Dear for you


 「ソフィア様、知ってました?明日って、地上界では普段お世話になっている人に
 チョコを贈る日らしいですよ?」
 「え?そうなのですか?」
 ソフィエルは、読んでいた本から顔を上げてシェリーに尋ねた。『ソフィア』という
 のは彼女の愛称である。
 「はい!えっと『バレンタインデー』っていうらしいです」
 「バレンタインデーですか…地上界にはそんな風習があったんですね…」
 「ソフィア様も、勇者様たちにプレゼントしたらいかがですか?」
 「…そうですね。そうしましょうか」
 シェリーの言葉に頷き、手に持っていた本を閉じて立ち上がる。
 「では、早速チョコ作りに取りかかりましょう。シェリーも手伝ってくださいね?」
 「は〜い♪」

 そして翌日の夜。
 「………」
 ヴァンパイアハンターとしての仕事を終え、宿屋に戻ってきたクライヴはその光景
 を見て言葉を失った。
 (…何故、彼女が…?)
 ソフィエルが、何か用があって宿を訪ねてくるというのはよくあることで、別に珍し
 くも何ともない。
 問題なのは、何故彼女が自分のベッドで熟睡しているのか、ということだ。
 (疲れて…いるのだろうか?)
 この世界を護るため、いつもあちこちを飛び回っているソフィエル。
 彼女の口から『忙しい』とか『疲れた』という言葉を聞いたことはないが、きっと大
 変なのだろう。
 しかし、自分も仕事を終えて戻ってきたため、それなりに疲れている訳で。
 そうなると、自分としては一刻も早く眠りたいのだが、こんな風に気持ちよさそうに
 眠っている彼女を起こすのは気が引ける。
 (…床で眠るしかないか…)
 半ば諦めに近い気持ちでそう考え、とりあえずもう一枚毛布を借りてこようとしたそ
 の時、眠っていたソフィエルが目を覚ました。
 「う…ん…」
 どうやら、彼女は寝起きがいい方ではないようだ。一応目は開いているものの、
 かなりぼんやりとしている。
 「…クライヴ…?えっと…ここは…?」
 「俺が泊まっている宿だが…」
 「宿屋…?何で私、ここにいるのかしら…?」
 「…それは俺が聞きたい…」
 まだ完全に目が醒めていないらしい。自分がここにきた目的すら思い出せないよう
 である。
 そして、そのまま考え込むこと数十秒。
 「…あ!」
 小さく声を上げ、ぽんと手を叩く。
 「思い出しました。私、クライヴに渡したいものがあってここへ来て、留守だったか
 ら少し待たせてもらおうと思って、それで…」
 「…それで?」
 「他に座れそうな所がなかったのでベッドに座っていたんですけど、そうしているう
 ちに段々眠くなってしまって…」
 「そのまま眠ってしまった、という訳か…」
 あまりにも彼女らしい理由だと思い、苦笑する。もっとも、端から見れば殆ど無表情 
 なのだが。
 「一度帰って出直そうとは思わなかったのか?」
 「思いましたけど…でも、どうしても今日中に渡したかったんです。えっと、まだ14
 日ですよね?」
 「ああ…そうだが…」
 怪訝そうに眉を寄せたクライヴの前に、綺麗にラッピングされた箱が差し出された。
 「…これは?」
 「チョコレートです。今日は、普段お世話になっている人にチョコレートを贈る日だ
 と聞きましたので」
 そう言ってにっこりと微笑むソフィエル。
 (これだけのために、俺の帰りを待っていたのか…?)
 驚き半分、呆れ半分の気持ちでソフィエルを見つめる。
 「あの…迷惑でしたか…?」
 「いや、そんなことはない。……ありがとう」
 クライヴが礼を言うと、ソフィエルは嬉しそうに顔を輝かせた。
 「本当は不安だったんですよ。受けとって貰えなかったらどうしよう、って。でも、
 喜んで頂けてよかったです」
 「…そうか」
 「では、私はこれで失礼します。おやすみなさい、クライヴ」
 にっこりと微笑んで、転移魔法で帰っていくソフィエル。
 それを見送った後、クライヴは手の中にある箱に視線を落とし、小さく笑みを漏らし
 たのだった。

                      
 -END-




 (NO.28 夏月藍様からのコメント)


 ええーっと、読んで下さってありがとうございます。
 お目汚しですみません。クライヴ別人になっててごめんなさい…(汗)
 (…って言うか、これのどこがバレンタインなんだろう…(汗))
 こんな駄文ですが、感想などを頂けると嬉しいです♪
                                             


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