〜講演会から〜
「大分にホスピスを設立するためには何が必要か?」
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「大分・生と死を考える会」副会長
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原口 勝
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1997年6月14日(土)コンパルホール 305室
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大分にホスピスを設立するためには何が必要か?
資金、スタッフ、研修 (1) ホスピスの定義 ホスピスとは:死にゆく患者に対する全人格的ケア 1. 目的は生の充足のための全人格的配慮とケアをなすことである 2. スタッフは痛みと症状のコントロールに専門的知識を用いつつ、患者とその家族への温かいハートを もってあたる。 3. 死を見つめ、死にゆく患者の死を看取る (2) 施設としてのホスピス 緩和ケア病棟認可の施設基準 1 主として末期の悪性腫瘍の患者又は後天性免疫不全症候群に罹患している患者を入院させ、 緩和ケアを行う病棟を単位として行う。 2 看護婦が、当該病棟の入院患者 1.5 人に1人の割合で当該病棟内に勤務している。 3 当該病院が新看護又は基準看護を行っている。 4 当該病院の医師の員数は、医療法に定める標準を満たしている。 5 当該病棟内に緩和ケアを担当する医師が常勤している。 6 当該病棟の患者1人当たりの広さが30F以上 患者1人当たりの病室の広さが8F以上 7 当該病棟の病室のおおむね5割以上が個室である。 8 当該病棟内に、患者家族の控え室、患者専用の台所、面談室、談話室を備えている。 9 当該病棟内の特別の療養環境の提供に係る病室の数が、5割以下であること。 10 入退棟についての判定委員会が設置されている。 緩和ケア病棟入院料 1日につき 36,000 円 1日の出費 各種保険の自己負担分 例 社会保険本人 36,000 x 0.1 = 3,600 円、国民健康保険 36,000 x 0.3 = 10,800円 食事の一部負担金 1日 760 円 雑費(エアーマット使用料、ウォーターマット使用料、おむつカバー洗濯料、おむつ代等) 差額ベッド代(個室料金) ※1ヵ月の医療費が 63,600 円を超えると高額医療費助成対象となる(個室料金は対象外) ホスピスの構造 院外独立型 院内病棟型(従来の建物の一角や別棟を改造) 厚生省認可緩和ケア病棟14中6施設 財政的問題 民間のホスピスは寄付に頼っている 設立時及び運営 ホスピスのみでは財政的に運営しきれない → 病院全体の中の一部として他の部門から支援を得て運営されている 例外 独立採算制のホスピス 9年間に1万人をこえる人々から約4億3千万円の献金があり、その基金の利子で赤字を補填 ホスピスの建設にかかる期間 例 1. 1985年 関係者によるホスピス設立の話し合い → 既存の2つのホスピスで研修と指導 86年 5月「ホスピス中央委員会」の設置 7月「ホスピス設立準備室」 87年 設計がスタート 88年 増床許可 89年 2億7千万円の募金の開始 4月起工式 11月ホスピス病棟落成 90年 患者さんが入院、活動開始 6月厚生省から緩和ケア病棟の認可 91年 設立募金が目標額に到達 例 2. 1985年 4月「ホスピス準備室」の発足 12月 建設資金3億円を募金するための「後援会」設立 86年 3月 募金活動3ヶ年計画が開始 89年 4月 募金活動3ヶ年計画が終了、 「後援会」が解散 2億6千万円が建設資金として寄付 90年 5月 建設予定地が決定 92年 11月 着工 93年 8月 完成 9月23日 開院式 10月 患者さんの入院 94年 厚生省から緩和ケア病棟の認可 ホスピスの建設にかかる費用 例 1. 建物 1億8500万円 (84年) 設計・備品その他 1500万円 → 自己資金 1億円 初年度運営費 1億円 募金 2億円 募金 個人1口1万円、団体・法人1口10万円、期間3年間(実際は1年9ヶ月) 例 2. ホスピス棟 2億7500万円 (90年) 医療用機会備品その他備品 4500万円 → 総計 4億9000万円 初年度運営費およびホスピス基金 1億7000万円 自己資金 2億2000万円 + 寄付金 2億7000万円 例 3. 総額 15億4400万円 (93年) 寄付 6億円 県と財団からの援助 86年1月から募金活動を開始 → 93年までに募金総額 4億8000万円 約5000件、2700名の人から援助を受けた 例 4. 建設工事費 6億5000万円 (94年) 設計管理料、設備備品費ほか 1億8000万円 → 計 8億3000万円 財団 3億円 東京都補助金 8562万円 社会福祉・医療事業団借入金 9000万円 寄付金 企業 5000万円 一般 3億538万円 既存の病棟の一部をホスピスに改造 間仕切りの変更、内装部分、ベッドなどの器具備品の購入などの費用のみですますことも可能 経費は数千万円の規模に収まることもある 独立したホスピスを設立することは、長い期間と多大な費用を要するので実現は難しい。 ホスピスを設立したいと希望する病院が、その病棟の一部を増改築する際に、緩和ケア病棟としての基準を満たすようにして設立すれば、建設費用が少なくて済むし、緩和ケア病棟を運営 していくための経済的な心配も少ない。 (3) 在宅ケア 在宅ケアを受けるための条件 1. 医療・看護の体制が整っていること 訪問看護の体制がきちんとできていること 往診が可能な開業医・家庭医があること 2. 家族に支える力があること 介護する人がいるか 3. 十分な居住空間があること 一人の人が布団を敷きっぱなしにしておいてケアを受けられる居住空間があるか 4. 経済的基盤、社会制度・支援サービスが整っていること 介護者が勤めを持っている場合に勤務を休めるか否か、勤めを辞めた場合に経済的に大丈夫か 生活地域に自宅での介護を支える制度やサービスが充実しているか 在宅ケアの費用(健康保険の適用) 在宅患者訪問診察料 医師の往診 1週間に3回を限度に1日につき7000円 在宅患者末期訪問看護・指導料 1日につき 保健婦又は看護婦による場合 イ 週3回目までの訪問のあった日 5,300 円(準看護婦では4,800 円) ロ 週4回目以降の訪問のあった日 6,300 円(準看護婦では5,800 円) 処置料、薬代は別途請求 訪問看護ステーション制度の訪問看護を受けることもできる 1ヵ月の医療費が 63,000 円を超えると高額医療費助成対象となる 在宅ケアは上記の条件が満たされれば今の大分でも実現可能である。 (4) 一般病院の中でのホスピスケア
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