主はユダをも赦された

 

 

マリア・ワルトルタ/受難の前日/P167

 

「ユダ、どんなことでも最後の瞬間まで変えることができる。私に人間として最後の涙を流させるのですか・・・ユダ、友よ、考え直してくれ。天は私の祈りを聞いておられる。それなのにあなたは・・・私の祈りを無駄にしたいのですか。あなたのために祈っているこの私が何者か、よく考えなさい。イスラエルのメシア、御父の子です。ユダ、私の言うことを聞きなさい、わずかでもまだ時があるうちに・・・」

「いやです、聞きたくありません!」

イエズスは顔を覆い、草原の端に膝を折って、かすかに肩を震わせ、声もなく泣く。

 

(中略)

『私をゆるしてください。それだけを望みます』とさえ言えばよい。そう言えば、私はあなたを救い上げよう」

 イエズスは立ち上がって、両腕でユダを抱く。神なるイエズスの涙はユダの毛髪の中に散ったが、それでもユダには、その言葉が言えない。口は閉ざされたままである。