Flower of the soul



「愛じゃなくても恋じゃなくても君を離しはしない。
 決して負けない強い力を僕はひとつだけ持つ」

魂はどこへ行くのだろうと、寒い初夏にそんな歌詞を思い出しながら私は心をつねってみる。
そして、この痛みは自分が現実を再確認するために与えている必然なのだと自覚する。
その自覚が苦しみだとは、私は決して思わない。
常に相反しているふたつのそれは中心にあるたったひとつをいつも私に差し出している。
光と闇や善と悪や、そして生と死の間にあるそれは。

「半年から1年です。残念ながら現代の医学ではまだ治療法が見つかっていません」
「なぁルナ、ほんまのこと言うてくれ。お父さんは癌なんか」
「お父さんは私と結婚して幸せやったんかなあって。そうやったらいいなあって」
「お姉、俺らオトンに孫も見せてやれへんのかな。どうしたらええ?」
「違うよお父さん。癌なんかとちゃうよ。私が嘘つくと思う?」

何かにすがりつくことで、その何かを結局恨み言の対象にしてしまわないように。
頭の奥底から聞こえる「諦めろ」という言葉に、この信念が折られてしまわないように。
生活の変化や今までの自由の制限を、負の感情として誤認してしまわないように。
痩せていく私の心が、決して深い夜に飲み込まれてしまわないように。
差し出された課題を大切に解いてゆく。私の持てる限り全ての力を、細い命に注ぎ込んで。

小さい穴の開いた風船。私達はそこに息を吹く。代わる代わる吹く。時には泣きながら吹く。
膨らまずとも、飛ばずとも、それこそが大切なのです。乾いてゆく命の中身を湿らせながら。
そうして必死に生きてゆくことも死にゆくことも
唇をつけるその部分からこそきっと、全て鮮やかに芽生えているのです。

悲しみを栄養に育つもの。それを抱いて私は知る。終わりの対極にあるもの。蕾が開く。

リンダリンダ。
大切な人。


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