ちょっと辛口(nyugyo)
それはないぜ 雪印さん! |
ひと頃大さわぎした雪印乳業のずさんな衛生管理にまつわる事件は、日を追ってもっともらしい理由がポロポロ出てきて、てめー達の責任をうまく回避しながら世間を納得させようとしているが、でもちょっと待ってくれ!
たった3時間の停電で、牛乳というものはあんなに派手に腐ってしまうもんかい? 保健所も厚生省も何か大事なことを忘れてんじゃないのか。 ためしに飲みかけの牛乳パックを冷蔵庫に入れ忘れて台所のテーブルの上に半日くらいおいといても飲めないほど腐ったりはしない。(でも、責任とれないので試さないでほしい。 アメリカ流にいうと"Drink
your own risk!"となる。 つまり「腹が痛くなってもよかったら勝手に飲め!」ということ。)
だけど北海道の脱脂乳を作った工場では、どハデに腐りまくった。 ということは工場の設備を冷却装置でガンガン冷やして、ブドウ状何とか菌の繁殖を押さえこんでおかないと、ちょっとでも停電するとすぐに牛乳が腐ってしまうほど設備全体が汚いということかい。 なにかプラント設計の基本的なコンセプトというか、理念というか、何を取り扱っているかということがまるで理解できていないのではないかい? 自分達は何を作って社会に貢献している会社なのか、ほんとうにわかってやっていたのだろうか?
サントリーが初めて生ビールのビン詰めを開発・発売したのは、ミクロフィルタの洗浄をいつでもできるようにして清潔に保ち、雑菌が繁殖してビールを腐らせたり、味を落としたりしないようにできたのがキーポイントだったと読んだことがある。
つまり、いくら腐りやすい原料を取り扱っていても、ちゃんとした設備があってきれいに運転できていれば、今回の雪印のような不祥事は起きないと思う。
(サントリーが冷却装置なしでビールを造っているとはいっていないので誤解なきよう!)
だいたい電気が切れたら困るような設備に、なんでバックアップ用の電源装置がつけてないのだ。(事務所のある建物の便所だって停電の時困らないよう非常用の電灯くらいつけてあるだろうが!) 一番大事なところだけを冷やすのは工場全体にくらべれば少ない電気でいいはずだし、発電機を回すエンジンをスタートさせるのに3時間もかかったりはしない。 自分の車のエンジンをかけるときのことを思い出せばすぐわかる。 セルモータは、ものの2〜3秒も回せばエンジンはすぐにかかる。 車がポンコツでセルモータを何回も回したら、頭に来ると同時にバッテリも上がってしまう。 そんな車は、ちゃんと整備するか、なんならすてちまえ!
つまり、停電なんかまるで理由にはならないということ。 そんないいわけで世間の眼をそらそうとしても、ジェンジェン納得できないな。
そこで提案、厚生省も保健所もプラントそのもののここいらへんのところをよ〜くチェックして欲しい。 プラントの設計までさかのぼって、基本的なバックアップやフールプルーフが考えてあったか。 汚れやすいところができないような清潔な構造になっていたか、汚れたときの清浄化装置はあったのか、きちんと機能していたのか、などなど。 いっとくけど、これは人の目に付くところのことではないからな。 見えるところや人がいるところだけいくらきれいでも、人の飲み物が汚れるのでは困るのだ。
オレ自身、牛乳プラントなんか子供の国の牛乳パックを作るヤツしか見たことないど素人だが、ちょっと考えればこれくらいのことまでわかる。 そういっちゃ何だが、乳工業界全体のことが心配になってきた。 どこの同業者もにたりよったりの設備を使っていると思えるからだ。 ひょっとして目先の利く会社は大あわてで設備を見直しているかもしれない。
それに根本的なことを一つ。 これは絶対見抜いて欲しい。 こういう事件は人が原因でも、とにかく機械や設備が悪かったことにすると、たいていは人間側の責任をしっぽ切り程度でうやむやにできる。 機械や設備には責任を取らせようがないからだ。
日本には、雪印がNo.1だと思って、他メーカ製品と一緒に並んでいる中で、ちょっと高いなと思いながらも、中身がいいんだろうと信用して雪印を選んだ人が多かったと思う。 そういう善意の顧客を完全に裏切ったよね。 このあたりの声のない声を雪印はわかってんのかい?! うちの子供たちも雪印で大きくなったのになー!
しっかり反省しろよ、雪印さん!
ガキの頃はおふくろの実家で飼っていた山羊の乳を自分でしぼって飲んだこともある。 山羊というのは蚊に刺されると、名前は忘れたがすぐに山羊しかかからないこわい病気になって、死んでいた。 夜になると蚊帳をつったり、とにかく世話が大変だった。 今考えると、ずいぶん高くついていた飲み物だったと思うが、田舎の人というのは日銭が出て行くわけではないので、餌にする草はそこいらにいくらでもあるし、子供が日課で刈りに行けば日当はかからないし、まるでただでお乳を飲んでいる感覚だったと思う。 ビンに入った牛乳なんかめったに飲めなかった。
牛や山羊の乳は、もともと腐りやすいものだと思うし、それであるが故に人類は、バター、チーズ、ヨーグルトなどに加工して、冷蔵庫なんかない時代から、また現代でも砂漠地帯や秘境といえる場所の遊牧民も、永持ちするようにしてきた。 逆に「腐る」ということを上手に利用して体にいいものを作ってきた。 牛や山羊などの生き物は大事に飼育し、乳も人の手で大事に大事に取り扱ってきた。 心がこもっていれば簡単に腐ったりしないし味も良くなる。 遊牧民の彼らは、それこそ命がけで作物の穫れないような厳しい環境の中でも命の糧を手に入れてきた。 金儲けのためにちょっと代わった味の飲み物を作ろうというような浮いた気持ちではない。
ところが、いっぱい作って大もうけようとしたとたん、すぐに腐って買った人の健康を損ねるような製品を作ってしまう、とんでもない設備を作ってしまった。
Oh、部屋の出口に着いたな。 向こうの部屋で冷たい牛乳でも飲むか。 ぶつぶつ!(小言幸兵衛)
(16, Nov. 2000 記)
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