人類人主義宣言(要約)

ここでは、ザメンホフの人類人主義宣言の要約を掲載します。
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人類人主義宣言

人類人は以下の原則を人生の指針とする。

1.全人類家族
  ・自分は人間である。
   (何々人という人類を分断する名称ではなく、人類人である。)
  ・全人類は1つの家族である。
  ・人類が敵対する民族や宗教集団に分断されているという不幸を解消する
   よう努力する。

2.人権
  ・あらゆる人に対して単に人間として見るべきである。
  ・あらゆる人は個人的価値と行為とによってのみ評価される。
  ・あらゆる人は違う民族や言語、宗教、社会的階級に属しているという理
   由で、虐待、抑圧を受けてはならない。

3.国の所属
  ・いかなる国もある特定の民族に属するものでない。
  ・その出身や言語、宗教、社会的な役割にかかわりなく、住民すべてに平
   等の権利をもって属する。

4.国名
  ・国名は中立的な呼称を持つべきである。特定の民族や言語,宗教の名称
   で呼ばれるべきでない。多民族の国では、特定の民族名を国名につける
   ことは、その民族が支配者だと見られる理由になっているからである。
  ・それらの国々が中立的な呼称を受け入れるまで、同志たちの間では、そ
   れらの国々をその首都名に「国」などをつけて呼ぶことにする。

5.中立
  ・だれでも、個人の生活の中では、好きな言語を使い、好きな宗教を信仰
   することができる。
  ・他の言語や宗教を持つ人々と交流するときは、中立的言語を用い、中立
   的倫理・慣習にしたがって行動するべきである。
  ・多民族の地域では、多数派の言語が中立言語の役割をしているが、これ
   は、多数派が少数派に譲歩しているとみなすべきであって、被支配民族
   が支配民族に支払う屈辱的な貢物とみなしてはならない。
  ・民族間に争いのある地域では、公的機関では中立の言語が用いられるべ
   きであり、中立の言語による学校や文化施設が設けられるべきである。

6.民族
  ・人々が「民族」よりも「人間」という名を重んじるようになるまでは、
   人々の間の不和は止むことがない。「何々人」という言葉が民族排外主
   義の原因となるからである。
  ・何国人かという質問に対して、人類人であると答える。属する国、言語、
   宗教について尋ねられた場合、詳しく答える。

7.祖国
  ・生まれた国を祖国と呼び、定住している国を自国と呼ぶ。
  ・「国」の意味が不明確なために、同じ土地に住む人々の間で不和を起こ
   す。それゆえに、疑わしい場合にはこの言葉を用いるのを避け、代わり
   に父祖の地、居住の地などと呼ぶこととする。

8.愛国心
  ・愛国心とは、出身や言語や宗教や社会的役割にかかわらず、同じ地に住
   むすべての人の幸福に奉仕することである。
  ・特定の民族の利益を守ろうとすること、他国の人々を憎むことを愛国心
   とは呼ばない。

9.言語
  ・言語は人間にとって目的ではなく手段である。
  ・言語は分裂の手段ではなく、統一の手段である。
  ・どんなに愛していても、自分の言語を神聖視してはならない。
  ・自分の言語を他人に押し付けないため、非排外主義の精神に基づいて、
   中立的な言語を身につけなくてはならない。

10.宗教
  ・宗教は民族分離手段ではない。
  ・宗教とは実際に自分が信じている信条か思想である。
  ・中立人、すなわち人類人としての以下の原則によって宗教を受け入れる。
  a)信仰
    ・物質的、精神的な根本原因である理解不能な崇高な力を神、または、
     それに代わる名前で呼ぶことができる。
    ・その力の本質は、各人の良心や心情として、また教会の教えとして
     現れることを認める。
    ・違う神を信仰していることを理由に憎悪、迫害してはならない。
  b)掟
    ・真の宗教の掟は良心という形で存在する。
    ・あらゆる人々が従わなければならない原則は、「自分に対して他人
     がして欲しいと望むことを他人に施せ」ということである。
    ・宗教における他の掟は、自分の信仰にそって、神の言葉としても、
     偉大な人々が伝えた教訓としても、人が作り出した慣習としてもよ
     い。
  c)特定の宗教を信仰しない場合
    ・特定の宗教を信仰しない場合、ただ民族の宗教という理由でそれに
     とどまり、民族間の不和を助長してはならない。
    ・その場合、自分自身を自由信仰者≠ニ呼ぶ。自由信仰者の共同体
     が存在するなら、民族的、宗教的排外主義に陥ることがないために、
     それに加入し、中立的で強制されない名称、仕事、祝祭、慣習、暦
     法などを受け入れるべきである。
    ・その共同体がない場合、生まれたときに属していた宗教へ所属して
     いることができるが、その宗教の名前に自由信仰≠ニいう語を付
     け加えて、それに属しているのが慣習や行政上の都合に過ぎないこ
     とを示さなくてはならない。

     ワルシャワにて 1913年9月   L.L.ザメンホフ

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