2005年8月3日(水)
父親の一周忌を無事に終えてから三ヶ月弱が経ちました。
忘れてしまうことはないのだけど、慣れてしまいます。人って強い。
私はすごく記憶力のいい人間なので思い出を取り出して眺めることぐらい簡単だと思ってたけど
父に関してはどうやら別みたいです。失恋に似てる。優しいのと悲しいのがあまりにごちゃ混ぜで
思い出そうとする行為自体が少し怖い。何から思い出してしまうのかを意識的にコントロール出来ないので。
強烈なトラウマをひとつ。車椅子に乗った父が外出中に痙攣を起こして痙攣止めを飲まそうと私は粉薬を
取り出したけど、あまりの恐怖に手が震えてうまく飲ませてあげられなくて咽る彼の背中をずっと擦った。
虚ろな顔で咽続ける彼を見てとうとうパニックになり道路で悲鳴を上げて助けを呼んだ。
父はあの時に自分は助からない事を悟ったと思う。そして悟らせてしまったのは自分の弱さだとも思う。
それは父の死よりも大きな傷として自分の記憶に残っているということに最近気がついた。
この記憶に関してだけは涙が枯れないのかもな、と考えては「暗いな」と苦笑いもする。
思い出したくないくせに慣れてしまいたくない。そんな我侭も記憶は聞き入れてはくれない。
そして私は父の顔や声や温度や思い出のどれから失ってしまうのだろう。
変換され続けている未来をうまくイメージ出来ないまま、突然理解してしまう日はきっと。
全てを受け止める器と何もかも跳ね返す鏡。
私はその両方が欲しい。
2005年8月17日(水)
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しない善よりする偽善。
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2005年8月25日(木)
台風が近い。
明日はどうやら横殴りの雨になるらしいと聞いて、何故か「横殴り」という言葉にばかり気を取られている。
政治経済がウダウダと騒がしい中、私はその散りばめられた問題を考えるでも議論するでもなく酔っ払っていて
ただ何となく芥川龍之介の自殺の動機とされたあの「ぼんやりとした不安」という言葉がやけにリアルに
輪郭を浮かび上がらせたりする。決して消えたりしたいわけでなく漠然と、そう、やはりぼんやりと。
裸の王様という童話を読んだ時に味わった「馬鹿には見えない仕立て服」の建前とその本質に何だかそれは似てて
私は多分ずっと「素敵な洋服だ」と崇める民衆にも「王様は裸だ!」と素直に発言する子供にもなれないのだろうな。
裏表。自分は理想主義的でないはずなのに、と言い聞かせても理想ばかり駆け巡る。
全てを知ることなんて夢だ。なら全てを知るまで思想なんて曖昧でしかない。
優先させてしまうもの。それに10年、20年後を見るだなんて先見は非現実にさえ思えてしまう。
つまり私はやはり女であって、国家やら利権やら歴史やら信念とか言う生臭い問題にはどうやら蓋をしたいらしい。
それより傷ついた羽に如何に優しく包帯を巻くのか。飢えた子供達に如何に栄養を取らせるのかの方にばかり
気を取られてしまう。この口や指や頭は、何のために此処にあるのか。ナイチンゲールになりたいわけじゃなくて。
本能的に保守的に全てが向く。夏の終わりにまで必死で食べ物を確保する蟻を逃がすような偽善で。
蟻は馬鹿だと思うだろうか。命を操作した気になってる私を。
明日生きるのだろうか。救ったつもりの私が知らず踏み潰した仲間を見つめて。
潜在的なはずなのに強烈に自我に向けて発光し続けている幻を、「偽善」と呼ばず生きてゆけたらという「偽善」
躊躇いもなく疾走する光に音ばかりが手元に残る。
2005年8月26日(金)
踊ることなどについて。
これはどこへも向かってはいないしメッセージ性は非常に薄い。特に何かの背景に影響されてるわけでないし
努力次第でスキルや完成度が(ある程度以上に)高くなるわけでもないと知ってる。てゆーか思い知った。
イベントは小さくて、だけどそれに満足もしているしやはり向上のモノというより価値観のモノだったりする。
なのに(だから?)揉め事が絶えない。価値観、故の、なら話は別だけどそこには常々感じてしまう温度差がある。
音の捉え方、個性、趣向、得意傾向、動機、言い訳、嫌いな言葉。人が形成されるまでには色んな過去があって、
私達には「遊びで養える」だったはずの共通項がいつも欠けていて、「FREE」という言葉が宙に浮いていて。
今日「岡本は潔癖だ」と言われた。
「出来ない」「無理」「わかんない」「早い」「ついてけない」「難しい」「変えようよ」「暑い」「痛い」
私もそうだよ。昼間のキツい仕事おしてやってんだよ。暑いし痛いし仕事に支障出たらどうしよーって思うよ。
でもみんな出来るって信じてるんだよ。だからこそ必死になってるんだよ。みたいな本音がモヤモヤと。
上手とか下手とかって何だろう。年齢で全てが決まるだなんて思考は私にはナンセンスでうまく受け取れない。
だからといって全員と手を繋いでゴールするなんてヤワな現代とも手を取れない。模索する1等のテープ。
若さが売りならキャリアは?若さを失った後に残るものは?その答えが空っぽなら私はいらない。
傾倒してゆく愛すべきものは、いつも闇の中。だけどそれが弱音だなんて絶対認めないのです。
くだらない嫌味ならアルコールと一緒に消化しよう。みんな愛してるよ。踊ろう明日も一生懸命。