アンゲル・アブレア長老の体験談。
1957年に、アルゼンチンで新しく支部長に召されたわたしは、什分の一の
大切さについて知ってもらうために会員たちと面接をするようにしました。そ
して什分の一を納めることが難しいホセと言う立派な兄弟と話をすることにな
りました。わたしは、勇気を奮って尋ねました。
「ホセ兄弟、あなたはなぜ什分の一を納めないのですか。」
ホセ兄弟はわたしがこれほど単刀直入に言ってくるとは思っていなかったよう
です。ホセ兄弟はしばらく黙っていましたが、こう答えました。
「支部長、ご存知のようにわたしには二人の子供がいます。今月は子供たちに
学校にはいていく靴を買ってやらなければなりません。とにかく、どう計算し
ても、什分の一を払うだけのお金がないのです。」
わたしはすぐに言いました。
「ホセ兄弟、わたしは約束します。あなたが什分の一を忠実に納めるならば、
子供たちは学校にはいていく靴を手に入れ、あなたも家で必要なお金に事欠く
ことはないでしょう。主がどのような方法で、それをなさるのか、わたしにも
わかりませんが、主は必ず約束を果たしてくださいます。もしそれでもお金が
足りないようなことがあるならば、あなたが什分の一として払った分をわたし
があなたに返しましょう。」
家に帰る途中、わたしは一体正しいことをしたのだろうかと悩みました。わた
しはと言えば、当時結婚をし、仕事も始めたばかりで、決して経済的にゆとり
のある状態ではありませんでした。わたしはホセ兄弟のことよりも自分の足元
のほうが心配になってきました。家に帰ると、妻は心からわたしの支えになっ
てくれ、すべてはうまくいきますよと言ってくれましたが、わたしはその晩、
だれにも増して熱心にホセ兄弟の経済状態がよくなるようにと祈ったのでした。
それから1ヵ月後、再びホセ兄弟と話をする機会がありました。ホセ兄弟は目
に涙を浮かべ、声が詰まって十分にはなすこともできないほどでした。
「支部長、とても信じられないのです。わたしは什分の一を納め、必要なもの
も全部買うことができました。その上子供に新しい靴を買ってやることもでき
たのです。主が約束を果たしてくださることが良く分かりました。」
それ以後、ホセ兄弟は什分の一を忠実に納めています。
(教会機関紙「聖徒の道」より引用)
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