天使ノ涙ガ降ル場所デ side seresu


それは 汚れ無き者の 涙

それは 心美しき者の 涙

それは 慈愛の心の結晶


 ヒラヒラと白い物が天(そら)から舞い降りてくる。

 「雪か…」

 音もなく、静かに降る雪は、どこか、羽を連想させる。そして、白銀の髪と金の翼を
 持つ、口の悪い天使のことも…
 

 「帰るのか?」

 「あぁ。報告書、仕上げないといけないからな。」

 肩を竦め、心底面倒くさそうにセレスティナは告げた。

 「そうか…」

 いつもと変わらぬ素っ気ないクライヴの言葉。だが、それが僅かに沈んでいることに
 気が付かないようなセレスティナではない。

 「バーカ。そんな顔すんな。絶対、戻って来るって。」

 白い指を伸ばして、ツンと額を小突く。

 「戻って…来るさ。天使長達と喧嘩してでも…な。」

 冗談とも、本気とも付かない言葉。口の端を軽く吊り上げ、片目を眇める。そんな非
 対称な顔からは、何も読み取ることほ出来ない。

 「そうだな…行って来い、セレス。待ってるから。」

 その言葉に、小さく一つ頷き、艶やかな笑顔を浮かべてセレスティナは天界へと向
 かった。そして、その笑顔が天使セレスティナの、地上で見せた最初で最後の笑顔
 だった。


 「へぇ…天使の涙か…もぉ、そんな時期なんだな。」

 横に立つスラリと背の高い人物が、雪を手に受けながらそんな言葉を漏らす。

 「天使の…涙…?」

 訝しげに聞き返すクライヴに、一瞬、小さく目を見開くが、すぐに納得したような顔
 になる。

 「あぁ…この時期に降る雪のことだ。このアルカヤの大地に眠る死者の魂を弔うため
 に降らせるんだ。」

 言って再び雪を見つめる。銀の髪に縁取らたその顔は、降りしきる雪と混ざり合い、
 今にも儚く消えてしまいそうな…そんな気にさせる。

 「セレス…」

 思わず、声を掛ける。そうしなければ、本当に、今にも消えてしまいそうで…

 「このまま、消えるとでも思ったか?」
 
 振り向きざまに、そう、言い放たれ思わず言葉に詰まる。図星だ。

 「バーカ。もう、翼は無いんだ。そんなこと出来ないって。」

 言ってまた、あの時と同じ非対称の顔つき。笑顔とも、呆れているともつかない、不
 思議な表情。それでも、不安は消えなくて。

 「?!ク…クライヴ?!」

 常の彼女ならば、決して出すことのない上擦った声が上がる。それを無視して、腕の
 中に抱き寄せ、そっと、抱きしめる。その存在が、確かな物であることを確認するか
 のように。

 「ったく…約束しただろう?側に居るって、あのときに。」

 半ば呆れ、半ば諦めたような声で、腕の中からセレスは告げる。

 「ホラ、これ。去年は何も渡せなかったし…な。」

 そう言って、掌より少し大きいくらいの包みを差し出す。明後日の方を向いるため、
 その表情は見えないが、顔が赤いのは、寒さのせいだけでは無いだろう。

 「それと、後悔は、してないからな。此処にいることも、翼を捨てたことも。」

 やはり明後日の方を向いたまま、付け足すように告げられる言葉。その言葉で、心の 
 中で固まっていた不安の固まりが消え、心が軽くなる。

 「…ありがとう…」

 万感の思いを載せ、たった一言だけ、短く告げる。

 「バーカ…それは、こっちのセリフだ…」

 いつもと変わらない、けれど、いつもより、少し、優しい声。
 並んで歩く2人に天使の涙は降り続ける。
 かつての神の愛し子と、その者が愛した者を優しく包み込むかのように。




そして それは 

大地に眠る者を優しく包み

遙かなる天空へと

死者の魂を導かん

永久の眠りから

新たなる生へと導くために


-END-




  (NO.58 神無 聖 様からのコメント)

  あーっ、もぉ、救いようのない駄文ですね。
  しっかし…全然天使らしくないなぁ…セレスってば。おまけにクライヴ、絶対こんな
  性格じゃないし…。まぁ、傷口にニッコリ笑いながら塩を塗り込む様な性格ですから
  ねぇ…うちのセレス。(爆)で、クライヴはそれに感化…もとい、対応するためにあ
  あなったんでしょう。きっと。(爆)
  あ、ちなみにうちのセレスが地上に帰ってきたのは、これの1年前。つまり、去年の
  クライヴの誕生日だったりします。深い意味は有りません。話の都合上、そうなりま
  した。(爆死)
  “天使の涙”のエピソードは、完全に私の創作です。本来の意味は、3月位に降る雪
  のこと…らしいです。(爆)
  こんな駄文に最後まで付き合って下さって、本当に、有り難う御座いますv。感謝の 
  極みです。(ペコリ)
                             


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