洞穴

 

 

天界の秘義2463

 

「かれは洞穴に住んだ」。これは誤謬の善を意味していることは、『洞穴』の意義から明白である。洞穴は山の中の一種の住居であるが、暗い住居である。いかようなものであっても、住居はことごとく家のように善を意味しているが(2233、2234番)、しかし住居に応じた種類の善を意味しており、ここでは『洞穴』は、暗い住居であるため、誤謬の善を意味している。『山の洞穴』は聖言にしばしば記されていて、内意ではイザヤ書(2・19、32・14)と歴史的な書物におけるように、またエリアが、エゼベルから逃れて行くときのように、そうした意義をもっているのである―

 

 ホレブ山の洞穴に来て、そこにその夜を過ごした、するとエホバの言葉がかれにのぞんだ、エホバはかれに言われた、行って、エホバの前の山の上に立ちなさい、かれはその顔をマントで包んで、洞穴の入口辺りに立った(列王記上19.93)。

 

 ここには内意では『洞穴』により明確でない善が、しかし試練の中に存在するような善が意味されていて、この善は神的なものに堪えることができなかったため、かれはマント[外套]でその顔を包んだのである。

 

 

 

 

マリア・ワルトルタ/聖母マリアの詩上/P192

 

その洞窟の方へ足を早める。本当に洞窟である。昔の何かの建物で廃墟の中に通路があり、その向こうに洞窟というよりも、山に掘った洞窟がある。前の建築の土台とも考えられるもので、その屋根は、木の幹に支えられている廃屋である。

 もう、光は非常に少ないので、ヨゼフは肩にかけている袋から火打石を取り出して、小さい灯かりに火をともす。入ると、牛の声に迎えられる。

「マリア、おいで。空っぽです。一頭の牛がいるだけ」ヨゼフは苦笑いして、「何もないよりはいいでしょう」と言う。マリアは小ろばから下りて入る。