エンドルのヨハネ
エンドルのヨハネ
マリア・ワルトルタ/聖母マリアの詩下/P238
「あなたはイスラエル人ですか」と男が聞く。
「そうです」
「私も、見えないだろうが、そんなところです。長い間他国で生活し、ここらの愚か者たちが毛嫌いするいろんな習慣を身につけた。だが、正直言って、他の人たちよりはましかもしれない。私はよく本を読み、ローマ人たちに売るための鶏を飼い、薬草で治療もできるから皆に悪魔だと言われている。若い頃、ある女のことで―ティンツィウムに住んでいたが―ローマ人の一人と争いになり短刀で勝負した。そいつは死に、私は片目と全財産を失って、重労働の終身刑を言い渡された。しかし薬草の使い方を知っていたので牢番の娘を治してやり、牢番の信頼を得たが、それを逃げるために利用した。私は本当に悪いことをした。その牢番は責任を問われて殺されたに違いないから。だが、牢獄の中にいると自由は美しく見える・・・」
マリア・ヴァルトルタ/私に啓示された福音4巻下P184
(エンドルのヨハネ)
わたしを謙遜に保つために過去の記憶は残ります。しかし確信があります。わたしは新しい風土に慣れてきたと感じ、あなたのものである赦しの、また愛の甘美なこの世界の中で、もう外国人ではありません。そしてわたしは平和な状態に戻り、晴れ晴れとしており、幸せです。
マリア・ヴァルトルタ/私に啓示された福音4巻下P185
「わたしの母とあなたは、神に心を開く二つの霊魂の教師です。わたしの母、神の知識の天使的教師、人智のエキスパートであり教師であるあなたはしかしながら、今は超自然的言及に触れ、説明することが出来ます。素晴らしいでしょう。そして立派です。」
「はい、神聖なわたしの主よ! 哀れなヨハネには素晴らし過ぎます!・・・」そしてこの男はイエズスの家での、マリアの傍での、間近に迫った平和な日々を思い描いて微笑む・・・
マリア・ワルトルタ/イエズスに出会った人々2・P345
イエズスは他のヨハネによくするのと同じしぐさで抱き寄せ、今からやむを得ず与えるべき苦しみのために青ざめながら言う。
「今も神はおまえに繊細で聖なる役目を任せます。おまえを特別に愛しているからです。寛大で偏見がなく、知恵に富み、おまえに残された償いで、すべての苦行と犠牲を耐え忍んだおまえだけにできることです。他の人だったら拒むに決まっています。それもごもっとも、必要な資格を備えていないからです。主の道を準備しに行くために、私の使徒は一人としておまえのような資格を持っていません。
おまけに、おまえの名はヨハネです。そのため、おまえは私の福音の先駆者となり・・・おまえの先生の道を準備し・・・そればかりか、それほど“遠く”へ行けないおまえの先生の代理を務められるはずです・・・(ヨハネは戦慄を覚え、イエズスの顔を見たくて体を離そうとするが、できない)・・・私はそれほど遠く・・・シリアへ・・・アンティオキアまで・・・行けない」
ヴァッスーラ/神のうちの真のいのち/1巻P253
‘87・6・21
主に魅せられてしまった今、私はどうなることでしょう?
知りたいか? 流浪の民となった被造物たちの中に あなたを我が腕の中から投げ入れる! あなたはこの人びとの中で暮らすのです!
わが神よ、もう私を愛して下さらないのですか? (大変心配になって)み腕の中にいるのはなんと素晴らしかったか。ところが今度は、私を放り出したいとは!
ああ ヴァッスーラ 何ていうことが言えるか!(*)
* 私は主のうちに、心の痛みを感じました。
このすべての悪の中に あなたがいるのを見て 私の心は引き裂かれ、大変苦しんでいる、分かってほしい 我が子よ 私はあなたを神のない民とともにいるようにと捧げている、敢えてあなたを追放するのです ♡ 娘よ、多くの人びとはあなたを傷つけようとする、私は 今のあなたの苦しみには耐えることができる(*)
* 私が分裂状態にあることを―魂が主の聖心のうちに、そして体が俗世間の中にいることを。
しかし、彼らがあなたを傷つけるのは、そう、決して許さない。
どうなされますか、主よ?
♡ 傍観はしない ♡
けれど、なぜ主は私を抱きしめて下さり、そのように私を魅了なさってから、放り出してしまわれるのでしょう? それは公平ではありません! (私は殆ど叫んでいました!)
あなたを我が生けにえとすると言わなかったか? 私は あなたを使っているのです、あなたは私の網、そう、地上にあなたを 擲(なげう)っている。 私に霊魂たちを捧げなさい、その救いのために、私は彼らを贖う、こうなるにはあなたの苦しみなしでは成就しない ♡
マリア・ワルトルタ/イエズスに出会った人々2・P344
「シンティカは心を込めて病人の私の面倒を見てくれます。生涯、泣いて母を求めた孤独で悲しい私は、すべての女に母を見つけようとしたけれど、かなえられませんでした。しかし、今、シンティカは私の夢を実現してくれました。この疲れ切った頭上に、死が日々近づきつつあり、この心に母のような愛の露の滴が落ちるのを感じています・・・ごらんの通り、私はシンティカに娘と母と両方の心を感じ、完全な女を感じているので、シンティカのために女のせいで私を襲ったすべての悪をゆるします。不可能なことですが、妻であり、この手で殺したあのあわれな女がよみがえるなら、あれもゆるそうと思っています。なぜなら、ほれっぽくて、簡単に自分を捧げる―良くも悪くも―女心を知ったからです」
「それらすべてをシンティカに見出せたことは私もうれしい。おまえの人生の良き伴侶となり、一緒に多くのことができるはずです。私は、おまえたち二人に同じ使命をもたせたい・・・」
マリア・ワルトルタ/イエズスに出会った人々2・P343
おお、そうです。ここにはどれほどの平和があることか。この世の平和ではありません。ここを去るときは、この平和を一緒に持って行きたい。・・・いろいろな思い出が私を傷つけ、侮辱が苦しめます。人間だから。けれど、私はもう憎しみを知らない者になりました。なぜなら、しつこい憎しみは不毛のもとだとここで分かったからです。