ブログ記事 日本経済の停滞

 
日本経済の停滞1  (2004/12/05)
日本の経済成長率はバブル崩壊後、今日に至るまで、ずっと低いままです。
マイナス成長の場合もあり、高い年でも4%を超えることはありません。

経済成長率の推移

1956-1973年 平均9.1%(高度経済成長期)
                 オイルショック
1974-1990年 平均3.8%(低成長期)
                 バブル崩壊
1991-2003年 平均1.3%(ゼロ成長期)

1982年 2.6%
1983年 1.7%
1984年 3.9%
1985年 4.5%
1986年 2.8%
1987年 5.0%
1988年 6.7%
1989年 4.3%
1990年 6.0%
1991年 2.2%
1992年 1.1%
1993年 -1.0%
1994年 2.3%
1995年 2.4%
1996年 3.6%
1997年 0.6%
1998年 -1.0%
1999年 0.9%
2000年 3.0%
2001年 -1.2%
2002年 1.1%
2003年 3.2%

政治家や財界人は平均3%の成長率は欲しいと言っています。
(つまり、バブル景気前あたりの成長率)
私の知人はこれを聞いて面白いことを言いました。
「これって、太っている人にもっと太れ、と言っているようなもんだね」

確かに、以前より失業率は高いが、日本はまだ豊かで、捨てられる食べ物
の量は世界一だと聞きます。一年で一人当たり三万円分の食べ物が捨
てられているそうです。ユニセフなどの機関が世界中で配給している食べ
物の総量より、日本で捨てられている食べ物の総量の方が多いのです。

3%の成長なんて、たいしたことないじゃんと言う人のために、
3%のすごさを実感してもらいましょう。
2000年前に100円を年利3パーセントで預けたとしましょう。
では、今いくらになっているでしょう。
計算方法は1.03の2000乗に100かけます。
答えは4725517875582860538868322753円。つまり4725兆円のさらに1兆倍です。
世界の総生産の1兆倍。世界のすべての人が1兆年働いて払える金額です。
私たちは現在の経済システムが永遠に続くような錯覚を抱いていますが、
これをみてもらうと、こんなシステムは長続きするわけがないとわかります。
もうそろそろ限界にきているのです。

日本経済の停滞2  (2004/12/06)
政治家や財界人が平均3%の成長率に、なぜこだわるのかというと、
今の経済システムが成長がないと成り立たないからです。

今の経済システムは株式会社中心の構造になっていて、景気が株価で測られま
す。投資家は投資した額以上の見返りがないと投資した意味がありません。
資本金1000万円で始めた会社がいつまで経っても、資本が1000万円の
ままだと、株の価値はいつまで経っても同じですから、投資した意味がないの
です。必然的に株式会社は成長することが求められます。そして、株式会社が
大半を占めている現在の経済システムも成長を求められます。

成長しなければ成り立たないシステムとして有名なのが、ネズミ講と呼ばれる
システムです。このシステムは成長の限界が来て破綻します。現在の経済シス
テムも成長しなければ成り立たないシステムですから、ある意味ネズミ講と同
じなのですが、成長率が違います。ネズミ講はひと月の成長率が100%とか
200%の高成長率のため遅くても2年以内に破綻が来ます。一方、現在の経
済システムは年の成長率が大きくても20%なので、破綻が緩やかなのです。
しかし、バブル景気の崩壊のように破綻は必ず来ます。

成長は永遠に続くものではなく、必ず限界が来ます。ですから、今のような、
成長がないとうまくいかない経済システムから、はやく脱却しなければなりま
せん。

日本経済の停滞3  (2004/12/07)
前回、日本経済の停滞の原因として、成長の限界が来ていると話しました。
今回はもう一つの原因について考えます。

とても単純な世界を例にします。

  この世界には1人の経営者と1人の労働者しかいないとします。労働者は
  1日20円の賃金でパンを2個作ります。つまり1個あたり10円の原価。
  それを経営者は1個20円で売ります。つまり10円の儲けです。消費者
  でもある労働者は賃金で得た20円しか持ってないので、1個しか買えま
  せん。どうしても1個売れ残ってしまいます。つまり、経営者が利益をと
  る以上、必ず売れ残りが出てしまうのです。

どうしてこういう問題が起ったかというと、経営者が利益を貯蓄しているから
です。投資して使ってしまえば良いのです。

  ここに新たな人が表れます。製造機械を作る人です。彼から製造機械を
  20円で買います。その機械工は得た20円で、残りの1個を買ってくれ
  ます。

つまり、投資、または消費をすることによってお金を停滞させないようにしな
ければなりません。現在の経済システムでは、貯蓄は経済活動を停滞させてし
まう悪なのです。

経済システムを維持するためには企業は利益を必ず投資しなければならないの
です。でも、将来のためには貯蓄もしておきたい。その矛盾を解決するのが金
融の役目です。つまり、貯蓄のために、銀行に預けたお金は、他の人に融資さ
れ、投資に使われるのです。金融には銀行のほかに保険、年金があります。
保険は自分の将来の事故、病気ために備えて払っているのですが、実はそ
の時は、他人のために使われています。年金も同様です。つまり、お金が停滞
しないようにしているのです。貯蓄は金融によって、投資に変換されます。

これが金融システムです。つまり、お金が停滞しない仕組みです。

日本経済の停滞のもう一つの原因は、金融システムがうまく機能していないため、
お金がの流れが停滞していることです。

今、それが起こっている原因が2つあります。
・バブル崩壊の後遺症で金融が融資を手控えていること。
・少子高齢化などの将来の不安から、国民が消費よりも貯蓄を行なっていること。
つまり投資が減っているのにも関わらず、貯蓄が増えているために、お金がう
まく循環していません。

金融システムを正常化させることが急務なのですが、問題があります。
金融も利子というものを要求するため、融資先に対して成長を求めます。
成長の限界が来ている現在、金融もうまく機能させるのが難しくなってきてい
るのです。

金融とはまったく違ったお金が停滞しない仕組みを作る必要があります。

日本経済の停滞4  (2004/12/08)
今回は、バブル景気とその崩壊はなぜ起ったかを考えてみます。

1980年あたりから日本は低成長が続きます。ある程度、物が行き渡ったた
め物を作っても売れなくなっていました。前回、今の経済システムは投資を続
けていかないとうまくいかないと説明しました。しかし、作っても物が売れな
いので、製造設備に投資することはできません。そこで、当時は価値が下がる
ことがないと信じられていた土地に投資が集中したのです。これが原因で土地
の値段が信じられないくらい高騰しました。これがバブル景気だったのです。
しかし、限界が来て、土地の値段は下落してます。その後は以前のように
土地の値段は上がることはありませんでした。これがバブルの崩壊です。

バブル景気直前は不景気だったので、景気回復のために日銀は金利を下げてい
ました。お金を借りやすくして、お金の循環量を増やそうとしたのです。投機
家はこの低い金利で銀行からお金を借りて土地を買い、その土地を担保にし、
また銀行から借りて土地を買うことを繰り返していました。しかし、投機家たちは
バブルの崩壊で破産してしました。銀行は担保にしていた土地が下がったため、
土地を処分しても貸した分の回収ができなくなりました。これが不良債権と呼
ばれるものです。銀行はまず、貸した金の回収に力を入れなければならないた
め、新たな融資を行なうことができない状態にいます。

日本経済の停滞5  (2004/12/11)
まとめると、次のようになります。

現在の経済システムは株式と金融が中心になっています。
株式と金融は成長を前提としたシステムで、成長途上ではうまく機能しますが、
成長の限界点に達するとうまく機能しなくなります。

日本経済の停滞の原因は次の2点に絞られます。
・従来型の経済が成長の限界に来ている。
・お金が停滞している。

解決するには次の2点を解決する必要があります。
・成長をしなくてもうまくいく経済システムを作る。
・金融システムとは別のお金が停滞しない仕組みを作る。

具体的には次の事柄が挙げられます。
・物中心(工業)から情報・サービス中心へ
・株式会社からNPOへ
・金融から自由貨幣へ

次の章からこれらの3つについて見ていきます。

日本経済の停滞6  (2004/12/11)
物中心(工業)から情報・サービス中心へ

工業製品などの「物」は全ての人に普及してしまうと、それ以上売れなくなり
ます。豊かになった今、「物」の売り上げは伸びなくなっています。「物」を
作るには自然環境から資源を伐採し、捨てるときには自然を汚します。環境破
壊を起こします。

一方、情報製品、サービスなどは、「物」と違って場所をとらないため、いく
らでも消費が可能です。形がないものなので、自然環境から資源もとらないし、
捨てることによる環境破壊もありません。

この不景気でもブランドものが売れるのは、それが「物」ではなく「情報」だ
からです。冷蔵庫は一つ買えばもう必要ありませんが、バッグは一つ持ってい
ても、別のデザインのものが出ると、また買ってしまいます。これは、バッグ
の「物」の部分を買っているのではなく、デザインという「情報」を買ってい
るからです。

今後、経済の対象は物中心から情報・サービス中心へ移行していかなければな
らないのです。

私自身はオタクではありませんが、オタクについて興味を持っているは、オタ
クが対象としているものが情報製品だからです。これらオタク製品が今後の日
本経済の方向を決めていくのです。「萌え」のページでオタクについて取り上
げていたのは、そういうわけがあったのです。

経済アナリストの森永卓郎氏はオタクを一芸に秀でた人と定義しています。
ナンバーワンではなく、オンリーワンな人です。工業製品を作っていた時代に
は、規格にあった製品を黙々と作っていればよかったのです。しかし、情報製
品は人とは違った個性的なものを作らなくてはならないのです。まさに今後は
一芸に秀でた人、つまりオタクな人が求められるのです。

日本経済の停滞7  (2004/12/11)
株式会社からNPOへ

NPOとはNon Profit Organization の頭文字で非営利組織と呼ばれています。
株式会社と違って、出資者は金銭的な見返りを期待しません。つまり成長が強
制されない経済組織です。株式会社の目的は「お金」で、手段が「事業」ですが、
NPOでは、逆に、目的が「事業」で、手段が「お金」なのです。現在NPOは増え
始めています。今後は社会のなかで、株式会社並みの規模になっていくはずです。

NPOの一般的なイメージとしては、無報酬で慈善活動を行う組織というものですが、
NPOは報酬を得てもいいし、慈善活動でなくてもよいのです。
ただし、出資者はその利益から配当を受けることができません。
しかし、事業成果そのものを出資者は得ることが出来ます。

具体的な例には、コンピュータのオペレーティング・システムのリナックスが
あります。これを作ったのは株式会社ではありません。コンピュータ好きの個
人の集合体がこれを作り上げました。リナックスは無償で提供されるため、金
銭的な利益を享受することはできませんが、事業成果つまりリナックスそのも
のを参加者が享受することが出来ます。リナックス作成者グループはNPOと
いえます。

今後は、このような組織が増えていくだろうと思います。インターネットはそ
の仲立ちをする強力なツールとなっています。

以前、私のブログで「電車男」について取り上げました。「電車男」自体の内
容にはそれほど感動はなかったのですが、これが作られる過程はとても興味深
いものがありました。インターネット上の多くの参加者が一つの物語を作り
上げていく。そして、これが本になって、一般の文芸作品に匹敵するものとし
て受け入れられている。これはリナックスで起こっていることと同じです。今
後はこういうことが頻繁に起こってくるでしょう。

日本経済の停滞8  (2004/12/11)
金融から自由貨幣へ

自由貨幣とはマイナスの利子を取り入れたシステムです。ある特定の人に
貨幣が保持される(束縛される)ことがないため「自由」がついています。
つまり、お金が停滞しない仕組みなのです。自由貨幣は国家通貨としては
取り入れられたことがなく、地域通貨としてしか取り入れられたことがないため、
地域通貨と同一視されがちですが、そうではありません。その気になれば、
国家通貨として取り入れることも可能です。

自由貨幣について実際に実践していた例があるので、それを見てみましょう。

1929年の世界大恐慌後のオーストリアのヴェルグルという町での話です。
町は負債を抱え、失業者も多い状況でした。そこで町は減価するお金のシステ
ムを導入したのです。1ヶ月ごとに1パーセントずつお金の価値が減少すると
いうものです。町民は毎月1パーセント分のスタンプを買ってお金に貼らなく
てはならないという仕組みでした。月末を過ぎるとその月の欄にスタンプを貼
らなくては使えなくなります。このお金は持っていても減る(つまりスタンプ
を買わないといけない)ので皆がそれをすぐに使いました。貯めることなく、
経済の輪に戻ります。次々に持ち主を変えるお金は高い購買力をもちます。2
年後には失業者がなくなりました。お金を借りても利子を払う必要がないので、
皆がお金を借りて仕事を始めました。町民の所得も増え、増えた所得税収入で
町の負債もなくなりました。税収は8倍に増えたといいます。町は最初このお
金を、公共事業を行い失業していた人の賃金として出しました。その代わり、
失業保険の支出はなくなりました。公共事業を行なったおかげで町はきれいで
便利になりました。スタンプの売上は貧困者の救済基金に充てました。このお
金はだれも受け取らないだろうと思われましたが、皆が喜んで受け取りました。
大不況の中、ヴェルグルだけが繁栄する事態になりました。しかし、この制度
は国家により禁止されました。そのせいで、ヴェルグルは再び30パーセント
の失業者を抱える状態に戻ってしまいました。

このように自由貨幣は金融システム以上の強力なお金の循環を促す仕組み
です。

日本経済の停滞9  (2004/12/11)
短く言うと次のようになります。

  現在の「工業、株式、金融」の経済システムに対して、
  新しい「情報、NPO、自由貨幣」の経済システムが必要である。
  これは成長がなくても、うまく機能するシステムである。

これで「日本経済の停滞」シリーズは終わりです。


でんし共産制社会
ホーム