情報とは

普通、「情報」というと「おしらせ」という意味がありますが、それ以外にも
いろいろな側面での捉え方があります。ここでは、情報とは何かを新たな側面
からみていきます。

デジタルの情報

情報化社会というときの情報とは、コンピュータで扱うことのできるデジタル
化された情報をいいます。デジタル化することによって、コンピュータによっ
て、いろいろと加工することができるようになります。

商品と情報

工業社会の次にくる情報社会では、商品は物から情報に変わります。書籍、音
楽のCD、コンピュータのソフトウェア、放送、インターネットなどです。こ
れらの情報製品はこの不景気でも確実に売上を伸ばしています。書籍、CDは
一見、物に見えますが、紙やインク、プラスティックが商品でなく、その中身
が商品なのです。これは、工業製品と違って簡単にコピー可能です。
また、従来、「物」と捉えていたもの、たとえば、自動車、服などのデザイン
も情報ということができます。ものとしては、そんなに必要ないのに、財布や
バッグを何十個も持っている人がいますが、これは、そのデザインを楽しむた
めに、集めているのです。これも情報を買っているということができるでしょ
う。このように、工業製品が売れない不景気な時代に、ブランドものがよく売
れるのは、ブランドものが、工業製品だけではなく、情報製品でもあるからで
す。今後はデザイン重視の工業製品が増えていくでしょう。このように世の中
は、確実に工業製品から情報製品にシフトしています。

情報とエントロピー

情報はエントロピーの対立概念として、説明されるときがあります。情報は何
らかの力によって維持される秩序、エントロピーは維持するための努力をしな
いと起こる無秩序であると定義できます。物理学では、物質やエネルギーは、
必ず無秩序になります。形あるものは崩れるということです。
情報は「役に立つもの」、エントロピーは「役に立たないもの」と定義すると
もできます。エネルギーは保存法則により、消滅、消費することはありません。
形が変わるだけです。電灯の使うエネルギーは電気から光りになり、最終的に
熱(廃熱)になります。電気は情報的なエネルギーで、廃熱はエントロピー的
なエネルギーです。わたしたちはエネルギーを消費しているのではなく、情報
を消費しているのです。

遺伝子と情報

リチャード・ドーキンス博士によって生物は遺伝子の単なる入れ物に過ぎない
ということが提唱されました。これが利己的遺伝子仮説です。この仮説の発端
は社会動物学でした。ある草食動物の群れが、肉食動物に襲われそうになった
とき、その群れの1匹が群れを飛び出して、自ら進んで、肉食動物に食べられ
てしまい、群れの残りはその間に逃げて助かるという現象です。これは、いか
にもその犠牲になった動物が他の群れのメンバーに対する愛の精神によって、
行ったように見えます。しかしこれが人間と違って、本能による強制で行なわ
れているのが明らかなのは、必ず、このパターンをとるということです。(本
能による強制でないのならばそうならないときも有り得る。人間のように。)
しかし、従来の進化論の仮説では、自ら犠牲になろうという遺伝情報を持った
個体が生き残らないということは、自ら犠牲になりたがらない遺伝情報を持っ
た個体が残るということで、必ず、このパターンをとり続けるということが説
明できませんでした。そこで、個体という概念から脱却して、遺伝子というレ
ベルでみたとき、この群れは同じ遺伝子を共有しており、遺伝子が保存される
なら、個体が維持されなくても、構わないのではないかという仮説が提唱され
たわけです。生物の体は遺伝子を守り、増殖させるための単なる道具でしかな
いということです。

この仮説を発展させると、この遺伝子も実は「情報」の入れ物に過ぎないとい
う事になります。生物とは、その本質は「情報」であり、「情報」は物理学的
なエントロピーの法則に逆らって、自らを維持し、発展させ、増殖させる、と
言うことができます。つまり、利己的情報仮説です。

利己的情報仮説がその本領を発揮するのは、単純な生物よりも、人間のような
高等生物です。人間は、言葉を話し、文字として書き残すことができるので、
今まで、遺伝子の中だけにとどまっていた「情報」が、遺伝子の外に飛び出し
てしまいました。つまり、人間においては、2つの情報系が存在するというこ
とです。一つは、従来の人の体という入れ物にあって、遺伝子という形式で存
在する情報。もう一つは、人間の社会という入れ物にあって、言語という形式
で存在する情報です。この二つとも上記の生物の定義、つまり、「物理学的な
エントロピーの法則に逆らって、自らを維持し、発展させ、増殖させる。」と
いうことに当てはまります。

肉体−遺伝子系情報は、生命を維持し、生殖を行うようにして、その目的を達
成しようとします。一方、社会−言語系情報は美を追求したり、自然科学的な
真実を探求したり、何が善で何が悪かなどと考えたりします。時には、この2
つの情報系が対立することがあり、肉体−遺伝子系情報は、「悪」とよばれ、
社会ー言語系情報は「善」と呼ばれることがあります。たとえば、不倫したと
き、これは、肉体−遺伝子系情報は、その目的を達成しようとしている訳です
が、社会ー言語系情報の立場でみると、社会的秩序を破壊する行為であるため
認められません。

ドーキンス博士は社会−言語系情報を支える因子を「ミーム(meme)」と呼んで
います。これは、遺伝子(gene)に似た1音節の言葉として造語されたものです。
記憶(memory)から採ったということです。高等生物(特に人)の行動には利己
的遺伝子説では説明できないものがあります。たとえば、絵画や音楽などを楽
しむという行動は、遺伝子が生き残ることとは関係ないものです。それを、博
士はミームが生き残りや進化を求めた行動だと考えたわけです。

言語により、情報は遺伝子の外に出て、遺伝子よりも急速な増大、進歩が可能
になりました。単純に比較すると、人間の遺伝子が30億文字で百科事典にす
ると、3000冊の情報です。これが、何億年もかけて、作られました。しか
し、言語で記録された書籍は、その何百倍の量が現在存在し、これらが、わず
か数千年で作られたのです。これはコンピュータと通信ネットワークによって、
更に加速的に増大していくのです。
情報系遺伝子情報言語情報
土台遺伝子言語(ミーム)
性質利己的 競争的利他的 協力的
発展方法本能 肉欲社会意識 自由意志 真・善・美の追求
人間の経済活動とは、この2つの情報が自らを維持し、発展させ、増殖させる
ための活動だと捕らえ直すことができます。そういう点でみると、人間が作り
出すものはすべて「情報」だということができます。つまり、形無い物に、形
を与える作業です。商品は物質に情報が注ぎ込まれたもの、そして、労働は情
報を物質に注ぎ込む行為です。経済活動は、情報を蓄積する活動です。ですか
ら、生産性が向上して、10人が食べていくのに、1人も働かなくても良い世
界になっても、人間は労働を続けるのです。つまり、働かなくても「肉体−遺
伝子系情報」の維持、発展が保証されたとしても、もう一方の「社会−言語系
情報」の維持、発展のために働くことは続くということです。でんし共産制社
会では、主軸が「社会−言語系情報」に移行します。

でんし共産制社会
ホーム