主のみが聖母の秘密を知っている

 

1.マリア・ワルトルタ

2.ベルナルド

 

 

1.マリア・ワルトルタ

 

聖母マリア/マリア・ヴァルトルタによるマドンナの生涯/上巻/天使館/P9

 

 地上で彼女の子であったわたしの三十三年間に、わたしがに言った言葉の数々は、わたし聖体彼女聖体容器と交わした語り合いに比較すれば無きにひとしい。それでもあの言葉の数々は人間の知性がそれを知り、人間の唇が繰り返すには、あまりにも神的で、あまりにも清らかである。エルサレムの神殿契約の箱があった至聖所には祭司だけが入れた。しかし天のエルサレムの神殿には、わたしのみが入り、そしてわたしだけがわたしの至聖なるマリアの秘密を知っている。

 

2.ベルナルド

 

あかし書房/聖母の歌手/P133

 

そのような理由から、天使はマリアに「聖霊が、あなたの上に、“更に”臨み、いと高き者の力が、あなたを覆います」と言ったのです。「いと高き者の力が、あなたを覆います」とは、どんな意味なのでしょうか。それは知る人ぞ知るのです。いと高き者の力で、自分が覆われるということを、自分の体で、じかに体験するという大きな恵みをいただいたマリアだけが、そのことを知っているのです。すなわち、御言葉の受肉の際、だれも近づくことのできない光[御言葉]が、どのようにして、おとめマリアの清いご胎の中に忍び込んだのか、どのようにしておとめマリアは、この永遠の光[御言葉]との接触に耐えることができたのか、また、おとめマリアがそれに耐えることができるようにと、聖霊はどのようにマリアの体の一部分を取って、それをご自分に一致させ、こうして御言葉の肉体を造り、それを生きるものとしたのか、更にどのようにして、マリアの体の他の部分を、ご自分の力で、ちょうど影のように、ベールのように、覆い隠したのか ― このような幽玄な神秘の過程を、自分の知性で理解し、識別できる者は、それをじかに自分の体で受け止めたマリア意外にはだれもいません。

「いと高き者の力が、あなたを覆いましょう」と天使はマリアに言います。

 これから行われようとしている御言葉の受肉の神秘は、聖なる三位一体の神が、ただマリアと二人きりで、ただマリアのうちでだけ行いたいのです。だから、それを理解できる者はただ、その過程を自分の身で、じかに体験する者、すなわち、マリアだけである、ということを天使はマリアに納得させたいのです。

「聖霊が、あなたの上に、更に臨みます」と、天使はマリアに言います。天使はこう言いたいのです。 ― ああ、おとめマリアよ、聖霊の全能の力によってこそ、あなたは身ごもるのです。“いと高き者の力が、あなたを覆いましょう”と、わたしは申しました。その意味は、聖霊の働きにおって、あなたが身ごもるそのマナーは、キリストという名の神の力、神の知恵によって、受肉の神秘の濃い影の中に、秘密のベールで深く覆い隠されているのです。そのため、御言葉のこの受肉の神秘はただ、キリストとあなただけが知ることができるのです。

 つまり、天使はマリアに、こう答えたいのでしょう。 ― おとめマリアよ、どうしてあなたはわたしに、ご自分がまもなく体験しようとしておいでになることを、お尋ねになるのですか。まもなくあなたは、受肉の神秘のマナーを知ることになるのです。まもなくそれが理解できる幸せに巡り会うのです。受肉の神秘がどのように行われるかは、それをまさに行おうとしておられる方が、あなたに教えてくださるのです。わたしですか、わたしはただあなたに、処女懐胎を告げ知らせる使命しかいただいておりません。あなたの処女懐胎を実現する使命はいただいておりません。処女懐胎に関しては、それを実現してくださる方だけが、あなたに実現のマナーを教えることがおできになるのです。また、それが、ご自分の身に実現されるあなただけが、それを教わる資格があるのです。