序曲 typeα


「この辺りにいると思うのですが……。暗いと見にくいですね。」

ここは勇者候補の一人がいると妖精から報告をされた、スラティナ。

今までで、全ての勇者候補に時間が欲しいと言われ、素直に『はい。』と答えてしまったレゼーヌ。

その為まだ勇者がいないのです。

なので、今回は何があっても承諾をしてもらわなくては当分の間何も出来ません。

「それにしても、どこにいるのでしょうか。……あ……誰かいる?」

ふわふわと飛んでいたレゼーヌは前方に人と人らしからぬ者の気配を感じました。


「ヴヴヴヴヴぅぅぅ。」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ。」

レゼーヌが見たものは、一人の成年が襲い掛かってくるゾンビ共を刀で斬り捨てているところでした。

「…………。は! あの方が勇者候補ですね。早速声をかけなくては。」

近づくレゼーヌ。背後からではなく真横から。

「クライヴ・セイングレントですね?」

「!? …………。」

驚いてはいたものの、何も言わずにいるクライヴ。

「あの、私は天使レゼーヌと言います。突然の訪問お許し下さい。」

と言って頭を下げたレゼーヌですが、上げた時にはクライヴは目の前から去っていました。

「……逃げられました!? まだ話の途中なのですが……追いかけて話を聞いてもらわなくては。」

話しを途中で放り出されるのが嫌いなレゼーヌは意地になっています。


徒歩のクライヴに対し、レゼーヌは空を飛んでいます。軽く追いつき、クライヴの前に降り立ちます。

「クライヴ、驚かれるのも無理はありませんが、何も話の途中で逃げる事はないのではないですか?」

「…別に逃げたわけではない。」

逃げたわけではないのなら何故いなくなったのか、思ってもここは口には出さずに用件を言います。

「私はこのアルカヤの混乱をおさめる為に天界から使わされました。貴方に勇者となってもらい、
アルカヤを救って欲しいのです。」

今度こそはと言う気持ちをこめて話します。

「……本当に天使なのだな。わかった……。俺に頼みたいことがあるなら来い……。
お前の好きにしたらいい。」

「ありがとうございます。って、逃げないで下さい。」

クライヴの服を掴むレゼーヌ。

「……離せ。」

「まだ話が終ってません。最後まで聞いてから移動してください。」

「…………。」

クライヴが立ち止まったのを確認してから手を離します。

「どこまででしかっけ? あ、ありがとうございますまででしたね。それでは、クライヴこれから
宜しくお願いします。」

今度は頭を下げず、クライヴの方を見て話します。しかし途中からレゼーヌの目はクライヴの
持っている刀へ移りました。

「クライヴのその剣は刀という物ですか?」

「ああ、そうだ。お前も剣を持っているのだな。天使も戦うのか?」

クライヴもレゼーヌが腰に下げている剣に目をやります。

「はい。ただ天界でのんびり暮らしているわけではないのですよ。…クライヴ、その刀見せて
もらえますか?」

興味を示したものにはとことん追求するレゼーヌ。

「構わないが……。」

刀を受け取り鞘から抜き出す。目に飛び込んできたものは。

「……血が凄いですね。」

「ああ、さっきまでゾンビ共を斬っていたからな。」

「…………。」

無言で刀を鞘に戻します。そしてクライヴに。

「ありがとうございます。」

刀を受け取ったクライヴは何も言わずにそこにいます。

不信に思ったレゼーヌ。

「あの、クライヴ?」

「もう話しはいいのか。」

「あ、はい。すみま……。」

レゼーヌが『はい』と言った途端に目の前から去って行きました。

「……これから先、どうなるのでしょうか。」

勇者になってくれた事はいいが、これから先のコミュニケーションが心配になってきます。

「いつまでもここにいるわけにはいきませんね。戻りましょうか。」

まだする事がないのでラキア宮まで戻って行きました。

そして、この日からレゼーヌの中にある止まっていた感情がゆっくりと動き始めるのでした。


それから数日後、忙しくなる事が目に見えているのにもかかわらず、全ての勇者候補を
再度スカウトし、勇者になってもらいました。




   (コメント)

……フェバのガープ戦を書かずにクライヴに逃げて書いたスカウト編です。

サイトの方では正式にアップしなかったのでせっかくなのでと思って同盟へ。

正式なのはもうちょい長くてして変えたんですけど、うちの天使とクライヴはこんな
感じです。

二回プレイしましたが、二回とも逃げられました。ので、うちの天使はきっと追いか
けるか何かするだろうなと。

ので、こんな話が……。それでは。

   



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