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ゆうらり揺れる、夜の色。 |
黒でなく、青でもない・・・静寂の色。 |
眠るものたち全てを抱く、静謐の神が支配する色。 |
夜は不思議。象徴するのは恐怖と眠り。穏やかに、しかし確実に忍び寄る、音 |
の無い狂気。それは、息さえ潜めてやって来る。 |
幼子たちは夜の闇を怖がって、白く煙る朝を待ち望みながら床に着く。 |
光を愛し、闇を畏れ。 |
どちらにも属さぬその身を、常に間に置き。 |
そうして人は生きてきた。 |
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闇は光を憎み、呪い(しかし確かに愛していたのだ)。 |
光は闇を拒み、蔑み(しかし確かに惹かれていたのだ)。 |
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決して相容れる事無き運命(さだめ)を嘆きながら。 |
永い・・・永い時、光と闇は、因果を超える者を待っていた。 |
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少女の白い翼が示すのは聖。 |
触れてはならぬ、それはまさしく聖域。禁猟区に棲む奇蹟の存在。 |
光に焦がれるは闇たる証。 |
届かぬと知ってはいても、魅せられずにはいられない。 |
ただ、彼女が・・・光を背に微笑う少女が、愛しいだけであっても、それは罪 |
になる。聖なる天使を穢すことになる。 |
例え、彼女が笑ってくれたとしても・・・自分の心は休まることはないだろう。 |
清らなる存在を堕とす、この身の罪深さ。許されざる背徳。 |
ずっと、そう思っていたけれど。 |
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「私は、貴方が生まれてきてくれて良かったと・・・嬉しいと思うよ? それ |
じゃあ駄目?」 |
少し悲しげに微笑みながら、白い翼を戴く愛すべき娘はそう告げた。 |
「今まで生きてきてくれて有難う」 |
ほっそりした手が冷えきった頬を包む。じんわりと伝わる温もり。低い目線か |
ら見上げてくる眼差しは、酷く優しい。 |
「出逢えて、良かった・・・・・・」 |
怯える幼子を宥める母のような声音。 |
それは心の泉に静かに波紋を落とす。ゆっくりと、しかし確かに広がってい |
く、波紋。 |
抑えきれない怒りに、血が導く堕落に、失うかもしれない恐怖に。 |
波立つ感情に負けそうなときに。 |
ただ、信頼と親愛と・・・ほんの少しの、儚さ故に清廉な想いを含ませたその |
瞳が、自分を光へと引き戻す。 |
・・・・・・今はまだ、眠らせておこう。 |
春の陽射しのようでいて、身を焼き尽くす業火ともつかない・・・この想い。 |
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・・・今は・・・まだ。 |
降り注ぐ優しい光に委ねて・・・・・・・。 |
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「HAPPY BARHTDAY・・・Clive」 |
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―END― |