ちょっと辛口(diagram)

しっかりせんかいJR!

 ついこないだの朝日新聞(2001.JAN.14.SUN)に「電車のストップ増えている」という報告が載っていた。 これによると、列車故障や信号トラブルなどによるダイヤの乱れ件数が、過去13年間でほぼ倍になっているという。 また、同じ期間に、衝突や脱線事故は3分の2に減っているという。 つまり、大きな事故を未然に防ぐため、電車を止めまくっているというわけ。
 過密ダイヤをこなしながら大事故を防ぐため、過敏なセンサーを装備した線路の上で、取り扱いにくいブラックボックスを載せた電車が、ハイテクを誇る(自己満足的)JRの運行システムによって、毎日のようにどっかで立ち往生しているというわけだ。

 “ダイヤの乱れ”といわれる「運転阻害事故」は、30分以上の遅れと運休が報告義務の対象になるということらしいので、首都圏のJRが毎日のようにどっかの路線でやっている、駅と駅の間で20分くらい立ち往生するような“けっこうな電事故”はまったく統計に入っていないということかな?
 さらに、気になるのは、走行100万キロごとの比率で「運転阻害事故」が全国平均で私鉄に比べJRが3.3倍も多いという。 しかし、単に走行距離だけでの比較ではちょっと不満が残る。 つまり、乗客をいっぱい乗せて、ほとんど無事故で走っているJR新幹線と、ほとんど毎日ダイヤが乱れているぎゅうぎゅう詰めのラッシュ時の東海道などの電車をまぜこぜにしてしまうと、事故の頻度は少ない方にデータを狂わせていると思われる。 ラッシュでも3両で走っているJRほどには混んでいない東急池上線などと、走行距離だけで比較してもまるで意味がないと思うのだ。 ダイヤが乱れて困っているのは人間様だから、(乗客数X走行距離)で比較して欲しいものだ。 乗客数は芋ずる式に各駅で停まってしまう電車の本数までカウントしてもらいたい。 おそらくビックリするような差がでると思う。

 また、しょっちゅう事故っているJRの振り替え輸送のため、最寄りの私鉄があふれ返ってパニック状態になり、こんどは私鉄のダイヤ遅れの原因になっている。 JRのほうが多く事故っているというのだから、私鉄に迷惑をかけているのはJRのほうだ。
 ダイヤの乱れで迷惑をこうむっている乗客の数を比較すると、JRが私鉄の3.3倍なんてチャンチャラおかしい。 さらに、JRのためにトバッチリを受けている私鉄側の乗客をJR側に換算して繰り入れるなど、比較のパラメータを変えてみると、ちょっとオーバーだが天文学的な差に近づいてしまうのではないかと思う。

 うろ覚えで申し訳ないが、1人の重傷者が出たら、29人だか30人の軽傷者がいて、さらに300人近くのかすり傷がいる、という労働災害の分野では常識となっている統計確率の考え方があった。 これは、設計やソフトの開発など不具合やチョンボにも同じようなことが適用できるので、この話題にも当てはめるとすれば、報告にでる事故1回の裏には、300回くらいの闇に葬られた事故があり、上に述べたような乗客への迷惑度を乱暴に仮定すれば、JRと私鉄の大きな事故の比3.3倍は(カウントされていない奥行きがあるように思えるので)「3.3の二〜三乗」>10〜36倍くらい、末端では、さらにその二乗で100〜1300倍近くになると考えると妙に説得力がある。 つまりJRでは「また、今日も遅れたな!」と感じることが私鉄の1000倍も多いのではないかと考えられる。 この差は、実際に毎日通勤してみて、JRが“ほとんど毎日おかしい”のと“ほとんど遅れない”とで火を見るより明らかに直感できる。 政府の統計なんか見る前に利用者のほうが、はらわたにしみるほど感じているのだ。

 で、自分の限られた行動範囲での体験から、この半年間で何をやったかというと、JRをスッパリとあきらめて私鉄(相鉄・東急に限定されているが)だけを利用する通勤に切り替えたのだ。 それ以来“ダイヤの乱れ”というストレスから完全に解放され、非常にスッキリした。 (路線は距離の短い方がダイヤの狂うリスクが小さいということかと解釈しているが・・・)

 JRでは主に京浜東北線を使っていた。 東海道線の混み方は殺人的だし横須賀線はルートが長いので時間的なメリットが少なかった。 横浜から田町まで通うのに、桜木町始発をねらって少しでも空いている便を利用していた。 (東海道線の、あの混雑を愛している人もいて、人は好きずきだが・・・)
 ある日、自分の乗っている電車が川崎駅に着く時、通り過ぎようとしていた踏切で、遮断器の横棒をまたいで飛び出そうとしている通行人が目に入った。 一瞬「あ、やる気だな!これはやばいな!」と感じたとたん、乗っていた電車はすでに通り過ぎていたにもかかわらず駅のわずか手前で急停車した。 つまり、踏切のセンサーがはたらいて、周辺を走っているすべての電車のATCが働作したのだ。 踏切のセンサーに人影がちょっと映っただけで、東海道線、京浜東北線、南武線が一気に停まってしまった。
 はっきりいってJRの場合、こんなのがほとんど毎日だった。 たいていは30分もかからない内に動き出すので、上述の「阻害事故」には加算されていないと思う。 JRの場合、前がつっかえて動けなくなる後続電車と、すでに先のほうに行っている電車までも運転間隔をあんばいして時間調整するためにやっぱり停めてしまうので(まさに、小さな親切、大きなお世話!)、京浜東北線ではほとんど全線で北は大宮近くから南は磯子のあたりまで、各駅で電車が動かなくなるという事態が発生する。 (しかも、外に出られない駅と駅の中間で!) 障害を極小化して利用者へのサービスを確保するのではなく、安全確保という大義名分に名を借りてテメーらの責任逃れだけを考え、関係ないところまで範囲を広げてしまうのだ。 近代的なハイテク車両とコントロールシステムといっているが、お客へのサービスがそっちのけになっているのでは、ほんとのハイテクとはいえないんじゃないか。 ハッキリいってローテクだ。 そんな程度のことしか考えられないヤツはレベルが低い。 大バカのコンコンチキだ!

 大宮とか田端とか、はるか北の彼方の、電車との接触(人身)事故のせいで、川崎から蒲田までの1駅ですら先に進めないということが日常茶飯事のことだった。 すし詰めの車内でじっとがまんの毎日・・・
 鶴見駅近くの「開かずの踏切」は、歩行者のほうがしびれを切らして電車の合間に勝手に渡ろうとするので、東海道、横須賀、京浜東北の3つの線が停まってしまう。 毎日のように同じような車内アナウンスを聞かされたものだ。 「安全確認のため・・・」などと決まり文句ばかりぬかしおった。 中でも一番のケッサクは「ただいま横須賀線の運転士が電車を停めて線路内に入った“人”を保護に向かっております。」というのがあった。 ヤツはいったいどこまで逃げたのだ。 人手を減らすためにいろいろと猿知恵絞って小道具をグチャグチャいっぱいくっつけた踏切で、鬼ごっこをするため人手がかかっている、ナンかおかしいと思わないかい?
 そのくせいつまでたっても抜本的な対策はな〜んもしない。 便利な陸橋や地下道があるのかないのか、わざわざ降りてまで調べたことがないのでよくわからないが・・・ ま、一事が万事、どうせJRのやることは、たいしたことないとわかっちゃいるがね。

 ある日、JR横浜駅の改札口の外まで人があふれているので、どっかで事故っているなと思い、横浜から東横線を使ったら、たいして苦労することもなく職場に着いた。 それからも何度か同じことをくり返したら、なんだかJRにこだわるのがバカバカしくなってきて「どうして今までこんな簡単なことに気がつかなかったのだ!」と思うようになってきた。
 東急線利用の場合、乗り換えが1回多くなるが、乗り換えに段差がない。 つまり、ほとんどの乗り換えで階段を使わないのだ。(カミさんは、階段の昇降は健脚のもと、というが・・・) 乗り換えるべき電車が同じホームの向かい側で待っている。 延々と階段を上り下りする必要がない。

 そんなこんなで思い切ってJRをあきらめてしまった。 それから6ヶ月の間に車両故障で15分ほど遅れたことが一度だけ。 さらにいいことには、ラッシュ時はゆったりとはいえないが、それでもかなり頻繁に座れるのだ。 毎日のようにダイヤがおかしくなっていたJRに比べ、まさに雲泥の差だ。 “今日も遅れるのかな?”とハラハラしながら電車に乗るなんて、大変なストレスになっている。 正直、体にいいわけない!

 先の新聞記事が統計的に証明してくれたが、体験的にはJRが私鉄の3.3倍なんて生やさしいものではなく、はっきりいって今のJRは“やっぱりどうかしている”と思う。 国鉄といっていた頃の“時計のように正確なJR”はいったいどこへ行ったのだ!

 おまけに運賃の表示を間違えてみたり、ずっこけぐあいはほんと目にあまる。 プロが仕事しているとはとても思えない。

 で、「しっかりせんかいJR!」

 誤解しないで欲しいのだが、オレはJRを憎んでいるのでも、私鉄の回し者でもない。 公共の交通機関を分け隔てなく利用している、ごく一般的な大衆の一人だ。 JRにも私鉄にもなんの偏見も持ってない。 感じている事実をそのまま(ちょっと嫌味ったらしく)正直にいっているだけだ。 だから(悔しかったら)JRも真摯に受け止め、世界に誇ると自覚しているJRが、ほんとに世界一になるようがんばってもらいたいのだ。

(2001JAN27)


2001年3月17日の後日談:
 JR鶴見近くの貨物線で機関車が脱線した。TVのニュースで見たとたん、何十年か前のすさまじかった横須賀線の「鶴見事故」を思い出した。
 あのケースも貨物線の機関車が脱線したところへ横須賀線が高速で接触・脱線し、列車が土手にぶつかって折れ曲がり、反対方向の列車の横っ腹に串刺しのように突っ込んだもの。何百人も死傷者が出た。
 ニュースを見て、ふっと思ったのは、ひょっとしてJRの本質はあの頃と何も変わっていないのでは?ということ。なんであんな何でもないところで機関車が脱線なんかするのだ。
 たまたま、この間のは土曜日で本数が少ないのと、通勤ラッシュでなかったことが幸いして、“復旧のめどが立たない”ことばっかり放送していたが、なにか大事なことをマスコミも忘れてやしませんか?

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