平成18年2月 定例会
期 日:平成18年2月26日(日)14:00〜16:00
会 場:大分市 コンパルホール 302号室
参加費:会員 500円、非会員 700円
 
1.14:00〜15:20 講演
 

演題名:「終末期における在宅ケアは可能でしょうか?
講 師矢津内科消化器科クリニック理事長 矢津 剛 さん

 

プロフィール
昭和33年 大分県豊後高田市 生まれ。
昭和59年 長崎大学医学部卒業。
     九州大学第三内科 入局(膵臓研究室)
 北九州市立小倉病院(現 北九州医療センター)
 九州大学付属病院
 国立福岡中央病院(現 九州医療センター)
 社会保険仲原病院
 中津国立病院 内科医長(院内にてターミナルケア研究会設立)を経て
平成8年より現職
平成9年〜 在宅ホスピス、在宅医療開始
平成12年 ニュージーランドホスピス視察(山崎章郎主催)
     訪問看護ステーション、ヘルパーステーション、デイケア開始
     在宅神経難病ケア開始
平成13年 タイエイズホスピス視察
平成14年 英国ホスピス視察
 現在までに177人の在宅ホスピスを施行。
 神経難病患者を含め、在宅患者175人フォローアップ中
平成18年 在宅ホスピス支援ハウスを設立予定。

所属学会・研究会
日本音楽療法学会会員、日本緩和医療学会
2002年日本ホスピス在宅ケア研究会九州大会副会長
NPO北部九州ホスピスケアの会世話人
神経難病における音楽療法を考える会世話人
ホスピス音楽療法研究会顧問
福岡緩和ケア研究会世話人
福岡県終末期医療対策協議会委員

著書『在宅ホスピスのススメ』(分担執筆。木星舎、2005年)など。
趣味:天体観測、薔薇作り、クラリネット、テニス

矢津内科消化器科クリニック・デイサービス・矢津クリニック訪問看護ステーション・矢津クリニックヘルパーステーション・移動訪問入浴サービス・在宅介護支援サービス

講演要旨
 
たとえば、治癒不可能な末期癌になった時、約60%余りの方が在宅での療養を希望しています。しかし、実際在宅での療養が可能であると思っている人は20%足らずにすぎません。多くの方が在宅での療養について、不安をもっています。それには医療的な問題だけでなく、生活の問題が多く存在します。在宅で過ごすと幾らぐらいのお金がかかるのかとか、介護者の仕事が難しくなるのではと経済的不安もありますし、年老いた介護者がほんとに看ることができるのか、介護者がノイローゼになるのではないかなど介護不安もあります。
 一方、どうしても在宅で看取りたい看取られたいと思っていても、近くに24時間体制の訪問看護ステーションや往診医がいるかどうかわからない、あるいはどんな人達が訪問してくるのかわからない不安もあります。
 我々は、10年ほど前より在宅での看取りを試み、多くの方々と貴重な時間を過ごす機会を戴きました。尊厳ある看取りを多く経験し、在宅での終末期ケアが死ぬ ためのケアでなく、生きるためのケアであることを痛感しました。在宅での看取りを通 して、地域の人々が満たされた気持ちになり、次の世代を担う子供たちにもメッセージを残していく姿に感動しました。
 昨年より、厚労省をはじめとする行政は高齢者の尊厳を保つためにも、医療費の削減のためにも、在宅での看取りを誘導しようとしています。さらに、今年4月の介護保険の改正に関しては、40−64歳の人々にも末期癌であれば、介護保険の利用を可能であるようになりました。さらに、在宅死を支援する在宅療養支援診療所の創設も決まりました。社会のコンセンサスはかならずしも得られていませんが徐々に在宅の看取りは進められつつあります。今回は、より具体的に在宅での看取りの実際をお見せすると共に、在宅ホスピスとはなにかについてお話したいと思います。