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《仕組まれたプレゼント交換?》 クライヴが指定されていた酒場のドアを開いた瞬間―― 「「「メリークリスマース♪」」」 パーン! クラッカーの中身がクライヴの頭上に降り注いだ。 「…………」 「さ、クライヴこちらへ」 レゼーヌが立ち尽くしているクライヴの手を引いて、開いている席へ座らせた。 「…………」 自分を中心にし、時計回り。ロクス、ズィック、テーブルを挟んでイスクトア、レゼーヌ。やはり物の見事にハロウィンパーティーと同じ面子だった。 「クライヴ、お久♪ もしかして忘れてる? 最後に会ってからまだ二ヶ月経ってないけどさっ」 「お前、この前街で声掛けた時無視しただろう。あの時無視すんなっつーたのによぉ」 「どうやら、僕達は常に貧乏くじを引く役らしいな」 三者三様の歓迎(?)の言葉。 さて、ここで一週間前へ遡って見るとしよう。 深夜一時。何時ものようにクライヴは修行の最中だった。と、そこへ、これまた何時ものようにレゼーヌが降りて来た。 「今晩は、クライヴ。調子はどうですか?」 ふわっと微笑みながらそう言うレゼーヌ。何時もと違った。何時もなら『にこ』と言うのがレゼーヌの微笑み方。だが、今日は『ふわっ』と柔らかいのである。これは『何かある』と、クライヴは直感した。 「……ああ、良い。で、どうした」 良いと言うクライヴの返事にまたしてもふわっと軽く微笑み、異空間に収めてある地図を取り出し、とある街を指差しながら説明する。 「あのですね。ここの街の酒場へ、プレゼントを一つ持って二十五日夜八時頃来て下さい」 クライヴの直感的中。しかも、今回はただ酒場に行くだけでなく、プレゼントまで用意をして欲しいと。一体何があるのかと聞かずにはいられなかった。 「……何かあるのか?」 「はい♪」 良くぞ聞いてくれました。と言うかのように元気良く返事をする。そう。まるで子供に戻ったかのようなその仕草。 「その日は、クリスマスなのです♪」 聞き慣れないその言葉に、クライヴは一瞬デジャ・ビュを感じた。 「……それもバレンタインやハロウィンと同じ世界の祭り事か?」 「そうです。良く覚えていましたね」 「ああ。アルカヤにはない事だからな。不思議と残ってる。それで……プレゼントは何に使うんだ?」 「……何に使うって……他の人に差し上げるのですよ? 他に何か使い道ってありましたっけ?」 「ないな。……しかし、その『他の人』とは誰を指して言っているんだ……?」 何か嫌な予感が頭を過ったが気にしない事にした。そうだと決まった訳ではないと自分に言い聞かせる事によって……。 「予定では、ロクスと私です。後……予定に入っていなくとも、向こうからやって来るかもしれない者が……」 「……ズィックか」 ハロウィンの時にも、仕事を放り出して酒場へやって来たズィック。そのズィックが今回のパーティーを見逃すはずがないと……。 「彼もそうなのですが……イスクトアも、きっと……」 「……そうか、分かった」 「え、良いのですか? あまり大勢で集まるの好きではないですよね?」 「そうだな。……俺は、それが分かっているのに態々集める君の気持ちが未だ分からない……。それに、何故何時も俺とロクスなんだ?」 「え……それは……」 もごもごと、言い難そう……と言うよりも、言いたくなさそうにしているその姿見てしまったら、それ以上聞こうという気は起きなかった。 「いや、すまない。気にしないでくれ」 「……すみません。それでプレゼントですが、集まった者達でランダムで交換したいと思うのです。ですから、誰が貰っても大丈夫なような物をプレゼントとして持って来て頂けますか?」 「……誰が貰っても……」 かなり無茶な注文を、にっこり笑顔であっさり言いのけたレゼーヌ。この注文にクライヴは数日間悩まされる事となる……。 「ええ。例えば全員来ると仮定して考えた時、クライヴのがロクスに行き、ロクスのがイスクトアに行き、イスクトアのが――」 「もう良い。分かった」 何が言いたいかは直に分かるので最後まで言わせる必要はないと遮る。 「……そうですか……。では、私はこれで失礼します。プレゼント、宜しく願いしますね」 最後の最後までふわっと微笑み、軽く地面を蹴って空高く舞い上がって消えた。 「…………プレゼント……か」 小さく溜息一つつき歩き始める。まずは一番近い街に行く事にしたのだった。そこで何か買って、指定された街へ行けば良いと。 そして、迷いに迷いようやく決まったプレゼントを持ってやって来たのだった。 「…………」 クライヴは気付いた。その椅子の上には三つのプレゼントしか乗っていない事を。何処か他の場所に置いてあるのだろうかと、周囲を見渡すがそれらしい物は見当たらず。もしかしたら、ズィックとイスクトアは持って来ていないのだろうかとも思ったが、それはありえないだろうと、自らが瞬時にして否定した。イスクトアはともかく、何かにつけても祭り事が好きなズィックが、プレゼント交換などと言うイベントに参加しない訳がない、と……。 「…………」 「そう言えばクライヴ。君は何を持って来たんだ?」 考え事をしながら一定間隔で料理を口に運んで行くクライヴに、ロクスは話しかける。 「ロクス。駄目ですよ。何か分かってしまったら交換の楽しみがなくなってしまいます」 「……それもそうだな。ああ、悪いクライヴ。今のはなかった事にしてくれ」 「いや、元から言うつもりなどなかったから気にするな」 クライヴには自分のプレゼントの中身の話などどうでも良かった。問題なのは、二人のプレゼントは一体何処にあるのだろうかと言う事と、その二人を含めた天界組は一体何を持って来ているのかと言う所だった。 「……あー分かったよ。気にしないよ」 投げやり気味に言い放ち、食事に戻る。 そして、ついにやって来たプレゼント交換。 「ランダムに……と言う事なのですが、実際どうやって決めましょうか?」 「……決めていなかったのか?」 「ええ。当日になれば何か良い案でも浮かんでくるかもしれないと思ったので」 何とも暢気な天使。しかし、クライヴの神経は未だ姿を現さない二つのプレゼントに集中していた。もしかしたら、持って来ていない可能性の方が高いのでは? と思い始めた時―― 「あ〜じゃあさ、こうしない? 全部のプレゼントに紐でも付けてさ、一人一本ずつ掴んで決めるの。五つもあれば自分のに当る確率は低いんじゃないかと思うんだ」 やはりある事発覚。 「ああ、良いんじゃないか? 僕はそれでも構わないさ。ただ、もしも自分のに当ったのがいた場合は、またやり直した方が良いと思うってだけだ。それより、今『五つ』って言ったよな? 後二つは何処にあるんだ?」 今まさに、ロクスもクライヴと同じ事を疑問に思っていた事が分かった。そして、クライヴが疑問を口にするよりも先に質問を投げかけた。 「家だよ。ずっとここに措いて置くより、交換時になってから出した方が良いと思ってね」 「俺もな。んじゃぁ、時間かけねぇでさっさと出しちまうか」 「そだね」 パチン 二人同時に指を軽く鳴らすと、直前にプレゼントと思わしき物が二つ、姿を現した。 「こう言う時手品出来ると余興に良いと思わん?」 「種も仕掛もありませんってな」 この場を『手品』としてやり過ごそうと言う二人は、共にテーブルを囲っている三人に、目で『合わせろ』と言う合図を送った。 「二人一緒にと言うのは初めて見ました。流石ですね」 「まったくな。二人には驚かされてばかりだ」 「……見事だな……」 上手く合わせる事が出来、周りは完全に『手品』として認識したようだった。 「……何故こんなに長いんだ……」 「そうですね……。この半分の長さでも十分のような気がしますけど……」 「長い方が便利でしょ。プレゼントを集めないで紐をテーブルの中央に集めれば良いんだもん」 それを聞いたレゼーヌは、早速皆の紐の先端を集めた。 「で、順番はどうするんだ?」 「一斉でも良いんじゃねぇ? 別に紐に目立った印なんかねぇだろ?」 「……ないみたいだな」 「じゃ、引こう♪」 皆が一斉に手を出し紐を掴んだ。 「……レゼーヌ。紐はもう離しても良いんじゃないか……?」 「あ、そうですね」 クライヴのその言葉に、左手を広げ紐を離す。それでもまだ紐が重なり合っていて、辿るのは困難である。結局皆、自分の前にプレゼントが来るまで紐を引いた。 途中紐が絡まったりはしたが、それぞれの前にはプレゼントがあった。 「え〜っと、自分のが自分にって事ないよね?」 もしそうだとしたら、また紐を集めてやり直さなければいけないので確認を取る。 「俺は大丈夫だぜ」 「私もです」 「ああ、僕も自分のじゃない」 「……俺もだ」 「自分も大丈夫っと」 「と言う事は、やり直ししなくても良いって事で、開けて良いよ♪」 ガザガザ ガサガサ イスクトアを除いた四人が、それぞれの包装を開ける。 「ん? イクストア、君は開けないのか?」 包装紙を取り除くだけだったロクスは、プレゼントである真っ白なマフラーをテーブルに置いて、未だプレゼントに手を付けていないイスクトアに話しかける。 「あ〜……うん。こんだけ丸いとちょっとね……。しかも、これ持って来たのがさ……」 「……気持ちは分からないでもないけどな。でも、一人だけ何を貰ったか見せないのはずるくないか?」 最初は苦笑しつつズィックを見、再度イスクトアに顔を向けて意地悪そうに笑った。 「まあね〜。そうなんだけどさ……」 「……貸せ、俺が開けてやる」 包装紙を綺麗にたたみ、その上にプレゼントであるワイン二本を置いてイスクトアの方に手を出したクライヴ。 「あ、そう? 有難うー♪ じゃ、宜しく」 立ち上がり球体を両手で持ちクライヴにパス。 「…………」 上で結ばれているリボンを解き、出て来たのは白い風船。 「……風船ですよね……?」 レゼーヌも、綺麗に包装を解きたたんでその上にプレゼントであるペアのワイングラスの入った箱を置いていた。 「だよね……。これがプレゼント?」 「……風船にしては重かった」 ………… 贈り主であるズィックの返答を待っているのだが、まったく会話に入って来ない。何をしているのかと皆が視線をズィックに向けると、プレゼントである銀の十字架を眺めていた。 「……ズィ〜〜ック!!」 「あぁ? 何だ?」 「何だじゃなくてさ……。あれがプレゼントなん?」 「うんにゃ。割って見ろよ」 と、銀の十字架で風船を割る真似をする。 「…………割れば良いんだな」 クライヴは椅子に立て掛けて置いた刀を抜き、軽く『ちょん』と突付いた。と、次の瞬間―― バーン! 風船が勢い良く割れ、無数の紙ふぶきが舞い上がり、中から出て来た物は―― 「……ぬいぐるみ?」 「見た目はそうだな……」 「……『誰に当っても良いような物を』じゃなかったのか? レゼーヌ」 「ええ。基本的にはそう言う事にしましたよ?」 クライヴとロクスは同時に思った。当らなくて良かったと……。 「可愛いじゃねぇか♪」 「「…………」」 「あ、そっか。二人知らないんだ。ズィックさ、ふわふわとかした可愛いもん好きなんよ。普段はそう言う素振り見せないから自分もよく忘れてるけどね」 けらけらと、さも可笑しそうに笑いながらぬいぐるみを自分の元に置いた。 「んじゃぁ、交換もし終わったっつー事で、そろそろお開きとすっか」 がたっと席を立って十字架を持ち、ロクスを見てにぃっと笑う。 「サンキュな」 「別にお前に直接やった訳じゃないからな。……ま、でも大事に使ってくれれば僕も嬉しい。それより……このマフラーはな……」 横にたたんで置いたマフラーの先を掴み、広げてみる。 「……長過ぎないか?」 ぱっと見でも、三メートルは優にあるそのマフラー。誰からのプレゼントかと言うと。 「なあ、レゼーヌ。これはマフラーだよな?」 「ええ。正真正銘マフラーです。正しくは、ロングマフラーと言う物です」 「ロングマフラ〜? 僕は普通ので良かったけどな」 スっと、クライヴの刀っ先がロクスの首元へ。 「黙れ。物が何だろうと、レゼーヌからだ。ありがたく貰っておけ……」 「分かってるよ。言ってみただけだ。だから刀を戻してくれ」 クライヴは無言のまま刀を戻し、テーブルの横に立てかけ、自分が貰ったプレゼントを見る。 「これは……ワインで良いのか?」 「うん。自分飲まないから分かんないけど、よくレゼーヌが美味しい美味しい言って飲んでるやつなんだ。それ。自分には当らないようにするなら、酒で良いと思ってね」 「……すまない」 「クライヴの『すまない』は『有難う』も含まれてるって事をレゼーヌから聞いた事があった。と言う事は、今のは『有難う』と解釈させてもらうね。っと、後はレゼーヌのは……」 まるで、グラスに魅入られているかのように、グラスを直視していたレゼーヌは顔を上げ、皆の方にグラスを向けた。 「このグラスの細工が見事なのですよ」 「どれ? ……本当だ。あ〜……あのさ、レゼーヌとクライヴさ、ここでワイン飲んでけば? 嫌じゃなかったら。持ち込みOKって書いてあるし」 邪魔者は消えるべ。と言った感じにイスクトアとズィックは立ち上がり、居座ろうとするロクスの腕をズィックが持ち上げる。 「お前等が飲むか飲まないかは別としてな、俺達そろそろ帰るな」 「ん。今日は楽しかったよ♪ えっと、今回も勘定はレゼーヌ持ちで良いんだったよね。ご馳走様」 「え、ちょっと待ってくだ――」 「じゃあね〜♪」 レゼーヌの言葉を遮り、先にドアへ向かったズィックと、ズィックに引き摺られるようにして連れて行かれたロクスの後を追った。 「……行ってしまいました……」 「…………」 「どうしますか?」 「……君が構わないのなら……飲まないか?」 「良いのですか? 私は構いませんよ? ですが……」 くるくると床に散らばっている紙ふぶきを見、二人のやっていたように出来るだけ手品をしているかのように指を鳴らす。 パチン 綺麗になった床を見、満足したレゼーヌはクライヴの方に振りかえり言った。 「さ、出ましょう」 「…………」 「……あ、言い方が悪かったかもしれませんね。そのワインはここではなく、別の場所で飲みましょう。気分を変えるのも良いものですよ」 クライヴからのプレゼントである、ペアのワイングラスの箱を大事そうに抱え勘定を済ませに行った。 「……別の場所……?」 二人がやって来た別の場所とは、他ならぬクライヴの取っていた宿屋だった。レゼーヌ曰く、『そのワインは静かな所で飲むと格別なのです』だそうだ。 二人だけのクリスマスは始まったばかりだった……。 END ▼些嶺様のコメント▼ まず、今まで同盟に投稿させて頂いたSSとは設定がまったく異なります。 |
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