すれ違い


  薄暗い部屋の中に、ゆっくりと柔らかな光が満ちる。
  その光と共に、部屋の中に人らしき気配が現れる。

  「よぉ、クライヴ。」

 光が収まると、其処には銀の髪に碧と翠の瞳。背には淡く燐光を放つ翼を持つ人物― 
  否、天使がいた。

  「セレス…どうした?」

  バサリ…と、大きな音を立てて、背の翼がしまわれる。背の翼が無ければ、案外何処
  にでもいるような、普通の人に見えなくもない。

  「イヤ、大した用じゃねぇよ。…なぁ、お前、酒、強かったよな?」

  質問…と言うよりは、ほぼ、確認に近い問いかけ。

  「あ…あぁ…一応は。」

  その質問の意味が分からず、内心、首を傾げながらクライヴは答えを返す。

  「っしゃ。なら、つきあえ。」

  言って、何処からともなく酒瓶が取り出される。それも、1本や2本ではなく、数十本。
 そして、それらは何故か全てに可愛らしいラッピングが施されている。
  あっという間に部屋の床は、色とりどりのラッピングで飾られた酒瓶で埋め尽くされる。

  「…一体、どうしたんだ?この量は…」

  あまりの量の多さに、内心思い切り冷や汗をかきながら、嬉々として酒瓶を出し続け
  るセレスティナに声を掛ける。

  「ん?これか?一昨日、バレンタインだっただろ?その時に貰ったんだ。」

  早くもその中の一本の封を切りながら、事も無げにあっさりと答える。

  「そうか……ってオイ、逆じゃないのか?普通……」

  あまりそういった行事に興味のないクライヴでもバレンタインぐらいならば知っている。
 たしか、女から男にプレゼントを贈る日だったはずだ。

  「まぁ…確かに、普通は逆なんだよなぁ…」

  軽く苦笑いをしながらセレスティナは言う。但し、その間も、自分のグラスに酒を注
  ぐことは忘れない。

  「でもま、くれるって言うんだし。アカデミア在学中も、こんな感じだったし。それ
  に仕方ねぇよ。こんなカッコしてるんだ。」

  小さく肩をすくめ、グッと一気にグラスを仰ぐ。たしかに、中性的な顔立ちといい、
  言動といい、男に見えなくも無い。特に、今のようにドレスではなく、動きやすい服
  装をしていると、10人中、8・9人は男だと思うだろう。

  「それより…呑まないのか?結構珍しい酒も有るんだ。」

  ヒラヒラと空になったグラスを振りながらクライヴに訊ねる。その周りには、すでに
  空になった瓶が数本転がっていた。

  『ウワバミか……?こいつは……;』
  そんなことを考えつつも、勧められた酒を断る理由もなく、セレスティナからグラス
  を受け取る。こうして、ウワバミ2人の(汗)酒盛りが始まった。



  「セレス、他の2人には声を掛けなかったのか?」

  酒盛りを始めてからしばらく経って、クライヴが思い付いたようにセレスティナに訊ねる。 

「………。(ギク)」

  その問いに、セレスティナは一瞬、顔を引きつらせるが、聞こえないふりをする。

  「…………潰したな………。」

  「…………。(ギクギクギクゥッ)(大汗)」

 完全に顔が引きつり、頬には、ツーっと汗が流れている。完全に、顔に出ている。
 れでは、『YES』と言っているのと同じである。
 
  「……うん……」

  顔を赤くしながら、小さく肯く。その答えに、『やっぱりな』と、呆れたようにため息を付く。

  「セレス…お前、一体どれだけ呑んでるんだ?」

  「え?ん〜と、大体…30本位…かなぁ…?」

  アハハッと乾いた笑いを浮かべながら答えが返ってきた瞬間、『聞かなければ良かった…』 
 と、心底後悔した。

  「で、でも、天界の酒ってアルコール低いし、ちゃんと2人に解毒呪文、かけたし…。」

  慌てたようにセレスティナが言い訳をする。確かに、アルコールは低い。低いのは、
  十分、分かってはいるのだが…

  「呑みすぎだ……」

  思い切り呆れたようにクライヴは告げる。……そう言う自分の周りにも、ン十本の瓶
  が転がっていたりするのだから、あまり説得力はない。

  「…………。」

  一方、呆れたように告げられたセレスティナは、かなり落ち込んでいた。他の勇者に
  告げられたのならば、ここまで落ち込みもしなかっただろう。だが、相手がクライヴ
  なのがかなり応えたようだ。確かに、勇者2人を酔い潰した事は悪いと思う。それに
  対する罪悪感も持ってはいる。持ってはいるが、どうしても、あの2人に邪魔される
  ことなく、2人で呑みたかったのだ。

  『折角…誕生日だって言うから誘ったのにな…』

  だが、理由を言ったところで罪悪感が消えるわけでもないし、2人を酔い潰しても良
  い理由にもならない。

  「………帰るわ…オレ……。」
 
  ポツリと呟いて、カチャカチャと空いた酒瓶とそれらを包んでいたパッケージを一ヶ
  所に纏め始める。そして、取り出した時と同じように、それらを何処かへと片づけていく。

  「じゃ……汝に、神の祝福あれ……」

  来たときと同じように、柔らかな光が部屋に溢れる。そして、光が消えたとき、其処
  に天使の姿は無かった。

  「…どうしたんだ?…あいつ…」

  常ならば、こちらが1言えば、10でも20でも、毒舌が返ってくるのに、今日は、
  やけに大人しかった気がする。それに、最後に見せた、悲しげな顔が頭から離れない。
  セレスティナが消えた場所へと視線をずらせば、其処には、小さな箱と、カードが置いてあった。 

  「……?」

  忘れ物かと思い手に取ってみる。カードの表紙には、セレスティナが書いたらしい、
  流れるような美しい文字で自分の名前が書き記されていた。


  HAPPYBIRTHDAY,CLIVE.

    大いなる感謝と、愛をこめて……… 

            02,16,SERESTINA 
              


  「……あのバカ……。」

  其処には、自分でも忘れ去っていた記念日の事が書き記され、箱の中には、水晶で作
  られたらしいロザリオが入っていた。飾り気のない、シンプルなデザイン。いかにも
  セレスティナが選びそうなものだ。きっと、忙しい任務の中、合間をぬって探したのだろう。

  『今度会ったら…礼を言わないといけないな…』

  まぁ、言ったら言ったで、いつものように自分を見下ろしながら、『別に気にする様
  な事じゃねぇよ』と、言われそうな気もするが。それでも、自分は言うだろう。沢山
  の意味を込めて。『…ありがとう…』と。
-END-




  (NO.58 神無 聖 様からのコメント)

 ………駄文です。駄文過ぎます。すいません(平謝り)終わり方も、
 なんか、まとまってないし……こんなので、良いのだろうか…?
 イヤ、最初に、天使が酒豪ってのが決まっちゃって、
 “良し。2人に酒でも呑ませるか”ってことで出来たものでして…
 (言い訳言い訳)(汗)うちの天使、微妙に性格悪いし…(爆)
 お目汚しで、ホント、すいませんです。(ペコリ)

                      


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