人類人主義とはエスペラントの創案者であるザメンホフが提唱した考え方です。
ザメンホフは、ポーランドに生まれ育ちました。ここは外国に支配されている
ことが多く、当時はロシアが支配していました。そして、彼は人々が言語や宗
教の違いで争うのを幼少のころから見て憂いていました。
そのようなことから、ザメンホフは言語の違いからくる争いをなくすためにエ
スペラントを創案し、宗教の違いからくる争いをなくすために人類人主義を提
唱したのです。
人類人主義はエスペラントではホマラニスモと呼ばれています。
(homaranismo:homは人、arは集団、anは一員、ismは主義、oは名詞を表す。)
「どこの出身かと尋ねられれば、生まれた国を答えるが、何人(なにじん)か
と尋ねられれば、人類人であると答える。」とザメンホフは言っています。
人類人主義とはどの宗教や思想にも共通な教えを土台に、人類共通の思想を構
築して、この思想によって生きる人、すなわち、人類人という意識を人々に確
立しようというものです。
ザメンホフはこの思想の土台として、次のものを根本原則に置きました。
・「自分に対して他人からして欲しいと望むことを、他人に行なう。」
・「つねに自分の良心の声に耳を傾ける。」
つまり、各宗教や思想が「愛」とか「慈悲」と呼ぶものが土台になっているの
です。
人類人主義はそれぞれの宗教や思想を否定するものではありません。各人は、
その信じる宗教を信じますが、異なる宗教を信じる人々が交流する時には、こ
の人類人主義思想で相手と接するということなのです。お互いは相手が信じる
宗教を尊重し、その信仰を妨げないのです。つまり、これは宗教間の橋渡しと
なる思想なのです。
エスペラントも同じ目的を持ちます。エスペラントはそれぞれの民族の言語を
否定して、言語をエスペラントに統一するのが目的ではありません。それぞれ
の民族では、その言語を話し、異なる言語を話す人々が交流する時には、エス
ペラントを話すのです。むしろ、少数民族の言語を尊重し、保存するのが目的
なのです。
人類の歴史では、強い民族が弱い民族にその言語や宗教を強要してきました。
また、それに対する抵抗によって争いも絶えませんでした。エスペラントや人
類人主義はそのようなことをなくそうとする努力なのです。
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