聖母賛歌

聖エフレム著(三世紀の教父・教会博士)/

デルコル神父/江藤きみえ共同訳/愛心館

 

エフレムはシリアの人、15才でキリスト教を知り、偶像神に奉仕する職業の父親から勘当されます。彼はニシビという所の司教のもとに身を寄せ、18才で洗礼を受け、助祭に叙階されますが、司祭にはならず、教理研究の学校を開いて弟子たちに教えました。当時キリストの神性を否定する異端に対し、彼はキリストの神性を説き、神の母マリアを讃えてこれらの異端説と戦ったそうです。

 

15でキリストを信じて勘当されるところはサンダー・シングとそっくりです。彼が霊的なカリスマを受けていたかどうかは分かりませんが、この聖母賛歌を読んでみると、キリストは天地を治める神であられることを確信をもって繰り返し説いており、その信仰の健全性と力強さには素晴らしいものがあります。

 

彼が主はこの世への誕生によって「おさな子」と呼ばれる、と言うところなどもサンダー・シングの中に出てくる主のお言葉と似ています。

 

エフレム/聖母賛歌/20・30

イサイの子は、かれを、おさな子とよびました。

そうです、かれを、おさな子のすがたで、みていたからです。

でも、その永遠のご誕生ゆえに、

このおさな子は、おん父より若くはありません。

ただ人としての、その第二のご誕生で、

マリアから生まれて、“おさな子”

とよばれるようになりました。

 

*イサイの子

「イサイ」(ニイエッセ)の子は、ダヴィドのこと(サムエルの書上16章参照。)

 

 

サンダー・シング/聖なる導きインド永遠の書/P200

「愛の渇きを満たすために、神は人に理解できる存在の形をとられたのである。こうして、神は人となった。それは、子供たちがあらゆる聖なる御使いとともに彼を見、歓ぶためである。わたしをみた者は父をみたのである、とわたしが言ったのはそのためである。わたしは、人の形をとっている間は、“子”と呼ばれるが、永遠の父である。わたしと父と聖霊は一つである。」

 

確かにエフレムはサンダー・シングやスウェーデンボルグのように、主は「父なる神ご自身」であるという表現はしていません。

 

しかし、彼は主は「人類のやしない主、天地万物をささえるおん方(1・3)」であり、「アダムをつくられた神(18・42,20・3)」であり、「アベルの初穂をうけいれ、カイン〔のそれ〕を嫌って、ことわった方(20・9)」であり、「ヤコブには、階段のうえに、あらわれ(20・8)」た方と言います。

 

「おん父のうつし(10・12)」「永遠の昔から、おん父にかくれておられたあなた(19・9)」「シナイ山でみ民に、律法をあたえたそのとき、まだ、おん父のもとでした(20・6)」とも表現していますが、それはスウェーデンボルグ流に言えば、「状態」を指しているとも言え、おん父その方であるというのと同じ意味で彼は述べているように私には思えます。

 

彼はまた、こうも言います。

 

「日の老いたおん者―いと高きお方(18・47)」、「まことの神でありながら、人となられた(20・20)」神、「まことの神から生まれた神(11・10)」「神ご自身(15・7)」。

 

彼ほどの者が「神は二人(あるいは三人)おられる」などと考えるはずもなく、全体の文脈からとらえると、明らかに彼は主を「唯一の神が人となられた神」、すなわち、「父御自身」であると考えていたと思います。

 

 

1.主は神

2.聖母も主が神であることを知っていた。

3.主は火、太陽

4.エゼキエルの見たのは主

5.えせ学者

6.予言は主について語られている

7.主は父と同一と受け取れる表現

8.イザヤ

9.閉じられた門

10.モイゼが見たのは主

11.神の母

12.神であり、人である方

13.全能の力

14.神がご胎内にはいって、すまわれた

15.人となられた神

16.日のおいたおん者

17.聖母の師

18.天の元后

19.アダムをつくられた神

20.おん父のもと

21.おさな子

22.状態

 

1.主は神

1・B

おとめマリアは、清さのうちにおん子を生み、

人類のやしない主をやしない、

天地万物をささえる方を、そのひざにささえています。

 

9・A

あなたは、さいわいです、マリアよ。

清いご胎内は、大王の宮殿となり、能力に、王冠を、

主権に台座を、そなえるお方が、

あなたのもとに、そのお住まいを、さだめられたからです。

 

10・A

ベツ

主よ、私のうたを、あなたに助けられて、はじめ、

あなたを信頼しておわりましょう。

おお、無限の神よ!

あなたのへりくだりについて話したい私の口に、

あなたの宝を、満たしてください。

主よ、あなたはたねまき人、そして私は、畑です。

清いおとめに、みずからを、たねまいたお方よ、

完全な清さのうちに、お生まれになったお方よ。

清くみごもった

マリアから生まれ、

おん父の、かがやきとして生まれたお方よ、

なんの役にもたちませんが、私の声にも、

たねまいてください、あなたのみ声を!

 

10・B

ガマル

“永遠の勇士”、力ある勇士、

本質においてかくれ、神性においてひそんでいるお方を、

みごもってマリアは、お生みになりました。

 

10・D

あなたは、おん父から生まれたお方、

マリアから生まれたお方、

そして唯一のお方でおられます。

すでにおいでになられたように、代々かぎりなく、さかえのうちに、

未来にもおいでになるお方よ。ハ。

 

*「ハ」、ハレルヤの省略。典礼用に加えられたもの。

 

10・F

ザイン

ミカエルをとりかこむ、もえるむれむれは、

みまえに、おそれおののいています。

おお、神であるおさな子よ。

[火車に]つながれたケルビムたちと、動物たちと、

知恵あるもろもろの輪は、

みまえに耐えません、おお、全能の神のおん子よ!

それなのに、あなたは、マリアのふところにまで、

へりくだり、

このきわみにまで、ご自分をいやしくされました。

かぎりないあなたは、

かぎりあるものとなられました。

そうです、かぎりがなくて、

だれにもかぎられないあなた、おお、あわれみの大海よ!

 

10・G

ヘツ

あなたのおもかげは、こころよく、その香りは、

かぐわしくその口はすがすがしい、

きわみもなく清い神よ!

あなたのすべてから、いのちがほとばしります。

 

11・@

ダヴィドのむすめであるおとめは、

さぐりえない愛をもって

きょう私を宴会にまねかれました。

さあ、来て、その食卓にすわり、胸おどらせ

かの女が生んだみ子は神であると言って、

共によろこびあいましょう。

 

11・H

天使たちのかしらは、

キリストを自分のみあるじと呼びました。

それにしても、天使たちのあるじとなれる人間は、

ひとりもいません。

かれ[キリスト]は、神にましまし、

神のおん子であるからこそ、

ガブリエルのみあるじであられます。

 

11・I

おとめから生まれたお方は、

誰でしょう?誰のみ子でしょう?

かれは、まことの神から生まれた、神であられます。

かれは、上は神、下は人間であられます。

この奥義をさぐろうとする人こそわざわい!

 

13・B

いと高きお方が、これほどへりくだって、あなたからめばえ、

人を高めるため、ご自分を低くされるとは!

 

14・序言

[おりかえし]すべてのもののみあるじよ、ご誕生がほめられますように、

全世界をてらしたご誕生が!

 

15・A

マリア―女のなかで、忠実な、

祝されたお方であるあのマリアは、

清いふところに、おん子をだきしめ、

「やしない主を」やしなっておられます。

このふしぎをだれが、いいつくすことが、できましょう?

 

17・50

レシュ

ああ、偉大な、はかりがたい主のあわれみよ、

それは、とてもくちびるに、

いいつくすことのできないもの!

高いところでは、もろもろの天も容れえないお方が、

このひくいところに、やどられて、

マリアのご胎内に満足されるとは!

 

17・51

シン

天も、地も、主を賛美せよ、

〔おつげの〕天使も、処女〔マリア〕も、人々もこぞって、

“聖なるもの!”と宣言せよ、

愛のために、主が〔天を〕くだって、

人となられたからです。

 

17・52

シン

天も、み使いたちも、いと高きものに感謝し、

地も、清いおとめのために、よろこびおどれ、

両方から、歓呼の声あげ、

うたえよ、主なるおん子のみさかえを!

 

18・18

ダラツ

祝福すべき、このみおしえは、

いつも人の威厳を、尊びました。

でも、いまは、ごらんなさい、

なおさらそれを、

つげてくれます。

ひとりの清いおとめが、神であるお方を、

人としてお生みになったと、

おお、民々よきて、このみおしえに、感嘆しよう。

 

 

 

2.聖母も主が神であることを知っていた

4・G

いとしいおん子の愛ぶにも、マリアは知恵ぶかく、ふるまいました。

 そばに、たれかが聞いているときは、

自分のかわいいおさな子をなでました。

でも、だれもいないとわかったときは、

マリアは、おん子を、ひれふし拝んでいました。

みいつの、こよなきみあるじとして。

 

4・H

み胸に、おん子をだきしめて、

マリアのみ心は、感激にあふれていました。

おさな子は、母として、ほこらかに思うわが子であり、

同時にみあるじと、知っていました。

マリアは、おん子が神であることを知っていました。

そうです、マリアは、主であるおん子をかかえていました。

 

4・I

こどもをもちながら、

処女のままでいるわが身のうえに、おどろいて、

自分にあらわれたこの新しい奥義を、思いめぐらし、

あきらかに、さとっていました、だれよりも、

だいたおん子が、神にまします、そのことを。

 

17・P

ダラツ、天使

いいえ、私の告げを信じないで、

疑うことこそ、ふしぎです。

あなたを、選んで、いと高き者が、

あなたのうちに、宿りたいみむねを。

 

17・27

テツ、天使

私は、うれしい知らせを、もたらしました。

あなたの主を、あなたがみごもることを告げたのです。

おとめよ、あなたが、おん母に、

かれがあなたの子となるのに、

ふさわしくしてくださったお方に、感謝してください。

 

17・29

ユズ、天使

天地万物のみあるじは、あなたによって、

なだめられたのです。

主がくだって、アダムに、

自由と、ゆるしの希望が、与えられるのです。

どうか私のことばをうけいれて、感謝してください。

 

17・33

ラマド、天使

おそれないでください、主おんみずから、

ご胎内にやどられるでしょう。

みめぐみに、みちたお方よ、

それ以上さぐらないで、ほめ歌をうたってください、

あなたを、おん母に、えらんでくださったお方に。

 

 

3.主は火、太陽

4・B

マリアのご胎内に火がやどり、

その胸に、偉大なふしぎが、あらわれました。

マリアはみ手にて火をあつかい、

太陽をふところに、抱いています。

ああ、なんという、いいつくしがたい不思議でしょう!

 

9・@

あなたの腕は、さいわいです。

主をそのなかに、だきしめていたからです。

あなたこそ、まことの火のくるま、

火そのものを、はこばれました。

 

14・@

[もえる]すみ火をささえながら、

ほのおにもえつきない、あなたの指の、

はかりしれないふしぎよ、おお、しあわせな母、

あなたはどなたをお生みになったのですか!

 

15・@

火の車は、おそれおののきながら、王をはこぶのに、

マリアの弱いひざは[火である]主を支えても、

決してやきつくされることがありません。

火のようにかがやく、天の使いたちでさえ、

おそれおののきながら、主をささえているのに、

このダヴィドの娘は、ご胎内にやどる主を、

信頼ぶかく、ささえています。

 

16・B

おお、しあわせなお方マリア!モイゼがみた、

もえつきないやぶこそ、あなたの前じるしだったのです。

 

17・39

セムカツ、天使

天の軍勢も、主のみ姿には、耐えられません、

主はおん父の炎にかくれていても、

まばゆいほどかがやいて、

もろもろの天使たちは、みまえに、おそれおののきます。

 

17・40

セムカツ、マリア

おことばをきき、私は、おどろきいっています。

おおせのとおり、主が炎でしたら、この炎をやどしても私の胎は、

どうして、もえつくされずにいられるでしょう?

 

17・41

エ、天使

ご胎内は、聖なるお方にみたされ、

目にみえない神性に封じられ、

清くて、住みよいところに、

神はおはいりになったのです、

〔人となって、世に〕めばえるために。

 

17・44

ペ、マリア

おお、天使よ、もし、ごぞんじでしたら、教えてください、

主は、いつおいでになるのでしょう?

みことばどおり、私におやどりになるときは、

火のように〔かがやいて〕、お現れになられましょうか?

 

17・45

サドヘ、天使

主は、もうすでに、お望みのまま、

あなたのうちに、やどられました。

でも、あなたの心を乱さないため、

あなたに気づかないようにして、

おお、火にみちても、もえつくされないお方よ、

どうして私に、あなたを眺めることが、たえられましょう?

 

18・4

アラフ

あなたをうけても、シナイ山のように、

あなたのもえさかる火は、私をやきつくしませんでした。

〔おん子よ〕あなたは、私をいためないように、

その火をかくしてくださいました。

そうです、セラフィムでさえ、

眺めることのできない、ほのおは、

私をやきつくさなかったのです。

 

18・27

テツ

おとめのゆびは、火をささえ、

そのみうでは、ほのおを抱きしめます。

このおとめの乳房に、くちびるをあてて、

もえるほのおが、やしなわれます。

おんみずから、天地万物を、はぐくむ方なのに!

ああ、だれが、このおとめについて、いいつくせましょう。

 

18・32

ラマド

マリアがおん子をやどしたのは、

自然のならわしの、ままではありません。

ご胎内に、はいるよりさきに、

おん子は、火であり、霊であって、

完全な神のまま、

母のご胎内に、人となられたのです。

 

19・2

まずしい人たちの娘が、母になりました。

愛にかられて、世にくだった、万物の長者の母に。

それで、清いおとめのふところには、火があるのに、

かの女は、その火にやきつくされません。

 

19・3

マリアは、もえるすみ火を、み胸にだきしめます、

〔もえる〕すみ火は、ささえても、傷つけず、

そのほのおは、からだとなって、

マリアのみ手から、世話をうけます。

 

19・4

偉大な太陽が、小さくなって、

かがやく雲にひっこみますと、

雲である清いおとめは、母となりました。

アダムと世界をつくったあの方の母に。

 

19・17

うえは、天にみちあふれるあなたを、

下では、私の胸にささえます。

そうです、あなたは、

上のものにかこまれて、火のなかに住みながら、

下のものを、やきつくしません。

 

4.エゼキエルの見たのは主

7・C

おん子よ、かぎりなく広い、住家をもったあなたが、

私をえらんで、あなたの住家になさったとは!

あなたのみいつを容れるため、すべての天も小さすぎるのに、

私のような、いやしい女が、あなたを支えています。

さあ、エゼキエルをよびよせてください、

かれが、私のひざに坐っておられるあなたをみて、

ひれ伏して、おがみますように。

昔、かれがみた、火の車にすえられ

ケルビムたちの玉座にすわっておられたあの方が、

あなただとわかって、

私の抱きしめているあなたのために、

私をさいわいな人と、となえますように!

 

*エゼキエル書10章

 

5.えせ学者

3・A

お祝いの、この楽しいつどいのときに、

人々のむれのなかから、声をあげ、

おおマリアよ、ひびかせてください、

その声を、たからかに!

「私の子を、だれもさぐってはなりません、

ひとりとして、これをきわめうる者はなく、

さぐり人のさぐりはむなしく、

すべてのえせ学者は、はじいるばかりでしょう」と。

 

3・C

さかえあるご誕生に、[人の尺度で]

さぐりをいれる

おろか者の口を、おおマリアよ、とがめてください。

学者のおおいにかくれて、おお主よ、あなたを拒む、

えせ学者たちの宣告を、マリアにおまかせください。

こうして、清いままにあなたをお生みになった、

マリアのとりつぎで、異端者たちが、くいあらためますように。

 

10・C

あなたについて、つまずかない人こそ、さいわいです。

 

20・20

神が〔人間として〕生まれなかったといいはる、あなたたち、

ユダのなかまよ、さあ、きておききなさい。

シメオンが、この世のきずなをといて、

いかせてくださいと願ったのは、

まことの神でありながら、人となられた、

霊たちの、まことのあるじでは、なかったでしょうか?

 

 

6.予言は主について語られている

10・I

知恵ぶかい予言はみな、あなたひとりに、

おりかさなって納められています。

 

7.主は父と同一と受け取れる表現

10・K

ラマド

おん子よ、あなたはおん父のうつし、そして、おん母のうつしです。ではあなたはだれのうつしでしょうか?

なぜなら神に姿がないからです!

それにしても、あなたは、おん父のうつしです。

[目にみえる]色[ある姿]によらないでも、能力と本性、

本質と権力とによって、うつしです。

そしてあなたは、

あなたをお生みになったマリアのうつしです。

マリアによってこそあなたは、人の姿となられたからです。

そうです、あなたはおん父のうつしです、そして、

おん母のうつしです。

おお、どれいの姿をおとりになった、あなたにみさかえ!

 

10・Q

サドヘ

あなたは、ちりからアダムとおん母をつくり、

ご自分の知恵でご自分をつくられました。

おん父が、けっしてもたなかったものの、

[人間としての]本性です。

主よ、あなたのこの人性は、こんなものです。

おん父が、その[人性]の父ではありません。

あなたの人性を形づくったのは、

あなたのおん父からなるご誕生によるとしても、

[神なる]あなたのみむねです。

それにしても、あなたが、あなたご自身をお立てにならなかったのは、

おお主よ、あなたにはじめがないからです。

そうです、マリアにおいてこそ、あなたは、あなたご自身を

お立てになったのです、あなたのみむねによって。

 

10・R

コーフ

おお、マリアをごらんください、マリアは、あなたの母、あなたの姉妹、あなたの花よめ、そして、あなたのはしためです。

 

10・S

レーシュ

おお、[おん子である]あなたが、同時におん母の教師、おん母の神、おん母のみあるじであられるとは!

おん母より、若いあなたが、おん母よりも、年たけられるとは!

おお、おやめください、私は当惑します、わからなくなるばかりです。

おん子よ、あなたの大胆すぎる立場は、私を圧迫すます。

 

10・21

おお、おんいつくしみによって、この世をささえるあなたが、

いま、あなたのおつくりになった乳を、おのみになろうとは!

 

11・F

マリアはおん子をみごもって、

九ヶ月間そのご胎内にやどしました。

乳をのんでおられたとき、

雨のしずくをふらせておられました。

この感嘆すべき不思議こそ、

うらぎり者たちの反逆をうちくだきますように。

 

11・J

すべての民と民族よ、

かれをほめたたえよ!

マリアが支えるこのお方を!

その方こそ、もろもろの天を支えておられます。

ケルビムは、恐れおののいて、かれを祝し、

セラフィムは、聖なるかなと宣言します。

 

 

 

14・A

[おん子よ、]ご誕生に思いをめぐらすと、

いにしえの時代をこえて、永遠の昔にまで、さかのぼります。

知恵が、あえてあなたのことをしらべようとすれば、

照りわたるそのかがやきに、目はくらみ、

火の海に巻き込まれていきます。

あなたがおん父にかくれ、

いきいきとした火につつまれておられるのを知恵がみます。

 

15・F

さがし求めるものは[主よ]、

あなたをどこで、みつけましょう?

あなたを愛する人は、

どこであなたに、会えるでしょう?

そうです、上は天に、おん父のふところで、

あなたを探せばよいのです。

あるいはエフラタに、

ベトレヘムのうまごやにも、さがせます。

でも、マリアのふところに、あなたを探せば、

そこにこそ、あなたが清く守られているのをみるでしょう、

そして、そのあなたこそ、

ああ、なんとふしぎなこと!

神ご自身でいられます!

 

16・D

おお、しあわせなお方マリア!おとめのまま、

あなたは、新しい母と、よばれたのです。

おお、しあわせなお方マリア!アダムを生みだした土は、

あなたのかたどりだったのです。

なぜなら、あなたは、お生みになったからです、

アダムをつくったみあるじを。

 

17・@

愛にかられて、清いおとめのふところに、

住まおうとして天からくだったおん父の、

み力[でおられる主キリスト]よ、

きわめがたい偉大なご誕生を

話すにふさわしいことばを、お与えください。

 

17・A天地万物の持ち主でありながら、

かぎりない愛のためこそ、

まずしいおとめのご胎内に、おやどりになったおん子よ、

私が、うやうやしくあなたのことを歌えるように、

ふさわしい声と、ことばを、お与えください。

 

17・L

ベツ、天使

女のなかに、祝された方よ、恐れないでください。

いと高きものが、かたじけなくも、あなたのなかに、

住もうとお望みですから、

全世界にあわれみ[のつゆ]を注ぐため、

神はあなたの上に、みめぐみを、お降らせになりました。

 

17・49

レシュ

高いところも、深いところも、主をほめ、

天使たちも、人間も、こぞって主をたたえよ!

すべてのものを新たにしようと、

すべてのもののみあるじが、

天からくだって、ひとりの処女に、

いま、おやどりになったのです!

 

18・5

アラフ

永遠の昔から、神であられたおん子は、

第二のアダムと、よばれています。

〔かれは〕ダヴィドの娘の

ご胎内にやどり、

すべてに清いおん母、おとめマリアによって、

人となったのです。―み名に祝福!

 

18・12

ベツ

永遠の昔から、おん父と並ばれたお方は、

マリアの胎内に、人の子となり、

ご自分の偉大さを、私たちのいやしさにかえ、

私たちのように、死すべきものとなって、

おんいのちを、注いでくださったのです、

私たちが死なないものとなるために。

 

8.イザヤ

光栄あるイザヤは、

かれのことを「神」、あるいは「勇士」と呼び、

その誕生の不思議さゆえに「感嘆すべきお方」と呼びました。

それで、かれのことを誰も、

ただ「感嘆すべきお方」と呼ばねばなりません。

 

19・8

おさな子として、私から生まれても、

あなたは勇士のように、力づよい方、

おお、感激すべきあなたよ、

予言して、イザヤが、あなたを、そうよびました。

 

19・9

いま、そのすべてをもって、私のもとにあるあなたこそ、

永遠の昔から、おん父にかくれておられたあなたです。

いと高きところに、みちあふれる、あなたが、

私の小さな胸を、せますぎると、おぼしめされぬとは!

 

9.閉じられた門

15・D

感嘆すべきまぼろしをみた、

あのエゼキエルは、そのよき日、喜びに、あふれるでしょう。

その予言のとおりに、実現したからです。

バビロンの、さすらいのときに、

閉じたままの門をみて、かれはいいました

“この門は、封じられたままに残るだろう。

主が、ここを通って、入るから“と。

封じられていたその門は、マリアのことで、

この門を、通っておいでになったキリストは、

これを開けずに、おはいりになったのです。

この世の家に。

―[この偉大なふしぎの前に、]さぐり人たちは、何をいうことができましょう!

 

10.モイゼが見たのは主

16・B

おお、しあわせなお方マリア!モイゼがみた、

もえつきないやぶこそ、あなたの前じるしだったのです。

おお、しあわせなお方マリア!あなたは、

ベールのように、

かれの光を、かくしてくださいました。

おお、しあわせなお方マリア!ただひとつの光線が、

あなたから出ると、

太陽も、かげをひそめて、かくれました。

そして、あの昔、山のうえで、モイゼのうえにかがやいた、

その光線は、いま、全世界で、かがやきわたっています。

 

11.神の母

18・20 

「ごらんなさい、おとめである私は、母となりました。

でも、とかれなかったおとめの封印を、

私は、おん子とともに、もっています。

神の母となった

そのはしために、おお、神の知恵のみわざよ!」

 

18・50

タヴ

対照的に、ことなった子を生む、

母が、ふたりあらわれました。

そのうちの、ひとり〔エヴァ〕は、“人”を生み、

人は、母に、のろいをあびせるばかりでしたが、

もうひとりの母であったマリアは、神を生み、

神は、この世を祝福でみたされました。

 

 

12.神であり、人である方

18・21

この方は、おんひとり子を、お生みになって、

神であり、人である方を、はぐくんで、

かくれたおん子の 母となられたのです。

こうして、おん父から全能によって生まれた、

完全なおん子は、

おとめの胎内でもまた、おさな子となりました。

 

18・33

ラマド

あのガブリエルが、マリアに告げたのは、

世のつねの人の誕生ではありません。

みことばの神こそ、

天使をマリアのもとに、つかわして、

そのすみ家を、準備させました。

神のままで、人となられるそのすみ家を。

 

13.全能の力

17・25

ヘツ、天使

それは、他でもなく、おん父の、

あなたに対するみ旨であって、

処女のままみごもって、

あなたがおん子を生むということを、

どうかだまって信じてください。

おん父には、おできにならないことはありません。

 

18・34

ラマド

神の子の、この人づくりに、

どうして男の協力がいりましょう?

そのつくり主ご自身、

おんみずから、清いおとめにやどって、

みあるじの、全能の力により、

ご自分に、人のからだを、ととのえられたのです。

 

14.神がご胎内にはいって、すまわれた

18・35

ミム

だれか見たものがいるでしょうか、

〔神の子が〕おんみずからを、おつくりになるのを?

かれは、母をご自分でえらび、

おんやどりを、つげるために、

まえもって、天の使いをつかわしました。

そして、この清いおとめが、まだおんやどりについて、

思いめぐらしているそのときに、

主は、かの女の気づかぬうちに、そのご胎内にはいって、

すまわれたのです。

 

18・49

タヴ

清いおとめのご胎内に、はいってすまわれた、

よろずの知恵のおお海に、ほまれ!

上は天、下は地上、

その偉大さにみちあふれるみあるじを、

ダヴィドの娘の、せまいふところがやどし、

その小さな胸が、だきしめます。

 

 

15.人となられた神

18・38

ヌン

マリアは、おお、

よろず代の勇士のおすみになった神のみやしろ。

神が人となり、

父のおんひとり子が、アダムとよばれる

あのふしぎな奥義のおこなわれた、

清いみやしろ。

 

18・41

祝福されたアブラハムの羊のむれのなかで、

あいらしい若い牝牛こそ、

そのかたどりです、

すなわち、性のくびきを、おわされなかった

マリアは、みごもって、

神である方を生みました。

私たちを、救おうと、愛にかられて人となったその神を。

 

 

19・1

私は感嘆します、マリアを。

おさな子となった、全人類のやしない主を、

はぐくむときの、あのマリアを。

全宇宙にみちあふれるお方は、

この清いおとめのふところに、やどっています。

 

19・14

すべてのものに、さきだって、

永遠から存在しておられるあなたが、

世にくだって、私の子になられたとは、

おお、あなたに賛美!

では、あなたは、お住みになるのですか、

私の小さなひざに?

高いところも、深いところも、宇宙もすべて、

あなたのものなのに!

 

20・25

〔生まれたばかりの〕みどり子は、

ものいうはずもなかったが、

聖霊にしめされ、あの方であるとみわけたシメオンは、

おさな子をみるとすぐ、

ためらわないで、祈りを向け、

こえ高らかに、

“このみ子こそ人となった神”といって、宣言しました。

 

16.日のおいたおん者

18・47

レシュ

日のおいたおん者―いと高きお方が、

そのいとけない子となって、

マリアのご胎内に、すまわれたとは!

そうです、火であるお方が、

肉のふところにいり、

永遠のあのむかしから、存在するその方が、

ご自分に、はじめをきめて、やどられたとは!

 

18・48

シン

みさかえあれ!母をまえもって、

〔人の〕胎内につくられたおさな子よ、

〔あなたは〕そののち、ふたたび、おん母を訪れたとき、

母よりも若く、お生まれになりました。

おん母より、日の老いたお方であったのに、

若くなろうと、おぼしめされたとは!

 

20・28

おさな子をおがむこの翁、

この年おいた人は、おさな子を、証明します、

このみ子こそ、ほんとうは、

“日のおいたおんもの”、

ダヴィドが、

「おさな子よ、あなたははじめからいますと」、

宣言したあのお方である。

 

20・29

知恵たけたあの年おいたシメオンは、

神殿でおさな子をだき、

注意ぶかくながめたとき、みとめたのです、

この、生まれたばかりのおさな子が、

“日の老いたおんもの”であることを。

かれは、日の老いたおんものとして祈りを向け、

おさな子にねがって、いいました、

「主よ、おんあわれみによって、いまこそ、私をいかせてください」。

 

17.私の師

19・5

清いおとめは、この方をささえ、愛ぶして、だきしめます。

愛のしらべで、ほめながら、

礼拝しながら、わが子となったこの方に、

マリアは、いいます。

“おお、私の師よ、どうぞあなたを、だかせてください。

 

19・6

あなたが、私の子となってから、

私は、子守うたをうたいながら、

母として、あがめています。

私がお生み申しあげたあなた、私の子であるあなたが、

おお、私よりも古いとは!

私がささえている、あなたは、私のみあるじ、

ほんとうをいえば、あなたこそ、私をささえる方なのに!

 

18.天の元后

19・11

天よ、私の足台となって、冠をあたえなさい。

私は、〔神から〕天よりも尊ばれたのだから。

おお、主よ、じじつ、天は、あなたの母とは、

ならなかったのです。

あなたは、これを、玉座にしたにすぎません。

 

19・20

とうぜんです、王の母ぎみが、王がすわる玉座よりも、

はるかに、ほめられ、高められるのは!

おお、みあるじよ、感謝します、

私をおえらびになられたことを。

みめぐみで、私は、母となり、あなたのために、

子守歌を、うたいましょう。

 

19.アダムをつくられた神

18・42

アダムとエヴァとがつくられたとき、

性によらないで、つくられたように、

みあるじのためにも、どうして、

性による必要がありましょう?

かれこそ、アダムをつくった神、

かれこそ、のちに、人間となった神。

 

20・3

マリアは、全能の知恵をもって、

アダムをつくられた神であるおさな子をやどし、

やしない育て、

そのみ胸に、だきしめています。

そのみうでに、ささえています。

みいずによって、天地万物をささえるその方を!

 

20.おん父のもと

20・6

シナイ山でみ民に、律法をあたえたそのとき、

清いおとめの、このおん子は、まだ、おん父のもとでした。

かれは、あのとき、いけにえも、ささげものも、

おん父とともに、うけました。

でも、いまは、かえって、若いおとめが、かれをささえ、

かれのために、そのささげものを、しています。

 

20・7

レヴィ人たちのいけにえと、

すべての司祭から、ささげものをうけた、このおん子は、

いけにえをうける方なのに、

お祈りと、ひなばとと、

まじりけのない麦粉とを、

清めのための、そなえとして、いま、祭壇にささげます。

 

20・8

このおん子は、ノエから、ささげものをうけ、

アブラハムには、いけにえのとき、

イザアクには、やきつくしのいけにえに、

ヤコブには、階段のうえに、あらわれました。

そのいつくしみのみ心ゆえに、いにしえの人々から、

いけにえをささげられていたこの方は、

いま、神殿〔への奉献〕で、人々の立ちあいのもとに、

ご自分が、そのささげものを、そなえられます。

 

20・9

アベルの初穂をうけいれ、

カイン〔のそれ〕を嫌って、ことわった方こそ、

じつに、この方です。

偉大なメルキセデクは、

かれのまえじるしとして、司祭職をおこない、

十分の一のおくりものと、

まじりけのない、麦粉とを、ささげたのです。

いま、その〔ほんものの大司祭である〕かれを、

ヨセフが神殿につれていきます。

 

20・10

アブラハムに、この方は、

木と、〔その枝にかかった〕牡ひつじ〔のかたどりのうち〕に、

ご自分のあの日のことをみせました。

そして、エリエゼルに、

エフォドと、大祭司のくらいをあたえたこの方は、

いま、ふた親にともなわれ、ご自分のほうから、祭壇に、

清めのそなえを、ささげられます。

 

21.おさな子

20・30

イサイの子は、かれを、おさな子とよびました。

そうです、かれを、おさな子のすがたで、みていたからです。

でも、その永遠のご誕生ゆえに、

このおさな子は、おん父より若くはありません。

ただ人としての、その第二のご誕生で、

マリアから生まれて、“おさな子”

とよばれるようになりました。

 

*イサイの子

「イサイ」(ニイエッセ)の子は、ダヴィドのこと(サムエルの書上16章参照。)

 

22.状態

10・J

カフ

あなたは、マリアのご胎内にやどり、馬小屋におさめられ、

シメオンにささえられます。

おお、勇士であられる神よ!

あなたは、かぎられるもの、ささえられるもの、

人にふれられるもの、

そうです、肉体をまとわれたあなたを、

本性として、かぎりないお方であるにしても、

人々は手でさわって、たしかめます。

おお、なにものにもかぎられないあなたのご本性が、

小さな馬小屋の、せまぐるしさにかぎられるとは!

そうです、かぎりのないお方よ、

あなたは一つのかぎりあるものとなりました。

 

12・@

天のいと高き所では母なしに

地では父のないお方よ、

あなたのご誕生はすべてにまさって感嘆すべきもの、

なぜなら、おとめの封印をそのままに残し、

おとめのしるしも傷つけなかったから。

[マリアの]乳房は母乳にみち、

万物を支えるお方に飲ませます。

 

19・9

いま、そのすべてをもって、私のもとにあるあなたこそ、

永遠の昔から、おん父にかくれておられたあなたです。

いと高きところに、みちあふれる、あなたが、

私の小さな胸を、せますぎると、おぼしめされぬとは!

 

20・30

イサイの子は、かれを、おさな子とよびました。

そうです、かれを、おさな子のすがたで、みていたからです。

でも、その永遠のご誕生ゆえに、

このおさな子は、おん父より若くはありません。

ただ人としての、その第二のご誕生で、

マリアから生まれて、“おさな子”

とよばれるようになりました。

 

*イサイの子

「イサイ」(ニイエッセ)の子は、ダヴィドのこと(サムエルの書上16章参照。)