★★★しし座γ流星群の予想特集★★★
2001年の予想
阿部氏の流星群進化論と2001年の予想へ
しし座流星群の予報は、1時間に8000個!
2001年の11月1日のNHKニュースで、ついにしし座流星群の予報が流れました。アッシャー氏は1時間に8000個と発表したそうです。一方、国立天文台は1時間に20個と発表したそうです。また、佐藤薫氏が、マックノート・アッシャー法にによって、今年のしし群の出現を計算した結果、マックノート&アッシャーの予想時刻と5分違いで一致したそうです。1833年と1966年の大出現も再現できたそうです。それだけでなく、ジャコビニ群の1933年と1985年と1998年の出現も説明できたそうです。軌道の接近の具合やダストの放出速度からみて、今年の出現は予想通りで、HR数千の出現がありそうだということです。
2001年は、アッシャー氏によると99年よりも火球が多く出る?との予想もあります。
私の予想としては、出現数は、かなり期待できそうです。少なくともH・R(1時間当たり)500程度、しかも時間帯によって、火球が出現する時と暗い流星が多く出現する時の両方が見られると考えています。しかし、どの予想もあくまでも予想ですので、極大日には、各自の観測計画に従って悔いのないように準備をしっかりとしておきましょう。また、事前に想定観測などをしておくとよいかもしれませんね。私は、かつて、予想極大を信じすぎたこと、露対策で失敗したことがありますので、最悪の場合を想定して準備に当たろうとしています。しかし、なんと言っても天気次第ですので、日頃の行いと体調を整えることにしています。
2001年は火球が少し期待出来る?
以下に伊藤氏の予想を紹介します。
アッシャー氏によると、しし座流星群の火球クラスの粒子は、木星とテンペル・タットル彗星が14:5の軌道共鳴にあるため、その多くが母彗星に最も近い共鳴領域に密集して存在し、1965年や1998年の火球乱舞は、地球がこの領域を通過したためと説明されています。軌道上に共鳴領域は14個あるわけですが、1998年の次は、何年に地球が共鳴領域を通過するのかというと、実は今年のようです。実際、Aserら(MNRS
304、1999年)のFig.2から読み取ると、今年は1999年や2000年に比べると11〜16世紀に放出された火球クラスの粒子が多く回帰する計算になっています。もちろん33年間のうち、1998年がダントツで1番ですが、今年の条件は2〜3番めです。また、月刊天文1999年11月号の長谷川隆さんの記事をご覧ください。図3において、今年は1366年および1400年に放出された火球物質が回帰する計算になっており、やはり1998年に次ぐ好条件なのがわかります。
7公転トレイルと4公転トレイルの間にある?
では、その火球粒子が観測できるのは何月何日の何時頃か。まさか、1998年のように彗星の降交点通過の1日前にきて、不真面目な観測者は肩透かしを食うのでしょうか?この件に関しては、私は2年前の長谷川隆さんの同報への書き込みが唯一の情報源です。
以下、私の99年11月27日の同報メールで、引用部分は長谷川隆さんのものです。
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2001年は1866年の帯については Asherさんの予想では18日>UT18時頃と御聞きしています。私のは正確に見ていませんが、UT16>時前後になり微妙に早く、日本よりハワイの方が、ひょっとすると良いかも>しれません。18世紀や19世紀放出の帯は総じて、アメリカ合衆国が中心>ですが、その時間帯のあと、日本には14−17世紀の、古い比較的明るい>流星の多い帯の一部が接近する計算になっていますアッシャー氏の極大予想は18日18時19分で、長谷川さんの聞かれている通りです。アメリカ合衆国に1766年放出ダスト帯がかすった(0.0004AU)後、日本において、上記1866年放出ダスト帯と、明るい流星が多い1699年及び1666年放出ダスト帯が大接近(0.0002AU)する計算です。長谷川さんのシナリオとアッシャー氏のシナリオは基本的に一致していますね。特に1699年のダスト帯は「共鳴」の影響を良い方に受けており、火球が多い上、密度も充分という計算ですから、期待してしまいます。長谷川さんの計算では、この時刻に14〜16世紀のダストまで地球に接近するというのですね。
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皆さん、18/19日の楽しみは4公転トレイル(1866年帯)と9公転トレイル(1699年帯)だけではないようです。なお、今年における4公転トレイルと9公転トレイルの流星の明るさが議論されていますが、Aserさんの論文の?aの値が参考になるのではないでしょうか。私は、この値がゼロに近いほど明るいと理解しているのですが。もしそうなら、
4公転トレイル・・・・1999年の3公転トレイル(IMOによると光度比2.3。例の流星嵐)と同じ
9公転トレイル・・・・1999年の4公転トレイル(光度比?)及び2000年の8公転トレイル(IMOによると光度比2.0)より明るいとなります。
以前私が光度比2.3として計算したのは上記の4公転トレイルを考慮したからです。9公転トレイルや古い粒子の事も考えると、かなり効率よく写真に写るのかもしれません。
写真によるしし群流星の撮影数(予想)
具体的にシナリオを設定して、2001年11月18/19日に流星が1時間に何個写ってしまうのか予想してみました。シナリオ:(1)ZHRの経時変化は
Lyytinenの予報に従う。 (ピークZHRは8200。Asherの約半分の、少な目の予報)
(2)光度比は2.3(暗いといわれているので、光度比は大きくしました)
(3)撮影はF比の比較的小さい標準レンズで行う
(最も標準的な撮影方法です) (4)眼視観測で1.0等より明るい流星を6個観測する毎に1個撮影できる
(Lm=5.5等、雲量ゼロならおよそこの程度です)
(5)光度別見落とし率などは、IMOに準拠
結果:1台のカメラが撮影する流星数
HR
23時台
1
16
0時台
5
112
1時台
22
444
2時台
85
1737
3時台
127
2600
4時台
27
557
少なくとも3時台は1分に2個以上の撮影能率ですから、露出を1分に切りつめても4個以上写るコマが続出し、どの流星がどの時刻か対応づけるのが苦しいでしょう。シナリオ通りにはいかないと思いますが、HR500なら2分露出、HR1000を超えたら1分露出という目安でいかがでしょう。
シナリオをLyytinennから Asherに変更すると、1時台から夜明けまでHR1000を超えっぱなしだと思います。
竹村氏の予想です。
7回帰のは、99年の3回帰の粒子の放出速度並で、4回帰のが、放出速度が小さい=大きな粒子ということですか。ということは、明るい流星雨?が期待できるのは、アメリカで、日本では、1、2等クラスの流星が中心の流星雨ということのようですね。ちなみに9回帰については、触れられていなかったのですが、(7回帰のものと)同じような放出速度なのでしょうか?##放出速度が異なるなら、光度の変化で9回帰と7回帰の##トレイルが判別できるかな?とか思えてしまいます。とりあえず、火球クラスは期待出来なくても、3等程度の流星が大半ということもなさそうなので、楽しみです。
大西氏の予想です。
「1998年にヨーロッパを中心に観測された出現ほどでないが、非常に明るい流星「火球」が多い可能性が高いという。1999年のヨーロッパ〜アフリカにかけての出現は、数こそ充分に流星雨とよべる出現であったものの、暗いものが多く、見栄えするものではなっかった。2001年は1999年をはるかに凌ぐ出現数で、さらに火球が多い可能性が高いという」記事は、「Dr.David
Asher Interview」となってますが、同報や他紙の記事からは、今回、流星雨になったとしても、暗めという認識でしたので、意外でした。どこで聞いたのか忘れましたが(アッシャーさんとの懇親会??)軽い流星物質の方が拡散が早いので,古いトレイルの方は,比較的重い流星物質しか残っていない.1998年の火球の夜は、1333年のトレイルによるものだが,火球が多かったのはそのためである.(ちなみにZHRは流星物質が少ないので大きくない)このことを聞いて思ったのは,1699年トレイルと1866年のトレイルの光度分布が違うだろうなと思ったことでした.わたしも,今年の流星雨(嵐)は暗めとおもっていますが,その状態でも,2つの光度分布の差はあると考えています.
大塚氏の予想です。
キルナの会議では、いろいろ最前線の話を聞くことが出来ました。Asherさんには、Leonidsの予測でいろいろ疑問に思っていたことを伺いました。彼から貰ったLeonids3部作の別刷は、目を通していたのですが、どうしても判らないところがあったので。その一つは彗星核からの放出速度がどのくらいか?という事です。それは、彼がその後の研究などでtableに示している?a0パラメーターがそれを意味すると教えてくれました。Δa0=+0.2というのは、近日点付近でβ=0.001で彗星より前方に20m/sで放出された粒子である事を意味します。また-0.06ならば後方へ6m/sで放出された事になります。2001年は7回帰前に前方にΔa0=+0.08即ち8m/sで放出された粒子群がrE-rD=-0.00043AUまで、4回帰前に+0.14、14m/sで放出された粒子群が+0.00022AUまで地球にclose
encounterするように計算されています。放出粒子の速度が大きいほど質量は小さくなるはずです。そしてこれら放出速度の値は「実にあり得そうだ」と彼に話しました(彗星のlarger
dustのβ-シンダインの観測から)。Whippleの古典式を改良したBrown
and Jones (1998)の放出ダストの式に当てはめると、大体10^-4〜10^-5gのオーダーのmassとなり、しし群のような高速な流星体としては十分眼視等級1−2等級の明るさになります。1999年のΔa0=+0.14(rE−rDもやや大きい-0.00066AU)なので、7回帰前の粒子群は、それよりも大きなサイズ、即ち明るくなる流星体がNov.18.417にアメリカで見られそうです。そして4回帰前の粒子群は1999年並みの明るさの流星体がNov.18.763に日本で遭遇することになります。ちなみに1969年のradarサイズの微小Leonidsによるstormは、一回帰前に+93m/sで放出された粒子群が-0.00005AUまで接近した事により出現したものとの事。十分に考えられることです。Asherのみならず、BrownやJenniskensのそれぞれ別々の計算でも粒子群の地球接近時刻は殆ど一致しており、ただそれぞれの接近距離が多少違うだけで、今回のstormとの遭遇は、これまでの予測の正しさから見てまず間違いないところ(certain!)です。Jenniskensだけはアメリカでの大出現つまり、7回帰前の粒子群の方が接近遭遇するという計算結果が出ていましたが、Y-R効果などのやや不確かなパラメーターが加味されている可能性があります。またLeonids
MAC Japanの7月中旬の会合でも、海老塚さんや阿部君にいい話を示唆して貰いました。母彗星の近日点と降交点は大体一致しているので、近日点付近で放出された粒子群は、また一点に集中するように回帰する事です。即ち、その集中部に地球は遭遇するわけで、7回帰前の放出粒子群であってもtrailの巾が拡がらないのは、その為ではないか?という事で、極大時刻はまず間違いないでしょう。数も多分いっぱいでるでしょう。今世紀最初のstormが見られるかどうかは?あとは天気次第というところでしょうか。
内山氏の予想
大事なのは、母彗星から何年遅れたかではありません。1公転あたりどれだけ遅れたかです。太陽光圧によって小さいダストほど周期が長くなります。アッシャーらは結果的に母彗星よりも周期が300日くらい長いあたりが、「眼視流星」が多くなるだろうと考えています。この「周期が300日長い」というのは、軌道長半径が大きくなった分Δa0にすると、+0.17AU程度です。ちなみに、過去の大出現と今年期待のトレイルのΔa0の値は以下の通りです。(Leonid
Dust Trails and Meteor Storms;WGN27-2(1999)より)
流星出現年 トレイル ?a0
1833年
1-rev +0.17
1866年
4-rev +0.06
1867年
1-rev +0.37
1966年
2-rev +0.17
1999年
3-rev +0.14
2001年
4-rev +0.14(東アジア期待のトレイル)
2001年
7-rev +0.08(北米期待のトレイル)
過去の出現が5等級ばかりだったわけではないですから、今年も心配要らないでしょう。もちろん、「火球続出」というのは考えにくいのですが、十分に眼視流星がたくさん出るだろうと考えています。
重野氏の予想です。
アッシャー極大は暗い流星ばかりか?とても気になっていることがあります。直接アッシャーさんにお伺いする手段を持たないので、皆様のお知恵をお借りします。間違いのご指摘、ご意見をお願いします。アッシャー講演会でアッシャーさんは直径1mmの流星物質を想定してシミュレーションを行ったと述べておられました。この流星物質に太陽光圧が作用して、軌道が大きくなり、結果として母彗星が近日点通過後、4年近く経過してから近日点に戻ってきます。そして流星雨となる計算です。 この1mmの流星物質は、密度が0.6と仮定すると質量が0.3mgとなります。0.3mgのしし群は経験式(長沢工
流星に向かう p.50)に当てはめると約5等級の流星になります。しし群は角速度が非常に速いため、5等級の流星はIIでも撮影が困難です。ちなみにしし群の場合、見栄えのする0等級の流星は約30mg、永続痕が残る−4等級の流星は約1.5gとなります。アッシャー極大の実際の流星物質は直径1mmのものだけでは無いでしょうが、太陽光圧が作用して母彗星から約4年遅れるものは、やはり小さいものが多いと思われますので、明るい流星はかなり少ないような気もします。
Dr. D.J.アッシャーやE.Lyytinen他が日本での、しし群の大出現の時刻を予報しています。
E.Lyytinen他による2001年のしし群の予測を内山氏が次の様に紹介しています。彼らは、太陽光圧の非対称性やヤルコフスキー効果(A2効果)などをモデル計算に取り入れています。細かいことは現実にはわからないことが多いので、簡単な仮定をし、これらの効果の程度については、過去の観測結果に合うように設定しているようです。特に注目すべきことは、ピーク時刻とピークZHRだけでなく、ピーク前後のZHRの変化にも対応するように、A2効果等を取り入れていることです。そして、2000年の観測結果がより近く説明できるように、予測を改善したということです。さて、その中に書いてある、2001年の予測は以下の通りです(日本で関係しそうなものだけ抜粋)。上の表の「降交点」は、おそらくダストトレイルへの最接近時刻でA2効果を考えないときのピーク時刻だと思います。そして、A2効果のためにピーク時刻が「予測ピーク」の時刻に変化するということのようです。なお、このA2効果がどの程度働くのかは難しい問題で、これの程度によって、ピーク時刻が変動する可能性が残っているようです。さて、私が驚いたのは、ピーク時刻です。彼らの従来の予測では、マクノート・アッシャーの予測時刻に近く、上記の降交点の頃でした。したがって、「2時台に9〜11公転トレイルと遭遇し、3時台に4公転トレイルと遭遇する」と考えていました。このため、2時台と3時台のZHRおよび光度比がどのように違うのか、というのを注目していました。ところが、今度の予測では主力である4公転トレイルと9公転トレイルのピーク時刻の差が17分しかありません。半値幅(Half-width)はそれぞれ43分、62分ですから、この2つのトレイルは、ほとんど重なって出現し、区別できないだろうというのです。なんとか、区別して、その変化を見たいものですが、どうすればよいのでしょうか?また、実際にはどうなるのでしょうか?
年 | 月 | 日 | 時 分 | ダストテイル名 | ZHR | 研究者 |
2001 | 11 | 19 | 2時31分 | 1699年(9公転トレイル) | アッシャー氏 | |
2001 | 11 | 19 | 3時03分 | 1699年(9公転トレイル) | 2600 | E.Lyytinen他 |
2001 | 11 | 19 | 3時19分 | 1866年(4公転トレイル) | アッシャー氏 | |
2001 | 11 | 19 | 3時20分 | 1866年(4公転トレイル) | 5000 | E.Lyytinen他 |
2001 | 11 | 19 | 4時10分 | 10,11公転トレイル | 150 | E.Lyytinen他 |
また、4公転トレイルと9公転トレイルの輻射点位置も発表しています。この件について、内山氏は、以下の様に述べています。同報の結果は図で示されたので、その図を一生懸命読み取りました。概略の位置は次の通りです。それぞれ、いくつかのマークが密集して、輻射点分布を示していました。4公転トレイルは、あきらかに2ヶ所にわかれて分布していました。9公転トレイルと4公転とレイルの輻射点位置の違いは、わずかに0.1度程度です。これを検出するためには、長焦点での観測が必要だろうと言っていました。なお、この値は、天頂引力を含まない値だそうです。ちなみに、ピーク予測時刻の頃の天頂引力は、先日計算してみたところ、だいたい0.25度くらいでした。9公転とレイルと4公転とレイルは、ぱっと見たところ、黄緯方向に離れていました。おそらく、軌道傾斜角が0.2度ちょっと違うのでしょう。
2001年の極大予想の輻射点位置
赤経 | 赤緯 | 対地速度 | ダストテイル名 |
154.44度 | 21.45度 | 70.65km/s | 9公転トレイル |
154.38度 | 21.39度 | 70.69km/s | 4公転トレイル |
154.42度 | 21.37度 | 4公転トレイル |