文化語と文明語

エスペラントの単語のうち抽象性、専門性が高いほど英語の単語と共通のもの
が多い。単語を文化語と文明語に分けるならば、このような単語は文明語にな
る。文化は国によって違うが、文明はどの国でも同じだということで、こうい
うわけ方をする。

文明語とは学問的な単語であり、抽象的、専門的な単語である。特に文明化
(工業化)されてから使われはじめた単語である。これらの単語は万国共通な
場合が多い。
例)philosophy(英)philosophie(仏)philosopie(独) 哲学(日)

文化語とは生活的な単語であり、具体的、日常的な単語である。まだ文明化さ
れていないときから使われている。その民族の文化に密着した語彙体系をもっ
ている。
例)dog(英)chien(仏) Hund(独) 犬(日)

アジアの国々の中で、日本人は最も英語を苦手とするとよく言われている。ほ
かの国が英語ができる理由については、英米の植民地化の影響といわれる。確
かに、インド、フィリピン、香港では英語が堪能な人が多い。しかし、沖縄は
長い期間アメリカに支配されていたが、思ったよりも、英語が堪能な人は少な
いように感じる。このことから思うに、日本人が英語が苦手なのは、日本語の
もつ機能が英語に負けていなかったからではないか。

日本では明治時代に多くの外国の単語(文明語)を日本語として吸収したため、
高等教育を日本語のままで、受けることが可能になった。たとえば「哲学」は
日本以外のほとんどの国では、philosophieとして万国共通語になっている。
日本は「哲学」という独自の形で「文明語」を保持しているのである。それ以
外のアジアの国々では、その言語の中に「文明語」を持っていなかったため、
国を文明化するために、英語をそのまま利用するしかなかった。このような国
では、大学の講義はほとんど英語で行なわれている。

エスペラントは「文明語」を持つ言語である。「文化語」に関しては、エスペ
ラントは独自の文化が無いため、ヨーロッパ語の文化語を用いている。

エスペラントが国際語である以上、ヨーロッパ以外の文化語を取り入れるべき
であるという意見がある。日本語エスペラント辞典のまえがきでは、エスペラ
ントの辞書(PV,PIV)に「鯛、たぬき、すすき等」の日本の文化に密着した語が
無いと述べられている。

このサイトでは、日本・アジアでよく使われる語なのに、アカデミーの公認語
根に含まれていないものを、単語集の専門用語の中に載せました。

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