した土地を守り通すために兵を使うことが必要になり、ゼラヘムラの地からもっと多くの援兵と新たな食糧が届くのを待たなければなりませんでした。
04 そこでわたしは、国の総督のもとに使者を送って、わたしたちの民の状況について知らせました。そしてわたしたちは、ゼラヘムラの地から食糧と援兵が来るのを待ちました。
05 しかしまことに、レーマン人も日々多くの援兵と多くの食糧を得ていたので、これは、わたしたちにとってあまり得にはなりませんでした。当時のわたしたちの状況は以上のとおりでした。
06 またレーマン人は、策を巡らしてわたしたちを滅ぼそうとして、時々出撃して来ました。しかし、彼らには待避所ととりでがあったので、わたしたちは彼らと戦うことができませんでした。
07 そしてわたしたちは、難しい状況の下で何か月も待ち、とうとう食糧の欠乏で飢え死にしそうになりました。
08 さて、わたしたちを援助するために来た2000人の兵から成る軍隊に守られて、食糧が届きました。しかし、わたしたちが自分自身と国とを敵の手に落ちないように守り、おびただしい数の敵と戦うために受け取った援助は、ただこれだけでした。
09 このような苦しい事態に至った原因、すなわち、なぜ彼らがわたしたちにもっと多くの援兵を送ってくれなかったのか。その理由はわたしたちには分かりません。そのため、わたしたちは心を痛め、また何らかの手段で神の裁きがわたしたちの国に下って、わたしたちが打ち倒され、完全に滅ぼされてしまうのではないかという恐れでいっぱいになりました。
10 そこでわたしたちは、心を神に注ぎ出して祈り、わたしたちを強めてくださるように、また敵の手から救ってくださるように、さらにわたしたちの民を支えるために、わたしたちの町と土地と所有物を取り返す力をわたしたちに与えてくださるようにとお願いしました。
11 そして、主なるわたしたちの神は、わたしたちを救うという保証を与えてくださいました。わたしたちの霊に平安を告げ、わたしたちに大いなる信仰を授け、また主によって解放されるという望みをわたしたちに抱かせてくださったのです。
12 そこでわたしたちは、少数ながら援兵を得たことに勇気を奮い起こし、敵を打ち破って、わたしたちの土地と所有物と妻子と自由の大義を守ろうと固く決意しました。
13 このようにしてわたしたちは、マンタイの町にいるレーマン人と戦うために全勢力を注いで出て行き、その町に近い荒れ野のそばに天幕を張りました。
14 その翌日、レーマン人はわたしたちが町に近い荒れ野のそばの境の地にいるのを見ると、わたしたちの軍隊の兵数と兵力を知るために、わたしたちの周りに何人もの密偵を送ってきました。
15 そして密偵の調べで、わたしたちが兵数のうえで強力でないのが分かると、彼らは、出撃して戦ってわたしたちを殺さなければ自分たちへの支援が断たれるに違いないと恐れ、また自分たちの大軍で容易にわたしたちを滅ぼせると思い、わたしたちを攻撃する用意を始めました。
16 彼らが攻撃の用意をしているのを知り、まことに、わたしはギドを少数の兵とともに荒れ野の中に隠れさせ、またテオムナーと少数の兵も荒れ野の中に隠れさせました。
17 ギドと彼の兵は右側に、ほかの者たちは左側にいました。彼らがこのように隠れてしまうと、まことに、わたしは最初に天幕を張ったその同じ場所にわたしの軍隊の残りの兵とともにとどまり、レーマン人が攻めて来るのを待ちました。
18 そこでレーマン人は、わたしたちに向かって大軍で攻めて来ました。そして、彼らが攻めて来て、わたしたちに剣でまさに襲いかかろうとしたとき、わたしは率いていた兵を荒れ野に退却させました。
19 そこでレーマン人は、何としてでも追いついてわたしたちを殺したいと思ったので、猛烈な速さでわたしたちの後を追い、荒れ野に入って来ました。わたしたちはギドとテオムナーの真ん中を通り抜けたため、彼らはレーマン人に気づかれませんでした。
20 さて、レーマン人が通り過ぎると、すなわちその軍隊が通り過ぎると、ギドとテオムナーは隠れていた場所から立ち上がり、レーマン人の密偵たちが町に帰れないように彼らの帰路を断ちました。
21 そして、ギドとテオムナーと兵たちは密偵たちの帰路を断ってから町に走って行き、その町を守るために残っていた見張りの兵たちに襲いかかって、彼らを殺し、町を占領しました。
22 これは、レーマン人が少数の見張りの兵を残して全軍を荒れ野に誘い出されてしまったために起こったことでした。
23 そしてギドとテオムナーは、レーマン人のとりでを手に入れました。一方、わたしたちはしばらく荒れ野の中を逃げた後、ゼラヘムラの地の方向に進路を取りました。
24 するとレーマン人は、ゼラヘムラの地に向かって進んでいるのに気づき、自分たちを滅亡に誘い込むために練られた計略があるのではないかと非常に恐れました。そこで彼らは再び荒れ野に戻り、やって来た同じ道を引き返しました。
25 そしてまことに夜になり、彼らは天幕を張りました。レーマン人の連隊長たちは、ニーファイ人も行軍で疲れ切っていると思ったからです。また彼らは、すでにニーファイ人の全軍を追い払ってしまったと思い、マンタイの町のことは少しも考えませんでした。
26 さて、夜になると、わたしは兵を眠らせずに、別の道からマンタイの地へ向かわせました。
27 そして、わたしたちは夜の間行軍したため、まことに、翌日にはレーマン人よりはるかに先になり、彼らよりも早くマンタイの町に着きました。
28 そして、この策によってわたしたちは血を流すことなくマンタイの町を占領しました。
29 そして、レーマン人の軍隊は町の近くに到着し、わたしたちが彼らと戦いを交える用意をしているのを見て非常に驚き、またひどい恐怖を覚えて、荒れ野の中へ逃げて行きました。
30 そして、レーマン人の軍隊は、この地方の全域から逃げ出しました。しかしまことに、彼らはこの地から多くの婦人たちと子供たちを連れ去ってしまいました。
31 かつてレーマン人に奪われた町は、現在すべてわたしたちの所有下にあります。そして、わたしたちの父親たちと婦人たちと子供たちは、捕虜になってレーマン人に連れ去られた人々を除いて、全員各自の家へ帰っているところです。
32 しかしまことに、わたしたちの軍隊は、そのように多くの町とそのようにたくさんの領土を守り通すには小さすぎます。
33 それでもまことに、わたしたちは、それらの土地でわたしたちに勝利を得させ、かつて所有していたそれらの町と土地を取り返させてくださった神に頼っています。
34 わたしたちには、政府がもっと多くの援兵を送ってくれない理由が分かりません。わたしたちのもとに来た兵たちも、どうしてわたしたちにもっと援兵が送られなかったのか、その訳を知りません。
35 まことに、あなたの方が首尾よくいっておらず、そちらの地方に軍隊を退却させなければならなかったのかもしれません。もしそうであれば、わたしたちはつぶやきたくありません。
36 また、もしそうでなければ、政府の中に何らかの対立があり、彼らはわたしたちを援助する兵をこれ以上送ってこないのではないかと、わたしたちは懸念しています。なぜならば、すでに派遣されてきた兵よりももっと多くの兵がいることを、わたしたちは知っているからです。
37 しかしまことに、それはどうでもよいことです。わたしたちの軍隊が弱くても、神がわたしたちを救い、敵の手から救い出してくださることを信じています。
38 まことに、今は第29年の末で、わたしたちは自分たちの土地を所有しており、レーマン人はニーファイの地へ逃げました。
39 わたしが前に大いにほめたたえたアンモンの民の息子たちは、今わたしと一緒にマンタイの町にいます。主は彼らを力づけ、剣で倒されないように守ってくださったので、一人も殺されませんでした。
40 しかしまことに、彼らは多くの傷を負いました。それでも彼らは、神が自分たちを自由な者にしてくださったその自由にしっかりと立っています。そして彼らは、日々主なる神をよく覚え、まことに、主の掟と裁決と戒めをいつも守るように努めており、将来起こることについての預言を深く信じています。
41 愛する兄弟、モロナイ殿。わたしたちを贖い、自由にしてくださった主なるわたしたちの神が、いつもあなたを御前にとどめてくださいますように。また、主がこの民に恵みを授けてくださり、かつてレーマン人がわたしたちから奪った生活に必要なすべてのものを、あなたがたが首尾よく取り返すことができますように。まことに、これでわたしの手紙を結びます。わたしはアルマの子、ヒラマンです。」
第59章
モロナイ、ヒラマンの軍隊を強化するようにパホーランに要請する。レーマン人、ニーファイハの町を奪う。モロナイ、政府に腹を立てる。紀元前約62年。
01 さて、ニーファイの民のさばきつかさの統治第30年に、モロナイはヒラマンの手紙を受け取って読むと、その幸いを、すなわち、以前に失った土地を得るのにヒラマンが大きな成功を収めたことを非常に喜んだ。
02 また、彼は自分の民にも喜んでもらおうとして、自分のいるその地方の全域ですべての民にそれを知らせた。
03 そして彼は、すぐにパホーランに手紙を書き、ヒラマンがそのように奇跡的に首尾よく取り返した地方を容易に守り通せるように、ヒラマンを、いや、ヒラマンの軍隊を強化するために兵を集めるように依頼した。
04 そして、その手紙をゼラヘムラの地へ送ると、モロナイは、レーマン人がニーファイ人から奪った領土と町の中でまだ取り返していない分を手に入れるために、再び策を練り始めた。
05 さて、モロナイがこのようにレーマン人を攻める準備をしている間に、モロナイの町、リーハイの町、モリアントンの町から集まったニーファイハの民が、レーマン人から攻撃を受けた。
06 まことに、マンタイの地とその周辺の地から追われた者たちが、この地方のレーマン人のもとに来て合流していた。
07 このようにして、彼らは非常に人数が多くなったうえに、日々援兵を得たので、アモロンの命令によってニーファイハの民を攻め、彼らに対して大変な殺戮を始めたのである。
08 彼らの軍隊が非常に大軍であったので、ニーファイハの民の中で生き残った者たちは仕方なく彼らの前から逃げ出し、モロナイのもとへやって来て彼の軍隊に加わった。
09 ところでモロナイは、ニーファイハの町にすでに兵が送られていて、その町を守り通すために民を助ける任務に就いているものと思っており、またレーマン人の手に落ちないように町を守ることの方が、それを彼らから取り返すことよりも容易であるのを知っていたので、ニーファイハの町の民が容易にその町を守り通せると思った。
10 そこで彼は、自分が取り返した所を何か所も守るために、自分の全軍を用いていた。
11 モロナイは、ニーファイハの町を失ったことを知って非常に嘆き、またニーファイ人が民の悪のために同胞の手に落ちてしまうのではないかと危ぶみ始めた。
12 これは彼の連隊長たちも皆同じであった。彼らも民の悪を危ぶみ、驚いた。それは、レーマン人がニーファイハの町の民に勝ったからである。
13 そしてモロナイは、政府が国の自由を守るのに冷淡であるということで、彼らに腹を立てた。
【動画】司令官モロナイとパホーラン
第60章
モロナイ、政府が軍隊に心を配らないことについてパホーランを非難する。主は義人が殺されるのをそのままにしておかれる。ニーファイ人は敵を防ぐためにあらゆる力と手段を用いなければならない。モロナイ、自分の軍隊に援助が与えられなければ政府を敵として戦うと脅す。紀元前約62年。
01 さて、モロナイは国の総督であるパホーランに再び手紙を書いた。彼が書いた言葉は次のとおりである。「わたしはゼラヘムラの町にいる大さばきつかさであり国の総督であるパホーランと、またこの戦争の諸事を統括し取り仕切るためにこの民によって選ばれたすべての方々にあてて、この手紙を記します。
02 さてまことに、これらの方々に語って非難したいことが少々あります。まことに、あなたがた自身御存じのように、あなたがたは兵を集め、彼らを剣と三日月刀とあらゆる武器で武装させ、またレーマン人がわたしたちの国に入って来る所に派遣して彼らと戦わせる、そのような職に任命されています。
03 そこでまことに、あなたがたに申しますが、わたし自身もわたしの兵も、ヒラマンも彼の兵も、とてもひどい苦難を受けてきました。飢えや渇き、疲労、そのほかあらゆる苦難を味わってきました。
04 しかしまことに、わたしたちの受けたのがこれだけであれば、わたしたちはつぶやかず、不平も言わなかったでしょう。
05 ところがまことに、わたしたちの民の受けた殺戮はひどく、すでに数千人が剣に倒れています。もしわたしたちの軍隊に十分な援兵と援助を与えてくれていたら、このようにはならなかったかもしれません。まことに、あなたがたはわたしたちのことをないがしろにしています。
06 今まことに、わたしたちは、このように甚だしくないがしろにされた理由を知りたいと思います。あなたがたが無頓着な状態にある理由を知りたいと思います。
07 敵があなたがたの周囲で死の業を繰り広げているのに、あなたがたは考えもなくぼんやりとした状態で座に着いていられると思うのですか。まことにその間に、彼らはあなたがたの同胞を何千人も殺しているのです。
08 まことに、あなたがたの同胞はあなたがたの保護を頼りにし、自分たちを救う地位にあなたがたを任じました。まことに、自分たちのもとに軍隊を派遣して自分たちを強化し、数千の人々が剣に倒されるのを救える、そのような地位にあなたがたを任じたのです。
09 しかしまことに、それだけではありません。あなたがたは彼らに食糧を送りませんでした。それでも、多くの人はこの民の幸いを深く望んでいたので、戦いに出て血を流し、命を失いました。彼らは飢え死にしそうになりながらも、このようにしたのです。あなたがたが彼らを甚だひどく軽視したからです。
10 愛する兄弟たち、あなたがたは愛されるようにすべきであり、またこの民の幸いと自由のために、もっと熱心に務めるべきでした。しかしまことに、あなたがたは彼らに心を配らなかったので、将来数千人の血が、報復を求めてあなたがたの頭に降りかかることでしょう。まことに、彼らの嘆願と彼らの苦しみを、すべて神は御存じだからです。
11 まことに、あなたがたは、これからも自分は座に着いていることができ、神の深い慈しみのおかげで何もすることなく神によって救われると考えることができるでしょうか。まことに、そのように考えているのであれば、それはむなしいことです。
12 非常に多くの同胞が殺されたのは彼らの悪のためであると、あなたがたは思っているのですか。あなたがたに申します。もしそのように考えているのであれば、それはむなしいことです。あなたがたに申しますが、剣で殺された人々は大勢おり、まことに、あなたがたはそのために罪の宣告を受けるでしょう。
13 主は御自分の罰と裁きを悪人に下せるように、義人が殺されるのをそのままにしておかれます。したがって、あなたがたは、義人が殺されても捨てられたと思うには及びません。まことに、彼らは主なる神の安息に入るのです。
14 さてまことに、ここであなたがたに申しますが、わたしは神の裁きが一部の人々のひどい怠慢のために、すなわち、わたしたちの政府の怠慢のために、また同胞である殺された者たちを彼らが甚だひどく軽視したために、この民に下るのではないかと非常に懸念しています。
15 わたしたちの国の指導者から始まった悪がなければ、わたしたちは敵を防ぐことができ、わたしたちを支配する権力を決して彼らに得させなかったでしょう。
16 まことに、もしわたしたち自身の中に起きた内戦がなかったならば、またわたしたち自身の中にあれほど多くの流血を引き起こした王政党の者たちがいなければ、またわたしたちの中に争いのあったときに、これまで行ってきたようにわたしたちが力を合わせていたならば、また王政党の者たちがわたしたちを支配する権力と権能を得ようと望まなかったならば、また彼らがわたしたちに対して武器を取って、非常に多くの流血をわたしたちの中に引き起こすことなく、自由の大義に誠実であり、わたしたちと結束し、敵と戦っていたならば、そしてわたしたちが主の力をもって敵と戦っていたならば、わたしたちは敵を追い散らしていたでしょう。主の御言葉のとおりにそれは成るからです。
17 しかしまことに、今レーマン人はわたしたちの土地を占領し、わたしたちに攻め寄せています。彼らはわたしたちの民を剣で殺し、まことに女や子供さえも殺し、また女と子供を捕らえて連れて行き、あらゆる苦難を彼らに負わせています。これは権力と権威を求めている者たち、すなわちあの王政党の者たちのひどい悪事のせいです。
18 しかしわたしは、このことをどうしてくどくどと言えましょうか。あなたがたも権威を求めていないとは言い切れないからです。あなたがたも国賊でないとは言い切れません。
19 それとも、あなたがたがわたしたちのことを心にかけず、わたしたちに食糧を送らせず、またわたしたちの軍隊を強める兵も派遣させないのは、あなたがたが国の中央部にいて、周りが安全なためなのですか。
20 あなたがたは、主なる神の戒めを忘れたのですか。まことに、あなたがたは先祖が囚われの身にあったことを忘れたのですか。わたしたちが幾度も敵の手から救われたことを忘れたのですか。
21 それとも、わたしたちが座に着いているまま、主から与えられた手段を利用しないでいて、主がそれでもなおわたしたちを救ってくださると思っているのですか。
22 まことに、境の地の至る所で、何千もの人々が剣に倒れて傷つき、血を流しているのに、あなたがたは、何もせずに座している何千何万の者たちに囲まれたまま、自分も何もせずに座しているつもりですか。
23 あなたがたはただじっと座してこれらのことを見ていて、神があなたがたを罪のない者と見なしてくださるとでも思っているのですか。まことに、わたしはあなたがたに、そのようなことはないと申します。神がかつて、『まず器の内側を清めなさい。それから器の外側も清めなさい』と言われたことを、忘れないようにしてほしいと思います。
24 ところで、あなたがこれまで行ってきたことを悔い改め、立ち上がって行動を起こし、わたしたちとヒラマンに食糧と兵を送り、ヒラマンがすでに取り返したわたしたちの国のあの地方を維持できるようにし、またわたしたちにもこの地方の領土の残りを取り返せるようにしてくれなければ、わたしたちはまず器の内側、すなわちわたしたちの政府の最高責任者を清め終えるまで、もはやレーマン人と戦わないのが得策でしょう。
25 あなたがわたしの手紙による要請を聞き届け、まことの自由の精神をわたしに示し、わたしたちの軍隊を強化し堅固にする努力を払い、軍隊を養うための食糧を送ってくれなければ、まことに、わたしは自由党の者たちの一部を国のこの地方を守るために残し、また神の力と祝福を彼らに残してほかのいかなる力も彼らに及ばないようにしておきます。
26 彼らの深い信仰と艱難の中での忍耐のゆえに、ほかの力は彼らに及びません。
27 そして、わたしはあなたがたのもとへ行き、もしあなたがたの中に自由を求める者がいれば、まことに、自由の痕跡でも残っていれば、権力と権威を奪い取ることを願っている者たちが死に絶えるまで、わたしはあなたがたの中で謀反を扇動しましょう。
28 まことに、わたしは、あなたがたの権力もあなたがたの権威も恐れません。わたしが畏れるのはわたしの神です。わたしが国の大義を守るために剣を取ることは、神の命じられたことにかなっています。わたしたちがこのように多大の損害を被ったのは、あなたがたの罪悪のためです。
29 まことに、もしあなたがたが自分たちの国と子供たちを守る努力を払わなければ、罰の剣があなたがたのうえに迫る時が今や近づいています。やがてそれはあなたがたのうえに落ち、あなたがたを討ってことごとく滅ぼすことでしょう。
30 まことに、わたしはあなたがたからの援助を待っています。もしあなたがたがわたしたちの救援に必要なものを与えてくれなければ、わたしはあなたがたのもとへ、まことにゼラヘムラの地へ行って剣であなたがたを討ちます。したがってあなたがたは、この民が自由の大義を広めるのを妨げる力を二度と持てなくなるでしょう。
31 まことに、あなたがたが生きていて罪悪を募らせ、主の義にかなった民を滅ぼすことを、主は許されません。
32 まことに、レーマン人の憎悪のもとになったのは、彼らの先祖の言い伝えであり、それは、わたしたちから離反した者たちによって倍加されました。一方あなたがたの罪悪は、あなたがたが誉れと俗世のむなしいものに愛着して生じたものです。そうであるのにあなたがたは、主があなたがたの命を救い、レーマン人に対しては裁きを下されると考えられるでしょうか。
33 あなたがたは、自分たちが神の律法に背いていることを承知しています。また、神の律法を足の下に踏みつけていることも承知しています。まことに、主はわたしに、『もしあなたがたが総督に選んだ者たちが、自分の罪と不義を悔い改めなければ、あなたがたは上って行って彼らと戦いなさい』と言われます。
34 さてまことに、わたしモロナイは、以前に自分が交わした聖約に応じて、神の命じられたことを果たすように強く促されています。したがって、あなたがたが神の御言葉に従うこと、またあなたがたの食糧と兵をわたしとヒラマンのもとに速やかに送ることをわたしは願っています。
35 まことに、もしあなたがたがこうしてくださらなければ、わたしは速やかにあなたがたのもとへ行きます。まことに、わたしたちが飢えのために滅びるのを、神は許されないからです。したがって、たとえ剣によってであろうと、神はわたしたちにあなたがたの食糧をお与えくださるでしょう。今すぐに神の御言葉を実行に移すように手はずを整えてください。
36 まことに、わたしはあなたがたの司令官、モロナイです。わたしは権力を求めず、むしろそれを引き倒そうとしています。わたしは世の誉れを求めず、むしろ神の栄光とわたしの国の自由と幸いとを求めています。これでわたしの手紙を結びます。」
第61章
パホーラン、政府に対する謀反と反抗があることをモロナイに告げる。王政党の者たち、ゼラヘムラを奪い、レーマン人と同盟を結ぶ。パホーラン、謀反人たちと戦うために軍の援助を要請する。紀元前約62年。
01 さて見よ、モロナイは総督に手紙を送った後、間もなくその総督であるパホーランから返事を受け取った。彼が受け取った言葉は次のとおりである。
02 「この地の総督であるわたしパホーランは、軍の司令官モロナイにこの言葉を送ります。まことに、モロナイ殿、あなたに申しますが、わたしはあなたがひどい苦難を受けていることを喜ばず、むしろ、そのことを深く悲しんでいます。
03 しかしまことに、あなたの苦難を喜んでいる者たちがいます。まことに、彼らはわたしに、またわたしの民の自由党員である人々に反抗して立ち上がりました。反抗して立ち上がった者はおびただしい数に上ります。
04 わたしからさばきつかさの職を奪い取ろうとした者たちこそ、この大きな罪悪のもとになった者たちです。彼らは多くの甘言を用い、また多くの人の心を惑わしてきました。これは将来わたしたちの中にひどい苦難を生じる原因になることでしょう。彼らはわたしたちの食糧を差し止め、また自由党の人々の勇気をくじいたので、その人々はあなたのもとへ行けなかったのです。
05 そしてまことに、彼らはわたしを追い出しました。そこでわたしは、集められるかぎりの多くの人を伴い、ギデオンの地に逃れました。
06 またまことに、わたしは、国のこの地方の至る所に布告を出したので、まことに、人々は武器を取って自分たちの国と自分たちの自由を守るために、またわたしたちが受けた不当な仕打ちに報復するために、日々わたしたちのもとに群れを成して集まっています。
07 そして、彼らがわたしたちのもとに来たので、わたしたちに謀反を起こした者たちは脅威を覚えてわたしたちを恐れ、あえてわたしたちに攻めて来ようとはしません。
08 彼らはすでにゼラヘムラの地、すなわちその町を占領し、自分たちを治める王を選びました。そしてその王はレーマン人の王に手紙を書き、彼と同盟を結び、その同盟条約の中でゼラヘムラの町を守り通すことに同意しました。彼は、そこを守り通せばレーマン人が国の残りの部分を征服できると思い、またこの民が征服されてレーマン人の支配下に入るときには、自分がこの民を治める王に任じられると思っています。
09 ところで、あなたは手紙の中でわたしをとがめましたが、それはどうでもよいことです。わたしは怒っておらず、むしろあなたの心の広さを喜んでいます。わたしパホーランは、民の権利と自由を守れるようにさばきつかさの職を保つこと以外、何の権力も求めません。わたしは、神がわたしたちを自由な者にしてくださったその自由にしっかりと立っています。
10 ところでまことに、わたしたちは血を流してでも悪に抵抗するつもりです。もしレーマン人が彼らの国にとどまっているならば、わたしたちは彼らの血を流さないでしょう。
11 わたしたちの同胞が謀反を起こさず、わたしたちに対して剣を取らなければ、わたしたちは同胞の血を流さないでしょう。
12 もし神の公正によって必要とされるならば、または神がわたしたちにそうするようにお命じになるならば、わたしたちは奴隷のくびきを受けましょう。
13 しかしまことに、神は敵に服従するようにとはわたしたちに命じられず、むしろ神に頼るように、そうすればわたしたちは救われると言われます。
14 したがって、愛する兄弟モロナイ殿、悪を阻止しましょう。そして、言葉で阻止できない悪、すなわち謀反や離反のような悪は剣で阻止し、わたしたちの自由を保てるように、またわたしたちの教会の大きな特権と、わたしたちの贖い主、わたしたちの神の大義を喜べるようにしましょう。
15 したがって、少数の兵を率いてすぐにわたしのもとに来てください。残りの兵はリーハイとテアンクムにその指揮を託し、国のその地方で神の御霊、すなわち彼らの内にある自由の精神に応じて戦いを指揮できるように、彼らに力を与えておいてください。
16 まことに、わたしはすでに彼らに食糧を少し送っておいたので、あなたがわたしのもとに来るまで、彼らは死ぬことはないでしょう。
17 こちらに行軍する間に、できるだけ兵を集めてください。そしてわたしたちは、自分たちの内にある信仰により、神の力をもって速やかに離反者たちを攻めましょう。
18 そしてわたしたちは、リーハイとテアンクムに送る食糧をもっとたくさん手に入れるために、ゼラヘムラの町を占領しましょう。まことに、主の力をもって彼らと戦いましょう。そして、この大きな罪悪を根絶しましょう。
19 ところで、モロナイ殿、わたしはあなたの手紙を受け取って喜んでいます。わたしは、わたしたちのなすべきことについて、すなわち同胞と戦うことが正当かどうかについて少々思い悩んでいたからです。
20 ところがあなたは、彼らが悔い改めなければ彼らと戦うように主が命じられたと言いました。
21 主にあってリーハイとテアンクムを必ず強めるようにしてください。恐れないように彼らに告げてください。神は彼らを救い、また神が自由な者にしてくださったその自由にしっかりと立つ人々もすべて救ってくださるからです。これでわたしは愛する兄弟モロナイにあてたわたしの手紙を結びます。」
第62章
モロナイ、ギデオンの地にいるパホーランを助けるために進軍する。国を守ることを拒む王政党の者たち、処刑される。パホーランとモロナイ、ニーファイハの町を取り返す。多くのレーマン人がアンモンの民に加わる。テアンクム、アモロンを殺し、また自分も殺される。レーマン人がその地から追い払われ、平和が確立される。ヒラマン、神の務めに戻り、教会を確立する。紀元前約62年から57年に至る。
01 さて、この手紙を受け取ると、モロナイの心は奮い立ち、またパホーランが自分の国の自由と大義に背く者ではなく忠実であったので、非常に大きな喜びに満たされた。
02 しかし同時に、パホーランをさばきつかさの職から追放した者たち、要するに、自分たちの国と神に背いた者たちの罪悪を非常に嘆かわしく思った。
03 そこでモロナイは、パホーランの望むとおり少数の兵を伴い、軍隊の残りの兵に対する指揮権をリーハイとテアンクムに与えておいて、ギデオンの地に向かって進軍した。
04 また彼は、行く先々のすべての地方で自由の旗を掲げ、ギデオンの地へ向かって進みながら、できるだけ多くの兵を集めた。
05 そこで、何千もの人々が彼の旗の下に群れを成して集まり、奴隷にならないよう自由を守るために武器を取った。
06 このようにして、モロナイは行軍中にできるだけ多くの兵を集めて、ギデオンの地にやって来た。そして、彼の軍隊とパホーランの軍隊が連合したので、彼らは非常に強力になり、ペーカスの兵よりも強くなった。このペーカスとは、ゼラヘムラの地から自由党の人々を追い出してその地を占領した、あの離反者たちの王である。
07 そしてモロナイとパホーランは、軍隊を伴ってゼラヘムラの地へ行き、町を攻め、ペーカスの兵と相対して戦った。
08 そして見よ、ペーカスは殺され、彼の兵は捕虜となり、パホーランは元のさばきつかさの職に戻った。
09 ペーカスの兵は法律によって裁判を受け、また捕らえられて牢に入れられた王政党の者たちも、法律によって裁判を受けた。そして、彼らは法律によって処刑された。まことに、ペーカスの兵と、王政党の者の中で国を守るために武器を取ろうとせず、むしろ国家に反抗して戦おうとした者たちは皆、だれであろうと処刑された。
10 このように、国の安全のためにこの法律を厳しく執行することが必要になった。そして、人々の自由を阻んでいることが明らかになった者はだれであろうと、法律によって速やかに処刑された。
11 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第30年が終わった。この年のうちに、モロナイとパホーランは自由の大義に忠実でないすべての者に死刑を科し、ゼラヘムラの地の彼ら自身の民の中に平和を回復した。
12 さて、ニーファイの民のさばきつかさの統治第31年の初めに、ヒラマンが国のその地方を守るのを助けるために、モロナイは彼のもとにすぐに食糧を送らせ、また6000人の兵から成る軍隊を派遣させた。
13 彼はまた、リーハイとテアンクムの軍隊にも十分な食糧とともに6000人の兵から成る軍隊を送った。これはレーマン人に対して国の防備を固めるために行われたことであった。
14 さて、モロナイとパホーランは、ゼラヘムラの地に大勢の兵を残しておいて、ニーファイハの町にいるレーマン人を打ち破ろうと決意し、大勢の兵を率いてニーファイハの地を指して進軍した。
15 そして彼らは、その地へ進軍しながら、途中でレーマン人の兵を大勢捕らえ、多くの者を殺し、また彼らの食糧と武器を奪った。
16 そして彼らは、これらの者を捕らえた後、二度とニーファイ人に対して武器を取らないという誓いを彼らに立てさせた。
17 そして、これらの者が誓いを立てると、彼らはこれらの者をアンモンの民とともに住めるように送り出した。このときに殺されなかった者は、およそ4000人であった。
18 さて、彼らはこれらの者を送り出してしまうと、ニーファイハの地を指して進軍を続けた。そして、ニーファイハの町に着くと、町に近いニーファイハの平原に天幕を張った。
19 モロナイは、レーマン人が出て来て平原で戦うことを望んだ。しかしレーマン人は、モロナイの兵が非常に勇敢であるのを知っており、また人数も非常に多いのを見たので、あえて出て来て戦おうとせず、その日は戦いがなかった。
20 夜になると、モロナイは暗闇の中を出て行き、城壁の上に登って、レーマン人が町のどこに軍隊を宿営させているかを探った。
21 さて、彼らは、東の方の入り口のそばにおり、全員眠っていた。そこでモロナイは自分の軍へ引き返し、兵たちに急いで丈夫な縄とはしごを幾つも準備させた。城壁の上から内側に降ろすためであった。
22 そしてモロナイは、兵を出して城壁の上に登らせ、レーマン人が軍隊を宿営させていない町の西の方に彼らを降ろした。
23 そして彼らは皆、夜の間に丈夫な縄とはしごを使って町の中に降りたので、朝には、全員が町の城壁の内側に入っていた。
24 そしてレーマン人は目を覚まし、モロナイの軍隊が城壁の内側に入っているのを見ると、非常に驚き恐れ、間道を通って外へ逃げ出した。
25 モロナイは、彼らが自分の前から逃げるのを見て、兵を彼らに向かわせた。兵は多くの者を殺し、また多くの者を取り囲んで捕虜にした。そのほかの者たちは海岸に近い地方にあるモロナイの地へ逃げた。
26 このようにして、モロナイとパホーランは味方を一人も失うことなく、ニーファイハの町を手に入れた。しかし、レーマン人は多くの者が殺された。
27 さて、捕虜になったレーマン人の多くは、アンモンの民に加わって自由な民になることを願った。
28 そして、願った者は皆、願いどおりに認められた。
29 そこで、捕虜のレーマン人は皆、アンモンの民に加わって、土地を耕し、あらゆる穀物を栽培し、あらゆる家畜を飼い、大いに働き始めた。このようにしてニーファイ人は大きな重荷を取り除かれた。まことに、レーマン人のすべての捕虜の監視から解放されたのである。
30 さて、モロナイはニーファイハの町を手に入れ、多くの者を捕虜にしてレーマン人の軍隊を大いに減らし、また捕虜になっていたニーファイ人の多くを奪い返して自分の軍隊を大いに増強した後、ニーファイハの地からリーハイの地へ向かった。
31 そこでレーマン人は、モロナイが攻め寄せて来るのを見て、またもや肝をつぶし、モロナイの軍隊の前から逃げ出した。
32 そこで、モロナイと彼の軍隊は町から町へと彼らを追撃し、追われたレーマン人はリーハイとテアンクムに出会うことになった。そしてレーマン人は、リーハイとテアンクムからも逃げて海岸に近い地方へ逃れて行き、ついにモロナイの地に至った。
33 このようにして、レーマン人の軍隊はすべて集まり、モロナイの地で一団となった。レーマン人の王アモロンも彼らとともにいた。
34 そして、モロナイとリーハイとテアンクムが彼らの軍隊を率いてモロナイの地の境一帯に陣を張ったので、レーマン人は南方の荒れ野によって、また東方の荒れ野によって、その地に包囲されてしまった。
35 この状態で、夜ニーファイ人は宿営した。見よ、ニーファイ人もレーマン人も強行軍で疲れ切っていたので、その夜は何の戦略も決めず、ただテアンクムだけがそれを考えていた。彼はアモロンのことをひどく怒り、アモロンと彼の兄弟のアマリキヤこそがニーファイ人とレーマン人の間のこの長期の大戦のもとであり、このようにひどい戦争と流血と、またこのようにひどい飢饉のもとであると考えた。
36 そしてテアンクムは、怒ってレーマン人の宿営に入って行き、町の城壁を越えて下に降りた。そして彼は、縄を持ってあちらこちらへ行き、ついに王を捜し出した。そこで彼は、王をねらって投げ槍を投げ、心臓のそばを貫いた。しかし見よ、王が死ぬ前に部下を起こしたので、テアンクムは彼らに追われて殺されてしまった。
37 さて、リーハイとモロナイは、テアンクムが死んだことを知って非常に悲しんだ。見よ、テアンクムは自分の国のために勇ましく戦った人であり、自由のまことの友であったからである。彼はこれまで非常に多くのひどい苦難に耐えてきた。しかし見よ、今は死んで、世のすべての人の行く道を行った。
38 そして翌日、モロナイは進軍してレーマン人を攻め、モロナイの兵はレーマン人を大勢殺し、その地からレーマン人を追い払った。そして、レーマン人は逃げ出し、そのときには、戻って来てニーファイ人と戦うことはしなかった。
39 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第31年が終わった。ニーファイ人は長年の間、戦争と流血と飢饉と苦難に遭ってきたが、それは以上のとおりである。
40 ニーファイの民の中には、殺人と争いと不和とあらゆる罪悪があった。それでも義人がいたために、まことに、義人の祈りのおかげで彼らは救われた。
41 しかし見よ、ニーファイ人とレーマン人の間の戦争が非常に長期に及んだため、多くの者がかたくなになった。戦争が非常に長期に及んだためにそうなったのである。しかし、苦難を受けたために柔和になった者も多く、彼らは神の前に心底謙遜にへりくだった。
42 さて、モロナイは、レーマン人の攻撃をきわめて受けやすい何か所かの地方の防備を固め、それらの地方が十分堅固になると、ゼラヘムラの町へ帰った。また、ヒラマンも彼の受け継ぎの地へ帰った。そして、ニーファイの民の中に再び平和が確立された。
43 モロナイは、軍の指揮権をモロナイハという名の息子の手にゆだねた。そして彼は家に引きこもり、余生を安らかに送ることにした。
44 パホーランは元のさばきつかさの職に戻った。またヒラマンも、神の言葉を民に宣べ伝える務めに就いた。このように多くの戦争と争いがあったので、再び教会内の統一を図ることが必要になった。
45 そこで、ヒラマンと彼の同僚たちは出て行って、多くの人に各自の悪を自覚させるため、非常に力強く神の言葉を告げ知らせた。その結果、人々は罪を悔い改めてバプテスマを受け、主なる神の民となった。
46 そして、ヒラマンと彼の同僚たちは、全地の至る所に再び神の教会を確立した。
47 そして、法律について数々の条例が定められた。また、民のさばきつかさたちと大さばきつかさたちが選ばれた。
48 ニーファイの民は再び地で栄え始め、増え始め、再び非常に力をつけるようになった。そして彼らは大変豊かになった。
49 しかし彼らは、富と力と繁栄を得たにもかかわらず、高慢な目をもって高ぶることなく、主なる神を忘れることもなく、主の前に深くへりくだった。
50 まことに彼らは、主が自分たちのためにどれほど大いなることを行ってくださったかを忘れず、主が自分たちを死から、束縛から、牢から、あらゆる苦難から救い出してくださったこと、また敵の手からも救い出してくださったことを忘れなかった。
51 そして彼らは、主なる神に絶えず祈ったので、主は御言葉のとおりに彼らを祝福された。そのため、彼らはその地で力をつけ、栄えた。
52 さて、これらのことはすべて以上のとおりになった。そしてヒラマンは、ニーファイの民のさばきつかさの統治第35年に死んだ。
第63章
シブロンが聖なる記録を所有し、後にヒラマンが所有する。多くのニーファイ人が北方の地へ行く。ハゴス、何隻もの船を造り、それらの船は西の海に出る。モロナイハ、戦いでレーマン人を打ち破る。紀元前約56年から52年に至る。
01 さて、ニーファイの民のさばきつかさの統治第36年の初めに、シブロンは、アルマがヒラマンに渡した神聖な品々を所有することになった。
02 シブロンは正しい人であって、神の前をまっすぐに歩んでいた。そして、絶えず善を行い、主なる神の戒めを守るように努めた。彼の兄弟もまた同様であった。
03 さて、モロナイもまた死んだ。このようにして、さばきつかさの統治第36年が終わった。
04 さて、さばきつかさの統治第37年には、ゼラヘムラの地から北方の地へ旅立った大きな一団があった。その一団は5400人の男たちと、彼らの妻子から成っていた。
05 さて、ハゴスという人がおり、彼は非常に技量の優れた人であったので、出かけて行って、デソレションの地に近いバウンティフルの地の境で一隻の非常に大きな船を建造し、それを西の海に進水させた。そこは北方の地へ通じている地峡の近くであった。
06 そして見よ、多くのニーファイ人がそれに乗り込み、たくさんの食糧を持って船出した。多くの女と子供も一緒であった。そして、彼らは北方へ進路を取った。このようにして、第37年が終わった。
07 第38年に、この人はほかにも何隻か船を建造した。最初の船が戻って来ると、また多くの人がそれに乗り込み、彼らもたくさんの食糧を持って再び北方の地へ出発した。
08 そして、彼らの消息は絶えてしまった。思うに、彼らは海の深みに沈んでおぼれてしまったのであろう。また、ほかにも1隻が船出したが、それもどこへ行ったかわたしたちには分からない。
09 そして、この年に多くの人が北方の地へ行った。そして、第38年が終わった。
10 さて、さばきつかさの統治第39年に、シブロンも死んだ。コリアントンは、北方の地へ行った人々に食糧を届けるために船でその地へ出かけて行った。
11 そこでシブロンは死ぬ前に、ヒラマンの息子に神聖な品々を託さなければならなかった。ヒラマンのこの息子は、父の名にちなんで名付けられ、ヒラマンと呼ばれていた。
12 さて見よ、ヒラマンが所有した版に刻まれた記録は、公にしてはならないとアルマが命じた部分を除いて、すべて書き写されて全地の至る所の人の子らに送られた。
13 それでも、これらの品々は神聖に保ち、代々伝えなければならないので、この年に、シブロンが死ぬ前にヒラマンに託されたのである。
14 さて、この年にレーマン人のもとへ去って行った何人かの離反者がおり、レーマン人はまたそそのかされてニーファイ人に対して怒った。
15 そしてこの同じ年に、彼らはモロナイハの民、いや、モロナイハの軍隊と戦うために大軍で下って来た。しかし、彼らは打ち負かされ、大きな損害を受けて自分たちの国へ追い返された。
16 このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第39年が終わった。
17 これで、アルマと、息子ヒラマンと、アルマの息子シブロンについての話は終わった。
【動画】ハゴス