DIARY
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2007年8月13日(月)
「君の箱だ」と僕は言う。
自らが「平穏」と命名した立方体に世間が決めた大きな言葉ばかり先に詰め込み その残った隙間に何を詰めるか悩む作業にばかり君自身を費やしては「何か」ばかり埋めてゆく。 そのまたギュウギュウに詰め込まれた網目をくぐって、「心」と君に呼ばれているものは 儚く濾過され、悲しく研ぎ澄まされて、溜まって掬って初めて本当の望みに気がついてしまっても。 君のスタンダード。世間に言いくるめられるほどの軟弱な箱ならば最初から答えは知ってるんだろう? 叶えるためなら箱なんて要らないと、言えない自分が最初の敵なんだろう? 確かめたいこと程、実は君の手中にあるんだろう? なのに確かめられない怖さは、君自身が抱えている「答え」なんだろう? 君の箱より僕の箱より世間の箱より、心は命の縮図。 空の果てを知った君だからこそ翼は生えた。 |
2007年7月17日(火)
まるで羽毛の様に柔らかで温かくて 私を甘やかす。
窒息しない程度の重力で押しつけて 私を苦しめる。 体の形のまま姿を変える柔らかさで 私を包み込む。 跳ねのけても跳ねのけてもやさしく 私を舞い落ちる。 跳ねのける手さえ優しく優しく優しく。 泣き疲れた夜さえ優しく優しく優しく。 どちら側が哀しいのだろう。 どちら側であるべきだろう。 甘やかし 苦しめて 包み込んでは 舞い落ちる。 甘やかし 苦しめて 包み込んでは 舞い落ちる。 |
2007年6月26日(火)
小さな小さな花弁を集めて、一つの大輪として魅せている様な幸せは
太陽に照らされて落ちる、僕の過去や孤独や悲しみの色なんかの影を 君が全部抱きしめてくれてるって証明なのかもしれない。 |
2007年6月24日(日)
パパママ、さようなら。
私が今知りたいものは ひと夏だけを生きる、まるで蝉の生涯。 アスファルトで乾いてしまうにしても それを拒めない本能。君を。未来なんて。想いを。 |
2007年6月11日(月)
どんなに強烈な想いや願いでも
時間が過ぎればその残像だけが振り返ったその道に残っていた。 信じれば迷い、探せば見失う。 手に入れては零れ、求めれば遠ざかる。 夜がまだ好きだった頃は足を止める術を知らなかった。 夜の果てを知った今では歩き出すことが億劫で仕方ない。 少しの若さはあまりに自分の前に愚かで、少しの老いは笑いながら自分を見下ろしている。 その狭間に立って僕はどちらの方向に対しても眩しく手を翳しながら 君を今越しに愛するんだろう。 雨の街。傘で見えない君の表情。 僕は懲りずに君の立つ場所へ往く。 「誰もが一緒なんだろう?」 そう問いかけながら。 |
2007年6月2日(土)
伝えるということ。
憂鬱で喜び。儚くて希望。 伝わるということ。 穏やかで哀しい。平穏で砂漠。 |
2007年5月30日(水)
夜半に降り出す雨は白。
傘から手のひらを差し出して掬ってみれば透明。 傾けるとアスファルトに落ちてゆく漆黒。 そうして足元で跳ね上がった小さいクラウンは銀。 ぬれた手をジーンズで拭いながら枯れてしまいそうな言葉遊びを。 言葉とは心の成れの果て。 想いを捉えたり足を止めたり、何かを奪ったり与えたりもする代物らしい。 後生大事に抱いても捨てても崇めても囚われても忘れたつもりでも。 呼吸や鼓動や瞬きのように、理由を追い求めずとも私を生かしている。 何を掻き消す必要があるんだろう。 それはどんなに繰り返されたものより確かなのに。 あの角を曲がった信号が青だったり、出かけた先で見つける旧友だったり、 いつも耳にするようなあの歌だったり、どこかの車両でニアミスしていたり。 どんな偶然より、君が確かだ。 君の存在が、何より必然で重大だ。 |