雪の君
 聖夜に降る雪はどうしてこんなにも綺麗で、そしてはかなく映るのだろう。
 窓を見つめ、思う。
 雪に埋まる景色を見ていると、心が満たされる。
 回された腕のぬくもりが余計に、しあわせに感じるのだ。
 素足に絡みついたシーツが冷たい。
 シーツを除ける間すら惜しいほどに、今は彼のぬくもりだけを感じていたい。
「どうした?」
 腕に頬を寄せると、彼が言う。
 好き、とか触れたい、に理由はないのに。
 素直な彼はそうしてすぐに理由を聞きたがる。
「何でもありません。雪、降ってますね?」
 彼の体に寄りかかり、冬空色の彼の瞳を見上げると、
「あ、あぁ」
 慌てたように彼は目をそらす。
 そんな彼を愛しいと思う。
「昔、雪が嫌いだった」
 彼はそう切り出す。思い出を語る時、何故か彼の声は低くなる。胸に響く彼の低音は、語られる内容
をさらに悲哀づける。
「闇に生きるオレに、雪は似合わなかった。雪の白さは眩しすぎた。だが…。あいつらの血に染まった
オレに、当たり前だが雪は降りつもった。まるで君みたいだった」
 彼は抱きしめる手に力をこめた。
「どんな者にも分け隔てなく舞い落ちる。でもオレは…君にふさわしくないのかもしれないな」
「何故、ですか?」
 予想外の言葉に声がかすれた。
「君がオレ以外の誰かに手を差し伸べるのを見ると、嫉妬を覚える」
 無口な彼の意外な言葉に、言葉を失った。困ったのではなくて、嬉しくて、次に言うべき言葉が見つ
からない。
「何故オレなんだ? 闇に生きるオレだか…―」
 勘違いしている、彼。
 これ以上彼の言葉を聞きたくなくて、続く言葉を唇で奪い取る。
 冷たい彼の唇が余計に自身の唇の熱さを感じさせる。
 恥じらいを覚えるほど、半端に彼を愛しているわけではない。
 唇を離すと、彼は無防備な顔で瞬きを繰り返していた。
 その反応が普段の彼からは想像がつかなくて、思わず笑ってしまう。
「もし、クライヴ? あなたの言うことが本当だとするならば、私はこの場にいませんし、背中には翼
が生えているはずです。あなただから、ここにこうして私はいるんですよ」
 信じられませんか?
 抱きついて耳元にささやくと、口づけられた。
 確かめる言葉も、おもねる言葉も、唇にとけてゆく。
 言葉は、いらなかった。
END
 〜紗雪しずく様のコメント〜
クリスマスなので、こんなのもアリかなってほんの出来心で書きました。
HPでクリスマスだけの企画やってます。似たようなの置いてます。
よろしかったら遊びにきてください。

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